JP2019218590A - 銅粉の製造方法及び銅粉 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹枝状の形状を構成する銅粉を工業的に効率よく製造することができ、また低コストで樹枝状の形状を構成する銅粉の比表面積値を適切な範囲内に制御する銅粉の製造方法を提供すること。【解決手段】銅イオンを含む電解液を用いる電解処理により、陰極上に銅粒子が集合して複数の枝を有する樹枝状の形状を構成する銅粉を析出させる銅粉の製造方法であって、電解処理において、電極に供給する電流のオンとオフとを所定の周期で切り替えるPCパルス電解、又は、電極に供給する電流の供給方向を順方向と逆方向とで所定の周期で切り替えるPRパルス電解を実行する、銅粉の製造方法である。【選択図】図2

Description

本発明は、銅粉の製造方法及び銅粉に関する。
電子機器における配線層や電極等の形成には、樹脂型ペーストや焼成型ペーストのような、銀粉や銅粉等の金属フィラーを使用したペーストが多用されている。
すなわち、銀や銅の金属フィラーを含むペーストを各種基材上に塗布又は印刷した後、加熱硬化あるいは加熱焼成することによって、配線層や電極等となる導電膜を形成することができる。
例えば、樹脂型導電性ペーストは、金属フィラーと、樹脂、硬化剤、溶剤等からなり、導電体回路パターン又は端子の上に印刷し、100℃以上200℃以下で加熱硬化させて導電膜として配線や電極を形成する。樹脂型導電性ペーストは、熱によって熱硬化型樹脂が硬化収縮するため、金属フィラーが圧着されて接触することで金属フィラーが重なり、電気的に接続した電流パスが形成される。この樹脂型導電性ペーストは、硬化温度が200℃以下で処理されることから、プリント配線板等の熱に弱い材料を使用している基板に用いられていることがある。
また、焼成型導電性ペーストは、金属フィラーと、ガラス、溶剤等からなり、導電体回路パターン又は端子の上に印刷し、600℃以上800℃以下に加熱焼成させて導電膜として配線や電極を形成する。焼成型導電性ペーストは、高い温度によって処理することで、金属フィラーが焼結して導通性が確保されるものである。この焼成型導電性ペーストは、焼成温度が高いため、樹脂材料を使用するようなプリント配線基板には使用できないものの、高温処理で金属フィラーが焼結することから低抵抗を実現することが可能となる。そのため、焼成型導電性ペーストは、積層セラミックコンデンサの外部電極等に用いられる。
これらの樹脂型導電性ペーストや焼成型導電性ペーストに使用される金属フィラーとしては、低コスト化傾向により銀粉より安価な銅粉の使用する傾向にある。
さて、その銅粉に関して、デンドライト状と呼ばれる樹枝状に析出した電解銅粉が知られている。デンドライト状の電解銅粉は、針状に1次成長した銅から2次方向に枝分かれして針状に銅が成長し、さらに2次方向から3次方向に針状に成長する等して分岐しながら成長する経緯を経て形成されるものであり、さらに、それぞれの枝も幅が広がる等してあたかも枝に木の葉が成長するような形状となる。このように樹枝状の銅粉は、一つの銅粉の表面積が大きく、成形性や焼結性が優れている点から、粉末冶金用途として含油軸受けや機械部品等の原料として使用されている。特に、含油軸受け等では、小型化が進み、それに伴い多孔質化や薄肉化、並びに複雑な形状が要求されるようになっている。それの要求を満足するために、例えば特許文献1では、樹枝状の形状をより発達させることで、圧縮成形時に隣接する銅粉の樹枝が互いに絡み合って強固に連結するようにして、高い強度に成形できることが示されている。
また、導電性ペーストや電磁波シールド用の金属フィラーとして利用する場合には、樹枝状の形状であることから、球状と比べて接点を多くできることを利用することができるとしている。
しかしながら、樹枝状銅粉を導電性ペースト用途に使用する場合には、通常の樹枝状銅粉では粒子サイズが非常に大きい。そのために、例えば特許文献2では、樹枝状銅粉に酸化防止用の油を付着させた後にジェットミルで粉砕して微細化するとしている。
また、例えば特許文献3では、良好な半田付け性を有し半田付け可能な導電性塗料用銅粉として、粒子形状の樹枝状銅粉を解砕して得た、棒状であって最大粒径が44μm以下の樹枝状銅粉を、粉砕装置により解砕して平均粒径10μm以下の棒状銅粉とし、この銅粉を無機酸又は有機酸からなる酸洗い液で処理してその銅粉表面の酸化被膜を溶解除去し水洗した後、早乾性有機溶媒を散布し、熱風乾燥して、半田付け可能な導電性塗料用銅粉を製造する方法が示されている。
また、例えば特許文献4においても、導電性ペースト等の金属フィラーとして使用するには、樹枝状電解銅粉そのままの形状では使用できないため、大気雰囲気中又は不活性雰囲気中において高圧ジェット気流旋回渦方式のジェットミルを用いて粉砕及び緻密化して平均粒径1〜6μmの球状あるいは粒状の微小銅粉を得るとしている。
さらに樹枝状銅粉の製造方法として、特許文献5には、電解槽の大きさ、電極枚数、電極間距離、及び電解液の循環量を調整して、電極付近の電解液の銅イオン濃度を低く調整し、少なくとも電解槽底部の電解液の銅イオン濃度よりも電極間の電解液の銅イオン濃度が常に薄くなるように調整することによって、好適なデンドライト状銅粉が得られることが示されている。
また特許文献6には、酸性硫酸銅電解浴中にゼラチンと塩素を添加して電解銅粉を作製することによって、数μmの微細な銅粉が得られることが示されている。
特許第4697643号公報 特許第4230017号公報 特開平6−158103号公報 特許第5181434号公報 特許第5320442号公報 特開平2−138491号公報
ここで、樹枝状銅粉を導電性ペーストや電磁波シールド用樹脂等の金属フィラーとして利用する場合、樹脂中の金属フィラーが樹枝状に発達した形状であると、その樹枝状銅粉同士が絡み合って凝集が発生して樹脂中に均一に分散しないという問題や、凝集によりペーストの粘度が上昇して印刷による配線形成に問題が生じることが特許文献1で指摘されている。
しかしながら、導電性を良好なものとするためには、上述したように樹枝状の方が粒状よりも接点を確保しやすいことから、導電性ペーストや電磁波シールドとして高い導電性を確保することができて有効な形状であると言える。よって、高い導電性を確保しつつ、且つ、樹枝状銅粉同士が凝集しないようにその形状を制御することができれば、より効果的な導電性ペーストや電磁波シールド用樹脂等の金属フィラーとして利用することが可能となる。
一方、特許文献5に記載の手法を実操業の量産プロセスに応用しようとすると、上述した製造条件を一定に管理することは容易なことではなく、特に電解槽内の銅濃度イオンを不均一に管理することは、技術的に高度な管理を要する。また、特許文献6に記載の手法は、ゼラチンと塩素の相互作用によって、電析する銅粉を特定方位に成長させて微細な銅粉を得るものであるが、得られる銅粉の形状は球状であって樹枝状ではない。
本発明は、上述したような実情に鑑みて提案されたものであり、銅粒子が集合して構成される銅粉の平均粒子径を小さくすることのできる銅粉の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、電解処理において、所定のパルス電解を実行する銅粉の製造方法であれば上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第一は、銅イオンを含む電解液を用いる電解処理により、陰極上に銅粒子が集合して複数の枝を有する樹枝状の形状を構成する銅粉を析出させる銅粉の製造方法であって、前記電解処理において、電極に供給する電流のオンとオフとを所定の周期で切り替えるPCパルス電解、又は、電極に供給する電流の供給方向を順方向と逆方向とで所定の周期で切り替えるPRパルス電解を実行する、銅粉の製造方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記PCパルス電解により処理を行い、前記電極に供給する電流をオンにする供給時間Xと、前記電極に供給する電流をオフにする中断時間Yとの比X/Yが1以上100以下である、銅粉の製造方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1の発明において、前記PRパルス電解により処理を行い、前記電極に供給する電流を順方向に供給する順方向供給時間Aと、前記電極に供給する電流を逆方向に供給する逆方向供給時間Bとの比A/Bが2以上1000以下である、銅粉の製造方法である。
(4)本発明の第4の発明は、銅粒子が集合して複数の枝を有する樹枝状の形状を構成する銅粉であって、前記銅粒子は、短軸径が0.2μm以上0.5μm以下、かつ、長軸径が0.5μm以上2.0μm以下の範囲の大きさの楕円形であり、楕円形の前記銅粒子が集合して構成される当該銅粉の平均粒子径(D50)が0.5μm以上10.0μm以下であり、BET比表面積値が0.3m/g以上5.0m/g以下である、銅粉である。
