JP2021042130A - N−ビニルカルボン酸アミドの製造方法 - Google Patents

N−ビニルカルボン酸アミドの製造方法 Download PDF

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大貴 下田
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悠治 橋本
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Abstract

【課題】N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとの混合物から、抽出法を用いて、N−ビニルカルボン酸アミドを分離でき、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの含有量が少ないN−ビニルカルボン酸アミドが得られるN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法を提供する。【解決手段】N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとを含む水溶液のpHを2.0〜6.0とし、かつ温度を0〜40℃として、前記水溶液中におけるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドを加水分解する加水分解工程S2と、加水分解工程S2後の水溶液と、水と相溶しない有機溶媒とを混合し、有機相にN−ビニルカルボン酸アミドを抽出する抽出工程S3とを有するN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法とする。【選択図】図1

Description

本発明は、N−ビニルカルボン酸アミドの製造方法に関する。
N−ビニルカルボン酸アミド系ポリマーは、凝集剤、液体吸収剤、増粘剤などに利用されている。したがって、N−ビニルカルボン酸アミド系ポリマーの原料として用いられるN−ビニルカルボン酸アミドは、産業上有用である。
N−ビニルカルボン酸アミドを重合して重合体を製造する場合、N−ビニルカルボン酸アミド中に含まれる不純物によって、N−ビニルカルボン酸アミドの重合性が変化する。このため、N−ビニルカルボン酸アミド系ポリマーの原料としては、精製したN−ビニルカルボン酸アミドが用いられている。
N−ビニルカルボン酸アミドの精製方法としては、例えば、特許文献1に記載された方法がある。特許文献1に記載された方法では、まず、粗N−ビニルアセトアミドを芳香族炭化水素溶媒で抽出する。次に、この溶媒中にN−ビニルアセトアミドと、不純物との溶液を形成させる。そして、この溶液を塩水溶液と接触させ、塩水溶液と炭化水素溶液とを分離する。このことにより、純度の向上したN−ビニルアセトアミドを含有する炭化水素溶媒の溶液を得る。
また、例えば、特許文献2には、カルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとの分離方法が開示されている。具体的には、カルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとの混合物に、水と含塩素炭化水素を添加して2相とし、カルボン酸アミドを水相に、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドを有機相に抽出することが記載されている。
特開平02−188560号公報 特開平10−101631号公報
しかしながら、N−ビニルカルボン酸アミド中に、不純物としてN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドが含まれている場合、抽出法を用いて、N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとを分離することは困難であった。
このため、N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとの混合物から、抽出法を用いて、N−ビニルカルボン酸アミドを分離することにより、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの含有量の少ないN−ビニルカルボン酸アミドを得る方法が要求されている。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとの混合物から、抽出法を用いて、N−ビニルカルボン酸アミドを分離でき、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの含有量が少ないN−ビニルカルボン酸アミドが得られるN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決し、N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとの混合物から、抽出法を用いて不純物であるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの含有量が少ないN−ビニルカルボン酸アミドを得るために、鋭意検討した。
その結果、N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとを含む水溶液のpHを2.0〜6.0とし、かつ温度を0〜40℃とすることにより、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドが選択的に加水分解されることを見出した。そして、本発明者は、加水分解後の水溶液と、水と相溶しない有機溶媒とを混合し、有機相にN−ビニルカルボン酸アミドを抽出し、N−ビニルカルボン酸アミドを回収した。その後、回収したN−ビニルカルボン酸アミド中に含まれるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの含有量を測定した。その結果、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの含有量が、十分に少ないN−ビニルカルボン酸アミドが得られることを確認し、本発明を想到した。
すなわち、本発明は以下の事項に関する。
[1] N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとを含む水溶液のpHを2.0〜6.0とし、かつ温度を0〜40℃として、前記水溶液中におけるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドを加水分解する加水分解工程と、
前記加水分解工程後の水溶、水と相溶しない有機溶媒とを混合し、有機相に前記N−ビニルカルボン酸アミドを抽出する抽出工程とを有することを特徴とするN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
[2] 前記N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドが、N−(1−アルコキシエチル)アセトアミドである、[1]に記載のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
[3] 前記有機溶媒が、エステル系溶媒である、[1]または[2]に記載のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
[4] 前記抽出工程において、硫酸ナトリウム水溶液と塩化ナトリウム水溶液のいずれか一方または両方を含む水系溶媒を用いる、[1]〜[3]のいずれかに記載のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
[5] N−ビニルカルボン酸アミドが、N−ビニルアセトアミドである、[1]〜[4]のいずれかに記載のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
[6] 前記加水分解工程の前に、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの脱アルコール反応によりN−ビニルカルボン酸アミドを生成させる生成工程を有する、[1]〜[5]のいずれかに記載のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
[7] 前記抽出工程の後に、前記抽出工程において抽出した有機相中の前記N−ビニルカルボン酸アミドを晶析させる晶析工程を行う、[1]〜[6]のいずれかに記載のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
