JP5009453B2 - 酢酸の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、メタノールおよび/またはその反応性誘導体を第VIII族貴金属触媒とヒドロカルビルハライド助触媒との存在下にカルボニル化することによる酢酸の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルコールおよび/またはその反応性誘導体の第VIII族貴金属触媒によるヒドロカルビルハライド助触媒カルボニル化での酢酸の製造方法は当業界にて周知されている。第VIII族貴金属触媒としてロジウムを用いるこの種の技術の代表例としては、たとえばUS−A−3,772,380号;GB−A−1468940号;GB−A−1538783号およびEP−A−0087070号を挙げることができる。第VIII族貴金属触媒としてイリジウムを用いるこの種の技術の代表例としては、たとえばGB−A−1234121号;US−A−3772380号;DE−A−1767150号;EP−A−0616997号;EP−A−0618184号;EP−A−0618183号およびEP−A−0657386号を挙げることができる。
【0003】
メタノールおよび/またはその反応性誘導体を第VIII族貴金属の存在下にカルボニル化することによる酢酸の連続液相製造法においては、酢酸生成物を液体反応組成物から回収すると共に乾燥させ;反応組成物の残留成分を反応器へ循環させてその濃度を維持する。
【0004】
ハワード等はキャタリシス・ツデー、第18(1993)巻、第325〜354頁においてメタノールから酢酸へのロジウムおよびイリジウム触媒カルボニル化を記載している。連続ロジウム触媒均質メタノールカルボニル化法は、3つの基本的セクション;すなわち反応、精製およびオフガス処理で構成されると言われる。反応セクションは高められた温度および圧力にて操作される撹拌槽反応器とフラッシュ容器とを備える。液体反応組成物を反応器から抜き取ってフラッシュ弁を介しフラッシュタンクまで移送し、ここで液体反応組成物における軽質成分(沃化メチル、酢酸メチルおよび水)の大部分を生成物酢酸と一緒に気化させる。次いで蒸気フラクションを精製セクションまで移送すると共に、液体フラクション(酢酸におけるロジウム触媒を含む)を反応器まで循環させる(ハワード等の図2に図示)。精製セクションは第1蒸留カラム(ライトエンドカラム)と第2蒸留カラム(乾燥カラム)と第3蒸留カラム(ヘビーエンドカラム)とを備えると言われる(ハワード等の図3に図示)。ライトエンドカラムにおいては、沃化メチルと酢酸メチルとを若干の水および酢酸と一緒に頭上から除去する。この蒸気を凝縮させると共にデンカタにて2つの層まで分離させ、両層を反応器へ戻す。湿潤酢酸を典型的には副流としてライトエンドカラムから除去すると共に乾燥カラムに供給し、ここで水を頭上から除去すると共に実質的に乾燥した酢酸流を蒸留帯域の底部から除去する。ハワード等の図3から見られるように、乾燥カラムからの頭上水流は反応セクションに循環される。ヘビーエンド副生物は、副流として採取される生成物酢酸と共にヘビーエンドカラムの底部から除去される。
【0005】
実際にはデカンタからの上側(水性)層を全体的または部分的に還流物としてライトエンドカラムに戻し、デカンタからの下側(有機)層を反応器に循環させる。操作上の理由から、2つの分離しうる層をデカンター内に維持することが極めて望ましい。デカンタ安定性が、連続カルボニル化法の好適操作にて極めて重要である。デカンタが単一層となれば、得られる組成物変化は反応器における水含有量を増大させる傾向を有し、次いでこれはイリジウム触媒カルボニル化の反応活性に対し重大な影響を及ぼす。
【0006】
