JP2004244579A - ポリアミド成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】低吸水性であり、耐熱性、耐薬品性、摺動性、耐クリープ性、剛性、靱性に優れ、かつ燃料バリア性を有するポリアミド成形品を提供すること。
【解決手段】テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位を50〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなるポリアミド(I)または該ポリアミド(I)に重合性の多官能不飽和化合物(II)、無機フィラー(III)もしくは有機フィラー(IV)を配合してなる組成物から構成される成形品に対して放射線を照射することによって製造される、引張クリープ歪が2.0以下である成形品。
【選択図】 なし
【解決手段】テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位を50〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなるポリアミド(I)または該ポリアミド(I)に重合性の多官能不飽和化合物(II)、無機フィラー(III)もしくは有機フィラー(IV)を配合してなる組成物から構成される成形品に対して放射線を照射することによって製造される、引張クリープ歪が2.0以下である成形品。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の半芳香族ポリアミドからなる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ナイロン6、ナイロン66に代表される汎用ポリアミドは、耐熱性、耐薬品性、剛性、摺動性、成形性などの優れた性質を有し、かつ吸湿状態では極めて高い靭性を示すことから、自動車部品、電気電子部品、摺動部品など、広範な用途に使用されてきた。
【0003】
しかし、自動車分野においては、エンジンの高効率化追求によるエンジンルーム内の温度上昇に伴い、自動車に使用される樹脂部品に対する耐熱性向上の要求が高まりつつある。また、自動車に使用される樹脂部品には、ガソリン、エンジンオイル、塩化カルシウム水溶液、LLC水溶液(冷却水)等の薬品に対する耐久性が必須であり、かつ剛性、強度、靱性、耐クリープ性等の性能に対する要求も年々高度化していることから、従来のポリアミドでは対応できなくなりつつある。さらに、燃料(ガソリン)周辺に使用される燃料容器、燃料配管、クィックコネクタ等の部品には、高度な燃料バリア性が要求されつつあり、ナイロン6、ナイロン66のような汎用ポリアミドの燃料バリア性では不十分であるのが現状である。
【0004】
また、電気電子分野においては、表面実装技術(SMT)の拡がりに伴い、コネクタ等に使用される樹脂にはリフロー半田耐熱性が要求されている。特に近年、鉛フリー半田の急速な進展から、リフロー半田温度は更に上昇する傾向にあり、従来のポリアミドではもはや対応できなくなりつつある。また、リフロー半田時のブリスター抑制の観点から、耐熱性と共に、低吸水性を併せ持つ樹脂への要求が高まっている。
さらに、摺動部品においては、その使用環境が、高面圧、高温雰囲気下へと拡がりつつあり、従来のポリアミドでは耐摩耗性や耐久性が不十分である。また、摺動部品には、寸法精度が極めて重要であるが、従来のポリアミドでは、吸水による寸法変化が大きく、ギアの噛み合い不良に起因するトラブルが発生するという問題があった。
【0005】
上記した様々な問題に対応可能なポリアミドとして、テレフタル酸およびイソフタル酸をジカルボン酸成分とし、1,6−ヘキサンジアミンをジアミン成分とするポリアミドが提案されている〔特開平3−7761号(特許文献1)、特開平3−72565号(特許文献2)、特開昭60−158220号(特許文献3)などを参照〕。
また、本発明者らは、耐熱性、低吸水性および耐クリープ性においてさらに優れた性能を有する、テレフタル酸をジカルボン酸単位とし、1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンをジアミン単位とするポリアミドを見出し、特許出願を行っている〔特開平7−228769号(特許文献4)、特開平7−228772号(特許文献5)、特開平7−228774号(特許文献6)などを参照〕。
【0006】
【特許文献1】
特開平3−7761号
【特許文献2】
特開平3−72565号
【特許文献3】
特開昭60−158220号
【特許文献4】
特開平7−228769号
【特許文献5】
特開平7−228772号
【特許文献6】
特開平7−228774号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかして、本発明は、低吸水性であり、耐熱性、耐薬品性、摺動性、耐クリープ性、剛性、靱性に優れ、かつ燃料バリア性を有するポリアミドから構成される各種の成形品であって、より高性能化が図られた成形品を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の課題は、テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位を50〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなるポリアミド(I)から構成される成形品に対して放射線を照射することによって製造される、引張クリープ歪が2.0以下である成形品を提供することによって解決される。
【0009】
放射線の照射により、重合体の改質を行うことは、広く知られている。ポリアミドについても例外ではなく、ナイロン6、ナイロン66等の汎用ポリアミドに対する放射線架橋が試みられている。特開昭59−12936号公報には、架橋助剤を配合したポリアミド樹脂を放射線架橋することにより、半田耐熱性が向上したポリアミドが得られることが示されている。また、特開2002−146068号公報においても、特定の重合度を有するポリアミド樹脂(ナイロン6およびナイロン66)と重合性官能基を有する有機化合物を含有する樹脂組成物の射出成形品を、放射線架橋することにより得られるポリアミド成形品が開示されており、耐薬品性(耐油性)、曲げ弾性率、耐衝撃性、耐摩耗性、耐久性、摺動性等に優れたポリアミド成形品を得ることができるとされている。さらに、特開平11−315156号公報には、非晶性ポリアミドおよび架橋剤を含有してなる成形品に、放射線を照射してなるポリアミド成形品が開示されており、耐熱性、耐燃性が向上したポリアミド成形品を得ることができるとされている。
しかし、本発明のように、結晶性の半芳香族ポリアミドからなる成形品に対して、放射線照射を行った例はこれまで知られていない。そして、放射線照射の結果、耐クリープ性が顕著に向上した成形品が得られることは、本発明者らが当初予測した範囲を越えるものであった。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するポリアミド(I)を構成するジカルボン酸単位(a)は、テレフタル酸単位を50〜100モル%含有する。ジカルボン酸単位(a)におけるテレフタル酸単位の含有率が50モル%未満の場合には、得られるポリアミド成形品の耐熱性、剛性および燃料バリア性が低下する。ジカルボン酸単位(a)におけるテレフタル酸単位の含有率は、60〜100モル%の範囲内であることが好ましく、75〜100モル%の範囲内であることがより好ましく、90〜100モル%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0011】
ジカルボン酸単位(a)は、50モル%以下であれば、テレフタル酸単位以外の他のジカルボン酸単位を含有していてもよい。かかる他のジカルボン酸単位としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が好ましい。ジカルボン酸単位(a)におけるこれらの他のジカルボン酸単位の含有率は、40モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。また、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸から誘導される単位を、溶融成形が可能な範囲内で含有していてもよい。
【0012】
本発明で使用するポリアミド(I)を構成するジアミン単位(b)は、炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位を50〜100モル%含有している。炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位を上記の割合で含有するポリアミドを使用すると、低吸水性、耐クリープ性、靱性、成形性、軽量性に優れたポリアミド成形品が得られる。
ジアミン単位(b)における、炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位の含有率は、60〜100モル%であることが好ましく、75〜100モル%であることがより好ましく、90〜100モル%であることがさらに好ましい。