[8] 前記加水分解工程において、加水分解反応を終了させた前記水溶液中のN−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとの割合(N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミド/N−ビニルカルボン酸アミド(質量比))が0.15以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
本発明のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法によれば、N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとの混合物から、抽出法を用いてN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの含有量が少ないN−ビニルカルボン酸アミドが得られる。
本発明のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
以下、本発明のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
本実施形態のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法では、図1に示すように、生成工程S1と、加水分解工程S2と、抽出工程S3と、晶析工程S4とを、この順に行う。
「生成工程S1」
本実施形態のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法では、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの脱アルコール反応によりN−ビニルカルボン酸アミドを生成させる生成工程S1を行うことが好ましい。
生成工程S1におけるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの脱アルコール反応は、下記反応式(A)で示される反応であることが好ましい。
Figure 2021042130
(反応式(A)において、一般式(I)、一般式(II)、一般式(IV)で示される化合物中のRおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミド(反応式(A)で示される反応における一般式(I)で示される化合物)の脱アルコール反応は、従来公知の方法を用いて行うことができる。N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの脱アルコール反応における反応温度および/または反応時間などの反応条件は、原料として使用するN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの種類等に応じて適宜決定できる。
生成工程S1において、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの脱アルコール反応後に得られた反応生成物は、N−ビニルカルボン酸アミドを主成分とする。反応生成物中には、N−ビニルカルボン酸アミドだけでなく、原料として使用したN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミド、および副生物であるアルコールが不純物として含まれている。すなわち、生成工程S1を行うことにより、N−ビニルカルボン酸アミドと、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドと、アルコールとを含む混合物が得られる。例えば、反応式(A)で示される反応では、生成工程S1において、一般式(II)で示されるN−ビニルカルボン酸アミドと、原料として使用した一般式(I)で示されるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドと、副生物である一般式(IV)で示されるアルコールとを含む混合物からなる反応生成物が得られる。
一般式(I)および一般式(IV)で示される化合物中のRは、炭素数1〜5のアルキル基を表す。一般式(I)で示される化合物中のRが、炭素数の少ないアルキル基であるほど、生成工程S1において副生する一般式(IV)で示されるアルコールが水溶性に優れるものとなる。その結果、後述する抽出工程S3において、一般式(IV)で示されるアルコールと、一般式(II)で示されるN−ビニルカルボン酸アミドとの分離が容易となる。このため、一般式(I)および一般式(IV)で示される化合物中のRは、炭素数が少ないアルキル基であるほど好ましく、具体的には、メチル基またはエチル基もしくはプロピル基であることが好ましく、特に、メチル基であることが好ましい。
なお、一般式(I)中のRが水素原子である化合物は、非常に不安定であり、容易にカルボン酸アミド化合物(具体的には、後述する一般式(III)で示されるカルボン酸アミド化合物)とアルデヒド(具体的には、後述する一般式(V)で示されるアルデヒド)とに変換される。このため、生成工程S1において、原料として一般式(I)中のRが水素原子である化合物を用いると、脱アルコール反応により、目的物質である一般式(II)で示される化合物を生成させにくく、好ましくない。
一般式(I)および一般式(II)で示される化合物中のRは、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、以下に示す理由により、炭素数が少ないほど好ましい。すなわち、一般式(I)で示される化合物中のRが炭素数の少ない基であるほど、後述する加水分解工程S2において、一般式(I)で示されるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドを加水分解することにより生成するカルボン酸アミド化合物(後述する一般式(III)で示されるカルボン酸アミド化合物)の水溶性が向上する。その結果、後述する抽出工程S3において、一般式(III)で示されるカルボン酸アミド化合物と、一般式(II)で示されるN−ビニルカルボン酸アミドとの分離が容易となる。したがって、一般式(I)および一般式(II)で示される化合物中のRは、水素原子またはメチル基であることが好ましく、特に水素原子であることが好ましい。
一般式(I)および一般式(II)で示される化合物中のRは、炭素数1〜5のアルキル基を表し、以下に示す理由により、炭素数が少ないほど好ましい。すなわち、一般式(I)で示される化合物中のRが炭素数の少ないアルキル基であるほど、後述する加水分解工程S2において、一般式(I)で示されるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドを加水分解することにより生成するカルボン酸アミド化合物(後述する一般式(III)で示されるカルボン酸アミド化合物)の水溶性が向上する。その結果、後述する抽出工程S3において、一般式(III)で示されるカルボン酸アミド化合物と、一般式(II)で示されるN−ビニルカルボン酸アミドとの分離が容易となる。このため、一般式(I)および一般式(II)で示される化合物中のRは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基のいずれかであることが好ましく、特に、メチル基であることが好ましい。
一般式(I)で示される具体的な化合物としては、例えば、N−(1−メトキシエチル)アセトアミド、N−(1−メトキシエチル)−N−メチルアセトアミド、N−(1−エトキシエチル)アセトアミド、N−(1−エトキシエチル)−N−メチルアセトアミド、N−(1−プロポキシエチル)アセトアミド、N−(1−イソプロポキシエチル)アセトアミド、N−(1−ブトキシエチル)アセトアミド、N−(1−イソブトキシエチル)アセトアミド、N−(1−メトキシエチル)プロピオンアミド、N−(1−エトキシエチル)プロピオンアミド、N−(1−プロポキシエチル)プロピオンアミド、N−(1−イソプロポキシエチル)プロピオンアミド、N−(1−ブトキシエチル)プロピオンアミド、N−(1−イソブトキシエチル)プロピオンアミド、N−(1−メトキシエチル)イソブチルアミド、N−(1−エトキシエチル)イソブチルアミド、N−(1−プロポキシエチル)イソブチルアミド、N−(1−イソプロポキシエチル)イソブチルアミド、N−(1−ブトキシエチル)イソブチルアミド、N−(1−イソブトキシエチル)イソブチルアミドなどが挙げられる。
一般式(I)で示される具体的な化合物は、目的物質である一般式(II)で示される化合物(N−ビニルカルボン酸アミド)の種類に応じて適宜決定される。
上記の中でも一般式(I)で示される化合物としては、後述する加水分解工程S2において生成する化合物が水溶性に優れるものとなるため、N−(1−メトキシエチル)アセトアミド、N−(1−イソプロポキシエチル)アセトアミド、N−(1−メトキシエチル)イソブチルアミドから選ばれるいずれかを用いることが好ましい。これらの中でも特に、一般式(I)で示される化合物としては、生成工程S1において副生する一般式(IV)で示されるアルコールが水溶性の高いメタノールであって、加水分解工程S2を行うことによって水溶性の高い化合物であるアセトアミドが生成するN−(1−メトキシエチル)アセトアミドを用いることが好ましい。
