JP5008311B2 - 六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの製造方法 - Google Patents

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本発明は、六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。さらに詳しくは、エレクトロニクス関連材料、医農薬関連中間体や塗料、接着剤、粘着材、インキ用レジン等の機能性高分子等の構成要素として好適に用いられる六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。
エレクトロニクス関連材料、医農薬関連中間体や、塗料、接着剤、粘着材、インキ用レジン等の機能性高分子等の構成要素として用いられる六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステル等のラクトン系モノマーは安定性に欠けており、その代表的な化合物であるメバロニックラクトンの(メタ)アクリル酸エステルは、酸、アルカリ及び熱に対して不安定である。そのため、メバロニックラクトンの(メタ)アクリル酸エステルは、メバロニックラクトンと(メタ)アクリル酸ハライドとを-15〜-50℃という極低温で反応させて製造されており(特許文献1〜3参照)、晶析による精製も、-25℃以下の極低温下で実施されている(特許文献2、3参照)。
しかしながら、前記製造方法では、含ハロゲン系溶媒である塩化メチレンが用いられており、また、-15〜-50℃という極低温での反応や-25℃以下の晶析には、特殊な冷却装置が必要とされる。従って、-10℃程度の緩和な温度条件下でも収率よく六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステル製造することのでき、環境面やコスト面にも配慮した六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの製造方法の開発が望まれている。
特開2004−2243号公報 特開2004−123678号公報 特開2002−293777号公報
本発明の課題は、六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルを、特殊な装置や溶媒を使用することなく、収率よく製造し得る方法を提供することにある。
本発明は、式(I):
Figure 0005008311
(式中、R1〜R7は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表される六員環ラクトンと、式(II):
Figure 0005008311
(式中、R8は水素原子又はメチル基、Xはハロゲン原子を示す)
で表される(メタ)アクリル酸ハライドとを、塩基の存在下、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン及びジエチルケトンからなる群より選ばれた少なくとも1種の微極性ケトン溶媒中、0〜−10℃で反応させる工程〔1〕、並びに工程〔1〕で生成した六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルを、水層のpHが2.5〜9.5の洗浄液で洗浄する工程〔2〕を有する、式(III):
Figure 0005008311
(式中、R1〜R8は前記と同じ)
で表される六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。
本発明により、六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルを、特殊な装置や溶媒を使用することなく、収率よく製造することができる。
本発明においては、原料として、式(I):
Figure 0005008311
で表される六員環ラクトンと、式(II):
Figure 0005008311
で表される(メタ)アクリル酸ハライドを用い、少なくとも、後述の工程〔1〕及び〔2〕を経て、六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法である。
式(I)において、R1〜R7は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。式(I)で表される六員環ラクトンとしては、エレクトロニクス関連材料、医農薬関連中間体や、塗料、接着剤、粘着材、インキ用レジン等の機能性高分子等の構成要素として好適に用いられる六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルを製造する観点から、R1がメチル基又はエチル基、R2〜R7が水素原子である六員環ラクトンが好ましく、R1がメチル基、R2〜R7が水素原子であるメバロニックラクトンがより好ましい。
式(II)において、R8は水素原子又はメチル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、これらの中では、コスト、反応性、工業的製造の際の取り扱いやすさ等の観点から、塩素原子が好ましい。従って、式(II)で表される(メタ)アクリル酸ハライドとしては、(メタ)アクリル酸クロライドが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
