JP5019007B2 - 光電変換素子用電解質ならびにその電解質を用いた光電変換素子および色素増感太陽電池 - Google Patents

光電変換素子用電解質ならびにその電解質を用いた光電変換素子および色素増感太陽電池 Download PDF

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Description

本発明は、光電変換素子用電解質ならびにその電解質を用いた光電変換素子および色素増感太陽電池に関する。
近年、二酸化炭素の増加が原因とされる地球温暖化等の環境問題が深刻となり、環境負荷が小さく、かつ製造コストを削減できる太陽電池として、非シリコン系太陽電池が注目され研究開発が進められている。
非シリコン系太陽電池の中でも特に、スイスのグレツェルらが開発した色素増感太陽電池は、有機材料を用いた太陽電池の中では光電変換効率が高く、シリコン系太陽電池と比較して製造コストが安い等の利点もあり、新しいタイプの太陽電池として注目を集めている。
しかしながら、色素増感太陽電池は、電気化学電池のため電解質として有機電解液やイオン性液体等が使用されており、有機電解液を用いる場合には、長期使用時に揮発したり枯渇したりすることにより発電効率が低下してしまうという問題があり、また、イオン性液体を用いる場合には、長期使用時の揮発や枯渇は防止できるものの液漏れすることによる構造劣化等の耐久性の問題があった。
そこで、電解液の揮発、液漏れを防ぎ、太陽電池の長期安定性、耐久性確保を目的として、電解質を液状からゲル状、固体状にする研究が行われている。
例えば、特許文献1には、「(i)層状粘土鉱物及び/又は有機化層状粘土鉱物並びに(ii)イオン性液体を含んでなる光電変換素子用電解質。」が記載されている([請求項1])。
特表2007−531206号公報
本発明者は、特許文献1に記載の光電変換素子用電解質を用いた光電変換素子について検討した結果、85%RH(相対湿度)程度の環境下に200時間程度以上放置すると、光電変換効率が低下する場合があることを明らかとした。
これは、光電変換素子内に侵入した水分や湿気が、電解質や増感色素を変質させるためであると考えられる。
そこで、本発明は、優れた耐湿性を達成することができる光電変換素子用電解質ならびにその電解質を用いた光電変換素子および色素増感太陽電池を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討した結果、特定の有機溶媒および層状粘土鉱物を用いる光電変換素子用電解質が、優れた耐湿性を達成することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記(a)〜(e)を提供する。
(a)有機溶媒(A)および層状粘土鉱物(B)を含有する光電変換素子用電解質であって、
上記有機溶媒(A)の沸点が150℃以上であり、比誘電率が20以上であり、
上記層状粘土鉱物(B)が、アルキルシリル基を有する光電変換素子用電解質。
(b)更に、第3級または第4級カチオンを有する有機塩化合物(C)を含有する上記(a)に記載の光電変換素子用電解質。
(c)上記有機塩化合物(C)が、下記式(1)または(2)で表されるカチオンを有する上記(b)に記載の光電変換素子用電解質。
式(1)中、R1は、炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでいてもよい置換基を有していてもよい。R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。ただし、窒素原子が二重結合を含む場合、R3は存在しない。式(2)中、Qは、窒素原子、酸素原子、リン原子または硫黄原子を表し、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。ただし、Qが酸素原子または硫黄原子の場合、R7は存在せず、Qが硫黄原子の場合、R4およびR5は連結していてもよい。
(d)透明導電膜および金属酸化物半導体多孔質膜を有する光電極と、
上記光電極に対向して配置される対向電極と、
上記光電極と上記対向電極との間に配された電解質層とを有し、
上記電解質層が、上記(a)〜(c)のいずれかに記載の光電変換素子用電解質である光電変換素子。
(e)上記(d)に記載の光電極に光増感色素を担持させてなる色素増感太陽電池。
以下に説明するように、本発明によれば、優れた耐湿性を達成することができる光電変換素子用電解質ならびにその電解質を用いた光電変換素子および色素増感太陽電池を提供することができるため有用である。
また、本発明の色素増感太陽電池は、耐湿性に優れるため、例えば、湿度が大きく変動する外気に暴露される使用環境下においても適用することができ、非常に有用である。
図1は、本発明の光電変換素子の基本構成の一例を示す模式断面図である。 図2は、実施例等で用いた本発明の色素増感太陽電池の基本構成を示す図面である。
〔光電変換素子用電解質〕
本発明の光電変換素子用電解質(以下、単に「本発明の電解質」ともいう。)は、有機溶媒(A)および層状粘土鉱物(B)を含有する光電変換素子用電解質であって、上記有機溶媒(A)の沸点が150℃以上であり、比誘電率が20以上である光電変換素子用の電解質である。
また、本発明の電解質は、揮発を抑制し、光電極の安定性を高める観点から、第3級または第4級カチオンを有する有機塩化合物(C)を含有するのが好ましい。
次に、本発明の電解質の各成分について詳述する。
<有機溶媒(A)>
本発明の電解質に用いる有機溶媒(A)は、沸点が150℃以上であり、比誘電率が20以上である有機溶媒であれば特に限定されない。
ここで、沸点とは、1気圧における沸点をいい、比誘電率とは、25℃および10kHzを印加させる液体用誘電率計(液体誘電率計M−870、日本ルフト社製)を用いて測定した値をいう。
上記有機溶媒(A)としては、具体的には、例えば、メトキシプロピオニトリル(沸点:166℃、比誘電率:25)、エトキシプロピオニトリル(沸点:171℃、比誘電率:22)、ブトキシプロピオニトリル(沸点:206℃、比誘電率:20)、ジメトキシプロピオニトリル(沸点:195℃、比誘電率:28)、グルタロニトリル(沸点:286℃、比誘電率:20)、エチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル(沸点:330℃、比誘電率:20)、プロピレンカーボネート(沸点:240℃、比誘電率:65)、ジエチルカーボネート(沸点:240℃、比誘電率:65)、エチルメチルカーボネート(沸点:240℃、比誘電率:65)、γ−ブチロラクトン(沸点:205℃、比誘電率:65)、γ−バレロラクトン(沸点:℃、比誘電率:58)、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃、比誘電率:47)、エチルイソプロピルスルホン(沸点:250℃、比誘電率:32)、スルホラン(沸点:285℃、比誘電率:38)、メチルスルホラン(沸点:270℃、比誘電率:32)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、これらを2種以上併用する場合、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の高誘電率溶媒である環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネート等の低粘度溶媒である鎖状カーボネート類を本発明の目的を損なわない範囲で適宜混合させてもよい。