EP−A−0768295号は、カルボニル化液体反応組成物に含有される水の濃度が減少するか或いは液体反応組成物に含有される酢酸メチルの濃度が増大するような環境にて、反応器における2つの分離しうる層を維持する1つの方法を記載している。すなわちEP−A−0768295号は、メタノール、酢酸メチルおよびジメチルエーテルから選択される少なくとも1種を第VIII族金属含有触媒と沃化メチルと水との存在下に一酸化炭素と連続反応させることによる酢酸の製造方法を開示しており、この方法は(a)粗製反応液をカルボニル化工程から抜き取ると共にフラッシュ帯域中へ導入し、フラッシュ帯域にて蒸発しない触媒成分を含有した触媒循環液をカルボニル化反応器まで循環させる工程、(b)フラッシュ帯域で蒸発した蒸気フラクションを蒸気もしくは液体として第1蒸留カラムに供給する工程、(c)水と酢酸メチルと沃化メチルと酢酸とを含む低沸点循環流を第1蒸留カラムの頂部から抜き取る工程、および(d)粗製酢酸を第1蒸留カラムの底部から抜き取り或いはその底部近くか副流カットとして抜き取る工程からなり、第1蒸留カラムの頂部にてデカンタ内の液体分離状態を、第1蒸留カラムに水を添加し、第1蒸留カラムの頭上部分にて冷却温度を低下させ、或いはデカンタに供給される液体に含有された酢酸メチルの濃度を第1蒸留カラムの頂部にて減少させることにより維持することを特徴とする。
【0007】
EP−A−0768295号は、2つの層がデカンタにて液体を形成せずに分離されなかった液体を反応器に循環させる場合、たとえばアセトアルデヒド、クロトンアルデヒドおよび2−エチルクロトンアルデヒドのような副生成物カルボニル化合物、並びにたとえば沃化ヘキシルのような有機沃素化合物が生成物酢酸中に許容しえないレベルまで蓄積することを教示している。
【0008】
ヨーロッパ特許出願公開EP−0573189−A1は、ロジウムカルボニル化触媒の存在下におけるメタノールのカルボニル化による酢酸の製造方法を記載している。液体反応組成物における酢酸メチル濃度は少なくとも2重量%、好ましくは2〜15重量%の範囲、より好ましくは3〜10重量%の範囲であると言われる。例4および5においては示されたライトエンド循環物を形成する組合せ頭上流は0.96〜1.33重量%の酢酸を有すると計算されたが、反応器における酢酸メチル濃度は僅か3.1〜7.3重量%であった。
【0009】
今回、カルボニル化反応器内の液体反応組成物における高い酢酸メチル濃度(典型的には8%w/wもしくはそれ以上)にて、特に低レベルの水および沃化メチルにて(これら条件は典型的にはカルボニル化触媒としてのイリジウムの使用に関連する)、デカンタ内における2つの分離しうる層を達成するのが益々困難となり、次いでこれはEP−A−0768295号に記載された種類の生成物品質問題およびプラント能力問題を主として制御弁およびポンプの両者に対する水圧制限の結果としてもたらしうることを突き止めた。
【0010】
連続操作デカンタにて2つの液層を維持する問題の解決策は、ライトエンドカラムからデカンタまで供給される頭上フラクションにおける酢酸の濃度を制御することである点を突き止めた。EP−A−0768295号は、頭上フラクションにおける酢酸濃度および2つの層の維持に対するその影響については何も記載していない。オフライン実験において、典型的デカンタ供給物は存在する酢酸の約14%w/wもしくはそれ以上を含む単一相を形成することを突き止めた。しかしながら連続操作デカンタにおいては、それよりずっと低レベルの酢酸(8重量%もしくはそれ以下)を達成して安定した操作を維持せねばならない。これは、水を反応器まで直接循環させることによりライトエンドカラムの頭上から水を消耗した有機層の増加水含有量に基づいている。これは、水濃度を低下させると共に相分離を一層困難にする。次いでフィードバックメカニズムが主体となり、デカンタは単一相となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、メタノールおよび/またはその反応性誘導体のカルボニル化による酢酸の製造方法において、デカンタにおける上側(水性)層と下側(有機)層との分離性を向上させることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
従って本発明は:
