JP5001096B2 - シート支持構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車体フレームで燃料タンクを支持し、この燃料タンクにはタンクカバーが設けられ、このタンクカバーと燃料タンク後方に位置するシートを締結する車両のシート支持構造に関する。
車体フレームで燃料タンクを支持し、この燃料タンクの側方にフックを設け、このフックを、燃料タンク後方で車体フレームに支持されるシートの底板に係止した車両が知られている(特許文献1参照)。
特開昭60-222377号公報
上述した従来の構成では、シートの底板をボックス状に凹ませ、このボックス部分に開口を設け、この開口に、車体側が備えるフックを挿入して開口周辺の壁に引っ掛けてシート前端の左右移動を規制するため、フックの挿入位置の正確性が必要になる。しかし、シート取り付けの際には、フックやフックを挿入する開口がシートに隠れて外からは見えないため、フックを開口に挿入することが難しく、シートを取り付け難くしていた。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、シート前端の移動を規制可能で、かつ、シートの取り付けが容易なシート支持構造を提供することにある。
本発明は、車体フレーム(4)で燃料タンク(28)を支持し、この燃料タンク(28)にはタンクカバー(31)が設けられ、このタンクカバー(31)と燃料タンク(28)後方に位置するシート(29)を締結する車両のシート支持構造において、前記タンクカバー(31)の後部には、車体後方に延出するフランジ(85)を備え、前記シート(29)の前部には、該フランジ(85)に締結するための上方が開口した略U字状の締結溝(95)を備え、前記締結溝(95)は、左右に延出するシート前端(29a)の内側に設けられ、前記締結溝(95)の車体内方側の足(97)は、シート締結部となる前記フランジ(85)に対して車体内方側に入り込むように傾斜し、前記フランジ(85)の下面は、車体後方に行くに従って幅狭になると共に、後ろ上がりに傾斜する角度で延在することを特徴とする。
この発明によれば、タンクカバーの後部には、車体後方に延出するフランジを備え、シートの前部には、該フランジに締結するための上方が開口した締結溝を備えるので、フランジを締結溝内に開口から案内することでフランジを挟持でき、シートの移動を規制すると共に、シートの取り付けを容易にすることができる。また、締結溝は、左右に延出するシート前端の内側に設けられるので、締結溝を車体外観に露出させることなくシートの取り付けを容易にでき、締結溝をシート底板に一体的に設けることができる。
この場合において、前記締結溝(95)の車体内方側の足(97)は、前記締結溝(95)の車体外方側の足(96)に比して短い長さに形成されるとともに、上方に向かって略垂直に延びる基部(97a)と、この基部(97a)の上端から屈曲して車体内方側に傾斜して上方へ延びる傾斜部(97b)とを備えてこれら足(97,96)の間の隙間が上方に行くほど大きくなることが好ましい。
この場合において、前記フランジ(85)は、前記タンクカバー(31)から車体外側に傾斜した角度で下方へ延びる傾斜板部(86)と、この傾斜板部(86)の下端から車体内側へ屈曲して略水平に延びる上側水平板部(87)と、この上側水平板部(87)の車体内側端部から下方へ屈曲して下方へ略垂直に延びる垂直板部(88)と、この垂直板部(88)の下端から車体外側へ屈曲して略水平に延びる下側水平板部(89)とを備え、前記下側水平板部(89)の幅W1が上側水平板部(87)の幅W2よりも小さく形成されることが好ましい。
この場合において、前記締結溝の車体内方側の足は、前記シート締結部のフランジに対して車体内方側に入り込むように傾斜していることが好ましい。この構成によれば、締結溝の車体内方側の足は、シート締結部のフランジに対して車体内方側に入り込むように傾斜しているので、この傾斜によりフランジを締結溝内に円滑に案内することができ、シートの取り付けを容易にすることができる。
本発明では、タンクカバーの後部には、車体後方に延出するフランジを備え、シートの前部には、該フランジに締結するための上方が開口した締結溝を備えるので、フランジを締結溝内に開口から案内することでフランジを挟持でき、シートの移動を規制すると共に、シートの取り付けを容易にすることができる。
また、締結溝は上方が開口する略U字状の締結溝であるため、フランジを締結溝内に開口から案内することでフランジを挟持でき、シートの移動を規制すると共に、シートの取り付けを容易にすることができる。
