JP4999317B2 - 熱可塑性樹脂組成物および成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物および成形品 Download PDF

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Description

本発明は、耐候性、着色時の鮮映性及び低温衝撃強度に優れた熱可塑性樹脂組成物、並びに、この熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に関する。
従来、水素添加ジエン系ゴム質重合体の存在下に(メタ)アクリル酸エステルを主体とするビニル系単量体をグラフト重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂は透明性、耐候性に優れた熱可塑性樹脂として知られている(特許文献1及び2参照)。
しかしながら、この熱可塑性樹脂は、ゴム質重合体としてブタジエンなどのジエン系ゴム質重合体を用いたABS樹脂に比べると、耐衝撃性が劣り、特に、低温衝撃強度に劣るため、過酷な環境下での使用には適さず、また、着色剤を添加した時の色彩の鮮映性については更なる改善が求められていた。
特開平2―58514号公報 特開平2―302459号公報
本発明の目的は、耐候性、着色時の鮮映性及び低温衝撃強度に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記成形品を提供することにある。
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、(メタ)アクリル酸エステルを共重合成分として含有するゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物において、ゴム成分として水素添加ジエン系ゴム質重合体及びジエン系ゴム質重合体を所定量だけ用いて、組成物の全光線透過率を50%以上にすることにより、耐候性を損なうことなく、低温衝撃強度及び着色時の鮮映性及び着色時の鮮映性を改善できることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、(メタ)アクリル酸エステルを共重合成分として含有するゴム強化ビニル系樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物であって、該ゴム強化ビニル系樹脂(A)はゴム質重合体(a)として水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)及びジエン系ゴム質重合体(a2)を含有し、前記ゴム質重合体(a1)及び前記ゴム質重合体(a2)の合計の含有量が該組成物全体に対して5〜30質量%であり、該含有量に対する前記ゴム質重合体(a2)の含有量が質量比率で0.05〜0.4であり、全光線透過率が50%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物、及び、該熱可塑性樹脂組成物からなる成形品が提供される。
本発明の好ましい実施態様によれば、前記ゴム強化ビニル系樹脂(A)は、下記成分(A1)及び成分(A2)、又は、下記成分(A1)、成分(A2)及び成分(B)を含有してなる。
成分(A1):水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)の存在下で(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂。
成分(A2):ジエン系ゴム質重合体(a2)の存在下で(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂。
成分(B):(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b)を重合して得られた(共)重合体。
本発明の他の好ましい実施態様によれば、前記ゴム強化ビニル系樹脂(A)は、下記成分(A3)、又は、下記成分(A3)及び成分(B)を含有してなる。
成分(A3):水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)及びジエン系ゴム質重合体(a2)の存在下で(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂。
成分(B):(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b)を重合して得られた(共)重合体。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステルを共重合成分として含有するゴム強化ビニル系樹脂(A)を含み、該ゴム強化ビニル系樹脂(A)のゴム質重合体が所定量の水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)及びジエン系ゴム質重合体(a2)から構成されているため、耐候性と低温衝撃強度のバランスに優れ、また、該組成物の全光線透過率が50%以上とされているため、着色時の鮮映性にも優れている。
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステルを共重合成分として含有するゴム強化ビニル系樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物であり、ゴム強化ビニル系樹脂(A)単独から構成されてもよいし、ゴム強化ビニル系樹脂(A)と他の成分との混合物であってもよい。
成分(A)
本発明において、ゴム強化ビニル系樹脂(A)は、ゴム質重合体(a)として、水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)及びジエン系ゴム質重合体(a2)を含有してなる。