これらのうち、本発明の電解質を用いた光電変換素子(以下、「本発明の光電変換素子」ともいう。)の光電変換効率がより良好となる理由から、メトキシプロピオニトリル、エトキシプロピオニトリル、ブトキシプロピオニトリルを用いるのが好ましく、入手が容易でコストが安い理由から、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンが好ましく、電気化学的に安定であり、分解ガスの発生が少ない理由から、エチルイソプロピルスルホン、スルホラン、メチルスルホランが好ましい。
本発明においては、このような有機溶媒(A)を含有することにより、優れた耐湿性を有する光電変換素子を形成することができる。
これは、詳細には明らかではないが、有機溶媒(A)がイオン性液体よりも吸湿性が低く、また、長期使用時においても揮発が少なく、かつ、他の電解質の成分に対する溶解性も高いためと考えられる。また、有機溶媒(A)中で後述する層状粘土鉱物(B)が分散していることにより、大気中の水蒸気の侵入を抑制することができ、更に、本発明の光電変換素子の電解質層に侵入した水分が、層状粘土鉱物(B)の層間にトラップされ、電解質層や光電極に担持させる光増感色素の変性、脱離等が抑制されるためと考えられる。
また、本発明においては、上記有機溶媒(A)の含有量は、本発明の電解質の総質量に対して50〜95質量%であるのが好ましく、55〜90質量%であるのがより好ましい。含有量がこの範囲であると、本発明の光電変換素子の光電変換効率がより良好となる。
<層状粘土鉱物(B)>
本発明の電解質に用いる層状粘土鉱物(B)は、ケイ酸四面体が2次元シート状に結合したフィロケイ酸塩であるのが好ましく、その具体例としては、モンモリロナイト、ベントナイト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、スティブンサイトなどのスメクタイト系粘土鉱物;バーミキュライトなどのバーミキュライト系粘土鉱物;ムスコバイト、フロコバイト、マイカなどの雲母系粘土鉱物;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の電解質に用いる層状粘土鉱物(B)は、天然物であっても、合成品であってもよい。
これらのうち、水中で膨潤し、陽イオン交換能を有するスメクタイト系粘土鉱物や膨潤性のマイカが好ましい。
ここで、層状粘土鉱物の陽イオン交換容量は、10〜300ミリ当量/100gであるのが好ましい。
このような層状粘土鉱物(B)として、市販品を用いることができ、例えば、天然モンモリロナイト(商品名:クニピアF、平均粒径:0.1〜1μm、クニミネ工業社製)、合成スメクタイト(商品名:スメクトンSA、平均粒径:20nm、クニミネ工業社製)、合成膨潤性雲母(商品名:ソマシフME−100、平均粒径:1〜3μm、コープケミカル社製)、合成スメクタイト(商品名:ルーセンタイトSWN、平均粒径:0.02μm、コープケミカル社製)、合成スメクタイト(商品名:ルーセンタイトSWF、平均粒径:0.02μm、コープケミカル社製)が好適に用いられる。
本発明においては、層状粘土鉱物(B)として、有機化層状粘土鉱物を用いることができる。
有機化層状粘土鉱物は、一般的な層間の陽イオン交換を行なうことで得ることができ、例えば、上述した層状粘土鉱物の水系スラリーに有機オニウムイオンを添加し、撹拌させて反応させることにより得ることができる。
ここで、有機オニウムイオンとは、酸素、硫黄、窒素等のような孤立電子対を有する元素を含む化合物において、これらの孤立電子対にプロトンまたは他の陽イオン型の試薬等が配位結合して生じた有機オニウム化合物から発生したイオンである。
また、有機オニウムイオンで有機化するための条件は特に限定されないが、層状粘土鉱物の陽イオン交換容量に対して、有機オニウムイオンを0.3〜2.0倍量で反応させるのが好ましく、0.5〜1.5倍量で反応させるのがより好ましく、また、10〜95℃の温度で反応させるのが好ましい。
有機オニウムイオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、オキソニウムイオン、スルホニウムイオン等が挙げられる。
これらのうち、アンモニウムイオンが最も一般的であり、具体的には、脂肪族アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、キノリニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ベタイン類、レシチン、カチオン染料(色素)等が挙げられる。
また、下記式(I)または(II)に示す脂肪族アンモニウムイオンが好ましく、具体的には、例えば、ヒドロキシポリオキシエチレントリアルキルアンモニウム、ヒドロキシポリオキシプロピレントリアルキルアンモニウム、ジ(ヒドロキシポリオキシエチレン)ジアルキルアンモニウム、ジ(ヒドロキシポリオキシプロピレン)ジアルキルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、メチルエチルジオクチルアンモニウム、メチルエチルジオクチルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、メチルトリドデシルアンモニウム、ベンジルメチルジオクチルアンモニウム、ベンジルメチルジドデシルアンモニウム、ベンジルエチルジオクチルアンモニウム、ベンジルエチルジオクチルアンモニウム、ベンジルトリオクチルアンモニウム、ベンジルトリドデシルアンモニウム等が挙げられる。
式(I)中、R1は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立にポリオキシエチレン基(−(CH2CH2O)n−H)、ポリオキシプロピレン基(−(CH2CH(CH3)O)n−H、−(CH2CH2CH2O)n−H)または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R4はポリオキシエチレン基(−(CH2CH2O)n−H)またはポリオキシプロピレン基(−(CH2CH(CH3)O)n−H、−(CH2CH2CH2O)n−H)を表す。また、n=1〜50を表す。
式(II)中、R1はメチル基またはベンジル基を表し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基または炭素数6〜15の炭化水素基を表し、R3およびR4はそれぞれ独立に炭素数6〜15の炭化水素基を表す。
このような有機化層状粘土鉱物としては、市販品を使用することができ、具体的には、例えば、ホージュン社製のエスベンNX、エスベンWX、オルガナイト、オルガナイトD;コープケミカル社製のルーセンタイトSEN、ルーセンタイトSPN、ルーセンタイトSAN、ルーセンタイトSTN、ソマシフMAE、ソマシフMEE、ソマシフMPE、ソマシフMTE;等を使用することができる。
本発明においては、本発明の光電変換素子の耐湿性が良好となる理由から、上記層状粘土鉱物(B)がアルキルシリル基を有している。
アルキルシリル基を有する層状粘土鉱物(B)としては、例えば、上記で例示した層状粘土鉱物(以下、「層状粘土鉱物(b1)」ともいう。)と後述するオルガノシラン化合物(b2)とを反応させたものや、後述する市販品等を用いることができる。
