JP4605488B2 - 電子機器の冷却システム - Google Patents

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Description

本発明は電子機器の冷却システムに係り、特に、コンピュータ及びサーバ等の精密動作が要求され且つそれ自体からの発熱量が大きな電子機器を効率的に冷却するための電子機器の冷却システムに関する。
近年、情報処理技術の向上やインタネット環境の発達に伴って、必要とされる情報処理量が増大しており、各種の情報を大量に処理するためのデータ処理センターがビジネスとして脚光をあびている。このデータ処理センターの例えばサーバルームには、コンピュータやサーバ等の電子機器が集約された状態で多数設置され、昼夜にわたって連続稼働されている。一般的に、サーバルームにおける電子機器の設置は、ラックマウント方式が主流になっている。ラックマウント方式は、電子機器を機能単位別に分割して収納するラック(筐体)を、キャビネットに段積みする方式であり、かかるキャビネットがサーバルームの床上に多数整列配置されている。これら情報を処理する電子機器は、処理速度や処理能力が急速に向上してきており電子機器からの発熱量も上昇の一途をたどっている。
一方、これらの電子機器は、動作に一定の温度環境が必要とされ、正常に動作するための温度環境が比較的低く設定されているため、電子機器が高温状態に置かれるとシステム停止等のトラブルを引き起こす。このため、サーバルーム内を冷房するための空調機を運転する空調動力も大幅に増加しているのが実情であり、企業経営におけるコスト削減の観点のみならず地球環境の保全の観点からも、空調動力の削減が急務となっている。
このような背景から、特許文献1や特許文献2にみられるように、電子機器を効率的に冷却するための技術が提案されている。特許文献1には、後部カバーと前部カバーと側面取付け式の冷却空気サブフレームとを電子機器に取り付けると共に、冷却空気サブフレーム内にファンと熱交換器を設けることにより、電子機器を介して冷風が閉ループで流れる流路を形成することが提案されている。
また、特許文献2には、内部に蒸発器とファンを搭載した電子機器収納用ラック群を備えた電算機室用空調システムにおいて、室外から取り入れられた冷却用空気を床下の内部空間に流動させ、蒸発器を通じて電子機器収納用ラックに収納された電子機器を冷却すると共に、電子機器収納用ラックの背面に搭載される凝縮器を冷却して電子機器収納用ラックの背面又は上方の空間を流動し、換気装置を介して室外に排出することが提案されている。また、特許文献3は、電子機器の冷却の発明ではないが、蒸発器と凝縮器との間で冷媒を自然循環させる技術が紹介されている。
特表2006−507676号公報 特開2004−232927号公報 特開2007−127315号公報
ところで、従来の電子機器の冷却システムは、電子機器の冷却を空調機による冷却のみならず、電子機器に直接取り付けた冷却器を併用することで、空調機の空調動力を削減する効果を期待できる。
しかしながら、空調動力は削減される反面、電子機器に直接取り付けた冷却器の運転動力が加算されるため、トータル的な省エネの観点からみると未だ十分とは言えない。したがって、更なる省エネによるランニングコストの低減が要望されている。特には、電子機器に直接取り付けて冷却する点での省エネが要望されている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、コンピュータ及びサーバ等の精密動作が要求され且つそれ自体からの発熱量が大きな電子機器を、小さなランニングコストで効率的に冷却することができる電子機器の冷却システムを提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、複数の電子機器が配設された機器ルームと、前記電子機器に近接してそれぞれ設けられ、前記電子機器から発生する熱で冷媒を気化させることにより該電子機器を冷却する蒸発器と、前記蒸発器よりも高所に設けられ、外気と散水とにより前記冷媒を冷却して前記気化した冷媒を凝縮する冷却塔と、前記蒸発器と前記冷却塔との間で前記冷媒が自然循環する循環ラインと、前記冷媒を冷却する熱交換器と、前記循環ラインに接続された前記冷媒の流路であって、前記熱交換器が前記冷却塔に対して並列な関係を有するように設けられる並列ラインと、前記循環ラインから前記並列ラインに流す前記冷媒の冷媒量を制御する並列用制御機構と、を有し、前記並列用制御機構は、外気温度を測定する外気温度センサと、前記並列ラインに設けられ、前記蒸発器から戻る冷媒ガスが前記熱交換器に流れる冷媒量を調整する並列用バルブと、前記外気温度センサの測定結果から前記冷却塔で前記冷媒を冷却可能な能力を演算すると共に、該演算結果から前記並列用バルブの開度量を調整することにより、前記冷却塔に流れる冷媒の一部を前記熱交換器に流す冷媒量を制御する並列用制御部と、を備えたことを特徴とする電子機器の冷却システムを提供する。