工程〔1〕は、前記式(I)で表される六員環ラクトンと式(II)で表される(メタ)アクリル酸ハライドとを、塩基の存在下、微極性ケトン溶媒中で、0〜−10℃、好ましくは-5〜-10℃で反応させる工程であり、反応温度に大きな特徴を有する。従来技術では、収率の低下を避けるために-15℃以下の極低温で反応を行っており、そのために特殊な冷却装置が必要とされる。しかしながら、本発明では、微極性ケトン溶媒を使用することにより、一般的な冷却装置でも対応することのできる温度条件下でも、収率よく、六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルを製造することができる。
(メタ)アクリル酸ハライドの使用量は、式(I)で表される六員環ラクトン1モルに対して、1.0〜1.5モルが好ましく、1.1〜1.2モルがより好ましい。
塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられ、これらの中では、反応性の高いトリエチルアミンが好ましい。塩基の使用量は、式(I)で表される六員環ラクトン1モルに対して、1.0〜2.1モルが好ましく、1.2〜1.7モルがより好ましい。
工程〔1〕で用いられる微極性ケトン溶媒とは、20℃での比誘電率εが10〜18であるケトンを言う。本発明においては、微極性ケトン溶媒を使用することにより、従来技術に比べて緩和な前記温度条件下でも、理由の詳細は不明なるも、生成した六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの分解を抑制することができる。微極性ケトン溶媒としては、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン及びジエチルケトンからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
微極性ケトン溶媒の使用量は、式(I)で表される六員環ラクトンに対して、2〜8重量倍が好ましく、3〜5重量倍がより好ましい。
反応の際の雰囲気は特に限定されず、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下であっても、大気中であってもよい。
塩基の存在下での六員環ラクトンと(メタ)アクリル酸ハライドとの反応は、溶媒中の六員環ラクトンと(メタ)アクリル酸ハライドに塩基を添加してもよく、溶媒中の六員環ラクトンと塩基中に、(メタ)アクリル酸ハライドを添加してもよい。
反応の際は、さらに、4-アセトアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル等の重合防止剤等を、適量溶媒中に添加してもよい。
六員環ラクトンと(メタ)アクリル酸ハライドとの反応による六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの生成は、ガスクロマトグラフィ(GC)、液体クロマトグラフィ(LC)等により確認することができる。本発明では、0〜-10℃という緩和な温度条件下で反応させることができるため、従来技術に比べて比較的短時間で反応を進行させることができる。
工程〔2〕は、工程〔1〕で生成した六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルを、水層のpHが2.5〜9.5、好ましくは4.0〜8.0の洗浄液で洗浄する工程であり、pH条件に大きな特徴を有する。かかるpH条件下で洗浄を行うことにより、六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの分解を抑制することができる。
反応終了後、反応液に残存した(メタ)アクリル酸ハライドを加水分解により除去するために、水を添加して生成した六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルを洗浄すると、反応液中の塩基の影響によりpHが高くなるため、六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの分解反応が促進され、収率が低下する。また、(メタ)アクリル酸ハライドは加水分解されると、一部(メタ)アクリル酸が生成し、(メタ)アクリル酸無水物が生成するが、(メタ)アクリル酸が残存すると濃縮中に六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの分解が促進され、また、(メタ)アクリル酸無水物が残存すると、濃縮や蒸留中に六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリル酸無水物の重合が起こりやすくなり、結果的に収率及び純度低下を招く原因となる。一般的な酸無水物の除去方法としては、例えば、酸無水物を含む反応液に、比較的塩基性の強いトリエチルアミン等のアミンや水酸化ナトリウム水溶液のような強塩基水溶液等のアルカリを添加し、室温下数時間攪拌することによって酸無水物を分解させる方法が知られているが、本発明では、水層のpHが9.5を超えてしまい、六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの分解が促進されるため実施することができない。
しかしながら、本発明では、反応終了後の洗浄工程を一貫して前記pH条件下で行うことにより、六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの分解を抑制しながら洗浄することができると同時に、(メタ)アクリル酸ハライドを加水分解により除去することができ、さらに(メタ)アクリル酸ハライドの加水分解により生成する(メタ)アクリル酸無水物をも分解し除去することができる。
