JP5023506B2 - 導電性塗料の製造方法 - Google Patents
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ポリマー型導電性塗料を用いて、例えばフレキシブルなプリント基板用支持体上に導電回路を形成する場合には、前記ポリマー型導電性塗料をポリエチレンテレフタレート、ポリイミドなどのプラスチックフィルム上にスクリーン印刷等を利用して導電回路パターン形成し、形成されたパターン塗膜中のバインダーを加熱硬化して導電性、耐久性を向上させ、かつフィルム上への接着性を確保している。
導電回路用パターンの印刷工程においては、回路の微細化に伴い印刷密度、印刷精度をできるだけ上げることと端子間の低抵抗化が要求されている。
印刷密度、印刷精度の向上は銀または銀化合物の粉末の平均粒子径によって制限される。このため良好な印刷精度を得るためには1次粒子まで分散させる必要があり、前記銀または銀化合物の粉末の1次粒子を樹脂等により完全に被覆し高分散化させ、導電性塗料を作製することが求められる。
もし前記銀または銀化合物の粉末の1次粒子を高分散化させて、樹脂等の被覆が不十分であると、該導電性塗料は1次粒子の粒径が細かくなるほど活性が増すため、通常は銀表面上の充分な樹脂被覆が行われていないと作製後に速やかに粒子が凝集したり、経時的に粘度が上昇しやすく、極端な場合はゲル化することもあった。
さらに導電性塗料の比抵抗を低減するためには、導電性粉末の樹脂被覆をできるだけ薄くして、導電性粒子間の導通状態を少しでも良好に保つ必要がある。
従って、分散に使用される樹脂量は必要最低限が好ましく、より少ない樹脂量で銀粉末等の導電性粉末の分散性や、基体への塗料の付着性、塗料の成膜性が良好となることが好ましい。
しかし、これら分散剤を使用しても従来の例えば、分散機や混練機を用いて樹脂中に導電性金属粉を分散させる方法では良好な分散性を維持しつつ、導電性を充分に向上させることができなかった。
しかし、特許文献1に記載された方法を用いただけでは、沈降した銀粉末等の再分散性を向上させるには不充分であった。
また、分散に使用される樹脂量についても必要最低限にまで減少させてはおらず、導電性の点でも不十分であった。
しかし、同じ金属分散液といっても特性も用途も大きく異なる導電性塗料製造に真空凍結乾燥を適用した例は無く、分散性と導電性の関係についても示唆されてはいない。ましてや良好な導電性を発現させるための分散剤の選択についても全く開示されていない。
しかし、低温焼成型の導電性塗料に用いられる微粒子化された銀粉末や、粒子状銀化合物は、還元反応の速度が非常に速く、水あるいは還元性が低い溶媒などの溶液中で保存せねばならず、乾燥粉での扱いが難しい場合がある。特に分散溶媒にアルコール系等を用いると、銀又は銀化合物粉末の分散中に還元が進んでしまい、分散するのでなく逆に銀粒子間の融着が生じることがある。このためこれら銀および銀化合物の粉末を一次粒子にまで分散して各銀粒子表面を被覆、安定化することがより一層求められている。さらに、これら導電性塗料においては、本来の高い電気伝導度を得るためには、塗料中の銀粒子が銀の高い含有量を維持しつつ良好に分散する必要があり、加えて必要最低限の樹脂により前記安定化を行い、銀表面の被覆膜厚を可能な限り薄くして、低温焼成によって隣接する樹脂が融着しやすくする必要がある。
このためこれら低温焼成タイプの導電性塗料に対しては、個々の銀粒子の被覆による安定化と、分散性の向上と、低温焼成による導電性の向上とを同時に満たすための分散剤の選定、製造方法がより一層重要であった。
以上のように、従来のポリマー型導電性塗料の特性を充分に引き出すためには、少量の樹脂で分散状態の良好な導電性塗料を実現する分散方法が求められていた。
本発明の導電性塗料の製造方法は、導電性粉末を界面活性剤存在下に水溶性溶剤中に分散させ水性分散液を製造する分散工程と、前記分散液を真空凍結乾燥させる乾燥工程を有しているため、前記界面活性剤を導電性粉末表面に効果的に吸着させることができる。
この結果、塗料化工程においては導電性粉末表面が既に界面活性剤で表面処理されているため、分散剤としての樹脂の添加量を、少量に抑えることができ、樹脂/導電性粉末の質量比が0.1以下という少ない樹脂成分で導電性粉末が良好に分散した導電性塗料を製造することができる。
このため導電性粉末の配合量を多く、チキソ性を高くすることができ、塗布膜厚の厚い配線パターンを形成することが可能で、導電回路の抵抗値を下げることができる。