(I) メタノールおよび/またはその反応性誘導体をカルボニル化反応器に供給し、ここでメタノールおよび/またはその反応性誘導体を液体反応組成物における一酸化炭素と反応させ、液体反応組成物は第VIII族貴金属カルボニル化触媒と少なくとも2%w/wの濃度の沃化メチル助触媒と必要に応じ少なくとも1種の促進剤と少なくとも有限濃度の水と少なくとも8%w/wの濃度の酢酸メチルと酢酸生成物とを含み;
(II) 液体反応組成物をカルボニル化反応器から抜き取ると共に、抜き取られた液体反応組成物を少なくとも1つのフラッシュ分離器帯域に熱を加えながらまたは加えずに導入して、水と酢酸生成物と酢酸メチルと沃化メチルとからなる蒸気フラクションおよび第VIII族貴金属カルボニル化触媒と必要に応じ少なくとも1種の促進剤とからなる液体フラクションを生成させ;
(III) 工程(II)からの液体フラクションをカルボニル化反応器まで循環させ;
(IV) 工程(II)からの蒸気フラクションをライトエンド蒸留カラムに導入し;
(V) 酢酸生成物を含む工程流をライトエンド蒸留カラムから除去し;
(VI) ライトエンド蒸留カラムの頂部から、酢酸メチルと沃化メチルと水と酢酸とを含む蒸気フラクションを除去し;
(VII) 工程(VI)からの頭上蒸気フラクションを凝縮させ;
(VIII) 工程(VII)からの凝縮頭上蒸気フラクションをデカンタまで移送し、ここでフラクションを上側(水性)層と下側(有機)層とに分離し;
(IX) 工程(VIII)にて分離された上側(水性)層を全体的または部分的に還流物としてライトエンド蒸留カラムに循環させると共に、工程(VIII)にて分離された下側(有機)層を全体的または部分的に反応器に循環させる工程からなるメタノールおよび/またはその反応性誘導体のカルボニル化による酢酸の連続製造方法において、工程(VIII)におけるデカンタ内の上側(水性)層と下側(有機)層との分離性を、デカンタまで移送された凝縮頭上蒸気フラクションにおける酢酸の濃度を8重量%もしくはそれ以下に維持して達成することを特徴とする酢酸の連続製造方法を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
デカンタまで移送される凝縮蒸気フラクションにおける酢酸の濃度は好ましくは8重量%未満、好ましくは6重量%未満、より好ましくは5重量%未満に維持される。前記範囲内の凝縮蒸気フラクションにおける酢酸の濃度維持は、主としてライトエンドカラムの適する操作により達成しうる。すなわちカラムにおける還流比および/またはカラムにおける理論段階の個数は、凝縮蒸気フラクションにおける酢酸濃度が8重量%もしくはそれ以下となるよう選択される。典型的にはライトエンドカラムは比較的少数の段階(全部で約10)を有する。実際に供給物の上方に約10理論段階を持って操作する工業ユニットにて2つの液相を維持するには水相を全てカラムに還流させねばならないことが判明した。ライトエンドカラムは10より大、より好ましくは15より大もしくはそれ以上の理論段階を供給物より上方に有することが好ましい。理論段階数の増加はより低い還流比を用いることを可能にし、水除去効率の点および/従って精製コストの低減に関し利点を与える。デカンタにおける酢酸濃度を上記範囲内に維持しうる他の改変は、実質量の酢酸含有量を有する循環流(さもなければ凝縮器に事前に供給されて直接にデカンタ中へ供給される)をライトエンド蒸留カラムに好適には工程(II)からの蒸気フラクションの供給点近くの箇所に転置して、循環流における酢酸をこの流れから供給物より上方の段階により分離しうるようにすることである。この種の循環流は、たとえば工程のオフガス処理セクションからの蒸気戻し流とすることができる。
【0014】
