JP5012506B2 - 医療用チューブ - Google Patents
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Description
しかし、スチレン系エラストマーとポリエチレンとのブレンド樹脂からなるチューブは、スチレン系エラストマーの比率が低いと柔軟性が悪く、逆にスチレン系エラストマーの比率が高いとポリブタジエン製チューブと同様、摩擦摩耗が弱くなり、医療用チューブとしての使用には適していない。また、スチレン系エラストマーとプロピレン系樹脂とのブレンド樹脂からなるチューブは、耐キンク性が悪い。
しかし、スチレン系エラストマーとプロピレン単独重合体(ポリプロピレン)とパラフィン系オイルとのブレンド樹脂からなるチューブ(例えば、特許文献3参照)は、硬度の高いポリプロピレンがブレンドされてなるため、医療用チューブに必要な柔軟性と耐キンク性を確保するためには多量のパラフィン系オイルを添加する必要がある。
(1) (a)一個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックおよび一個以上の共役ジエンからなる重合体ブロックを有し、共役ジエンからなる重合体ブロックが水素添加されてなる水添ブロック共重合体であって、ガラス転移温度が−45℃以上、重量平均分子量が5万〜15万、かつ、共役ジエンからなる重合体ブロックにおける1,4結合量が34重量%以下である水添ブロック共重合体と、
(b)非メタロセン系触媒の存在下で重合されてなるオレフィン系共重合体と、
(c)炭化水素系ゴム用軟化剤とを有してなり、
上記の成分(a)〜(c)が(a)が30〜90重量%、(b)が5〜40重量%、(c)が5〜20重量%の割合で配合された樹脂組成物から構成される医療用チューブ、
(2) (a)水添ブロック共重合体は、共役ジエンからなる重合体ブロックの両端にビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックが配置された三元ブロック共重合体である(1)記載の医療用チューブ、
(3) (a)水添ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物は、スチレン系モノマーである(1)または(2)記載の医療用チューブ、
(4) (a)水添ブロック共重合体を構成する共役ジエンは、ブタジエンである(1)〜(3)のいずれかに記載の医療用チューブ、
(5) (b)オレフィン系共重合体は、チーグラー系触媒の存在下で重合されたプロピレン−エチレンランダム共重合体またはプロピレン−エチレンブロック共重合体である(1)〜(4)のいずれかに記載の医療用チューブ、
(6) さらに10重量%以下の割合でエチレン−α−オレフィン共重合体が含まれてなる(1)〜(5)のいずれかに記載の医療用チューブ
に関する。
(a)一個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックおよび一個以上の共役ジエンからなる重合体ブロックを有し、共役ジエンからなる重合体ブロックが水素添加されてなる水添ブロック共重合体と、
(b)非メタロセン系触媒の存在下で重合されてなるオレフィン系共重合体と、
(c)炭化水素系ゴム用軟化剤と
を有する樹脂組成物から構成される。
前記共役ジエンからなる重合体ブロックは、炭素−炭素二重結合が水素添加されてなる。水素添加率としては、二重結合の50%以上であることが好ましく、より好ましくは90%である。水素添加率が50%未満であると、成形されたチューブの耐候性および透明性が損なわれるおそれがある。
また前記共役ジエンからなる重合体ブロックは、1,4結合量が34重量%以下であることが好ましい。1,4結合量が34重量%を越えると、共役ジエンからなる重合体ブロックにおける1,4結合量が多すぎてチューブへの成形が困難になり、また成形されたチューブは硬くて透明性が悪く、医療用途に用いるには好ましくない。
また(a)水添ブロック共重合体は、ガラス転移点が−45℃以上であり、より好ましくは−43℃以上である。ガラス転移点が−45℃未満の水添ブロック共重合体は、チューブへの成形が困難であり、また成形されたチューブは硬くて透明性が悪いため、医療用途に用いるには好ましくない。