(オルガノシシラン化合物(b2))
上記層状粘土鉱物(B)の調製に用いるオルガノシラン化合物(b2)としては、例えば、下記式(III)で表される化合物等を用いることができる。
上記式(III)中、R8は炭素数1〜25の分岐していてもよい1価の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。R9は加水分解性基を表し、nは1〜3の整数を表す。nが2または3の時の複数のR8はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、nが1または2の時の複数のR9はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記式(III)中、R8の炭素数1〜25の分岐していてもよい1価の炭化水素基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基、フェニル基、トリル基、スチリル基、α−メチルスチリル基等や、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素等)で置換した官能基(例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基等)等が挙げられる。
また、上記式(III)中、R9の加水分解性基としては、具体的には、例えば、アルコキシ基、アシル基、ハロゲン基等が挙げられる。
上記式(III)で表される化合物としては、具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、n−ペンチル・メチルジメトキシシラン、シクロヘキシル・メチルジエトキシシラン、フェニル・メチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−i−プロピルメトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ペンチルメトキシシラン、トリ−シクロヘキシルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリ−n−ヘキシルメトキシシラン、トリ−n−ヘプチルメトキシシラン、トリ−n−オクチルメトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリデシルメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン、トリフロロプロピルトリクロロシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフェニルシラノール、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリフェノキシシラン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、n−ペンチル・メチルジメトキシシラン、シクロヘキシル・メチルジエトキシシラン、フェニル・メチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−i−プロピルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジメトキシメチルトリフルオロプロピルシラン、ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリクロロシラン、メチルトリフルオロプロピルジクロロシランであるのが、素子内部の電解質の吸湿性を抑制できる理由から好ましい。
また、上記オルガノシラン化合物(b2)としては、上記式(III)で表される化合物の縮合物を用いることができ、その具体例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンが挙げられる。
更に、上記オルガノシラン化合物(b2)としては、ヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン等のオルガノジシラザンを用いることができる。
本発明においては、上述した層状粘土鉱物(b1)とオルガノシラン化合物(b2)との反応は特に限定されず、例えば、これらをメタノール等の有機溶媒中で、0〜250℃程度の温度で撹拌することにより、層状粘土鉱物(b1)が有する水酸基とオルガノシラン化合物(b2)が有する加水分解性基とが反応し、アルキルシリル基を有する層状粘土鉱物(B)を調製することができる。
ここで、層状粘土鉱物(b1)が有する水酸基とは、モンモリロナイトやスメクタイト等の公知の層状粘土鉱物の結晶層(主に端面)が通常有している水酸基をいうが、上記反応においては、層状粘土鉱物(b1)が有する全ての水酸基がアルキルシリル基で置換されている必要はない。
なお、上記反応においては、層状粘土鉱物(b1)とオルガノシラン化合物(b2)との反応後またはこれらの反応と同時に、オルガノシラン化合物(b2)由来の加水分解性基(層状粘土鉱物(b1)と未反応であった官能基)が加水分解し、縮合していてもよい。
一方、本発明においては、アルキルシリル基を有する層状粘土鉱物(B)として、市販品を用いることができ、例えば、アルキルトリアルコキシシランで処理したシラン処理モンモリロナイト(ベンゲル SH、ホージュン社製)、4級アンモニウムおよびアルキルトリアルコキシシランで処理したシラン処理有機ベントナイト(ホージュン社製)等が好適に用いられる。
このようなアルキルシリル基を有する層状粘土鉱物(B)を含有することにより、耐湿性により優れた光電変換素子を形成することができる。
これは、詳細には明らかではないが、アルキルシリル基を有する層状粘土鉱物(B)が従来公知の層状粘土鉱物よりも疎水化されていることにより、大気中の水蒸気の侵入を防ぐことができるためと考えられる。
本発明においては、上記層状粘土鉱物(B)の含有量は、上記有機溶媒(A)100質量部に対して、無機物換算で0.1〜250質量部であるのが好ましく、0.5〜150質量部であるのがより好ましい。
また、無機物換算とは、有機化層上粘土鉱物の含有量を考慮したものであり、有機化層上粘土鉱物を使用する場合には層間の陽イオン、すなわち上述した有機オニウムイオンを除外した質量をいう。なお、有機化されていない層状粘土鉱物については、層間の陽イオン(例えば、Na+、K+、Li+等)も含めて無機物であるため、無機物換算と全体量換算は同じ値となる。
<有機塩化合物(C)>
本発明の電解質が所望により含有する有機塩化合物(C)は、第3級または第4級カチオンならびにその対イオンであるアニオンを有する有機塩化合物であり、常温で固体および液体(いわゆるイオン性液体)のいずれであってもよい。
ここで、第3級カチオンとは、正電荷を有する周期律表第16族元素(例えば、酸素原子、硫黄原子等)が水素原子を有していないカチオンをいい、第4級カチオンとは、正電荷を有する周期律表第15族元素(例えば、窒素原子、リン原子等)が水素原子を有していないカチオンをいう。
上記有機塩化合物(C)が有するカチオンとしては、具体的には、下記式(1)または(2)で表されるカチオンが好適に例示される。