デカンタ自身に関し、メタノールカルボニル化プラントの慣用設計はブーツの設置を含み、これは水平円筒セクションから懸垂する短い垂直円筒セクションの形態をとる。これは、重質相の低容積流が存在するシステム或いは重質相密度が極めて高く重質相物質の含有量を最小化させることが望ましいシステムにつき標準的な設計上の特徴である。本発明の方法にて存在する比較的高い酢酸メチル濃度の条件下では、デカンタの構造にて一般に存在するブーツを排除しうることが判明した。デカンタからのブーツの排除は、デカンタ容器の一層簡単な加工に基づき資本コスト節減の利点を与える。さらに、これは高容積流によって発生するブーツ内の乱流によって生ずる貧弱な分離の可能性をも防止する。
【0015】
デカンタは市販入手しうる(たとえばナトコ社、ツルサ、オクラホマ州)プレートパック分離器を内蔵して、相分離の速度を増大させることがさらに好ましい。プレートパック分離器は一般に、傾斜した波形プレート積層体を備えて凝集を誘発させると共にデンカタ内で要する滞留時間を短縮する。プレートパック分離器の装着は、より小さいデカンタの使用を容易化させるという利点を有する。さらに、これはデカンタが単一相となった場合、上記で述べた反応器における水含有量増加の不利な影響が最小化されるという利点をもたらす。
【0016】
本発明の方法の工程(I)においては、メタノールおよび/またはその反応性誘導体をカルボニル化反応器へ供給する。メタノールの適する反応性誘導体は酢酸メチルおよびジメチルエーテルを包含する。
【0017】
メタノールおよび/またはその反応性誘導体をカルボニル化反応器内で液体反応組成物における一酸化炭素と反応させる。一酸化炭素は実質的に純粋とすることができ或いはたとえば二酸化炭素、メタン、窒素、貴ガス、水およびC〜Cパラフィン系炭化水素のような不活性不純物を含有することもできる。一酸化炭素供給物中の水素および水性ガスシフト反応によりその場で発生した水素の存在は好ましくは、その存在が水素化生成物の生成をもたらすので低く保たれる。すなわち一酸化炭素反応体における水素の量は好ましくは1モル%未満、より好ましくは0.5モル%未満、さらに好ましくは0.3モル%未満であり、および/またはカルボニル化反応器における水素の分圧は好ましくは1バール未満の分圧、より好ましくは0.5バール未満、さらに好ましくは0.3バール未満の分圧である。反応器における一酸化炭素の分圧は好適には0〜40バール、典型的には4〜30バールの範囲である。
【0018】
反応器における液体反応組成物は第VIII族貴金属カルボニル化触媒と沃化メチル助触媒と必要に応じ少なくとも1種の促進剤と少なくとも有限濃度の水と少なくとも8%w/wの濃度の酢酸メチルと酢酸生成物とを含む。
【0019】
第VIII族貴金属のうちロジウムおよびイリジウムが好適である。貴金属触媒は、液体反応組成物に対し可溶性である任意の金属含有化合物で構成することができる。金属触媒は、液体反応組成物に溶解するか或いは可溶性型まで変換しうる任意適する形態にて液体反応組成物に添加することができる。適する化合物はイリジウム−およびロジウム−触媒カルボニル化に関する上記特許公報に記載されている。典型的には金属のカルボニル錯体、ハライドおよび酢酸塩を用いることができる。ロジウムは50〜5000ppm、好ましくは100〜1500ppmの量にて存在させることができる。イリジウムは100〜6000ppmの範囲、好ましくは400〜3000ppmの範囲の量で存在させることができる。
【0020】
助触媒としては沃化メチルが使用される。沃化メチルは好適には液体反応組成物中に2〜20重量%、好ましくは4〜16重量%の範囲の量にて存在させることができる。
【0021】
液体反応組成物中に存在させる場合、促進剤の選択は或る程度まで第VIII族貴金属触媒の性質に依存する。イリジウムをカルボニル化触媒として用いる場合、適宜の促進剤は好適にはルテニウム、オスミニウム、カドミウム、レニウム、水銀、ガリウム、インジウム、タングステンおよびその混合物よりなる群から選択される金属、好ましくはルテニウムもしくはオスミウムである。好適には促進剤とイリジウムとのモル比は[0.5〜15]:1の範囲である。カルボニル化触媒としてロジウムを用いる場合、適宜の促進剤は好適にはアルカリ金属およびアルカリ土類金属の沃化物(たとえば沃化リチウム)、沃化第四アンモニウムおよび沃化第四ホスホニウムよりなる群から選択される。好適には、適宜の促進剤はその溶解度限界まで存在させることができる。
