JP2010138096A - 2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの製造方法 - Google Patents

2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの製造方法 Download PDF

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恵一 小滝
Yasuo Urata
泰男 浦田
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栄 河村
Tetsuro Kizaki
哲朗 木崎
Makoto Mitani
誠 三谷
Shunji Oshima
俊二 大島
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Abstract

【課題】 2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートを効率よく製造する。
【解決手段】
2−t−ブトキシエタノールまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロパノールを酸触媒存在下、ケテンと反応させ酢酸エステルを得る工程(A)と、得られた生成物を、150℃を超えない釜温度で高沸カットして触媒を除去する工程(B)と、工程(B)で得られた酢酸エステルを減圧蒸留する工程(C)からなり、さらに酸価を低減させる工程(D)を含んでもよい、2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの製造方法に関する。更に詳しくは、2−t−ブトキシエタノール、または1−(t−ブトキシ)−2−プロパノールを酸触媒存在下で、ケテンを用いて高純度の酢酸エステルを製造する方法に関する。2−t−ブトキシエチルアセテートおよび1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの用途は、塗料、インキ用溶剤、添加剤分野に関する。
2−t−ブトキシエチルアセテートのブトキシ基が鎖状の構造異性体である2−n−ブトキシエチルアセテートは、有機溶剤として知られており、2−n−ブトキシエタノールをエステル化触媒で脱水する方法で合成される。
一方、ブトキシ基が三級である2−t−ブトキシエチルアセテートは、金属アルコラート触媒を用いたエステル交換法により、連続的に2種類のエステル化合物を製造する方法が報告されている(特許文献1)。具体的には、炭素数1から4までのアルキル基を有するモノまたはポリエチレングリコールエーテル、および炭素数1から4までのアルキル基を有するモノまたはポリプロピレングリコールエーテルを、酢酸エチルとエステル交換する方法が報告されている。
1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートは、プロピレングリコールアルキルアセテートのヒドラーゼを用いたエナンチオ選択的加水分解による光学分割や、プロピレングリコールアルキルエーテルのアシル供与体を用いヒドラーゼを用いたエステル交換反応による光学分割について報告があり、キラルなアルキルプロピレングリコールアルキルエーテルおよびプロピレングリコールアルキルアセテートの製造方法について述べられている(特許文献2)。プロピレングリコールアルキルアセテートは、アシル供与体として、酢酸ビニルや酢酸エチルなどが使用されており、酸クロライド、または酸無水物を用いたアセチル化反応により合成される(特許文献3)。
一方、ケテンとアルコールとの反応で酢酸エステルが合成できることは知られている。
具体的には、有機溶剤存在下、酸触媒を用いて、イソプロパノール、またはグリセリンのようなポリオールとケテンとの反応で、副生成物を少なく製造できることが報告されている(特許文献4)。
また、周期表1b族、2b族、4b族、5b族、7b族、3a族、4a族、5a族の金属酸化物を触媒に用いて、97.7%と高い収率で得られるエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの合成法が報告されている(特許文献5)。さらに、ジ、トリ、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテルとケテンから対応する酢酸エステルの製造について報告されている(特許文献6)。
このほか、グリコールエーテルとして1−メトキシ−2−プロパノールを用い、ケテンと反応させることによる、1−メトキシ−2−プロピルアセテートの製造とプロセスフローが報告されている(特許文献7)。
しかしながら、酢酸エチルとのエステル交換法では、副生成物としてエタノールが得られるが、このエタノールの有効利用がなされないと、工業的な優位性が発揮できない。
また、特許文献2に開示の技術の如くリパーゼを用いたエステル交換法では、本来付加価値の高いキラル化合物の製造を目的としているため、高価な触媒であるリパーゼを必要としていること、および基質濃度が10−20v/v%と低いといった問題があった。また、酸クロライド、酸無水物を用いたアセチル化では、塩酸、酢酸の生成により煩雑な後処理を必要としており、工業的に優位な方法といえない。