本発明者は、近年、機器ルームに複数配設された電子機器からの発熱量が急激に上昇して、高温の熱(高温空気)が電子機器から発生することに着目した。そして、電子機器に近接してそれぞれ設けた蒸発器と、該蒸発器よりも高所に設けられ外気や散水で冷媒を冷却する冷却塔との間で、年間を通して長い期間、凝縮器(冷凍機から冷水を供給)や圧縮器を必要とせずに冷媒を自然循環させる循環ラインを構築できるとの知見を得た。
即ち、本発明によれば、電子機器(通常は、機器ルームの空気を取り入れて排気するファンを有する)から発生(排出)される高温の熱を高温状態のままで蒸発器を流れる冷媒と直接熱交換して、冷媒の蒸発を促進することにより、蒸発器よりも高所に設置された冷却塔へ蒸発した冷媒ガスを輸送する輸送動力を得ることができる。更には、蒸発器で蒸発した冷媒ガスが高温化することで、蒸発した冷媒ガスを凝縮して冷媒液体とするための冷却能力も小さくできる。したがって、凝縮器(冷凍機から冷水を供給)の代わりに外気や散水で冷媒を冷却する冷却塔を使用することが可能となる。冷却されて凝縮した冷媒液体は冷却塔よりも下方に位置する蒸発器に流下し、これにより蒸発器と冷却塔との間で冷媒が自然循環する循環ラインが構築される。
このように自然循環ラインを構築することで冷媒の輸送動力コストを必要としないと共に、循環ラインの冷却側を外気や散水で冷媒を冷却する冷却塔を使用することで、冷却のための熱源負荷を顕著に下げることができ、冷媒を冷却するためのランニングコストを大幅に削減することができる。
また、本発明によれば、冷媒の冷却を行う手段として、冷却塔の他に冷媒を冷却する熱交換器を、循環ラインに並列に接続して冷却塔と並列な関係を有するように構成し、並列用制御機構で熱交換器に流す冷媒量を制御するようにした。これにより、蒸発器で蒸発した冷媒ガスを凝縮するために必要な冷熱負荷に応じてランニングコストが最も小さくなるように、冷却塔と熱交換器とを効率的に活用することができる。
また、冷却塔の冷却能力は、外気温度に大きく依存している。
したがって、本発明によれば、並列用制御機構が、外気温度を測定する外気温度センサと、並列ラインに設けられ、蒸発器から戻る冷媒ガスが前記熱交換器に流れる冷媒量を調整する並列用バルブと、外気温度センサの測定結果から冷却塔で冷媒を冷却可能な能力を演算すると共に、該演算結果から並列用バルブの開度量を調整することにより、熱交換器に流す冷媒量を制御する並列用制御部と、を備えているので、外気温度の変動に応じて循環ラインを流れる冷媒の一部が自動的に熱交換器に流れるようにすることができる。これにより、冷却塔の冷却能力の不足分のみを熱交換器で補足すればよいので、ランニングコストを一層低減することができる。
要は、冷却塔が外気温度を有効利用できるように、冷却システムの運転者が夏期、中間期、冬期を設定すればよい。ここで、夏期を6〜7月、中間期の春期を3〜5月、中間期の秋期を9〜11月、冬期が12〜2月とすることが一般的であるが、前後に多少ずれることは問題でない。
以上説明したように、本発明に係る電子機器の冷却システムによれば、コンピュータ及びサーバ等の精密動作が要求され且つそれ自体からの発熱量が大きな電子機器を、小さなランニングコストで効率的に冷却することができる。
本発明の電子機器の冷却システムの実施の形態を説明する概念図 サーバ及びサーバラックを説明する説明図 電子機器の冷却システムの第1参考例を説明する概念図 電子機器の冷却システムの第2参考例を説明する概念図 電子機器の冷却システムの第3参考例を説明する概念図
以下、添付図面に従って本発明に係る電子機器の冷却システムの好ましい実施の形態について詳説する。尚、電子機器の一例として、サーバルームに配設されたサーバの例で説明する。
図1は、本発明の実施の形態の電子機器の冷却システム10を示した概念図である。
図1に示すように、2階建ての建屋12内には、サーバルーム14A、14Bが1階と2階のそれぞれに形成される。そして、1階及び2階の床面20A,20Bの裏側には、それぞれ床下チャンバ22A,22Bが形成される。床面20A,20Bには、複数の吹出口(不図示)が配置され、後記する空調機78(図3参照)からの冷風は、床下チャンバ22A,22Bを通って床面20A,20Bからサーバルーム14A、14Bに吹き出される。吹出口は、各サーバ28の前面側近傍に配置されることが好ましく、これにより吹き出された冷風がサーバ28に供給されることで、サーバ28を効率良く冷却することができる。