また、締結溝は、左右に延出するシート前端の内側に設けられるので、締結溝を車体外観に露出させることなくシートの取り付けを容易にでき、締結溝をシート底板に一体的に設けることができる。
また、締結溝の車体内方側の足は、シート締結部のフランジに対して車体内方側に入り込むように傾斜しているので、この傾斜によりフランジを締結溝内に円滑に案内することができ、シートの取り付けを容易にすることができる。
以下、本発明の一実施形態を添付した図面を参照して説明する。なお説明中、前後左右及び上下といった方向の記載は車体に対してのものとする。また、図中矢印FRは車体前方を、矢印Rは車体右方を、矢印UPは車体上方をそれぞれ示している。
図1は本発明の実施形態に係る鞍乗り型車両の側面図であり、図2はその上面図である。この鞍乗り型車両1は、ATV(All Terrain Vehicle:不整地走行車両)に分類される4輪車両であり、小型軽量に構成された車体の前後に比較的大径の左右の前輪2及び後輪3を備え、最低地上高を十分に確保して不整地の走破性を高めている。
鞍乗り型車両1は、図1に示すように、車体フレーム4を有し、この車体フレーム4の前部にフロントサスペンション50を介して左右の前輪2が懸架され、車体フレーム4の後部にリヤサスペンション59を介して左右の後輪3が懸架される。
車体フレーム4の略中央部には、複数のエンジンマウント70を介してエンジン(水冷エンジン)5が支持される。このエンジン5のシリンダ部7の後部には、スロットルボディ20が接続され、このスロットルボディ20の後部にはコネクティングチューブ21を介してエアクリーナケース22が接続され、これらがエンジン5の吸気系を構成している。また、エンジン5のシリンダ部7の前方には、排気管23が接続され、この排気管23は、図2に示すように、シリンダ部7の前方に延びた後に車体右方に屈曲して後方に向けて折り返し、シリンダ部7の右側方を後方に延びた後、車体後部に配置されたマフラー24に接続され、これらがエンジン5の排気系を構成している。なお、図2において、符号11は、シフトペダルであり、符号12はブレーキペダルであり、符号13、13は足置きステップであり、14はバッテリである。
図1及び図2に示すように、エンジン5の前方には、エンジン冷却用のラジエータ25が配設されている。このラジエータ25は、ゴム製の冷却水配管を介してエンジン5に配管接続され、エンジン5から供給された冷却水を車両前方からの走行風により冷却してエンジン5に戻す。ラジエータ25の背面には、送風ファン25a(図1)が配設され、この送風ファン25aにより外気を強制的にラジエータ25に流して冷却水を冷却するように構成されている。また、ラジエータ25の下方(本例では左側下方)には、冷却水を蓄えるリザーバタンク26(図1)が配設され、ゴム製の冷却水配管を介してラジエータ25に接続されている。
エンジン5は、クランクシャフト等を軸支するクランクケース6と、このクランクケース6の上に連結されるシリンダ部7とを備えている。クランクケース6は変速機を収容する変速機ケースを兼ね、クランクケース6は、クランクケース6内の変速機に連結された出力軸を有し、この出力軸の回動が図示せぬチェーン伝動機構を介して車体フレーム4後部のファイナルギヤケース(図示略)に伝達され、このファイナルギヤケースの左右に延びるドライブシャフト10(図2)を介して後輪3が回動駆動される。
上記車体フレーム4の上部における車幅方向中央部には、図1に示すように、前側から順に、前輪2、2を転舵するステアリングシャフト27、燃料タンク28及び鞍乗り型のシート29がそれぞれ配設されている。ステアリングシャフト27の上端部には、燃料タンク28の斜め上前方に位置するバー型のハンドル30が取り付けられ、ステアリングシャフト27の下端部が操舵機構に連結され、この操舵機構を介してハンドル30により前輪2、2が操舵される。
燃料タンク28は、エンジン5の上方に配置され、この燃料タンク28内の燃料が図示せぬ燃料ポンプを介してスロットルボディ20に配設されたインジェクタ(図示略)に供給され、このインジェクタによりエンジン5内へ燃料が供給される。
鞍乗り型のシート29は、車体前後方向に延出し、その前端が燃料タンク28の上方を覆うタンクカバー31に固定されると共に、車体フレーム4に固定される。
また、車体フレーム4には、車体を覆う樹脂製の車体カバー32と、両前輪2をその上方から後方に渡って覆う樹脂製のフロントフェンダ33と、両後輪3をその前方から上方に渡って覆う樹脂製のリヤフェンダ34とが取り付けられ、車体カバー32は、車体前部を覆うトップカバー35と、車体前部の左右を覆う左右一対のサイドカバー(図示略)とを備えている。