さらに、ケテンとアルコールとの反応により酢酸エステルを合成する方法においては、数種のグリコールエーテルの合成を検討した例があるが、2−t−ブトキシエチルアセテートおよび1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートを検討した例はない。
特開平10−310552号公報 特表2005−520570号公報 特表平6−504761号公報 米国特許第8840962号明細書 仏国特許第1594467号明細書 独国特許第19532695号明細書 独国特許第19532697号明細書
本発明の課題は、高純度の2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートを製造するための、極めて収率の高い、工業的に有利な方法を提供することである。
本発明者らは鋭意検討の結果、本願記載の製造方法に従えば、高純度の2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートを効率よく製造できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 2−t−ブトキシエタノールまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロパノールを酸触媒存在下、ケテンと反応させ酢酸エステルを得る工程(A)と、工程(A)で生成した酢酸エステルを、150℃を超えない釜温度で高沸カットして酸触媒を除去する工程(B)と、工程(B)で得られた酢酸エステルを減圧蒸留する工程(C)を有する、2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの製造方法。
[2] 酸触媒がパラトルエンスルホン酸である項[1]記載の2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの製造方法。
[3] 工程(B)の後に、固体塩基または酸吸着剤を用いて酢酸エステルの酸価を低減させる工程(D)をさらに有する項[1]記載の2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの製造方法。
本発明により、2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの製造方法を提供できる。2−t−ブトキシエチルアセテートおよび1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートは、塗料、インキ用溶剤、さらには添加剤分野などに広く用いることができる。
現在、環境問題に対する意識の高まりから、使用する溶媒に関する規制が強まっており、環境対応型の溶媒が必要とされている。2−t−ブトキシエチルアセテートおよび1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートは、光学オキシダントの発生が少ない、環境に対してやさしい特性を有するため、工業的に注目されている。本願開示の製造方法に従えば、本化合物を効率よく得ることが可能である。
以下に本発明の詳細を説明する。
本発明に使用する2−t−ブトキシエタノールおよび1−(t−ブトキシ)−2−プロパノールは、市販品として入手できる。例えば、2−t−ブトキシエタノールは丸善石油化学株式会社からスワソルブETBという製品名で販売されている。1−(t−ブトキシ)−2−プロパノールは、株式会社クラレからアーコソルブPTBという製品名で販売されている。一般的な2−t−ブトキシエタノールおよび1−(t−ブトキシ)−2−プロパノールは、酸触媒を用いてエチレングリコールまたはプロピレングリコールと、イソブチレンから合成されている。
本発明により2−t−ブトキシエチルアセテートを製造する場合は、市販されている2−t−ブトキシエタノールを特に精製することなくそのまま原料として使用できる。また、本発明により1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートを製造する場合は、市販されている1−(t−ブトキシ)−2−プロパノールを特に精製することなくそのまま原料として使用できる。
使用するケテンは、製造方法により特に制限されることはなく、アセトンの熱分解、酢酸の熱分解などにより得られたケテンが使用できる。
酸触媒としては、硫酸やパラトルエンスルホン酸などを用いることができるが、好ましくはパラトルエンスルホン酸である。
本明細書で用いる高沸とは、反応に係る主生成物よりも高い沸点を有する化合物を意味し、低沸とは、反応に係る主原料よりも低い沸点を有する化合物を意味する。例えば、工程(A)において、原料が2−t−ブトキシエタノールである場合、高沸とは反応に係る主生成物である2−t−ブトキシエチルアセテートよりも高い沸点を有する化合物の総称であり、低沸とは、2−t−ブトキシエタノールよりも低い沸点を有する化合物の総称である。
また、高沸カットとは、反応に係る主生成物よりも高い沸点を有する化合物を除去する行為を言い、低沸カットとは、反応に係る主原料よりも低い沸点を有する化合物を除去する行為を言う。
次に、工程(A)から(D)について説明する。
工程(A)
2−t−ブトキシエタノールまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロパノールに、パラトルエンスルホン酸のような酸触媒を添加しケテンを供給することにより行う。