水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)としては、例えば、共役ジエンの単独重合体の水素化物、共役ジエンと芳香族ビニル化合物とからなる共重合体の水素化物が挙げられる。以下、共役ジエンの単独重合体及び共役ジエンと芳香族ビニル化合物とからなる共重合体を「共役ジエン系(共)重合体」と総称する。
共役ジエン系(共)重合体に用いられる共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレンなどが挙げられるが、工業的に利用でき、また物性の優れた水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)を得るには、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、より好ましくは1,3−ブタジエンである。
また、共役ジエン系(共)重合体に用いられる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましく、特に好ましくはスチレンである。
上記共役ジエン系(共)重合体は、具体的には少なくとも1個の下記ブロックAまたは下記ブロックCと、少なくとも1個の下記ブロックBまたは下記ブロックA/Bとを含んでなる共重合体、またはブロックBもしくはA/Bによる(共)重合体である。その具体的構造は、
A;芳香族ビニル化合物重合体ブロック、
B;共役ジエン重合体ブロック、
A/B;芳香族ビニル化合物/共役ジエンのランダム共重合体ブロック、
C;共役ジエンと芳香族ビニル化合物の共重合体からなり、かつ芳香族ビニル化合物が漸増するテーパーブロック、
とそれぞれ定義すると、次のような構造のものが挙げられる。
a)A−B
b)A−B−A
c)A−B−C
d)A−B−B(ここで、Bは共役ジエン重合体ブロック又は共役ジエンと芳香族ビニル化合物の共重合体ブロックであり、共役ジエン部分のビニル結合含量は好ましくは20%以上、Bは共役ジエン重合体ブロック又は共役ジエンと芳香族ビニル化合物の共重合体ブロックであり、共役ジエン部分のビニル結合含量は好ましくは20%未満)
e)B
f)A/B
g)A−A/B
h)A−A/B−C
i)A−A/B−A
j)B−B−B(ここで、B、Bは上記に同じ)
k)C−B
l)C−B−C
m)C−A/B−C
n)C−A−B
また、これらの基本骨格を繰り返し有する(共)重合体を挙げることができ、さらにそれらをカップリングして得られる共役ジエン系(共)重合体であってもよい。
上記d)A−B−Bの構造のものについては、特開昭2−133406号公報、上記e)のBおよびf)のA/Bの構造のものについては、特開昭63−127400号公報に示されている。また、上記g)のA−A/Bおよびh)のA−A/B−Cの構造のものについては、特開平2−305814号公報、特開平3−72512号公報に示されている。
共役ジエン系(共)重合体中の芳香族ビニル化合物/共役ジエンの割合は、重量比で0〜60/100〜40、好ましくは0〜50/100〜50であり、芳香族ビニル化合物を必須とする場合、好ましくは10〜50/90〜50である。ここで、芳香族ビニル化合物の含有量が60重量%を超えると、樹脂状となり得られる組成物の耐衝撃性が低下する。
さらに、共役ジエン系(共)重合体中の共役ジエン部分のビニル結合含量は、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは20〜80重量%、特に好ましくは30〜60重量%である。10重量%未満では、水素添加後の構造がポリエチレンに近くなり、組成物とした場合に衝撃強度が低下することになり、一方、60重量%を超えると水素添加後はゴム的性質を失うため、やはり衝撃強度が低下して好ましくない。
上記共役ジエン系(共)重合体のうち、下記〔I〕、〔II〕で挙げるものが好ましく、これを水添すなわち水素化した水素添加ジエン系ゴム質重合体を用いると、本発明の目的が一段と良好に達成できる。特に好ましい共役ジエン系(共)重合体は、〔II〕である。
〔I〕上記g)、h)で示された芳香族ビニル化合物重合体ブロックA、芳香族ビニル化合物と共役ジエンとのランダム共重合体ブロックA/BとからなるA−A/Bブロック共重合体、または芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックCが上記A−A/Bブロック重合体に結合したA−A/B−Cブロック共重合体であって、
(I)芳香族ビニル化合物/共役ジエンの割合が重量比で5〜50/95〜50、
(II)ブロックAとブロックCの芳香族ビニル化合物の合計量は、全共重合体中の3〜40重量%、
(III)ブロックA/Bの共役ジエン部分のビニル結合含量が15〜80重量%、
であるブロック共重合体。
〔II〕上記d)で示された分子中に、重合体ブロックA、BおよびB(ただし、Aは芳香族ビニル化合物が90重量%以上の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック、Bは1,2−ビニル結合含量が30〜70%のポリブタジエン系(共)重合体ブロック、Bは1,2−ビニル結合含量が30%未満のポリブタジエン系(共)重合体ブロックである)をそれぞれ1個以上有するブロック共重合体であって、該ブロック共重合体中の重合体ブロックAの含量が10〜50重量%、重合体Bの含量が30〜80重量%、重合体ブロックBの含量5〜30重量%であるブロック共重合体、または該ブロック共重合体単位がカップリング剤残基を介して上記重合体ブロックA、BおよびBのうち少なくとも1つの重合体ブロックと結合したブロック共重合体。ここにおいて、Bが共役ジエンと芳香族ビニル化合物の共重合体ブロックであり、かつ、Bが共役ジエン重合体ブロックであることが更に好ましい。
また、本発明で使用される水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)は、共役ジエン部分の二重結合の少なくとも70%、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上が水素添加されて飽和されていることが必要であり、70%未満では耐熱性、耐候性が低下するので好ましくない。