式(1)中、R1は、炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでいてもよい置換基を有していてもよい。R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。ただし、窒素原子が二重結合を含む場合、R3は存在しない。
式(2)中、Qは、窒素原子、酸素原子、リン原子または硫黄原子を表し、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。ただし、Qが酸素原子または硫黄原子の場合、R7は存在せず、Qが硫黄原子の場合、R4およびR5は連結していてもよい。
ここで、上記式(1)中のR1の炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基としては、上記式(1)中の窒素原子(アンモニウムイオン)とともに環構造を採るものであるのが好ましい。
次いで、上記式(1)中のR1が有していてもよい、炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでいてもよい置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ウンデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロプロピルメチル基、トリフルオロエチル基等)、炭素数2〜20のアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、炭素数6〜20のアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等)、炭素数7〜20のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等)、炭素数1〜20のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソ−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基、ノニノキシ基、デシロキシ基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基等)、炭素数2〜20のアルキルアルコキシ基(例えば、メチレンメトキシ基(−CH2OCH3)、エチレンメトキシ基(−CH2CH2OCH3)、n−プロピレン−イソ−プロポキシ基(−CH2CH2CH2OCH(CH32)、メチレン−t−ブトキシ基(−CH2−O−C(CH33、ブチレンメトキシ基、ペンチレンメトキシ基、へキシレンメトキシ基、ヘプチレンメトキシ基、オクチレンメトキシ基、ノニレンメトキシ基、デシレンメトキシ基、メチレンエトキシ基、エチレンエトキシ基、プロピレンエトキシ基、ブチレンエトキシ基、ペンチレンエトキシ基、へキシレンエトキシ基、エチレンエトキシメトキシ基、シクロプロピルメトキシ基、シクロヘキシルメトキシ基、メチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等)であるのが好ましい。また、上記式(1)中のR1は、この置換基を2以上有していてもよい。
また、上記式(1)中のR2およびR3の炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基としては、具体的には、炭素数1〜20のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ウンデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロプロピルメチル基、トリフルオロエチル基等)、炭素数2〜20のアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、炭素数6〜20のアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等)、炭素数7〜20のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等)、炭素数1〜20のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソ−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基、ノニノキシ基、デシロキシ基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基等)、炭素数2〜20のアルキルアルコキシ基(例えば、メチレンメトキシ基(−CH2OCH3)、エチレンメトキシ基(−CH2CH2OCH3)、n−プロピレン−イソ−プロポキシ基(−CH2CH2CH2OCH(CH32)、メチレン−t−ブトキシ基(−CH2−O−C(CH33、ブチレンメトキシ基、ペンチレンメトキシ基、へキシレンメトキシ基、ヘプチレンメトキシ基、オクチレンメトキシ基、ノニレンメトキシ基、デシレンメトキシ基、メチレンエトキシ基、エチレンエトキシ基、プロピレンエトキシ基、ブチレンエトキシ基、ペンチレンエトキシ基、へキシレンエトキシ基、エチレンエトキシメトキシ基、シクロプロピルメトキシ基、シクロヘキシルメトキシ基、メチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等)等が挙げられる。
また、上記式(2)中、R4、R5、R6およびR7の炭素数1〜8のヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基としては、具体的には、炭素数1〜8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等)、炭素数1〜8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソ−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基等)、炭素数2〜8のアルキルアルコキシ基(例えば、メチレンメトキシ基(−CH2OCH3)、エチレンメトキシ基(−CH2CH2OCH3)、n−プロピレン−イソ−プロポキシ基(−CH2CH2CH2OCH(CH32)、メチレン−t−ブトキシ基(−CH2−O−C(CH33等)等が挙げられる。
上記式(1)で表されるカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン等が挙げられる。
具体的には、下記式(3)〜(6)のいずれかで表されるカチオンが好適に例示される。
このうち、下記式(3)および(5)で表されるカチオンであるのが、本発明の光電変換素子の光電変換効率がより良好となる傾向がある理由から好ましい。
式(3)〜(6)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表す。
より具体的には、以下に示すカチオンが挙げられる。
上記式(2)で表されるカチオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオン、オキソニウムイオン等の有機カチオンが挙げられる。
具体的には、以下に示すカチオンが好適に例示される。
このうち、脂肪族4級アンモニウムイオン、スルホニウムイオン(特に、チオフェニウムイオン)であるのが、本発明の光電変換素子の光電変換効率がより良好となる傾向がある理由から好ましい。