酸触媒であるパラトルエンスルホン酸は、市販されている1水和物、6水和物が使用できる。酸触媒の使用量は2−t−ブトキシエタノールまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロパノール100モル%に対して、モル比で通常0.01から10モル%、好ましくは0.05から5モル%用いることが望ましい。より好ましくは0.08から2モル%である。
ケテンとの反応は、基質となる2−t−ブトキシエタノールまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロパノールに、ケテンを供給することにより発熱反応となるので、通常冷却しながら行う。反応温度は、通常−78℃から100℃、好ましくは−40℃から40℃である。より好ましくは−20℃から30℃である。
反応器は、通常の攪拌式反応器が使用可能であり、液中にケテンを供給する方式、または上層部からの気相供給による方式のどちらでもよい。また、反応はバッチ式、連続式のいずれでもよく、攪拌機を付けた槽型反応器、槽型反応器を複数連結して反応を連続的に行う方法でもかまわない。
ケテンは、減圧状態下で酢酸が熱分解して発生したガス状のケテンをそのまま減圧下で用いることができる。また、減圧状態下で生成したケテンを圧縮し、加圧状態下でケテンを使用することもできる。
加圧状態下でのケテンは、配管中で移送中に2量化したジケテンの生成を起こしやすい。よってケテン反応前に、生成したジケテンを除去する工程を設けたほうが好ましい。
ケテンと2−t−ブトキシエタノール、およびケテンと1−(t‐ブトキシ)−2−プロパノールとの反応速度は速く、原料に対し、1等量のケテンを供給すれば、この供給時間内に反応が完結するが、さらにケテン供給後、熟成させることで反応の転化率を高めることができる。通常、熟成時間は30分から12時間で、特に30分から6時間が望ましい。また、熟成時間の起算は、原料に対し1等量のケテンを供給し終えた時点からとなる。
ケテンの供給量は、基質となる2−t−ブトキシエタノールまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロパノールに対して、0.5から5.0モル当量である。好ましくは、0.6から2.0モル当量であり、より好ましくは0.8から1.5モル当量である。ケテンの供給量を適切に設定することで、ジケテンや無水酢酸の生成増加を抑制し、ケテンの原単位悪化を防止することができる。また、未反応2−t−ブトキシエタノールまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロパノールが反応液に残り、後の工程(C)で2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの収率が低下することを防ぐこともできる。
本特許に記載されている条件では、ケテンの供給量は、基質となる2−t−ブトキシエタノールまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロパノールに対し過剰量に使用されているので、反応液中には、通常、副生成物として微量のジケテン、無水酢酸が混入するが、これらの副生成物は、工程(C)で低沸として除くことができる。
工程(B)
工程(A)で得られた酢酸エステルを高沸カットして、酸触媒を除去することにより行う。
この工程(B)は、通常の釜式単蒸留装置を用いて行うことが可能であり、留出分を酢酸エステルとして得ることができる。酢酸エステルを投入した釜の内温度は、酢酸エステルの安定性の観点から、150℃以下に設定することが好ましい。またこの時、装置内部を減圧することが好ましい。釜残分は、触媒を含む高沸として得ることができる。好ましくは、減圧度を13.3kPa以下、釜の内温度が140℃以下である。特に好ましくは、減圧度5.3kPa以下、釜の内温度130℃以下である。
釜温度が150℃以下であれば、酢酸エステルの分解が進行しにくく、酢酸エステルの収率低下や分解物の混入を防ぐことができる。単蒸留式蒸留器を用い、上記条件で高沸カットを行うことで、工程(A)で得られた反応液から95%以上の高い回収率で酢酸エステルを得ることができ、効率よく酸触媒を釜残分として回収することができる。副生成物としての微量のジケテン、無水酢酸は、単蒸留時の初留部分に留出してくる。単蒸留において、粗精製が可能である。
また、釜式単蒸留装置に代わりに、低沸カット用と高沸カット用の蒸留受器を付けた薄膜蒸留器を用いることも可能である。この場合、減圧度を5.3kPa以下に下げ、薄膜蒸留器内部の温度を130℃以下とし、連続的に酢酸エステルの供給を行う。高沸カット蒸留受器には触媒を含む高沸が、低沸カット蒸留受器には酢酸エステルを含む低沸が得られる。薄膜蒸留器で得られた高沸カット留出分中にまだエステル成分を含む場合は、再度、薄膜蒸留器にかけることで、酢酸エステルを得ることができる。
最終的には、薄膜蒸留器の高沸カット蒸留受器から酸触媒を高沸とともに除去することができる。本発明の工程(B)の条件では、目的とする2−t−ブトキシエチルアセテートおよび1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの分解、減少は見られない。
本発明では、工程(B)において、2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの含有量は95%以上となる。
