JP5014610B2 - ポリアミド樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

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本発明は、特定のポリアミド樹脂とフッ素樹脂と繊維状充填剤および/または針状充填剤からなる摺動特性に優れたポリアミド樹脂組成物、それからなる成形品、並びにポリアミド樹脂組成物の製造方法に関する。
ナイロン6、ナイロン66に代表される脂肪族ポリアミド樹脂は、耐熱性、耐薬品性、剛性、耐磨耗性、成形性などの優れた性質を持つために、エンジニアリングプラスチックとして多くの用途に使用されてきた。また、耐熱性をさらに改良したナイロン46も開発されてきた。これらのポリアミド樹脂は、耐摩耗性に優れるだけでなく、無潤滑状態でも焼き付きが起こりにくく、また騒音が小さく、軽量性、耐蝕性にも優れているため、軸受け、歯車、ブッシュ、スペーサー、ローラー、カムなどの摺動部品に数多く使用されている。
プラスチックを定常的に摩擦の生じる条件下で使用した場合、摩擦熱による温度上昇のために、ある限界を超えると溶融が起こると同時に著しい摩耗を起こし、定常の摩擦運動が続けられなくなる。従来の脂肪族ポリアミド樹脂の場合も状況は同じで、過酷な条件下で使用した場合には試料全体の温度が上昇し、最終的には摩耗面全体が溶融する場合もある。さらに、従来の脂肪族ポリアミド樹脂は吸水による寸法変化や物性低下が問題となり、更なる性能の向上が望まれている。
このような要求に対し、テレフタル酸と1,6−ヘキサンジアミンを主成分とする半芳香族ポリアミド樹脂(以下、6T系ポリアミドと略称する)が種々提案され、一部は実用化されている(特許文献1〜3などを参照)。しかしながら、6T系ポリアミドは、ポリマーの分解温度を超える370℃付近に融点があるため、溶融重合、溶融成形が困難であり、実用に耐えるものではなく、実際には、アジピン酸、イソフタル酸などのジカルボン酸成分、あるいはナイロン6などの脂肪族ポリアミドを30〜40モル%共重合することにより、実使用可能温度領域、すなわち280〜320℃程度にまで低融点化した組成で用いられているのが現状である。このように多量の第3成分(場合によっては第4成分)を共重合することは、確かにポリマーの低融点化には有効なものの、一方では結晶化速度や到達結晶化度の低下を伴い、その結果、高温下での剛性、耐薬品性、寸法安定性などの諸物性が低下するばかりでなく、成形サイクルの延長に伴う生産性の低下をも招く。また、吸水による寸法安定性などの諸物性の変動に関しても、芳香族基の導入により、従来の脂肪族ポリアミド樹脂に比べれば多少改善されてはいるものの、実質的な問題解決のレベルまでには達していない。
このような課題を解決するために、耐熱性、低吸水性および耐薬品性においてさらに優れた性能を有する、テレフタル酸をジカルボン酸単位とし、1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンをジアミン単位とするポリアミド樹脂が、これまでに知られている(特許文献4および5参照)。このポリアミド樹脂から作製された成形体は、低吸水性を有し、かつ耐熱性の低い第3成分(場合によっては第4成分)を含まないことから、結晶化度が高く、優れた摺動性を発現する。
ところで、強度などの力学物性を向上させる目的で、樹脂に繊維状充填剤や針状充填剤を配合した樹脂組成物が知られている。しかしながら、このような樹脂組成物から形成した摺動部品は、摺動面から充填剤が脱落して摩耗を進行させてしまう場合があった。そのため、摺動面に潤滑膜を形成し充填剤の脱落を防止する目的で、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン樹脂など)を配合する技術が知られている(例えば特許文献6などを参照)。
特開平3−7761号公報 特開平3−72565号公報 特開昭60−158220号公報 特開平7−228769号公報 特開平7−228772号公報 特開平7−228774号公報
しかしながら、繊維状充填剤や針状充填剤と一般的なフッ素樹脂とを単純にポリアミド樹脂に配合した場合、フッ素樹脂がポリアミド樹脂と充填剤の親和性を低下させることから、二軸押出機などを用いてペレットを作製する際にストランド安定性(生産性)が低下したり、また、ポリアミド樹脂中にうまく分散できなかった充填剤がケバとして発生し、ペレットの品質を低下させたり、さらにフッ素樹脂の耐熱性が低い場合には、射出成形時に金型汚染が生じるといった問題がおきる場合があった。
しかして、本発明の目的は、極めて優れた摺動性を有し、かつ引張り強さなどの機械的特性や、低吸水性、耐熱性、耐薬品性などの特性に優れるだけでなく、ペレット作製時の生産性やその品質、および射出成形時の金型汚染性にも優れるポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記した従来技術の問題点を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、特定のポリアミド樹脂に対して、特定の粒径、粒径分布および耐熱性を有するフッ素樹脂と、特定の繊維状充填剤および/または針状充填剤とを配合すると、極めて優れた摺動性を有し、かつ引張り強さなどの機械的特性や、低吸水性、耐熱性、耐薬品性などの特性に優れるだけでなく、ペレット作製時の生産性やその品質、および射出成形時の金型汚染性にも優れるポリアミド樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