一方、上記有機塩化合物(C)が有するアニオンとしては、具体的には、I-、Br-、AlCl4 -、Al2Cl7 -、NO3 -、BF4 -、PF6 -、CH3COO-、CF3COO-、CF3SO3 -、(CN)4-、SCN-、(CF3SO22-、(CN)2-、(CF3SO23-、(CN)3-、AsF6 -、SbF6 -、F(HF)n -、CF3CF2CF2CF2SO3 -、(CF3CF2SO22-、CF3CF2CF2COO-、ホスホネートアニオン(例えば、メチルホスホネート)等が好適に例示される。
このうち、本発明の光電変換素子の光電変換効率がより良好となる傾向がある理由から、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)であるのが好ましく、ヨウ素イオン(I-)であるのがより好ましい。
また、本発明の光電変換素子の耐熱性が良好になるという理由から、チオシアネートアニオン(SCN-)(連結異性体であるイソチオシアネートアニオンを含む。以下同様。)が好ましい。これは、後述する実施例に示すように、チオシアネートアニオンが配位した金属錯体(例えば、後述するルテニウム錯体色素)を用いた場合に発現される効果であることを考慮すると、加熱により金属錯体からチオシアネートアニオンの配位が外れた場合であっても、有機塩化合物(C)が有するチオシアネートアニオンが再配位することが可能となり、色素としての機能、すなわち光を吸収し、電子を放出する機能を維持することができたためと考えられる。
有機塩化合物(C)としては、例えば、上記で例示されるカチオンおよびアニオンの組み合わせからなる有機塩化合物等が挙げられる。
中でも、本発明の光電変換素子の光電変換効率がより良好になるという理由から、カチオンとしてイミダゾリウムイオンを有し、アニオンとしてヨウ素イオンを有する有機塩化合物が好ましく、本発明の光電変換素子の耐熱性が良好になるという理由から、チオシアネートアニオンを有する有機塩化合物が好ましく、イミダゾリウムイオンおよびヨウ素イオンを有する有機塩化合物と、チオシアネートアニオンを有する有機塩化合物とを併用することがより好ましい。
上記有機塩化合物(C)の合成方法は特に限定されず、従来公知の方法により、上記で例示されるカチオンおよびアニオンの組み合わせからなる各種の有機塩化合物を合成することができる。
上記有機塩化合物(C)としては、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムアイオダイド、1−((2−メトキシエトキシ)エチル)−3−((2−メトキシエトキシ)エチル)イミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−1−ブチルピロリジニウムチオシアネート、1−メチル−1−エチルピロリジニウムチオシアネート等の合成品のほか、市販品を使用することができ、具体的には、例えば、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド(東京化成社製)、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムアイオダイド(東京化成社製)、1−メチル−1−メチル−ピロリジニウムアイオダイド(アルドリッチ社製)、テトラプロピルアンモニウムアイオダイド(東京化成社製)、テトラブチルアンモニウムアイオダイド(東京化成社製)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(Merck社製)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート(Merck社製)、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムチオシアネート(BASF社製)、テトラプロピルアンモニウムチオシアネート(Merck社製)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(Solvent Innovation社製)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチルホスホネート(関東化学社製)、トリエチルヘキシルホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド(アルドリッチ社製)、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド(アルドリッチ社製)等を使用することができる。
なお、有機塩化合物の中には、互変異性を示すものがあることから、本発明における有機塩化合物(C)については、その互変異性体を含むものとする。
具体的には、例えば、「1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムアイオダイド」は、その互変異性体である「1−ペンチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド」を含み、「1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムアイオダイド」は、その互変異性体である「1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド」を含むものとする。
本発明においては、上記有機塩化合物(C)を含有する場合の含有量は、上記有機溶媒(A)100質量部に対して、5〜70質量部であるのが好ましく、10〜60質量部であるのがより好ましい。
また、上記有機塩化合物(C)を含有する場合、上記有機溶媒(A)と上記有機塩化合物(C)との比率(A/C)は、本発明の光電変換素子の優れた耐湿性を保持し、かつ、本発明の色素増感太陽電池における光増感色素(特に有機色素)の溶出を抑制する観点から、59/41〜95/5であるのが好ましく、63/37〜90/10であるのがより好ましい。
<その他の成分>
本発明の電解質は、本発明の光電変換素子の光電変換効率をより向上させる観点から、酸化還元対(レドックス対)を添加することができる。
酸化還元対としては、色素増感太陽電池において一般的に使用されているまたは使用することができる任意のものを本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。
例えば、ヨウ素/ヨウ化物イオン、臭素/臭化物イオン等を用いることができる。具体的には、ヨウ素とLiI、NaI、KI等との金属ヨウ化物、ヨウ素と4級イミダゾリウム化合物とのヨウ化物塩、ヨウ素と4級ピリジニウム化合物とのヨウ化物塩、ヨウ素とテトラアルキルアンモニウム化合物とのヨウ化物塩等のヨウ素/ヨウ化物イオン対;臭素とLiBr、NaBr、KBr等との金属臭化物、臭素と4級イミダゾリウム化合物との臭化物塩、臭素と4級ピリジニウム化合物との臭化物塩、臭素とテトラアルキルアンモニウム化合物との臭化物塩等の臭素/臭化物イオン;フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウム塩、コバルト錯体等の金属錯体;ジスルフィド化合物とメルカプト化合物との硫黄化合物;ハイドロキノン−キノン;ビオロゲン色素;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、ヨウ素/ヨウ化物イオン、臭素/臭素化物イオンが好ましい。