車体フレーム4は、図2に示すように、車体のほぼ前後方向に延出する左右一対のメインフレーム4a、4aと、メインフレーム4a、4aの後部に連結される左右一対のサブフレーム60、60とを有している。メインフレーム4a、4aは、複数種の鋼材(円筒状のパイプフレーム(丸パイプフレーム))を溶接等により結合して形成され、左右一対のアッパパイプ41、41及び左右一対のロアパイプ42、42を主として左右一対の閉ループ構造体を形成し、これらを複数のクロスメンバ4f、4m、4r等を介して結合することで、車幅方向中央部において前後に長いボックス構造を形成している。
左右一対のアッパパイプ41、41は、図1及び図2に示すように、その前端から斜め上方、かつ、互いの間隔を徐々に拡げながら車体後方へ延びる前部傾斜部41a、41aと、前部傾斜部41a、41aの後端から緩やかな傾斜で斜め下方、かつ、略一定の間隔で車体後方へ延びる中間部41b、41bと、中間部41b、41bの後端から中間部41b、41bより急傾斜で斜め下方、かつ、略一定の間隔で車体後方へ延びる後部傾斜部41c、41cとを有し、各々1本の鋼管を曲げて形成されている。
また、アッパパイプ41、41の中間部41b、41bと後部傾斜部41c、41cとの境には、左右一対のサブフレーム60、60が各々連結され、各サブフレーム60、60は、後方へ略水平に延びた後、車体後方で下方へ屈曲して側面視コ字状に曲げられ、その先端が左右一対のロアパイプ42、42に連結される。
各サブフレーム60、60の水平に延びる部分60a、60aはシートレールを兼ねており、この部分60a、60aには、シート29を支持する支持部材を兼ねる上述のクロスメンバ4m、4rが配設される。
左右一対のロアパイプ42、42は、図1に示すように、アッパパイプ41、41の下方を車体前後方向に各々延出し、アッパパイプ41、41の前部傾斜部41a、41aに連結されて車体後方へ略水平に延びる水平部42a、42aと、水平部42a、42aの後端部から斜め上方に延び、その後端がサブフレーム60、60に連結される後部傾斜部42b、42bとを有し、各々1本の鋼管を曲げて形成されている。
左右一対のサブフレーム60、60は、ロアパイプ42、42の水平部42a、42aと後部傾斜部42bとの境にブラケット71を介して各々連結され、このサブフレーム60間に後輪用のファイナルギヤケース(図示略)が支持される。
また、サブフレーム60とロアパイプ42の後部傾斜部42bには、左右一対のリヤサブフレーム44、44が配設され、このリヤサブフレーム44及びサブフレーム60には、リヤサスペンション59を構成するアッパアーム61(図2)、ロアアーム62(図2)及びリヤクッション63(図1)を支持するアッパアーム支持部64、64、ロアアーム支持部65、65及びクッション支持部66が設けられ、これらによってリヤサスペンション59の各構成部品を支持している。
また、図1に示すように、車体前部のアッパパイプ41とロアパイプ42の間には、アッパパイプ41の前端近傍から車体後方へ延びる左右一対のフロントフレーム46、46が設けられる。これらフロントフレーム46、ロアパイプ42の水平部42a及びアッパパイプ41の前部傾斜部41aには、フロントサスペンション50を構成するアッパアーム51(図2)、ロアアーム52(図2)及びフロントクッション53(図1)を支持するアッパアーム支持部54、54、ロアアーム支持部55、55及びクッション支持部56、56が設けられ、これらによって、フロントサスペンション50の構成部品を支持している。本構成では、クッション支持部56、56については、アッパパイプ41、41の前部傾斜部41a、41a間に配設されたクロスメンバ4fに形成されている。
また、フロントフレーム46、46は、アッパアーム支持部54の後方で屈曲してこの屈曲部46aを境にして斜め下方に延びてロアパイプ42の水平部42aに連結される。また、フロントフレーム46の屈曲部46aとアッパパイプ41(前部傾斜部41a)との間には、左右のアッパパイプ41から下方へ延びる左右一対のダウンチューブ(フロントアッパフレームとも言う)47、47が連結されると共に、上記屈曲部46a、46aとロアパイプ42、42との間にも、左右のロアパイプ42、42から延びる左右一対のフロントロアフレーム48、48が連結され、これらによってトラス構造を形成してフロント周りのフレーム剛性を高めている。ここで、上述のダウンチューブ47とアッパパイプ41とは、図1に示すように略三角形状の板部材からなるブラケット49を介して接合され、このブラケット49により接合面積を増やしてダウンチューブ47とアッパパイプ41との連結強度を高くしている。
