JP7296722B2 - 熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法並びにギヤ - Google Patents
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Description
1.50質量%以上90質量%以下の芳香族ポリアミド系樹脂(A)と、1質量%以上30質量%以下のパラ系アラミド繊維(B)とを含む、熱可塑性樹脂組成物。
2.前記パラ系アラミド繊維(B)がサイジング剤を含み、前記サイジング剤がポリウレタンである、前記1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
3.ポリウレタンをさらに含む、前記1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
4.前記芳香族ポリアミド系樹脂(A)が半芳香族ポリアミド樹脂である、前記1~3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
5.前記芳香族ポリアミド系樹脂(A)がポリデカメチレンテレフタルアミドである、前記1~4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
6.1質量%以上30質量%以下のポリテトラフルオロエチレン(C)をさらに含む、前記1~5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
7.前記ポリテトラフルオロエチレン(C)の数平均分子量が1,000,000以上である、前記6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
8.1質量%以上30質量%以下のカーボンファイバー(D)をさらに含む、前記1~7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
9.前記パラ系アラミド繊維(B)の平均繊維長が0.1mm以上10mm以下である、前記1~8のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
10.前記1~9のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を用いて製造された、ギヤ。
11.曲げ強さが110MPa以上である、前記10に記載のギヤ。
12.50質量%以上90質量%以下の芳香族ポリアミド系樹脂(A)と、1質量%以上30質量%以下のパラ系アラミド繊維(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物を製造する、熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、前記芳香族ポリアミド系樹脂(A)と前記パラ系アラミド繊維(B)とを混練する混練工程を含む、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
13.前記混練工程に供される前記パラ系アラミド繊維(B)の平均繊維長が0.1mm以上10mm以下である、前記12に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、50質量%以上90質量%以下の芳香族ポリアミド系樹脂(A)と、1質量%以上30質量%以下のパラ系アラミド繊維(B)とを含むことを特徴とする。
芳香族ポリアミド系樹脂(A)は、熱可塑性樹脂組成物の総量に対して、50質量%以上90質量%以下の割合で配合される。芳香族ポリアミド系樹脂(A)の配合量が90質量%を超えると、耐摩耗性が損なわれるおそれがある。また、芳香族ポリアミド系樹脂(A)の配合量が50質量%に満たないと、曲げ強さが損なわれるおそれがある。芳香族ポリアミド系樹脂(A)の配合量は、耐摩耗性をさらに向上する観点では、88質量%以下、85質量%以下、83質量%以下、80質量%以下、さらには78質量%以下であってもよい。また、芳香族ポリアミド系樹脂(A)の配合量は、曲げ強さをさらに向上する観点では、55質量%以上、60質量%以上、63質量%以上、65質量%以上、68質量%以上、70質量%以上、さらには73質量%以上であってもよい。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、アラミド繊維として、パラ系アラミド繊維(B)を含有する。パラ系アラミド繊維(B)を用いることによって、例えばメタ系アラミド繊維を用いる場合と比較して、高い引張強さと高い引張弾性率を有しているため、曲げ強さを顕著に向上できる効果が得られる。
(1)熱可塑性樹脂組成物をHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)に浸漬し20℃で放置して、半芳香族ポリアミド樹脂(A)を溶解させる。
(2)溶解後、吸引ろ過し、濾紙に残ったパラ系アラミド繊維(B)を含む残留物を回収する。
(3)残留物をアルコールで洗浄する。
(4)残留物を水に分散させる。
(5)分散液を一滴、プレパラートに挟み込み分散液を広げる。