生成工程S1において生成させる一般式(II)で示される化合物(N−ビニルカルボン酸アミド)中のRは、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、一般式(I)で示される化合物中のRに対応する。
一般式(II)で示される化合物中のRは、炭素数1〜5のアルキル基を表し、一般式(I)で示される化合物中のRに対応する。
したがって、生成工程S1において生成させる一般式(II)で示される化合物は、上述した一般式(I)で示される化合物の種類に対応する。一般式(II)で示される具体的な好ましい化合物としては、例えば、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−メチル−N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニルイソブチルアミド、N−メチル−N−ビニルイソブチルアミドなどが挙げられる。
上記の中でも一般式(II)で示される化合物は、以下に示す理由により、N−ビニルアセトアミドであることが最も好ましい。一般式(II)で示される化合物がN−ビニルアセトアミドである場合、一般式(I)で示される化合物は、Rが水素原子であってRがメチル基であるN−(1−アルコキシエチル)アセトアミドである。N−(1−アルコキシエチル)アセトアミドは、後述する加水分解工程S2において加水分解されて、水溶性の高い化合物であるアセトアミドを生成する。このため、後述する抽出工程S3を行うことによって、有機相に抽出するN−ビニルアセトアミドと、一般式(I)で示される化合物の加水分解物であるアセトアミドとが、容易に高精度で分離される。その結果、一般式(I)で示される化合物の含有量がより少ないN−ビニルアセトアミドが得られやすい。
生成工程S1において得られた反応生成物中のN−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとの割合(N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミド/N−ビニルカルボン酸アミド(質量比))は、通常、0.15超〜0.30以下の範囲となる。
「加水分解工程S2」
加水分解工程S2では、N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとを含む水溶液のpHを2.0〜6.0とし、かつ温度を0〜40℃として、水溶液(以下、「酸性水溶液」という場合がある。)中におけるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドを加水分解する。
加水分解工程S2では、下記反応式(B)で示される反応により、一般式(I)で示される化合物を加水分解することが好ましい。
Figure 2021042130
(反応式(B)において、一般式(I)、一般式(III)、一般式(IV)で示される化合物中のR・RおよびRはそれぞれ反応式(A)中のR・RおよびRと同一である。)
本実施形態では、酸性水溶液として、生成工程S1において得られた反応生成物(一般式(II)で示される化合物(N−ビニルカルボン酸アミド)と、生成工程S1において原料として使用した一般式(I)で示される化合物(N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミド)と、生成工程S1において副生した一般式(IV)で示されるアルコールとを含む混合物)のpHを後述する方法により2.0〜6.0の範囲内となるように調整し、かつ温度を0〜40℃とした水溶液を用いる。
本実施形態では、酸性水溶液のpHが2.0〜6.0であるので、一般式(I)で示される化合物が選択的に加水分解される。一般式(I)で示される化合物が加水分解して生成する化合物は、主に反応式(B)において一般式(III)で示されるカルボン酸アミド化合物である。一般式(III)で示されるカルボン酸アミド化合物中のRおよびRは、一般式(I)で示される化合物中のRおよびRに対応する。また、一般式(I)で示される化合物が加水分解されると、反応式(B)で示されるように、一般式(III)で示されるカルボン酸アミド化合物の他に、一般式(IV)で示されるアルコールおよび一般式(V)で示されるアルデヒドも生成する。一般式(IV)で示されるアルコール中のRは、一般式(I)で示される化合物中のRに対応する。
加水分解工程S2においてN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミド(一般式(I)で示される化合物)が加水分解して生成する化合物(反応式(B)で示される反応では、一般式(III)で示されるアミド化合物と一般式(IV)で示されるアルコールと一般式(V)で示されるアルデヒド)は、いずれもN−ビニルカルボン酸アミドと比較して、極性が高く、後述する抽出工程S3を行うことによって、水相に抽出できる。したがって、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドが加水分解して生成した化合物は、後述する抽出工程S3において、有機相に抽出されるN−ビニルカルボン酸アミドと分離できる。
本実施形態では、酸性水溶液のpHが2.0以上であるので、酸性水溶液中に含まれるN−ビニルカルボン酸アミドが加水分解されにくい。このため、加水分解工程S2を行うことにより、酸性水溶液中でのN−ビニルカルボン酸アミドの加水分解が抑制され、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミド(反応式(B)で示される反応では、一般式(I)で示される化合物)が選択的に加水分解される。酸性水溶液のpHは、N−ビニルカルボン酸アミドがより一層加水分解されにくくなるため、2.5以上であることが好ましく、3.0以上であることがさらに好ましい。
本実施形態では、酸性水溶液のpHが6.0以下であるので、酸性水溶液中に含まれるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドが加水分解される。酸性水溶液のpHは、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドがより一層加水分解されやすくなるため、5.5以下であることが好ましく、5.0以下であることがさらに好ましい。
加水分解工程S2において、酸性水溶液のpHが2.0〜6.0の範囲となるように調整する方法としては、例えば、以下に示す方法を用いることができる。
N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとを含む混合物として、生成工程S1において脱アルコール反応後に得られた反応生成物を用いる場合、必要に応じて上記反応生成物に水を加えて溶液中の混合物濃度を調整し、上記反応生成物に酸性溶液を添加する方法を用いることができる。
この場合、酸性溶液として、酸を水または水と相溶性のある溶媒に溶解させた溶液を用いることが好ましく、酸を水に溶解させた溶液を用いることがより好ましい。また、酸性溶液は、酸として、溶液中で解離して水素イオンを与えるブレンステッド酸を含むことが好ましい。
具体的には、酸性溶液として、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、りん酸水溶液、硫酸銅(II)水溶液などの酸性の水溶液が挙げられる。これらの酸性溶液の中でも、弱酸であるため酸性水溶液のpH調整が容易であることと、金属、硫黄、ハロゲン成分を含まないことから、酢酸を用いることが好ましい。
また、酸性水溶液のpHの範囲を調整する際には、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などの塩基性溶液を、必要に応じて用いることができる。
加水分解工程S2では、酸性水溶液中に含まれる水によって、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドが加水分解して生成した化合物が、再びN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとなる反応が抑制される。
具体的には、加水分解工程S2において、反応式(B)で示される反応によって生成した一般式(IV)で示されるアルコールおよび一般式(V)で示されるアルデヒドが、一般式(III)で示されるカルボン酸アミド化合物と反応して、再び一般式(I)で示される化合物となる反応が、酸性水溶液中に含まれる水によって抑制される。
酸性水溶液中に含まれる水は、酸性溶液中に含まれる水に由来する水のみであってもよいし、酸性水溶液を調整する際に必要に応じて添加した水が含まれていてもよい。