(5)本発明の第5の発明は、第4の発明において、当該銅粉の平均粒子径(D50)が0.5μm以上5.0μm未満である、銅粉である。
(6)本発明の第6の発明は、第4又は第5の発明において、嵩密度が0.3g/cm以上5.0g/cm以下である、樹枝状銅粉である。
(7)本発明の第7の発明は、第4から第6のいずれかの発明において、銅粉を全体の20質量%以上の割合で含む、金属フィラーである。
(8)本発明の第8の発明は、第7の発明において、金属フィラーを樹脂に混合させてなる導電性ペーストである。
(9)本発明の第9の発明は、第7の発明において、金属フィラーを樹脂に分散させてなる電磁波シールド用の導電性塗料である。
(10)本発明の第10の発明は、第7の発明において、金属フィラーを樹脂に分散させてなる電磁波シールド用の導電性シートである。
(11)本発明の第11の発明は、第7の発明において、金属フィラーを樹脂に分散させてなる帯電防止塗料である。
本発明によれば、銅粒子が集合して構成される銅粉の平均粒子径を小さくすることができる銅粉の製造方法を提供することができる。
本発明の樹枝状銅粉の具体的な形状を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したときの写真図(SEM像)である。 本発明の樹枝状銅粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したときの写真図(SEM像)である。 本発明の樹枝状銅粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率5,000倍で観察したときの写真図(SEM像)である。 比較例1にて得られた銅粉を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したときの写真図(SEM像)である。 PCパルス電解において、供給する電流の供給時間Xと中断時間YのPCパルス時間比(X/Y)と、析出する樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)との関係を示すグラフ図である。 PRパルス電解において、供給する電流の順方向供給時間Aと逆方向供給時間BとのPCパルス時間比(A/B)と、析出する樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)との関係を示すグラフ図である。
以下、本発明に係る銅粉の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
≪1.樹枝状銅粉の形状≫
図1は、本実施の形態に係る銅粉の形状を示したSEM像である。図1に示すように、本実施の形態に係る銅粉1は、複数の枝を持つ樹枝状の形状をもつ銅粉(以下、本実施の形態に係る銅粉を「樹枝状銅粉」ともいう。)である。この樹枝状銅粉1は、楕円形の形状を有する微細銅粒子2が集合して構成されており、より具体的に、その微細銅粒子は、短軸径が0.2μm以上0.5μm以下であり、長軸径が0.5μm以上2.0μm以下の範囲の大きさの楕円形銅粒子である。そして、この楕円形銅粒子の集合体である樹枝状銅粉1は、平均粒子径(D50)が0.5μm以上10.0μm以下である。
この樹枝状銅粉1は、詳しくは後述するが、例えば、銅イオンを含む硫酸酸性の電解液に陽極と陰極を浸漬し、PCパルス電解又はPRパルス電解により電流を流して電気分解することにより陰極上に析出させて得ることができる。すなわち、粉砕、解砕等の物理的な処理を施すことなく、上述したような小さな粒径の樹枝状銅粉1を電解により析出形成することができる。
図2及び図3は、樹枝状銅粉1について走査型電子顕微鏡(SEM 日本電子株式会社製、JSM−7100F)により観察したときの観察像の一例を示す写真図である。なお、図2は樹枝状銅粉1を倍率10,000倍で観察したものであり、図3は樹枝状銅粉1を倍率5,000倍で観察したものである。
図2及び図3の観察像に示されるように、本実施の形態に係る銅粉1は、樹枝状の析出状態を呈している。そして、この樹枝状銅粉1は、楕円形の形状を有する微細銅粒子2が集合することで樹枝状の形状を形成している。
ここで、例えば特許文献1でも指摘されているように、樹枝状銅粉の問題点としては、導電性ペーストや電磁波シールド用樹脂等の金属フィラーとして利用する場合に、樹脂中の金属フィラーが樹枝状に発達した形状であると、樹枝状の銅粉同士が絡み合って凝集が発生し、樹脂中に均一に分散しないことがある。また、その凝集により、ペーストの粘度が上昇して印刷による配線形成に問題が生じる。このことは、樹枝状銅粉の粒子サイズ(粒子径)が大きいために発生するものであり、樹枝状の形状を有効に活かしながらこの問題を解決するためには、樹枝状銅粉の粒子径を小さくすることが必要となる。
しかしながら、粒子径を小さくし過ぎると、樹枝状の形状を保つことができなくなる。そのため、樹枝状形状であることの効果、すなわち3次元的形状であることにより表面積が大きく、成形性や焼結性に優れ、また枝状の箇所を介して強固に連結されて高い強度に成形できるという効果を発揮するには、樹枝状銅粉の平均粒子径が所定の範囲であることが必要となる。
具体的には、樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)は、0.5μm以上10.0μm以下であることが好ましい。樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)が0.5μm以上であることにより、銅粉を樹脂状の形状に呈することができることとなり、樹枝状の形状の銅粉同士の接点を確保する性能を得ることができる。樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)が10.0μm以下であることにより、樹枝状銅粉同士の接点が多くなり、導電性を向上させることができる。更に、平均粒子径(D50)が0.5μm以上10.0μm以下であることにより、表面積が大きくなり、良好な成形性や焼結性を確保することができる。平均粒子径(D50)は0.5μm以上10.0μm以下がよく、好ましくは0.5μm以上5.0μm未満であり、より好ましくは2.0μm以上5.0μm未満である。なお、平均粒子径(D50)の測定方法は、例えば、レーザー回折・散乱法粒度分布測定器を用いて測定することができる。
そして、樹枝状銅粉はこのように樹枝状形状であることに加えて、上述した所定の短軸径及び長軸径を有する楕円形形状の微細銅粒子が集合して樹枝状を形成しているため、樹枝状であることの3次元的効果と、楕円形の微細銅粒子により樹枝状に形成されていることの効果により、樹枝状銅粉同士の接点をより多く確保することができる。
また、樹枝状銅粉のBET比表面積値としては、0.3m/g以上5.0m/g以下の範囲であることが好ましい。BET比表面積値が0.3m/g未満であると、粒子状の形状に近い形となり、樹枝状銅粉の形状とはならないことがあり、高い導電性が得られないことがある。一方で、比表面積が5.0m/gを超えると、凝集が生じやすくなってペースト化に際して樹脂中に均一に分散させることが困難となる。なお、BET比表面積値は、比表面積・細孔分布測定装置を用いて、JIS Z8830:2013に準拠した方法により測定することができる。
また、樹枝状銅粉の嵩密度としては、0.3g/cm以上5.0g/cm以下の範囲であることが好ましい。嵩密度が0.3g/cm未満であると、樹枝状銅粉同士の接点を十分に確保することができない可能性がある。一方で、嵩密度が5.0g/cmを超えると、樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)も大きくなり、表面積が小さくなって成形性や焼結性が悪化することがある。なお、樹枝状銅粉の嵩密度は、メスシリンダーに秤量し、振とう比重測定器により、所定回数のタッピングさせたときの体積を読み取り、試料質量を振とう後の体積で除することにより求めることができる。
なお、電子顕微鏡で観察したときに、観察視野内の銅粉の中に上述したような形状の樹枝状銅粉が所定の割合で占められていれば、それ以外の形状の銅粉が混じっていても、その樹枝状銅粉のみからなる銅粉と同様の効果を得ることができる。具体的には、電子顕微鏡(例えば500倍〜20,000倍)で観察したときに、観察視野内に上述した形状の樹枝状銅粉が全銅粉のうちの65個数%以上、好ましくは80個数%以上、より好ましくは90個数%以上の割合を占めていれば、その他の形状の銅粉が含まれていてもよい。
≪2.樹枝状銅粉の製造方法≫
本実施の形態に係る樹枝状銅粉は、例えば、銅イオンを含む硫酸酸性溶液を電解液として用いて、所定の電解法により製造することができる。