(b)オレフィン系共重合体としては、チーグラー系触媒の存在下で重合されたプロピレンを主成分とするプロピレン系共重合体が好ましい。具体的にはプロピレン−エチレンランダム共重合体またはプロピレン−エチレンブロック共重合体などが、得られたチューブの柔軟性と耐キンク性のバランスがよいため好ましく用いられる。前記共重合体におけるエチレン含量は、0.1〜10重量%であることが好ましい。エチレン含量が10重量%よりも多いと、チューブの溶出物が増加して安全性を損なう恐れがあり、0.1重量%未満であると成形されたチューブがキンクしやすくなる。メタロセン触媒を用いたオレフィン系共重合体についてキンク性が低下している理由としては、定かではないが、メタロセン触媒を用いた場合、得られる共重合体は分子量分布の幅が狭くなりやすく、また立体規則性も整いやすくなるためであろうと考えられる。
230℃, 2.16kg)が0.1〜100g/10分であることが好ましく、1.0〜100g/10分であることがより好ましい。メルトフローレイトが0.1g/10分より小さい場合は樹脂組成物の流動性が悪くなり、メルトフローレイトが100g/10分より大きい場合は樹脂組成物の流動性が高すぎて、いずれの場合もチューブへの成形が困難になる。
(b)オレフィン系共重合体が40重量%よりも多いと成形されたチューブの柔軟性が低くなり、またチューブが硬すぎて耐摩耗性が悪く、内部を通過する液体の流量制御も困難になる。一方、(b)オレフィン系共重合体が5重量%よりも少ないと、成形されたチューブ内面の粘着性が高くなるため、輸液チューブとして使用する際にローラークランプによる流量制御が困難になるなどの不具合が生じる。
(c)炭化水素系ゴム用軟化剤が20重量%よりも多いと、チューブの耐粘着性が悪くなり、チューブ内面がべとついて接着してしまうおそれがある。また(c)炭化水素系ゴム用軟化剤が5重量%よりも少ないと、チューブの耐摩耗性が悪くなる。
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などがあげられるが、好ましくはエチレン含量が50mol%よりも多いエチレン−ヘキセン共重合体またはエチレン−オクテン共重合体である。
(a)水添ブロック共重合体
(a−1)スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含量15重量%、水素添加率98%以上、1,4結合量34重量%、重量平均分子量12.0万、ガラス転移点−42℃)
(a−2)スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロック共重合体の水素添加物(クレイトンポリマージャパン社製「GRP−6924」、スチレン含量21重量%、水素添加率98%以上、1,4結合量25重量%、重量平均分子量10.6万、ガラス転移点−38℃)
(a−3)スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含量15重量%、水素添加率98%以上、1,4結合量17重量%、重量平均分子量12.0万、ガラス転移点−34℃)
(a−4)スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含量15重量%、水素添加率98%以上、1,4結合量6重量%、重量平均分子量12.1万、ガラス転移点−25℃)
(a−5)スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロック共重合体の水素添加物(クレイトンポリマージャパン社製「G1651」、スチレン含量31重量%、水素添加率98%以上、1,4結合量36重量%、重量平均分子量20.1万、ガラス転移点−56℃)
(a−6)スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含量19重量%、水素添加率98%以上、1,4結合量43重量%、重量平均分子量12.5万、ガラス転移点−55℃)
(b−1)プロピレン−エチレンランダム共重合体(三井ポリオレフィン社製「J226E」、チーグラー系触媒による重合体、エチレン含量4.5重量%、MFR30g/10分(230℃、2.16kg)、DSCピーク150℃、曲げ弾性率960MPa)
(b−2)プロピレン−エチレンブロック共重合体(住友化学社製「EP3725」、チーグラー系触媒による重合体、MFR2.8g/10分(230℃、2.16kg)、DSCピーク103℃、143℃、曲げ弾性率440MPa)