図2に示すように、サーバルーム14A、14Bにはサーバラック26が配設され、サーバラック26に複数のサーバ28が段積み状態で収納される。サーバラック26には、移動用キャスタ24を設けて、移動可能に配置することが好ましい。サーバ28は、ファン30を備えており、矢印32に示すようにサーバルーム14A、14Bの空気を吸い込んで排気することにより、サーバ28で発生した熱がサーバ28から排出される。尚、図1で示した2階建ての建屋12、サーバルーム14A、14Bの数、サーバルーム14A、14Bに配設されるサーバラック26の数、サーバラック26に段積みされるサーバ28の数等は一例であり、図1及び図2には限定されない。また、図1に示すように、サーバラック26に収納されたそれぞれのサーバ28には、蒸発器34が設けられる。尚、図1では、サーバ28と蒸発器34との関係が分かり易いように、サーバラック26ではなくサーバ28で図示してある。
図1に示すように、蒸発器34の内部には冷却コイル36が設けられ、冷却コイル36内を流れる冷媒液体がサーバ28から発生する高温空気で蒸発することにより周囲から気化熱を奪いガス化する。これにより、サーバ28自体やサーバ28から排出される高温空気を冷却する。
一方、建屋12の屋上には冷却塔38が設けられ、冷却塔38と前述したそれぞれの蒸発器34との間には、冷媒が自然循環する循環ライン40が形成される。即ち、冷却塔38内には、冷媒が流れる螺旋状配管41が収納されると共に螺旋状配管41の上方には、水を螺旋状配管41に散水する散水管42が設けられる。また、散水管42の上方にはファン44が設けられ、外気を冷却塔38側面開口から取り込んで上面開口から排出することで、散水される水と取り込まれた外気とのカウンタカレントを形成し、これにより外気を取り込み温度よりも低くなるように冷却する。
蒸発器34に設けられた冷却コイル36と冷却塔38に設けられた螺旋状配管41との間は、蒸発器34でガス化した冷媒ガスを冷却塔38に戻すための戻り配管46(冷媒ガス配管)と、冷媒ガスを冷却塔38で冷却して凝縮することにより液化した冷媒液体を蒸発器34に供給する供給配管48(冷媒液体配管)とで連結される。
戻り配管46及び供給配管48は途中で枝分かれすることにより、1階又は2階の床下チャンバ22A,22Bを通って1階のサーバルーム14Aに配設されたサーバ28の蒸発器34と、2階のサーバルーム14Bに配設されたサーバ28の蒸発器34とに接続される。かかる構成において、近年のサーバ28からの発熱量の急速な上昇により、サーバ28から発生(排出)される高温の熱を高温状態のままで蒸発器34を流れる冷媒と直熱熱交換して冷媒の蒸発を促進することにより、蒸発器34よりも高所に設置された冷却塔38へ蒸発した冷媒ガスを輸送する輸送動力を得ることができる。使用される冷媒としては、フロン、あるいは代替フロンとしてのHFC(ハイドロフロロカーボン)等を使用することができる。また、大気圧よりも低い圧力で使用するならば、水を使用することも可能である。ここで、冷媒と表現する場合には、ガス状態の冷媒ガスと、液体状態の冷媒液体の両方を含むものであり、図1には、冷媒ガスの流れ方向を白矢印で示し、冷媒液体の流れ方向を黒矢印で示した。
これにより、蒸発器34と冷却塔38との間には、冷媒が自然循環するための循環ライン40が形成される。即ち、蒸発器34と冷却塔38と循環ライン40とにより、内部に冷媒を封入した無動力のヒートパイプが構築される。また、サーバ28からの発熱量が大きくなり高温の冷媒ガスを形成できることで、冷媒ガスを凝縮する冷却温度を高めに設定することができ、冷却塔38による冷却能力でも冷媒ガスを凝縮できる。凝縮した冷媒液体は、冷却塔38よりも下方に位置する蒸発器34に流下する。
また、それぞれの蒸発器34には、サーバ28から排出された高温空気が蒸発器34で冷却された後の風の温度を測定する温度センサ50が設けられると共に、冷却コイル36の出口には、冷却コイル36に供給する冷媒の供給流量(冷媒流量)を調整するためのバルブ52(流量調整手段)が設けられる。そして、不図示のコントローラは、温度センサ50による測定温度に基づいてバルブ52の開度が自動調整される。これにより、蒸発器34で冷却された後の風の温度が設定温度よりも低くなり過ぎた場合には、バルブ52の開度が絞られて冷媒の供給流量が減少される。このように、冷媒の供給流量を必要以上に多くしないことで、冷媒を冷却するための冷却負荷を小さくすることができるので、冷却塔38での冷却だけでも十分な冷却能力を発揮できる。