電解(電気分解)に際しては、例えば、金属銅を陽極(アノード)とし、ステンレス板やチタン板等を陰極(カソード)として設置した電解槽中に、硫酸酸性の電解液を収容し、その電解液に所定の電流密度で直流電流を通電することによって電解処理を施す。これにより、その通電に伴って陰極上に微細な樹枝状銅粉を析出(電析)させることができる。特に、本実施の形態においては、電解により得られた粒状等の銅粉をボール等の媒体を用いて機械的に変形加工等することなく、その電解のみによって、楕円形の微細銅粒子2が集合して樹枝状を形成した樹枝状銅粉1を陰極表面に析出させることができる。
(1)電解液について
電解液としては、例えば、銅イオンと、硫酸と、ノニオン系界面活性剤及び塩化物イオン等の添加剤と、を含むものを用いることができる。以下これらについて説明する。
[銅イオン]
銅イオンは、水溶性銅塩を用いて供給することができる。水溶性銅塩としては、例えば、硫酸銅五水和物等の硫酸銅、硝酸銅等が挙げられるが、特に限定されない。また、水溶性銅塩として酸化銅を用い、後述する硫酸溶液で溶解して銅イオンを含む硫酸酸性溶液にしてもよい。
電解液中での銅イオン濃度としては、特に限定されないが、上限としては20g/L以下であることが好ましく、15g/L以下であることがより好ましく、10g/L以下であることがさらに好ましい。銅イオン濃度が高すぎると、電解の際に陰極に樹枝状銅粉を形成することが難しくなり、被膜状の電解銅が形成される可能性があるが、20g/L以下の銅イオン濃度であることにより問題なく樹枝状銅粉を析出させることができる。一方で銅イオンの濃度の下限としては、1g/L以上であることが好ましく、5g/L以上であることがより好ましい。電解の際に、陰極から樹枝状銅粉を効率よく析出できることを考慮すると、1g/L以上の濃度であることが好ましい。
[硫酸(硫酸酸性の電解液)]
本実施の形態においては、電解液が硫酸酸性のものである。硫酸酸性の電解液とするために硫酸を含む。
電解液中の硫酸の濃度としては、遊離硫酸濃度として20g/L以上であることが好ましく、50g/L以上であることがより好ましい。電解液中の硫酸の濃度としては、遊離硫酸濃度として300g/L以下であることが好ましく、150g/L以下であることがより好ましい。硫酸の濃度は、電解液の電導度に影響するため、陰極上に得られる銅粉の均一性に関わる。また、硫酸の濃度は、銅イオンの溶解度にも影響する。硫酸濃度が低すぎる場合、又は高すぎる場合のいずれであっても、銅イオンの溶解度が低くなり、電解液中に硫酸銅の結晶が析出される可能性がある。
[添加剤]
本実施の形態においては、硫酸酸性の電解液に、ノニオン系界面活性剤と、ポリビニルアルコールと、塩化物イオンと、を添加物として含んでもよい。電解液中に添加するこれら添加剤の量に応じて、比表面積値が異なる樹枝状銅粉が析出するようになるため、所望とする比表面積に応じて添加量を変化させる必要があるが、ノニオン系界面活性剤としては1mg/L以上10000mg/L以下、塩化物イオンとしては1mg/L以上500mg/L以下の含有濃度となるように添加することによって、樹枝状銅粉の粒子径を制御することができる。
(ノニオン系界面活性剤)
ノニオン系界面活性剤としては、分子構造や分子量が異なる界面活性剤を1種単独で又は2種以上を併せて用いる。
ノニオン系界面活性剤の数平均分子量としては、特に限定されないが、100以上200000以下であることが好ましく、200以上15000以下であることがより好ましく、1000以上10000以下であることがさらに好ましい。数平均分子量が100未満であると、樹枝状を呈しない微細な電解銅粉が析出される可能性がある。一方で、数平均分子量が200000を超えると、平均粒子径の大きな電解銅粉が析出するおそれがある。なお、本実施の形態において、数平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求めたポリスチレン換算の分子量とする。
ノニオン系界面活性剤の種類としては、特に限定されないが、エーテル基を有するノニオン系界面活性剤であることが好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンイミン、プルロニック型界面活性剤、テトロニック型界面活性剤、ポリオキシエチレングリコール・グリセリンエーテル、ポリオキシエチレングリコール・ジアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール・アルキルエーテル、芳香族アルコールアルコキシレート、下記(x)式で表される高分子化合物等が挙げられ、これらのノニオン系界面活性剤を1種単独で、又は2種以上を併せて用いることができる。
より具体的に、ポリエチレングリコールとしては、例えば下記式(i)で表されるものを用いることができる。
(式(i)中、n1は、1〜120の整数を示す。)
また、ポリプロピレングリコールとしては、例えば下記式(ii)で表されるものを用いることができる。
(式(ii)中、n1は、1〜90の整数を示す。)
また、ポリエチレンイミンとしては、例えば下記式(iii)で表されるものを用いることができる。
(式(iii)中、n1は、1〜120の整数を示す。)
また、プルロニック型界面活性剤としては、例えば下記式(iv)で表されるものを用いることができる。
(式(iv)中、n2及びl2は1〜30の整数を、m2は10〜100の整数を示す。)
また、テトロニック型界面活性剤としては、例えば下記式(v)で表されるものを用いることができる。
(式(v)中、n3は1〜200の整数を、m3は1〜40の整数を示す。)
また、ポリオキシエチレングリコール・グリセリルエーテルとしては、例えば下記式(vi)で表されるものを用いることができる。
(式(vi)中、n4、m4、及びl4はそれぞれ1〜200の整数を示す。)
また、ポリオキシエチレングリコール・ジアルキルエーテルとしては、例えば下記式(vii)で表されるものを用いることができる。
(式(vii)中、R及びRは水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を示し、n5は2〜200の整数を示す。)
また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール・アルキルエーテルとしては、例えば下記式(viii)で表されるものを用いることができる。
(式(viii)中、Rは水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を示し、m6又はn6は2〜100の整数を示す。)
また、芳香族アルコールアルコキシレートとしては、例えば下記式(ix)で表されるものを用いることができる。
(式(ix)中、m7は1〜5の整数、n7は1〜120の整数を示す。)
また、下記(x)式で表される高分子化合物を用いることができる。
(式(x)中、Rは、炭素数5〜30の高級アルコールの残基、炭素数1〜30のアルキル基を有するアルキルフェノールの残基、炭素数1〜30のアルキル基を有するアルキルナフトールの残基、炭素数3〜25の脂肪酸アミドの残基、炭素数2〜5のアルキルアミンの残基、又は水酸基を示し、R及びRは、水素原子又はメチル基を示し、m及びnは、1〜100の整数を示す。)
(ポリビニルアルコール等)
ポリビニルアルコールとしては、通常のポリビニルアルコールを使用してもよいし、例えば下記一般式(xi)で表される高分子化合物であって、けん化度や平均重合度が異なる変性ポリビニルアルコールを1種単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
変性ポリビニルアルコールのけん化度(上記(xi)の式中のa、bを用いて「a/(a+b)×100」で表される)は50mol%以上99mol%以下であることが好ましく、55mol%以上85mol%以下であることがより好ましく、60mol%以上85mol%以下であることがさらに好ましい。けん化度が50mol%未満であると、樹枝状を呈しない微細な電解銅粉が析出される可能性がある。
変性ポリビニルアルコールは、平均重合度(上記(xi)の式中a、bを用いて「a+b」で表される)が50以上4000以下のものが好ましく、100以上3000以下であることがより好ましく、100以上1500以下であることがさらに好ましい。平均重合度が50未満であると、樹枝状を呈しない微細な電解銅粉が析出される可能性がある。一方で、平均重合度が4000を超えると、水溶液の粘度が高くなり溶解性が低下するなど取扱い上難しくなる。
