JP2004136594A - 複層成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(A)を1個以上および共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(B)を1個以上有するブロック共重合体であって、重合体ブロック(A)にC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種を有するブロック共重合体および/またはその水素添加物からなる付加重合系ブロック共重合体(I0)に、ポリオレフィン(II)および場合によりゴム用軟化剤(III)を特定の割合で混合し、これに架橋剤(IV)を混合して溶融条件下で動的に架橋処理して得た熱可塑性エラストマー組成物を、他種の樹脂に積層してなる複層成形体。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物からなる層を有する複層成形体に関し、さらには、特定の架橋された付加重合系ブロック共重合体およびポリオレフィンを含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層と、剛性や強靭性に富む熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなる層とを有する複層成形体に関する。本発明の複層成形体を構成する熱可塑性エラストマー組成物からなる層は、高温での歪み回復性、耐油性に優れ、柔軟で良好なゴム的特性を有している。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車分野、電気製品、工業部品、建築材料等で各種の複層成形体が開発されている。熱可塑性エラストマーと硬質樹脂等とを複層成形することにより、外層にエラストマーの手ざわり感、滑りにくさといったエラストマーの機能が生かせる他、エラストマーをシール材、パッキン材として一体に成形でき、防水性等に優れた成形体が得られる。このような複層成形体には、外層材として、耐熱性、耐油品性、耐薬品性等の物性が要求されるとともに、柔軟性等が優れていることが要求される。近年、熱可塑性エラストマーとして芳香族ビニル化合物よりなる重合体ブロックと共役ジエン化合物よりなる重合体ブロックを有するブロック共重合体の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体」と略記することがある)を用いたコンパウンド(特許文献1および2参照)が用いられている。しかしながら、高温での歪み回復性や耐油性は満足のいくものではなく、該性質の改良された複層成形体が望まれている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−169666号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平11−293083号公報(特許請求の範囲)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐熱性、耐油性に優れ且つ柔軟なエラストマー層を有する複層成形体を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきた。その結果、芳香族ビニル化合物重合体ブロックを1個以上および共役ジエン化合物重合体ブロックを1個以上有するブロック共重合体において、芳香族ビニル化合物よりなるハードセグメントをなす重合体ブロック部分で少なくとも架橋された構造にすると、そのような特定の架橋構造を有するブロック共重合体に特定量のポリオレフィンを配合し、更に場合によりゴム用軟化剤を配合した熱可塑性エラストマー組成物からなる層と、他種の樹脂からなる層とを積層させることで、耐熱性、耐油性、耐薬品性に優れ且つ柔軟な複層成形体が得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、
芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(A)を1個以上および共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(B)を1個以上有するブロック共重合体であって、少なくとも重合体ブロック(A)部分で架橋されているブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部;
ポリオレフィン(II)10〜300質量部;および
ゴム用軟化剤(III)300質量部以下;
の割合で含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層と、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなる層とを有する複層成形体である。
【0007】
さらに本発明は、
芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(A)を1個以上および共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(B)を1個以上有するブロック共重合体であって、重合体ブロック(A)に、炭素数1〜8のアルキル基の少なくとも1個がベンゼン環に結合したアルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)のうちの少なくとも1種を有するブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(I0)100質量部に対して;
ポリオレフィン(II)を10〜300質量部;
ゴム用軟化剤(III)を300質量部以下;および、
架橋剤(IV)を0.01〜20質量部;
の割合で混合してなる混合物を、溶融条件下に動的に架橋処理して得た熱可塑性エラストマー組成物を、溶融条件下で、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂に積層することを特徴とする上記の複層成形体の製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物におけるベース成分をなす付加重合系ブロック共重合体(I)は、
▲1▼芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(A)を1個以上および共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(B)を1個以上有するブロック共重合体であって、且つハードセグメントをなす重合体ブロック(A)部分で少なくとも架橋されている。
▲2▼付加重合系ブロック共重合体(I)は、重合体ブロック(B)部分では架橋されておらず重合体ブロック(A)部分でのみ架橋されていてもよいし、または重合体ブロック(A)部分と重合体ブロック(B)部分の両方で架橋されていてもよい。そのうちでも、付加重合系ブロック共重合体(I)は、重合体ブロック(B)部分では架橋されておらず重合体ブロック(A)部分のみで架橋されていることが、ゴム用軟化剤(III)の保持力に優れ、ゴム用軟化剤(III)のブリードを抑制する点から好ましい。
▲3▼少なくとも重合体ブロック(A)部分で架橋されている付加重合系ブロック共重合体(I)は、重合体ブロック(A)に、炭素数1〜8のアルキル基の少なくとも1個がベンゼン環に結合したアルキルスチレン由来構造単位(a)[以下これを「C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)」という]および官能基(b)の少なくとも1種を導入し、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および/または官能基(b)によって重合体ブロック(A)に架橋構造を形成することによって好適に得られる。
▲4▼付加重合系ブロック共重合体(I)では、芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(A)はハードセグメントを構成し、重合体ブロック(B)はソフトセグメントを構成している。本発明で好適に用いられる付加重合系ブロック共重合体(I)は、ハードセグメントをなす重合体ブロック(A)にC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種を有し、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種によって重合体ブロック(A)部分が架橋されているために、そのような付加重合系ブロック共重合体(I)を含有する熱可塑性エラストマー組成物を用いた本発明の複層成形体は、高温での優れた歪み回復性、耐油性、良好なゴム的特性を有している。
【0009】
付加重合系ブロック共重合体(I)は、重合体ブロック(A)にのみC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種を有し重合体ブロック(B)にはそれらのいずれをも有しておらず重合体ブロック(A)部分でのみ架橋されていてもよいし、重合体ブロック(A)にC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種を有すると共に重合体ブロック(B)に官能基(b)を有し、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の両方で架橋されていてもよい。また、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の両方で架橋されている付加重合系ブロック共重合体(I)では、重合体ブロック(B)での架橋は、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)以外のもので架橋されていてもよい。
【0010】
C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種を有する重合体ブロック(A)では、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および/または官能基(b)は、重合体ブロック(A)の末端に存在していてもよいし、重合体ブロック(A)の分子鎖の途中に存在していてもよいし、重合体ブロック(A)の末端と分子鎖の途中の両方に存在していてもよい。そのため、重合体ブロック(A)は、重合体ブロック(A)の末端部分で架橋されていてもよいし、重合体ブロック(A)の分子鎖の途中で架橋されていてもよいし、または重合体ブロック(A)の末端と分子鎖の途中の両方で架橋されていてもよい。
【0011】
付加重合系ブロック共重合体(I)が、重合体ブロック(A)を1個有するジブロック共重合体(A−B)、重合体ブロック(A)を1個有するトリブロック共重合体(B−A−B)またはそれらの水素添加物である場合、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種はその1個の重合体ブロック(A)に存在し、その部分で架橋結合が形成されている。