このことをもう少し詳しく述べると、サーバ28は、ファン30により、サーバルーム14A,14Bの空気をサーバ内に取り込んで加熱され、加熱された高温空気と蒸発器34での冷媒との間で熱交換され、冷却された風が温度センサ50で測定される。
一方、冷媒自然循環システムでは、従来の圧縮式空調システムとは異なり、気化(蒸発)温度より低い凝縮温度が必要になるため、蒸発温度を高く設定することができれば、凝縮温度、即ち冷却塔38で使用する外気の温度も高くすることができ、より高温の外気条件でも冷却塔38での冷却能力を利用できることになる。即ち、外気温度が比較的高い中間期(春期、秋期)においても冷却塔単独での冷却が可能となり、冷凍機68の運転を抑制してランニングコストの削減が可能となる。
また、建屋12の屋上には、冷却塔38の他に、該冷却塔38よりも冷却能力の大きな熱交換器54が設置され、この熱交換器54は循環ライン40から分岐された並列ライン64に設けられる。即ち、図1に示すように、戻り配管46と供給配管48のそれぞれから分岐された並列用戻り配管58と並列用供給配管60とが熱交換器54の2次側コイル62に接続される。これにより、熱交換器54は冷却塔38に対し、冷媒の流れにおいて並列な関係を有して配置されることになる。
また、熱交換器54の1次側コイル66は、冷凍機68からの冷水供給配管70と冷水戻り配管72に接続されると共に、冷水供給配管70には送液ポンプ74が設けられる。これにより、冷凍機68で製造された冷水(1次冷媒)が熱交換器54において冷媒(2次冷媒)と熱交換し、冷媒を冷却する。なお、冷凍機68と上記した冷却塔38とは別の冷却塔76とを接続し、冷凍機68の冷熱源とすることにより、冷凍機68の使用電力を削減できる。なお、冷却塔76の構造は、上記した冷却塔38と同様である。
また、並列用戻り配管58には並列用バルブ59が設けられ、供給配管48における冷却塔38の近くには閉止用バルブ61が設けられると共に、冷水が流れる冷水供給配管70にもバルブ69が設けられる。一方、冷却塔38の近傍に外気温度を測定する外気温度センサ63が設けられると共に、冷却塔出口(冷媒液体側)と熱交換器出口(冷媒液体側)には、それぞれ温度センサ65、67が設けられる。そして、それぞれの温度センサ63、65、67の測定結果は並列用制御部71に逐次入力され、測定結果に基づいて並列用制御部71が各バルブ59、61、69を制御する。これにより、並列用制御機構が形成される。尚、冷却塔出口と熱交換器出口に、温度センサ65、67を設けたが、配管内を流れる冷媒の圧力を測定する圧力センサ(図示せず)を設けることもでき、温度センサ65、67と圧力センサの両方を設けてもよい。
ここで、並列用制御機構による制御方法について説明する。
1つ目の制御方法は、並列用制御部71が、外気温度センサ63の測定結果から冷却塔38で冷媒を冷却可能な能力を演算すると共に、該演算結果から並列用バルブ59の開度量を調整することにより、熱交換器54に流す冷媒量を制御する。これにより、蒸発器34で蒸発した冷媒ガスを凝縮するために必要な冷熱負荷に応じてランニングコストが最も小さくなるように冷却塔38及び熱交換器54を効率的に使用することができる。
冷却塔38の冷却能力は、外気温度に大きく依存しているので、上記の如く制御することによって、外気温度の変動に応じて循環ライン40を流れる冷媒の一部が自動的に熱交換器54に流れるようにすることができるので、冷却塔38の冷却能力の不足分のみを熱交換器54で補足すればよい。これにより、ランニングコストを一層低減することができる。
また、参考例としての2つ目の制御方法は、並列用制御部71が、冷却塔出口の温度センサ65の測定結果が所定値になるように並列用バルブ59の開度量を調整して熱交換器54に流す冷媒量を制御する。これにより、冷却塔出口の冷媒温度を測定することで、測定時点で冷却塔38が有している冷却能力を把握することができる。したがって、測定結果に基づいて並列用バルブ59の開度量を自動調整することで、循環ライン40を流れる冷媒の一部を自動的に熱交換器54に流れるようにすることができるので、冷却塔38の冷却能力の不足分のみを熱交換器54で補足すればよい。これにより、ランニングコストを一層低減することができる。