上記共役ジエン系(共)重合体の重合方法およびその水素添加方法については、例えば特開平1−275605号公報に記載されている。
さらに、本発明で使用される水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)は、数平均分子量が好ましくは5,000〜1,000,000、さらに好ましくは30,000〜300,000であり、5,000未満では重合体がゴム状とならず液状となり、一方、1,000,000を超えると加工性が低下する傾向を示し好ましくない。
さらに、水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)の重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、好ましくは10以下である。
ジエン系ゴム質重合体(a2)としては、例えば、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン系ブロック共重合体、スチレン・イソプレン系ブロック共重合体が挙げられ、上記水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)について記載した共役ジエン系(共)重合体も使用できる。このうち、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体が好ましく、この場合、鮮映性と低温衝撃強度との物性のバランスが一段と優れる。
ゴム質重合体(a2)を乳化重合で得る場合、そのゲル含率は、好ましくは98質量%以下であり、更に好ましくは40〜98質量%である。この範囲とすることにより耐衝撃性に優れた成形品を与える熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
ゲル含率は、以下に示す方法により求めることができる。
先ず、ゴム質重合体1gをトルエン100mlに投入し、室温で48時間静置する。その後、100メッシュの金網(質量をWグラムとする)で濾過したトルエン不溶分と金網を、温度80℃で6時間真空乾燥して秤量(質量Wグラムとする)する。W及びWを、下記式(1)に代入して、ゲル含率を得る。
ゲル含率=〔{W(g)−W(g)}/1(g)〕×100 (1)
尚、ゲル含率は、ゴム質重合体の製造時に、架橋性単量体の種類及びその使用量、分子量調節剤の種類及びその使用量、重合時間、重合温度、重合転化率等を適宜設定することにより調整される。
本発明のゴム強化ビニル系樹脂(A)は、下記成分(A1)と下記成分(A2)との混合物として得ることができ、また、下記成分(A3)単独から構成されてもよく、また、下記成分(A3)と下記成分(A1)及び/又は下記成分(A2)の混合物であっても良い。さらに、該ゴム強化ビニル系樹脂(A)は、必要に応じて、下記成分(B)が添加されたものであってもよい。
成分(A1):水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)の存在下で(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂。
成分(A2):ジエン系ゴム質重合体(a2)の存在下で(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂。
成分(A3):水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)及びジエン系ゴム質重合体(a2)の存在下で(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂。
成分(B):(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b)を重合して得られた(共)重合体。
上記成分(A1)〜(A3)を調製する際にゴム質重合体(a1)及び/又は(a2)の存在下に重合されるビニル系単量体(b)は、(メタ)アクリル酸エステルのみから構成されてもよく、または、(メタ)アクリル酸エステルと、該(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系単量体とから構成されてもよい。かかる共重合可能な他のビニル系単量体としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、上記(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物の他、酸無水物基、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を含有するビニル系化合物が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、それ単独で重合体にしたとき、その重合体のガラス転移温度(示差走査熱量計(DSC)で測定)が50℃以上であるものが好ましく、かかるガラス転移温度を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は1〜10が好ましく、より好ましくは1〜6、さらにより好ましくは1〜4である。メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルのなかでは、メタクリル酸エステルの方が好ましい。これらの例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、ヒドロキシル基を有するノルボルネン化合物の(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが好ましく、さらに好ましくはメタクリル酸メチルである。
上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系単量体の好ましい具体例としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α―メチルスチレン、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα―メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
