JP3868666B2 - 難燃性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

難燃性熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性に優れた溶融滴下性の難燃性熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、難燃性を付与したABS樹脂は、成形加工性、機械的性質などが優れていることより、電気・電子分野、OA機器分野に幅広く使用されている。しかしながら、ABS樹脂は、燃えやすいという欠点を有しており、難燃性が要求される分野では、難燃剤、難燃助剤などを配合した難燃性ABS樹脂組成物が一般に使用されている。一方、近年、デザイン上の要求として、透明性の要求が増えてきているが、通常、ABS樹脂は不透明であり、ABS樹脂に難燃剤を付与した難燃性ABS樹脂組成物も当然不透明である。また、透明用途で従来使用されている透明ABS樹脂に、単純に難燃剤を配合した場合は、難燃性は得られるが、透明性が損なわれる。そのため、これまで、ABS樹脂組成物の透明性を維持しながら難燃化する技術は無い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、鋭意材料の開発について検討した結果、特定の構成を有する樹脂組成物に、特定の構造を有する難燃剤、および必要に応じて黒色系化合物を配合することで、透明性に優れた溶融滴下性の難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下に示す通りである。
)(A)ゴム質重合体の存在下に、(メタ)アクリル酸エステル化合物50重量%以上を含む単量体成分をグラフト重合して得られるゴム強化重合体(a)を主成分とする熱可塑性樹脂100重量部に対して、(B)上記一般式(II)で表される縮合リン酸エステル化合物(以下「(B)難燃剤」ともいう)5〜20重量部を配合したことを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物。
)成形品としたときの全光線透過率が75%以上であり、かつヘイズが15以下である上記(1)記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
)上記ゴム質重合体の平均粒径が150〜500nmであり、上記ゴム強化重合体(a)のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度が0.1〜1.0dl/gである上記(1)又は(2)に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の(A)熱可塑性樹脂は、ゴム強化重合体(a)を主成分とする。上記ゴム強化重合体(a)は、ゴム質重合体の存在下に、(メタ)アクリル酸エステル50重量%以上を含む単量体成分をグラフト重合して得られる。なお、ゴム強化重合体(a)は、上記ゴム質重合体に、(メタ)アクリル酸エステル化合物単体をグラフト重合しても得られるし、さらに、(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合可能な芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物などの単量体の群から選ばれた少なくとも1種の単量体との混合物をグラフト重合しても得られる。そして、(A)熱可塑性樹脂は、上記ゴム強化重合体(a)単体でもよいし、上記単量体の群から選ばれた少なくとも1種の単量体の重合体もしくは共重合体を別に製造し、ゴム強化重合体(a)(グラフト共重合体)とブレンドして製造したものでもよい。
【0008】
上記ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリブタジエンの水素添加物、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレン−(非共役ジエン)共重合体、エチレン−ブテン−1−(非共役ジエン)共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、アクリルゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、SEBSなどの水素添加ジエン系(ブロック、ランダム、およびホモ)重合体、ポリウレタンゴムおよびシリコーンゴムなどが挙げられる。上記スチレン−ブタジエン共重合体としては、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物などが挙げられる。さらに、上記スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物には、上記ブロック共重合体の水素添加物のほかに、スチレンブロックとスチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加物などが含まれる。
本発明のゴム質重合体は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して使用することもできる。
【0009】
上記ゴム質重合体の平均粒径は、好ましくは150〜500nmであり、さらに好ましくは150〜400nm、特に好ましくは200〜350nmである。平均粒径が150nm未満では、得られる難燃性熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低く、一方、500nmを超えると、樹脂組成物の透明性、特に曇価(Haze)が低下する。上記ゴム質重合体は、1種単独で使用することも、または異なる2種の平均粒径を有するゴム質重合体を混合して使用することもできる。
【0010】
上記ゴム強化重合体(a)中のゴム質重合体の配合量は、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。ゴム質重合体の配合量が5重量%未満では、耐衝撃強度が低下し、一方、40重量%を超える場合は、剛性、燃焼性に劣る。
【0011】
ゴム強化重合体(a)に用いられる(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0012】
ゴム強化重合体(a)中の(メタ)アクリル酸エステル化合物の配合量は、単量体全成分中に50重量%以上、好ましくは50〜90重量%、さらに好ましくは55〜80重量%である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の配合量が、単量体全成分中に50重量%以上であると、透明性に優れるが、一方、50重量%未満では、透明性が低下する。