また、これらの制御方法を行う際に、熱交換器出口に設けた温度センサ67を測定することで、蒸発器34に供給する冷媒の温度が分かる。したがって、測定結果に基づいて冷水供給配管70のバルブ69の開度量を制御すれば、熱交換器54で必要以上に冷媒を冷却してしまうことも防止できる。更に、冷却塔38の冷却能力が最も低下する夏期においては、冷却塔38と熱交換器54との併用が却ってランニングコストの点で不利になることもあるので、このような場合には、外気温度センサ63の測定温度が所定値以上に達したら、閉止用バルブ61を閉じることで、ランニングコストの一層の低減を図ることができる。
このように、冷却塔38と熱交換器54との2つの冷却手段を持ち、それぞれの役割を分担することで、冷却システムの安定運転を保証することができると共に、冷媒を冷却するためのランニングコストを低減できる。
以下に電子機器の冷却システムの参考例について説明する。
(第1参考例)
図3は、電子機器の冷却システム100の第1参考例を示した概念図である。尚、本発明の実施の形態と同じ部材及び構成について省略する。
参考例として示した冷却システム100は、本発明の実施の形態の冷却システム10の構成に、サーバルーム14A,14Bを冷却するための空調機78を設け、空調機78の冷熱源として循環ライン40の冷媒を使用するようにしたものである。
即ち、図3に示すように、サーバルーム14A,14Bに隣接して機械室80A,80Bがそれぞれ設けられ、機械室80A,80Bに空調機78がそれぞれ設置される。また、サーバルーム14A,14Bと機械室80A,80Bとを仕切る隔壁82には、サーバルーム14A,14Bの空気を機械室80A,80Bを介して空調機78に吸い込む吸込ダクト79が貫通して配設され、吸込ダクト79の一端が空調機78の冷却部84に接続される。また、空調機の送風機86には、吹出ダクト81の一端が接続されると共に、他端が隔壁82を貫通して床下チャンバ22A,22Bに延設される。これにより、吸込ダクト79を介して空調機78に取り込まれた空気は、空調機78の冷却部84によって冷却され、送風機86によって吹出ダクト81を介して床下チャンバ22A,22Bに吹き出され、床面20A,20Bからサーバルーム14A,14Bに吹き出される。この場合、床面20A,20Bの吹出口(図示せず)は、サーバ28の前面近傍に冷風が吹き出されるように形成することが好ましい。尚、サーバ28の前面とは蒸発器34の反対側である。
また、空調機78の冷却部84は、循環ライン40から分岐された空調用循環ライン88に接続される。即ち、空調用循環ライン88を構成する空調用供給配管88Aと空調用戻り配管88Bとが空調機78の冷却部84に接続される。
上記の如く構成された第1参考例の冷却システムによれば、上記した本発明の実施の形態の効果に加えて以下の効果を発揮することができる。
即ち、冷媒を冷却するためのランニングコストが小さな循環ライン40の冷媒を、サーバルーム14A,14Bを冷風で冷却するための空調機78の冷熱源として使用するようにした。これにより、空調機78を運転するためのランニングコストをも低減することができる。また、空調機78と、サーバ28を冷却する蒸発器34とを併用することにより、従来の空調システム(特開2004−232927号公報に示される床吹き出し空調で電子機器ルーム全体の空気を循環して空調する方式)に比べ、サーバルーム14A,14Bでの熱溜まり(局所的高温部位)の発生を抑制でき、全体を空調する空調機78からの給気温度を高温化することができる。よって、本発明では従来に比べて冷媒の気化(蒸発)温度が高くてよくなり、冷却塔38の能力を十分に活用することができる。
したがって、循環ライン40の冷媒を空調機78の冷却部84に供給することは、空調機78の省エネと、冷却塔38の能力発揮の両方に寄与する。
(第2参考例)
図4は、電子機器の冷却システム200の第2参考例を示した概念図である。尚、第1参考例と同じ部材及び構成について省略する。
第2参考例の冷却システム200は、第1参考例の冷却システム100の構成に加えて、蒸発器34を備えた複数のサーバ28をグループ分けすることにより、互いのグループを縁切りした状態で運転できるように構成したものである。
即ち、図4に示すように、蒸発器34を備えた複数のサーバ28を複数のグループにグループ分けする。図4の場合には、1階のサーバルーム14Aに設置されたサーバ28を一つのグループとし、2階のサーバルーム14Bに設置されたサーバ28を別のグループとしてグループ化した。尚、グループ分けの仕方は、上記に限定されず、更に細かくグループ分けすることもできる。