また、上記式(xi)の変性ポリビニルアルコール代わりに、上記式(xii)のポリマーを使用することもできる。上記式(xii)のポリマーのX及びYは、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、イソシアネート基を導入されたものや、各種の塩によって変性されたもの、その他アニオンあるいはカチオン変性されたもの、不飽和変性されたもの、アルデヒド類によってアセタール変性(ブチラール変性、アセトアセタール変性、ホルマール変性等)されたもの、ジオール構造を導入されたものなども、使用可能なポリビニルアルコールの範囲に含まれる。上記式(xii)のポリマーは、上記式(xi)の変性ポリビニルアルコールと共に使用してもよいし、上記式(xii)のポリマー単独もしくは上記式(xii)のポリマーを2種類以上併せて使用することもできる。
上述したけん化度の範囲に含まれる市販のポリビニルアルコールや上記式(xi)の変性ポリビニルアルコール、上記式(xii)のポリマーとしては、例えば、株式会社クラレ製のクラレポバールや、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノール、電気化学工業株式会社製のデンカポバール、日本酢ビ・ポバール株式会社製のJ−ポバールなどの商品名で、種々のグレードを市場より入手することができる。
また、株式会社クラレ製のクラレCポリマー(カチオン変性ポリビニルアルコール)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセラン(スルホン酸基変性ポリビニルアルコール)、ゴーセファイマーK(カチオン変性ポリビニルアルコール)、ゴーセファイマーZ(アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール)、ゴーセナール(カルボキシル基変性ポリビニルアルコール)、日本酢ビ・ポバール株式会社製のDポリマー(カルボニル基変性ポリビニルアルコール)、Aシリーズ(カルボキシル基変性ポリビニルアルコール)、などの商品名で市場から入手することができるが、これらに限定されるものではない。
(塩化物イオン)
塩化物イオンとしては、塩化物イオンを供給する化合物(塩化物イオン源)を電解液中に添加することによって含ませることができる。塩化物イオンは、上述したアミン化合物等の添加剤と共に、析出する銅粉の形状制御に寄与する。塩化物イオン源としては、特に限定されないが、塩酸、塩化ナトリウム等を挙げることができる。電解液中の塩化物イオン濃度としては、1mg/L以上1000mg/L以下、好ましくは25mg/L以上800mg/L以下、より好ましくは50mg/L以上500mg/L以下とすることができる。
(2)電解処理について
ここで、本実施の形態に係る銅粉の製造方法では、上述した銅イオンを含む電解液を用いる電解処理において、PCパルス電解、又は、PRパルス電解を実行することを特徴とする。このように電解処理において、PCパルス電解、又は、PRパルス電解を実行することにより、銅粒子が集合して構成される銅粉の平均粒子径を小さくすることができる。以下、PCパルス電解及びPRパルス電解について各々説明する。
(PCパルス電解)
PCパルス電解は、電極に供給する電流のオンとオフとを所定の周期で切り替える電解処理方法である。本発明者の研究により、PCパルス電解を実行することにより、銅粒子が集合して構成される銅粉の平均粒子径を小さくすることができることが見出された。更に、PCパルス電解における処理条件を調整することにより、陰極上に析出する銅粉の粒子径を制御することができる。具体的には、PCパルス電解による処理において、供給する電流をオンにする供給時間Xと、電極に供給する電流をオフにする中断時間Yと、の比を調整すること等が該当する。
図5に電極に供給する電流をオンにする供給時間Xと、電極に供給する電流をオフにする中断時間Yと、関係X/Yが1以上100以下の範囲内で変化させた場合に析出する樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)の測定結果を示す。図5の結果に示されるように、PCパルス電流の供給時間Xと中断時間Yの比を変えることで析出する樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)が変化することが分かる。そして、PCパルス時間比(X/Y)が小さい(すなわち、中断時間Yが長い)ほど、樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)が小さくより微細な樹枝状銅粉を作製することができることが分かる。
PCパルス電解を実行することにより、樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)が小さくなるメカニズムは必ずしも定かでないが、電極に供給する電流がオンにすることにより核を基点として微細銅粒子の成長が進む。そして、電極に供給する電流をオフにしたときには、その微細銅粒子の成長は一度止まる。その後、再び電極に供給する電流がオンにすることにより、成長が止まった微細銅粒子が再び成長することとなるが、一部の微細銅粒子はそのまま成長せずに、別の核を基点として成長が進み、新たな微細銅粒子を形成することとなる。すなわち、電極に供給する電流のオンとオフとを所定の周期で切り替えることにより、電極に供給する電流のオンのままである場合と比べ、微細銅粒子の成長の起点となる核が増えることとなる。これにより、樹枝状銅粉の微細銅粒子自体の数が増えることで、1つの微細銅粒子の成長が抑制され、樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)自体が減少するものであると推認される。
電極に供給する電流をオンにする供給時間Xと、電極に供給する電流をオフにする中断時間Yと、関係X/Yは、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。X/Yは、100以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。
(PRパルス電解)
本発明者の研究により、PRパルス電解を実行することにより、銅粒子が集合して構成される銅粉の平均粒子径を小さくすることができることが見出された。更に、PRパルス電解における処理条件を調整することにより、陰極上に析出する銅粉の粒子径を制御することができる。具体的には、例えば電極に供給する電流を順方向に供給する順方向供給時間Aと、電極に供給する電流を逆方向に供給する逆方向供給時間Bと、の比を調整すること等が該当する。
図6に電極に供給する電流を順方向に供給する順方向供給時間Aと、電極に供給する電流を逆方向に供給する逆方向供給時間Bと、関係A/Bが2以上1000以下の範囲内で変化させた場合に析出する樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)の測定結果を示す。図6の結果に示されるように、PRパルス電流の順方向供給時間Aと逆方向供給時間Bの比を変えることで析出する樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)が変化することが分かる。そして、PRパルス時間比(A/B)が小さい(すなわち、逆方向供給時間Bが長い)ほど、樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)が小さくより微細な樹枝状銅粉を作製することができることが分かる。
PRパルス時間比(A/B)が小さいほど、樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)が小さくすることができる理由は上述したPCパルスと同様に、電極に供給する電流が順方向のままである場合と比べ、微細銅粒子の成長の起点となる核が増えるためであると推認される。
PRパルス電解の場合、電極に供給する電流を逆方向に供給することにより、一度陰極に析出した銅粉が電気分解されることで再び銅イオンとして溶解し、樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)は小さくなる。そのため、上述したPCパルス電解と比べて、順方向供給時間Aと逆方向供給時間Bと、の関係A/Bが小さくなるほど樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)はより顕著に小さくなる。すなわち、A/Bを調整することにより、樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)は顕著に変化することとなる。そのため、樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)を適切な範囲内に調整する方法として、PRパルス電解により処理を行い、樹枝状の形状を構成する銅粉を析出させることが特に好ましい。