また、本発明の電解質は、本発明の光電変換素子の短絡電流を向上させる観点から、無機塩および/または有機塩を添加することができる。
無機塩、有機塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属塩等を挙げることができ、具体的には、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、トリフルオロ酢酸リチウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、チオシアン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、六フッ化りん酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機塩、有機塩の添加量は、特に限定されず、本発明の目的を損なわない限り、従来通りとすることができる。
また、本発明の電解質は、本発明の光電変換素子の開放電圧を向上させる観点から、ピリジン類、ベンズイミダゾール類を添加することができる。
具体的には、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン等のアルキルピリジン類;メチルイミダゾール、エチルイミダゾール、プロピルイミダゾール等のアルキルイミダゾール類;メチルベンズイミダゾール、エチルベンズイミダゾール、ブチルベンズイミダゾール、プロピルベンズイミダゾール等のアルキルベンズイミダゾール類;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ピリジン類、ベンズイミダゾール類の添加量は、特に限定されず、本発明の目的を損わない限り、従来通りとすることができる。
本発明の電解質は、上記有機溶媒(A)以外の有機溶媒を添加してもよく、その具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル類;エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、シアノエチルエーテル、グルタロニトリル、バレロニトリル等のニトリル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン極性溶媒類;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機溶媒の含有量は、特に限定されず、本発明の目的を損わない限り、従来通りとすることができる。
本発明の電解質の製造方法は特に限定されず、例えば、上述した有機溶媒(A)および層状粘土鉱物(B)ならびに所望により含有してもよい有機塩化合物(C)等を混合し、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、すりつぶし機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ホバートミキサー、ロール、ニーダー等を用いて室温下または加熱下(例えば40〜150℃)で十分に混合し、均一に分散(混練)させることにより製造することができる。
ここで、上記混合には、必要に応じて有機溶剤(例えば、トルエン等)を併用し、混合後に有機溶剤を真空留去する方法を用いてもよい。
〔光電変換素子および色素増感太陽電池〕
次に、本発明の光電変換素子および色素増感太陽電池について、図1を用いて詳述する。図1は、本発明の光電変換素子の基本構成の一例を示す模式断面図である。
本発明の光電変換素子は、透明導電膜および金属酸化物半導体多孔質膜を有する光電極と、上記光電極に対向して配置される対向電極と、上記光電極と上記対向電極との間に配された電解質層とを有する光電変換素子である。
<光電極>
上記光電極は、例えば、図1に示すように、透明基板1と透明導電膜2と酸化物半導体多孔質膜3により構成されている。
ここで、透明基板1は、光透過性が良好なものが好ましく、その具体例としては、ガラス基板の他、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、環状オレフィンポリマー、ポリエーテルサルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂基板(フィルム)が挙げられる。
また、透明導電膜2としては、具体的には、例えば、アンチモンやフッ素がドープされた酸化スズ、アルミニウムやガリウムがドープされた酸化亜鉛、スズがドープされた酸化インジウム等の導電性金属酸化物が挙げられる。
また、透明導電膜2の厚さは、0.01〜1.0μm程度であるのが好ましい。
更に、透明導電膜2を設けるための方法は特に限定されず、例えば、塗布法、スパッタリング法、真空蒸着法、スプレーパイロリシス法、化学気相成長法(CVD)、ゾルゲル法等が挙げられる。
次いで、酸化物半導体多孔質膜3は、酸化物半導体微粒子の分散液を透明導電膜2上に塗布することによって得られる。
上記酸化物半導体微粒子としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記分散液は、上記酸化物半導体微粒子と分散媒とをサンドミル、ビーズミル、ボールミル、3本ロールミル、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ヘンシェルミキサー、ジェットミル等の分散機で混合することにより得られる。
また、上記分散液は、分散機で混合して得た後、使用(塗布)直前に、超音波ホモジナイザー等を用いて超音波処理を施すのが好ましい。使用直前に超音波処理を施すことにより、本発明の光電変換素子の光電変換効率がより良好となる。これは、使用直前に超音波処理を施した分散液を用いて形成した酸化物半導体多孔質膜に対して本発明の電解質が充填されやすくなったり、色素の吸着能が高まったりしたためと考えられる。
更に、上記分散液には、分散液中の上記酸化物半導体微粒子の再凝集を防ぐために、アセチルアセトン、塩酸、硝酸、界面活性剤、キレート剤等を添加してもよく、分散液の増粘のために、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール等の高分子やセルロース系の増粘剤等を添加してもよい。
上記分散液としては、酸化チタンペーストSP100、SP200(いずれも昭和電工社製)、酸化チタン微粒子Ti−Nanoxide T(ソーラロニクス社製)、Ti−Nanoxide D(ソーラロニクス社製)、Ti−Nanoxide T/SP(ソーラロニクス社製)、Ti−Nanoxide D/SP(ソーラロニクス社製)、チタニア塗布ペーストPECC01(ペクセル・テクノロジーズ社製)、チタニア粒子ペーストPST−18NR、PST−400C(いずれも日揮触媒化成社製)等の市販品を用いることも可能である。
上記分散液を透明導電膜上に塗布する方法としては、例えば、公知の湿式成膜法を用いることができる。
湿式成膜法としては、具体的には、例えば、スクリーンプリント法、インクジェットプリント法、ロールコート法、ドクターブレード法、スピンコート法、スプレー塗布法等が挙げられる。