【0013】
炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位としては、例えば、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の直鎖状脂肪族アルキレンジアミン;1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、3,3−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,3−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,4−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,5−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、3−メチル−1,8−オクタンジアミン、4−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、1,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,5−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,2−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の分岐鎖状脂肪族アルキレンジアミンなどから誘導される単位を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。
【0014】
上記の脂肪族アルキレンジアミン単位の中でも、低吸水性、摺動性、靱性、耐クリープ性、成形性、軽量性により優れたポリアミド成形品が得られることから1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンから誘導される単位が好ましく、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位がより好ましい。1,9−ノナンンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を併用する場合には、1,9−ノナンンジアミン単位:2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比は、100:0〜50:50であることが好ましく、95:5〜60:40であることがより好ましい。
【0015】
上記のジアミン単位(b)は、50モル%以下であれば、炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位以外の他のジアミン単位を含有していてもよい。かかる他のジアミン単位としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンなどから誘導される単位を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらの他のジアミン単位の含有率は、40モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。
【0016】
また、上記のポリアミド(I)にはアミノカルボン酸単位を含ませることもできる。該アミノカルボン酸単位としては、例えば、カプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム;1−アミノラウリン酸、1−アミノドデシル酸等のアミノカルボン酸などから誘導される単位を挙げることができる。アミノカルボン酸単位の含有率は、ポリアミド(I)の全ジカルボン酸単位に基づいて40モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。
【0017】
本発明で使用するポリアミド(I)は、その分子鎖の末端基の10%以上が末端封止剤により封止されていることが好ましい。分子鎖の末端基が末端封止剤により封止されている割合(末端封止率)は、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。末端封止率が10%以上のポリアミドを使用すると、耐薬品性等に優れたポリアミド成形品が得られる。
【0018】
ポリアミド(I)の末端封止率は、ポリアミドに存在するカルボキシル基末端、アミノ基末端および末端封止剤によって封止された末端基の数をそれぞれ測定し、下記の式(1)に従って求めることができる。各末端基の数は、1H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値より求めるのが精度、簡便さの点で好ましい。
【0019】
末端封止率(%)=[(A−B)/A]×100 (1)
〔式中、Aは分子鎖の末端基の総数(これは通常、ポリアミド分子の数の2倍に等しい)を表し、Bは封止されずに残ったカルボキシル基末端およびアミノ基末端の合計数を表す。〕
【0020】
末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基またはカルボキシル基との反応性を有する単官能性の化合物であれば特に制限はないが、反応性および封止末端の安定性などの点から、モノカルボン酸またはモノアミンが好ましく、取扱いの容易さなどの点から、モノカルボン酸がより好ましい。その他、酸無水物、モノイソシアネ−ト、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコ−ル類などを末端封止剤として使用することもできる。
【0021】
末端封止剤として使用されるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;これらの任意の混合物などを挙げることができる。これらの中でも、反応性、封止末端の安定性、価格などの点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が好ましい。
【0022】
末端封止剤として使用されるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン;これらの任意の混合物などを挙げることができる。これらの中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格などの点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが好ましい。
【0023】
本発明で使用するポリアミド(I)は、結晶性ポリアミドを製造する方法として知られている任意の方法を用いて製造することができる。例えば、酸クロライドとジアミンを原料とする溶液重合法または界面重合法、ジカルボン酸とジアミンを原料とする溶融重合法、固相重合法、溶融押出重合法などの方法により製造することができる。
【0024】
ポリアミド(I)を製造するに際して、前記の末端封止剤の他に、例えば、触媒として、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、それらの塩またはエステルなどを使用することができる。上記の塩またはエステルとしては、リン酸、亜リン酸または次亜リン酸とカリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモン等の金属との塩;リン酸、亜リン酸または次亜リン酸のアンモニウム塩;リン酸、亜リン酸または次亜リン酸のエチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、デシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステルなどを挙げることができる。
【0025】
本発明で使用するポリアミド(I)は、濃硫酸中30℃の条件下で測定した極限粘度[η]が、0.6〜3.0dl/gであることが好ましく、0.7〜2.5dl/gであることがより好ましく、0.8〜2.3dl/gであることがさらに好ましい。極限粘度が0.6dl/g未満のポリアミドを使用すると、得られるポリアミド成形品の力学物性が低下し、3.0dl/gより大きいポリアミドを使用すると、ポリアミドの流動性が低下し、満足な形状のポリアミド成形品を得ることができない場合がある。
【0026】
本発明においては、ポリアミド(I)に重合性の多官能不飽和化合物(II)を配合することもできる。
重合性の多官能不飽和化合物(II)としては、1分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を2個以上有する化合物が使用される。重合性の多官能不飽和化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート等のジメタクリレート化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物;トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等のトリアリルシアヌレート化合物などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0027】