そして、循環ライン40の途中にグループ分けしたグループ数である2基のグループ用熱交換器90を設けると共に、循環ライン40を、冷却塔38及び/又は熱交換器54と、グループ用熱交換器90との間で冷媒が循環するメイン用循環ライン40Aと、グループ用熱交換器90と蒸発器34との間で冷媒が循環するグループ用循環ライン40Bとで構成した。
また、第1参考例では、空調機78の冷熱源として、循環ライン40を流れる冷媒を空調機78の冷却部84に直接供給するようにしたが、第2参考例では、空調機78についても1階の機械室80Aに設置された空調機78と、2階の機械室80Bに設置された空調機78との2つのグループにグループ分けした。そして、それぞれの空調機78の冷却部84には、対応するグループのグループ用循環ライン40Bを接続するようにした。
上記の如く構成された第2参考例の冷却システム200によれば、上記した第1参考例の効果に加えて以下の効果を発揮することができる。
即ち、もし、1つのグループの例えば蒸発器34に異常を生じたり、冷媒の流れが停止したりしても、他のグループに異常が波及することがない。したがって、サーバルーム14A,14Bに配設された全てのサーバ28の冷却に異常が発生することを防ぐことができる。また、空調機78についてもグループ分けすることで、もし1つのグループにおいて冷媒の流れが停止する等の異常が発生しても、他のグループの空調機78の冷却部84に異常が波及することがない。
(第3参考例)
図5は、電子機器の冷却システム300の第3参考例を示した概念図であり、冷却塔38と熱交換器54とが直列な配置関係になるように図1を変更したものである。尚、第3参考例におけて、冷却塔38と熱交換器54とが並列な配置関係になるように設置した場合を説明したので、重複する部分は省略すると共に、同じ部材及び構成について同符号を付して説明する。
図5に示すように、蒸発器34で気化した冷媒ガスは、循環ライン40の戻り配管46を介して冷却塔38に至り、ここで冷却されて冷媒液体となった後、直列ライン73の復路配管75を介して熱交換器54に流れる。熱交換器54において、1次冷媒(冷水)との熱交換で更に冷却された冷媒液体は、直列ライン73の往路配管77を介して循環ライン40の供給配管48に流れる。これにより、熱交換器54は、冷却塔38に対して、冷媒の流れにおいて直列な関係に配置されることになる。
また、冷水供給配管70と冷却塔出口には、それぞれバルブ69及び調整バルブ87が設けられると共に、冷却塔38の近くに外気温度センサ63、冷却塔出口及び熱交換器出口にはそれぞれ温度センサ65、67が設けられる。更に、蒸発器34から戻る冷媒ガスを、熱交換器54に流すことができるバイパスライン83が設けられ、このバイパスライン83にバイパスバルブ85が設けられる。なお、バイパスライン83と上記した直列ラインとを区別するために、図5にはバイパスライン83を波形に記載した。そして、各温度センサ63、65、67の測定結果が直列用制御部89に入力されると共に、測定結果に基づいて直列用制御部89は各バルブ69、85、87を制御する。これにより、直列用制御機構が形成される。尚、図5では、冷却塔出口及び熱交換器出口にはそれぞれ温度センサ65、67を配置したが、配管中を流れる冷媒の圧力を測定する圧力センサを設けることもでき、温度センサと圧力センサの両方を設けてもよい。
ここで、直列用制御機構による制御方法の好ましい形態を説明する。
直列用制御部89は、冷却塔38の冷却能力が低下する夏期には、熱交換器54の冷却負荷が大きくなるが、熱交換出口センサの測定結果が所定値になるように管理することで、冷却塔38から熱交換器54に冷媒が順次流れる際に、熱交換器54では冷却塔38の冷却能力の不足分のみが補足されるように1次冷媒の熱量を制御することが可能となる。したがって、熱交換器54で無駄な冷却エネルギーを必要としない。
また、冷却塔38の冷却能力は外気温度により変動するため、夏期や中間期には、冷却塔38内の螺旋状配管41を流れる冷媒量が大き過ぎると冷媒を自然循環するために必要な温度まで冷却できない場合がある。したがって、バイパスラインに設けたバイパスバルブ85及び冷却塔出口に設けた調整バルブ87の開度を操作して冷却塔38への冷媒ガス流量を制御し、冷却塔出口の温度センサ65の測定結果が所定値になるように管理すればよい。これにより、夏期、中間期、冬期に関わらず、冷却塔38の冷熱原である外気温度を有効活用することができるので、ランニングコストの低減を一層図ることができる。
ここで、所定値とは、循環ラインにおいて冷媒が自然循環するに必要な温度又は圧力を言う。