また、上記分散液を透明導電膜上に塗布後、微粒子間の電子的なコンタクトの向上、透明導電膜との密着性の向上、膜強度の向上を目的として、加熱処理、化学処理、プラズマ、オゾン処理等を行うのが好ましい。
加熱処理の温度としては、40℃〜700℃であるのが好ましく、40℃〜650℃であるのが好ましい。また、加熱処理の時間としては、特に制限はないが、通常は10秒〜24時間程度である。
化学処理としては、具体的には、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキ処理、カルボン酸誘導体を用いた化学吸着処理、三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理等が挙げられる。
<対向電極>
上記対向電極とは、図1に示すように、光電極4に対向して配置される電極5であり、例えば、金属基板、表面に導電膜を有するガラス基板や樹脂基板等を用いることができる。
金属基板としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、チタン等の金属を用いることができる。樹脂基板としては、光電極4を構成する透明基板1で例示した基板(フィルム)に加えて、不透明あるいは透明性に劣る一般的な樹脂基板も用いることができる。
また、表面に設ける導電膜としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、チタン等の金属;炭素;酸化スズ;アンチモンやフッ素がドープされた酸化スズ;酸化亜鉛;アルミニウムやガリウムがドープされた酸化亜鉛;スズがドープされた酸化インジウム;等の導電性金属酸化物;等が挙げられる。導電膜の厚さや形成方法は、光電極4を構成する透明導電膜2と同様のものを挙げることができる。
本発明においては、対向電極5として、基板上に導電性高分子膜を形成させた電極や導電性高分子フィルム電極を用いてもよい。
導電性高分子としては、具体的には、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等が挙げられる。
基板上に導電性高分子膜を形成させる方法は、通常湿式成膜法として知られているディッピング法やスピンコーティング法等を用いて、高分子分散液から基板上に導電高分子膜を形成することができる。
導電性高分子分散液としては、特開2006−169291号公報で開示したポリアニリン分散液や市販品であるポリチオフェン誘導体水分散液(バイトロンP、バイエル社製)、三菱レイヨン社製(アクアセーブ、ポリアニリン誘導体水溶液)等を用いることができる。
また、基板が上記導電基板である場合、上記手法に加えて電解重合法によっても基板上に導電性高分子膜を形成させることができる。導電性高分子フィルム電極は、電解重合法によって電極上に形成された導電性高分子フィルムを電極から剥離した自立性フィルムまたは導電性高分子分散液から通常湿式成膜法として知られているキャスティング法やスピンコーティング法等を用いて形成された自立性フィルム等を用いることもできる。ここで言う導電性高分子分散液は、導電性高分子微粒子が溶媒中に分散している状態と導電性高分子が溶媒中に溶解している状態とが混在しているものを、便宜上導電性高分子分散液としている。
<電解質>
上記電解質層は、図1に示すように、光電極4および対向電極5の間に設けられる電解質層6であり、本発明の光電変換素子においては、上述した本発明の電解質を用いる。
本発明の光電変換素子は、上述した本発明の電解質を用いているため、優れた耐湿性を達成することができる。
本発明の色素増感太陽電池は、上述した本発明の光電変換素子を構成する光電極に光増感色素を担持させた光電変換素子の1種である。
ここで、光増感色素としては、可視光領域および/または赤外光領域に吸収を持つ色素であれば特に限定されなく、金属錯体または有機色素等を用いることができる。
上記金属錯体としては、具体的には、例えば、ビピリジン構造やターピリジン構造などの配位子が配位したルテニウム錯体色素(下記式参照)、鉄錯体色素、オスミウム錯体色素、白金錯体色素、イリジウム錯体色素、金属フタロシアニン、金属ポルフィリン等を用いることができる。
一方、上記有機色素としては、具体的には、例えば、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、クマリン系色素、インドール系色素、フルオレン系色素、トリフェニルアミン系色素等を用いることができる。
光増感色素を担持させる方法に特に制限はないが、上記色素を、例えば、水、アルコール系溶媒、二トリル系溶媒に溶解させ、色素溶液に酸化物半導体多孔質膜3を浸漬または色素溶液を酸化物半導体多孔質膜3に塗布することにより担持される。
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜25、比較例1〜20)
<電解質の調製>
混合容器中で、下記第1表〜下記第4表(以下、「第1表等」という。)に示す有機溶媒、層状粘土鉱物等を第1表等に示す組成比で、撹拌し、混合することにより電解質を調製した。
具体的には、第1表等に示す有機溶媒に対して、第1表等に示す組成比で層状粘土鉱物を撹拌しながら添加し、予め層状粘土鉱物を膨潤させ分散させたゲル状物質を得た。
得られたゲル状物質に、第1表等に示す有機塩化合物、ヨウ素、コバルト錯体およびN−メチルベンズイミダゾールを第1表等に示す組成比で、撹拌し、混合した。
<色素増感太陽電池(光増感色素:ルテニウム錯体色素1)の作製>
透明導電性ガラス(FTOガラス、表面抵抗15Ω/□、日本板硝子社製)上に、酸化チタンペーストTi-Nanoxide D(Solaronix社製)を塗布し、室温下で乾燥させた後、450℃の温度で30分間焼結することにより、透明導電性ガラス上に酸化チタン多孔質膜が形成された光電極を作製した。
作製した光電極を、ルテニウム錯体色素(シス−(ジイソチオシアネート)−N,N′−ビス(2,2′−ビピリジル−4,4′−ジカルボキシリックアシッド)ルテニウム(II)錯体)(Ruthenium 535-bisTBA、Solaronix社製)のブチルアルコール/アセトニトリル溶液(体積比:1/1、濃度3×10-4mol/L)に4時間浸漬させた。
その後、アセトニトリルで洗浄し、暗所において窒素気流下で乾燥することにより光電極の酸化チタン電極に増感色素を担持させたものを光電極として用いた。
光増感色素を担持させた光電極上に調製した上記電解質を塗りつけ、これと、透明導電性ガラス基板(導電面にスズがドープされた酸化インジウム、シート抵抗:8Ω/□、日本板硝子社製)表面にスパッタリング法で厚さ約100nmの白金薄膜を形成させた白金対向電極とを張り合わせた。貼り合せる際、光電極と白金対向電極の間に熱融着フィルムを介在させ、150℃で熱融着させて電極間の封止を行うことにより、色素増感太陽電池(光増感色素:ルテニウム錯体色素1)を得た。
<色素増感太陽電池(光増感色素:ルテニウム錯体色素2)の作製>
ルテニウム錯体色素として、シス−(ジイソチオシアネート)−(2,2′−ビピリジル−4,4′−ジカルボキシリックアシッド)−(2,2′−ビピリジル−4,4′−ジノニル)ルテニウム(II)錯体(Ruthenium 520-DN、Solaronix社製)を用いた以外は、上記色素増感太陽電池(光増感色素:ルテニウム錯体色素1)と同様の方法で、色素増感太陽電池(光増感色素:ルテニウム錯体色素2)を得た。
<色素増感太陽電池(光増感色素:有機色素)の作製>