工程(C)
工程(B)で得られた酢酸エステルを減圧蒸留することにより、2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの精製を行う。
工程(C)の主な目的は、ジケテン、無水酢酸、酢酸等を除去することである。前の工程(B)で、触媒と共に高沸が除去されているため、工程(C)での分離効率が向上する。
減圧蒸留条件は、2−t−ブトキシエチルアセテートの場合、減圧度が7.3から8.7kPa、蒸留塔トップ温度が95℃から120℃、蒸留塔ボトム温度が100℃から130℃、および還流比が0から20である。
また、1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの場合、減圧度が2.7から5.3kPa、蒸留塔トップ温度が70℃から100℃、蒸留塔ボトム温度が90℃から130℃、および還流比が0から20である。
蒸留塔ボトム温度が130℃を大きく超えないように調節することで、蒸留時間の経過とともに、2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートが分解することによる、収率低下が起こりにくくなる。
減圧蒸留に用いる蒸留塔は、気液接触を有効にするため金属板、金網、またはラシヒリング等の充填物を詰めた塔、多孔板、または棚段を具備した精留塔を用いることができる。
蒸留は蒸留塔ボトム温度が130℃以上にならないよう、減圧下で蒸留する。蒸留塔トップ温度は減圧度によって変化するが、減圧度は蒸留塔ボトム温度により決定される。蒸留中は、蒸留塔ボトム温度が130℃以上にならないように、減圧度を維持・調整する。この減圧度によって蒸留塔トップ温度が決まる。減圧度の変化による蒸留塔トップ温度の5から10℃前後の変動は許容される。
還流比は釜へと戻される凝縮成分量(R)と系外に取り出される凝縮成分量(D)の比(R/D)によって表される。還流比(R/D)を大きくとると、蒸留塔内での気液平衡に有利に働き、各留出分中の化合物純度を上げることができる。純度が上がると蒸留塔トップ温度の変化が比較的分かり易く、各成分をきれいに分留できる。しかしながら、単位時間当たりに取り出せる留出分が少なくなる為、蒸留時間が長くなり釜液の熱履歴を増大させることになる。通常0から20の還流比をとり蒸留する。
蒸留時における加熱時間は短いほうが好ましいため、蒸留は、低沸カット用と高沸カット用の蒸留器を具備した減圧連続蒸留装置が好適である。
工程(C)で低沸点留出分は、無水酢酸、およびジケテンを含有する。低沸点留出分を集めて、更に減圧蒸留を行うことで、無水酢酸、およびジケテンとして回収使用することも可能である。
減圧蒸留の主留出分として、2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートを得ることができる。2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートは収率80%以上で得られ、ガスクロマトグラフィー(以下GCと略す)純度99%以上、酸価0.05mgKOH/g以下の低酸価で高品質な物となる。
なお、酸価とは試料1g中に含有される遊離酸などを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で定義され、製品の酸価としては「0」に近い値が好ましい。その測定方法はJIS:K−0070「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、ヨウ素価、水酸基価及び不けん価物の試験方法」に準じる。
工程(D)
酸価を低減させることを目的とする工程(D)は、工程(B)または、工程(C)で得られた留出分の酢酸エステルを、固体塩基または酸吸着剤で処理することで行う。なお、工程(D)は工程(B)の後に行ってもよく、或いは工程(C)の後に行ってもよい。また、工程(B)の後に行い、さらに工程(C)を経て再度工程(D)を繰り返してもよい。
固体塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、または重炭酸ナトリウムなどが使用できる。酸吸着剤としては、キョーワド(製品名)、アルミナ、またはフロリジル(登録商標)などが使用できる。これら固体塩基および酸吸着剤の中で特に好ましいのは、水酸化ナトリウムである。
固体塩基および酸吸着剤の使用量は、酢酸エステル100%に対して、重量比で0.0001%から10%の範囲で用いることができる。好ましくは、0.0005%から5%、より好ましくは0.001%から3%である。10%以上を用いることも可能であるが、使用量が多いとコストが嵩み、工業的な生産において優位ではない。
通常、工程(B)、または工程(C)において使用する酢酸エステルに、固体塩基または酸吸着剤を混合、攪拌し、精製処理を行う。精製処理後の固体塩基または酸吸着剤は、ろ過もしくは遠心分離により除去される。
特に以下の様なケースに有効である。工程(A)で、ケテン反応の転化率が低くなり原料が多く残ってしまった場合、工程(C)で低沸側の酸成分を濃縮分離しきれず、製品酸価が高くなってしまう。この時、工程(C)の前、或いは後に工程(D)を入れることで、転化率が低くても高品質(低酸価)の製品を得ることができる。