酸性水溶液中の水の含有量は、例えば、40〜80質量%であることが好ましい。酸性水溶液中の水の含有量が40質量%以上であると、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドが加水分解して生成した化合物が、再びN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとなる反応を抑制する効果が顕著となる。酸性水溶液中の水の含有量が80質量%以下であると、加水分解工程S2において、N−ビニルカルボン酸アミドが加水分解される反応を抑制でき、好ましい。
加水分解工程S2において、生成工程S1において得られた反応生成物を用いて酸性水溶液を調整した場合、加水分解反応を開始する前の酸性水溶液中のN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミド濃度は、通常、6.0質量%超であり、8.0質量%以上となる場合もある。加水分解反応を開始する前の酸性水溶液中のN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミド濃度が、6.0質量%超であると、酸性水溶液を加水分解反応させることによる効果が顕著となる。
また、加水分解反応を開始する前の酸性水溶液中のN−ビニルカルボン酸アミドの濃度は、10〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜40質量%である。加水分解反応を開始する前の酸性水溶液中のN−ビニルカルボン酸アミドの濃度が、60質量%以下であると、加水分解工程S2を行うことにより収率を確保することによる効果が顕著となる。
加水分解工程S2において、酸性水溶液中におけるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドを加水分解する温度は、0〜40℃であり、10〜35℃であることが好ましく、20〜30℃であることがより好ましい。酸性水溶液の温度が0℃以上であると、酸性水溶液が凍結することがなく、加水分解工程S2において効率よくN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドが加水分解される。また、酸性水溶液の温度が40℃以下であると、加水分解工程S2において、N−ビニルカルボン酸アミドが重合される反応を抑制できる。
加水分解工程S2においては、N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとを含む水溶液のpHを2.0〜6.0の範囲、温度を0〜40℃の範囲とした時点で、酸性水溶液の加水分解反応が開始する。
本実施形態において、酸性水溶液を加水分解反応させる反応時間とは、酸性水溶液のpHが2.0〜6.0の範囲かつ温度が0〜40℃の範囲となった時点から、酸性水溶液のpHおよび/温度が上記範囲外となった時点までの間の時間を意味する。
加水分解工程S2において、酸性水溶液を加水分解反応させる反応時間は、酸性水溶液のpHに応じて決定することが好ましい。
加水分解工程S2においては、酸性水溶液中に含まれるN−ビニルカルボン酸アミドが加水分解される反応を抑制するために、酸性水溶液の加水分解反応を、所定時間経過した時点で終了させることが好ましい。
酸性水溶液の加水分解反応を終了させる方法としては、例えば、酸性水溶液のpHを6.0超とする方法がある。酸性水溶液のpHを6.0超とすることで、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドおよびN−ビニルカルボン酸アミドが加水分解される反応が抑制される。
酸性水溶液の加水分解反応をより確実に終了させるためには、酸性水溶液のpHを7.0以上とすることがより好ましく、8.0以上とすることがさらに好ましい。また、抽出工程S3において用いる有機溶媒が加水分解される反応を抑制できるため、加水分解反応を終了させた水溶液のpHを、13.0以下とすることが好ましく、より好ましくは11.0以下であり、更に好ましくは10.0以下である。
酸性水溶液のpHを6.0超とする方法としては、酸性水溶液に、塩基を溶媒に溶解または分散させた溶液を添加する方法を用いることが好ましい。塩基を溶媒に溶解または分散させた溶液としては、塩基を水または水と相溶性のある溶媒に溶解させた溶液を用いることが好ましく、例えば、水酸化ナトリウム水溶液を好ましく用いることができる。
また、加水分解反応を終了させた水溶液のpHの範囲を調整する際には、例えば、塩酸などの酸性溶液を、必要に応じて用いることができる。
酸性水溶液のpHが2.0以上3.5以下である場合、反応時間を4時間以下とすることが好ましい。反応時間を4時間以下とすることにより、酸性水溶液中に含まれるN−ビニルカルボン酸アミドが加水分解される反応を抑制でき、好ましい。反応時間は、より好ましくは2時間以下であり、更に好ましくは1時間以下である。
また、上記酸性水溶液のpHが2.0以上3.5以下である場合、酸性水溶液中に含まれるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの加水分解を十分に行うために、反応時間を0.1時間以上とすることが好ましく、0.2時間以上とすることがさらに好ましい。
酸性水溶液のpHが3.5超4.5以下である場合、酸性水溶液中に含まれるN−ビニルカルボン酸アミドが加水分解される反応を抑制するために、反応時間を24時間以下とすることが好ましく、より好ましくは12時間以下であり、更に好ましくは8時間以下である。
また、酸性水溶液のpHが3.5超4.5以下である場合、酸性水溶液中に含まれるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの加水分解を十分に行うために、反応時間を1時間以上とすることが好ましく、4時間以上とすることがさらに好ましい。
酸性水溶液のpHが4.5超6.0以下である場合、酸性水溶液中に含まれるN−ビニルカルボン酸アミドが加水分解される反応を抑制するために、反応時間を72時間以下とすることが好ましく、より好ましくは48時間以下であり、更に好ましくは24時間以下である。
また、酸性水溶液のpHが4.5超6.0以下である場合、酸性水溶液中に含まれるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの加水分解を十分に行うために、反応時間を6時間以上とすることが好ましく、12時間以上とすることがさらに好ましい。
加水分解工程S2においては、加水分解反応を終了させた酸性水溶液(反応後水溶液)中のN−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとの割合(N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミド/N−ビニルカルボン酸アミド(質量比))が、0.15以下であることが好ましく、0.12以下であることがより好ましく、0.10以下であることがさらに好ましく、小さいほど好ましい。
加水分解反応を開始する前の酸性水溶液中のN−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとの割合(N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミド/N−ビニルカルボン酸アミド(質量比))が0.15超〜0.30以下である場合に、上記割合が0.15以下の反応後水溶液を得る方法としては、例えば、酸性水溶液のpHを3.6〜4.5とするとともに反応時間を1時間〜12時間とする方法が挙げられる。
加水分解工程S2においては、加水分解反応を終了させた酸性水溶液(以下、「反応後水溶液」という場合がある。)中のN−ビニルカルボン酸アミドの濃度が、10.0質量%以上であることが好ましく、15.0質量%以上であることがより好ましく、20.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、反応後水溶液中のN−ビニルカルボン酸アミドの濃度は、酸性水溶液中に含まれるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの加水分解を十分に行うことが可能となるため、60.0質量%以下であることが好ましい。
また、加水分解反応を終了させた酸性水溶液(反応後水溶液)中のN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの濃度は、6.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることがさらに好ましい。また、反応後水溶液中のN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの濃度は、0.01質量%以上が好ましい。反応後水溶液中のN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの濃度が0.01質量%以上である場合、反応後水溶液中のN−ビニルカルボン酸アミドが加水分解される反応を抑制できる。
「抽出工程S3」
本実施形態では、加水分解工程S2後の水溶液である加水分解反応を終了させた酸性水溶液(反応後水溶液)と、水と相溶しない有機溶媒とを混合し、有機相にN−ビニルカルボン酸アミドを抽出する抽出工程S3を行う。