【0013】
上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体成分としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、酸無水物、マレイミド系化合物などが挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、メチル−α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルキシレンなどが挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンが好ましい。単量体成分中に、α−メチルスチレンを10〜50重量%、好ましくは20〜30重量%用いると、本発明の難燃性樹脂組成物に耐熱性を付与することができる。
【0014】
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、アクリロニトリルが好ましい。酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられ、無水マレイン酸が好ましい。マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられ、N−フェニルマレイミドが好ましい。これらの単量体成分は、単独であるいは2種以上混合して用いられる。
【0015】
さらに、上記単量体成分には、必要に応じて、官能基含有ビニル単量体を共重合することもできる。官能基含有ビニル単量体としては、具体例として、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有不飽和化合物;3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシスチレンなどの水酸基含有不飽和化合物;アクリルアミド、メタクリルアミドなどの不飽和カルボン酸アミド;アクリルアミン、メタクリル酸アミノメチル、メタクリル酸アミノエーテル、メタクリル酸アミノプロピル、アミノスチレンなどのアミノ基含有不飽和化合物;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和酸;ビニルオキサゾリンなどのオキサゾリン基含有不飽和化合物などが挙げられる。上記官能基含有ビニル単量体は、単独であるいは2種以上混合して用いられる。これらの官能基含有ビニル単量体を共重合することで、他の樹脂を配合した場合に、該樹脂との界面密着(相溶性)を高めることができる。また、ゴム強化重合体(a)中の上記官能基含有ビニル単量体の配合量は、単量体成分中に好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜12重量%である。
【0016】
ゴム強化重合体(a)中の(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の単量体成分の含有量は、50重量%未満、好ましくは40重量%未満10重量%以上、さらに好ましくは40重量%未満20重量%以上である。(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の単量体成分が50重量%以上では、透明性が低下する。ゴム強化重合体(a)中の単量体全成分の配合量は、好ましくは95〜60重量%、さらに好ましくは95〜70重量%、特に好ましくは90〜70重量%である。単量体全成分の配合量が、95重量%を超えると、耐衝撃強度が低下し、一方、60重量%未満では、剛性、燃焼性が劣る。
【0017】
上記ゴム強化重合体(a)のグラフト率は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは15〜90%、特に好ましくは20〜70%である。グラフト率が10%未満では、得られる難燃性樹脂組成物の外観不良、耐衝撃強度の低下が生じ好ましくない。一方、100%を超えると、成形加工性が劣るここで、グラフト率(%)は、ゴム強化重合体1g中のゴム成分重量をx、メチルエチルケトン不溶分重量をyとすると、次式により求められた値である。
グラフト率(%)=〔(y−x)/x〕×100
【0018】
また、本発明のゴム強化重合体(a)のマトリックス成分であるメチルエチルケトン可溶分の極限粘度〔η〕(30℃、メチルエチルケトン中で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、さらに好ましくは0.2〜0.9dl/g、特に好ましくは0.3〜0.7dl/gである。極限粘度〔η〕が上記範囲内であると、耐衝撃性、成形加工性(流動性)に優れた本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物が得られる。なお、上記グラフト率(%)、極限粘度〔η〕は、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤などの種類や量、さらに重合時間、重合温度などを変えることにより、容易に制御することができる。
【0019】
また、本発明のゴム強化重合体(a)のゴム質重合体(ゴム成分)の屈折率とマトリックス樹脂の屈折率との差は、好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.02以下、特に好ましくは0.01以下である。上記屈折率の差が上記範囲内であると、透明性の良好な、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0020】
さらに、本発明のゴム強化重合体(a)の曇価(Haze)は、難燃性熱可塑性樹脂組成物の成形品(厚み2.4mm)とした場合、好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは8以下である。また、本発明のゴム強化重合体(a)の全光線透過率(Tt)は、難燃性熱可塑性樹脂組成物の成形品(厚み2.4mm)とした場合、好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上である。
【0021】
本発明のゴム強化重合体(a)は、ゴム質重合体の存在下に、アクリル酸エステル化合物50重量%以上を含む単量体成分を、公知の乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合などでラジカルグラフト重合を行い、製造することができる。この際、乳化重合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水などが用いられる。なお、ゴム強化重合体(a)を製造するのに用いるゴム質重合体および単量体成分は、ゴム質重合体全量の存在下に、単量体成分を一括添加して重合してもよく、分割もしくは連続添加して重合してもよい。また、これらを組み合わせた方法で、重合してもよい。さらに、ゴム質重合体の全量または一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