電極に供給する電流を順方向に供給する順方向供給時間Aと、電極に供給する電流を逆方向に供給する逆方向供給時間Bと、関係A/Bは、2以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。A/Bは、1000以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。
(その他の条件)
硫酸酸性の電解液を用いて電解するにあたっては、電流密度としては5A/dm以上30A/dm以下の範囲とすることが好ましく、電解液を撹拌しながら通電させる。また、電解液の液温(浴温)としては、20℃以上60℃以下とするのが好ましく、25℃以上50℃以下とするのがより好ましい。電解液の液温が20℃未満であると、電流効率が著しく低下して樹枝状銅粉の析出効率が低下する可能性がある。一方で、液温が60℃を超えると、電解液にノニオン系界面活性剤添加した場合には、ノニオン系界面活性剤の分解がより速く進行して、樹枝状銅粉の析出効率が低下する可能性がある。
また、上述したPRパルス電解において、印加するパルスの電流密度を変更してもよいい。すなわち、電流の供給方向を順方向にして電極に供給する電流の電流密度aと電流の供給方向を逆方向にして電極に供給する電流の電流密度bとが異なった状態で電解処理を行ってもよい。
電流密度aと電流密度bとの比は、求める銅粉の平均粒子径によって設定すればよく、限定するものではないが、電流密度bは電流密度aよりも高くして、逆方向の印加時間を短くすることで、析出効率を向上させることができる。そのため、順方向と逆方向の印加する電流密度の比(順方向の電流密度/逆方向の電流密度)は、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。順方向と逆方向の印加する電流密度の比は、順方向の電流密度/逆方向の電流密度で1以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。
≪3.導電性ペースト、導電塗料等の用途≫
上述した製造方法により得られる樹枝状銅粉は、短軸径が0.2μm以上0.5μm以下であり、長軸径が0.5μm以上2.0μm以下の範囲の大きさの楕円形形状を有する微細銅粒子が集合して樹枝状に構成されており、平均粒子径(D50)が0.5μm以上10.0μm以下である。このような樹枝状銅粉によれば、球状銅粉よりも接点の数を多く確保することができ、優れた導電性を発揮する。
また、このような比表面積を有する微細な樹枝状銅粉によれば、銅ペースト等とした場合であっても、凝集を抑制することができ、樹脂中に均一に分散させることが可能となり、またペーストの粘度上昇等による印刷性不良等の発生を抑制することができる。したがって、このような樹枝状銅粉は、導電性ペーストや導電塗料等の用途に好適に用いることができる。
具体的には、金属フィラーとして、上述した樹枝状銅粉を1種又は比表面積が異なる2種以上を混合して用いることができる。本実施の形態においては、バインダ樹脂等と混合する銅粉全量のうち、樹枝状銅粉が50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上の量の割合となるようにして導電性ペーストを構成する。このような構成の金属フィラーとすることにより、例えばその金属フィラーを導電性ペーストに用いた場合に、樹脂中に均一に分散させることができ、またペーストの粘度が過度に上昇して印刷性不良等が生じることを防ぐことができる。また、樹枝状の形状をした銅粉であることにより、導電性ペーストとして優れた導電性を発揮させることができる。なお、導電性ペーストの導電性は、例えば、導電性ペーストを基材上に塗布して硬化させた被膜について比抵抗率計を用いてシート抵抗値を測定して、比抵抗を測定することにより評価することができる。
なお、導電性ペーストとしては、上述したように樹枝状銅粉が20質量%以上の量の割合となるように含んでいればよく、その他に例えば平均粒子径(D50)が0.5μm以上10.0μm以下の球状銅粉やフレーク状銅粉等を混ぜ合わせて含んでいてもよい。
例えば導電性ペースト(銅ペースト)としては、本実施の形態に係る樹枝状銅粉を金属フィラーとして含み、バインダ樹脂と、溶剤と、さらに必要に応じて酸化防止剤やカップリング剤等の添加剤とを混練することによって作製することができる。
バインダ樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を用いることができる。また、溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ターピネオール等の有機溶剤を用いることができる。また、その有機溶剤の添加量としては、特に限定されないが、スクリーン印刷やディスペンサー等の導電膜形成方法に適した粘度となるように、樹枝状銅粉の粒度を考慮して添加量を調整することが好ましい。
さらに、粘度調整のために、他の樹脂成分を添加することもできる。例えば、その樹脂成分としては、エチルセルロースに代表されるセルロース系樹脂等が挙げられ、ターピネオール等の有機溶剤に溶解した有機ビヒクルとして添加することができる。なお、その樹脂成分の添加量としては、焼結性を阻害しない程度に抑える必要があり、好ましくは全体の5質量%以下とする。
また、添加剤としては、焼成後の導電性を改善するために酸化防止剤等を添加することができる。酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えばヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。より具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸が好ましく、銅への吸着力が高いクエン酸又はリンゴ酸が特に好ましい。酸化防止剤の添加量としては、酸化防止効果やペーストの粘度等を考慮して、例えば1質量%以上15質量%以下とすることができる。
次に、電磁波シールド用材料として、本実施の形態に係る樹枝状銅粉を金属フィラーとして利用する場合においても、特に制限された条件での使用に限られるものではなく、一般的な方法、例えば金属フィラーを樹脂と混合して使用することができる。
例えば、電磁波シールド用導電性シートの電磁波シールド層を形成する場合、使用される樹脂としては、特に限定されるものではなく、従来使用されているような、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等の各種重合体及び共重合体からなる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化型樹脂等を適宜使用することができる。
電磁波シールド材を製造する方法としては、例えば、上述したような金属フィラーと樹脂とを、溶媒に分散又は溶解して塗料とし、その塗料を基材上に塗布又は印刷することによって電磁波シールド層を形成し、表面が固化する程度に乾燥することで製造することができる。また、金属フィラーを導電性シートの導電性接着剤層に利用することもできる。
また、電磁波シールド用導電性塗料の材料として、本実施の形態に係る樹枝状銅粉を金属フィラーとして利用する場合においても、特に制限された条件での使用に限られるものではなく、一般的な方法、例えば金属フィラーを樹脂及び溶剤と混合し、さらに必要に応じて酸化防止剤、増粘剤、沈降防止剤等と混合して混練することで導電性塗料とすることができる。
このときに使用するバインダ樹脂及び溶剤についても、特に限定されるものではなく、従来使用されているような、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂やフェノール樹脂等を使用することができる。また、溶剤についても、従来使用されているような、イソプロパノール等のアルコール類、トルエン等の芳香族炭化水素類、酢酸メチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類等を使用することができる。また、添加剤としての酸化防止剤についても、従来使用されているような、脂肪酸アミド、高級脂肪酸アミン、フェニレンジアミン誘導体、チタネート系カップリング剤等を使用することができる。
また、帯電防止塗料等の用途においては、従来、二酸化チタン表面にアンチモンやリンをドープしたものを使用している。導電性特性の観点からすれば、金属粉を用いたものの方が優位であるが、着色性の観点から二酸化チタンを基材としたものが用いられてきた。このことは、樹脂中に金属粉を分散させて導電性を確保するにはある程度の含有量が必要となるが、金属色によって塗料の色を阻害することになるため利用できず、二酸化チタンを基材としたものを用いるしかないという実情があった。
これに対して、本実施の形態に係る樹枝状銅粉によれば、上述したような所定の構造を有していることにより、樹脂中に分散する銅粉量が少なくても十分な導電性を確保することができ、着色性を阻害することなく帯電防止特性を十分に発揮させることができる。