反応後水溶液は、加水分解工程S2において、加水分解反応を終了させた水溶液であり、pHが7.0以上13.0以下の水溶液であることが好ましい。
生成工程S1におけるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの脱アルコール反応が反応式(A)で示される反応であり、加水分解工程S2において反応式(B)で示される反応により一般式(I)で示される化合物を加水分解した場合、反応後水溶液中には、上述した一般式(I)(II)(III)(IV)(V)で示される化合物が含まれている。
抽出工程S3において使用する水と相溶しない有機溶媒としては、水と相溶しないものであれば特に限定されないが、反応後水溶液が塩を含む場合に、反応後水溶液が相分離され難くなることを防ぐため、ハロゲンを含まない有機溶媒を用いることが好ましい。また、有機溶媒としては、エステル結合を有するエステル系溶媒を用いることがより好ましい。エステル系溶媒は、N−ビニルカルボン酸アミドが有機相に分配され、かつ加水分解工程S2において生成した化合物(一般式(III)で示されるカルボン酸アミド化合物など)が有機相に分配されず、水相に分配されやすい極性であり、好ましい。
エステル系溶媒としては、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸ビニル、酢酸アリル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトンなどが挙げられる。これらの中でも特に、一般式(II)で示される化合物を効率よく抽出できるため、酢酸エチルを用いることが好ましい。
抽出工程S3では、反応後水溶液に水系溶媒として、硫酸ナトリウム水溶液と塩化ナトリウム水溶液のいずれか一方または両方を含む水系溶媒を加えることが好ましい。抽出工程S3において、反応後水溶液と、水と相溶しない有機溶媒と、上記の水系溶媒とを混合して抽出することにより、水相に、加水分解工程S2においてN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドが加水分解して生成した化合物(反応式(B)で示される反応では、一般式(III)で示されるアミド化合物と一般式(IV)で示されるアルコールと一般式(V)で示されるアルデヒド)を効率よく抽出できる。その結果、抽出工程S3を行うことにより、反応後水溶液中に含まれるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドが加水分解して生成した化合物を、N−ビニルカルボン酸アミドと効率よく分離できる。
「晶析工程S4」
本実施形態のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法では、抽出工程S3の後に、抽出工程S3において抽出した有機相中のN−ビニルカルボン酸アミドを晶析させる晶析工程を行うことが好ましい。
晶析工程S4としては、例えば、抽出工程S3において分離した有機相中の有機溶媒を減圧留去する方法により除去した後、冷却することにより、N−ビニルカルボン酸アミドを晶析させる方法を用いることが好ましい。
晶析工程S4において晶析した析出物は、濾紙および/または濾布による濾過、遠心分離濾過等の方法により分離することが好ましく、工業的には遠心分離濾過を用いて分離することが好ましい。
本実施形態のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法は、N−ビニルカルボン酸アミド(例えば、一般式(II)で示される化合物)とN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミド(例えば、一般式(I)で示される化合物)とを含む水溶液のpHを2.0〜6.0とし、かつ温度を0〜40℃として、水溶液中におけるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドを加水分解する加水分解工程S2を有する。このため、加水分解工程S2後の水溶液と、水と相溶しない有機溶媒とを混合し、有機相にN−ビニルカルボン酸アミドを抽出する抽出工程S3を行うことにより、加水分解工程S2において加水分解して生成した化合物と分離され、不純物として含まれているN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの含有量が少ないN−ビニルカルボン酸アミドが得られる。
なお、目的物質であるN−ビニルカルボン酸アミドの極性は、不純物として含まれているN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドと近い。このため、N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとを含む混合物を、抽出法を用いて精製しても、N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとが同一の層に分配されるため、分離は困難である。
本実施形態では、加水分解工程S2において、酸性水溶液中のN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドを選択的に反応させる。このことにより、酸性水溶液中のN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドが加水分解されて、極性の高い化合物(例えば、反応式(B)で示される反応における一般式(IV)で示されるアルコールと、一般式(V)で示されるアルデヒドと、一般式(III)で示されるカルボン酸アミド化合物)が生成する。加水分解工程S2において生成した極性の高い化合物は、抽出工程S3を行うことによって、水相に抽出できる。したがって、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドが加水分解して生成した化合物は、抽出工程S3を行うことによって、有機相に抽出されるN−ビニルカルボン酸アミドと分離される。その結果、抽出工程S3において分離した有機相は、不純物として含まれているN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの含有量が少なく、目的物質であるN−ビニルカルボン酸アミドを高純度で含むものとなる。
「他の例」
なお、本発明のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法は、上述した例に限定されない。
例えば、上述した実施形態では、加水分解工程S2において、酸性水溶液として、生成工程S1において得られた反応生成物の25℃でのpHを、2.0〜6.0の範囲内となるように調整した水溶液を用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、加水分解工程S2において加水分解反応させる酸性水溶液は、N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとを含む25℃でのpHが2.0〜6.0の水溶液であればよく、生成工程S1において得られた反応生成物を用いたものでなくてもよい。したがって、本発明のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法では、生成工程S1を行わなくてもよい。
本発明のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法において、生成工程S1を行う場合、例えば上述した反応式(A)で示されるように、原料であるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミド(一般式(I)で示される化合物)と、目的物質であるN−ビニルカルボン酸アミド(一般式(II)で示される化合物)とは、炭素原子に結合している置換基および窒素原子に結合している基が同じ類似した化合物(一般式(I)で示される化合物と一般式(II)で示される化合物とではRおよびRが同じである)となる。
これに対し、生成工程S1を行わない場合、酸性水溶液中に含まれるN−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとは、炭素原子に結合している置換基と窒素原子に結合している基の一方または両方が同じ化合物であってもよいし、両方とも異なる化合物であってもよい。
また、上述した実施形態のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法では、生成工程S1と、加水分解工程S2と、抽出工程S3と、晶析工程S4とを含む場合を例に挙げて説明したが、晶析工程S4は、必要に応じて行うことができ、晶析工程S4を行わなくてもよい。
また、本発明のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法では、生成工程S1の後、加水分解工程S2を行う前に、水素添加工程および/またはアルコール除去工程を行ってもよい。