このように、本願発明の第3参考例では、冷却塔38と熱交換器54とを直列配置した場合でも、蒸発器34から戻る冷媒ガスを先ず冷却塔38で冷却してから熱交換器54に通すことで、冷却塔38の冷却不足分のみを熱交換器54で補足すればよいので、冷却塔38において外気の冷熱を一年中を通じて有効活用できる。
また、直列用制御機構更の好ましい態様としては、直列用制御部89が、夏期において、外気温度センサ63の測定結果が所定値以上に達したときには、調整バルブ87を全閉にすると共にバイパスバルブ85を全開として、蒸発器34から冷却塔38への冷媒ガスの戻りを遮断して全て熱交換器54に導くようにする。これにより、夏期におけるランニングコストの低減を一層図ることができる。
尚、第3参考例の冷却塔38と熱交換器54とを直列配置した構成に、上記した第1参考例あるいは第2参考例を組み合わせることもできる。
(本発明のまとめ)
以上、本発明の電子機器の冷却システムによれば、コンピュータ及びサーバ等の精密動作が要求され且つそれ自体からの発熱量が大きな電子機器を、以下の理由により、小さなランニングコストで効率的に冷却することができる。
(A)冷媒自然循環方式を採用し、蒸発器34と冷却塔38との配置位置の高低差及び処理温度差を利用することで、冷媒(熱)の搬送動力がいらなくなる。冷媒自然循環方式では、蒸発器34から排出され、温度センサ50で測定される空気温度と、冷却塔38で冷媒を冷却する空気温度との差ΔTが5℃以上あれば作動し、無動力で冷媒を搬送できる。従来のセントラル空調方式の冷却システムでは、システムに要する全体動力の10%程度は冷媒を搬送するポンプ動力で占められており、この冷媒搬送(熱搬送ともいう)に要するポンプ動力を削減できる。
また、近年におけるサーバ28からの発熱量が急激に上昇して、高温の熱(高温空気)がサーバ28から発生することにより、従来にも増して上記のΔTが増加する。そして、このΔTの増加に従い熱搬送量(システムの熱処理量)が増加する。熱交換器54の仕様により熱搬送量は変化するが、ΔT=15℃でサーバ発熱量の半分程度(ΔT=30℃でサーバ全発熱量)の冷却が可能(サーバ発熱が15kWであれば、ΔT=15℃で7.5kW,ΔT=30℃で15kW全ての熱処理が可能)。サーバラック排気(蒸発器側の空気温度)は、通常40℃程度であり、外気温度が25℃(ΔT=15℃に相当)以下であれば、サーバ発熱の半分を外気のみで冷却、外気温度10℃(ΔT=30℃に相当)以下であればサーバ発熱の全量を外気で処理できる。例えば、東京では外気温度10℃以下の時間が約2600時間(全時間数の約30%)あり、外気温度10℃以下でのみ外気冷熱を利用した運転を行えば、熱源の熱負荷を従来よりも30%削減できる。また、外気温度10℃〜25℃の時間数は全時間数の約40%であり、この期間(中間期)も外気を利用してサーバ発熱全体の50%を外気処理で行えば、熱源の熱負荷を従来よりも50%削減できる。
(B)冷媒ガスの冷却に冷却塔38を採用し、冬期及び中間期(春、秋)の低温外気のもつ冷熱を有効利用することにより、熱源設備(従来であれば、パッケージエアコンの圧縮機)で製造する冷却熱量を低減できる。事実、従来のパッケージエアコンの効率:COP[製造する冷熱量(kW)/投入電力量(kW)]は、2〜2.5であるが、本発明の外気利用の冷却ではCOPが30以上になる。
(C)サーバ28に近接した蒸発器34を用いて、サーバ28ごとに局所冷却を行うことにより、局所的な熱溜まりを防止できる。
例えば、データ処理センター設備において、サーバラックに搭載されるサーバは正常に動作する空気温度条件が指定されており、サーバによって若干異なるが、吸い込み空気条件は25℃以下が一般的である。
一方、従来の床吹き出し方式の空調では、パッケージ空調機からの給気温度は18℃程度、空調機への戻り空気温度は26℃程度で運転されている。これは実際の運転では、サーバラック排気(通常40℃程度)と給気とが部分的に混合してサーバラックに吸い込まれるため、サーバラック吸い込み空気温度25℃を満足するには、給気温度が低温(実際の空気温度は18℃程度)でなければならないからである。
これに対して、局所熱処理ユニット方式でサーバラックを冷却した場合には、出口空気温度25℃を満足するため、給気温度が低温でなくても、即ち18℃よりも高くてもサーバ吸い込み空気温度25℃を満足できるようになり、例えば給気温度23℃と従来の18℃と比べて5℃も高くすることが可能となる。通常、パッケージ空調方式の冷却システムでは給気温度を1℃高くすることで、上記した効率(COP)を3%程度向上させることができ、給気温度5℃の上昇により、COPを15%程度向上できる。