また、付加重合系ブロック共重合体(I)が、重合体ブロック(A)を2個以上有するトリブロック、テトラブロック以上のマルチブロック共重合体又はそれらの水素添加物である場合は、2個以上の重合体ブロック(A)のうちの1個にのみC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種を存在させてその部分で架橋された構造にしてもよいし、或いは2個以上または全部の重合体ブロック(A)にC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種をそれぞれ存在させて、複数の重合体ブロック(A)部分で架橋された構造にしてもよい。
【0012】
C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)のいずれをも有していない重合体ブロック(A)をA0、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種を有する重合体ブロック(A)をA1、重合体ブロック(B)をBで表すと、付加重合系ブロック共重合体(I)が重合体ブロック(A)を1個だけ有する前記したジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれらの水素添加物である場合、付加重合系ブロック共重合体(I)は、少なくとも重合体ブロックA1部分で架橋された、A1−Bで表されるジブロック共重合体であるか、B−A1−Bで表されるトリブロック共重合体であるか、またはその水素添加物である。この場合、付加重合系ブロック共重合体(I)は、ゴム弾性を良好にする点から、重合体ブロック(B)部分でも架橋されていることが望ましい。
【0013】
また、付加重合系ブロック共重合体(I)が重合体ブロック(A)を2個以上有するトリブロック以上のマルチブロック共重合体である場合は、例えば、少なくともブロックA1部分で架橋されたA1−B−A0、A1−B−A1、A1−B−A0−B、A1−B−A1−B、A1−A0−B−A0−A1、A0−A1−B−A1−A0、A1−B−A0−B−A1、(A1−B)j(jは3以上の整数を示す)、(A1−B)k−A1(kは2以上の整数を示す)、(B−A1−)m−B(mは2以上の整数を示す)、(A1−B)nX(nは2以上の整数、Xはカップリング剤残基を示す)などで表される種々のマルチブロック共重合体および/またはその水素添加物などであり、それらのいずれであってもよい。
【0014】
その中でも、付加重合系ブロック共重合体(I)は、少なくともブロックA1部分で架橋されたA1−B−A1で表されるトリブロック共重合体の水素添加物および/またはA1−A0−B−A0−A1で表されるペンタブロック共重合体の水素添加物であることが、熱可塑性エラストマー組成物の高温での歪み回復性が良好になることから好ましい。
【0015】
なかでも、付加重合系ブロック共重合体(I)は、少なくともブロックA1部分で架橋されたA1−B−A1で表されるトリブロック共重合体の水素添加物の架橋物であることが、架橋結合の導入による物性改善の効果が高く、得られる熱可塑性エラストマー組成物の高温での歪み回復性やゴム的特性がより優れたものとなることから好ましい。
【0016】
重合体ブロック(A)において、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)を構成するアルキルスチレンとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜8である、o−アルキルスチレン、m−アルキルスチレン、p−アルキルスチレン、2,4−ジアルキルスチレン、3,5−ジアルキルスチレン、2,4,6−トリアルキルスチレン、前記したアルキルスチレン類におけるアルキル基の水素原子の1個または2個以上がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキルスチレン類などを挙げることができる。より具体的には、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位を構成するアルキルスチレン誘導体としては、例えば、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジエチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、2,4,6−トリエチルスチレン、o−プロピルスチレン、m−プロピルスチレン、p−プロピルスチレン、2,4−ジプロピルスチレン、3,5−ジプロピルスチレン、2,4,6−トリプロピルスチレン、2−メチル−4−エチルスチレン、3−メチル−5−エチルスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、2,4−ビス(クロロメチル)スチレン、3,5−ビス(クロロメチル)スチレン、2,4,6−トリ(クロロメチル)スチレン、o−ジクロロメチルスチレン、m−ジクロロメチルスチレン、p−ジクロロメチルスチレンなどを挙げることができる。
【0017】
重合体ブロック(A)は、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)として前記したアルキルスチレンおよびハロゲン化アルキルスチレンのうちの1種または2種以上からなる単位を有することができる。
【0018】
そのうちでも、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)としては、p−メチルスチレン単位が、ビスマレイミド系化合物や有機過酸化物などの架橋剤(IV)との反応性に優れ、重合体ブロック(A)に架橋構造を確実に導入できることから好ましい。
アルキルスチレン由来構造単位のベンゼン環に結合したアルキル基の炭素数が9以上になると、架橋剤(IV)との反応性に劣り、架橋構造が形成されにくくなる。
【0019】
付加重合系ブロック共重合体(I)の重合体ブロック(A)がC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)を有し、その部分で架橋されている場合に、重合体ブロック(A)におけるC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)の含有量は、付加重合系ブロック共重合体(I)における結合ブロック数、付加重合系ブロック共重合体の分子量、重合体ブロック(A)がC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)のみを有しているか、またはC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)と共に官能基(b)を有しているかなどによって異なり得る。
【0020】
付加重合系ブロック共重合体(I)が重合体ブロック(A)に官能基(b)を持たず、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)のみを有し、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)部分で架橋された付加重合系ブロック共重合体またはその水素添加物[以下これを「付加重合系ブロック共重合体(Ia)」ということがある]である場合は、重合体ブロック(A)におけるC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)の含有割合は、付加重合系ブロック共重合体(Ia)を構成する重合体ブロック(A)の質量[付加重合系ブロック共重合体(Ia)が2個以上の重合体ブロック(A)を有する場合はその合計質量]に対して1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。場合によっては、重合体ブロック(A)を構成する全ての単位がC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)からなっていてもよい。重合体ブロック(A)にC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)のみを有する付加重合系ブロック共重合体(Ia)において、重合体ブロック(A)の質量に対してC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)の含有割合が1質量%未満であると、重合体ブロック(A)部分で架橋結合が形成されにくくなり、そのような付加重合系ブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物の高温での歪み回復性が劣ったものになり易い。
【0021】
付加重合系ブロック共重合体(I)の重合体ブロック(A)に有する官能基(b)(架橋前の官能基)としては、例えば、活性水素原子を有する官能基[例えば式:−OH,−SH,−NH2,−NHR,−CONH2,−CONHR,−CONH−,−SO3H,−SO2H,−SOHで表される官能基(式中Rは炭化水素基を示す)など];窒素原子を有する官能基(例えば、式:−NR2,>C=NH,>C=N−,−CN,−NCO,−OCN,−SCN,−NO,−NO2,−NCS,−CONR2,−CONR−等で表される官能基(式中Rは炭化水素基を示す)等];カルボニル基またはチオカルボニル基を有する官能基[例えば、式:>C=O,>C=S,−CH=O,−CH=S,−COOR,−CSOR(式中Rは炭化水素基を示す)など];エポキシ基、チオエポキシ基などを挙げることができる。付加重合系ブロック共重合体(I)は、重合体ブロック(A)にこれらの官能基の1種または2種以上を有し、その部分で架橋されていることができる。
そのうちでも、重合体ブロック(A)に有する官能基(b)は、水酸基であることが、架橋結合が形成し易い点から好ましい。
【0022】
付加重合系ブロック共重合体(I)の重合体ブロック(A)が官能基(b)を有し、その部分で架橋されている場合に、重合体ブロック(A)における官能基(b)の含有量は、付加重合系ブロック共重合体(I)の結合ブロック数、分子量、重合体ブロック(A)が官能基(b)のみを有しているかまたは官能基(b)と共にC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)を有しているかなどによって異なり得る。
【0023】
付加重合系ブロック共重合体(I)が、重合体ブロック(A)にC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)を持たず官能基(b)のみを有し、官能基(b)部分で架橋された付加重合系ブロック共重合体またはその水素添加物[以下これを「付加重合系ブロック共重合体(Ib)」ということがある]であって且つ重合体ブロック(B)では架橋されていないものである場合は、付加重合系ブロック共重合体(Ib)1分子当たりの官能基(b)の数は、1.2〜1000個であることが好ましく、1.6〜200個であることがより好ましい。また、付加重合系ブロック共重合体(I)がC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)を持たず、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)の両方に官能基(b)を有し、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の両方で架橋されているものである場合は、付加重合系ブロック共重合体(Ib)1分子当たりの官能基数は、2.2〜1100個であることが好ましく、1.6〜230個であることがより好ましい。その際に、重合体ブロック(B)での官能基数は、付加重合系ブロック共重合体(Ib)1分子当たり0.5〜30個であることが好ましい。付加重合系ブロック共重合体(I)における官能基(b)の数は、HPLC、NMR、GPC、滴定などを用いて算出できる。