以下、本発明の実施例を比較例と共に示してさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
≪評価方法≫
下記実施例及び比較例にて得られた銅粉について、以下の方法により、形状の観察、平均粒子径の測定、嵩密度の測定、BET比表面積値の測定、導電性ペーストの比抵抗値の測定、電磁波シールド特性の評価を行った。
(形状の観察)
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−7100F)により倍率10,000倍の視野で任意に20視野を観察し、その視野内に含まれる銅粉を観察した。
(平均粒子径の測定)
平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定器(日機装株式会社製、HRA9320 X−100)を用いて測定した。
(嵩密度の測定)
嵩密度は、試料を20cmのメスシリンダーに秤量し、振とう比重測定器(株式会社蔵持科学器械製作所製、KRS−409)により、200回タッピングさせたときの体積を読み取り、試料の質量を振とう後の体積で除することによって求めた。
(BET比表面積値の測定)
BET比表面積値は、比表面積・細孔分布測定装置(カンタクローム社製、QUADRASORB SI)を用いて測定した。
(導電性ペーストの比抵抗測定)
被膜の比抵抗値は、比抵抗率計(三菱化学株式会社製、Loresta−GP MCP−T600)を用いて四端子法によりシート抵抗値を測定し、表面粗さ形状測定器(東京精密株式会社製、SURFCOM 130A)により被膜の膜厚を測定して、シート抵抗値を膜厚で除することによって求めた。
(電磁波シールド特性)
電磁波シールド特性の評価は、各実施例及び比較例にて得られた試料について、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定することによって評価した。具体的には、比較例2にて作製した電磁波シールドのシールド特性レベルを『△』として、そのレベルよりも悪い場合を『×』とし、良好な場合を『○』とし、さらに優れている場合を『◎』として評価した。
また、電磁波シールドの可撓性についても評価するために、作製した電磁波シールドを折り曲げて電磁波シールド特性が変化するか否かを確認した。
<電解銅粉の作製>
[実施例1]
容量が100Lの電解槽に、電極面積が200mm×200mmのチタン製の電極板を陰極とし、電極面積が200mm×200mmの銅製の電極板を陽極として用い、その電解槽中に電解液を装入し、これに後述するPC電解により通電して銅粉を陰極上に析出させた。
このとき、電解液としては銅イオン濃度が10g/L、硫酸濃度が100g/Lの組成のものを用いた。また、この電解液に添加剤として分子量400のポリエチレングリコール(PEG)(和光純薬工業株式会社製 ノニオン系界面活性剤)を電解液中の濃度として500mg/Lとなるように添加し、さらに塩酸溶液(和光純薬工業株式会社製)を塩素イオン(塩化物イオン)濃度として100mg/Lとなるように添加した。
そして、上述のように濃度を調製した電解液を、定量ポンプを用いて10L/min.の流量で循環しながら、温度を30℃に維持し、陰極の電流密度が20A/dmになるように通電して陰極上に銅粉を析出させた。
通電条件は、電解方法として電極に供給する電流のオンとオフとを所定の周期で切り替えるPC電解を実行することにより行った。具体的には、電流密度が20A/dmになるように電流を400m秒間通電した後、電極に供給する電流を5m秒間オフにして(供給時間X/中断時間Y=80)、電極に供給する電流のオンとオフとを所定の周期で切り替えるPC電解を実行した。
陰極上に析出した銅粉を、スクレーパーを用いて機械的に電解槽の槽底に掻き落として回収し、回収した銅粉を純水で洗浄した後、減圧乾燥器に入れて乾燥することにより銅粉を得た。
得られた銅粉を構成する銅粒子を上述した走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。その結果、得られた銅粒子の形状は、短軸径が0.2μm以上0.5μm以下であって平均で0.38μmであり、長軸径が0.5μm以上2.0μm以下であって平均で0.87μmの大きさの楕円形の銅粒子であることが分かった。また、得られた銅粉は、そのような銅粒子が集合して構成された樹枝状の形状をしたものであることが分かった。
また、そのような銅粒子が集合して形成された樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)は2.9μmで、樹枝状銅粉が全体の銅粉中に少なくとも90個数%以上の割合で形成されていることが確認された。得られた銅粉の嵩密度は1.89gcmであった。また、得られた銅粉のBET比表面積値は1.1m/gであった。
[実施例2]
電解液に、添加剤として平均重合度がおよそ1500から1800の範囲にあるポリビニルアルコール(和光純薬工業株式会社製)を濃度が1000mg/Lとなるように添加し、さらに塩酸溶液を塩素イオン濃度として100mg/Lとなるように添加したこと以外は、実施例1と同じ条件で銅粉を陰極上に析出させた。
得られた銅粉を構成する銅粒子を上述した走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。その結果、得られた銅粒子の形状は、短軸径が0.2μm以上0.5μm以下であって平均で0.21μmであり、長軸径が0.5μm以上2.0μm以下であって平均で0.65μmの大きさの楕円形の銅粒子であることが分かった。また、得られた銅粉は、そのような銅粒子が集合して構成された樹枝状の形状をしたものであることが分かった。
また、そのような銅粒子が集合して形成された樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)は、1.4μmで、樹枝状銅粉が全体の銅粉中に少なくとも95個数%以上の割合で形成されていることが確認された。得られた銅粉の嵩密度は1.35g/cmであった。また、得られた銅粉のBET比表面積値は2.2m/gであった。
[実施例3]
陰極の電流密度が10A/dmになるように通電して陰極上に銅粉を析出させたこと以外は、実施例1と同じ条件で銅粉を陰極上に析出させた。
得られた銅粉を構成する銅粒子を上述した走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。その結果、得られた銅粒子の形状は、短軸径が0.2μm以上0.5μm以下であって平均で0.41μmであり、長軸径が0.5μm以上2.0μm以下であって平均で1.68μmの大きさの楕円形の銅粒子であることが分かった。また、得られた銅粉は、そのような銅粒子が集合して構成された樹枝状の形状をしたものであることが分かった。
また、そのような銅粒子が集合して形成された樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)は3.8μmであった。樹枝状銅粉が全体の銅粉中に少なくとも85個数%以上の割合で形成されていることが確認された。得られた銅粉の嵩密度は2.88g/cmであった。また、得られた銅粉のBET比表面積値は1.4m/gであった。
[実施例4]
電解液に添加剤としてPEGに代わってポリプロピレングリコール(PPG)(和光純薬工業株式会社製 ノニオン系界面活性剤)を添加した。PPGは分子量400のものを使用して、電解液中の濃度が500mg/Lとなるように添加し、同時に塩酸溶液を塩素イオン濃度として100mg/Lとなるように添加した。それ以外の条件は実施例3と同様にして銅粉を陰極板上に析出させた。
得られた銅粉を構成する銅粒子を上述した走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。その結果、得られた銅粒子の形状は、短軸径が0.2μm以上0.5μm以下であって平均で0.46μmであり、長軸径が0.5μm以上2.0μm以下であって平均で1.81μmの大きさの楕円形の銅粒子であることが分かった。また、得られた銅粉は、そのような銅粒子が集合して構成された樹枝状の形状をしたものであることが分かった。
また、そのような銅粒子が集合して形成された樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)は4.2μmであった。全体の銅粉中に少なくとも90個数%以上の割合で形成されていることが確認された。得られた銅粉の嵩密度は3.21g/cmであった。また、得られた銅粉のBET比表面積値は0.6m/gであった。
[実施例5]