【0022】
カルボニル化触媒として使用する第VIII族貴金属とは無関係に、カルボニル化反応器における液体反応組成物は少なくとも有限濃度の水を含有する。しかしながら、水の量は触媒として用いる第VIII族貴金属に応じて変化しうる。一般にロジウムにつき水は0.1〜30重量%、好ましくは1〜15重量%の範囲の量にて存在させることができる。イリジウムにつき水は0.1〜10重量%、好ましくは1〜6.5重量%の量にて存在させることができる。
【0023】
カルボニル化反応器に供給されてもされなくても酢酸メチルは、メタノールおよび/またはその反応性誘導体とカルボニル化生成物および/またはカルボニル化溶剤として存在する酢酸との反応により液体反応組成物中に必ず存在する。本発明に関する限り、酢酸メチルは液体反応組成物中に8重量%もしくはそれ以上、典型的には8〜50重量%、好ましくは8〜35重量%の量にて存在させる。一般に、これら酢酸メチル濃度範囲は第VIII族貴金属触媒としてのイリジウムに関連するものであり、触媒としてロジウムを用いる酢酸メチル濃度は一般に限定はしないが最高5重量%、典型的には約3重量%以下である。
【0024】
液体反応組成物の残部は酢酸からなっている。
【0025】
カルボニル化反応温度は好適には100〜300℃の範囲、好ましくは150〜220℃の範囲である。カルボニル化反応器における全圧力は好適には10〜200barg、好ましくは15〜100barg、より好ましくは15〜50bargの範囲である。
【0026】
本発明による方法の工程(II)においては、液体反応組成物をカルボニル化反応器から抜き取ると共に少なくとも1つのフラシュ分離器帯域に熱を添加しながらまたは添加なしに導入して、水と酢酸生成物と酢酸メチルと沃化メチルとを含む蒸気フラクションおよび第VIII族貴金属カルボニル化触媒と必要に応じ少なくとも1種の促進剤とを含む液体フラクションを生成させる。単一段階フラッシュを用いる場合、圧力は0〜3bargの範囲とすることができ、温度は好適には100〜150℃の範囲である。2段階フラッシュを用いる場合、第1フラッシュにおける圧力は1〜10bargの範囲とすることができ、第2フラッシュにおける圧力は好適には0〜5bargの範囲とすることができる。
【0027】
本発明による方法の工程(III)においては、工程(II)におけるフラッシュ分離器帯域から回収された液体フラクションをカルボニル化反応器へ循環させる。
【0028】
この方法の工程(IV)においては、工程(II)におけるフラッシュ分離帯域から回収された蒸気フラクションをライトエンド蒸留カラムに導入する。好適にはライトエンド蒸留カラムは40個までの理論段階を有する。このカラムは任意適する圧力、たとえば約1.2bargのヘッド圧および約1.5bargの底部圧にて操作することができる。ライトエンド蒸留カラムの操作温度は供給流、ヘッド流および底部流の組成、並びに操作圧力を含め多くの因子に依存する。典型的な底部温度は125〜140℃の範囲とすることができ、典型的なヘッド温度は105〜115℃の範囲とすることができる。
【0029】
この方法の工程(V)においては、酢酸生成物を含む流れをライトエンド蒸留カラムから除去する。工程流は任意適する箇所にて、たとえば供給点の上もしくは下にて除去することができ或いはカラムの底部から液体もしくは蒸気として除去することができる。ライトエンド蒸留カラムから除去された酢酸生成物を含む処理流を次いでたとえば乾燥蒸留カラムにて乾燥させ、分離された水を好適にはカルボニル化反応器に循環するか或いは工程から除去する。乾燥された酢酸は次いでヘビーエンド蒸留カラムに移送することができ、ここでプロピオン酸副生物を乾燥酢酸から分離する。
【0030】
この方法の工程(VI)においては、酢酸メチルと沃化メチルと水と酢酸とを含む蒸気フラクションをライトエンド蒸留カラムの頂部から除去する。