(6)マイクロスコープによる非接触の形状観察によって分散液を50倍で観察する。繊維長が0.1mm以上10mm以下である100本のパラ系アラミド繊維(B)について繊維長を測定し、パラ系アラミド繊維(B)の数平均繊維長を求める。
熱可塑性樹脂組成物は、ポリテトラフルオロエチレン(C)をさらに含むことが好ましい。ポリテトラフルオロエチレン(C)を配合する場合、その配合量は、例えば、1質量%以上30質量%以下、3質量%以上20質量%以下、5質量%以上15質量%以下、さらには8質量%以上12質量%以下であってもよい。これにより、曲げ強さと耐摩耗性の双方に優れる。曲げ強さをさらに向上する観点では、ポリテトラフルオロエチレン(C)の配合量は、14質量%以下、13質量%以下、さらには12質量%以下であってもよく、このとき配合量の下限には、上記の例示における下限を適宜組み合わせることができる。本実施形態では、ポリテトラフルオロエチレン(C)の配合量を減じることで、曲げ強さが向上する効果が得られる。このとき、ポリテトラフルオロエチレン(C)の配合量を減じても、芳香族ポリアミド系樹脂(A)とパラ系アラミド繊維(B)との組み合わせによって良好な耐摩耗性が発揮されるため、曲げ強さと耐摩耗性がより好適に両立される。
熱可塑性組成物は、芳香族ポリアミド系樹脂(A)及びパラ系アラミド繊維(B)と共に、カーボンファイバー(D)を配合してなることが好ましい。カーボンファイバー(D)を配合する場合、その配合量は、熱可塑性組成物の総量に対して1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。これにより、曲げ強さと耐摩耗性の双方に優れる。カーボンファイバー(D)の配合量が、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、さらには8質量%以上であることによって、曲げ強さがさらに向上する。カーボンファイバー(D)の配合量が、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、さらには12質量%以下であることによって、耐摩耗性がさらに向上する。
本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、上述した熱可塑性樹脂組成物を製造するために好適に用いることができる。熱可塑性樹脂組成物についてした説明は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法に適宜援用される。
本発明の一実施形態に係るギヤは、以上に説明した熱可塑性樹脂組成物を用いて製造されるため、曲げ強さと耐摩耗性に優れる効果を奏する。また、これにより、ギヤは、動力伝達等の効率に優れ、長寿命化も実現できる。さらに、かかるギヤは、本発明の一実施形態に係る熱可塑性組成物について説明した効果を発揮することができる。
熱可塑性樹脂組成物に用いた原料は以下の通りである。
ポリデカメチレンテレフタルアミド(PA10T)(ダイセル・エボニック株式会社製「ベスタミド HTplus M3000 nc」)
コポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド(帝人株式会社製「テクノーラT322UR」、サイジング剤:ポリウレタン(サイジング剤を含むパラ系アラミド繊維総量に対して13質量%))
パラ系アラミド繊維(B)は、繊維長3mm又は6mmに調製して用いた。繊維径は、12μmである。
ポリテトラフルオロエチレン(株式会社喜多村製「KT-600M」、数平均分子量1,000,000~10,000,000)
ポリテトラフルオロエチレン(株式会社喜多村製「KTL-610」、数平均分子量100,000~1,000,000)
PAN系カーボンファイバー(三菱ケミカル株式会社製「TR06UL」、繊維径6μm)
原料の溶融混練では、押出機(東芝機械株式会社製「TEM37-BS」(L/D=32)、同方向回転二軸押出機)を用いた。バレル温度設定は280~310℃としダイの温度は310℃とした。
(1)ペレット加工性
ペレット作製にあたり、押出ストランドをロータリー回転刃式ペレタイザーでカットする際に、カット不良ペレットの混入有無を観察することで、ペレット加工性を評価した。表1に示す全ての実施例及び比較例1において、カット不良ペレットの混入は見られなかった。一方、比較例2では、カット不良ペレットが混入した。これは、アラミド繊維量の増加により繊維同士の絡み合いが発生したことが原因と考えられる。
[評価試験片の作製]
得られた熱可塑性樹脂組成物(ペレット)について、東洋機械金属株式会社製射出成形機「Si-50V」、及びISO234-1に従った多目的試験片金型を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出速度300mm/sにて多目的試験片を成形し、ISO20753に定めた評価試験片を作製した。ウェルド強度評価用試験片は多目的試験片の両端をゲートとして、試験片平行部の中央にウェルドを形成することで作製した。
(2-1)曲げ強さ
上記多目的試験片を用いて、ISO178の記載に従って測定した。