ポリアミド(I)に重合性の多官能不飽和化合物(II)を配合することにより、放射線照射による耐クリープ性の改良を効率的に行うことができる。
重合性の多官能不飽和化合物(II)の配合量は、ポリアミド(I)の100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがより好ましく、1〜4重量部であることがさらに好ましい。重合性の多官能不飽和化合物(II)の配合量がポリアミド(I)の100重量部に対して10重量部より多いと着色等の問題が発生することがある。
【0028】
本発明で使用するポリアミド(I)あるいはポリアミド(I)に重合性の多官能不飽和化合物(II)を配合したポリアミド組成物には、無機フィラー(III)および/または有機フィラー(IV)を配合することができる。
耐熱性、剛性および耐クリープ性がより向上したポリアミド成形品を得ることができるので、無機フィラー(III)および/または有機フィラー(IV)の配合量は、ポリアミド(I)の100重量部に対して5〜100重量部であることが好ましく、10〜50重量部であることがより好ましい。
なお、無機フィラー(III)と有機フィラー(IV)を併用する場合には、両者の合計重量が、ポリアミド(I)の100重量部に対して5〜100重量部であることが好ましく、10〜50重量部であることがより好ましい。
【0029】
無機フィラー(III)としては、例えば、ガラス繊維、ホウ素繊維等の繊維状の無機充填材;ガラスフレーク、マイカ等のフレーク状の無機充填材;ゾノトライトウィスカ、ワラストナイトウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、酸化チタンウィスカ、炭化ケイ素ウィスカ、窒化ケイ素ウィスカ等の針状の無機充填材;タルク、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、シリカ、モンモリロナイト、二硫化モリブデン、二酸化チタン等の粉末状の無機充填材などを挙げることができる。無機フィラー(III)としては、耐熱性、剛性および耐クリープ性がより優れたポリアミド成形品が得られることから、繊維状または針状の無機充填材が好ましく、ガラス繊維、ゾノトライトウィスカ、ワラストナイトウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカがより好ましい。
【0030】
有機フィラー(IV)としては、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、グラファイト、液晶ポリエステル繊維などを挙げることができるが、これらの中でも炭素繊維および/またはアラミド繊維が、耐熱性、剛性および耐クリープ性がより優れた成形品が得られることから好ましい。
【0031】
また、本発明で使用するポリアミド(I)、ポリアミド(I)に重合性の多官能不飽和化合物(II)を配合したポリアミド組成物あるいは、さらに無機フィラー(III)および/または有機フィラー(IV)を配合したポリアミド組成物には、必要に応じて、従来から公知の銅系安定剤、ヒンダードフェノ−ル系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオ系酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、帯電防止剤、滑剤、結晶核剤、難燃剤等の添加剤;PA612、PA12等の脂肪族ポリアミド、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、LCP(液晶ポリマー)等の他種ポリマ−などを含有させることもできる。
【0032】
ポリアミド(I)に重合性の多官能不飽和化合物(II)、無機フィラー(III)および/または有機フィラー(IV)を配合する方法は特に制限されず、これらを均一に混合させ得る方法であればよく、通常、ポリアミド(I)と重合性の多官能不飽和化合物(II)、無機フィラー(III)および/または有機フィラー(IV)を必要に応じて他の成分とともに溶融混練する方法が採用される。溶融混練は、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの混練機を使用して行うことができる。その際に使用する装置の種類や溶融混練条件などは特に限定されないが、概ね300℃〜350℃の範囲の温度で1〜30分間混練することにより、ポリアミド組成物を得ることができる。
【0033】
本発明によるポリアミド成形品は、上記したポリアミド(I)あるいはポリアミド組成物を使用して、用途、形状などに応じて、射出成形、押出成形、プレス成形、カレンダー成形、ブロー成形等の、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物に対して一般に用いられている成形方法によって、また、こうした成形方法を組み合わせることによって成形を行い、次いで得られた成形品に対して放射線照射を行うことによって製造することができる。
また、本発明によるポリアミド成形品は、上記したポリアミド(I)あるいはポリアミド組成物を、各種の熱可塑性樹脂またはその組成物、熱硬化性樹脂、紙、金属、木材、セラミックス等の各種材料との複合成形体とした後、放射線照射を行うことによって製造することもできる。
【0034】
本発明のポリアミド成形品の製造において利用される放射線の種類としては、電子線、X線、α線、β線、γ線などが挙げられるが、加工性に優れる点から電子線が好ましい。
放射線の照射は、放射線を照射する前の成形品の引張クリープ歪をCSb、放射線を照射した後の成形品の引張クリープ歪をCSaとしたとき、これらが以下の関係式を満足するように実施することが、耐クリープ性の改良の点で好ましい。
CSa/CSb≦0.9
放射線の照射は、CSa/CSbが0.85以下となるように実施することがより好ましい。
放射線の照射は、一般に、成形品の吸収線量が10〜1000kGyの範囲内となるように実施することが好ましく、成形品の吸収線量が50〜400kGyの範囲範囲内となるように実施することがより好ましい。
【0035】
放射線の照射は、空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、水中等で実施することができるが、空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下で実施するのが簡便である。
また、放射線の照射は、通常、成形品の温度または放射線照射時の雰囲気の温度を室温以上として実施されるが、耐クリープ性の改良を効率的に行うことができることから、成形品の温度または放射線照射時の雰囲気の温度を40℃以上として実施することが好ましく、60℃以上として実施することがより好ましい。
放射線の照射に際し、湿度については格別の制限はないが、寸法変化等の影響を抑制することが望まれる場合には、低湿度雰囲気下で放射線の照射を行うのがよい。
また、必要に応じて、放射線照射の前後に熱処理を行ってもよい。
【0036】
本発明のポリアミド成形品は、放射線照射により、耐クリープ性が向上した成形品となる。
例えば、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位をジアミン単位とする半芳香族ポリアミドは、それを単独で成形した成形品を23℃、50%RHの条件下、42MPaの荷重を500時間負荷した後の引張クリープ歪が2%未満であり、耐クリープ性に優れたものであるが、放射線照射により、さらに耐クリープ性が向上した本発明の成形品となる。また、1,6−ヘキサンジアミン単位をジアミン単位とする半芳香族ポリアミドは、それを単独で成形した成形品を23℃、50%RHの条件下、42MPaの荷重を500時間負荷した後の引張クリープ歪が2%を越えるものであるが、放射線照射によって耐クリープ性を向上させ、上記した条件で測定した引張クリープ歪を2%以下とすることができる。
本発明においては、成形品の、上記した条件で測定した引張クリープ歪が2%以下であることを以って、耐クリープ性が優れていると評価する。
【0037】
本発明のポリアミド成形品は、耐クリープ性に優れているとともに、低吸水性であり、耐熱性、耐薬品性、摺動性、剛性、靱性に優れ、かつ燃料バリア性を有することから、インタークーラータンク、ラジエータータンク、エンジンカバー、エンジンマウント、燃料容器、燃料配管、クイックコネクタ等の自動車部品;EPSギア、チェーンガイド、ベルトテンショナー、ベアリング、各種小型ギア等の摺動部品;コネクタ、スイッチ、フレキシブルプリント回路基板、フレキシブルフラットケーブル等の電気電子部品;チューブ、ホース、フィルム等の工業部品;衣料用ワイヤー、衣料用補強材等の衣料製品;O−リング、パッキン等の封止材;モーター、トランス、ケーブル等の電気絶縁材料;コンデンサ用途等の誘電体材料;食品包装用等の包装材料;カセットテープ、ビデオテープ等の磁気テープ用材料;写真用フィルム;透析膜、ろ過膜等の医療用または工業用の膜など、広範な用途に使用することができる。