着色時の鮮映性に優れたゴム強化ビニル系樹脂(A)を得るためには、ゴム質重合体(a)の屈折率と、ビニル系単量体(b)の(共)重合体部分の屈折率との差が好ましくは0.01以下、さらに好ましくは0.05以下となるように、ビニル系単量体(b)の組成を適宜選択することが好ましい。なお、ビニル系単量体(b)のみからなるマトリックス樹脂の屈折率は、理論式から計算または予めその組成からなる単量体混合物を重合して得た樹脂の屈折率を測定することにより知ることができる。かかる条件を満たすゴム質重合体(a)とビニル系単量体(b)の組合せを選択することにより、全光線透過率が50%以上の組成物を得ることが可能となる。
(メタ)アクリル酸エステルと他のビニル系単量体との使用割合に特に制限はなく、ゴム質重合体(a)の屈折率に応じて適宜選択することができるが、他のビニル系単量体に対する(メタ)アクリル酸エステルの質量比率((メタ)アクリル酸エステル/他のビニル系単量体)で表して、好ましくは30〜98/70〜2(質量%)であり、さらに好ましくは50〜95/50〜5(質量%)であり、特に好ましくは60〜90/40〜10(質量%)である。
ゴム強化ビニル系樹脂(A)は、公知の重合法、例えば、乳化重合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合およびこれらを組み合わせた重合法により製造することができる。これらのうち、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造する方法としては、塊状重合法、溶液重合法及び懸濁重合法が好ましく、ゴム強化ビニル系樹脂(A2)を製造する方法としては、乳化重合法が好ましく、ゴム強化ビニル系樹脂(A3)を製造する方法としては、塊状重合法、乳化重合法、溶液重合法、及び懸濁重合法が好ましい。
ゴム強化ビニル系樹脂(A)を乳化重合により製造する場合、通常、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等が用いられる。これらは全て公知のものを用いることができる。
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
また、重合開始助剤として、各種還元剤、含糖ピロリン酸鉄処方、スルホキシレート処方等のレドックス系を用いることが好ましい。
連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン類等が挙げられる。
乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、ラウリル酸カリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、パルミチン酸カリウム等の高級脂肪酸塩、ロジン酸カリウム等のロジン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。
ゴム強化ビニル系樹脂(A)を乳化重合により製造する場合、ゴム質重合体(a)及びビニル系単量体(b)の使用方法としては、ゴム質重合体(a)全量の存在下に、ビニル系単量体(b)を全量一括添加して重合してもよく、分割添加もしくは連続添加して重合してもよい。また、ゴム質重合体(a)の一部を重合途中で添加してもよい。
ゴム強化ビニル系樹脂(A)を100質量部製造する際には、ゴム質重合体(a)の使用量は、好ましくは3〜80質量部、より好ましくは5〜70質量部、更に好ましくは10〜60質量部である。
乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により樹脂成分を凝固させ、更に、水洗、乾燥することにより、精製されたゴム強化ビニル系樹脂が得られる。凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸等を用いることができる。尚、2種以上のラテックスを製造した場合、上記凝固は、それぞれのラテックス毎に別々に行ってもよいし、2種以上のラテックスを混合してから行ってもよい。
ゴム強化ビニル系樹脂(A)を溶液重合により製造する場合、重合は、通常、公知のラジカル重合用不活性重合溶媒中で行われる。かかる溶媒としては、エチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
重合温度は、好ましくは80〜140℃、更に好ましくは85〜120℃の範囲である。
溶液重合の際には、重合開始剤を用いてもよいし、重合開始剤を使用せずに、熱重合で重合してもよい。重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ケトンパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイオド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物等が好ましく用いられる。
また、連鎖移動剤を用いる場合、メルカプタン類;ターピノレン類;α―メチルスチレンダイマー等を用いることができる。
また、ゴム強化ビニル系樹脂(A)を塊状重合または懸濁重合で製造する場合、公知の方法を適用でき、溶液重合に例示した重合開始剤、連鎖移動剤等を用いることができる。
上記のようにして製造されたゴム強化ビニル系樹脂(A)は、通常、ビニル系単量体(b)がゴム質重合体(a)にグラフト(共)重合してなるグラフト共重合体と、ゴム質重合体にグラフトしていない未グラフト共重合体(上記(共)重合体(B)と実質的に同じ)とを含む。
ゴム強化ビニル系樹脂(A)のグラフト率は、好ましくは20〜200質量%、より好ましくは30〜150質量%、更に好ましくは40〜120質量%である。グラフト率が、上記範囲にあると、耐衝撃性に優れる。
尚、グラフト率は、以下に示す方法により求めることができる。
グラフト率(質量%)={(T−S)/S}×100…(2)