(b−3)ポリプロピレン(サンアロマー社製「PL400A」、チーグラー系触媒による重合体、MFR2.0g/10分(230℃、2.16kg)、DSCピーク163℃、曲げ弾性率1,400MPa)
(b−4)プロピレン−エチレンランダム共重合体(日本ポリプロ社製「ウィンテックWFX6」、メタロセン系触媒による重合体、MFR2.0g/10分(230℃、2.16kg)、DSCピーク125℃、曲げ弾性率600MPa)
(c−1)流動パラフィン(エッソ社製「クリストールN352」、比重0.878、動粘度(40℃)68cSt)
(d−1)エチレン−オクテン共重合体(プライムポリマー社製「モアテック0238H」、MFR2.1g/10分(230℃、2.16kg)、Vicat軟化点100℃)
(d−2)界面活性剤;グリセリンモノステアレート(理研ビタミン社製「リケマールS−100」)、滑剤;エルカ酸アミド(日本油脂社製「アルフローP−1」)および酸化防止剤;テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカルズ社製「イルガノックス1010」)
表1に示す配合量(重量比)で上記成分(a)〜(d)を配合した樹脂組成物を二軸押出成型機(池貝鉄鋼社製「PCM30」)を用いて190℃にて溶融混練し、次いで押し出されたストランドをカッティングして樹脂組成物のペレットを作製した。
(柔軟性)
樹脂組成物のペレットから1mm厚のシートをプレス成形し(関西ロール社製「PESWR−3735」)、成形温度200℃、成形時最大圧力15.0MPa)、JIS K 6251に基づくダンベル状3号型を打ち抜いて試験片を作製した。試験片の長手方向の中点から上下各10mmの位置に標線(標線間距離20mm)を設け、万能試験機(島津製作所社製「AUTOGRAPH AG−500D」)によって引張試験(つかみ具間距離40mm、クロスヘッドスピード100mm/min)を実施し、破断時の標線間の伸度を破断伸度とした。なお、本実施例においては、プレス成形時に発生する樹脂配向を考慮し、試験片はシートの縦方向に2片および横方向に2片打ち抜き、計4片の破断伸度の平均値を採用した。破断伸度が600%以上のものを柔軟性適(表中○で表示)、600%未満のものを柔軟性不適(表中×で表示)とした。
樹脂組成物のペレットから2mm厚のシートをプレス成形し(関西ロール社製「PESWR−3735」)、成形温度200℃、成形時最大圧力15.0MPa)、成形されたシートを5枚重ねて密着させたものを試験片とした。JIS K 7215に基づいてAタイプの手押し式デュロメータ(アカシ社製「HH−315」)を用い、5つの試験片の表面硬度の瞬間値を測定し、その平均値を採用した。表面硬度が85以下のものを剛性適(表中○で表示)、85より大きいものを剛性不適(表中×で表示)とした。
一方比較例1の樹脂組成物はオレフィン系共重合体の量が多すぎるため、成形されるチューブは硬すぎて医療用としては不適切である。また、比較例5のチューブは水添ブロック共重合体の重量平均分子量が大きすぎ、かつ、共役ジエンからなる重合体ブロックにおける1,4結合量が多すぎるため、硬すぎてチューブの成形が困難である。比較例6の樹脂組成物は水添ブロック共重合体のガラス転移点が低すぎ、かつ、共役ジエンからなる重合体ブロックにおける1,4結合量が多すぎるため、成形されるチューブが硬すぎて医療用としては不適切である。
(成形性)
前記工程により樹脂組成物のペレットからチューブが成形できたものを成形性適(表中○で表示)、樹脂成分の一部が溶融しきれず表面が大きく荒れるなどしてチューブが成形できなかったものを成形性不適(表中×で表示)とした。
チューブの両端をステンレス製のピンセット(つかみ部分幅3mm)を用いて挟み、ループを形成した。チューブを挟む力は、チューブの端面に密着し、かつチューブを押しつぶさない程度の力とした。ループ径を1mm/秒の早さで小さくしていったときに、チューブがキンクした時点でのループ径を測定し、5つのチューブについて測定した結果の平均値をキンクループの値とした。キンクループが90mm未満であるものを耐キンク性適(表中○で表示)、90mm以上であるものを耐キンク性不適(表中×で表示)とした。
チューブを肉眼で観察し、チューブ内を流れる液体を視認できるものを透明性適(表中○で表示)、不透明または白濁しているもの、あるいはチューブ内を流れる液体を視認できないものを透明性不適(表中×で表示)とした。