【0038】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例、参考例および比較例において、試験片の作製、電子線照射、平衡吸水率の測定、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、燃料バリア性の評価は次のようにして行った。
【0039】
試験片の作製:
日精樹脂工業株式会社製の80トン射出成形機を使用して、所定のシリンダー温度[330℃(実施例、参考例)または270℃(比較例)]および所定の金型温度[150℃(実施例、参考例)または80℃(比較例)]の条件下で、荷重たわみ温度測定用の試験片(寸法:長さ128mm×幅12.7mm×厚さ6.2mm)、限界PV値測定用の試験片(寸法:長さ40mm×幅40mm×厚さ3mm)、耐薬品性評価用の試験片(JIS−1号ダンベル型)、クリープ特性評価用の試験片(JIS−1号ダンベル型)をそれぞれ作製した。また、株式会社神藤金属工業所の圧縮成形機を使用して、所定の温度[330℃(実施例、参考例)または270℃(比較例)]、プレス圧力98MPa(100kg/cm2)の条件下で、平衡吸水率測定用のプレスシ−ト(50mm×50mm×0.2mm)、燃料バリア性評価用のプレスシート(40mm×40mm×0.1mm)を作製した。
【0040】
電子線照射:
上記で作製した試験片に対して、電子線照射装置としてRDI社製、「ダイナミトロン」(5MeV電子加速器)を使用して、窒素雰囲気下、23℃(室温)または60℃の条件下、試験片の吸収線量が所定量〔200kGy(実施例1〜7、比較例1、2)または100kGy(実施例8)〕となるように電子線を照射した。
なお、試験片の吸収線量は、試験片の所定位置(上下2か所)に装着した線量計を使用して測定した。
【0041】
荷重たわみ温度の測定:
JIS K7207に準じて、加重ひずみ温度測定機(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、18.6kgfの加重下で荷重たわみ温度(DTUL)を測定し、耐熱性の指標とした。
【0042】
限界PV値の測定:
JIS K7218に準じて、摩擦摩耗試験器(株式会社エー・アンド・デイ製)を使用し、面圧9.8MPa(10kg/cm2)、すべり速度50〜200cm/secの条件下、鋼材S45C(サンドペーパー仕上げ)を相手材として、限界PV値を測定した。
【0043】
耐薬品性の評価:
試験片を23℃のメチルアルコール中に7日間浸漬し、その後、オートグラフ(株式会社東洋精機製作所製)を使用して引張降伏強さを測定し、メチルアルコール中に浸漬する前の試験片の引張降伏強さに対する保持率を求めた。
【0044】
クリープ特性の評価:
JIS K7115に準じて、クリープテスター(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、23℃、50%RHの条件下、42MPaの荷重を500時間負荷した後の引張クリープ歪を測定した。
【0045】
平衡吸水率の測定:
試験片を減圧下にて5日間乾燥し、秤量した後(重量:W0)、23℃の水中に10日間浸漬し、秤量して(重量:W1)、以下の式に従って、平衡吸水率を求めた。
平衡吸水率=(W1−W0)/W0×100 (%)
【0046】
燃料バリア性の測定:
燃料透過測定装置(柳本製作所製、GTR−30XFKE)を使用して、40℃、65%RHの条件下、CE10〔トルエン/イソオクタン/エタノール=45/45/10の混合燃料(体積比)〕の透過度を測定した。
【0047】
また、以下の実施例、参考例および比較例では、下記のポリアミド、重合性の多官能不飽和化合物および無機フィラーを使用した。
【0048】
[ポリアミド]
PA9T:(株)クラレ製、ジェネスタN1000A(商品名)〔テレフタル酸単位と、1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位(1,9−ノナンジアミン単位:2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比が80/20)とからなるポリアミド〕
【0049】
PA6T:特開平7−228776号公報の比較例1に記載された方法に従って調製した、テレフタル酸単位とイソフタル酸単位(テレフタル酸単位とイソフタル酸単位とのモル比:70:30)および1,6−ヘキサンジアミン単位からなり、融点が310℃、極限粘度が1.30dl/g、末端封止率が90%であるポリアミド。
【0050】
PA66:旭化成(株)社製、「レオナ1300S」(商品名)
【0051】
[重合性の多官能不飽和化合物]
トリアリルイソシアヌレート:日本化成(株)社製、「タイクM60」(商品名)
【0052】
[無機フィラー]
ガラス繊維:日東紡績(株)社製、「CS−3J−256S」(商品名)
ゾノトライト:宇部マテリアルズ(株)社製、「ゾノハイジ」(商品名)
【0053】
実施例1および2
表1に示すポリアミドを使用して、上記した方法で試験片を作製し、23℃の条件で所定量(試験片の吸収線量:200kGy)の電子線を照射した後、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0054】
実施例3および4
表1に示すポリアミドおよび重合性の多官能不飽和化合物からなるポリアミド組成物を使用して、上記した方法で試験片を作製し、23℃の条件で所定量(試験片の吸収線量:200kGy)の電子線を照射した後、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0055】
実施例5および6
表1に示すポリアミド、重合性の多官能不飽和化合物および無機フィラーからなるポリアミド組成物を使用して、上記した方法で試験片を作製し、23℃の条件で所定量(試験片の吸収線量:200kGy)の電子線を照射した後、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0056】
実施例7
表1に示すポリアミドを使用して、上記した方法で試験片を作製し、60℃の条件で所定量(試験片の吸収線量:200kGy)の電子線を照射した後、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0057】
参考例1および2
表1に示すポリアミドを使用して、上記した方法で試験片を作製し、電子線を照射せずに、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0058】
比較例1および2
表1に示すポリアミドを使用して、上記した方法で試験片を作製し、23℃の条件で所定量(試験片の吸収線量:200kGy)の電子線を照射した後、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0059】
実施例8
表1に示すポリアミドを使用して、上記した方法で試験片を作製し、23℃の条件で所定量(試験片の吸収線量:100kGy)の電子線を照射した後、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0060】
比較例3および4
表1に示すポリアミドおよび重合性の多官能不飽和化合物からなるポリアミド組成物を使用して、上記した方法で試験片を作製し、電子線を照射せずに、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
本発明のポリアミド成形品は、耐クリープ性に優れるとともに、低吸水性であり、耐熱性、耐薬品性、摺動性、剛性、靱性に優れ、かつ燃料バリア性を有することから、自動車部品、摺動部品、電気電子部品、工業部品、衣料製品など、広範な用途に好適に使用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の半芳香族ポリアミドからなる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ナイロン6、ナイロン66に代表される汎用ポリアミドは、耐熱性、耐薬品性、剛性、摺動性、成形性などの優れた性質を有し、かつ吸湿状態では極めて高い靭性を示すことから、自動車部品、電気電子部品、摺動部品など、広範な用途に使用されてきた。
【0003】
しかし、自動車分野においては、エンジンの高効率化追求によるエンジンルーム内の温度上昇に伴い、自動車に使用される樹脂部品に対する耐熱性向上の要求が高まりつつある。また、自動車に使用される樹脂部品には、ガソリン、エンジンオイル、塩化カルシウム水溶液、LLC水溶液(冷却水)等の薬品に対する耐久性が必須であり、かつ剛性、強度、靱性、耐クリープ性等の性能に対する要求も年々高度化していることから、従来のポリアミドでは対応できなくなりつつある。さらに、燃料(ガソリン)周辺に使用される燃料容器、燃料配管、クィックコネクタ等の部品には、高度な燃料バリア性が要求されつつあり、ナイロン6、ナイロン66のような汎用ポリアミドの燃料バリア性では不十分であるのが現状である。