上記式(2)中、Tは成分(A)1gをアセトン20mlに投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Sは成分(A)1gに含まれるゴム質重合体の質量(g)である。
ゴム強化ビニル系樹脂(A)のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、更に好ましくは0.2〜1.0dl/g、特に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。この範囲に極限粘度〔η〕がある場合、耐衝撃性、加工性、及び成形品外観のバランスに優れる。
ゴム強化ビニル系樹脂成分(A)中に分散する上記グラフト共重合体の数平均粒子径は、好ましくは500〜30,000Å、より好ましくは1,000〜20,000Å、更に好ましくは1,500〜8,000Åの範囲である。尚、数平均粒子径は、電子顕微鏡を用いる等、公知の方法で測定することができる。
尚、グラフト率、極限粘度〔η〕及び上記数平均粒子径は、ゴム強化ビニル系樹脂(A)を製造する際の、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や使用量、更には、重合時間、重合温度等を変化させることにより容易に制御することができる。
成分(B)
前記(共)重合体(B)は、ゴム質重合体の非存在下に、上記ビニル系単量体(b)を(共)重合させて得られるものであり、上記ビニル系単量体(b)の(共)重合をゴム質重合体の非存在下に行う以外、上記ゴム強化ビニル系樹脂成分(A)と同様の方法で製造することができる。上記ゴム強化ビニル系樹脂成分(A)について列挙した上記ビニル系単量体(b)は、総て、(共)重合体(B)の製造に使用することができる。また、上記ビニル系単量体(b)の好ましい使用量は、(共)重合体(B)についても該当する。
この(共)重合体(B)を上記ゴム強化ビニル系樹脂成分(A1)〜(A3)と併用する場合、(共)重合体(B)として、上記ゴム強化ビニル系樹脂成分(A1)〜(A3)の製造に用いられたビニル系単量体と全く同じ種類の化合物を用いて得られた(共)重合体を使用してもよいし、異なる種類の化合物を用いて得られた(共)重合体を使用してもよい。
該(共)重合体(B)は、公知の重合法、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合により製造することができる。
該(共)重合体(B)の極限粘度〔η〕(溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、更に好ましくは0.2〜1.0dl/g、特に好ましくは0.3〜0.8dl/gであり、この範囲に極限粘度〔η〕がある場合、加工性及び成形品外観のバランスに優れる。
尚、この極限粘度〔η〕は、上記ゴム強化ビニル系樹脂成分(A1)〜(A3)の場合と同様、各種の製造条件を変化させることにより制御することができる。
成分(C)
さらに、本発明のゴム強化ビニル系樹脂(A)は、芳香族ビニル化合物とアクリロニトリルとの共重合体(C)を含有しても良い。共重合体(C)を含有させた場合、耐薬品性を向上させることができる。
(共)重合体(C)は、ゴム質重合体の非存在下に、芳香族ビニル化合物とアクリロニトリルを含むビニル系単量体(b)を(共)重合させて得られるものであり、成分(B)と同様の方法で製造することができ、成分(B)と同様の上記極限粘度範囲を満たすことが好ましい。
成分(C)は、本発明の全光線透過率を損なわない範囲で使用することが好ましい。
本発明において、ゴム質重合体(a1)とゴム質重合体(a2)の合計の含有量は、組成物の全体を100重量%として、5〜30質量%であり、好ましくは10〜28質量%である。ゴム質重合体(a)の含有量がこの範囲にあると耐候性、着色時の鮮映性及び低温衝撃強度の物性バランスに優れる。
本発明において、ゴム質重合体(a1)とゴム質重合体(a2)の合計の含有量に対するゴム質重合体(a2)の含有量((a2)/((a1)+(a2))は、質量比率で0.05〜0.4であり、好ましくは0.08〜0.38、さらに好ましくは0.1〜0.35である。この比率が0.05未満の場合、常温及び低温下の衝撃強度が劣り、0.4を超えると耐候性が劣る。
本発明において、ビニル系単量体(b)の含有量は、組成物の全体を100重量%として、95〜70質量%が好ましく、更に好ましくは72〜90質量%である。ビニル系単量体(b)の含有量がこの範囲にあると耐候性、着色時の鮮映性及び低温衝撃強度の物性バランスに優れる。
成分(D)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、低温衝撃強度及び耐候性を向上させるために、さらに、シリコーンオイル(D)を含有することが好ましい。
シリコーンオイル(D)としては、ポリオルガノシロキサン構造を有するものが挙げられ、例えば、構成成分としてポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジエンシロキサン等を有するものが挙げられる。これらのシリコーンオイルは、公知の方法で製造される。
更には、シリコーンオイル(D)として、アルキル基の炭素数が通常1〜18個であるポリジアルキルシロキサンのアルキル基を、エポキシ変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、又は、アルコール変性して得られる変性シリコーンオイルも使用できる。
これらのうち、最も好ましいシリコーンオイル(D)は、ジメチルシリコーンオイルである。
本発明で使用されるシリコーンオイル(D)の粘度は、25℃の温度において、通常10〜30000cpsであり、500〜24000cpsが好ましく、2000〜24000cpsがより好ましい。粘度が10cps未満では、目的とする低温衝撃性の改善効果が乏しく、一方、30000cpsを越えると樹脂への相溶性が低下する。
本発明において、シリコーンオイルの添加量は、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましい。シリコーンオイルの添加量が、0.01重量部未満では低温衝撃性及び耐候性の改善が不充分な場合があり、一方、10重量部を超えると成形品の表面にシリコーンオイルがブリードアウトする場合がある。