【0024】
付加重合系ブロック共重合体(I)が、同一または相異なる重合体ブロック(A)にC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)と官能基(b)の両方を有する場合は、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)の含有量が重合体ブロック(A)の質量に対して1〜90質量%、および官能基(b)の含有量が付加重合系ブロック共重合体(I)1分子当たり1〜1,000個であることが好ましい。
【0025】
付加重合系ブロック共重合体(I)の重合体ブロック(A)部分における架橋結合の箇所数(個数)は、付加重合系ブロック共重合体(I)1分子当たり、2箇所以上であることが好まし好ましい。重合体ブロック(A)における架橋結合の箇所数は、重合体ブロック(A)への官能基の導入個数およびそれに対する架橋剤(IV)の使用量を調節することによって変えることができる。
【0026】
付加重合系ブロック共重合体(I)は、重合体ブロック(A)を構成する芳香族ビニル化合物単位として、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)以外の他の芳香族ビニル化合物単位を有することができる。他の芳香族ビニル化合物単位としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、インデン、アセトナフチレンなどからなる単位を挙げることができ、これらの1種または2種以上の単位を有することができる。なかでも、他の芳香族ビニル化合物単位としてはスチレン単位が好ましい。
【0027】
重合体ブロック(A)が、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)と共に他の芳香族ビニル化合物単位を有する場合は、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)と他の芳香族ビニル化合物単位の結合形態は、ランダム状、ブロック状、テーパードブロック状などのいずれの形態になっていてもよい。
【0028】
重合体ブロック(A)は、上記した芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と共に、必要に応じて他の共重合性単量体からなる構造単位を少量有していてもよい。その場合の他の共重合性単量体からなる構造単位の割合は、重合体ブロック(A)の合計質量に基づいて30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。その場合の他の共重合性単量体としては、例えばメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテルなどのイオン重合性単量体を挙げることができる。これらの他の共重合性単量体の結合形態は、ランダム状、ブロック状、テーパードブロック状などのいずれの形態になっていてもよい。
【0029】
付加重合系ブロック共重合体(I)において、重合体ブロック(B)を構成する共役ジエン化合物としては、イソプレン、ブタジエン、ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどを挙げることができる。重合体ブロック(B)は、これらの共役ジエン化合物の1種のみから構成されていてもまたは2種以上から構成されていてもよい。重合体ブロック(B)が2種以上の共役ジエン化合物に由来する構造単位を有している場合は、それらの結合形態はランダム、テーパード、ブロック状、またはそれらの2種以上の組み合わせからなっていることができる。
なかでも、重合体ブロック(B)は、イソプレン単位を主体とするモノマー単位からなるポリイソプレンブロックまたはその不飽和結合の一部または全部が水素添加された水添ポリイソプレンブロック;ブタジエン単位を主体とするモノマー単位からなるポリブタジエンブロックまたはその不飽和結合の一部または全部が水素添加された水添ポリブタジエンブロック;或いはイソプレン単位とブタジエン単位を主体とするモノマー単位からなるイソプレン/ブタジエン共重合ブロックまたはその不飽和結合の一部または全部が水素添加された水添イソプレン/ブタジエン共重合ブロックであることが、耐候性、耐熱性などの点から好ましい。特に、重合体ブロック(B)は、前記したポリイソプレンブロック、ポリブタジエンブロックまたはイソプレン/ブタジエン共重合ブロックの水素添加されたブロックであることがより好ましい。
【0030】
重合体ブロック(B)の構成ブロックとなり得る上記したポリイソプレンブロックでは、その水素添加前には、イソプレンに由来する単位は、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基[−CH2−C(CH3)=CH−CH2−;1,4−結合のイソプレン単位]、イソプロペニルエチレン基[−CH(C(CH3)=CH2)−CH2−;3,4−結合のイソプレン単位]および1−メチル−1−ビニルエチレン基[−C(CH3)(CH=CH2)−CH2−;1,2−結合のイソプレン単位]からなる群から選ばれる少なくとも1種の基からなっており、各単位の割合は特に限定されない。
【0031】
重合体ブロック(B)の構成ブロックとなり得る上記したポリブタジエンブロックでは、その水素添加前には、そのブタジエン単位の70〜20モル%、特に65〜40モル%が2−ブテン−1,4−ジイル基(−CH2−CH=CH−CH2−;1,4−結合ブタジエン単位)であり、30〜80モル%、特に35〜60モル%がビニルエチレン基[−CH(CH=CH)−CH2−;1,2−結合ブタジエン単位]であることが好ましい。ポリブタジエンブロックにおける1,4−結合量が上記した70〜20モル%の範囲内であると、そのゴム物性が良好になる。
【0032】
重合体ブロック(B)の構成ブロックとなり得る上記したイソプレン/ブタジエン共重合ブロックでは、その水素添加前には、イソプレンに由来する単位は2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基および1−メチル−1−ビニルエチレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基からなっており、またブタジエンに由来する単位は2−ブテン−1,4−ジイル基および/またはビニルエチレン基からなっており、各単位の割合は特に制限されない。イソプレン/ブタジエン共重合ブロックでは、イソプレン単位とブタジエン単位の配置は、ランダム状、ブロック状、テーパードブロック状のいずれの形態になっていてもよい。そして、イソプレン/ブタジエン共重合ブロックでは、ゴム物性の改善効果の点から、イソプレン単位:ブタジエン単位のモル比が1:9〜9:1であることが好ましく、3:7〜7:3であることがより好ましい。
【0033】
付加重合系ブロック共重合体(I)を含有する熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性および耐候性が良好なものとなる点から、付加重合系ブロック共重合体(I)の重合体ブロック(B)における不飽和二重結合の一部または全部が水素添加(以下「水添」ということがある)されていることが好ましい。その際の共役ジエン重合体ブロックの水添率は60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることがさらに好ましい。とりわけ水添率が100モル%に近いと、熱可塑性エラストマー組成物を製造するための動的な架橋処理の際に、重合体ブロック(B)と架橋剤(IV)との反応割合が低減する一方で、重合体ブロック(A)の有するC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種と架橋剤(IV)との反応が促進されて、ハードセグメントをなす重合体ブロック(A)に架橋結合が導入される選択性が高くなるので好ましい。
【0034】
重合体ブロック(B)は、共役ジエンからなる構造単位とともに、必要に応じて他の共重合性単量体からなる構造単位を少量有していてもよい。その場合の他の共重合性単量体の割合は、付加重合系ブロック共重合体(I)を構成する重合体ブロック(B)の合計質量に基づいて30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。その場合の他の共重合性単量体としては、例えばスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどのイオン重合性単量体を挙げることができる。
【0035】
付加重合系ブロック共重合体(I)における架橋度は、付加重合系ブロック共重合体(I)を含有する本発明のチューブおよびホースを形成する熱可塑性エラストマーのポリマー組成、用途などに応じて調整し得るが、一般的には架橋後の付加重合系ブロック共重合体をシクロヘキサンを用いて10時間ソックスレー抽出処理した時に、シクロヘキサンに溶解せずに残留するゲルの質量割合(ゲル分率)が抽出処理前の架橋後の付加重合系ブロック共重合体(I)の質量に対して80%以上となるような架橋度であることが、高温での歪み回復性(ゴム弾性)、耐油性に優れる点から好ましい。
【0036】
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー中の付加重合系ブロック共重合体(I)は、ハードセグメントをなす重合体ブロック(A)部分に架橋結合が形成されているという点で、共役ジエン系重合体ブロック部分のみが架橋されている従来の芳香族ビニル化合物重合体ブロック/共役ジエン化合物重合体ブロックよりなるブロック共重合体の架橋物とは異なっている。本発明では、ハードセグメントをなす重合体ブロック(A)部分で少なくとも架橋されている付加重合系ブロック共重合体(I)を用いることによって、上記したように、高温での歪み回復性、耐油性に優れ、しかも柔軟で良好なゴム的性質を有する複層成形体の提供を可能にしたものである。
【0037】
付加重合系ブロック共重合体(I)の分子量は特に制限されないが、水素添加前で且つ動的な架橋処理前の状態[水素添加前の付加重合系ブロック共重合体(I0)]において、重合体ブロック(A)の数平均分子量が2,500〜75,000、好ましくは5,000〜50,000の範囲内にあり、重合体ブロック(B)の数平均分子量が10,000〜300,000、好ましくは30,000〜250,000の範囲内にあり、付加重合系ブロック共重合体(I)[水素添加前の付加重合系ブロック共重合体(I0)]の全体の数平均分子量が12,500〜2,000,000、好ましくは50,000〜1,000,000の範囲内にあることが、得られる熱可塑性エラストマー組成物の力学的特性、成形加工性などの点から好適である。なお、本明細書でいう数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン検量線から求めた値をいう。