ルテニウム錯体色素に代えてインドリン系色素(D149、三菱製紙社製)を用いた以外は色素増感太陽電池(光増感色素:ルテニウム錯体色素)と同様の方法で色素増感太陽電池(光増感色素:有機色素)を作製した。
得られた2種の色素増感太陽電池について、それぞれ光電変換効率、耐熱性、耐湿性および耐湿熱性を以下に示す方法により測定し、評価した。その結果を第1表等に示す。
<光電変換効率>
図2に示すように、光源としてソーラーシミュレーターを用い、AM1.5の擬似太陽光を100mW/cm2の光強度で光電極側から照射し、電流電圧測定装置(ケースレーインスツルメンツ社製デジタルソースメーター2400)を用いて変換効率を求めた。
<耐熱性(維持率)>
光電変換効率を測定した色素増感太陽電池を85℃の温度下で、1000時間放置し、その後に上記と同様の方法により光電変換効率を測定し、その維持率(加熱後の光電変換効率/加熱前の光電変換効率)を算出した。
この結果、光電変換効率の維持率が0.80以上であれば、耐熱性に優れていると評価できる。
<耐湿性(維持率)>
光電変換効率を測定した色素増感太陽電池を40℃および85%RHの条件下に1000時間放置し、その後に上記と同様の方法により光電変換効率を測定し、その維持率(加湿後の光電変換効率/加湿前の光電変換効率)を算出した。
この結果、光電変換効率の維持率が0.80以上であれば、耐湿性に優れていると評価できる。
<耐湿熱性(維持率)>
光電変換効率を測定した色素増感太陽電池を85℃および85%RHの条件下に1000時間放置し、その後に上記と同様の方法により光電変換効率を測定し、その維持率(加熱・加湿後の光電変換効率/加熱・加湿前の光電変換効率)を算出した。
この結果、光電変換効率の維持率が0.80以上であれば、耐湿熱性に優れていると評価できる。
第1表等中の各成分は、以下のものを使用した。
・有機溶媒A1:メトキシプロピオニトリル(沸点:166℃、比誘電率:25)
・有機溶媒A2:ブトキシプロピオニトリル(沸点:206℃、比誘電率:20)
・有機溶媒A3:プロピレンカーボネート(沸点:240℃、比誘電率:65)
・有機溶媒A4:エチルイソプロピルスルホン(沸点:250℃、比誘電率:32)
・有機溶媒X:アセトニトリル(沸点:82℃、比誘電率:21)
・有機溶媒Y:キノリン(沸点:237℃、比誘電率:9)
・層状粘土鉱物B1:合成スメクタイト(商品名:ルーセンタイトSPN(ルーセンタイトSWN(平均粒径:0.02μm、コープケミカル社製)を有機化処理した有機化層状粘土鉱物)、コープケミカル社製)
・層状粘土鉱物B2:4級アンモニウムおよびアルキルトリアルコキシシランで処理したシラン処理有機ベントナイト(ホージュン社製)
・層状粘土鉱物B3:合成雲母(商品名:ソマシフMPE(ソマシフME(平均粒径:5〜7μm、コープケミカル社製)を有機化処理した有機化層状粘土鉱物)、コープケミカル社製)
・有機塩化合物C1:テトラプロピルアンモニウムアイオダイド(東京化成社製)
・有機塩化合物C2:メチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド(東京化成社製)
・有機塩化合物C3:ジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド(東京化成社製)
・有機塩化合物C4:テトラプロピルアンモニウムチオシアネート(Merck社製)
・有機塩化合物C5:グアニジンチオシアネート(アルドリッチ社製)
・コバルト錯体:トリス(2,2′―ビピリジン)コバルトヘキサフルオロホスフェート(アルドリッチ社製)
上記第1表等に示す結果から明らかなように、層状粘土鉱物(B)を含有せずに調製した比較例1、7、11および17の電解質は、加熱後および加湿後の光電変換効率の維持率が小さく、耐熱性、耐湿性、耐湿熱性に劣ることが分かった。
また、有機溶媒(A)を含有せずに調製した比較例2〜6、8〜10、12〜16および18〜20の電解質は、加熱後および加湿後の光電変換効率の維持率が小さく、耐熱性、耐湿性、耐湿熱性に劣ることが分かった。
これに対し、有機溶媒(A)およびアルキルシリル基を有する層状粘土鉱物(B)を用いて調製した実施例1〜25の電解質は、いずれも加湿後の光電変換効率の維持率が高く、耐湿性に優れることが分かった。
更に、光増感色素としてルテニウム錯体色素1または2を用いた色素増感太陽電池については、有機塩化化合物(C)としてチオシアネートアニオンを有する有機塩化合物C4、C5を配合した実施例3〜13の電解質を用いると、耐熱性および耐湿熱性の改善効果があることが分かった。なお、光増感色素として有機色素を用いた色素増感太陽電池については、有機塩化合物C4、C5の有無を問わず、耐熱性および耐湿熱性に優れていることが分かった。
更に、光増感色素としてルテニウム錯体色素2を用いた色素増感太陽電池については、酸化還元対として、ヨウ素の代わりにコバルト錯体を用いた場合であっても、加湿後の光電変換効率の維持率が高く、耐湿性に優れることが分かった(実施例13)。
同様に、光増感色素として有機色素を用いた色素増感太陽電池については、ヨウ素の代わりにコバルト錯体を用いた場合であっても、加湿後の光電変換効率の維持率が高く、耐湿性に優れることが分かった(実施例25)。
1:透明基板
2:透明導電膜
3:酸化物半導体多孔質膜
4:光電極
5:対向電極
6:電解質層
11:透明基板
12:透明導電膜(ITO、FTO)
13:金属酸化物
14:電解質
15:白金薄膜
16:透明導電膜(ITO、FTO)
17:基板
18:対向電極

Claims (5)

  1. 有機溶媒(A)および層状粘土鉱物(B)を含有する光電変換素子用電解質であって、
    前記有機溶媒(A)の沸点が150℃以上であり、比誘電率が20以上であり、
    前記層状粘土鉱物(B)が、アルキルシリル基を有する光電変換素子用電解質。
  2. 更に、第3級または第4級カチオンを有する有機塩化合物(C)を含有する請求項1に記載の光電変換素子用電解質。
  3. 前記有機塩化合物(C)が、下記式(1)または(2)で表されるカチオンを有する請求項2に記載の光電変換素子用電解質。

    (式(1)中、R1は、炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでいてもよい置換基を有していてもよい。R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。ただし、窒素原子が二重結合を含む場合、R3は存在しない。式(2)中、Qは、窒素原子、酸素原子、リン原子または硫黄原子を表し、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。ただし、Qが酸素原子または硫黄原子の場合、R7は存在せず、Qが硫黄原子の場合、R4およびR5は連結していてもよい。)
  4. 透明導電膜および金属酸化物半導体多孔質膜を有する光電極と、
    前記光電極に対向して配置される対向電極と、
    前記光電極と前記対向電極との間に配された電解質層とを有し、
    前記電解質層が、請求項1〜3のいずれかに記載の光電変換素子用電解質である光電変換素子。
  5. 請求項4に記載の光電極に光増感色素を担持させてなる色素増感太陽電池。
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