【0022】
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどで代表される有機ハイドロパーオキサイド類と含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方などで代表される還元剤との組み合わせによるレドックス系、あるいは過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレイト、t−ブチルパーオキシモノカーボネートなどの過酸化物が使用される。また、上記油溶性開始剤と水溶性開始剤とを組み合わせてもよい。組み合わせる場合の水溶性開始剤の添加比率は、全添加量の好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下である。さらに、重合開始剤は、重合系に一括または連続的に添加することができる。重合開始剤の使用量は、単量体成分に対し、通常、0.1〜1.5重量%、好ましくは0.2〜0.7重量%である。
【0023】
連鎖移動剤は、公知のものが使用できる。具体的には、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、テトラエチルチウラムスルフィド、四塩化炭素、臭化エチレン、ペンタフェニルエタンなどの炭化水素塩類、テルペン類、またはアクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコール、α−メチルスチレンのダイマーなどが挙げられる。これら連鎖移動剤は、単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。連鎖移動剤の使用量は、単量体成分に対して、通常、0.05〜2.0重量%用いられる。
【0024】
乳化重合の場合に使用する乳化剤は、公知のものが使用できる。具体的には、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどの脂肪族スルホン酸塩、高級脂肪族カルボン酸塩、リン酸系などのアニオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型などのノニオン系界面活性剤が挙げられる。これらは、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。乳化剤の使用量は、通常、単量体成分に対して、通常、0.3〜5.0重量%である。
【0025】
ゴム強化重合体(a)を乳化重合により製造する場合、通常、凝固剤により凝固して得られた粉末を水洗後、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩や、硫酸、塩酸などの酸を使用することができる。
【0026】
本発明の(A)熱可塑性樹脂は、上記ゴム強化重合体(a)単体でもよいし、必要に応じてゴム強化重合体(a)に(共)重合体を配合してもよい。ここで、(共)重合体は、ゴム強化重合体(a)の単量体成分と同一の組成であっても、異なっていてもよい。また、上記(共)重合体は、幾つかの(共)重合体成分の組み合わせであってもよい。(A)熱可塑性樹脂中の、ゴム強化重合体(a)以外の(共)重合体の含有量は、(A)成分中に50重量%未満、好ましくは0〜40重量%、さらに好ましくは0〜30重量%である。
【0027】
代表的な(A)熱可塑性樹脂としては、下記のような組成が挙げられるが、本発明の権利範囲は、その請求範囲を越えないかぎり、下記の例示に何ら限定されるものではない。
▲1▼メタクリル酸メチル(MMA)をグラフト重合したABS樹脂
▲2▼MMAをグラフト重合したABS樹脂/MMA−スチレン(ST)−アクリロニトリル(AN)の3元共重合体
▲3▼MMAをグラフト重合したAES樹脂
▲4▼スチレン−ブタジエンゴムにMMA−ST−ANをグラフト重合した樹脂
【0028】
次に、本発明の(B)難燃剤は、上記一般式(II)で表される縮合リン酸エステル化合物である。
【0030】
また、一般式(II)で表される縮合リン酸エステル化合物は、1種類の化合物として、または2種類以上の異なる縮合リン酸エステル化合物の混合物としてのいずれの形態でも使用することができる。混合物の場合は、Nの値は、縮合リン酸エステル化合物の混合物中の平均値を表す。アリール基であるR、R、RおよびRは、好ましくはクレジル基、フェニル基、キシレニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、およびこれらの塩素化または臭素化誘導体の群から選ばれた少なくとも1種である。上記アリール基は、その水素原子がハロゲン原子またはアルキル基により置換されていてもよい。アリーレン基Xは、例えば、レゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールAおよびこれらの塩素化物および臭素化物などのジヒドロキシ化合物から誘導される基である。これらの化合物は、それ自体公知である。それぞれが異なるN値を有する上記縮合リン酸エステル化合物の混合物も、容易に使用することができる。好適に使用される縮合リン酸エステル化合物は、j、k、l、およびmが全て1であり、R、R、RおよびRがすべてフェニル基を表し、Xがフェニレン基を表し、Nが1.2〜1.7である一般式(II)で表される縮合リン酸エステル化合物またはリン酸エステル化合物の混合物である。
【0031】
本発明の(B)難燃剤は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、5〜20重量部、好ましくは5〜17重量部、さらに好ましくは6〜15重量部、特に好ましくは8〜13重量部使用される。(B)成分は、(A)成分100重量部に対し、5〜20重量部の範囲内で、必要とする燃焼性を発現する量を任意に配合できるが、5重量部未満では燃焼性が低下する。一方、必要以上の(B)成分の使用は、コスト、物性面でマイナスであり、特に使用量が20重量部を超えると、耐衝撃性が低下する。