反応生成物を洗浄する際のpHは、洗浄液の選択により容易に調整することができる。本発明においては、洗浄液の溶質として、有機酸と有機塩基及び/又は無機塩基とを組み合わせて使用することが好ましい。有機酸としては、蟻酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フェノール等が挙げられ、これらの中では、pH調整の容易さ、取り扱いやすさから弱酸性の有機酸である蟻酸及び酢酸が好ましい。有機塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン等が挙げられ、これらの中では、pH調整の容易な弱塩基アミンであるピリジンが好ましい。無機塩基としては、炭酸水素ナトリウム(重曹)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等が挙げられ、これらの中では、pH調整の容易な弱塩基性無機塩基である重曹が好ましい。本発明においては、蟻酸とピリジンの組み合わせが好ましい。有機酸と有機塩基及び/又は無機塩基は、水溶液の状態で使用してもよく、pHを考慮してその使用量を調整することが好ましい。
有機酸と有機塩基及び/又は無機塩基とは、両者を混合して使用しても、それぞれ単独で使用してもよいが、本発明においては、有機酸水溶液の添加により予め(メタ)アクリル酸ハライドを加水分解し、水層を分離して塩基を除去した後、有機塩基及び/又は無機塩基を添加して(メタ)アクリル酸ハライドの加水分解により生成した(メタ)アクリル酸無水物を分解することが好ましい。(メタ)アクリル酸無水物の分解は、例えば、ガスクロマトグラフィによる(メタ)アクリル酸無水物のピークの消滅により確認することができる。
有機酸と有機塩基及び/又は無機塩基とを用いた六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの洗浄は特に限定されないが、10℃〜30℃の範囲で行うことが好ましい。
有機酸と有機塩及び/又は無機塩とを使用し、(メタ)アクリル酸無水物が分解した後も、前記pH条件下を維持しながら、水、重曹水、食塩水等を用いてさらに洗浄し、洗浄液中の(メタ)アクリル酸や洗浄液として使用した有機酸や有機塩基を除去することが好ましい。
工程〔2〕により六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルに洗浄工程を付した後、減圧下で溶媒を除去することにより、粗六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルとすることができる。濃縮により溶媒を除去する際には、重合を防止する観点から、4-アセトアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-メトキシフェノール等の重合防止剤を適量添加してもよい。
濃縮後の粗六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルは精製することが好ましく、精製方法としては、減圧下での蒸留、カラムクロマトグラフィ、極低温下での晶析等が知られている。しかしながら、減圧下での蒸留による精製では、長時間の加熱により六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの分解や重合が生じるため純度や収率の低下を招き、またカラムクロマトグラフィによる精製では、大量の充填材と溶媒が必要とされるため、環境面やコスト面で工業的な方法とは言えない。また、極低温下での晶析による精製も、操作面やコスト面から工業的な方法とは言い難い。そこで、本発明においては、工程〔2〕で洗浄した六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルを薄膜蒸留により精製することが好ましい。薄膜蒸留は、通常のバッチ蒸留とは異なり、最小限の熱をかけるだけで留分が得られることから、熱に対して不安定な六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの精製方法として非常に有効である。即ち、本発明の製造方法においては、さらに、工程〔2〕で洗浄した六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルを薄膜蒸留により精製する工程〔3〕を設けることが好ましい。薄膜蒸留により粗六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルを精製することにより、六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルを、99%以上の高純度で得ることができる。
薄膜蒸留による精製においては、例えば、薄膜蒸留機にて、1回目の単蒸留により残渣の高沸点成分、高分子量成分等を除去し、2回目の蒸留で軽沸分除去後、主留分が得られる。
本発明の方法により得られる六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルは、式(III):
Figure 0005008311
(式中、R1〜R8は前記と同じ)