工程(D)を経た2−t−ブトキシエチルアセテートおよび1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートは、純度、品質に応じて、塗料用溶剤や添加剤などとして使用することができる。
ただし、工程(C)の代わりに工程(D)を入れただけの工程では十分な酸価の低減がなされない。
工程(A)−工程(B)−工程(D)
このため、工程(D)の後にさらに工程(C)にかけることで、より高純度な2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートとすることができる。
工程(A)−工程(B)−工程(D)−工程(C)
さらに高純度な2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートを得るために、工程(D)を再度繰り返すことも可能である。
工程(A)−工程(B)−工程(D)−工程(C)−工程(D)
H−NMR:プロトン核磁気共鳴スペクトルは日本電子 FT−NMR GSX 400 (400 MHz) を用い、テトラメチルシランを内部標準として測定した。GC分析は、島津株式会社製GC14Aを用いて行なった。GC分析条件は以下の通りである。カラム:G−100(化学物質評価研究機構製、40m、内径1.2mm、膜圧3μm)、試料導入部&検出器温度:250℃、検出器レンジ:10−3、カラム温度:100℃(3分保持)→[5℃/min]→200℃(30分)、キャリアーガス:ヘリウム(20ml/min)、サンプル注入量:0.2μl。
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1] 2−t−ブトキシエチルアセテートの製造
工程(A)
メカニカル攪拌機、ケテンフィード管、コンデンサー、および温度計の付いた10Lジャケット式三つ口丸底フラスコに、2−t−ブトキシエタノール(1000.0g、8475mmol)、およびパラトルエンスルホン酸1水和物(1.6g、8.5mmol)をとり、攪拌した。ジャケットに冷却水を循環させることにより、フラスコ内の温度を20℃に設定した。酢酸分解で得られたケテンを40mmol/minの割合でフラスコ内に供給し、フラスコ内の温度が30℃以下になるよう冷却しながら、ケテン1.2当量を255分かけて供給した。熟成時間は、43分間であった。
ケテン供給終了後に得られた2−t−ブトキシエチルアセテート粗液は、1384gであった。この粗液をGC分析したところ、GC面積比で、2−t−ブトキシエチルアセテートが97.1%となり、転化率が高いものであった。また、ジケテンが0.38%、および無水酢酸が0.61%検出された。
工程(B)
釜式単蒸留装置として、メカニカル攪拌機、クライゼン管、リービッヒコンデンサー、蒸留物受器、および温度計の付いた3Lジャケット式三つ口丸底フラスコを用意し、これに、工程(A)で得られた2−t−ブトキシエチルアセテート粗液を1384g(2−t−ブトキシエチルアセテートとして1343g、8394mmol)をとった。三つ口丸底フラスコは、マントルヒーター内に設置し、400rpmで攪拌しながら、徐々に4.0kPaまで減圧を行ない、マントルヒーターで加温した。
フラスコの内温が80℃になった時、留出分が出始めた。フラスコ内温度を116℃まで上昇させ、留出分1350gを得た。触媒、高沸は釜残分として13.84gを得た。留出分は、GC分析したところ、GC面積比で2−t−ブトキシエチルアセテートが98.2%、ジケテン0.35%、および無水酢酸0.51%であった。
工程(C)
工程(B)で得られた留出分782g(2−t−ブトキシエチルアセテートとして768g、4802mmol)を25段オールダーショーの2L丸底フラスコに仕込み、減圧蒸留を行った。徐々に8.0kPaまで減圧を行ない、マントルヒーターを加温した。蒸留塔ボトム温度が108℃になった時、留出分が出始めた。留出分を1から8番に分けて分離した。1から2番目は約30mlづつ、3から4番目は約50mlづつ、以降は約200mlづつに分けて採取した。
また、1から3番目の還流比(R/D)は10とし、4から8番目の還流比は5とした。最終的には、蒸留塔ボトム温度を113℃まで上昇させて最後の留出分を得た。初期の留出分(1から3番目)は、酢酸、ジケテン、無水酢酸、および2−t−ブトキシエタノールを多く含んでいた。GC純度99%以上の2−tert−ブトキシエチルアセテートの留出分を集めたところ640.5g(4003mmol)を得た。収率は83%であった。酸価は0.041mgKOH/gであった。
H−NMR(CDCl)δ:1.20(s、9H、(CH −C)、2.06(d、3H、J=1.4Hz、CH −CO)、3.35−3.57(t、2H、J=4.7Hz、O−CH −CH)、4.15−4.18(t、2H、J=5.5Hz、CH −O−CO−CH
[実施例2] 2−t−ブトキシエチルアセテートの製造:薄膜蒸留器を使用した場合
工程(A)
実施例1と同様の装置を用いた。2−t−ブトキシエタノール(1500.0g、12712mmol)、およびパラトルエンスルホン酸1水和物(2.42g、12.8mmol)を装置にとり、実施例1と同じ方法で反応させ、2−t−ブトキシエチルアセテート粗液2076gを得た。GC分析したところ、GC面積比で、2−t−ブトキシエチルアセテートが97.9%となり、転化率が高いものであった。また、ジケテンが0.27%、および無水酢酸が0.08%検出された。
工程(B)