【0038】
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー組成物を構成するポリオレフィン(II)としては、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ポリブテン−1およびポリ4−メチルペンテン−1などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうち、ポリオレフィン(II)としては、成形加工性の点から、エチレン系重合体および/またはプロピレン系重合体が好ましく用いられる。
【0039】
ポリオレフィン(II)として好ましく用いられるエチレン系重合体としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのエチレンの単独重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体、エチレン・ヘプテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体、エチレン・4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体などのエチレン共重合体を挙げることができる。なかでも、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンおよび/または低密度ポリエチレンが成形加工性の点からより好ましく用いられる。
【0040】
また、ポリオレフィン(II)として好ましく用いられるプロピレン系重合体としては、例えば、プロピレン単独重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・プロピレンブロック共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・4−メチルペンテン−1共重合体などを挙げることができる。なかでも、プロピレン単独重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体および/またはエチレン−プロピレンブロック共重合体が成形加工性の点からより好ましく用いられる。
【0041】
本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物は、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して、ポリオレフィン(II)を10〜300質量部の割合で含有することが必要である。ポリオレフィン(II)を前記10〜300質量部の割合で含有していることによって、熱可塑性エラストマー組成物中でポリオレフィン(II)が連続相をなし、その連続相中に少なくとも重合体ブロック(A)部分で架橋してなる付加重合系ブロック共重合体(I)が微粒子状で分散したモルフォロジーを有するようになり、高温での歪み回復性、柔軟なゴム的特性、良好な成形加工性が熱可塑性エラストマー組成物に付与される。
付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して、ポリオレフィン(II)の含有量が10質量部未満であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の熱可塑性が不十分となり、成形加工性などが劣るようになる。一方、300質量部を超えると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性が不足する。本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性エラストマー組成物の成形加工性、柔軟性などの点から、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して、ポリオレフィン(II)を12〜200質量部の割合で含有することが好ましく、14〜100質量部の割合で含有することがより好ましい。
【0042】
本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物が必要に応じて含有するゴム用軟化剤(III)の種類は特に制限されず、鉱物油系および/または合成樹脂系のいずれもが使用できる。鉱物油系軟化剤は、一般に芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素およびパラフィン系炭化水素の混合物であって、パラフィン系炭化水素の炭素原子数が全炭素原子中の50%以上を占めるものがパラフィン系オイルと呼ばれ、一方ナフテン系炭化水素の炭素原子が30〜45%のものがナフテン系オイルと呼ばれ、また芳香族系炭化水素の炭素原子が35%以上のものが芳香族系オイルと呼ばれている。これらの中で、本発明において好適に用いられるゴム用軟化剤はパラフィン系オイルである。
【0043】
パラフィン系オイルとしては、40℃における動粘度が20〜800cst(センチストークス)、特に50〜600cstで、流動点が0〜−40℃、特に0〜−30℃、および引火点(COC法)が200〜400℃、特に250〜350℃のものが好ましく用いられる。合成樹脂系軟化剤としては、ポリブテン、低分子量ポリブタジエンなどを挙げることができ、いずれも使用できる。
【0044】
本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物は、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して、ゴム用軟化剤(III)を300質量部以下の割合で含有しており、50〜250質量部の割合で含有することが好ましい。付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対するゴム用軟化剤(III)の含有量が300質量部を超えると、ゴム用軟化剤(III)のブリードアウト、および力学物性が低下する。
【0045】
本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性重合体を含有することができる。含有し得る他の熱可塑性重合体としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、キシレン基含有ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリアクリル酸メチルやポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマーなどのポリオキシメチレン系樹脂;スチレン単独重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂などのスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)などのエチレン系エラストマー;スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、スチレン・イソプレン共重合体ゴムなどのスチレン系エラストマーおよびその水素添加物またはその変性物;天然ゴム;合成イソプレンゴム、液状ポリイソプレンゴムおよびその水素添加物または変性物;クロロプレンゴム;アクリルゴム;ブチルゴム;アクリロニトリル・ブタジエンゴム;エピクロロヒドリンゴム;シリコーンゴム;フッ素ゴム;クロロスルホン化ポリエチレン;ウレタンゴム;ポリウレタン系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;軟質塩化ビニル樹脂などを挙げることができる。なお、他の重合体の含有量は、得られる複層成形体の柔軟性、力学物性が損なわれない範囲が好ましく、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して200質量部以下であるのが好ましい。
【0046】
また、本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて無機充填剤を含有することができる。熱可塑性エラストマー組成物が含有し得る無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、合成珪素、酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウム、マイカ、ガラス繊維、ウィスカー、炭素繊維、炭酸マグネシウム、ガラス粉末、金属粉末、カオリン、グラファイト、二硫化モリブデン、酸化亜鉛などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を含有することができる。無機充填剤の含有量は、得られる複層成形体の性能が損なわれない範囲であるのが好ましく、一般的には、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して50質量部以下であるのが好ましい。
【0047】
さらに、本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて滑剤、光安定剤、熱安定剤、防曇剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤、シリコーンオイル、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などをの1種または2種以上を含有することができる。このうち、酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系などが挙げられる。
【0048】
本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物では、熱可塑性のポリオレフィン(II)からなる連続相(マトリックス相)中に、少なくとも重合体ブロック(A)部分で架橋された付加重合系ブロック共重合体(I)からなる相、または付加重合系ブロック共重合体(I)とゴム用軟化剤(III)とからなる柔軟な相が、微細に分散している特異なモルフォロジー(分散形態)を有していることが好ましい。上記の微分散相の分散粒子径は、直径0.1μm〜30μmであるのが好ましく、0.1μm〜10μmであるのがより好ましい。しかしながら、それに限定されず、付加重合系ブロック共重合体(I)とゴム用軟化剤(III)とからなる相と、ポリオレフィン(II)からなる相とが共連続相を形成していてもよい。
【0049】
本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物は、重合体ブロック(A)部分で少なくとも架橋した付加重合系ブロック共重合体(I)を予め製造し、その架橋した付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対してポリオレフィン(II)を10〜300質量部、ゴム用軟化剤(III)を300質量部以下および場合により他の重合体や添加剤を混合し加熱混練することによっても製造してもよい。