電解液として、銅イオン濃度が15g/L、硫酸濃度が150g/Lの組成のものを用い、この電解液に添加剤としてPEGに代わって分子量1000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール・ブチルエーテル(日油株式会社製 ノニオン系界面活性剤)を濃度が1000mg/Lとなるように添加し、加えて塩酸溶液(和光純薬工業株式会社製)を塩素イオン(塩化物イオン)濃度として25mg/Lとなるように添加した。
電解方法としては、電極に供給する電流の供給方向を順方向と逆方向とで所定の周期で切り替えるPRパルス電解を実行することにより行った。具体的には、順方向に供給した電極の電流密度を10A/dmとし、逆方向に供給した電極の電流密度を50A/dmとし、順方向に100m秒間電流を供給した後、逆方向に5m秒間電流を供給して(順方向供給時間A/逆方向供給時間B=20)電極に供給する電流の供給方向を順方向と逆方向とで所定の周期で切り替えるPRパルス電解を実行した。
得られた銅粉を構成する銅粒子を上述した走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。その結果、得られた銅粒子の形状は、短軸径が0.2μm以上0.5μm以下であって平均で0.34μmであり、長軸径が0.5μm以上2.0μm以下であって平均で0.82μm大きさの楕円形の銅粒子であることが分かった。また、得られた銅粉は、そのような銅粒子が集合して構成された樹枝状の形状をしたものであることが分かった。
また、そのような銅粒子が集合して形成された樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)は2.5μmであった。全体の銅粉中に少なくとも90個数%以上の割合で形成されていることが確認された。得られた銅粉の嵩密度は1.68g/cmであった。また、得られた銅粉のBET比表面積値は1.8m/gであった。
[実施例6]
電解液に、ポリビニルアルコールとしてクラレ社製のクラレCポリマー(上記式(xi)に該当する変性ポリビニルアルコールの一部にカチオン基(4級アンモニウム塩)が置換されたカチオン変性ポリビニルアルコール)C−506(けん化度74.0mol%以上79.0mol%以下、平均重合度600)を、電解液中の濃度が1500mg/Lとなるように変化させて添加し、加えて塩酸溶液(和光純薬工業株式会社製)を塩化物イオン濃度で75mg/Lとなるように添加した。なお、それ以外は実施例5と同じ条件で銅粉を析出させた。
得られた銅粉を構成する銅粒子を上述した走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。その結果、得られた銅粒子の形状は、短軸径が0.2μm以上0.5μm以下であって平均で0.23μmであり、長軸径が0.5μm以上2.0μm以下であって平均で0.55μmの大きさの楕円形の銅粒子であることが分かった。また、得られた銅粉は、そのような銅粒子が集合して構成された樹枝状の形状をしたものであることが分かった。
また、そのような銅粒子が集合して形成された樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)は、1.2μmであった。全体の銅粉中に少なくとも90個数%以上の割合で形成されていることが確認された。得られた銅粉の嵩密度は1.23g/cmであった。また、得られた銅粉のBET比表面積値は2.8m/gであった。
[参考例]
電解液に、塩酸溶液を塩素イオン濃度として100mg/Lとなるように添加し、更に、PC電解の代わりに直流電流を電流密度が10A/dmになるように通電したこと以外は、実施例1と同じ条件で銅粉を陰極上に析出させた。
得られた電解銅粉の形状を、上述した走査型電子顕微鏡(SEM)による方法で観察した結果、析出した銅粉は、短軸径が0.2μm以上0.5μm以下であって平均で0.48μmであり、長軸径が0.5μm以上2.0μm以下であって平均で1.8μmの大きさの楕円形の銅粒子であることが分かった。また、得られた銅粉は、そのような銅粒子が集合して構成された樹枝状の形状をしたものであることが分かった。
また、そのような銅粒子が集合して形成された樹枝状銅粉の平均粒子径(D50)は、18.2μmで、樹枝状銅粉が全体の銅粉中に少なくとも90個数%以上の割合で形成されていることが確認された。得られた銅粉の嵩密度は0.76g/cmであった。また、得られた銅粉のBET比表面積値は1.1m/gであった。
下記表1に上述した実施例1〜6及び比較例1、2にて得られた銅粉について評価した結果をまとめて示す。
(表1中、「電解時間比」とは、PCパルス電解の場合には供給時間X/中断時間Yを意味し、PRパルス電解の場合には順方向供給時間A/逆方向供給時間Bを意味する。また、表1中、「BET」とはBET比表面積値を意味する。)
<導電性ペーストの作製>
[実施例7]
実施例1で得られた樹枝状銅粉60gに対して、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製、PL−2211)15gと、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製、鹿特級)10gをそれぞれ混合し、小型ニーダー(株式会社日本精機製作所製、ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、銅粉が凝集することなく、樹脂中に均一に分散した。得られた導電性ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、窒素雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間かけて硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値を測定した結果、それぞれ、8.8×10−5Ω・cm(硬化温度150℃)、3.6×10−5Ω・cm(硬化温度200℃)であり、極めて優れた導電性を示すことが分かった。
[実施例8]
実施例8では実施例1で得られた樹枝状銅粉に、更に球状銅粉を混合してペースト化する効果について調べた。
球状銅粉は以下のようにして作製した。すなわち、平均粒径が30.5μmの電解銅粉(ネクセルジャパン株式会社製、Cu−300)を、高圧ジェット気流旋回渦方式ジェットミル(株式会社徳寿工作所製、NJ式ナノグラインディングミルNJ−30)を用いて、空気流量200L/分、粉砕圧力10kg/cm、約400g/時間で8パス実施して、粉砕・微粉化することによって作製した。得られた球状銅粉は粒状であり、平均粒径は5.6μmであった。
実施例1で得られた樹枝状銅粉40gと、上述のようにして作製した球状銅粉10gとに対して、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製、PL−2211)15gと、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製、鹿特級)10gをそれぞれ混合し、小型ニーダー(株式会社日本精機製作所製、ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、銅粉が凝集することなく、樹脂中に均一に分散した。得られた導電性ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、窒素雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間かけて硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値を測定した結果、それぞれ、8.2×10−5Ω・cm(硬化温度150℃)、2.0×10−5Ω・cm(硬化温度200℃)であり、更に所定量の球状銅粉を混合した場合であっても実施例7とほぼ同様の優れた導電性を示すことが分かった。
[比較例1]
樹枝状銅粉を含まない球状銅粉のみによる導電性ペーストの特性を調べた。
具体的には、上記の実施例8にて作製した球状銅粉と同様の球状銅粉を使用し、その球状銅粉60gに対して、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製、PL−2211)15gと、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製、鹿特級)10gをそれぞれ混合し、小型ニーダー(株式会社日本精機製作所製、ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。なお、ペースト化に際しては、混錬を繰り返す毎に粘度の上昇が発生した。このことは銅粉の一部が凝集していることが原因であると考えられ、均一分散が困難であった。得られた導電性ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、窒素雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間かけて硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値を測定した結果、それぞれ、5.6×10−3Ω・cm(硬化温度150℃)、2.5×10−3Ω・cm(硬化温度200℃)であり、樹枝状銅粉を含む実施例7、8にて得られた導電性ペーストと比較して極めて比抵抗値が高く導電性が劣るものであった。