減圧度4.0kPa、熱媒温度80℃に設定した薄膜蒸留器に、工程(A)で得られた2−t−ブトキシエチルアセテート粗液1500g(2−t−ブトキシエチルアセテートとして1469g、9178mmol)を連続的に供給し、高沸カットを行った。低沸留出分として1241g得た。高沸は再度薄膜蒸留器に供給し、低沸留出分としてさらに185gを得た。釜残分として触媒、高沸58gを得た。低沸留出分として計1426gが得られ、釜残分として触媒、高沸58gが得られた。低沸留出分は、GC分析したところGC面積比で2−t−ブトキシエチルアセテートが98.8%、ジケテン0.29%、および無水酢酸0.08%であった。
工程(C)
薄膜蒸留で得られた低沸留出分800g(2−t−ブトキシエチルアセテートとして784g、4900mmol)について、実施例1と同様な方法で、25段オールダーショーを用いた減圧蒸留を行った。GC純度99%以上の2−tert−ブトキシエチルアセテートの留出分を集めたところ、658.6g(4116mmol)を得ることができた。収率は84%であった。酸価は0.040mgKOH/gであった。
H−NMR(CDCl)δ:1.20(s、9H、(CH −C)、2.06(d、3H、J=1.4Hz、CH −CO)、3.35−3.57(t、2H、J=4.7Hz、O−CH −CH)、4.15−4.18(t、2H、J=5.5Hz、CH −O−CO−CH
[実施例3] 1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの製造
工程(A)
メカニカル攪拌機、ケテンフィード管、コンデンサー、および温度計の付いた10Lジャケット式三つ口丸底フラスコに、1−(t−ブトキシ)−2−プロパノール(1000g、7576mmol)、パラトルエンスルホン酸1水和物(1.4g、7.5mmol)をとり、攪拌した。ジャケットに冷却水を循環させることにより、フラスコ内の温度を20℃に設定した。酢酸分解で得られたケテンを40mmol/minの割合でフラスコ内に供給し、フラスコ内の温度が30℃以下になるよう冷却しながら、ケテン1.3当量を245分かけて供給した。熟成時間は、55分間であった。
ケテン供給終了後に得られた1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテート粗液は、1328gであった。この粗液をGC分析したところ、GC面積比で、1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートが98.4%となり、転化率が高いものであった。また、ジケテンが0.52%、および無水酢酸が0.01%検出された。
工程(B)
減圧度4.0kPa、熱媒温度85℃に設定した薄膜蒸留器に、工程(A)で得られた1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテート粗液1000g(1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートとして984g、5655mmol)を連続的に供給し、高沸カットを行った。低沸留出分として880g得た。高沸は再度薄膜蒸留器に供給し、低沸留出分としてさらに79g得た。釜残分として触媒、高沸20gを得た。低沸留出分として計959gが得られ、釜残分として触媒、高沸20gが得られた。低沸留出分は、GC分析したところGC面積比で1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートが98.6%、ジケテン0.48%、および無水酢酸0.01%であった。
工程(C)
薄膜蒸留で得られた低沸留出分800g(1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートとして789g、4534mmol)について、実施例1と同様な方法で、25段オールダーショーを用いた減圧蒸留を行った。徐々に7.2kPaまで減圧を行ない、マントルヒーターを加温した。蒸留塔ボトム温度が102℃になった時、留出分が出始めた。留出分を1から8番に分けて分離した。1から2番目は約30mlづつ、3から4番目は約50mlづつ、以降は約210mlづつに分けて採取した。
また、1から3番目の還流比(R/D)は10とし、4から8番目の還流比は5とした。又、4番目から減圧度を4.0kPaとした。最終的には、蒸留塔ボトム温度を119℃まで上昇させたところで最後の留出液を得た。初期の留出分(1から3番目)は、酢酸、ジケテン、無水酢酸、および1−(t−ブトキシ)−2−プロパノールを多く含んでいた。GC純度99%以上の1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの留出分を集めたところ1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテート710.1g(4081mmol)を得られた。収率は90%であった。酸価は0.044mgKOH/gであった。
H−NMR(CDCl)δ:1.18(s、9H、(CH −C)、1.23(d、3H、J=6.3Hz、CH −CH)、2.04(s、3H、CH −CO)、3.31−3.43(m、2H、O−CH −CH)、4.93−4.98(m、1H、CH−CH−CH
[実施例4] 2−t−ブトキシエチルアセテート:低転化率で工程(D)を追加した場合
工程(A)