で表される。かかる六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルは、エレクトロニクス関連材料、医農薬関連中間体や、塗料、接着剤、粘着材、インキ用レジン等の機能性高分子等の構成要素として好適に用いられるが、なかでも、R1がメチル基又はエチル基、R2〜R7が水素原子である六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステル、特にR1がメチル基、R2〜R7が水素原子であるメバロニックラクトン(メタ)アクリル酸エステルは、エレクトロニクス関連材料において特に注目されており、中でも次世代LSI(大規模集積回路)ハイグレードレジスト樹脂原料として期待される、工業的にも極めて有用な化合物である。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
サンプル投入口、冷却器、温度計及び撹拌機を備えた5L容のガラス製の反応釜内に、メバロニックラクトン 300g(2.31mol)、トリエチルアミン 396g(3.92mol)、メチルイソブチルケトン 1200g及び4-アセトアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル 0.06g(0.3mmol)を仕込み、乾燥窒素を溶液中に吹き込みながら反応液を-10℃まで冷却した。乾燥窒素の吹き込みを止め、そこにメタクリル酸クロライド 289g(2.77mol)を約3時間かけてポンプを用いて滴下した。同温度で2時間撹拌後、反応液に10%蟻酸水溶液を滴下漏斗より-10℃以下の温度を保ちながら添加した(pH5)。水層を分離後、40%蟻酸水溶液で洗浄し(pH3)、水層を分離した後にピリジンを添加し(pH3〜4)、室温で4時間撹拌した。ガスクロマトグラフィでメタクリル酸無水物のピークの消失を確認後、純水で5回(pH4)、5%重曹水で5回(pH8)、20%食塩水で3回洗浄した(pH5〜6)。4-アセトアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル 0.06g(0.3mmol)及び4-メトキシフェノール 0.15g(1.2mmol)を添加し、溶媒(メチルイソブチルケトン)を0.5〜10kPaの減圧下、40〜50℃で留去することにより、粗メバロニックラクトンメタクリレート 289gを得た(収率63.1%、純度91.2%)。
このようにして得られた粗メバロニックラクトンメタクリレートを、内部コンデンサーを備えた薄膜蒸留機を用いて70〜100℃、10〜40Paで2回蒸留することにより、メバロニックラクトンメタクリレート 167g(収率36.5%、純度99%)を得た。
実施例2
サンプル投入口、冷却器、温度計及び撹拌機を備えた1L容のガラス製の反応釜内に、メバロニックラクトン 60g(0.46mol)、トリエチルアミン 79.3g(0.78mol)、メチルイソプロピルケトン 240g及び4-アセトアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル 0.012g(0.06mmol)を仕込み、反応液を-10℃まで冷却した。そこに、メタクリル酸クロライド 57.8g(0.55mol)を約1.5時間かけてポンプを用いて滴下した。同温度で4.5時間撹拌後、反応液に10%蟻酸水溶液を滴下漏斗より-10℃以下の温度を保ちながら添加した(pH5)。水層を分離後、40%蟻酸水溶液で洗浄し(pH3)、水層を分離した後にピリジンを添加し(pH3〜4)、室温で4時間撹拌した。ガスクロマトグラフィでメタクリル酸無水物のピークの消失を確認後、純水で5回(pH4)、5%重曹水で5回(pH8)、20%食塩水で3回洗浄した(pH6〜7)。4-アセトアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル 0.012g(0.06mmol)及び4-メトキシフェノール 0.03g(0.24mmol)を添加し、溶媒(メチルイソプロピルケトン)を0.5〜10kPaの減圧下、40〜50℃で留去することにより、粗メバロニックラクトンメタクリレート 53gを得た(収率57.6%、純度87.8%)。
実施例3
メチルイソプロピルケトンの代わりにジエチルケトン240gを使用し、滴下後の攪拌時間を5時間に変更した以外は、実施例2と同様にして粗メバロニックラクトンメタクリレート 48gを得た(収率52.1%、純度87.7%)。
実施例4
メチルイソプロピルケトンの代わりにメチルイソペンチルケトン240gを使用した以外は、実施例2と同様にして粗メバロニックラクトンメタクリレート 42gを得た(収率45.6%、純度86.8%)。
実施例5
メチルイソプロピルケトンの代わりにメチルイソブチルケトン240gを使用し、トリエチルアミンの代わりにメタクリル酸クロライド 57.8g(0.55mol)をガラス製の反応容器に仕込んで反応液を0℃まで冷却し、メタクリル酸クロライドの代わりにトリエチルアミン 79.3g(0.78mol)を2.5時間かけて滴下した後、同温度で5時間攪拌した以外は、実施例2と同様にして粗メバロニックラクトンメタクリレート 42gを得た(収率45.9%、純度77.5%)。
比較例1
メチルイソプロピルケトンの代わりにジイソプロピルケトン240gを使用した以外は、実施例2と同様にして粗メバロニックラクトンメタクリレートを得ようと試みたが、メタクリル酸クロライドの滴下開始から2時間経過した時点で不溶物又は塩が凝集し、攪拌不可能となったため操作を中止した。
比較例2、3、5
メチルイソブチルケトンの代わりに表1に示す溶媒を使用した以外は、実施例5と同様にして、粗メバロニックラクトンメタクリレートを得た。
比較例4、6
メチルイソプロピルケトンの代わりに表1に示す溶媒を使用した以外は、実施例2と同様にして粗メバロニックラクトンメタクリレートを得た。
比較例7