このような界面活性剤で表面処理された導電性粉末を用いて塗料化を行うと、溶剤もしくは樹脂と溶剤を加えた混合撹拌あるいは混練のみで広範囲の粘度の分散液が作製可能である。
しかし、本発明の導電性塗料の製造方法の塗料化工程においては、界面活性剤によって表面処理された導電性粉末と、塗料形成用の溶剤および樹脂とを、混合、撹拌させるだけで導電性塗料を製造することができる。このため配合比の自由度が高く溶剤量による粘度調整だけでなく、樹脂量もチキソ性を得ることを目的に、少なく処方することも可能である。その結果、導体回路の作製に用いる印刷手段に最も適した銀粉含有量と粘度、流動特性を有する導電性塗料を容易に作製することができる。
本発明の導電性塗料の製造方法によって製造された導電性塗料は、塗料化後の放置期間が長くとも容易に撹拌程度の再分散で安定した分散液が得られるため、長期の保存が可能であるが、また分散工程及び乾燥工程で表面処理された導電性粉末(導電性粒子が界面活性剤で被覆された導電性粉末)の状態で保存しておき、必要に応じて必要量のみの導電性塗料を作製することもできる。
本発明の分散工程においては導電性粉末を界面活性剤存在下において溶剤中に分散させる。
特に銀または銀化合物よりなる銀粉末は安定した導電性を実現し易く、また熱伝導特性も良好なため好ましい。
銀粒子等の導電性粉末の体積平均粒径は、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm程度である。銀粒子として、体積平均粒径が異なる大小2種類またはそれ以上の粒子を組み合わせて、銀の充填密度を向上させることにより、導電性膜の導電性を向上させてもよい。
銀粒子表面の酸化処理により、粒子表面の銀は酸化第1銀、酸化第2銀、などに酸化される。粒子表面が酸化銀で被覆された銀において、酸化第1銀、酸化第2銀、などの酸化銀は混合していてもよい。これら粒子表面が酸化銀で被覆された銀粉末は、還元剤不存在下または還元剤存在下の還元反応で表層の酸化銀が銀となり、低温度で隣接する粒子同士が融着する。表面が酸化銀処理された銀粉末は、還元反応条件;加熱温度、還元剤の有無、還元剤の還元力などに応じて組成、形状の異なったものを適宜選択することができる。酸化銀処理された銀粉末の体積平均粒径は、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm程度である。特に、平均粒径が0.5μm以下の粉末を用いると還元反応の速度が速くなり好ましい。酸化銀で表面処理された銀粉の銀含有率は60%以上が好ましく、70%以上がさらに好ましく、80%以上が特に好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、等が挙げられる。
陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、等が挙げられる。
本発明で使用される界面活性剤としては、アルキルアミンおよびアルキルアミン塩を好適に用いることができる。特に導電性粉末に銀粉を用いるとき一層効果的である。アルキルアミン系の非イオン性界面活性剤、およびアルキルアミン塩系の陽イオン性界面活性剤はそれぞれ単独で使用しても有効であるが、特に併用することによって分散性がより良好となり効果が顕著である。
アルキルアミン系の界面活性剤としてはポリオキシアルキレンアルキルアミン型の界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルアミン型の界面活性剤がさらに好ましい。中でも以下の化学構造(1)を有するものがさらに好ましい。
アルキルアミン系の界面活性剤とアルキルアミン塩系である陽イオン性界面活性剤とを併用する場合は、アルキルアミン系とアルキルアミン塩系との混合比率は1:20〜1:5の範囲が好ましい。
本発明で使用される界面活性剤として、リン酸エステル系の界面活性剤もまた好適に使用できる。特に導電性粉末に銀粉末を用いるときはより効果的である。
さらに本発明の製造方法に用いるリン酸エステル系界面活性剤としては、HLBが10以上のものを用いるか、または塩基性化合物を添加して酸価を中和して用いることが好ましい。
本発明の導電性塗料の製造方法中、分散工程においては、銀または銀化合物等の導電性粉末と界面活性剤との混合物とを溶剤中に添加し、攪拌機または分散機にかけて、導電性粉末の微細粉への解砕と界面活性剤との混合を行う。