【0031】
この方法の工程(VII)においては、工程(VI)からの頭上蒸気フラクションを凝縮させる。
【0032】
この方法の工程(VIII)においては、工程(VII)からの凝縮した頭上フラクションをデカンタに移送し、ここでフラクションを上側(水性)層と下側(有機)層とに分離する。
【0033】
最後に、この方法の工程(IX)においては、工程(VIII)にて分離された上側(水性)層を全体的または部分的に還流物としてライトエンド蒸留カラムに循環させると共に、工程(VIII)にて分離された下側(有機)層を全体的または部分的に(好ましくは全体的に)反応器まで循環させる。上側(水性)層は好適には部分的にライトエンド蒸留カラムに還流物として、好適にはライトエンド蒸留カラムの頂部から蒸気フラクションを除去する速度の約0.1〜約0.7倍の速度にて戻される。
【0034】
以下、実施例および図面を参照して本発明をさらに説明する。
【0035】
【実施例】
メタノールをカルボニル化反応器に連続供給し、ここでイリジウムカルボニル化触媒と5重量%の水と7重量%の沃化メチルと15重量%の酢酸メチルとを含み、組成物の残部として酢酸を含む液体反応組成物を維持した。さらに反応器には一酸化炭素をも供給した。カルボニル化速度は約17.5モル/L/hrであった。
【0036】
液体反応組成物をカルボニル化反応器から抜き取ってフラッシュ分離帯域に導入し、ここで水と酢酸生成物と酢酸メチルと沃化メチルとを含む蒸気フラクションおよびイリジウムカルボニル化触媒を含む液体フラクションを生成させた。
【0037】
フラッシュ分離帯域から抜き取られた液体フラクションをカルボニル化反応器へ循環させた。
【0038】
フラッシュ分離帯域からの蒸気フラクションを組合せライトエンド/乾燥カラムに導入した。組合せカラムの頂部から、酢酸メチルと沃化メチルと水と酢酸とを含む蒸気フラクションを除去した。この蒸気フラクションを凝縮させると共にデカンタに移送した。組合せカラムは、酢酸がデカンタに移送された凝縮頭上蒸気フラクションに8重量%もしくはそれ以下の濃度にて存在するよう操作した。
【0039】
デカンタにて、凝縮頭上蒸気フラクションを上側(水性)層と下側(有機)層とに分離した。上側(水性)層をデカンタから除去し、還流物として組合せカラムに循環させた。下側(有機)層をデカンタから除去して反応器へ循環させた。
【0040】
酢酸生成物を含む工程流をも組合せライトエンド/乾燥カラムから除去した。
【0041】
上記のような操作を約18時間にわたり維持した。この時間に際しデカンタの安定な操作が図1に示したように達成され、図1はデカンタにおける上側(水性)層の組成と経過時間との関係を示すプロット図である。この時間に際しカルボニル化速度は図2に示したように約17.5モル/L/hの平均値にて合理的に一定に留まり、図2はカルボニル化速度と経過時間との関係を示すプロット図である。
【0042】
比較例
約18時間の後、ライトエンド/乾燥カラムの操作を、デカンタに移送される凝縮頭上蒸気フラクションにおける酢酸の濃度が8%w/wより大となるように変化させた。これはデカンタにおける単一相操作への変化をもたらし、図1に示したデカンタにおける液体の成分濃度に対する作用を伴った。水濃度は酢酸濃度が相応に増加するにつれ急激に低下し、沃化メチル濃度および酢酸メチル濃度も同様であることが見られる。
【0043】
カルボニル化反応器における液体反応組成物にて水濃度は約11重量%まで増大し、沃化メチル濃度はデカンタおよびカラムの操作条件における変化の結果として約3重量%まで低下した。これら変化はカルボニル化速度における約8モル/L/hの平均値までの顕著な低下を伴い、図2に示したように15重量%の酢酸メチル濃度を維持した。
【0044】
これは本発明による実施例でなく、単に比較目的で 含ませたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続カルボニル化法に際しライトエンド頭上デカンタの上側(水性)相における成分濃度の特性曲線図である。