実施例1と同じ装置を用いた。2−t−ブトキシエタノール(1500.0g、12712mmol)、およびパラトルエンスルホン酸1水和物(2.42g、12.8mmol)を用いてアセチル化を行った。酢酸分解で得られたケテンは37mmol/minの割合でフラスコ内に供給し、フラスコ内の温度を30℃以下になるよう冷却しながら、ケテン0.7当量を240分かけて導入した。今回は、ケテンが1当量に満たないため、熟成時間はとらなかった。
ケテン供給終了後に得られた2−t−ブトキシエチルアセテート粗液は、1886gであった。この粗液をGC分析したところ、GC面積比で、2−t−ブトキシエチルアセテートが74.6%となり、転化率が低いものであった。ジケテンが0.04%、および無水酢酸が0.19%が検出された。また、低い転化率のため、原料2−t−ブトキシエタノールは21.9%含まれていた。
工程(B)
実施例1と同様に、釜式単蒸留装置として、メカニカル攪拌機、クライゼン管にリービッヒコンデンサー、蒸留物受器、および温度計の付いた3Lジャケット式三つ口丸底フラスコを用意し、これに、工程(A)で得られた2−t−ブトキシエチルアセテート粗液を1866g(2−t−ブトキシエチルアセテートとして1391g、8697mmol)とった。三つ口丸底フラスコは、マントルヒーター内に設置し、400rpmで攪拌しながら、徐々に4.0kPaまで減圧を行ない、マントルヒーターを加温した。
フラスコの内温が74℃になった時、留出分が出始めた。フラスコ内温度を92℃まで上昇させ、留出分1774gを得た。触媒、高沸は釜残分として100g得た。留出分は、GC分析したところ、GC面積比で2−t−ブトキシエチルアセテートが74.0%、ジケテンが0.03%、無水酢酸0.10%、および原料の2−t−ブトキシエタノールが24.2%であった。
工程(D)
工程(B)で得られた留出分1774g(2−t−ブトキシエチルアセテートとして1313g、8205mmol)に5%水酸化ナトリウム水溶液を444g(2−t−ブトキシエチルアセテート量に対する水酸化ナトリウム量の重量比は1.7%)とり、30分攪拌、30分静置後、水相を除去した。この操作を2回繰り返した後、さらに油相に飽和食塩水を400gとり、同様に2回洗浄した。
洗浄後の2−t−ブトキシエチルアセテート粗液は1778gであった。
工程(C)
工程(D)で酸価低減処理をした2−t−ブトキシエチルアセテート粗液861g(2−t−ブトキシエチルアセテートとして520g、3247mmol)を25段オールダーショーの2L丸底フラスコにとり、減圧蒸留を行った。徐々に8.0kPaまで減圧を行ない、マントルヒーターを加温した。蒸留塔ボトム温度が96℃になった時、留出分が出始めた。留出分を1から8番に分けて分離した。1から2番目は約100mlづつ、3番目は約200ml、4番目は約100ml、5番目は約50ml、6番目は約100ml、以降は約200mlづつに分けて採取した。
また、1から5番目の還流比(R/D)は10とし、留出分6から8番目の還流比は5とした。最終的には、蒸留塔ボトム温度を127℃まで上昇させたところで最後の留出分を得た。初期の留出分(1から4番目)は、酢酸、ジケテン、無水酢酸、および2−t−ブトキシエタノールを多く含んでいた。GC純度99%以上の2−t−ブトキシエチルアセテートの留出分を集めたところ426.0g(2663mmol)を得た。収率は82%であった。本実施例では、工程(A)での転化率が低く、多量の原料2−t−ブトキシエタノールが含まれていたにも関わらず、酸価は0.020mgKOH/gと低いものであった。
H−NMR(CDCl)δ:1.20(s、9H、(CH −C)、2.06(d、3H、J=1.4Hz、CH −CO)、3.35−3.57(t、2H、J=4.7Hz、O−CH −CH)、4.15−4.18(t、2H、J=5.5Hz、CH −O−CO−CH
[実施例5] 2−t−ブトキシエチルアセテートの製造:硫酸触媒の場合
工程(A)
メカニカル攪拌機、ケテンフィード管、コンデンサー、および温度計の付いた10Lジャケット式三つ口丸底フラスコに、2−t−ブトキシエタノール(1000.0g、8475mmol)、および硫酸(1.6g、8.5mmol)をとり、攪拌した。ジャケットに冷却水を循環させることにより、フラスコ内の温度を20℃に設定した。酢酸分解で得られたケテンを40mmol/minの割合でフラスコ内に供給し、フラスコ内の温度が30℃以下になるよう冷却しながら、ケテン1.2当量を255分かけて供給した。熟成時間は43分間であった。
ケテン供給終了後に得られた2−t−ブトキシエチルアセテート粗液は、1386gであった。この粗液をGC分析したところ、GC面積比で、2−t−ブトキシエチルアセテートが92.5%となり、転化率が高いものであった。また、ジケテンが0.74%、および無水酢酸が1.13%検出された。
工程(B)
釜式単蒸留装置として、メカニカル攪拌機、クライゼン管、リービッヒコンデンサー、蒸留物受器、および温度計の付いた3Lジャケット式三つ口丸底フラスコを用意し、これに、工程(A)で得られた2−t−ブトキシエチルアセテート粗液を1386g(2−t−ブトキシエチルアセテートとして1283g、8016mmol)とった。三つ口丸底フラスコは、マントルヒーター内に設置し、400rpmで攪拌しながら、徐々に4.0kPaまで減圧を行ない、マントルヒーターを加温した。