水素添加工程としては、例えば、触媒を充填したカラムに、水素ガスを供給しながら、生成工程S1において得られた反応生成物を、循環流通させる方法を用いることができる。水素添加工程を行うことにより、反応生成物中に含まれる生成工程S1において反応しなかった原料の少なくとも一部が水素化されるため、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの含有量のより少ないN−ビニルカルボン酸アミドが得られる。
生成工程S1において得られた反応生成物と水素ガスとの反応条件は、触媒およびカラムの種類、生成工程S1において原料として使用したN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの種類などに応じて、適宜決定できる。
水素添加工程において用いられる触媒としては、例えば、Pd−Al触媒、Pd−Ag−Al触媒、Pd−Pb−Al触媒、Pd−Cr−Al触媒などが挙げられる。
反応温度は、例えば、0℃〜50℃とすることができる。
反応時間は、例えば、0.5時間〜24時間とすることができる。
アルコール除去工程としては、例えば、生成工程S1において得られた反応生成物を、単蒸留装置を用いて、所定の条件下で蒸留する方法を用いることができる。
アルコール除去工程を行うことにより、反応生成物中に含まれる生成工程S1において反応しなかった原料の少なくとも一部が除去されるため、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの含有量のより少ないN−ビニルカルボン酸アミドが得られる。
アルコール除去工程における圧力および温度などの蒸留条件は、原料として使用したN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの種類などに応じて、適宜決定できる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
以下の実施例および比較例においては、以下に示す方法により、反応生成物中に含まれる化合物の濃度測定を行った。
<化合物の濃度測定方法>
化合物の濃度測定には、ガスクロマトグラフィー法(GC法)を使用した。GC法では、以下の測定条件で測定を行った。
装置:Agilent 6850 Series(FID)
カラム:HP−INNOWAX 直径0.25mm、長さ60m
流量:He 1ccm
スプリット比:40
カラム温度:40℃(7min)→昇温(25℃/min)→130℃(15min)→昇温(30℃/min)→220℃(11.4min)
インジェクション温度:200℃
検出器:水素炎イオン化検出器(FID) 230℃
<pHの測定方法>
加水分解工程における水溶液のpHは、以下の測定方法により測定した。
パーソナルpHメータ(商品名;PH71、横河電機株式会社製)を用いて、加水分解工程における水溶液を、加水分解反応させる温度で測定した。
[実施例1]
「生成工程S1」
アセトアルデヒド298gと、メタノール651gと、アセトアミド100gとを硫酸触媒下で反応させて、pH1.6の第1粗N−(1−メトキシエチル)アセトアミド(以下、「MEA」ともいう。)を得た。得られた第1粗MEAに48質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを8.0に調整し、第2粗MEAを得た。
第2粗MEA中のアルドールおよび不飽和アルデヒドの濃度をGC法により測定した。その結果、アルドール濃度は1200質量ppm、不飽和アルデヒドの濃度は170質量ppmであった。アルドール濃度は、第2粗MEA中のN−ビニルアセトアミド(以下、「NVA」ともいう。)濃度に対応する。
次に、第2粗MEAを、単蒸留装置を用いて真空度0.27〜33kPa(絶対圧力)、ボトム温度100℃の条件下で蒸留した。そして、蒸留後の第2粗MEAを上記のGC法により分析し、MEAの純度を算出した。その結果、MEAの純度は92質量%であった。また、蒸留したことによるアルドール濃度および不飽和アルデヒドの濃度の増加は見られなかった。
原料としての蒸留後の第2粗MEAを、表面温度400℃、圧力20kPa(絶対圧力)に保たれた反応器(内径20mm、長さ240mmのチューブ型反応器)に、1.5g/分の割合で供給して熱分解し、脱アルコール反応させた。そして、生成したNVAとメタノールとの混合物を、反応器出口に設置された冷却管で凝縮させて、反応生成物である第1粗NVAを回収した。
(水素添加工程)
0.3%Pd−Al触媒をカラムに充填した。充填量は、第1粗NVA20gに対して触媒量1mlとした。そして、触媒を充填したカラムに、水素ガスを圧力0.03MPaGで供給し、空間速度(SV値)が100/hrとなるように、第1粗NVAを反応温度40℃で12時間循環流通させた。このような水素添加工程を行うことにより、第1粗NVA中のN−(1,3−ブタジエニル)アセトアミドが水素化されて低減された第2粗NVAを得た。
(アルコール除去工程)
第2粗NVAを、単蒸留装置を用いて、絶対圧力を真空〜0.27kPaA、ボトム温度を60℃以下とする条件下で蒸留し、メタノールを除去して、第3粗NVAを得た。
第3粗NVAを上記のGC法により分析し、MEAの転化率を算出した。その結果、MEAの転化率は90%であった。
また、第3粗NVAをGC法により分析し、NVAとMEAとアセトアミドの割合(質量比)を算出した。その結果、NVAが73.93%、MEAが13.97%、アセトアミドが9.48%であった。第3粗NVAにおけるNVAとMEAとの比(MEA/NVA(質量比))を表1に示す。
「加水分解工程S2」
500mLナスフラスコに、第3粗NVA119.49g(1.41mol)と、純水237.33gと、酢酸1.66gとを、撹拌子と磁気撹拌機とを用いて混合し、25℃におけるpHが3.84である酸性水溶液とし、25℃で6.5時間反応させた。
そして、酸性水溶液を反応させた500mLナスフラスコに、10質量%水酸化ナトリウム水溶液12gを加え、25℃におけるpHが9.0となるまで0.5mol/L塩酸を加え、酸性水溶液の加水分解反応を終了させた。加水分解反応を終了させた時点での水溶液の質量は372.40gであった。
加水分解反応を終了させた水溶液(反応後水溶液)をGC法により分析し、反応後水溶液中のNVAとMEAとアセトアミドの割合(質量比)を算出した。その結果、NVAが21.71%、MEAが1.10%、アセトアミドが5.73%(不検出分68.50%)であった。また、第3粗NVAに加水分解工程S2を行うことによるNVAの収率は、91.5%であった。反応後水溶液におけるNVAとMEAとの比(MEA/NVA(質量比))を表1に示す。
「抽出工程S3」
反応後水溶液を、1L分液ロートに移し、塩化ナトリウム72.3g(1.24mol)を加えて塩化ナトリウム水溶液を含む溶液とし、さらに水と相溶しない有機溶媒としての酢酸エチル239.74g(2.72mol)を加えて混合し、25℃で抽出し、分液した。水相を抜き出した後、飽和塩化ナトリウム水溶液約120gを加えて分配させ、水相を抜き出す操作を5回繰り返した。その後、有機相を回収し、酢酸エチル約380gを加えて分配させ、有機相を抜き出す操作を3回繰り返した。そして、回収した有機相を混合し、抽出されたNVAを含むNVA含有酢酸エチル溶液1460.87gを得た。
NVA含有酢酸エチル溶液をGC法により分析し、NVA含有酢酸エチル溶液中のNVAとMEAとアセトアミドの割合(質量比)を算出した。その結果、酢酸エチルが90.54%、NVAが5.48%、MEAが0.23%、アセトアミドが0.09%であった。また、反応後水溶液に抽出工程S3を行うことによるNVAの収率は、99.1%であった。NVA含有酢酸エチル溶液におけるNVAとMEAとの比(MEA/NVA(質量比))を表1に示す。
「晶析工程S4」
晶析工程S4として、以下に示す第1晶析工程と第2晶析工程とをこの順に行った。
(第1晶析工程)
抽出工程S3において分離したNVA含有酢酸エチル溶液を2Lナスフラスコに移し、ロータリーエバポレーターを用いて30℃、2kPaで1時間減圧留去し、さらに60℃、0.4kPaで30分間減圧留去し、NVA含有酢酸エチル溶液中の酢酸エチルを除去し、NVA結晶85.7gを得た。
NVA結晶をGC法により分析し、NVA結晶中のNVAとMEAとアセトアミドの割合(質量比)を算出した。その結果、酢酸エチルが0.61%、NVAが90.26%、MEAが3.97%、アセトアミドが1.62%であった。また、NVA含有酢酸エチル溶液から酢酸エチルを留去したことによるNVAの収率は、97.4%であった。
その後、200mLセパラブルフラスコにNVA結晶を82.53g(0.875mol)、メチルシクロヘキサン(以下、「MCH」ともいう。)82.61gを入れ、水浴を用いて40℃に加温した。その後、撹拌翼を用いてフラスコ内を150rpmで撹拌しながら、水浴を用いて5℃/hrの冷却速度で7時間冷却し、NVAを析出させた。析出したNVAを遠心分離濾過機(株式会社コクサン、H−112)に移し、5000rpmで5分間遠心分離濾過を行った後、濾布(商品名;P−26S、株式会社コクサン製)を用いて濾過し、結晶と母液とを分離した。