このように、例えば銀粉と、溶剤と、界面活性剤とを所望の割合で混合して、分散手段により分散させた銀粉の分散液を得ることができるが、次工程で凍結乾燥を行う場合の銀粉の分散液中の固形分濃度の範囲は、0.5〜80%が好ましく、特に、1〜50%が好ましい。
これら溶剤はここに挙げたものに限定されるものではなく、その使用に際しては単独、或いは2種類以上混合して用いることができる。
使用可能な攪拌機または分散機としては、後述の公知の攪拌機または分散機の中から適宜選択して使用することができる。
配合後0.5〜4.0時間分散すると、銀粉等の導電性粉末が1次粒子へと解砕し、界面活性剤と導電性粉末とが吸着平衡に達する。
本発明の導電性塗料の製造方法においては、乾燥法として真空凍結乾燥を使用するため上記溶剤のなかから凍結し易い溶剤を選択して使用することが好ましく、その凝固点が−40℃以上であることが好ましい。
本発明の導電性塗料の製造方法において使用する真空凍結乾燥法においては、基本的に低温状態で凍結した分散液から、水系溶剤のみが昇華除去される。水系溶剤に溶出して失われる界面活性剤がないため、添加した界面活性剤のほとんど全てが処理後の導電性粉末中に残留する。図1に示すように、分散液中で界面活性剤bは導電性粉末の粒子aの表面付近に局在しており、水系溶剤のみが除去される真空凍結乾燥の実施時に、該界面活性剤bが導電性粉末の粒子aの表面に一様に吸着した状態で取り出せる可能性が高く、しかも、真空凍結乾燥以外の通常の方法にて水系溶剤を除去する時のように導電性粉末の粒子aや表面処理された導電性粉末の粒子c同士が凝集することがなく、極めて効率的な処理方法といえる。このように使用した界面活性剤b全てが導電性粉末の粒子aの表面に残留して、表面処理された導電性粉末cを収率良く与えるため、界面活性剤の効果と使用量の関係を把握し易く、使用量に対する最適化が行いやすい。
界面活性剤bの分子は、親水基側の末端で導電性粉末の粒子aの表面に吸着するため、疎水基側の末端が粒子の外側を向く。これにより、結着性樹脂との親和性が向上し、表面処理された導電性粉末cの分散性が改善される。また、粒子同士の凝集が抑制され、1次粒子に分散された状態を持続することができる。
このように真空凍結乾燥による乾燥方法では真空中で昇華蒸発させ、乾燥するため、乾燥による収縮がわずかであり、組織や構造が破壊しにくい。また、熱風乾燥のように高温で試料内での例えば水などの液体成分の移動による乾燥ではなく、固体の凍った状態で低温乾燥するため、液体成分の移動を伴う乾燥のような部分的成分濃縮、部分的成分変化、変形がほとんど無く好ましい。
前記分散工程と乾燥工程によって界面活性剤が表面に吸着した銀または銀化合物等の導電性粉末を用いて導電性塗料を製造するためには、前記表面処理済みの導電性粉末と、溶剤もしくは結着剤樹脂と溶剤とを混合して、適当な分散機を用いて銀または銀化合物の粉末を分散させる。
結着剤樹脂がアクリル樹脂である場合は、前記界面活性剤はアクリレート及び又はアクリル酸の重合体であることが好ましい。2−エチルへキシルアクリレートを含有するアクリレートの重合体が最も好ましい。
また、溶剤の使用量は塗布方法、印刷方法により異なり、適宜使用量を選択すればよい。
すなわち、印刷直前に添加溶剤、もしくは添加溶剤と添加結着剤との簡単な撹拌操作を行うことで、良好な銀塗料等の導電性塗料(導電性ペースト)が得られるため、印刷装置に付随する塗料調整用設備は簡単なもので良い。
また、分散をより確実に行うために以下の分散機を用いて分散処理を行っても良い。
塗布方法としては、種々の塗布方法により塗布物として形成することができる。例えば、公知のロール塗布方法等、具体的には、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押し出しコート、エアーナイフコート、スクイズコート、含侵コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート等により基体上に塗布物を形成することができる。
また、各種印刷方法を適用することも可能である。印刷法にはまた、凹版印刷のように最適粘度領域が比較的低粘度領域にあるものと、スクリーン印刷のように高粘度領域にあるものとが存在する。具体的には、孔版印刷方法、凹版印刷方法、平版印刷方法などを用いて基体上に所定の大きさに塗布物を印刷することができる。