<電磁波シールド層の作製>
[実施例9]
実施例1で得られた樹枝状銅粉を樹脂に分散して電磁波シールド材とした。具体的には、得られた樹枝状銅粉50gに対して、塩化ビニル樹脂(信越化学工業株式会社製、TK500)100gと、メチルエチルケトン(和光純薬工業株式会社製)200gをそれぞれ混合し、小型ニーダー(株式会社日本精機製作所製、ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、銅粉が凝集することなく、樹脂中に均一に分散した。
そして、これを100μmの厚さの透明ポリエチレンテレフタレートシート(東レ株式会社製)からなる基材の上にメイヤーバーを用いて塗布・乾燥し、厚さ30μmの電磁波シールド層を形成した。
電磁波シールドの特性評価は、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定することによって行った。
[実施例10]
実施例10では、実施例1で得られた樹枝状銅粉に更に球状銅粉を混合して樹脂に分散し電磁波シールド材としたときの効果について調べた。
球状銅粉は以下のようにして作製した。すなわち、平均粒径が30.5μmの電解銅粉(ネクセルジャパン株式会社製、Cu−300)を、高圧ジェット気流旋回渦方式ジェットミル(株式会社徳寿工作所製、NJ式ナノグラインディングミルNJ−30)を用いて、空気流量200L/min.、粉砕圧力10kg/cm、約400g/時間で8パス実施して、粉砕・微粉化することによって作製した。得られた球状銅粉は粒状であり、平均粒径は5.6μmであった。
実施例1で得られた樹枝状銅粉30gと、上述のようにして作製した球状銅粉20gとに対して、塩化ビニル樹脂(信越化学工業株式会社製、TK500)100gと、メチルエチルケトン(和光純薬工業株式会社製)200gをそれぞれ混合し、小型ニーダー(株式会社日本精機製作所製、ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、銅粉が凝集することなく、樹脂中に均一に分散した。
そして、これを100μmの厚さの透明ポリエチレンテレフタレートシート(東レ株式会社製)からなる基材の上にメイヤーバーを用いて塗布・乾燥し、厚さ30μmの電磁波シールド層を形成した。
電磁波シールド特性は、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定することによって行った。
[比較例2]
球状銅粉による電磁波シールドの特性を調べた。
具体的には、上記の実施例10にて作製した球状銅粉と同様の球状銅粉を使用し、その球状銅粉50gに対して、塩化ビニル樹脂(信越化学工業株式会社製、TK500)100gと、メチルエチルケトン(和光純薬工業株式会社製)200gをそれぞれ混合し、小型ニーダー(株式会社日本精機製作所製、ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。
なお、ペースト化に際しては、混錬を繰り返す毎に粘度の上昇が発生した。このことは上記の実施例9、10とは異なり、銅粉の一部が凝集していることが原因であると考えられ、均一分散が困難であった。
これを100μmの厚さの透明ポリエチレンテレフタレートシート(東レ株式会社製)からなる基材の上にメイヤーバーを用いて塗布・乾燥し、厚さ30μmの電磁波シールド層を形成した。
電磁波シールド特性は、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定することによって行った。
下記表2に上述した実施例7〜10及び比較例1、2にて得られた導電性ペースト及び電磁波シールドについて評価した結果をまとめて示す。
<帯電防止層の製造>
[実施例11]
実施例1で得られた樹枝状銅粉を樹脂に分散して帯電防止層とした。具体的には、得られた樹枝状銅粉5gに対して、アクリル樹脂(DIC株式会社製、A−198−XB)200gと、トルエン(和光純薬工業株式会社製)とn−ブタノール(和光純薬工業株式会社製)とを体積比で1:1とした混合溶剤200gをそれぞれ混合し、ペイントシェーカー(株式会社東洋精機製作所製)を用いて30分間撹拌した。そして、それを透明ポリエチレンテレフタレートシート(東レ株式会社製)に乾燥膜厚が30μmになるようにメイヤーバーを用いて塗布した。
室内で24時間自然乾燥して得られた被膜の比抵抗値を測定した結果、3.5Ω・cmであった。
[比較例3]
従来帯電防止用塗料として使用している二酸化チタンにアンチモンをドープした材料を用いて帯電防止層を形成して評価した。
具体的には、二酸化チタンにアンチモンをドープしたフィラーである針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT3000)100gに対して、アクリル樹脂(DIC株式会社製、A−198−XB)200gと、トルエン(和光純薬工業株式会社製)とn−ブタノール(和光純薬工業株式会社製)とを体積比で1:1とした混合溶剤200gをそれぞれ混合し、ペイントシェーカー(株式会社東洋精機製作所製)で30分間撹拌した。そして、それを透明ポリエチレンテレフタレートシート(東レ株式会社製)に乾燥膜厚が30μmになるようにメイヤーバーを用いて塗布した。
室内で24時間自然乾燥して得られた被膜の比抵抗値を測定した結果、6.3×10Ω・cmであり、実施例11にて得られた帯電防止層と比較して遥かに比抵抗値が高く導電性が劣るものであった。
この結果から、実施例11にて得られた樹枝状銅粉を用いて帯電防止層を形成することで、極めて高い導電性を発揮することができ、しかも少量の樹枝状銅粉で優れた効果を奏することができ、金属色に影響することなく帯電防止の機能を発揮できることが分かる。
1 銅粉(樹枝状銅粉)
2 微細銅粒子

Claims (11)

  1. 銅イオンを含む電解液を用いる電解処理により、陰極上に銅粒子が集合して複数の枝を有する樹枝状の形状を構成する銅粉を析出させる銅粉の製造方法であって、
    前記電解処理において、電極に供給する電流のオンとオフとを所定の周期で切り替えるPCパルス電解、又は、電極に供給する電流の供給方向を順方向と逆方向とで所定の周期で切り替えるPRパルス電解を実行する、
    銅粉の製造方法。
  2. 前記PCパルス電解により処理を行い、
    前記電極に供給する電流をオンにする供給時間Xと、前記電極に供給する電流をオフにする中断時間Yとの比X/Yが1以上100以下である、
    請求項1に記載の銅粉の製造方法。
  3. 前記PRパルス電解により処理を行い、
    前記電極に供給する電流を順方向に供給する順方向供給時間Aと、前記電極に供給する電流を逆方向に供給する逆方向供給時間Bとの比A/Bが2以上1000以下である、
    請求項1に記載の銅粉の製造方法。
  4. 銅粒子が集合して複数の枝を有する樹枝状の形状を構成する銅粉であって、
    前記銅粒子は、短軸径が0.2μm以上0.5μm以下、かつ、長軸径が0.5μm以上2.0μm以下の範囲の大きさの楕円形であり、
    楕円形の前記銅粒子が集合して構成される当該銅粉の平均粒子径(D50)が0.5μm以上10.0μm以下であり、BET比表面積値が0.3m/g以上5.0m/g以下である、
    銅粉。
  5. 当該銅粉の平均粒子径(D50)が0.5μm以上5.0μm未満である、
    請求項4に記載の銅粉。
  6. 嵩密度が0.3g/cm以上5.0g/cm以下である、
    請求項4又は5に記載の樹枝状銅粉。
  7. 前記請求項4乃至6のいずれかに記載の銅粉を全体の20質量%以上の割合で含む、
    金属フィラー。
  8. 請求項7に記載の金属フィラーを樹脂に混合させてなる導電性ペースト。
  9. 請求項7に記載の金属フィラーを樹脂に分散させてなる電磁波シールド用の導電性塗料。
  10. 請求項7に記載の金属フィラーを樹脂に分散させてなる電磁波シールド用の導電性シート。
  11. 請求項7に記載の金属フィラーを樹脂に分散させてなる帯電防止塗料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113412321A (zh) * 2020-01-17 2021-09-17 深圳市首骋新材料科技有限公司 一种有机硅树脂导电胶及其制备方法和应用

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