しかしながら、本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物は、芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(A)を1個以上および共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(B)を1個以上有し、且つ重合体ブロック(A)にC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種を有するブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(I0)(架橋前の付加重合系ブロック共重合体)100質量部に対して、ポリオレフィン(II)を10〜300質量部、ゴム用軟化剤(III)を300質量部以下、および架橋剤(IV)を0.01〜20質量部の割合で混合し、場合により更に上記した他の重合体や添加剤を混合した混合物を溶融条件下に動的架橋する方法によって製造することが好ましい。かかる方法を採用することによって、各成分が均一に混合され、しかも重合体ブロック(A)に有するC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種の部分で架橋された付加重合系ブロック共重合体(I)を含有する熱可塑性エラストマー組成物を円滑に製造することができる。
ここで、本明細書における「溶融条件下に動的架橋する」とは、溶融状態にした前記混合物に混練によって剪断応力をかけながら架橋することを意味する。
【0050】
本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物の製造に用いる上記付加重合系ブロック共重合体(I0)は、重合体ブロック(A)に有するC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種が未だ架橋されていない付加重合系ブロック共重合体である点を除いては、上記で説明した架橋後の付加重合系ブロック共重合体(I)とその内容(例えばブロック共重合体を構成する単量体の種類や組成、分子量など)において同じである。
【0051】
本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物の製造に用いる架橋前の付加重合系ブロック共重合体(I0)の製法は何ら限定されず、重合体ブロック(A)にC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種を有する付加重合系ブロック共重合体(I0)を製造し得る方法であれば、いずれの方法を採用して製造してもよい。例えば、付加重合系ブロック共重合体(I0)は、アニオン重合やカチオン重合などのイオン重合法、ラジカル重合法などの公知の重合方法を行うことによって製造することができる。
重合体ブロック(A)にC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)を有する付加重合系ブロック共重合体(I0)は、前記した公知の重合方法を行うに当たって、重合体ブロック(A)を製造するための重合工程で、芳香族ビニル化合物の少なくとも一部としてベンゼン環に結合した炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルスチレンを用いることによって製造することができる。
また、重合体ブロック(A)に官能基(b)を有する付加重合系ブロック共重合体(I0)は、停止反応、開始反応、官能化モノマーの共重合、高分子反応などを採用することによって製造することができる。例えば、二官能の陰イオン重合開始剤を用いて付加重合系ブロック共重合体を合成した場合、末端処理剤としてオキシラン、カルボニル基、チオカルボニル基、酸無水物、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、エポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基等を有する化合物を用い官能化させることによって重合体ブロック(A)の末端に官能基(b)を有する付加重合系ブロック共重合体(I0)を製造することができる。
また、重合体ブロック(A)の分子鎖の途中に官能基(b)を有する付加重合系ブロック共重合体(I0)は、例えば、Macromolecules 1995;28:8702により製造することができる。
【0052】
動的架橋を行う際の架橋剤(IV)としては、重合体ブロック(A)に存在するC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)に作用して架橋結合を形成させる架橋剤[以下これを「架橋剤(IVa)」という]または官能基(b)と反応して架橋結合を形成する反応性基を有する架橋剤(IV)[以下これを「架橋剤(IVb)」という]が用いられる。架橋剤(IVa)としては、溶融条件下での動的な架橋処理中に、付加重合系ブロック共重合体(I0)の重合体ブロック(A)に存在するC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)に作用してその部分で重合体ブロック(A)に架橋結合を形成させ得る架橋剤であればいずれでもよく特に制限されない。動的な架橋処理時の処理条件(例えば処理温度や処理時間など)に応じて、反応性などを考慮して適当な架橋剤(IVa)を選択することができ、そのうちでもビスマレイミド系化合物および有機過酸化物の1種または2種以上が架橋剤(IVa)として好ましく用いられる。
【0053】
付加重合系ブロック共重合体(I0)として重合体ブロック(B)の不飽和二重結合の全部が水添されたものを使用し、架橋剤(IVa)としてビスマレイミド系化合物を用いると、付加重合系ブロック共重合体(I0)中の重合体ブロック(B)では架橋が行われず、重合体ブロック(A)に存在するC1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)部分のみで選択的に架橋された付加重合系ブロック共重合体(I)が形成される。また、付加重合系ブロック共重合体(I0)として重合体ブロック(B)に不飽和二重結合が存在するものを使用し、架橋剤(IVa)としてビスマレイミド系化合物を用いると、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)を有する重合体ブロック(A)部分および重合体ブロック(B)部分の両方で架橋された付加重合系ブロック共重合体(I)が形成される。
また、架橋剤(IVa)として有機過酸化物を用いると、付加重合系ブロック共重合体(I0)における重合体ブロック(B)に不飽和二重結合が存在してもまたは存在しなくても、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(a)を有する重合体ブロック(A)部分および重合体ブロック(B)部分の両方で架橋された付加重合系ブロック共重合体(I)が形成される。
【0054】
ビスマレイミド系化合物としては、ベンゼン環に結合したアルキル基部分および不飽和二重結合部分で架橋を生じさせ得るビスマレイミド系化合物であればいずれでもよく、例えば、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレン(1−メチル)ビスマレイミド、N,N’−2,7−ナフテンビスマレイミド、N,N’−m−ナフテンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレン−4−メチルビスマレイミド、N,N’−m−フェニレン(4−エチル)ビスマレイミドおよびトルイレンビスマレイミドなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、N,N’−m−フェニレンビスマレイミドが 反応性の点から好ましく用いられる。
【0055】
有機過酸化物としては有機過酸化物のいずれもが使用でき、例えば、ジクミルペルオキシド、ジt−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシドなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシドが反応性の点から好ましく用いられる。また、上記した架橋剤(IVa)と共に、必要に応じて、ベンゾチアジルジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのジスルフィド系化合物などからなる架橋促進剤、トアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートなどの多官能性単量体などの架橋助剤を用いてもよい。
【0056】
付加重合系ブロック共重合体(I0)の重合体ブロック(A)に有する官能基(b)の種類に対応して用いられる架橋剤(IVb)としては、官能基(b)が水酸基、−SH、−NH2、−NHR、−CONH2,−CONHR,−CONH−、−SO3H、−SO2H,−SOHなどの活性水素原子を有する官能基である場合は、モノマーイソシアネート、イソシアネート付加物(脂肪族系、環状基を有する脂肪族系、芳香族系およびビフェニル系イソシアナート付加物など)、ブロックイソシアネートなどのイソシアネート化合物を架橋剤(IVb)として使用することができ、イソシアネート基を2個以上、特に3個以上有するポリイソシアネート化合物、例えばヘキサメチレンジイソシアネートを原料とするイソシアヌレート結合を有するポリイソシアネートなどが好ましく用いられる。その際に、付加重合系ブロック共重合体(I0)の重合体ブロック(A)における官能基(b)とイソシアネート化合物架橋剤との反応性を高めるために錫系触媒、チタン系触媒などを用いることができる。
また、重合体ブロック(A)に有する官能基(b)が水酸基である場合には、前記したイソシアネート化合物以外にも、例えば、ポリエポキシ化合物、無水マレイン酸、ピロメリット酸無水物などのようなポリカルボン酸無水物などを架橋剤(IVb)として用いることができる。
重合体ブロック(A)に有する官能基(b)が、カルボキシル基である場合には、例えば、ポリエポキシ化合物、ポリアミンなどを架橋剤(IVb)として用いることができる。また、重合体ブロック(A)に有する官能基(b)がエポキシ基である場合は、例えば、ポリカルボン酸、ポリアミンなどを架橋剤(IVb)として用いることができる。
【0057】
架橋剤(IV)の使用量[架橋剤(IVa)と架橋剤(IVb)を併用する場合は両者の合計使用量]は、上記のように、付加重合系ブロック共重合体(I0)100質量部に対して0.01〜20質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましい。架橋剤(IV)の使用量が前記した0.01質量部未満であると、重合体ブロック(A)に十分な架橋結合を形成させることができず、一方前記した20質量部よりも多いと、ゴム用軟化剤(III)のブリードアウト、力学物性の低下などが生ずる。