【0004】
また、電気電子分野においては、表面実装技術(SMT)の拡がりに伴い、コネクタ等に使用される樹脂にはリフロー半田耐熱性が要求されている。特に近年、鉛フリー半田の急速な進展から、リフロー半田温度は更に上昇する傾向にあり、従来のポリアミドではもはや対応できなくなりつつある。また、リフロー半田時のブリスター抑制の観点から、耐熱性と共に、低吸水性を併せ持つ樹脂への要求が高まっている。
さらに、摺動部品においては、その使用環境が、高面圧、高温雰囲気下へと拡がりつつあり、従来のポリアミドでは耐摩耗性や耐久性が不十分である。また、摺動部品には、寸法精度が極めて重要であるが、従来のポリアミドでは、吸水による寸法変化が大きく、ギアの噛み合い不良に起因するトラブルが発生するという問題があった。
【0005】
上記した様々な問題に対応可能なポリアミドとして、テレフタル酸およびイソフタル酸をジカルボン酸成分とし、1,6−ヘキサンジアミンをジアミン成分とするポリアミドが提案されている〔特開平3−7761号(特許文献1)、特開平3−72565号(特許文献2)、特開昭60−158220号(特許文献3)などを参照〕。
また、本発明者らは、耐熱性、低吸水性および耐クリープ性においてさらに優れた性能を有する、テレフタル酸をジカルボン酸単位とし、1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンをジアミン単位とするポリアミドを見出し、特許出願を行っている〔特開平7−228769号(特許文献4)、特開平7−228772号(特許文献5)、特開平7−228774号(特許文献6)などを参照〕。
【0006】
【特許文献1】
特開平3−7761号
【特許文献2】
特開平3−72565号
【特許文献3】
特開昭60−158220号
【特許文献4】
特開平7−228769号
【特許文献5】
特開平7−228772号
【特許文献6】
特開平7−228774号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかして、本発明は、低吸水性であり、耐熱性、耐薬品性、摺動性、耐クリープ性、剛性、靱性に優れ、かつ燃料バリア性を有するポリアミドから構成される各種の成形品であって、より高性能化が図られた成形品を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の課題は、テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位を50〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなるポリアミド(I)から構成される成形品に対して放射線を照射することによって製造される、引張クリープ歪が2.0以下である成形品を提供することによって解決される。
【0009】
放射線の照射により、重合体の改質を行うことは、広く知られている。ポリアミドについても例外ではなく、ナイロン6、ナイロン66等の汎用ポリアミドに対する放射線架橋が試みられている。特開昭59−12936号公報には、架橋助剤を配合したポリアミド樹脂を放射線架橋することにより、半田耐熱性が向上したポリアミドが得られることが示されている。また、特開2002−146068号公報においても、特定の重合度を有するポリアミド樹脂(ナイロン6およびナイロン66)と重合性官能基を有する有機化合物を含有する樹脂組成物の射出成形品を、放射線架橋することにより得られるポリアミド成形品が開示されており、耐薬品性(耐油性)、曲げ弾性率、耐衝撃性、耐摩耗性、耐久性、摺動性等に優れたポリアミド成形品を得ることができるとされている。さらに、特開平11−315156号公報には、非晶性ポリアミドおよび架橋剤を含有してなる成形品に、放射線を照射してなるポリアミド成形品が開示されており、耐熱性、耐燃性が向上したポリアミド成形品を得ることができるとされている。
しかし、本発明のように、結晶性の半芳香族ポリアミドからなる成形品に対して、放射線照射を行った例はこれまで知られていない。そして、放射線照射の結果、耐クリープ性が顕著に向上した成形品が得られることは、本発明者らが当初予測した範囲を越えるものであった。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するポリアミド(I)を構成するジカルボン酸単位(a)は、テレフタル酸単位を50〜100モル%含有する。ジカルボン酸単位(a)におけるテレフタル酸単位の含有率が50モル%未満の場合には、得られるポリアミド成形品の耐熱性、剛性および燃料バリア性が低下する。ジカルボン酸単位(a)におけるテレフタル酸単位の含有率は、60〜100モル%の範囲内であることが好ましく、75〜100モル%の範囲内であることがより好ましく、90〜100モル%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0011】
ジカルボン酸単位(a)は、50モル%以下であれば、テレフタル酸単位以外の他のジカルボン酸単位を含有していてもよい。かかる他のジカルボン酸単位としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が好ましい。ジカルボン酸単位(a)におけるこれらの他のジカルボン酸単位の含有率は、40モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。また、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸から誘導される単位を、溶融成形が可能な範囲内で含有していてもよい。
【0012】
本発明で使用するポリアミド(I)を構成するジアミン単位(b)は、炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位を50〜100モル%含有している。炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位を上記の割合で含有するポリアミドを使用すると、低吸水性、耐クリープ性、靱性、成形性、軽量性に優れたポリアミド成形品が得られる。
ジアミン単位(b)における、炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位の含有率は、60〜100モル%であることが好ましく、75〜100モル%であることがより好ましく、90〜100モル%であることがさらに好ましい。
【0013】
炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位としては、例えば、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の直鎖状脂肪族アルキレンジアミン;1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、3,3−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,3−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,4−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,5−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、3−メチル−1,8−オクタンジアミン、4−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、1,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,5−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,2−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の分岐鎖状脂肪族アルキレンジアミンなどから誘導される単位を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。
【0014】
上記の脂肪族アルキレンジアミン単位の中でも、低吸水性、摺動性、靱性、耐クリープ性、成形性、軽量性により優れたポリアミド成形品が得られることから1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンから誘導される単位が好ましく、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位がより好ましい。1,9−ノナンンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を併用する場合には、1,9−ノナンンジアミン単位:2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比は、100:0〜50:50であることが好ましく、95:5〜60:40であることがより好ましい。