チューブを輸液セット(ニプロ社製「ISA−600A00」)用のローラークランプに装着し、クランプのローラーを回転させてチューブが潰された状態で48時間放置した。放置後、チューブをローラークランプから外した結果、チューブが即座に元の状態に戻ったものを耐粘着性適(表中○で表示)、チューブの内面同士が接着しておりその後元の状態に戻ったもの、または元の状態に戻らなかったものを耐粘着性不適(表中×で表示)とした。なお、前記評価は5本のチューブについて行い、5本のチューブ全てが適であった場合のみを耐粘着性適とし、不適のチューブが一本でもあった場合の評価は耐粘着性不適とした。
長さ150cmに切断したチューブを輸液セット(ニプロ社製「ISA−600A00」)のチューブとして輸液セットを組み立て、輸液ポンプ(ニプロ社製「FP970」)を用いて4ml/分で24時間生理食塩水(大塚製薬工場社製「大塚生食注」)を流した後、チューブの摩耗状態および輸液ポンプの蛇腹部分に付着したチューブの摩耗粉の有無を目視で観察した。チューブの摩耗が起こっていないものを耐摩耗性適(表中○で表示)、チューブの摩耗が起こっているものまたはチューブの特性が原因で24時間以内に輸液ポンプが停止したものを耐摩耗性不適(表中×で表示)とした。
長さ125cmに切断したチューブを輸液セット(ニプロ社製「ISA−600A00」)のチューブとして輸液セットを組み立て、上流側には生理食塩水(大塚製薬工場社製「大塚生食注」)の入った輸液バッグを、下流側には静脈針(ニプロ社製「ニプロフローマックス21G×1+1/2RB」)を接続した。輸液バッグの液面と静脈針先端との高低差を100cmに設定し、チューブの上流側から20〜25cmの位置にローラークランプを固定して、60±5滴/分の流量で生理食塩水を流した。静脈針先端から出てきた生理食塩水の重量を天秤(エー・アンド・ディー社製「GX−6100」)を用いて1分おきに2時間後まで測定し、下記式
より算出された値を流量変化とした。流量変化が20%以下であるものを流量安定性適(表中○で表示)、20%よりも大きいものを流量安定性不適(表中×で表示)とした。
一方比較例1のチューブはオレフィン系共重合体の量が多すぎるため、チューブが硬すぎて耐摩耗性が悪く、流量も不安定である。比較例2のチューブは軟化剤の量が多すぎるためチューブ内面がべとつき、医療用チューブとしては耐粘着性が不十分である。比較例3のチューブはオレフィン系共重合体に代えてプロピレン単独重合体を用いているため、また比較例4のチューブはメタロセン系触媒の存在下で重合されたオレフィン系共重合体を使用しているため、いずれのチューブもキンクしやすい。なお、比較例4のチューブは透明性も不十分である。比較例5のチューブは水添ブロック共重合体の重量平均分子量が大きすぎ、かつ、共役ジエンからなる重合体ブロックにおける1,4結合量が多すぎるため、チューブの成形が困難である。また、比較例6のチューブは水添ブロック共重合体のガラス転移点が低すぎ、かつ、共役ジエンからなる重合体ブロックにおける1,4結合量が多すぎるため、チューブの透明性が悪い。
Claims (3)
- (a)一個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックおよび一個以上の共役ジエンからなる重合体ブロックを有し、共役ジエンからなる重合体ブロックが水素添加されてなる水添ブロック共重合体であって、
重量平均分子量が5万〜15万、ガラス転移温度が−45℃以上、かつ、共役ジエンからなる重合体ブロックにおける1,4 結合量が34重量%以下であるスチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロック共重合体と、
(b)非メタロセン系触媒の存在下で重合されてなるオレフィン系共重合体と、
(c)炭化水素系ゴム用軟化剤とを有してなり、
上記の成分(a)〜(c)が(a)が30〜90重量%、(b)が5〜40重量%、(c)が5〜20重量%の割合で配合された樹脂組成物から構成される医療用チューブ。 - (b)オレフィン系共重合体は、チーグラー系触媒の存在下で重合されたプロピレン−エチレンランダム共重合体またはプロピレン−エチレンブロック共重合体である請求項1に記載の医療用チューブ。
- さらに10重量%以下の割合でエチレン−α−オレフィン共重合体が含まれてなる請求項1または2に記載の医療用チューブ。
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