また、官能基(b)の当量から架橋剤(IVb)の使用量をみると、架橋剤(IVb)の使用量は、重合体ブロック(A)に有する官能基(b)[重合体ブロック(B)も官能基(b)を有する場合はその合計]1当量に対して、0.1〜100当量の割合であることが好ましく、0.1〜10当量であることがより好ましい。
【0058】
本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物を製造するための溶融条件下での動的な架橋処理工程は、付加重合系ブロック共重合体(I0)およびポリオレフィン(II)、またはこれら2者とゴム用軟化剤(III)を溶融混練して微細かつ均一に分散させ、さらに架橋剤(IV)によって付加重合系ブロック共重合体(I0)における少なくとも重合体ブロック(A)部分で相互間に架橋結合を生じさせて付加重合系ブロック共重合体(I0)をそのハードセグメント[重合体ブロック(A)]で少なくとも架橋した付加重合系ブロック共重合体(I)へと変換させる。付加重合系ブロック共重合体(I0)、ポリオレフィン(II)および場合によりゴム用軟化剤(III)を含有する混合物を架橋する場合であっても、ゴムの加硫工程のように静的条件下で架橋処理した場合は、ポリオレフィン(II)が連続相を形成しにくため、得られる組成物は熱可塑性を示さないものとなり易い。
【0059】
本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物を製造するための、溶融条件下での動的架橋を行う装置としては、各成分を均一に混合し得る溶融混練装置のいずれもが使用でき、例えば単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを挙げることができる。なかでも、混練中の剪断力が大きく連続運転が可能な二軸押出機を使用するのが好ましい。
【0060】
何ら限定されるものではないが、押出機を使用して本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物を製造する際の加工工程の具体例としては次の方法を挙げることができる。すなわち、付加重合系ブロック共重合体(I0)およびポリオレフィン(II)を混合し、押出機のホッパーに投入する。その際にポリオレフィン(II)、架橋剤(IV)およびゴム用軟化剤(III)を、付加重合系ブロック共重合体(I0)に当初から添加するか、または押出機の途中からそれらの一部または全部を添加して溶融混練して押し出す。その際に、2台以上の押出機を使用して段階的に順次溶融混練してもよい。
溶融混練温度は、付加重合系ブロック共重合体(I0)およびポリオレフィン(II)が溶融し、架橋剤(IV)が反応する範囲内で適宜選択されるが、通常160℃〜270℃であるのが好ましく、180℃〜240℃であるのがより好ましい。溶融混練時間は約30秒〜5分間であるのが好ましい。
【0061】
上記のような溶融条件下での動的な架橋処理によって得られる本発明の複層成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性のポリオレフィン(II)からなる連続相(マトリックス相)中に、少なくとも重合体ブロック(A)部分で架橋された付加重合系ブロック共重合体(I)からなる相、または付加重合系ブロック共重合体(I)とゴム用軟化剤(III)とからなる柔軟な相が、微細に分散している特異なモルフォロジー(分散形態)を一般に有している。上記の微分散相の分散粒子径は、直径0.1μm〜30μmであるのが好ましく、0.1μm〜10μmであるのがより好ましい。しかしながら、それに限定されず、付加重合系ブロック共重合体(I)とゴム用軟化剤(III)とからなる相と、ポリオレフィン(II)からなる相とが共連続相を形成していてもよい。この場合も架橋剤(IV)の使用量および混練条件を適切に選択することにより、得られる組成物を熱可塑性に優れたものとすることができる。
【0062】
本発明の複層成形体は、上記の熱可塑性エラストマーからなる層と、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなる層とを有する。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;スチレン単独重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂などのスチレン系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、キシレン基含有ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリアクリル酸メチルやポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマーなどのポリオキシメチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)などのエチレン系エラストマー;スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、スチレン・イソプレン共重合体ゴムなどのスチレン系エラストマーおよびその水素添加物またはその変性物クロロスルホン化ポリエチレン;ポリウレタン系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;軟質塩化ビニル樹脂などを挙げることができる。なかでも熱可塑性樹脂としては、積層界面の熱可塑性エラストマー組成物中でポリオレフィン(II)が一般に少なくとも連続相を形成していることにより優れた層間接着力を発揮できることから、ポリオレフィン系樹脂またはポリスチレン系樹脂が好ましい。
【0063】
熱硬化性樹脂としては、EPDM加硫ゴム;天然ゴム;合成イソプレンゴム;ウレタンゴム;クロロプレンゴム;アクリルゴム;ブチルゴム;アクリロニトリル・ブタジエンゴム;エピクロロヒドリンゴム;シリコーンゴム;フッ素ゴム;エポキシ樹脂;フェノール樹脂などが使用されるが、なかでもEPDM加硫ゴムが好ましい。
【0064】
本発明においては、上記した熱可塑性エラストマー組成物と熱可塑性または熱硬化性樹脂とを、例えば射出成形、押出成形またはブロー成形などの方法を用いて、少なくとも片方の層を構成する成分の溶融条件下で積層成形することで複層成形体を得ることができる。熱可塑性エラストマー組成物からなる層と他種の樹脂からなる層とは、それぞれ1層ずつの2種2層、どちらか片方が他方をはさむ2種3層またはそれ以上の層数の他種多層のいずれであってもよい。なかでも、本発明の複層成形体は、剛性や強靭性に富む内層樹脂の表面に熱可塑性エラストマー組成物からなる外層を被覆する被覆成形体に好ましく用いられる。そのような形態の具体的な複層成形方法としては、内層が熱可塑性樹脂の場合は、あらかじめ成形しておいた熱可塑性樹脂成形体を型にインサートし、熱可塑性エラストマー組成物を射出して一体成形させる方法、あるいは、この逆に熱可塑性エラストマー組成物をあらかじめ成形し、インサートした後に熱可塑性樹脂を射出して一体成形させる方法のほか、押出機による共押出、あるいは内層と外層をそれぞれシートにしたあと、プレス成形機により所望の加熱下で貼合わせても良い。また内層が熱硬化性樹脂の場合は、あらかじめ成形し型から取り出した熱硬化性樹脂をインサートし、熱可塑性エラストマーを一体成形させる方法のほか、内層と外層をそれぞれシートにしたあと、プレス成形機により貼合わせることができる。
【0065】
複層成形体を構成する熱可塑性エラストマー組成物からなる層の厚みの合計と、他種の樹脂からなる層の厚みの合計との割合は、0.1:99.9〜99.9:0.1であるのが好ましく、1:99〜99:1であるのがより好ましい。また、複層成形体が被覆成形体の形態である場合、被覆層の厚みは、0.05〜5mmであるのが好ましく、0.1〜2mmであるのがより好ましい。
【0066】
本発明の複層成形体の形状には特に限定はなく、シート状、管状、棒状、異形成形体などのいずれでもよい。
【0067】
本発明の複層成形体は、自動車分野、電気製品、工業部品、建築材料等自動車、建設機械車両・農業機械車両・鉄道車両等に用いることが出来る。具体的には、各種配管、家電製品やOA機器などの各種スイッチ・プッシュボタン、工具、文具、電気製品、スポーツ用品などのグリップ、滑り止め、プロテクターなどの用途に用いることができる。
【0068】
【実施例】
以下に本発明を実施例、比較例、参考例または比較参考例により具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されない。以下の実施例、比較例、参考例または比較参考例において、各物性の測定および成形品の品質の評価は次のようにして行った。
【0069】
(1)硬度(JIS−A)の測定:
実施例または比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物からなるプレスシートを所定の厚さ(12mm)に重ねて、JIS−K6253に準じてA硬度を測定した。
【0070】
(2)圧縮永久歪みの測定:
実施例または比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物からなるプレスシートを用いて、JIS−K6262に準じて、温度120℃、圧縮変形量25%の条件下に22時間放置した後の圧縮永久歪みを測定した。
【0071】
(3)耐油性の測定:
実施例または比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物からなるプレスシートを用いて、JIS−K6258に準じて、IRM3号油に100℃で70h浸積したのちの重量を測定し、浸積前の重量との重量変化率を算出した。
【0072】
(4)接着力の測定:
複層成形体から剥離強度測定用の試験片(寸法:縦×横×厚み=150mm×25mm×4mm)を切り出し、それを用いてJIS−K6854に記載の「180度剥離試験」に準じて剥離強度を測定した。また、剥離強度測定用とは異なる形状の成形体を製造した実施例5および6では剥離強度を測定せず、複層成形体の各層を把持して剥離させる方法で他の実施例も併せて層間接着性を評価し、熱可塑性エラストマー組成物層が材料破壊したものを「○」、層間剥離したものを「×」とした。
【0073】
(5)ゲル分率の測定:
実施例、比較例、参考例または比較参考例で得られた試料1gをシクロヘキサンで10時間ソックスレー抽出処理を行い、抽出処理後、抽出残渣を分離して真空乾燥し、抽出残渣の質量を測定して、抽出処理前の試料の質量に対する質量%を求めてゲル分率とした。
なお、実施例1、実施例2、実施例3および比較参考例5で得られた架橋後の熱可塑性エラストマー組成物よりなる試料でのゲル分率は、抽出処理後の残渣(組成物)の質量から抽出処理前の試料に含まれるポリオレフィン(II)の質量を差し引いて該残渣に含まれる付加重合系ブロック共重合体(I0−1a)、(I0−2b)、または付加重合系ブロック共重合体(3)の架橋物の質量を算出し、架橋処理前の熱可塑性エラストマー組成物に含まれていた付加重合系ブロック共重合体(I0−1a)、(I0−2b)、または付加重合系ブロック共重合体(3)の質量に対する該残渣中の付加重合系ブロック共重合体(I0−1a)、 (I0−2b)、または付加重合系ブロック共重合体(3)の架橋物の割合(質量%)を求めてゲル分率とした。