かかる局所冷却による熱溜まりの防止に対して従来では、空調機78からサーバルーム14A,14Bに給気する空調エアを低温化することで、サーバ28等の電子機器への熱溜まりの影響を防止していた。しかし、このように給気温度を低温化すると、蒸発器34で気化される冷媒ガス温度が低くなり過ぎる。この結果、冷媒ガスを冷却して凝縮する冷媒手段の設定温度も低くしなくてはならず、冷却塔38のような冷却能力のそれほど大きくない冷却手段は使用できなくなる。
これに対して、本発明では、冷却塔38で冷却された冷媒を、空調機78の冷却部84に供給することで、給気温度が低くなり過ぎないようにできるので、冷却塔38のような冷却能力のそれほど大きくない冷却手段の使用が可能となる。また、給気温度を上昇させることができることにより、冷却システム全体のCOPを向上できる。この場合、冷却塔38で冷却された冷媒を、空調機78の冷却部84に供給する構成でも、熱溜まりの防止を十分行うことができ、全く問題ない。
また、本発明では、蒸発器34の上方に冷却塔38を配置して冷媒を自然循環するようにしたが、例えば循環ライン40の供給配管48及び並列用供給配管60に不図示の冷媒ポンプを設けることで、冷媒を自然循環せずに冷媒ポンプで搬送するように構成することも可能である。これにより、蒸発器34と冷却塔38との位置関係において、蒸発器34の上方に冷却塔38が配置されなくてもよくなり、蒸発器34と冷却塔38の配置に制約を受けずに自由に配置することができる。
尚、上記した本発明の実施の形態及び第1参考例〜第3参考例における冷却システム10,100,200は、電子機器としてサーバ28の例で説明したが、本発明は、精密動作が要求され且つそれ自体からの発熱量が大きな電子機器の全てに適用することができる。
10、100、200、300…冷却システム、12…建屋、14A…1階のサーバルーム、14B…2階のサーバルーム、16A… 1階の天井面、16B… 2階の天井面、20A…1階の床面、20B…2階の床面、22A…1階の床下チャンバ、22B…2階の床下チャンバ、24…キャスタ、26…サーバラック、28…サーバ、30…サーバのファン、32…高温空気、34…蒸発器、36…冷却コイル、38…冷却塔、40…循環ライン、40A…メイン循環ライン、40B…グループ用循環ライン、41…螺旋状配管、42…散水管、44…冷却塔のファン、46…戻り配管、48…供給配管、50…温度センサ、52…バルブ、54…熱交換器、58…並列用戻り配管、59…並列用バルブ、60…並列用供給配管、61…閉止用バルブ、62…2次側コイル、63…外気温度センサ、64…分岐循環ライン、65…冷却塔出口の温度センサ、66…1次側コイル、67…熱交換器出口の温度センサ、68…冷凍機、69…バルブ、70…冷水供給配管、71…並列用制御部、72…冷水戻り配管、74…送液ポンプ、75…復路配管、76…冷却塔、77…往路配管、78…空調機、79…吸込ダクト、80A…1階の機械室、80B…2階の機械室、81…吹出ダクト、82…隔壁、83…バイパスライン、84…空調機の冷却部、85…バイパスバルブ、86…空調機のファン、87…調整バルブ、88…空調用循環ライン、88A…空調用供給配管、88B…空調用戻り配管、89…直列用制御部、90…グループ用熱交換器

Claims (1)

  1. 複数の電子機器が配設された機器ルームと、
    前記電子機器に近接してそれぞれ設けられ、前記電子機器から発生する熱で冷媒を気化させることにより該電子機器を冷却する蒸発器と、
    前記蒸発器よりも高所に設けられ、外気と散水とにより前記冷媒を冷却して前記気化した冷媒を凝縮する冷却塔と、
    前記蒸発器と前記冷却塔との間で前記冷媒が自然循環する循環ラインと、
    前記冷媒を冷却する熱交換器と、
    前記循環ラインに接続された前記冷媒の流路であって、前記熱交換器が前記冷却塔に対して並列な関係を有するように設けられる並列ラインと、
    前記循環ラインから前記並列ラインに流す前記冷媒の冷媒量を制御する並列用制御機構と、を有し、
    前記並列用制御機構は、
    外気温度を測定する外気温度センサと、
    前記並列ラインに設けられ、前記蒸発器から戻る冷媒ガスが前記熱交換器に流れる冷媒量を調整する並列用バルブと、
    前記外気温度センサの測定結果から前記冷却塔で前記冷媒を冷却可能な能力を演算すると共に、該演算結果から前記並列用バルブの開度量を調整することにより、前記冷却塔に流れる冷媒の一部を前記熱交換器に流す冷媒量を制御する並列用制御部と、を備えたことを特徴とする電子機器の冷却システム。
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