また、印刷物の厚さは、印刷法によって異なるが、印刷物の湿時厚さが1〜20μmの範囲が好ましく、特に1〜10μmの厚さが好ましい。印刷物の乾燥後、単位体積当たりの電気抵抗(体積抵抗率)を上げるために、基材の著しい変形を生じない程度に、プレスあるいはカレンダー処理をしてもよい。
特に酸化銀の微粒子粉末または表面が酸化銀処理された銀粉を導電性粉末として用いた場合には、前記熱処理によって硬化と伴に酸化銀から銀へと還元させ、還元反応に伴って放出された酸素により周囲の界面活性剤や樹脂を酸化させ、発熱を得ることができる。この結果、酸化銀が還元された銀粉末の粒子同士を、純銀粉を用いた場合に比べて、より低温(例えば200℃以下)の熱処理で融着させることができる。したがって、酸化銀を含む導電性粒子を用いた導電性塗料は、塗布もしくは印刷時の基体の材料の耐熱性に対する要求を低くすることができるので、PETやPI、その他のプラスチックなどからなる基体に対して特に好適である。
結晶子径の小さい銀粉を用いて作製した、界面活性剤存在下の凍結乾燥処理による表面処理後の銀粉末のDSC分析の結果(図2に破線で示す。)では、銀粉の溶融を示す吸熱ピークが215℃に現れた。これは、銀粉の結晶子径が小さいため、従来よりも低い温度で溶融することを表す。
また、酸化銀処理した銀粉を用いて作製した、界面活性剤存在下の凍結乾燥処理による表面処理後の銀粉末のDSC分析の結果(図2に実線で示す。)では、銀粉の溶融を示す吸熱ピークが215℃に現れるとともに、134℃に発熱ピークが現れた。この発熱ピークは、該銀粉末の酸化銀が分解して酸素が放出され、表面の界面活性剤のカーボン成分を酸化して発熱反応が起こったためと考えられる。
以上の結果から明らかなように、界面活性剤存在下の凍結乾燥処理による表面処理後の銀粉末によれば、従来よりも低い温度で焼結、焼成が可能な銀塗料を製造することができる。
(1)膜厚:膜厚は、膜厚計K402B(アンリツ製)を用いて測定した。
(2)体積抵抗率:体積抵抗率は、四端子測定法の低抵抗率計ロレスターEP(三菱化学(株)製)にて測定した。試験片の導電性膜の膜厚から体積抵抗率を求めた。なお、体積抵抗率は、例えば、8.8×10−6Ω・cmを「8.8E−06Ω・cm」と記載する方法により示した。
中心粒径0.3μmの三井金属(株)製の10%酸化銀処理した銀粉FHD(結晶子径<10nm)50g、アルキルアミン塩の陽イオン性界面活性剤としてココナットアミンアセテートの10質量%水溶液を5g、アルキルアミンの界面活性剤としてポリオキシエチレンココナットアルキルアミンエーテルの10質量%水溶液を0.5g、溶媒である水50g、及び2mm径のジルコニアビーズ400gを250ccのポリ瓶に入れて混合し、回転機(ボールミル)を用いて4時間練肉して、銀粉の分散液(a1)を得た。
この銀塗料B−1を用いたスクリーン印刷により、PIフィルム上に50mm×80mmの長方形の印刷塗膜およびLine/Space=40μm/40μmの印刷パターンを形成し、スクリーン印刷塗膜を得た。長方形の印刷塗膜の平均厚さは12μmであった。一方、印刷パターンでの厚さの分布をレーザー顕微鏡(VK−9500キーエンス社製)で測定した。そのプロフィールを図4に示す。ここで、スクリーン版の仕様は640メッシュ、線径15μm、カレンダー厚22μm、乳剤厚10μmである。印刷パターンのピーク高さの平均値は11.9μmであった。
導電性粉末として、実施例1での酸化銀処理銀粉FHDに換えて、三井金属(株)製の酸化銀処理していない銀粉FHDを用い、界面活性剤として、リン含有率が4.4%のポリオキシアルキレンアルキルエーテル・リン酸エステルであり、重量平均分子量で1750、HLBが12であるリン酸エステル系界面活性剤の10質量%水溶液を5gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、銀粉の分散液(a2)を得て、次いで銀粉の表面処理物(b2)を50gを得た。このときの銀粒子の平均粒径は0.5μmであり、ほぼ実施例1と同様な粒径分布を示した。
導電性粉末として、実施例2での銀粉FHDに換えて、福田金属箔粉(株)製銀粉AgC−Gを用いた以外は、実施例2と同様の方法にて、銀粉の分散液(a3)を得て、次いで銀粉の表面処理物(b3)を50gを得た。このときの銀粒子の体積平均粒径は0.2μmであり、分布幅の狭い粒度分布を示した。