濾布に付着した結晶を−20℃のリンス液(MCH/酢酸エチル=52.53g/2.76g)を用いて洗浄し、再度5000rpmで5分間遠心分離濾過を行い、結晶とリンス液とを分離して第1NVA結晶70.07gを得た。
第1NVA結晶を、溶媒としてのエチレングリコールジメチルエーテル(関東化学株式会社製)に溶解してGC法により分析し、第1NVA結晶中のNVAとMEAとアセトアミドとMCHの割合(質量比)を算出した。その結果、NVAが95.68%、MEAが0.94%、アセトアミドが0.42%、MCHが1.45%であった。NVA含有酢酸エチル溶液から酢酸エチルを留去して得たNVA結晶から第1NVA結晶を得ることによるNVAの収率は90.0%であり、第3粗NVAに対する収率であるNVA総収率は79.5%であった。
(第2晶析工程)
次に、300mL三角フラスコに、第1NVA結晶69.60g(0.783mol)と、MCH76.56gと、酢酸エチル13.91gとを加え、水浴を用いて40℃に加温した後、濾紙(商品名:No.5C、有限会社桐山製作所製)を用いて濾過し、濾液145.64gを得た。
濾液をGC法により分析し、濾液中のMCHと酢酸エチルとNVAとMEAとアセトアミドの割合(質量比)をそれぞれ算出した。その結果、MCHが46.51%、酢酸エチルが7.97%、NVAが43.45%、MEAが0.41%、アセトアミドが0.20%であった。第1NVA結晶に対する濾液中のNVAの収率は、95.0%であった。
得られた濾液を300mLセパラブルフラスコに移し、水浴を用いて再度40℃に加温した。その後、撹拌翼を用いてフラスコ内を150rpmで撹拌しながら、水浴を用いて5℃/hrの冷却速度で7時間冷却し、NVAを析出させた。析出したNVAを遠心分離濾過機(株式会社コクサン、H−112)に移し、5000rpmで5分間遠心分離濾過を行った後、濾布(商品名;P−26S、株式会社コクサン製)を用いて濾過し、結晶と母液とを分離した。
濾布に付着した結晶を−20℃のリンス液(メチルシクロヘキサン/酢酸エチル=33.06g/1.74g)を用いて洗浄し、再度5000rpmで5分間遠心分離濾過を行い、結晶とリンス液を分離して第2NVA結晶56.02gを得た。
第2NVA結晶をGC法により分析し、第2NVA結晶中のMCHとNVAとMEAとアセトアミドの割合(質量比)を算出した。その結果、MCHが0.19%、NVAが99.23%、MEAが0.14%、アセトアミドが0.10%であった。第1NVA結晶から第2NVA結晶を得ることによるNVAの収率は、87.9%であり、第3粗NVAに対する収率であるNVA総収率は66.4%であった。
「参考例2」
実施例1と同様にして生成工程S1を行い、第3粗NVAを得た。50mLのスクリュー管瓶に、第3粗NVA5.00g(0.043mol)と、5.0×10−3モル/Lの塩化水素水溶液9.99gとを、撹拌子と磁気撹拌機とを用いて混合し、25℃におけるpHが5.14である酸性水溶液とし、25℃で23時間反応させた。
その後、実施例1と同様にして酸性水溶液の加水分解反応を終了させた。加水分解反応を終了させた水溶液(反応後水溶液)を実施例1と同様にして分析し、反応後水溶液中のNVAとMEAとアセトアミドの割合(質量比)を算出した。その結果、NVAが24.60%、MEAが2.28%、アセトアミドが4.42%(不検出分67.15%)であった。反応後水溶液におけるNVAとMEAとの比(MEA/NVA(質量比))と、第3粗NVAに加水分解工程を行うことによるNVAの収率(反応後水溶液のNVA収率)を求めた。その結果を表1に示す。
「参考例3」
実施例1と同様にして生成工程S1を行い、第3粗NVAを得た。50mLのスクリュー管瓶に、第3粗NVA5.00g(0.043mol)と、0.01モル/Lの塩化水素水溶液10.00gとを、撹拌子と磁気撹拌機とを用いて混合し、25℃におけるpHが2.98である酸性水溶液とし、25℃で10分間反応させた。
その後、実施例1と同様にして酸性水溶液の加水分解反応を終了させた。加水分解反応を終了させた水溶液(反応後水溶液)を実施例1と同様にして分析し、反応後水溶液中のNVAとMEAとアセトアミドの割合(質量比)を算出した。その結果、NVAが21.12%、MEAが0.91%、アセトアミドが4.58%(不検出分70.73%)であった。反応後水溶液におけるNVAとMEAとの比(MEA/NVA(質量比))と、第3粗NVAに加水分解工程を行うことによるNVAの収率(反応後水溶液のNVA収率)を求めた。その結果を表1に示す。
「参考例4」
実施例1と同様にして生成工程S1を行い、第3粗NVAを得た。50mLのスクリュー管瓶に、第3粗NVA5.00g(0.043mol)と、7.9×10−3モル/Lの塩化水素水溶液10.00gとを、撹拌子と磁気撹拌機とを用いて混合し、25℃におけるpHが3.96である酸性水溶液とし、25℃で1時間反応させた。
その後、実施例1と同様にして酸性水溶液の加水分解反応を終了させた。加水分解反応を終了させた水溶液(反応後水溶液)を実施例1と同様にして分析し、反応後水溶液中のNVAとMEAとアセトアミドの割合(質量比)を算出した。その結果、NVAが23.16%、MEAが0.92%、アセトアミドが5.20%(不検出分67.46%)であった。反応後水溶液におけるNVAとMEAとの比(MEA/NVA(質量比))と、第3粗NVAに加水分解工程S2を行うことによるNVAの収率(反応後水溶液のNVA収率)を求めた。その結果を表1に示す。
「参考例5」
実施例1と同様にして生成工程S1を行い、第3粗NVAを得た。50mLのスクリュー管瓶に、第3粗NVA5.01g(0.043mol)と、1質量%の硫酸銅五水和物水溶液10.01gとを、撹拌子と磁気撹拌機とを用いて混合し、25℃におけるpHが4.54である酸性水溶液とし、25℃で4時間反応させた。
その後、実施例1と同様にして酸性水溶液の加水分解反応を終了させた。加水分解反応を終了させた水溶液(反応後水溶液)を実施例1と同様にして分析し、反応後水溶液中のNVAとMEAとアセトアミドの割合(質量比)を算出した。その結果、NVAが23.48%、MEAが1.59%、アセトアミドが4.54%(不検出分68.10%)であった。反応後水溶液におけるNVAとMEAとの比(MEA/NVA(質量比))と、第3粗NVAに加水分解工程S2を行うことによるNVAの収率(反応後水溶液のNVA収率)を求めた。その結果を表1に示す。
実施例1、参考例2〜参考例5について、第3粗NVAにおけるNVAとMEAとの比(MEA/NVA(質量比))と、加水分解工程において加水分解反応させた酸性水溶液のpHと、加水分解反応終了後の水溶液(反応後水溶液)におけるNVAとMEAとの比(質量比)と、加水分解温度と、第3粗NVAに加水分解工程を行うことによるNVAの収率(反応後水溶液のNVA収率)と、NVA含有酢酸エチル溶液におけるNVAとMEAとの比(質量比)と、反応後水溶液に抽出工程を行うことによるNVAの収率(NVA含有酢酸エチル溶液のNVA収率)を表1に示す。
Figure 2021042130
「比較例1」
実施例1と同様にして生成工程S1を行い、第3粗NVAを得た。200mLナスフラスコに、第3粗NVA89.74g(0.078mol)を入れ、水浴を用いて40℃に加温した。その後、撹拌翼を用いてフラスコ内を150rpmで撹拌しながら、水浴を用いて5℃/hrの冷却速度で6時間冷却し、NVAを析出させた。析出したNVAを遠心分離濾過機(株式会社コクサン、H−112)に移し、5000rpmで5分間遠心分離を行った後、濾布(商品名;P−26S、株式会社コクサン製)を用いて濾過し、結晶と不純物を含む液体とを分離した。
濾布に付着した結晶を−20℃のリンス液(メチルシクロヘキサン/酢酸エチル=57.12g/3.01g)を用いて洗浄し、再度5000rpmで5分間遠心分離を行い、結晶とリンス液を分離してNVA結晶39.62gを得た。
得られたNVA結晶を、溶媒としてのエチレングリコールジメチルエーテル(関東化学株式会社製)に溶解してGC法により分析し、NVAとMEAとアセトアミドとMCHとの割合(質量比)を算出した。その結果、NVAが96.49%、MEAが1.09%、アセトアミドが0.82%、MCHが0.60%であった。NVA結晶のNVAとMEAとの比(MEA/NVA(質量比))と、第3粗NVAに対する晶析したNVAの収率を求めた。その結果を表2に示す。
Figure 2021042130
「比較例2」
実施例1と同様にして生成工程S1を行い、第3粗NVAを得た。50mLのスクリュー管瓶に、第3粗NVA5.00g(0.043mol)と、トルエン10.01g(0.109mol)と、飽和塩化ナトリウム水溶液10.01gとを加え、磁気撹拌機を用いて30℃で40分間、780rpmで攪拌した。その後、静置して有機相と水相の2相に分離した。分離した各層を、それぞれパスツールピペットを用いて回収し、有機相13.30gと、水相10.34gを得た。