成分(E)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、全光線透過率が50%以上であるため、着色剤を配合したときの色彩の鮮映性に優れている。
本発明に使用される着色剤としては、無機顔料、有機顔料、染料などが挙げられる。カラーインデックスに記載された顔料では、無機顔料として酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、コロム酸鉛系顔料、カドミウム系顔料が含まれる。また、有機顔料としては、アゾレーキ顔料、ベンゾイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ系顔料などのアゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレットなどの縮合多環系顔料が含まれる。
染料としては、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン/ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン/インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン/オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料などが挙げられる。
これらの具体例としては、ピグメント(以下「P」と略記する)レッド101、Pレッド102、Pレッド108、Pレッド122、Pオレンジ20、Pイエロー37、Pイエロー183、Pブラウン6、Pブラウン7、Pブラウン11、Pブラウン24、Pグリーン−14、Pグリーン−19、Pグリーン36、Pブルー15、Pホワイト4、Pホワイト21、Pブラック10などの顔料、ソルベント(以下「S」と略記する)レッド111、Sレッド151、Sレッド179、Sオレンジ20、Sイエロー53、Sイエロー33などの染料が挙げられる。
これらの着色剤の中から、意匠性に応じて顔料、染料を選択し調色するが、着色剤の添加量は、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜8重量部、さらに好ましく0.2〜7重量部である。着色する必要がある場合に、着色剤が10重量部を超えると、衝撃強度の低下や染料の樹脂表面への移行などが起こり好ましくない。これらのことを考慮すると、8重量部以下が好ましく、さらに好ましくは7重量部以下である。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、その物性を損なわない限り、公知の耐候(光)剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、界面活性剤、可塑剤、摺動剤、発泡剤、加工助剤(超高分子量アクリル系重合体、超高分子量スチレン系重合体)、難燃剤、結晶核剤、無機・有機充填材等を適宜含有することができる。
更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、その物性を損なわない限り、他の公知の重合体であるポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリエステルエラストマー、PMMA、メタクリル酸メチル・マレイミド化合物共重合体、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、フェノキシ樹脂等を適宜含有することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記各構成成分を、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー、ロール等により溶融混練することにより得ることができる。混練に際し、本発明の上記各成分を一括添加して混練してもよく、分割して添加して混練してもよい。このように調製された本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ押出成形、インフレーション成形、ラミネーション成形、真空成形、異形押出成形等、また、これらを組み合わせた成形法等の公知の成形法により成形品を得ることができる。
このようにして得られた成形品は、オートバイや自動車の外装部品、建築材料などの分野に使用することができる。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、実施例中において部および%は、特に断らない限り質量基準である。また、実施例、比較例中の各種測定は、下記の方法に従った。
〔1〕評価方法
(1)全光線透過率;ASTM D1003に準じて測定した。試験片の厚さは2.4mmである。
(2)引張り強さ;ISO527に準じて測定した。
(3)曲げ強さ・曲げモジュラス;ISO178に準じて測定した。
(4)シャルピー衝撃強さ(23℃と−30℃);ISO179に準じて測定した。
(5)耐候性;
長さ80mm、幅55mm、厚さ2.4mmの試験片を、サンシャインウェザーオメーター(スガ試験機社製)を用いて、降雨サイクル18分/120分、ブラックパネル温度63℃として1000時間暴露し、暴露前後の色調変化値ΔEを算出した。
ΔEは、多光源分光測定計(スガ試験機社製)を用いて変色度Lab(L;明度、a;赤色度、b;黄色度)を測定し、次式により算出した。
ΔE=√〔(L−L+(a−a+(b−b
(式中(L、a、bは、暴露前の値を、L、a、bは暴露後の値を示す。)
ΔEの値は、小さい方が色の変化が小さく、色調が優れていることを示す。評価基準は以下のとおりである。
◎;ΔEが5以下である。
○;ΔEが5を超えて10未満である。
×;ΔEが10以上である。
(6)鮮映性;
表1に示す熱可塑性樹脂組成物100部に、カーボンブラック0.5部、ステアリン酸カルシウム0.3部を加え、長さ80mm、幅55mm厚さ2.4mmの試験片を得た。この試験片を目視評価で鮮映性を評価した。