次に、前記銀粉の表面処理物(b3)から、実施例1と同様の方法で、銀塗料B−3を58.3g得た。該銀塗料B−3は経時的な粘度上昇や凝集を起こすことなく安定であった。実施例1と同様に印刷パターンを形成したマスクフィルムを用いて、銀塗料B−3をスクリーン印刷して、印刷塗膜を得た。さらに銀塗料B−3を用いて実施例1と同様の方法により、50μmの膜厚のベタ印刷を行い、乾燥後、160℃及び250℃のオーブン中に60分入れた後の体積抵抗を測定したところ、それぞれ4.5E−05Ω・cm、2.5E−05Ω・cmを示した。
導電性粉末として、三井金属(株)製の酸化銀処理していない銀粉FHD50gと、界面活性剤として、水溶液にしていないポリオキシアルキレンアルキルエーテル・リン酸エステルを0.5gと、バインダー樹脂(ポリオール成分として「バーノックDE−140−70」(大日本インキ化学工業(株)製)および「バーノックDB980」(大日本インキ化学工業(株)製)、イソシアヌレートプレポリマー成分として「バーノックDB980K」(大日本インキ化学工業(株)製)の混合物の溶剤成分を酢酸カルビトールに置換したもの)4.17g(固形分=2.5g)と、酢酸カルビトール4.2gとを、250ccのポリ瓶に入れて混合し、振とう機(ペイントコンディショナー)を用いて0.5時間混合攪拌した後、3本ロールにて分散を試みたが、良好な分散を行うことができず、銀塗料を得ることができなかった。
バインダー樹脂(ポリオール成分とイソシアヌレートプレポリマー成分の混合物の溶剤成分を酢酸カルビトールに置換したもの)の仕込量を10.0g(固形分=6.0g)にする以外は比較例1と同様の方法にて3本ロールの分散を試み、銀塗料B−4を得た。
次に、印刷パターンを形成したマスクフィルムと銀塗料B−4を用いたスクリーン印刷により、実施例1と同様の方法で印刷塗膜と印刷パターンを得た。印刷パターンのプロフィールを図6に示す。印刷パターンのピーク高さの平均値は8.4μmであった。乾燥後、160℃のオーブン中に60分入れた後の体積抵抗率を測定したところ、2.5E−03Ω・cmを示した。
これに対して凍結乾燥を利用せずに同様の配合で導電性塗料を作製することを試みた比較例1では、良好な分散をした銀塗料が得られず、また樹脂の配合量を増加した比較例2では銀塗料は得られたが、樹脂成分が増えたため良好な導電性とスクリーン印刷時の高い膜厚は得られなかった。
実施例1及び実施例3で作製した導電性塗料(銀ペースト)において、銀粉の表面処理物とバインダー樹脂との比率を変えることにより、種々の銀含有率を有する銀塗料を調製した。さらにこれらの銀塗料を使用して、印刷パターンを形成したマスクフィルムを用いたスクリーン印刷により、印刷塗膜を得た。このときの塗膜中の銀含有率と、体積抵抗率との関係を図8に示す。
また、図8の「従来技術1」とは、株式会社情報機構が主催したセミナー「ナノ粒子による導電性ペースト調製と回路形成技術」(平成16年4月20日、川崎市産業振興会館)の要旨集の第10ページに、本多俊之氏(藤倉化成株式会社)が発表したデータを引用したものである。
それに対して、前記の従来技術1に記載された従来の銀ペーストでは、塗膜中の銀含有率が90%以上になると導電性がかえって低下する結果となっている。これは、バインダー樹脂量が少ないときに銀粉の分散状態が悪くなったためと考えられる。
Claims (6)
- 銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末を、界面活性剤存在下に、水および/または水溶性溶剤からなる溶剤中に分散させ水性分散液を製造する分散工程、前記分散液を真空凍結乾燥させる乾燥工程、及び前記乾燥工程の生成物を溶剤及び結着剤樹脂と混合し、樹脂/導電性粉末の質量比が0.0001〜0.1の塗料を作製する塗料化工程を有し、該塗料より形成される塗膜の熱処理工程の温度が300℃以下であることを特徴とするスクリーン印刷用導電性塗料の製造方法。
- 前記界面活性剤がアルキルアミン、またはアルキルアミン塩である請求項1に記載の導電性塗料の製造方法。
- 前記界面活性剤がリン酸エステル系の界面活性剤である請求項1に記載の導電性塗料の製造方法。
- 前記導電性粉末の体積平均粒径が0.05〜10μmの範囲である請求項2または3に記載の導電性塗料の製造方法。
- 前記導電性粉末の体積平均粒径が0.05〜5μmの範囲である請求項4に記載の導電性塗料の製造方法。
- 前記導電性粉末は表面が酸化銀で被覆され銀含有率が60%以上である銀粉である請求項4または5に記載の導電性塗料の製造方法。
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