また、上述の左右一対のダウンチューブ47、47には、ラジエータグリル80が取り付けられている。ラジエータグリル80は、ダウンチューブ47、47及びステアリングシャフト27とラジエータ25との間に延在し、ラジエータ25の前面を適切に保護する。このラジエータグリル80は、左右対称形状の左右一対のラジエータグリル80R、80Lから構成され、ラジエータグリル80Rによりラジエータ25の右側前面を覆い、ラジエータグリル80Lによりラジエータ25の左側前面を覆う。
図3はタンクカバー31を周辺構成と共に示す上面図であり、図4はタンクカバー31を周辺構成と共に車体後方から見た図であり、図5(A)はタンクカバー31の上面図であり、図5(B)はタンクカバー31の側面図であり、図5(C)は図5(B)のC−C線断面図である。なお、図3はシート29の右半分を後述する締結溝95を除いて省略した図である。
タンクカバー31は、燃料タンク28を上方から覆う略お椀形状を有し、樹脂材料等で一体成型される。なお、図3中、符号28aは燃料タンク28を車体側に保持するバンドである。
このタンクカバー31は、左右側縁が略水平に延びる前半部31aと、前半部31aの後方に連なり左右側縁が後ろ上がりに斜めに傾斜する後半部31bとを備えて構成され、図5(A)及び図5(B)に示すように、タンクカバー31の前端下方、中間部下方、後部下方及び上部の左右には、開口孔31d、31e、31f、31gが各々形成され、これら開口孔31d〜31gの外側から複数のマウントボルト(図示略)が通されてタンクカバー31が車体側(車体フレーム4及び燃料タンク28等)に締結される。
タンクカバー31の後半部31bには、図5(B)に示すように、左右側縁から下方に延出して車体後方に延在する左右一対のフランジ85、85が一体に形成される。この左右一対のフランジ85、85は左右対称形状であるため、以下、一方のフランジ85を詳述する。
フランジ85は、シート29を締結するシート締結部として機能するものであり、図5(C)に示すように、タンクカバー31から下方へ延びて略コ字状に屈曲する屈曲断面に形成され、これにより、単純な平板形状にした場合よりも断面係数を大きくし、その剛性を高めている。
より具体的には、フランジ85は、タンクカバー31から車体外側にやや傾斜した角度で下方へ延びる傾斜板部86と、傾斜板部86の下端から車体内側へ屈曲して略水平に延びる上側水平板部87と、この上側水平板部87の端部から下方へ屈曲して下方へ略垂直に延びる垂直板部88と、この垂直板部88の下端から車体外側へ屈曲して略水平に延びる下側水平板部89とを備えており、下側水平板部89の幅W1が上側水平板部87の幅W2よりも小さく形成される(W1<W2)。
下側水平板部89は、図5(B)に示すように、側面視で略水平に近い角度で後ろ上がりに傾斜する角度で延在すると共に、図3に示すように、車体後方に行くに従って徐々に幅狭となり、その後端が垂直板部88の表面に滑らかにつながる。
また、上側水平板部87は、図5(B)に示すように、側面視で、下側水平板部よりも急角度で後ろ上がりに傾斜する角度で延在し、これによって、上側水平板部87と下側水平板部89とが後方に行くほど上下に離れ、このフランジ85の後端が車体上下に延びる細長い板形状となる(図3参照)。
このフランジ85には、シート29に設けられた締結溝95、95(図4参照)が締結される。図6はシート29の斜視図であり、図7はシートの断面図であり、図8はシート29を裏側から見た図である。
図6及び図7に示すように、シート29は、シートフレームとして機能するシート底板91と、シート表皮92と、シート表皮92とシート底板91との間に配置されるクッション材93とを備え、シート前端29a、29aが燃料タンク28の左右に延出するように二股に分かれている。
シート底板91は、樹脂材等の剛性材料により一体に形成され、タンクカバー31に沿って後ろ下がりに緩やかに傾斜する前部傾斜部91aと、前部傾斜部91aの左右からタンクカバー31の左右側面に沿って延出する左右一対の前端部91b、91bと、前部傾斜部91aの後端から後方へ延出する後部延出部91cとを備えている。
前部傾斜部91aには、ゴム等の弾性材からなるブッシュ91a1が取り付けられ、このブッシュ91a1を介してタンクカバー31の上面に当接し、このブッシュ91a1によりシート29のがたつきを防止する。