有機相をGC法により分析し、有機相中のNVAとMEAとアセトアミドの割合(質量比)を算出した。その結果、NVAが21.39%、MEAが3.50%、アセトアミドが0.30%であった。また、第3粗NVAに対する有機相のNVAの収率は、78.9%であった。
「比較例3」
実施例1と同様にして生成工程S1を行い、第3粗NVAを得た。50mLのスクリュー管瓶に、第3粗NVA5.00g(0.043mol)と、酢酸ノルマルプロピル10.25g(0.100mol)と、飽和塩化ナトリウム水溶液10.01gとを加え、磁気撹拌機を用いて30℃で45分間、780rpmで攪拌した。その後、静置して有機相と水相の2相に分離した。分離した各層を、それぞれパスツールピペットを用いて回収し、有機相15.16gと、水相8.67gを得た。
有機相をGC法により分析し、有機相中のNVAとMEAとアセトアミドの割合(質量比)を算出した。その結果、NVAが22.53%、MEAが4.09%、アセトアミドが0.88%であった。また、第3粗NVAに対する有機相のNVAの収率は、93.8%であった。
「比較例4」
実施例1と同様にして生成工程S1を行い、第3粗NVAを得た。50mLのスクリュー管瓶に、第3粗NVA5.00g(0.043mol)と、0.1モル/Lの塩化水素水溶液10.00gとを、撹拌子と磁気撹拌機とを用いて混合し、25℃におけるpHが1.66である酸性水溶液とし、25℃で10分間反応させた。
その後、実施例1と同様にして酸性水溶液の加水分解反応を終了させた。加水分解反応を終了させた水溶液(反応後水溶液)を実施例1と同様にして分析し、反応後水溶液中のNVAとMEAとアセトアミドの割合(質量比)を算出した。その結果、NVAが0.43%、MEAが2.05%、アセトアミドが15.42%(不検出分70.74%)であった。反応後水溶液におけるNVAとMEAとの比(MEA/NVA(質量比))と、第3粗NVAに加水分解工程S2を行うことによるNVAの収率(反応後水溶液のNVA収率)を求めた。その結果を表2に示す。
「比較例5」
実施例1と同様にして生成工程S1を行い、第3粗NVAを得た。50mLのスクリュー管瓶に、第3粗NVA4.99g(0.043mol)と、0.01質量%の硫酸銅五水和物水溶液10.00gとを、撹拌子と磁気撹拌機とを用いて混合し、25℃におけるpHが6.95である水溶液とし、25℃で23時間反応させた。
その後、実施例1と同様にして水溶液の加水分解反応を終了させた。加水分解反応を終了させた水溶液(反応後水溶液)を実施例1と同様にして分析し、反応後水溶液中のNVAとMEAとアセトアミドの割合(質量比)を算出した。その結果、NVAが24.77%、MEAが4.51%、アセトアミドが3.11%(不検出分67.35%)であった。反応後水溶液におけるNVAとMEAとの比(MEA/NVA(質量比))と、第3粗NVAに加水分解工程S2を行うことによるNVAの収率(反応後水溶液のNVA収率)を求めた。その結果を表2に示す。
「比較例6」
実施例1と同様にして生成工程S1を行い、第3粗NVAを得た。50mLのスクリュー管瓶に、第3粗NVA5.03g(0.044mol)と、純水10.06gとを、撹拌子と磁気撹拌機とを用いて混合し、25℃におけるpHが7.29である水溶液とし、25℃で23時間反応させた。
その後、実施例1と同様にして水溶液の加水分解反応を終了させた。加水分解反応を終了させた水溶液(反応後水溶液)を実施例1と同様にして分析し、反応後水溶液中のNVAとMEAとアセトアミドの割合(質量比)を算出した。その結果、NVAが24.70%、MEAが4.54%、アセトアミドが3.07%(不検出分67.29%)であった。反応後水溶液におけるNVAとMEAとの比(MEA/NVA(質量比))と、第3粗NVAに加水分解工程S2を行うことによるNVAの収率(反応後水溶液のNVA収率)を求めた。その結果を表2に示す。
表1に示すように、加水分解工程S2を行った実施例1、参考例2〜参考例5では、加水分解工程S2後の水溶液(反応後水溶液)のMEA/NVA(質量比)が0.1未満であり、加水分解工程S2を行う前の第3粗NVAよりも小さかった。このことから、加水分解工程S2を行うことにより、N−ビニルアセトアミド(NVA)とN−(1−メトキシエチル)アセトアミド(MEA)との混合物に含まれるMEAの含有量が低減できることが確認できた。
また、実施例1に示すように、加水分解工程S2を行った後に抽出工程S3を行うことにより、MEA/NVA(質量比)がより一層小さくなり、NVAとMEAとの混合物に含まれるMEAの含有量をより一層低減できることが確認できた。
これに対し、表2に示すように、加水分解工程S2および抽出工程S3を行わずに晶析を行った比較例1では、MEA/NVA(質量比)の小さいNVA結晶が得られた。しかし、比較例1では、第3粗NVAに対する晶析したNVAの収率が57.5%であり、加水分解工程S2および抽出工程S3を行った後に晶析工程S4を行った実施例1における第3粗NVAに対する収率であるNVA総収率66.4%と比較してNVAの収率が低かった。
また、加水分解工程S2を行わずに抽出を行った比較例2および比較例3では、加水分解工程S2を行った後に抽出工程S3を行った実施例1と比較して、抽出後に得られた有機相(実施例1では「NVA含有酢酸エチル溶液」)のMEA/NVA(質量比)が大きかった。
加水分解工程S2におけるpHが2.0未満である比較例4では、NVAの加水分解により、pHが2.0〜6.0の範囲内である実施例1、参考例2〜参考例5と比較して、反応後水溶液中のMEA/NVA(質量比)が非常に大きい結果となった。
また、加水分解工程S2におけるpHが6.0超である比較例5および比較例6では、pHが2.0〜6.0の範囲内である実施例1、参考例2〜参考例5と比較して、反応後水溶液中のMEA/NVA(質量比)が大きかった。
S1・・・生成工程、S2・・・加水分解工程、S3・・・抽出工程、S4・・・晶析工程。

Claims (8)

  1. N−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとを含む水溶液のpHを2.0〜6.0とし、かつ温度を0〜40℃として、前記水溶液中におけるN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドを加水分解する加水分解工程と、
    前記加水分解工程後の水溶液と、水と相溶しない有機溶媒とを混合し、有機相に前記N−ビニルカルボン酸アミドを抽出する抽出工程とを有することを特徴とするN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
  2. 前記N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドが、N−(1−メトキシエチル)アセトアミドである、請求項1に記載のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
  3. 前記有機溶媒が、エステル系溶媒である、請求項1または請求項2に記載のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
  4. 前記抽出工程において、硫酸ナトリウム水溶液と塩化ナトリウム水溶液のいずれか一方または両方を含む水系溶媒を用いる、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
  5. N−ビニルカルボン酸アミドが、N−ビニルアセトアミドである、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
  6. 前記加水分解工程の前に、N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドの脱アルコール反応によりN−ビニルカルボン酸アミドを生成させる生成工程を有する、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
  7. 前記抽出工程の後に、前記抽出工程において抽出した有機相中の前記N−ビニルカルボン酸アミドを晶析させる晶析工程を行う、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
  8. 前記加水分解工程において、加水分解反応を終了させた前記水溶液中のN−ビニルカルボン酸アミドとN−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミドとの割合(N−(1−アルコキシエチル)カルボン酸アミド/N−ビニルカルボン酸アミド(質量比))が0.15以下である、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のN−ビニルカルボン酸アミドの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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