、[A]テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、炭素数6〜18の脂肪族ジアミン単位を60〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなるポリアミド樹脂(I)100質量部、[B]マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定した粒子の50%粒子径をRaμmおよび粒子の篩通過側累積90%径をRbμmとした時、Ra≦20かつ0.50≦Ra/Rb≦1.00であり、熱重量分析(TGA)による1%質量減少温度が380℃以上であるフッ素樹脂(II)5〜50質量部、および[C]繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)5〜100質量部を溶融混練することにより得られるポリアミド樹脂組成物、およびそれからなる成形品に関する。
また、本発明は、[A]テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、炭素数6〜18の脂肪族ジアミン単位を60〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなるポリアミド樹脂(I)100質量部、[B]マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定した粒子の50%粒子径をRaμmおよび粒子の篩通過側累積90%径をRbμmとした時、Ra≦20かつ0.50≦Ra/Rb≦1.00であり、熱重量分析(TGA)による1%質量減少温度が380℃以上であるフッ素樹脂(II)5〜50質量部、および[C]繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)5〜100質量部を溶融混練することを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法に関する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、極めて優れた摺動性を有し、かつ引張り強さなどの機械的特性や、低吸水性、耐熱性、耐薬品性などの特性に優れるだけでなく、ペレット作製時の生産性やその品質、並びに射出成形時の金型汚染性にも優れる。
以下に本発明の詳細な説明を行う。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、[A]テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、炭素数6〜18の脂肪族ジアミン単位を60〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなるポリアミド樹脂(I)100質量部、[B]マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定した粒子の50%粒子径をRaμmおよび粒子の篩通過側累積90%径をRbμmとした時、Ra≦20かつ0.50≦Ra/Rb≦1.00であり、さらに熱重量分析(TGA)による1%質量減少温度が380℃以上であるフッ素樹脂(II)5〜50質量部、および[C]繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)5〜100質量部を溶融混練することにより得られるものである。
本発明において使用されるポリアミド樹脂(I)を構成するジカルボン酸単位(a)は、テレフタル酸単位を50〜100モル%含有する。ジカルボン酸単位(a)におけるテレフタル酸単位の含有率が50モル%未満の場合には、得られるポリアミド樹脂組成物の耐熱性が低下する。ジカルボン酸単位(a)におけるテレフタル酸単位の含有率は、75〜100モル%の範囲にあることが好ましく、90〜100モル%の範囲にあることがより好ましい。
ジカルボン酸単位(a)は、50モル%以下であれば、テレフタル酸単位以外の他のジカルボン酸単位を含んでもよい。かかる他のジカルボン酸単位としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などから誘導される単位を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。ジカルボン酸単位(a)におけるこれらの他のジカルボン酸単位の含有率は、25モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸から誘導される単位を溶融成形が可能な範囲内で含んでいてもよい。
ポリアミド樹脂(I)を構成するジアミン単位(b)は、炭素数6〜18の脂肪族ジアミン単位を60〜100モル%含有する。炭素数6〜18の脂肪族ジアミン単位を上記の割合で含有するポリアミド樹脂(I)を使用すると、靱性、摺動性、耐熱性、成形性、低吸水性、軽量性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。ジアミン単位(b)における炭素数6〜18の脂肪族ジアミン単位の含有率は、75〜100モル%の範囲にあることが好ましく、90〜100モル%の範囲にあることがより好ましい。