(2-2)シャルピー衝撃強さ(ノッチ無し)
上記多目的試験片を用いて、ISO179-1の記載に従って測定した。
JIS K 7218(1986) A法に記載の中空円筒試験片同士の試験法を参照したスラスト試験法で評価した。具体的には以下の通りである。
[熱可塑性樹脂試験片]
得られた熱可塑性樹脂組成物(ペレット)について、住友重機械工業株式会社製射出成形機「SE-18DU」、及び接触面側の円筒端面(環状端面)に半径R1.0mmの半球を120°間隔で配置した形状の中空円筒試験片金型を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃にて成形し、円筒試験片を作製した。
[金属試験片]
材質にSUS304を用いて、JIS K 7218(1986) A法に定められている中空円筒試験片を切削加工した。
[試験条件]
荷重150N、速度0.5m/s、滑り距離3km、樹脂・金属の接触面に下記グリースを塗布し、23℃及び相対湿度50%環境下で試験を行った。
[グリース]
増ちょう剤:リチウム石けん
基油:ポリアルファオレフィン
添加剤:モリブデンジチオカーバメート添加(Mo量0.06mass%)
混和ちょう度(JIS K220.7準拠):295
滴点(JIS K2220.8準拠):208℃
四球式耐荷重能試験(ASTM D2596準拠) 融着荷重:4900N
離油度(JIS K2220.11準拠):1.8mass%
蒸発量(JIS K2220.10準拠):0.2mass%
酸化安定度(JIS K2220.12準拠):25kPa
(3-1)耐SUS摺動特性(摩耗量)
樹脂試験片の半球高さを試験前後で測定し、その差を摩耗量とした。摩耗量が小さいほど、耐摩耗性に優れると評価できる。
(3-2)摩擦係数
JIS K 7218(1986) A法を参照して、上述した2つの中空円筒試験片(熱可塑性樹脂試験片及び金属試験片)を端面で合わせ、一定荷重(垂直荷重(円筒の中心軸方向の荷重))の下で一方を回転し、他方を固定した。摩擦抵抗によって発生する固定中空円筒のトルクを測定し、下記式より摩擦係数を算出した。
摩擦係数μ=T/(r×W)
(上記式において、Wは一定荷重(垂直荷重)、Tは測定されるトルク、rは半球を備えた中空円筒試験片の半球頂点を通る半径である。)
以上の結果を表1に示す。
Claims (11)
- 50質量%以上90質量%以下の芳香族ポリアミド系樹脂(A)と、
1質量%以上30質量%以下のパラ系アラミド繊維(B)と、
1質量%以上30質量%以下のポリテトラフルオロエチレン(C)と
を含み、
前記ポリテトラフルオロエチレン(C)の数平均分子量が1,000,000以上である、熱可塑性樹脂組成物。 - 前記パラ系アラミド繊維(B)がサイジング剤を含み、
前記サイジング剤がポリウレタンである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。 - ポリウレタンをさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記芳香族ポリアミド系樹脂(A)が半芳香族ポリアミド樹脂である、請求項1~3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記芳香族ポリアミド系樹脂(A)がポリデカメチレンテレフタルアミドである、請求項1~4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 1質量%以上30質量%以下のカーボンファイバー(D)をさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記パラ系アラミド繊維(B)の平均繊維長が0.1mm以上10mm以下である、請求項1~6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1~7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を用いて製造された、ギヤ。
- 曲げ強さが110MPa以上である、請求項8に記載のギヤ。
- 50質量%以上90質量%以下の芳香族ポリアミド系樹脂(A)と、1質量%以上30質量%以下のパラ系アラミド繊維(B)と、1質量%以上30質量%以下のポリテトラフルオロエチレン(C)とを含み、
前記ポリテトラフルオロエチレン(C)の数平均分子量が1,000,000以上である熱可塑性樹脂組成物を製造する、熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
前記芳香族ポリアミド系樹脂(A)と前記パラ系アラミド繊維(B)とを混練する混練工程を含む、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 前記混練工程に供される前記パラ系アラミド繊維(B)の平均繊維長が0.1mm以上10mm以下である、請求項10に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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