【0074】
以下の実施例、比較例または比較参考例で用いたポリオレフィン(II)、ゴム用軟化剤(III)および架橋剤(IV)の内容は下記のとおりである。
○ポリオレフィン( II ):
ポリプロピレン(ランダム共重合体)[(株)グランドポリマー製「グランドポリプロB221」、メルトフローレート=1g/10分]
○ゴム用軟化剤( III ):
パラフィン系プロセスオイル[出光興産(株)製「PW−380」]
○架橋剤( IV a−1):
N,N’−m−フェニレンビスマレイミド[大内新興化学工業(株)製「バルノックPM」]
○架橋剤( IV a−2):
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン[日本油脂(株)製「パーヘキサ25B−40」]
○架橋剤( IV b−3):
ヘキサメチレンジイソシアネートを原料としてなるイソシアヌレート結合を有するポリイソシアネート[日本ポリウレタン工業(株)製「コロネートHX」、イソシアネート基数=3個/1分子]
【0075】
《製造例1》[付加重合系ブロック共重合体(I0−1a)の製造]
撹拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサンを30kg、p−メチルスチレンモノマーを700gおよびsec−ブチルリチウムの1.3molシクロヘキサン溶液を20ml加え、50℃で120分間重合した後、テトラヒドロフランを63g、ブタジエンモノマーを2600g加え120分間重合した。更にp−メチルスチレンモノマーを700g加え120分間重合した後、メタノールを添加し重合を停止し、ポリ(p−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(p−メチルスチレン)型トリブロック共重合体を得た。該トリブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を調製し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のZiegler系水素添加触媒を用いて水素雰囲気下において80℃で5時間水素添加反応を行い、ポリ(p−メチルスチレン)−水素添加ポリブタジエン−ポリ(p−メチルスチレン)型トリブロック共重合体[Mn=260,000;各重合体ブロックの割合=17.5/65/17.5(質量比);ポリブタジエンブロックの水素添加率=99モル%][付加重合系ブロック共重合体(I0−1a)]を製造した。
【0076】
《製造例2》[付加重合系ブロック共重合体(I0−2b)の製造]
撹拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサンを30kg、テトラヒドロフランを64g、ブタジエンモノマーを3300gおよび2官能開始剤としてジリチオポリブタジエン58gを加え、50℃で120分間重合した後、スチレンモノマー1440gを添加し、50℃で60分間重合した。次に、エチレンオキサイドを12g加えて付加させた後、メタノールを添加し重合を停止して、両末端に水酸基を有するポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン型トリブロック共重合体を得た。該トリブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を調製し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のZiegler系水素添加触媒を用いて水素雰囲気下において80℃で5時間水素添加反応を行い、両末端に水酸基を有するポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレン型トリブロック共重合体[Mn=200,000;水酸基含有量=1.7個/1分子;各重合体ブロックの割合=15/70/15(質量比);ポリブタジエンブロックの水素添加率=99モル%][付加重合系ブロック共重合体(I0−2b)]を製造した。
【0077】
《製造例3》[付加重合系ブロック共重合体(3)の製造]
撹拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサンを30kg、スチレンモノマーを700gおよびsec−ブチルリチウムの1.3molシクロヘキサン溶液を40ml加え、50℃で60分間重合した後、テトラヒドロフランを63g、ブタジエンモノマーを2600g加え120分間重合した。更にスチレンモノマーを700g加え60分間重合した後、メタノールを添加し重合を停止し、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン型トリブロック共重合体を得た。該トリブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を調製し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のZiegler系水素添加触媒を用いて水素雰囲気下において80℃で5時間水素添加反応を行い、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレン型トリブロック共重合体[Mn=130,000;各重合体ブロックの割合=17.5/65/17.5(質量比);ポリブタジエンブロックの水素添加率=99モル%][付加重合系ブロック共重合体(3)]を製造した。
【0078】
《製造例4》[ポリ(p−メチルスチレン)の製造]
撹拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサンを2700g、p−メチルスチレンモノマーを300gおよびsec−ブチルリチウムの1.3molシクロヘキサン溶液を2.9ml加え、50℃で120分間重合した後、メタノールを添加し重合を停止し、ポリ(p−メチルスチレン)(Mn=60,000)を得た。
【0079】
《製造例5》[ポリスチレンの製造]
撹拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサンを2700g、スチレンモノマーを300gおよびsec−ブチルリチウムの1.3molシクロヘキサン溶液を2.9ml加え、50℃で120分間重合した後、メタノールを添加し重合を停止し、ポリスチレン(Mn=60,000)を得た。
【0080】
《製造例6》[水素添加ポリブタジエンの製造]
撹拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサンを2700g、テトラヒドロフランを6.05g、ブタジエンモノマーを300gおよびsec−ブチルリチウムの1.3molシクロヘキサン溶液を4.35ml加え、50℃で120分間重合した後、メタノールを添加し重合を停止し、ポリブタジエンを得た。このポリブタジエンのシクロヘキサン溶液を調製し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のZiegler系水素添加触媒を用いて水素雰囲気下において80℃で5時間水素添加反応を行い、水素添加ポリブタジエン[Mn=10,000]を得た。
【0081】
《実施例1〜4》
(1) 製造例1または2で製造した付加重合系ブロック共重合体(I0−1a)または(I0−2b)、ポリオレフィン(II)、ゴム用軟化剤(III)および架橋剤(IVa−1)、(IVa−2)または(IVb−3)、架橋促進剤(ジベンゾチアジルジスルフィド)または架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート)を、下記の表1に示す割合で予備混合した後、二軸押出機[テクノベル(株)製]に供給して温度160〜200℃、回転数200rpmで溶融混練して、熱可塑性エラストマー組成物をそれぞれ製造した。実施例1〜3で得られた架橋後の組成物を試料として用いて、そのゲル分率を上記した方法で測定したところ、下記の表2〜4に示すとおりであった。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、プレス成形機[(株)神藤金属工業所製の単動型圧縮成形機「NSF−37」]を使用して、金型温度210℃の条件下で成形して150mm×150mm×1mmの成形品(プレスシート)を製造し、得られた成形品の各物性を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(3) PP系樹脂((株)グランドポリマー製「グランドポリプロB221」)を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製「IS−80」;80トン射出成形機)を使用して、シリンダー温度220℃および金型温度40℃の条件下に射出成形を行って2mm厚の平板に成形した。このものを平板用金型(寸法:縦×横×厚み=200mm×200mm×4mm)内に配置しておき、そこに上記(1)で得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製「IS−80」;80トン射出成形機)を使用して、シリンダー温度220℃および金型温度40℃の条件下に射出成形を行って、樹脂板の一方の表面に熱可塑性エラストマー組成物の層が積層した複層成形体(寸法:縦×横×厚み=200mm×200mm×4mm)を製造した。剥離強度測定用の試験片(寸法:縦×横×厚み=150mm×25mm×4mm)を切り出し、剥離強度を測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
《実施例5》
(4)上記(1)で得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、単軸押出機を二台使用して、一方の押出機からは実施例1に示した熱可塑性エラストマー組成物を、もう一方の押出機からはポリプロプレンを200℃の条件下で押出し成形し、外径4mm、内径2mm、外層厚み1.8mmの2層構成からなる円筒状チューブ状の押出し成形品を製造し、得られた成形品を10mm幅に切り出し、接着性を手感触で判断したところ、下記の表1の実施例5に示すとおりであった。
《実施例6》
(5) 上記(1)で得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、単軸押出機に供給して、200℃の条件下でシート状に押出し、押し出された溶融状態にあるシート状の熱可塑性エラストマー組成物と、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを積層させた状態で一対のロール間に通し、複層成形体を得た。接着性を手感触で判断したところ、下記の表1の実施例6に示すとおりであった。
【0082】
《比較例1〜2》