上記の炭素数6〜18の脂肪族ジアミン単位としては、例えば、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−アンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどの直鎖状脂肪族ジアミンや、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの分岐鎖状脂肪族ジアミンなどから誘導される単位が挙げられ、ポリアミド樹脂(I)として、これらのうちの1種または2種以上を含むポリアミド樹脂を使用することができる。
上記の炭素数6〜18の脂肪族ジアミン単位は、耐熱性、低吸水性、および耐薬品性により優れるポリアミド樹脂組成物が得られることから、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位であることが好ましい。ジアミン単位が1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を共に含む場合には、1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比は、1,9−ノナンジアミン単位/2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位=95/5〜50/50の範囲にあることが好ましく、85/15〜55/45の範囲にあることがより好ましい。
ジアミン単位(b)は、40モル%以下であれば、炭素数6〜18の脂肪族ジアミン単位以外の他のジアミン単位を含んでもよい。かかる他のジアミン単位としては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミンなどの脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの芳香族ジアミンなどから誘導される単位を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を含むことができる。ジアミン単位(b)におけるこれらの他のジアミン単位の含有率は25モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
また、ポリアミド樹脂(I)はアミノカルボン酸単位を含有してもよい。該アミノカルボン酸単位としては、例えば、カプロラクタム、ラウリルラクタムなどのラクタム;11−アミノアンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸などから誘導される単位を挙げることができる。ポリアミド樹脂(I)におけるアミノカルボン酸単位の含有率は、ポリアミド樹脂(I)の全ジカルボン酸単位に基づいて40モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。
ポリアミド樹脂(I)は、その分子鎖の末端基の10%以上が末端封止剤により封止されていることが好ましい。分子鎖の末端基が末端封止剤により封止されている割合(末端封止率)は、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。末端封止率が10%以上のポリアミド樹脂(I)を使用すると、溶融安定性、耐熱水性などの物性がより優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。
末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基またはカルボキシル基との反応性を有する単官能性の化合物であれば特に制限はないが、反応性および封止末端の安定性などの点から、モノカルボン酸またはモノアミンが好ましく、取扱いの容易さなどの点から、モノカルボン酸がより好ましい。その他、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などを末端封止剤として使用することもできる。
末端封止剤として使用されるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸;これらの任意の混合物などを挙げることができる。これらのなかでも、反応性、封止末端の安定性、価格などの点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が好ましい。
末端封止剤として使用されるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミンなどの芳香族モノアミン;これらの任意の混合物などを挙げることができる。これらのなかでも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格などの点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが好ましい。
ポリアミド樹脂(I)の末端封止率は、ポリアミド樹脂(I)に存在しているカルボキシル基末端、アミノ基末端および末端封止剤によって封止された末端基の数をそれぞれ測定し、下記の式(1)に従って求めることができる。各末端基の数は、H−NMRにより各末端基に対応する特性シグナルの積分値より求めるのが精度、簡便さの点で好ましい。
末端封止率(%)=[(A−B)/A]×100 (1)
〔式中、Aは分子鎖の末端基の総数(これは通常、ポリアミド分子の数の2倍に等しい)を表し、Bは封止されずに残ったカルボキシル基末端およびアミノ基末端の合計数を表す。〕