鮮映性は、着色部の光沢感と着色の深みをもって評価する。光沢が高く及び/又は着色に深みがあるほど高級感を呈するので、鮮映性に優れているといえる。
◎;鮮映性に優れる。
○;鮮映である。
〔2〕熱可塑性樹脂組成物成分
(1)水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)の製造
(1−1)50Lオートクレーブに脱気・脱水したシクロヘキサン25000g、1,3−ブタジエン800gを仕込んだ後、n−ブチルリチウム1.0gを加えて、重合温度が50℃の等温重合を行なった。転化率がほぼ100%となった後、テトラヒドロフラン30.0g、1,3−ブタジエン2400g、スチレン200gを添加し、50℃から80℃の昇温重合を行なった。
転化率がほぼ100%となった後、スチレン600gを加え、15分間重合を行なった。得られたA−B−Bトリブロック共重合体(未水素化重合体)の分子特性を表1に示した。
(1−2)次に別の容器でチタノセンジクロライド15.0gをシクロヘキサン240mlに分散させて、室温でトリエチルアルミニウム20gと反応させた。得られた暗青色の見かけ上均一な溶液を(1−1)で得られたポリマー溶液に加え、50℃で、50kgf/cmの水素圧力下、2時間水素化反応を行なった。その後、メタノール・塩酸で脱溶媒し、2,6−ジ−tert−ブチルカテコールを加えて減圧乾燥を行なった。得られた水素化A−B−Bトリブロック共重合体(水素化重合体)の分子特性を表1に示した。
Figure 0004999317
(2)ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製
リボン型攪拌翼を備えた内容積10リットルのステンレス製オートクレーブに前記(1)で得られた水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)28部、メタクリル酸メチル51部、スチレン11部、アクリロニトリル10部、トルエン120部仕込み、攪拌により溶解させ均一溶液を得た後、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.5部、t−ドデシルメルカプタン0.1部を添加し、攪拌を続けながら昇温し、100℃に達した後は温度一定に制御しながら、攪拌回転数200rpmにて重合反応を行なった。反応を6時間行って終了した。重合転化率は90.3%であった。また、グラフト率は42%であった。
100℃まで冷却後、2,2−メチレンビス−4−メチル−6−ブチルフェノール0.2部を添加した後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により、未反応物と溶媒を留去し、細かく粉砕した後、40mmφの真空ベント付き押出機(220℃、700mmHg真空)にて、実質的に揮発分を脱揮させ、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のペレットを得た。水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)の含有量は31%であった。
(3)ゴム強化ビニル系樹脂(A2)の製造
攪拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、イオン交換水100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、重量平均粒子径2400Åのポリブタジエン30部(固形分換算)、スチレン4部、アクリロニトリル1.25部及びメタクリル酸メチル12.25部を入れ、攪拌しながら昇温した。温度が45℃に達した時点でエチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート2水和物0.2部及びイオン交換水15部よりなる活性剤水溶液、並びにジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド0.1部を添加し、1時間反応を続けた。
その後、イオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、ジイソプロピルヒドロパーオキサイド0.2部、スチレン12部、アクリロニトリル3.75部及びメタクリル酸メチル36.75部からなる重合成分を3時間に渡って連続的に添加し、重合を続けた。添加終了後、更に攪拌を1時間行い、2,2−メチレン−ビス−(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し反応性生物をフラスコより取り出した。反応性生物のラテックスを塩化カルシウム2部で凝固し、反応生成物を良く水洗した後、75℃で24時間乾燥し、白色粉末樹脂を得た。重合転化率は98.5%、ポリブタジエンの含有量は30.5%であった。グラフト率は40%、極限粘度は0.3dl/gであった。重合前のポリブタジエンの屈折率は1.516、アセトン可溶分の屈折率は1.517であった。上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と同一押出機及び同一条件で、上記白色粉末樹脂から、ゴム強化ビニル系樹脂(A2)のペレットを得た。
(4)ゴム強化ビニル系樹脂(A3)の製造
リボン型攪拌翼を備えた内容積10リットルのステンレス製オートクレーブに前記(1)で得られた水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)23.4部、ポリブタジエンゴム(JSR BR01、JSR(株)製)6.6部、メタクリル酸メチル50部、スチレン10部、アクリロニトリル10部、トルエンを120部仕込み、攪拌により溶解させ均一溶液を得た後、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.5部、t−ドデシルメルカプタン0.1部を添加し、攪拌を続けながら昇温し、100℃に達した後は温度一定に制御しながら、攪拌回転数200rpmにて重合反応を行なった。反応を6時間行って終了した。重合転化率は87%であった。また、全ゴム質重合体含有量は34.5%、グラフト率は50%であった。