メチルイソプロピルケトンの代わりにアセトニトリルを使用した以外は、実施例2と同様に行った。しかし、溶媒(アセトニトリル)を留去する前の段階で、メバロニックラクトンメタクリレート:分解物の比が約2.3:1.0であることが確認され、メバロニックラクトンメタクリレートの多くが分解し、収率及び純度がともに低いことは明らかであったため、操作を中止した。
実施例1〜5及び比較例1〜7の溶媒、反応温度、反応時間、OH転化率及び粗メバロニックラクトンメタクリレートの収率及び純度を表1に示す。
なお、実施例及び比較例の反応時間は、反応の進行を確認しながら調整した。即ち、反応の進行をガスクロマトグラフィ(GC)により追跡しながら、反応の進行が止まったことを確認したとき、又は反応中に生成した不溶物及び塩がべたつき、攪拌不能に陥ると判断したときに反応を終了した。比較例5においては24時間反応追跡を行ったが、転化率は反応7時間後から変化はなかった。
また、OH転化率とは、(1-{反応液のメバロニックラクトンGCピーク面積/反応液の溶媒GCピーク面積}/{反応前のメバロニックラクトンGCピーク面積/反応前の溶媒GCピーク面積})×100(%)から算出される値であり、OH転化率が高いほど、原料であるメバロニックラクトンの反応率が高いことを示す。なお、比較例4ではメバロニックラクトンがトルエンに溶解しないため、正確に計算することができなかった。
Figure 0005008311
以上の結果より、実施例1〜5では、特殊な装置や溶媒を使用することなく、高収率かつ高純度でメバロニックラクトンメタクリレートが得られることが分かる。
これに対し、微極性ケトンであるジイソプロピルケトンを使用した比較例1では反応率の指標となるOH転化率は実施例1〜4と大差がないものの、反応中に凝集する塩を分散させることができず、攪拌不能に陥っており、高極性ケトンであるジメチルケトン(アセトン)やメチルエチルケトンを使用した比較例2、3では反応率とともに収率も低下している。また、ケトン以外の低極性溶媒であるトルエンやテトラヒドロフランを使用した比較例4、5では反応が非常に進行しにくく、高極性溶媒であるγ-ブチロラクトンやアセトニトリルを使用した比較例6、7では、反応率は高いものの、メバロニックラクトンメタクリレートの分解反応が促進され、収率が低下している。特に、アセトニトリルを使用した比較例7では、OH転化率が非常に高く、反応率が高いものの、収率を確認するまでもなく、多量の分解物が認められている。
参考例
メバロニックラクトンメタクリレートに、各種pHを有する添加剤を添加し、どの程度分解が促進又は抑制されるかを以下の方法により調べた。
メバロニックラクトンメタクリレート(MVLMA)とメチルイソブチルケトン(MIBK)を、1:4(MVLMA/MIBK)の重量比で混合し、溶液を調製した。得られた溶液と、表2に示す各添加剤とを、1:1の重量比で混合後、20℃で30分間攪拌し、静置分離後の水層のpHの測定とガスクロマトグラフィ(GC)分析を行い、メバロニックラクトンメタクリレートの分解率を算出した。なお、GC装置環境が変化している可能性があるため、添加剤なしの溶液のGC分析も行い、分解率を算出した。その結果、ブランクの分解率はそれぞれ3.8%となり、すべての分析値が比較可能であることが確認された。
分解率は、次式により算出した。この数値が高いほど分解が進行していることを示す。
Figure 0005008311
Figure 0005008311
以上の結果より、添加剤のpHが2.5未満及び9.5を超えるとメバロニックラクトンメタクリレートの分解が顕著であり、メバロニックラクトンメタクリレートの洗浄を2.5〜9.5のpH範囲で行うことにより、分解を抑制できることがわかる。
本発明により得られる六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルは、エレクトロニクス関連材料、医農薬関連中間体や、塗料、接着剤、粘着材、インキ用レジン等の機能性高分子等の構成要素として好適に用いられる。

Claims (3)

  1. 式(I):
    Figure 0005008311
    (式中、R1〜R7は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す)
    で表される六員環ラクトンと、式(II):
    Figure 0005008311
    (式中、R8は水素原子又はメチル基、Xはハロゲン原子を示す)
    で表される(メタ)アクリル酸ハライドとを、塩基の存在下、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン及びジエチルケトンからなる群より選ばれた少なくとも1種の微極性ケトン溶媒中、0〜−10℃で反応させる工程〔1〕、並びに工程〔1〕で生成した六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルを、水層のpHが2.5〜9.5の洗浄液で洗浄する工程〔2〕を有する、式(III):
    Figure 0005008311
    (式中、R1〜R8は前記と同じ)
    で表される六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
  2. 工程〔2〕において、洗浄液の溶質として、有機酸と有機塩基及び/又は無機塩基とを組み合わせて使用する請求項1記載の製造方法。
  3. さらに、工程〔2〕で洗浄した六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルを薄膜蒸留により精製する工程〔3〕を有する請求項1又は2記載の製造方法。
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