後部延出部91cには、図7及び図8に示すように、当該後部延出部91cの前部下方から前方に延びてサブフレーム60、60(図2)に設けられたラバー(図示略)に係止する左右一対のフック91c1、91c1と、略中間部から下方に突出してサブフレーム60、60間のクロスメンバ4m(図2)に当接する左右一対の支持用ラバー91c2、91c2と、後部から下方に突出してサブフレーム60、60間のクロスメンバ4r(図2)に設けられた左右一対のマウントラバーに挿通される左右一対のガイドピン91c3、91c3と、クロスメンバ4rに設けられたロック機構(図示略)に係止するストッパ機構91c4とを備えている。なお、図7及び図8では、これらフック91c1、91c1、シート支持用ラバー91c2、91c2及びガイドピン91c3、91c3の片側だけが示される。
ストッパ機構91c4は、シート底板91に回動支持されたストッパ91c5を図示せぬ付勢部材によりロック機構にロックする方向へ付勢することで、ストッパ91c5がロック機構にロックし、このストッパ91c5から延びるレバー91c6が手動操作されることによってストッパ91c5のロックが解除される。なお、図8中、符号94は、シート29と車体側との間の隙間を閉塞するためのシールラバーである。
シート底板91の左右一対の前端部91b、91bの内側には、タンクカバー13の左右のフランジ85に締結するタンクカバー締結部として機能する締結溝95、95(図6乃至図8)が各々形成される。これら締結溝95,95は左右対称形状であるため、以下、一方の締結溝95を説明する。
図9(A)は締結溝95の断面図であり、図9(B)は締結溝95とフランジ85の締結状態を示す図である。図9(A)に示すように、締結溝95は、上方が開口する略U字状の締結溝に形成され、左右一対の足部96、97と、この足部96、97の下端をつなぐ連結部98とを備えて構成される。左右一対の足部96、97のうち車体外方側の足部96は、シート前端29aの内側面につながり、車体内側の面96aが上方に向かって車体外側に緩やかに傾斜する傾斜面に形成されている。
車体内方側の足部97は、車体外方側の足部96に比して短い長さに形成されており、上方に向かって略垂直に延びる基部97aと、この基部97aの上端から屈曲して車体内方側に傾斜して上方へ延びる傾斜部97bとを備え、これによって締結溝95の足部97と足部96との間の隙間(溝間隔)が上方に行くほど大きくなるように形成されている。
この種の車両でシートを取り付ける場合、シートを車体フレーム上方にて車体前方に移動して取り付けている。この場合、シートの取り付けを行う作業者は、目視でシートの前後中心線を車体の前後中心線に略合わせ、その状態で車体前側にシートをずらすことは容易に行うことができるものの、従来はシートの締結部を車体側のシート締結部の位置に合わせるのが困難であった。
本実施形態でも、作業者がシート29の前後中心線を車体の前後中心線に略合わせてシート29を前方に移動させる点は同じであるが、本実施形態では、シート29の締結部である締結溝95が上方に開口する略U字状であり、車体側のシート締結部がタンクカバー31に設けたフランジ85であるため、シート29を車体前方に移動した際に、このフランジ85を締結溝95内に案内することができる。
より詳述すると、締結溝95の車体外方側の足部96が、車体内方側の足部97よりも上方に延出するので、フランジ85が締結溝95の車体外方側の足部96の内側に案内され、さらに、車体内方側の足部97がフランジ85に対して車体内方側に入り込むように傾斜しているので、フランジ85が締結溝95内に円滑に案内される。
この場合、フランジ85の下側水平板部89が、図3に示すように車体後方に行くに従って幅狭になると共に、図5(B)に示すように後ろ上がりに傾斜する角度で延在するので、フランジ85がより締結溝95内に誘い込まれやすくなり、シート29が更に前方に移動されると、図9(B)に示すように、フランジ85の下縁(下側水平板部89)が締結溝95の下部をつなぐ連結部98に当接し、このフランジ85の下縁に沿って締結溝95が下方へ移動して、シート前端29aを浮き上がらせることなく、シート29が適切な支持位置に案内される。
また、フランジ85の上側水平板部87が側面視で急角度に後ろ上がりに傾斜する角度で延在するので、この上側水平板部87が締結溝95内に入り込み(図9(B)参照)、締結溝95がフランジ85を左右から挟持する。これによって、シート前端29aの左右移動が規制されると共に、フランジ85の下縁(下側水平板部89)が締結溝95に当接するので、シート前端29aの浮き上がりも防止される。