ポリアミド樹脂(I)は、ポリアミド樹脂を製造する方法として知られている任意の方法を用いて製造することができる。例えば、酸クロライドとジアミンを原料とする溶液重合法または界面重合法、ジカルボン酸とジアミンを原料とする溶融重合法、固相重合法、溶融押出重合法などの方法により製造することができる。
ポリアミド樹脂(I)を製造する際に、前記の末端封止剤の他に、例えば、触媒として、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、それらの塩またはエステルなどを添加することができる。上記の塩またはエステルとしては、例えば、リン酸、亜リン酸または次亜リン酸と、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモンなどの金属との塩;リン酸、亜リン酸または次亜リン酸のアンモニウム塩;リン酸、亜リン酸または次亜リン酸のエチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、イソデシルエステル、デシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステルなどが挙げられる。
ポリアミド樹脂(I)は、濃硫酸中、30℃の条件下で測定した極限粘度[η]が、0.6〜2.0dl/gの範囲にあることが好ましく、0.7〜1.9dl/gの範囲にあることがより好ましく、0.8〜1.8dl/gの範囲にあることがさらに好ましい。極限粘度が0.6dl/g未満のポリアミド樹脂を使用すると、得られるポリアミド樹脂組成物の機械的性質が低下する傾向があり、極限粘度が2.0dl/gより大きいポリアミド樹脂を使用すると得られるポリアミド樹脂組成物の流動性が低下して成形性が悪化する傾向がある。
本発明のポリアミド樹脂組成物におけるポリアミド樹脂(I)の占める質量割合(含有率)は、上記の使用量を満たしたポリアミド樹脂(I)、フッ素樹脂(II)、並びに繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)を用いて溶融混練して得られるポリアミド樹脂組成物が有する質量割合(含有率)である限り特に制限はされないが、好ましくは30〜90質量%の範囲にあり、より好ましくは35〜85質量%の範囲にあり、さらに好ましくは40〜80質量%の範囲にある。
本発明において使用されるフッ素樹脂(II)は、マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定した粒子の50%粒子径をRaμmおよび粒子の篩通過側累積90%径をRbμmとした時、Ra≦20かつ0.50≦Ra/Rb≦1.00である。
フッ素樹脂(II)の上記Raが20μmを超えると、ストランドの引き取りが困難および/またはケバの発生が顕著となる。ポリアミド樹脂組成物中に良好に分散し、ペレット作製時のストランド安定性やケバの抑制を達成する観点から、上記Raは18μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。上記Raの下限値は特に制限されないが、好ましくは、上記Raは0.5μm以上である。また、上記Ra/Rbが0.50未満であると、フッ素樹脂(II)の粒子径のばらつきが多くなり、ストランドの引き取りが困難および/またはケバの発生が顕著となる。フッ素樹脂(II)を樹脂組成物中に良好に分散させ、ペレット作製時のストランド安定性やケバの抑制を達成する観点から、上記Ra/Rbは0.55〜1.00の範囲にあることが好ましく、0.60〜1.00の範囲にあることがより好ましい。
なお、本明細書におけるフッ素樹脂(II)のマイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定した粒子の50%粒子径とは、マイクロトラックFRAレーザー粒度分布計(日機装製)によって、粒子径と、その粒子径を有する粒子の体積の合計の、全粒子の体積の合計に占める割合(体積%)を求め、該割合(体積%)を低粒子径側より積算した累積値が50体積%となるときの粒子径の値である。また、本明細書におけるフッ素樹脂(II)のマイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定した粒子の篩通過側累積90%径とは、上記の累積値が90体積%となるときの粒子径の値である。
さらに、フッ素樹脂(II)は、熱重量分析(TGA)による1%質量減少温度が380℃以上である。フッ素樹脂(II)の熱重量分析(TGA)による1%質量減少温度が380℃未満であると、射出成形時に金型汚染の原因となる。射出成形時の金型汚染を低減する観点から、フッ素樹脂(II)の熱重量分析(TGA)による1%質量減少温度は、390℃以上であることが好ましく、400℃以上であることがより好ましい。
なお、本明細書におけるフッ素樹脂(II)の熱重量分析(TGA)による1%質量減少温度とは、熱重量分析(TGA)計により窒素雰囲気下、50℃から昇温速度10℃/minで昇温した時に、フッ素樹脂(II)の初期質量が1%減少したときの温度である。
フッ素樹脂(II)は、上記の規定を満たすフッ素樹脂であれば特に制限なく使用でき、例えば、ポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニリデンなどが挙げられるが、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。ポリテトラフルオロエチレンは、テトラフルオロエチレン単位以外の他の構造単位を含んでいてもよい。このような他の構造単位としては、例えば、エチレン単位、ヘキサフルオロ−1,2−プロピレン単位、[−CF(OC2m+1)−CF−](式中、mは正の整数を表す)で表されるパーフルオロアルキルビニルエーテル単位、1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエチレン単位などが挙げられる。