【0015】
上記のジアミン単位(b)は、50モル%以下であれば、炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位以外の他のジアミン単位を含有していてもよい。かかる他のジアミン単位としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンなどから誘導される単位を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらの他のジアミン単位の含有率は、40モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。
【0016】
また、上記のポリアミド(I)にはアミノカルボン酸単位を含ませることもできる。該アミノカルボン酸単位としては、例えば、カプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム;1−アミノラウリン酸、1−アミノドデシル酸等のアミノカルボン酸などから誘導される単位を挙げることができる。アミノカルボン酸単位の含有率は、ポリアミド(I)の全ジカルボン酸単位に基づいて40モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。
【0017】
本発明で使用するポリアミド(I)は、その分子鎖の末端基の10%以上が末端封止剤により封止されていることが好ましい。分子鎖の末端基が末端封止剤により封止されている割合(末端封止率)は、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。末端封止率が10%以上のポリアミドを使用すると、耐薬品性等に優れたポリアミド成形品が得られる。
【0018】
ポリアミド(I)の末端封止率は、ポリアミドに存在するカルボキシル基末端、アミノ基末端および末端封止剤によって封止された末端基の数をそれぞれ測定し、下記の式(1)に従って求めることができる。各末端基の数は、1H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値より求めるのが精度、簡便さの点で好ましい。
【0019】
末端封止率(%)=[(A−B)/A]×100 (1)
〔式中、Aは分子鎖の末端基の総数(これは通常、ポリアミド分子の数の2倍に等しい)を表し、Bは封止されずに残ったカルボキシル基末端およびアミノ基末端の合計数を表す。〕
【0020】
末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基またはカルボキシル基との反応性を有する単官能性の化合物であれば特に制限はないが、反応性および封止末端の安定性などの点から、モノカルボン酸またはモノアミンが好ましく、取扱いの容易さなどの点から、モノカルボン酸がより好ましい。その他、酸無水物、モノイソシアネ−ト、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコ−ル類などを末端封止剤として使用することもできる。
【0021】
末端封止剤として使用されるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;これらの任意の混合物などを挙げることができる。これらの中でも、反応性、封止末端の安定性、価格などの点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が好ましい。
【0022】
末端封止剤として使用されるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン;これらの任意の混合物などを挙げることができる。これらの中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格などの点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが好ましい。
【0023】
本発明で使用するポリアミド(I)は、結晶性ポリアミドを製造する方法として知られている任意の方法を用いて製造することができる。例えば、酸クロライドとジアミンを原料とする溶液重合法または界面重合法、ジカルボン酸とジアミンを原料とする溶融重合法、固相重合法、溶融押出重合法などの方法により製造することができる。
【0024】
ポリアミド(I)を製造するに際して、前記の末端封止剤の他に、例えば、触媒として、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、それらの塩またはエステルなどを使用することができる。上記の塩またはエステルとしては、リン酸、亜リン酸または次亜リン酸とカリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモン等の金属との塩;リン酸、亜リン酸または次亜リン酸のアンモニウム塩;リン酸、亜リン酸または次亜リン酸のエチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、デシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステルなどを挙げることができる。
【0025】
本発明で使用するポリアミド(I)は、濃硫酸中30℃の条件下で測定した極限粘度[η]が、0.6〜3.0dl/gであることが好ましく、0.7〜2.5dl/gであることがより好ましく、0.8〜2.3dl/gであることがさらに好ましい。極限粘度が0.6dl/g未満のポリアミドを使用すると、得られるポリアミド成形品の力学物性が低下し、3.0dl/gより大きいポリアミドを使用すると、ポリアミドの流動性が低下し、満足な形状のポリアミド成形品を得ることができない場合がある。
【0026】
本発明においては、ポリアミド(I)に重合性の多官能不飽和化合物(II)を配合することもできる。
重合性の多官能不飽和化合物(II)としては、1分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を2個以上有する化合物が使用される。重合性の多官能不飽和化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート等のジメタクリレート化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物;トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等のトリアリルシアヌレート化合物などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0027】
ポリアミド(I)に重合性の多官能不飽和化合物(II)を配合することにより、放射線照射による耐クリープ性の改良を効率的に行うことができる。
重合性の多官能不飽和化合物(II)の配合量は、ポリアミド(I)の100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがより好ましく、1〜4重量部であることがさらに好ましい。重合性の多官能不飽和化合物(II)の配合量がポリアミド(I)の100重量部に対して10重量部より多いと着色等の問題が発生することがある。
【0028】
本発明で使用するポリアミド(I)あるいはポリアミド(I)に重合性の多官能不飽和化合物(II)を配合したポリアミド組成物には、無機フィラー(III)および/または有機フィラー(IV)を配合することができる。
耐熱性、剛性および耐クリープ性がより向上したポリアミド成形品を得ることができるので、無機フィラー(III)および/または有機フィラー(IV)の配合量は、ポリアミド(I)の100重量部に対して5〜100重量部であることが好ましく、10〜50重量部であることがより好ましい。
なお、無機フィラー(III)と有機フィラー(IV)を併用する場合には、両者の合計重量が、ポリアミド(I)の100重量部に対して5〜100重量部であることが好ましく、10〜50重量部であることがより好ましい。
【0029】
無機フィラー(III)としては、例えば、ガラス繊維、ホウ素繊維等の繊維状の無機充填材;ガラスフレーク、マイカ等のフレーク状の無機充填材;ゾノトライトウィスカ、ワラストナイトウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、酸化チタンウィスカ、炭化ケイ素ウィスカ、窒化ケイ素ウィスカ等の針状の無機充填材;タルク、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、シリカ、モンモリロナイト、二硫化モリブデン、二酸化チタン等の粉末状の無機充填材などを挙げることができる。無機フィラー(III)としては、耐熱性、剛性および耐クリープ性がより優れたポリアミド成形品が得られることから、繊維状または針状の無機充填材が好ましく、ガラス繊維、ゾノトライトウィスカ、ワラストナイトウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカがより好ましい。