このようにしてシート29を前方に移動すると、締結溝95がフランジ85を挟持すると共に、シート29の左右一対のフック91c1、91c1(図7)が車体側に係止してそれ以上前方への移動が規制され、シート29後部のストッパ機構91c4(図7)を車体側のロック機構にロックさせることにより、シート29全体が車体側に固定される。
本実施の形態では、タンクカバー31には、車体後方に延出するフランジ85を設け、シート29には、フランジ85に締結するための上方が開口した締結溝95を設けたので、シート29を前方に移動した際に、フランジ85を締結溝95内に開口から案内することでフランジ85を挟持でき、したがって、締結溝95によってシート前端29aの左右移動を規制すると共に、シート29の取り付けを容易にすることができる。
また、本構成では、締結溝95の車体内方側の足部97がフランジ85に対して車体内方側に入り込むように傾斜しているので、この傾斜によりフランジ85を締結溝95内に円滑に案内することができ、シート29の取り付けを容易にすることができる。
また、本構成では、左右に延出するシート前端29aの内側に締結溝95を設けているので、締結溝95を車体外観に露出させることなくシート29の取り付けを容易にでき、また、この締結溝95をシート底板91に一体的に設けることができ、シート底板91との一体成型が可能であり、仮に別体で設ける場合もシート29への取り付けが容易である。
上記ATV車両1において、変速機の変速比を変更する場合には、図2において、車体左中央に設けられたシフトペダル11が操作され、これによって1速〜5速及び後進の変速段に変速される。また、後進段に変速する場合は、図1において、車体前部のハンドル30の下方に設けられたリバースアシストレバー15を操作し、その状態でシフトペダル11を操作することによって後進段への変速が可能になる。
図10はリバースアシストレバー15をレバー支持機構100と共に示す図であり、図11はレバー支持機構100の内部構造を示す図である。
図10に示すように、レバー支持機構100は、車体フレーム4に左右一対のねじ101、101を介して連結され、リバースアシストレバー(以下、レバーという)15を横向きで回動自在に支持すると共に、リバースロック解除用のワイヤ110の一端が連結される。図11に示すように、ワイヤ110は、アウタチューブ111とアウタチューブ111内を通るインナワイヤ112とを備えて構成され、レバー支持機構100内には、レバー15の回動に応じてインナワイヤ112を巻き取る機構と、レバー15をリバースロック状態の位置(以下、リバースロック位置という。本例では時計方向6時位置)に向けて付勢する付勢ばね113とが配設される。
詳述すると、レバー支持機構100には、図11に示すように、比較的大径のワイヤドラム115が回転自在に支持され、このワイヤドラム115の中心軸115aがレバー15の一端に連結され、レバー15とワイヤドラム115とが一体に回転可能に構成されている。このワイヤドラム115は、ワイヤドラム115の周方向に沿って伸びる長溝115bを有し、この長溝115bに、インナワイヤ112の一端に設けられたタイコ(円柱形の金具)112aを保持することによってインナワイヤ112の一端が連結される。このように、長溝115bにタイコ112aを保持することによって、タイコ112aをワイヤドラム115の周方向へ移動自在な遊びを持たせて保持することができ、インナワイヤ112に伸びが生じた場合に、その伸び分だけタイコ112aが長溝115b内を移動し、インナワイヤ112のたるみを抑えることができる。
上記構成により、レバー15を介してワイヤドラム115が操作方向(図中、α方向)に操作されると、具体的には、レバー15を操作する乗員(運転者)がレバー15を手前に引き起こすと、ワイヤドラム115によってインナワイヤ112が巻き取られる。その後、レバー15を離すと付勢ばね113により、ワイヤドラム115が逆の方向(図中、α方向の逆方向)に回転してレバー15がリバースロック位置に自動的に戻ると共に、インナワイヤ112が送り出される。
ワイヤ110は、図1に示すように、レバー支持機構100から車体下方へ引き回された後、車体後方へ引き回され、図12に示すように、アウタチューブ111の一端がブラケット120を介してエンジン5側方に支持される。
このアウタチューブ111の一端から引き出されたインナワイヤ112は、エンジン5側方に回動自在(揺動自在)に設けられたリバースロック解除部材121の一端にタイコ112bを介して連結される。このリバースロック解除部材121は、図12に示す位置がリバースロック位置に相当し、インナワイヤ112により車体前側に回動されるとリバースロックを解除する。