100℃まで冷却後、2,2−メチレンビス−4−メチル−6−ブチルフェノール0.2部を添加した後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により、未反応物と溶媒を留去し、細かく粉砕した後、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と同一条件でゴム強化ビニル系樹脂(A3)のペレットを得た。
(5)メタクリル酸メチル系共重合体(成分(B))
溶液重合法で製造された結合メタクリル酸メチル含量72質量%、結合スチレン含量21質量%、結合アクリロニトリル含量7質量%、極限粘度〔η〕0.5dl/gの成分(B)のペレットを用いた。
(6)AS樹脂(成分(C))
スチレン単位/アクリロニトリル単位=73/27(%)のAS樹脂(極限粘度〔η〕0.6dl/g)を用いた。
(7)シリコーンオイル(成分D)
粘度13000cpsの東レダウコーニング社製 SH200CVオイル(商品名)を用いた。
実施例1〜5、比較例1〜2
表1記載の成分を表1記載の配合割合で、ヘンシェルミキサーを用いて3分間混合し、混合物を得た。次いで、シリンダー設定温度200℃の40mmφ押出機を用いて、該混合物を溶融混練りしてペレットを得た。このペレットを80℃で1時間乾燥した後、シリンダー設定温度200℃のスクリュー型射出機を用いて、各評価用の試験片を作成した。
評価結果を表2に示す。
Figure 0004999317
表2に記載された結果から、以下のことが明らかである。
本発明の実施例1〜5の成形品は、耐候性、低温衝撃強度、着色時の鮮映性に優れる。
一方、比較例1は、ジエン系ゴム質重合体(a2)の含有量が本発明の範囲外で少なく、耐衝撃性、特に低温衝撃強度が劣る。比較例2は、ジエン系ゴム質重合体(a2)の含有量が本発明の範囲外で多く、耐候性が劣る。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐候性と低温衝撃強度のバランスに優れ、また、着色時の鮮映性にも優れているので、過酷な環境下で使用される、車両分野、建材分野等の各種部品、特に外装部品の成形材料として有用である。

Claims (7)

  1. (メタ)アクリル酸エステル及びその他のビニル系単量体を共重合成分として含有するゴム強化ビニル系樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物であって、該ゴム強化ビニル系樹脂(A)はゴム質重合体(a)として水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)及びジエン系ゴム質重合体(a2)を含有し、前記ゴム質重合体(a1)及び前記ゴム質重合体(a2)の合計の含有量が該組成物全体に対して10〜28質量%であり、該含有量に対する前記ゴム質重合体(a2)の含有量が質量比率で0.08〜0.38であり、前記(メタ)アクリル酸エステルの前記その他のビニル系単量体に対する質量比率((メタ)アクリル酸エステル/他のビニル系単量体)が50〜95/50〜5(質量%)であり、厚さ2.4mmの試験片における全光線透過率が50%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記ゴム強化ビニル系樹脂(A)が、下記成分(A1)及び成分(A2)、又は、下記成分(A1)、成分(A2)及び成分(B)を含有してなる請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    成分(A1):水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)の存在下で(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂。
    成分(A2):ジエン系ゴム質重合体(a2)の存在下で(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂。
    成分(B):(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b)を重合して得られた(共)重合体。
  3. 前記ゴム強化ビニル系樹脂(A)が、下記成分(A3)、又は、下記成分(A3)及び成分(B)を含有してなる請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    成分(A3):水素添加ジエン系ゴム質重合体(a1)及びジエン系ゴム質重合体(a2)の存在下で(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂。
    成分(B):(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b)を重合して得られた(共)重合体。
  4. 前記ゴム質重合体(a1)及び前記ゴム質重合体(a2)の合計の含有量に対する前記ゴム質重合体(a2)の含有量が質量比率で0.1〜0.35である請求項1乃至3の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. さらに、シリコーンオイル(D)を、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して0.01〜10質量部含有してなる請求項1乃至の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1乃至の何れか1項に記載の組成物と着色剤(E)とを含有してなる熱可塑性樹脂組成物。
  7. 請求項1乃至の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
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