【0030】
有機フィラー(IV)としては、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、グラファイト、液晶ポリエステル繊維などを挙げることができるが、これらの中でも炭素繊維および/またはアラミド繊維が、耐熱性、剛性および耐クリープ性がより優れた成形品が得られることから好ましい。
【0031】
また、本発明で使用するポリアミド(I)、ポリアミド(I)に重合性の多官能不飽和化合物(II)を配合したポリアミド組成物あるいは、さらに無機フィラー(III)および/または有機フィラー(IV)を配合したポリアミド組成物には、必要に応じて、従来から公知の銅系安定剤、ヒンダードフェノ−ル系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオ系酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、帯電防止剤、滑剤、結晶核剤、難燃剤等の添加剤;PA612、PA12等の脂肪族ポリアミド、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、LCP(液晶ポリマー)等の他種ポリマ−などを含有させることもできる。
【0032】
ポリアミド(I)に重合性の多官能不飽和化合物(II)、無機フィラー(III)および/または有機フィラー(IV)を配合する方法は特に制限されず、これらを均一に混合させ得る方法であればよく、通常、ポリアミド(I)と重合性の多官能不飽和化合物(II)、無機フィラー(III)および/または有機フィラー(IV)を必要に応じて他の成分とともに溶融混練する方法が採用される。溶融混練は、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの混練機を使用して行うことができる。その際に使用する装置の種類や溶融混練条件などは特に限定されないが、概ね300℃〜350℃の範囲の温度で1〜30分間混練することにより、ポリアミド組成物を得ることができる。
【0033】
本発明によるポリアミド成形品は、上記したポリアミド(I)あるいはポリアミド組成物を使用して、用途、形状などに応じて、射出成形、押出成形、プレス成形、カレンダー成形、ブロー成形等の、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物に対して一般に用いられている成形方法によって、また、こうした成形方法を組み合わせることによって成形を行い、次いで得られた成形品に対して放射線照射を行うことによって製造することができる。
また、本発明によるポリアミド成形品は、上記したポリアミド(I)あるいはポリアミド組成物を、各種の熱可塑性樹脂またはその組成物、熱硬化性樹脂、紙、金属、木材、セラミックス等の各種材料との複合成形体とした後、放射線照射を行うことによって製造することもできる。
【0034】
本発明のポリアミド成形品の製造において利用される放射線の種類としては、電子線、X線、α線、β線、γ線などが挙げられるが、加工性に優れる点から電子線が好ましい。
放射線の照射は、放射線を照射する前の成形品の引張クリープ歪をCSb、放射線を照射した後の成形品の引張クリープ歪をCSaとしたとき、これらが以下の関係式を満足するように実施することが、耐クリープ性の改良の点で好ましい。
CSa/CSb≦0.9
放射線の照射は、CSa/CSbが0.85以下となるように実施することがより好ましい。
放射線の照射は、一般に、成形品の吸収線量が10〜1000kGyの範囲内となるように実施することが好ましく、成形品の吸収線量が50〜400kGyの範囲範囲内となるように実施することがより好ましい。
【0035】
放射線の照射は、空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、水中等で実施することができるが、空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下で実施するのが簡便である。
また、放射線の照射は、通常、成形品の温度または放射線照射時の雰囲気の温度を室温以上として実施されるが、耐クリープ性の改良を効率的に行うことができることから、成形品の温度または放射線照射時の雰囲気の温度を40℃以上として実施することが好ましく、60℃以上として実施することがより好ましい。
放射線の照射に際し、湿度については格別の制限はないが、寸法変化等の影響を抑制することが望まれる場合には、低湿度雰囲気下で放射線の照射を行うのがよい。
また、必要に応じて、放射線照射の前後に熱処理を行ってもよい。
【0036】
本発明のポリアミド成形品は、放射線照射により、耐クリープ性が向上した成形品となる。
例えば、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位をジアミン単位とする半芳香族ポリアミドは、それを単独で成形した成形品を23℃、50%RHの条件下、42MPaの荷重を500時間負荷した後の引張クリープ歪が2%未満であり、耐クリープ性に優れたものであるが、放射線照射により、さらに耐クリープ性が向上した本発明の成形品となる。また、1,6−ヘキサンジアミン単位をジアミン単位とする半芳香族ポリアミドは、それを単独で成形した成形品を23℃、50%RHの条件下、42MPaの荷重を500時間負荷した後の引張クリープ歪が2%を越えるものであるが、放射線照射によって耐クリープ性を向上させ、上記した条件で測定した引張クリープ歪を2%以下とすることができる。
本発明においては、成形品の、上記した条件で測定した引張クリープ歪が2%以下であることを以って、耐クリープ性が優れていると評価する。
【0037】
本発明のポリアミド成形品は、耐クリープ性に優れているとともに、低吸水性であり、耐熱性、耐薬品性、摺動性、剛性、靱性に優れ、かつ燃料バリア性を有することから、インタークーラータンク、ラジエータータンク、エンジンカバー、エンジンマウント、燃料容器、燃料配管、クイックコネクタ等の自動車部品;EPSギア、チェーンガイド、ベルトテンショナー、ベアリング、各種小型ギア等の摺動部品;コネクタ、スイッチ、フレキシブルプリント回路基板、フレキシブルフラットケーブル等の電気電子部品;チューブ、ホース、フィルム等の工業部品;衣料用ワイヤー、衣料用補強材等の衣料製品;O−リング、パッキン等の封止材;モーター、トランス、ケーブル等の電気絶縁材料;コンデンサ用途等の誘電体材料;食品包装用等の包装材料;カセットテープ、ビデオテープ等の磁気テープ用材料;写真用フィルム;透析膜、ろ過膜等の医療用または工業用の膜など、広範な用途に使用することができる。
【0038】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例、参考例および比較例において、試験片の作製、電子線照射、平衡吸水率の測定、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、燃料バリア性の評価は次のようにして行った。
【0039】
試験片の作製:
日精樹脂工業株式会社製の80トン射出成形機を使用して、所定のシリンダー温度[330℃(実施例、参考例)または270℃(比較例)]および所定の金型温度[150℃(実施例、参考例)または80℃(比較例)]の条件下で、荷重たわみ温度測定用の試験片(寸法:長さ128mm×幅12.7mm×厚さ6.2mm)、限界PV値測定用の試験片(寸法:長さ40mm×幅40mm×厚さ3mm)、耐薬品性評価用の試験片(JIS−1号ダンベル型)、クリープ特性評価用の試験片(JIS−1号ダンベル型)をそれぞれ作製した。また、株式会社神藤金属工業所の圧縮成形機を使用して、所定の温度[330℃(実施例、参考例)または270℃(比較例)]、プレス圧力98MPa(100kg/cm2)の条件下で、平衡吸水率測定用のプレスシ−ト(50mm×50mm×0.2mm)、燃料バリア性評価用のプレスシート(40mm×40mm×0.1mm)を作製した。
【0040】
電子線照射:
上記で作製した試験片に対して、電子線照射装置としてRDI社製、「ダイナミトロン」(5MeV電子加速器)を使用して、窒素雰囲気下、23℃(室温)または60℃の条件下、試験片の吸収線量が所定量〔200kGy(実施例1〜7、比較例1、2)または100kGy(実施例8)〕となるように電子線を照射した。
なお、試験片の吸収線量は、試験片の所定位置(上下2か所)に装着した線量計を使用して測定した。
【0041】
荷重たわみ温度の測定:
JIS K7207に準じて、加重ひずみ温度測定機(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、18.6kgfの加重下で荷重たわみ温度(DTUL)を測定し、耐熱性の指標とした。
【0042】
限界PV値の測定:
JIS K7218に準じて、摩擦摩耗試験器(株式会社エー・アンド・デイ製)を使用し、面圧9.8MPa(10kg/cm2)、すべり速度50〜200cm/secの条件下、鋼材S45C(サンドペーパー仕上げ)を相手材として、限界PV値を測定した。
【0043】