一般に、リバースロック解除をワイヤを介して行う場合、ワイヤの遊び量を調整するためのアジャスト機構が必要になる。これに対し、本構成では、上記ワイヤドラム115を大径化することによって、ワイヤの巻き取り量を余裕を持って確保し、アジャスト機構を不要にしている。
詳述すると、本構成では、リバースロック解除に必要なレバー15の操作量(操作角度)を、運転者が操作し易い適正操作量(例えば45度程度)に設定し、ワイヤドラム115については、この適正操作量でレバー15を操作した場合に、インナワイヤ112の伸びを考慮した巻き取り量となるように大径化している。ここで、インナワイヤの伸びを考慮した巻き取り量には、ワイヤの経年使用による伸びに限らず、ワイヤの取り付け誤差分も含めた巻き取り量を含めている。
また、本構成では、横向きのレバー15の一端をワイヤドラム115の中心軸115aに連結し、このレバー15を引き起こす構成としたので、操作しやすい適正操作力になるようにレバー長を容易に長く設定することができ、レバーが短いためにレバーの操作が重くなってしまう事態を回避できる。
すなわち、本構成では、操作量および操作力のバランスを適正にして操作性を確保しつつ、アジャスト機構を不要にして部品点数を低減することができる。
上記ATV車両1において、アッパパイプ41、41の中間部41b、41b(図1参照)には、図13に示すように、これら中間部41b、41b間を跨ぐようにタンク下カバー200が配設され、サブフレーム60、60の水平に延びる部分60a、60aには、シート下カバー210が配設されている。タンク下カバー200は、樹脂等で一体成型されており、燃料タンク28の下に配置され、エンジン5の熱が燃料タンク28に伝わるのを遮断するカバーである。また、シート下カバー210は、ゴム等の振動吸収材で形成され、シート29に伝わる熱を遮断若しくは振動を低減し、或いは、シート29裏への泥等の付着を防ぐカバーである。
図13に示すように、タンク下カバー200の車体後方側の縁部には、シート下カバー210の車体前方側の縁部が上方から重ねられることによって、タンク下カバー200の縁部に沿って間隔を空けて形成された複数(本例では4本)の爪部201が、シート下カバー210の縁部に沿って間隔を掛けて形成された複数の孔部211に各々係止することによって連結される。なお、これら爪部201の配列方向に沿って形成された突起202は、円柱状の突起であり、シート下カバー210に形成された円形状の孔212に嵌ってタンク下カバー200とシート下カバー210の連結位置を位置決めするためのものである。
図14(A)はタンク下カバー200とシート下カバー210との連結部分を示す斜視図であり、図14(B)は連結部分の側断面を示す図である。図13及び図14(A)に示すように、タンク下カバー200及びシート下カバー210は、これらカバーの上下の部品に合わせた凹凸形状に形成されるため、カバーの縁部にも段差d1、d2、d3が形成され、各段差d1〜d3に上述の複数の爪部201及び孔部211を割り振るようにしている。図14(B)に示すように、タンク下カバー200の爪部201は、肉厚の基部201aと、この基部201aの上方にて車体後方側に突出する先端部201bとを一体に備える断面略L字形状に形成されており、シート下カバー210の孔部211は、このカバー210の肉厚部分215に形成され、かつ、爪部201の先端部201bが引っ掛かる段部211aを有した孔形状に形成される。
このため、タンク下カバー200とシート下カバー210とを連結する場合、シート下カバー210を、その孔部211内に爪部201が入るようにタンク下カバー200側に押さえると、シート下カバー210の孔部211が爪部201により押し拡げられて爪部201が入り、この爪部201が孔部211の段部211aに係合する。一方、これらカバー200、210を外す場合、シート下カバー210を車体後方側に引っ張りながら持ち上げると、シート下カバー210の孔部211が拡がり、この孔部211から爪部201を容易に抜くことができる。
このように、タンク下カバー200の爪部201を肉厚の断面略L字形状とし、この爪部201の先端部201bを車体後方側に突出させてシート下カバー210の孔部211に引っ掛ける構成としたので、この爪部201を薄板形状にしたものに比して、爪部201の剛性を高くすることができ、これにより、これらカバー200、210の着脱の際に爪部201を切れ難くすることができる。カバー200、210を連結した際に、爪部201が孔部211内に収まって外に突出しないので、連結部分の上面が平らになり、爪部201が他の部材にあたることがない。シート下カバー210の縁部に他よりも厚い肉厚部分215を設け、この肉厚部分215に孔部211を形成したので、孔部211に段部211aを形成することができ、爪部201との連結を容易にしている。