【図2】対応するカルボニル化速度の特性曲線図である。

Claims (11)

  1. メタノールおよび/またはその反応性誘導体をカルボニル化して酢酸を製造するに際し、
    (I) メタノールおよび/またはその反応性誘導体をカルボニル化反応器に供給し、ここでメタノールおよび/またはその反応性誘導体を液体反応組成物における一酸化炭素と反応させ、液体反応組成物は第VIII族貴金属カルボニル化触媒と少なくとも2%w/wの濃度の沃化メチル助触媒と必要に応じ少なくとも1種の促進剤と少なくとも有限濃度の水と少なくとも8%w/wの濃度の酢酸メチルと酢酸生成物とを含み;
    (II) 液体反応組成物をカルボニル化反応器から抜き取ると共に、抜き取られた液体反応組成物を少なくとも1つのフラッシュ分離器帯域に熱を加えながらまたは加えずに導入して、水と酢酸生成物と酢酸メチルと沃化メチルとからなる蒸気フラクションおよび第VIII族貴金属カルボニル化触媒と必要に応じ少なくとも1種の促進剤とからなる液体フラクションを生成させ;
    (III) 工程(II)からの液体フラクションをカルボニル化反応器まで循環させ;
    (IV) 工程(II)からの蒸気フラクションをライトエンド蒸留カラムに導入し;
    (V) 酢酸生成物を含む工程流をライトエンド蒸留カラムから除去し;
    (VI) ライトエンド蒸留カラムの頂部から酢酸メチルと沃化メチルと水と酢酸とからなる蒸気フラクションを除去し;
    (VII) 工程(VI)からの頭上蒸気フラクションを凝縮させ;
    (VIII) 工程(VII)からの凝縮頭上蒸気フラクションをデカンタまで移行し、ここでフラクションを上側(水性)層と下側(有機)層とに分離し;
    (IX) 工程(VIII)にて分離された上側(水性)層を全体的または部分的に還流物としてライトエンド蒸留カラムに循環させると共に、工程(VIII)にて分離された下側(有機)層を全体的または部分的に反応器に循環させる酢酸の連続製造方法において、工程(VIII)におけるデカンタ内の上側(水性)層と下側(有機)層との分離性を、デカンタまで移送された凝縮頭上蒸気フラクションにおける酢酸の濃度を8重量%もしくはそれ以下に維持して達成することを特徴とする酢酸の連続製造方法。
  2. 第VIII族貴金属カルボニル化触媒がイリジウムカルボニル化触媒からなる請求項1に記載の方法。
  3. 促進剤をルテニウム、オスミウム、カドミウム、レニウム、水銀、ガリウム、インジウム、タングステンおよびその混合物よりなる群から選択する請求項2に記載の方法。
  4. 液体反応組成物における酢酸メチル濃度が8〜50重量%の範囲である請求項2または3に記載の方法。
  5. 液体反応組成物における酢酸メチル濃度が8〜35重量%の範囲である請求項4に記載の方法
  6. 液体反応組成物における沃化メチル濃度が2〜20重量%の範囲である請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  7. 液体反応組成物における沃化メチル濃度が4〜16重量%の範囲である請求項6に記載の方法。
  8. ライトエンド蒸留カラムが10より大の供給物より上方の理論段階を有する請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  9. ライトエンド蒸留カラムが15もしくはそれ以上の供給物より上方の理論段階を有する請求項8に記載の方法。
  10. デカンタがブーツレスデカンタである請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  11. デカンタがプレートパック分離器を内蔵する請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
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