フッ素樹脂(II)は、市販されているものをそのまま使用することができる。
フッ素樹脂(II)の使用量は、ポリアミド樹脂(I)100質量部に対して5〜50質量部である。フッ素樹脂(II)の使用量が該範囲にあることにより、機械的特性と摺動性のバランスに優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。フッ素樹脂(II)の使用量は、ポリアミド樹脂(I)100質量部に対して10〜40質量部の範囲にあることが好ましい。
本発明において使用される繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、全芳香族ポリアミド繊維(例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリメタフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリパラフェニレンイソフタルアミド繊維、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維、ジアミノジフェニルエーテルとテレフタル酸またはイソフタル酸との縮合物から得られる繊維など)、ホウ素繊維、液晶ポリエステル繊維などの繊維状充填剤や、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラストナイトウィスカー、ゾノトライトウィスカー、珪酸カルシウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、セピオライト、黒鉛ウィスカーなどの針状充填剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)は、得られる成形体の機械的特性および耐熱性が向上することから、下記の群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
繊維状充填剤:ガラス繊維、炭素繊維、全芳香族ポリアミド繊維
針状充填剤:チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラストナイトウィスカー、ゾノトライトウィスカー
繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)は、平均長が1μm〜20mmの範囲にあることが好ましい。繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)の平均長が1μm未満であると、補強効果が小さく、機械的特性が不足する場合がある。一方、該平均長が20mmを超えると、成形性が悪化する場合がある。したがって、良好な成形性の保持および得られる成形体の機械的特性や耐熱性の向上の観点から、繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)の平均長は、5μm〜10mmの範囲にあることがより好ましく、10μm〜5mmの範囲にあることがさらに好ましい。
繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)の使用量は、ポリアミド樹脂(I)100質量部に対して5〜100質量部である。繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)の使用量が該範囲にあることにより、機械的特性と摺動性のバランスに優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)の使用量は、ポリアミド樹脂(I)100質量部に対して、10〜90質量部の範囲にあることが好ましく、20〜80質量部の範囲にあることがより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、必要に応じて、上記の繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)以外の他の充填剤を含んでもよい。このような他の充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、グラファイト、二酸化チタン、二硫化モリブデンなどの粉末状充填剤;ハイドロタルサイト、ガラスフレーク、マイカ、クレー、モンモリロナイト、カオリンなどのフレーク状充填剤などが挙げられる。他の充填剤の含有量は、ポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂(I)100質量部に対して、1〜50質量部の範囲にあることが好ましく、5〜30質量部の範囲にあることがより好ましい。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、必要に応じて結晶核剤を含んでもよい。結晶核剤としては、ポリアミド樹脂の結晶核剤として一般的に使用されるものであれば特に制限されず、例えば、タルク、シリカ、グラファイト、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、これらの任意の混合物などが挙げられる。