フラスコの内温が80℃になった時、留出分が出始めた。フラスコ内温度を116℃まで上昇させ、留出分1331gを得た。触媒、高沸は釜残分として41.91g得た。留出分は、GC分析したところ、GC面積比で2−t−ブトキシエチルアセテートが96.0%、ジケテン0.47%、および無水酢酸0.71%であった。
工程(C)
工程(B)で得られた留出分780g(2−t−ブトキシエチルアセテートとして749g、4681mmol)を25段オールダーショーの2L丸底フラスコにとり、減圧蒸留を行った。徐々に8.0kPaまで減圧を行ない、マントルヒーターを加温した。蒸留塔ボトム温度が108℃になった時、留出分が出始めた。留出分を1から8番に分けて分離した。1から2番目は約30mlづつ、3から4番目は約50mlづつ、以降は約200mlづつに分けて採取した。
また、1から3番目の還流比(R/D)は10とし、留出分4から8番目の還流比は5とした。最終的には、蒸留塔ボトム温度を113℃まで上昇させたところで最後の留出分を得た。初期の留出分(1から3番目)は、酢酸、ジケテン、無水酢酸、および2−t−ブトキシエタノールを多く含んでいた。GC純度99%以上の2−tert−ブトキシエチルアセテートの留出分を集めたところ614.1g(3838mmol)を得ることができた。収率は82%であった。酸価は0.046mgKOH/gであった。
1H−NMR(CDCl)δ:1.20(s、9H、(CH−C)、2.06(d、3H、J=1.4Hz、CH−CO)、3.35−3.57(t、2H、J=4.7Hz、O−CH−CH)、4.15−4.18(t、2H、J=5.5Hz、CH−O−CO−CH
[比較例1] 2−t−ブトキシエチルアセテート:工程(B)なしの場合
工程(C)
実施例1の工程(A)で得られた2−t−ブトキシエチルアセテート粗液を、工程(B)を通さず、反応粗液のまま800g(2−t−ブトキシエチルアセテートとして777g、4856mmol)を25段オールダーショーの2L丸底フラスコにとり、減圧蒸留を行った。徐々に8.0kPaまで減圧を行ない、マントルヒーターを加温した。フラスコの内温が108℃になった時、留出分が出始めた。留出分を1から8番に分けて分離した。1から2番目は約30mlづつ、3から4番目は約50mlづつ、以降は約210mlづつに分けて採取した。
また、1から3番目の還流比(R/D)は10とし、留出分4から8番目の還流比は5とした。最終的には、フラスコ内温度を116℃まで上昇させたところで最後の留出分を得た。初期の留出分(1から3番目)は、酢酸、ジケテン、無水酢酸、および2−t−ブトキシエタノールを多く含んでいた。GC純度99%以上の2−t−ブトキシエチルアセテートの留出分を集めたところ643.1g(4019mmol)を得ることができた。収率は83%であった。しかし、酸価は0.14mgKOH/gと高く、そのため品質の劣るものであった。
[比較例2] 2−t−ブトキシエチルアセテート:工程(B)で釜温度が高い場合
工程(A)
実施例1と同様にして工程(A)を行い、2−t−ブトキシエチルアセテート粗液1385g(2−t−ブトキシエチルアセテートとして1340g、8379mmol)を得た。この粗液は、GC面積比で、2−t−ブトキシエチルアセテートが96.8%となり、転化率が高いものであった。また、ジケテンが0.18%、および無水酢酸が0.24%検出された。
工程(B)
工程(B)において、減圧度9.3kPaとした以外は実施例1と同じ装置、同じ方法で、単蒸留を行った。フラスコの内温が101℃になった時、留出分が出始めた。フラスコ内温度を160℃まで上昇させ、留出分として1316gを得た。触媒、高沸は釜残分として13.2g得られた。留出分は、GC分析したところ、GC面積比で2−t−ブトキシエチルアセテートが97.2%、ジケテン0.48%、および無水酢酸0.45%であった。
工程(C)
工程(B)で得られた留出分778g(2−t−ブトキシエチルアセテートとして756g、4725mmol)を25段オールダーショーの2L丸底フラスコに仕込み、実施例1と同様に減圧蒸留を行った。最終的にGC純度99%以上の2−tert−ブトキシエチルアセテートの留出分を集めたところ597.4g(3734mmol)を得ることができた。収率は79%であり、低いものであった。酸価も0.068mgKOH/gと高く、そのため品質の劣るものであった。

Claims (3)

  1. 2−t−ブトキシエタノールまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロパノールを酸触媒存在下、ケテンと反応させ酢酸エステルを得る工程(A)と、工程(A)で生成した酢酸エステルを、150℃を超えない釜温度で高沸カットして触媒を除去する工程(B)と、工程(B)で得られた酢酸エステルを減圧蒸留する工程(C)を有する、2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの製造方法。
  2. 酸触媒がパラトルエンスルホン酸である請求項1記載の2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの製造方法。
  3. 工程(B)の後に、固体塩基または酸吸着剤を用いて酢酸エステルの酸価を低減させる工程(D)をさらに有する請求項1記載の2−t−ブトキシエチルアセテートまたは1−(t−ブトキシ)−2−プロピルアセテートの製造方法。
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