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものでないことは明らかである。例えば、上述の実施形態では、シート29の締結部である締結溝95を略U字状の締結溝に形成する場合について説明したが、締結溝95全体が略U字状の形状に限らず、上方に開口する締結溝を広く適用することができる。また、上述の実施形態では、四輪の鞍乗り型車両に本発明を適用する場合を説明したが、これに限らず、三輪の鞍乗り型車両等の各種車両のシート支持構造に広く適用が可能である。
本発明の実施形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。 鞍乗り型車両の上面図である。 タンクカバーを周辺構成と共に示す上面図である。 タンクカバーを周辺構成と共に車体後方から見た図である。 (A)はタンクカバーの上面図であり、(B)はタンクカバーの側面図であり、(C)は(B)のC−C線断面図である。 シートの斜視図である。 シートの断面図である。 シートを裏側から見た図である。 (A)は締結溝の断面図であり、(B)は締結溝とフランジの締結状態を示す図である。 リバースアシストレバーをレバー支持機構と共に示す図である。 レバー支持機構の内部構造を示す図である。 レバー支持機構から延びるワイヤの他端を周辺構成と共に示す図である。 タンク下カバーとシート下カバーを示す図である。 (A)はタンク下カバーとシート下カバーとの連結部分を示す図であり、(B)は連結部分の側断面図である。
符号の説明
1 鞍乗り型車両
2 前輪
3 後輪
4 車体フレーム
5 エンジン(水冷エンジン)
15 リバースアシストレバー
25 ラジエータ
27 ステアリングシャフト
28 燃料タンク
29 シート
29a シート前端
31 タンクカバー
32 車体カバー
80、80L、80R ラジエータグリル
85 フランジ(シート締結部)
86 傾斜板部
87 上側水平板部
88 垂直板部
89 下側水平板部
91 シート底板
95 締結溝(タンクカバー締結部)
96、97 足部
98 連結部
100 レバー支持機構
110 ワイヤ
113 付勢ばね
115 ワイヤドラム
200 タンク下カバー
210 シート下カバー

Claims (3)

  1. 車体フレーム(4)で燃料タンク(28)を支持し、この燃料タンク(28)にはタンクカバー(31)が設けられ、このタンクカバー(31)と燃料タンク(28)後方に位置するシート(29)を締結する車両のシート支持構造において、
    前記タンクカバー(31)の後部には、車体後方に延出するフランジ(85)を備え、
    前記シート(29)の前部には、該フランジ(85)に締結するための上方が開口した略U字状の締結溝(95)を備え、
    前記締結溝(95)は、左右に延出するシート前端(29a)の内側に設けられ、前記締結溝(95)の車体内方側の足(97)は、シート締結部となる前記フランジ(85)に対して車体内方側に入り込むように傾斜し、
    前記フランジ(85)の下面は、車体後方に行くに従って幅狭になると共に、後ろ上がりに傾斜する角度で延在することを特徴とするシート支持構造。
  2. 前記締結溝(95)の車体内方側の足(97)は、前記締結溝(95)の車体外方側の足(96)に比して短い長さに形成されるとともに、上方に向かって略垂直に延びる基部(97a)と、この基部(97a)の上端から屈曲して車体内方側に傾斜して上方へ延びる傾斜部(97b)とを備えてこれら足(97,96)の間の隙間が上方に行くほど大きくなることを特徴とする請求項1に記載のシート支持構造。
  3. 前記フランジ(85)は、前記タンクカバー(31)から車体外側に傾斜した角度で下方へ延びる傾斜板部(86)と、この傾斜板部(86)の下端から車体内側へ屈曲して略水平に延びる上側水平板部(87)と、この上側水平板部(87)の車体内側端部から下方へ屈曲して下方へ略垂直に延びる垂直板部(88)と、この垂直板部(88)の下端から車体外側へ屈曲して略水平に延びる下側水平板部(89)とを備え、前記下側水平板部(89)の幅W1が上側水平板部(87)の幅W2よりも小さく形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート支持構造。
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