これらのうちでも、タルクがポリアミド樹脂の結晶化速度を増大させる効果が大きいことから好ましい。結晶核剤はポリアミド樹脂との相容性を向上させる目的で、シランカップラー、チタンカップラーなどで処理されていてもよい。結晶核剤の含有量は、ポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂(I)100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲にあることが好ましく、0.1〜1質量部の範囲にあることがより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物を構成する重合体成分としては、ポリアミド樹脂(I)およびフッ素樹脂(II)のみであってもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリアミド樹脂(I)およびフッ素樹脂(II)以外の他の重合体成分を含んでもよい。このような他の重合体成分としては、例えば、未変性ポリオレフィン、変性ポリオレフィン(オレフィン性化合物をα、β−不飽和カルボン酸あるいはそのエステル、金属塩誘導体などと共重合させることにより得られるものや、カルボン酸または酸無水物などをポリオレフィンにグラフト導入したものなど)、ポリスチレン、ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂(I)として規定する以外の他のポリアミド樹脂、フッ素樹脂(II)として規定する以外の他のフッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。これらの内で、特に耐衝撃性、靭性を向上させる効果が高いことから、変性ポリオレフィンを用いることが好ましい。他の重合体成分の含有量は、ポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂(I)100質量部に対して、0.5〜50質量部の範囲にあることが好ましく、2〜30質量部の範囲にあることがより好ましい。
さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、従来から公知の銅系安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオ系酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤などの添加剤を添加することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、上記のポリアミド樹脂(I)、フッ素樹脂(II)、繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)、さらには、必要に応じて他の充填剤、結晶核剤、他の重合体成分、各種添加剤などを溶融混練することにより製造することができる。溶融混練方法としては、従来より公知の方法を採用することができ、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの混練機を使用して行うことができる。その際に使用する装置の種類や溶融混練条件などは特に限定されないが、例えば、約280〜350℃の範囲内の温度で1〜30分間混練することにより、本発明のポリアミド樹脂組成物を得ることができる。なお、本明細書において溶融混練とは、少なくともポリアミド樹脂(I)が溶融する条件で行う混練を表す。
本発明のポリアミド樹脂組成物を、目的とする成形品の種類、用途、形状などに応じて、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形、流延成形などの一般に熱可塑性重合体組成物に対して用いられている成形方法によって成形することにより、各種の成形品を製造することができる。また上記の成形方法を組み合わせた成形方法を採用することもできる。さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物と他のポリマーなどとを複合成形することもできる。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、フッ素樹脂の粒子径および1%質量減少温度の測定方法、成形品(試験片)の作製方法、押出性、金型汚染性、滞留安定性、引張り強さ、曲げ強さ、曲げ弾性率、耐衝撃性および耐熱性の評価方法、平衡吸水率の測定方法、吸水後の強度保持率および摺動性の評価方法を以下に示す。
フッ素樹脂の粒子径の測定(50%粒子径(Ra)および篩通過側累積90%径(Rb))
マイクロトラックFRAレーザー粒度分布計(日機装製)により、粒子の50%粒子径(Ra)および粒子の篩通過側累積90%径(Rb)を求めた。
フッ素樹脂の1%質量減少温度の測定
熱重量分析(TGA)計(TG50;メトラートレド製)により窒素雰囲気下、50℃から昇温速度10℃/minで昇温した時の初期質量から1%質量減少した温度を測定した。
成形品(試験片)の作製
東芝機械株式会社製の80トン射出成形機を使用して、シリンダ温度320℃および金型温度150℃(実施例、比較例1〜5)、またはシリンダ温度310℃および金型温度100℃(比較例6)の条件下で、引張り強さ、平衡吸水率および吸水後の強度保持率の評価用の試験片(JIS1号ダンベル)、耐衝撃性の評価用の試験片(寸法:長さ×幅×厚さ=64mm×12.7mm×3.2mm)、摺動性の評価用の成形品(寸法:長さ×幅×厚さ=50mm×50mm×3mm)、並びに、曲げ強さ、曲げ弾性率および耐熱性評価用の成形品(寸法:長さ×幅×厚さ=128mm×12.7mm×6.2mm)をそれぞれ作製した。