(1) 製造例3で製造した付加重合系ブロック共重合体(3)、ポリオレフィン(II)、ゴム用軟化剤(III)および架橋剤(IVa−2)、架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート)を、下記の表1に示す割合で予備混合した後、二軸押出機[テクノベル(株)製]に供給して温度200℃、回転数200rpmで溶融混練して、熱可塑性エラストマー組成物をそれぞれ製造した。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、プレス成形機[(株)神藤金属工業所製の単動型圧縮成形機「NSF−37」]を使用して、金型温度210℃の条件下で成形して150mm×150mm×1mmの成形品(プレスシート)を製造し、得られた成形品の各物性を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(3) PP系樹脂((株)グランドポリマー製「グランドポリプロB221」)を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製「IS−80」;80トン射出成形機)を使用して、シリンダー温度220℃および金型温度40℃の条件下に射出成形を行って平板に成形した。このものを平板用金型(寸法:縦×横×厚み=200mm×200mm×4mm)内に配置しておき、そこに上記(1)で得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製「IS−80」;80トン射出成形機)を使用して、シリンダー温度220℃および金型温度40℃の条件下に射出成形を行って、樹脂板の一方の表面に熱可塑性エラストマー組成物の層が積層した複層成形体(寸法:縦×横×厚み=200mm×200mm×4mm)を製造した。剥離強度測定用の試験片(寸法:縦×横×厚み=150mm×25mm×4mm)を切り出し、剥離強度を測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0083】
【表1】
【0084】
上記の表1の結果にみるように、実施例1〜4で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、柔軟性であり、120℃での圧縮永久歪みが小さく高温での歪み回復性に優れ、さらに耐油性に優れている。また、内層材としてポリオレフィンを用いた場合、接着剤無しでも強固に接着している。
一方、比較例1〜2で得られた架橋されていない熱可塑性エラストマー組成物は、実施例1〜3で得られた熱可塑性エラストマー組成物に比べて、いずれも120℃での圧縮永久歪みが大きく、高温での歪み回復性に劣り、耐油性にも劣っている。
【0085】
《比較参考例1〜2》
製造例5で製造したポリスチレンまたは製造例6で製造した水素添加ポリブタジエン、架橋剤(IVa−1)および架橋促進剤(ジベンゾチアジルジスルフィド)を、下記の表2に示す割合で予備混合した後、ラボプラストミル[東洋精機(株)製]に供給して温度200℃で溶融混練して試料を製造した。この試料について、上記した方法でゲル分率を測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0086】
【表2】
【0087】
付加重合系ブロック共重合体(I0−1a)を用いた実施例1では、架橋剤(IVa−1)(ビスマレイミド系化合物)を添加して溶融条件下で動的な処理を行うことによって、生成物のゲル分率が極めて高くなっている。しかし、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(メチルスチレン由来構造単位)(a)を有していない、ポリスチレンを用いた比較参考例1、水素添加ポリブタジエンを用いた比較参考例2では、架橋剤(IVa−1)(ビスマレイミド系化合物)を添加して溶融条件下で動的処理(溶融混練)を行ったときに、ゲル分率がゼロであるかまたは極めて低く、架橋されていないか殆ど架橋されていない。よって、アルキルスチレン由来構造単位(a)を有する重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とのブロック共重合体では、架橋剤としてビスマレイミド系化物を用いて溶融条件下で動的に架橋処理すると、重合体ブロック(A)で架橋されることが確認された。
【0088】
《参考例1および比較参考例3〜4》
製造例4で製造したポリ(p−メチルスチレン)、製造例5で製造したポリスチレンまたは製造例6で製造した水素添加ポリブタジエン、架橋剤(IVa−2)および架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート)を、下記の表3に示す割合で予備混合した後、比較参考例1〜2と同じ操作を行って試料を製造した。この試料について、上記した方法でゲル分率を測定したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0089】
【表3】
【0090】
ポリ(p−メチルスチレン)に架橋剤(IVa−2)(有機過酸化物)を添加して溶融混練した参考例1および水素添加ポリブタジエンに架橋剤(IVa−2)(有機過酸化物)を添加して溶融混練した比較参考例4では、いずれも高いゲル分率となっており、C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(メチルスチレン由来構造単位)(a)を有するポリ(p−メチルスチレン)および水素添加ポリブタジエンはいずれも有機過酸化物で架橋された。付加重合系ブロック共重合体(I0−1a)を用いた実施例2では、架橋剤(IVa−2)(有機過酸化物)を添加して溶融条件下で動的な処理を行うことによって、生成物のゲル分率が極めて高くなっている。一方C1〜8アルキルスチレン由来構造単位(メチルスチレン由来構造単位)(a)を有していない、ポリスチレンを用いた比較参考例3では架橋剤(IVa−2)(有機過酸化物)を添加して溶融条件下で動的処理(溶融混練)を行ったときに、ゲル分率がゼロである。よって、アルキルスチレン由来構造単位を有する重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とのブロック共重合体では、架橋剤として有機過酸化物を用いて溶融条件下で動的に架橋処理すると、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)の両方で架橋されることが確認された。
【0091】
《比較参考例5》
製造例3で製造した付加重合系ブロック共重合体(3)、ポリオレフィン(II)、ゴム用軟化剤(III)および架橋剤(IVb−3)を、下記の表4に示す割合で予備混合した後、比較参考例1〜2と同じ操作を行って試料を製造した。この試料について、上記した方法でゲル分率を測定したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0092】
【表4】
【0093】
付加重合系ブロック共重合体(I0−1b)を用いた実施例3では、官能基(b)と反応する架橋剤(IVb−3)(ポリイソシアネート)を添加して溶融条件下で動的な処理を行うことによって、生成物のゲル分率が極めて高くなっている。一方、官能基を有さない付加重合系ブロック共重合体(3)、ポリオレフィン(II)、ゴム用軟化剤(III)および架橋剤(IVb−3)を添加して溶融条件下で動的な処理を行っても、ゲルは生成していない。よって、官能基(b)を有する重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)からなる付加重合系ブロック共重合体では、重合体ブロック(A)で架橋されることが確認された。
【0094】
【発明の効果】
本発明の複層成形体は、高温での歪み回復性(耐熱性)、耐油性に優れ、かつ柔軟で良好なゴム的特性をもつ熱可塑性エラストマー層を有しており、高温に置かれるためにこれまで通常の熱可塑性エラストマー層で被覆させることのできなかった成形品の用途、例えば、自動車分野、電気製品、工業部品、建築材料等で好適に用いることができる。
Claims (6)
- 芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(A)を1個以上および共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(B)を1個以上有するブロック共重合体であって、少なくとも重合体ブロック(A)部分で架橋されているブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部;
ポリオレフィン(II)10〜300質量部;および
ゴム用軟化剤(III)300質量部以下;
の割合で含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層と、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなる層とを有する複層成形体。 - 付加重合系ブロック共重合体(I)が、重合体ブロック(A)に、炭素数1〜8のアルキル基の少なくとも1個がベンゼン環に結合したアルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)のうちの少なくとも1種を有し、前記アルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)の少なくとも1種によって少なくとも重合体ブロック(A)部分で架橋されている請求項1に記載の複層成形体。
- アルキルスチレン由来構造単位(a)がp−メチルスチレン単位であり、官能基(b)が水酸基である請求項2に記載の複層成形体。
- 熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなる層が、ポリオレフィン系樹脂からなる請求項1〜3のいずれかに記載の複層成形体。
- 芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(A)を1個以上および共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(B)を1個以上有するブロック共重合体であって、重合体ブロック(A)に、炭素数1〜8のアルキル基の少なくとも1個がベンゼン環に結合したアルキルスチレン由来構造単位(a)および官能基(b)のうちの少なくとも1種を有するブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(I0)100質量部に対して;
ポリオレフィン(II)を10〜300質量部;
ゴム用軟化剤(III)を300質量部以下;および、
架橋剤(IV)を0.01〜20質量部;
の割合で混合してなる混合物を、溶融条件下に動的に架橋処理して得た熱可塑性エラストマー組成物を、溶融条件下で、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂に積層することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複層成形体の製造方法。 - 付加重合系ブロック共重合体(I0)の重合体ブロック(A)に有するアルキルスチレン由来構造単位(a)がp−メチルスチレン単位であり、官能基(b)が水酸基である請求項5に記載の複層成形体の製造方法。
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