耐薬品性の評価:
試験片を23℃のメチルアルコール中に7日間浸漬し、その後、オートグラフ(株式会社東洋精機製作所製)を使用して引張降伏強さを測定し、メチルアルコール中に浸漬する前の試験片の引張降伏強さに対する保持率を求めた。
【0044】
クリープ特性の評価:
JIS K7115に準じて、クリープテスター(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、23℃、50%RHの条件下、42MPaの荷重を500時間負荷した後の引張クリープ歪を測定した。
【0045】
平衡吸水率の測定:
試験片を減圧下にて5日間乾燥し、秤量した後(重量:W0)、23℃の水中に10日間浸漬し、秤量して(重量:W1)、以下の式に従って、平衡吸水率を求めた。
平衡吸水率=(W1−W0)/W0×100 (%)
【0046】
燃料バリア性の測定:
燃料透過測定装置(柳本製作所製、GTR−30XFKE)を使用して、40℃、65%RHの条件下、CE10〔トルエン/イソオクタン/エタノール=45/45/10の混合燃料(体積比)〕の透過度を測定した。
【0047】
また、以下の実施例、参考例および比較例では、下記のポリアミド、重合性の多官能不飽和化合物および無機フィラーを使用した。
【0048】
[ポリアミド]
PA9T:(株)クラレ製、ジェネスタN1000A(商品名)〔テレフタル酸単位と、1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位(1,9−ノナンジアミン単位:2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比が80/20)とからなるポリアミド〕
【0049】
PA6T:特開平7−228776号公報の比較例1に記載された方法に従って調製した、テレフタル酸単位とイソフタル酸単位(テレフタル酸単位とイソフタル酸単位とのモル比:70:30)および1,6−ヘキサンジアミン単位からなり、融点が310℃、極限粘度が1.30dl/g、末端封止率が90%であるポリアミド。
【0050】
PA66:旭化成(株)社製、「レオナ1300S」(商品名)
【0051】
[重合性の多官能不飽和化合物]
トリアリルイソシアヌレート:日本化成(株)社製、「タイクM60」(商品名)
【0052】
[無機フィラー]
ガラス繊維:日東紡績(株)社製、「CS−3J−256S」(商品名)
ゾノトライト:宇部マテリアルズ(株)社製、「ゾノハイジ」(商品名)
【0053】
実施例1および2
表1に示すポリアミドを使用して、上記した方法で試験片を作製し、23℃の条件で所定量(試験片の吸収線量:200kGy)の電子線を照射した後、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0054】
実施例3および4
表1に示すポリアミドおよび重合性の多官能不飽和化合物からなるポリアミド組成物を使用して、上記した方法で試験片を作製し、23℃の条件で所定量(試験片の吸収線量:200kGy)の電子線を照射した後、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0055】
実施例5および6
表1に示すポリアミド、重合性の多官能不飽和化合物および無機フィラーからなるポリアミド組成物を使用して、上記した方法で試験片を作製し、23℃の条件で所定量(試験片の吸収線量:200kGy)の電子線を照射した後、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0056】
実施例7
表1に示すポリアミドを使用して、上記した方法で試験片を作製し、60℃の条件で所定量(試験片の吸収線量:200kGy)の電子線を照射した後、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0057】
参考例1および2
表1に示すポリアミドを使用して、上記した方法で試験片を作製し、電子線を照射せずに、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0058】
比較例1および2
表1に示すポリアミドを使用して、上記した方法で試験片を作製し、23℃の条件で所定量(試験片の吸収線量:200kGy)の電子線を照射した後、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0059】
実施例8
表1に示すポリアミドを使用して、上記した方法で試験片を作製し、23℃の条件で所定量(試験片の吸収線量:100kGy)の電子線を照射した後、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0060】
比較例3および4
表1に示すポリアミドおよび重合性の多官能不飽和化合物からなるポリアミド組成物を使用して、上記した方法で試験片を作製し、電子線を照射せずに、耐熱性の評価(荷重たわみ温度の測定)、摺動性の評価(限界PV値の測定)、耐薬品性の評価、クリープ特性の評価、平衡吸水率の測定、燃料バリア性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
本発明のポリアミド成形品は、耐クリープ性に優れるとともに、低吸水性であり、耐熱性、耐薬品性、摺動性、剛性、靱性に優れ、かつ燃料バリア性を有することから、自動車部品、摺動部品、電気電子部品、工業部品、衣料製品など、広範な用途に好適に使用することができる。
Claims (12)
- テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位を50〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなるポリアミド(I)から構成される成形品に対して放射線を照射することによって製造される、引張クリープ歪が2.0以下である成形品。
- テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位を50〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなるポリアミド(I)100重量部に対して、重合性の多官能不飽和化合物(II)0.1〜10重量部を配合してなるポリアミド組成物から構成される成形品に対して放射線を照射することによって製造される、引張クリープ歪が2.0以下である成形品。
- 重合性の多官能不飽和化合物(II)がトリアリルイソシアヌレートである請求項2に記載の成形品。
- 放射線を照射する前の成形品の引張クリープ歪をCSb、放射線を照射した後の成形品の引張クリープ歪をCSaとしたとき、これらが以下の関係式を満足する請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形品。
CSa/CSb≦0.9 - 無機フィラー(III)および/または有機フィラー(IV)を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形品。
- 炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位が、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位である請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形品。
- 自動車部品、電子電気部品あるいは摺動部品である請求項1〜6のいずれか1項記載の成形品。
- テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位を50〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなるポリアミド(I)からなる成形品に、放射線を照射することからなる成形品の製造方法。
- テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位を50〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなるポリアミド(I)100重量部に対して、重合性の多官能不飽和化合物(II)0.1〜10重量部を配合してなるポリアミド組成物から構成される成形品に対して放射線を照射することからなる成形品の製造方法。
- 放射線を照射する前の成形品の引張クリープ歪をCSb、放射線を照射した後の成形品の引張クリープ歪をCSaとしたとき、これらが以下の関係式を満足する請求項8または9に記載の製造方法。
CSa/CSb≦0.9 - 成形品の温度を室温以上として放射線を照射することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
- 放射線を照射する時の雰囲気温度が室温以上である請求項8〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
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