押出性の評価
二軸押出機先端部のダイスストランド出口より、ストランドを引くことが可能であり、ケバが少なかったものを「○」、ストランドを引くことが困難であり、かつケバが多かったものを「×」とした。
金型汚染性の評価
30mm×10mm×1mmの鏡面の平板を射出成形できる1点フィルムゲートの金型を用い、フルショット(完全充填)に必要な樹脂量の二分の一を射出し、ショートショット(充填不足)を発生させた。このショートショットを1000回繰り返し、促進的に平板鏡面端部に金型汚染(金型表面の曇り)を発生させ、鏡面を観察し評価した。曇りが発生しないか、わずかな曇りのみ発生したものを「○」、曇りが発生したものを「×」とした。
滞留安定性(分子量保持率)の評価
東芝機械株式会社製の80トン射出成形機を使用して、シリンダ温度320℃および金型温度150℃(実施例、比較例1〜5)、またはシリンダ温度310℃および金型温度100℃(比較例6)の条件下で、冷却時間を調整することにより滞留時間の異なる試験片を得た。シリンダ内で3分間滞留させた後に作製したJIS1号ダンベルの濃硫酸中、30℃の条件下で測定した極限粘度[η]をMとし、シリンダ内で10分間滞留させた後に作製したJIS1号ダンベルの極限粘度[η]をMとして、以下の式に従って分子量保持率(%)を求めた。
分子量保持率(%)=(M/M)×100
引張り強さの評価
上記の方法で作製した試験片を用いて、JIS K7113に準じて、オ−トグラフ(株式会社島津製作所製)を使用して、23℃における引張降伏強度を測定して引張り強さとした。
曲げ強さおよび曲げ弾性率の評価
上記の方法で作製した試験片を用いて、ASTM D790に準じて、オ−トグラフ(株式会社島津製作所製)を使用して、23℃における曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
耐衝撃性の評価
上記の方法で作製した試験片を用いて、ASTM D256に準じて、アイゾット衝撃試験機(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、ノッチ付アイゾット衝撃値を測定して耐衝撃性を評価した。
耐熱性の評価
上記の方法で作製した試験片を用いて、ASTM D648に準じて、荷重ひずみ温度測定機(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、18.6kgfの荷重下で荷重撓み温度(DTUL)を測定し、耐熱性の指標とした。
平衡吸水率の測定
上記の方法で作製した試験片を減圧下にて5日間乾燥し、秤量した(質量:W)後、40℃、95%RHの雰囲気下に35日間放置し、秤量して(質量:W)、以下の式に従って平衡吸水率(%)を求めた。
平衡吸水率(%)=〔(W−W)/W〕×100
吸水後の強度保持率の評価
平衡吸水率測定後の試験片を用いて、23℃における引張降伏強度を測定し、吸水前の試験片の引張降伏強度に対する保持率(%)を求めた。
摺動性の評価
上記の方法で作製した試験片を用いて、JIS K7218に準じて、摩擦摩耗試験機(株式会社エー・アンド・デイ製)を使用して、面圧10kgf/cm、すべり速度50〜200cm/secの条件下、鋼材S45C(サンドペーパー仕上げ)を相手材として、樹脂製試験片が溶融した時点の面圧とすべり速度を掛け合わせたものを「限界PV値(kgf/cm・cm/sec)」とした。また、面圧10または20kgf/cm、すべり速度50cm/secの条件下、鋼材S45C(サンドペーパー仕上げ)を相手材として、100分間で樹脂製試験片が摩耗した質量を「摩耗量」とし、測定中の動摩擦係数を平均したものを「動摩擦係数」とした。なお、摩耗量について、樹脂製試験片が溶融して測定が継続できなくなった場合を「溶融」と評価した。
<参考例1>
テレフタル酸3272.9g(19.70モル)、1,9−ノナンジアミン2532.4g(16.0モル)、2−メチル−1,8−オクタンジアミン633.16g(4.0モル)、安息香酸73.27g(0.60モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物6.5g(原料に対して0.1重量%)および蒸留水6リットルを内容積20リットルのオートクレーブに入れ、窒素置換した。100℃で30分間撹拌し、2時間かけて内部温度を210℃に昇温した。この時、オートクレーブは22kg/cmまで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を22kg/cmに保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を10kg/cmまで下げ、更に1時間反応させて、極限粘度[η](濃硫酸中、30℃で測定)が0.25dl/gのプレポリマーを得た。これを、100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕した。これを230℃、0.1mmHg下にて、10時間固相重合し、融点が302℃、極限粘度[η](濃硫酸中、30℃で測定)が1.20dl/g、末端の封止率が70%、密度1.14g/cmである白色のポリアミド樹脂を得た。
以下の実施例および比較例では、下記のポリアミド樹脂、フッ素樹脂、繊維状充填剤および針状充填剤を使用した。
ポリアミド樹脂
ポリアミド樹脂−1:参考例1で得られたポリアミド樹脂
ポリアミド樹脂−2:デュポン株式会社製「ザイテルHTNWRF51G30」
ポリアミド樹脂−3:DSMエンジニアリングプラスチック株式会社製「スタニルTW271F6」
フッ素樹脂
PTFE−1:株式会社喜多村製「KT−600M」
PTFE−2:株式会社喜多村製「KTL−620」
PTFE−3:株式会社喜多村製「KT−400M」
PTFE−4:株式会社喜多村製「KTL−610」
PTFE−5:三井・デュポンフロロケミカル株式会社製「ゾニールTLP10F−1」
繊維状充填剤
充填剤−1:ガラス繊維(日東紡績株式会社製「CS3G−225」)
充填剤−2:炭素繊維(東邦テナックス株式会社製「べスファイトHTA−C6−N」)
針状充填剤
充填剤−3:ウィスカー(大塚化学株式会社製「ティスモD−101」)
<実施例1〜6、比較例1〜4>
ポリアミド樹脂−1およびフッ素樹脂(II)(但し、比較例1においてはフッ素樹脂(II)は使用せず)を下記の表1に示す割合で予備混合した後、二軸押出機(株式会社プラスチック工学研究所製「BT−30」)に供給してシリンダ温度320℃の条件下に溶融混練し、サイドフィーダーを用いて繊維状充填剤または針状充填剤を供給した後に押出し、冷却、切断してペレット状のポリアミド樹脂組成物を製造した。得られたポリアミド樹脂組成物を用いて各種物性評価を行った。結果を下記の表1に示す。
<比較例5>
ポリアミド樹脂−2を単独で用いて各種物性評価を行った。結果を下記の表1に示す。
<比較例6>
ポリアミド樹脂−3を単独で用いて各種物性評価を行った。結果を下記の表1に示す。
Figure 0005014610
本発明のポリアミド樹脂組成物は、極めて優れた摺動性を有し、かつ引張り強さなどの機械的特性や、低吸水性、耐熱性、耐薬品性などの特性に優れるだけでなく、ペレット作製時の生産性やその品質、並びに射出成形時の金型汚染性にも優れることから、ギア、ブッシュ、アクチュエーター、ベアリングリテーナ、軸受け、スイッチ、ピストン、パッキン、ローラー、カム、ベルトなどの自動車用部品の素材などとして有用である。

Claims (7)

  1. [A]テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、炭素数6〜18の脂肪族ジアミン単位を60〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなるポリアミド樹脂(I)100質量部、[B]マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定した粒子の50%粒子径をRaμmおよび粒子の篩通過側累積90%径をRbμmとした時、Ra≦20かつ0.50≦Ra/Rb≦1.00であり、熱重量分析(TGA)による1%質量減少温度が380℃以上であるフッ素樹脂(II)5〜50質量部、および[C]繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)5〜100質量部を溶融混練することにより得られるポリアミド樹脂組成物。
  2. 前記炭素数6〜18の脂肪族ジアミン単位が1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. 1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比が、1,9−ノナンジアミン単位/2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位=95/5〜50/50である、請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. 繊維状充填剤および/または針状充填剤が、下記の群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
    繊維状充填剤:ガラス繊維、炭素繊維、全芳香族ポリアミド繊維
    針状充填剤:チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラストナイトウィスカー、ゾノトライトウィスカー
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。
  7. [A]テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、炭素数6〜18の脂肪族ジアミン単位を60〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなるポリアミド樹脂(I)100質量部、[B]マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定した粒子の50%粒子径をRaμmおよび粒子の篩通過側累積90%径をRbμmとした時、Ra≦20かつ0.50≦Ra/Rb≦1.00であり、熱重量分析(TGA)による1%質量減少温度が380℃以上であるフッ素樹脂(II)5〜50質量部、および[C]繊維状充填剤および/または針状充填剤(III)5〜100質量部を溶融混練することを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
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