【0032】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、(C)エチレンオキサイド単位を35〜65重量%含む、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミド、および芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物のいずれもが配合されない尚、本発明に含まれないが、(C)の群から選ばれた少なくとも1種を配合することができる。上記ポリエーテルエステルアミドとしては、ポリアミド/テレフタル酸、イソフタル酸、またはアジピン酸などの脂肪族(あるいは芳香族)ジカルボン酸/エチレングリコールなどの脂肪族ジオール、の組み合わせ、ポリアミドエステルのエチレンオキサイドとの組み合わせの、グラフト反応物やブロック反応物などが挙げられる。ポリエーテルアミドとしては、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸塩などのジカルボン酸とジアミンの塩の混合物、またはラクタムと、エチレンオキサイドとのグラフト反応物やブロック反応物などが挙げられる。なお、上記ポリエーテルエステルアミドやポリエーテルアミドの屈折率は、好ましくは1.49〜1.53であり、さらに好ましくは1.51〜1.52である。
【0033】
上記(C)成分を構成するポリエーテルエステルアミドやポリエーテルアミド中のエチレンオキサイド単位の含有量は、35〜65重量%であり、好ましくは40〜60重量%である。エチレンオキサイド単位の含有量が、35重量%未満では、透明性が低下し、方、65重量%を超えると、耐衝撃強度、熱安定性が低下する。
【0034】
芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物としては、一般式X・Y・Zで表される組成を有するブロック共重合体を水素添加して得られる誘導体である。ただし、Xは芳香族ビニル化合物の重合体ブロック、Yは共役ジエンのエラストマー重合体ブロック、Zは、Sn、Siなどのカップリング剤残基であり、pおよびqは、それぞれ0〜5の整数であり、rは0または1である。上記Xを構成する芳香族ビニル化合物としては、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどであり、特にスチレンが好ましい。上記Yを構成する共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレンが好ましい。上記芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物の屈折率は、好ましくは1.49〜1.53であり、さらに好ましくは1.50〜1.52である。
【0035】
(C)成分の配合量は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0〜5重量部であり、この範囲内であれば、透明性を維持したまま、耐衝撃強度を大幅に改良できる。(C)成分の配合量は、好ましくは0.5〜3重量部、さらに好ましくは1〜3重量部である。配合量が5重量部を超えると、難燃性、透明性が低下し好ましくない。
【0036】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、(D)黒色化合物は配合されない。尚、本発明には含まれないが、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して、(B)成分5〜20重量部、(C)成分0〜5重量部、(D)黒色系化合物0.01〜5重量部を配合すると、レーザーマーキング性を有する難燃性熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。(D)黒色系化合物は、波長−反射率曲線で表すのであれば、400〜700nmの波長の全領域に対して、反射率が10%以下、好ましくは5%以下のものである。すなわち、この400〜700nmの全領域の波長の光を吸収する化合物であれば、(D)成分として使用できる。
【0037】
上記(D)黒色系化合物としては、カーボンブラック、黒色酸化鉄、チタンブラック、黒色染料、黒鉛などが挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラックなどのいずれも使用可能である。カーボンブラックの好ましい粒径は、10〜80nm、さらに好ましくは、12〜40nmである。粒径が小さい方が樹脂中での分散性が良く、レーザーマーキング発色性が良好である。また、カーボンブラックの好ましい比表面積は20〜1,500m/g、好ましい吸油量は35〜300ml/100g、好ましいpHは2〜10である。
【0038】
また、黒色酸化鉄は、FeやFeO・Feで表される黒色の鉄酸化物である。黒色酸化鉄の好ましい粒径は、0.3〜0.8μm、さらに好ましくは、0.4〜0.6μmであり、その形状としては、球状、立方状、針状などのいずれも使用できるが、立方状が好ましい。さらに、チタンブラックは、二酸化チタンを還元することによって得られる化合物である。チタンブラックの好ましい粒径は、0.1〜60μm、さらに好ましくは、1〜20μmである。
【0039】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、染料・有機顔料などを配合することもできる。これらの、染料・有機顔料などと黒色系化合物を併用することで、有彩色を呈するレーザーマーキング性が得られる。上記染料・有機顔料などを波長−反射率曲線で表すのであれば、400〜700nmの波長領域において、部分的に反射率が40%以上の領域、好ましくは50%以上の領域を有する、染料・有機顔料である。これらの染料・有機顔料を適切に選定することで、黄色、赤、青、緑、紫などの有彩色を明彩に発色することができる。基本的には、配合する染料・有機顔料の色彩が、レーザー光照射時に照射部分を発色させる。
【0040】
本発明に使用可能な染料としては、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン染料、チアゾール染料、インダミン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料などが挙げられる。
【0041】
これらの染料の具体例としては、Mordant Green 4、Disperse Yellow 14、Disperse Yellow 31、Acid Yellow 2、Direct Yellow 59、Basic Yellow 2、Basic Orange 23、Direct Orange 71、Direct Red 28、Acid Red 52、Solvent Blue 22、Acid Blue 59、Mordant Blue10、Acid Blue 45、Vat Blue 41、トルイジンマルーン、パーマネントレッドAG、ハンザエローG、ハンザエロー10G、ベンジジンオレンジ2Gなどが挙げられる。
【0042】
また、有機顔料としては、一般的に用いられるものが使用できるが、なかでも、配位している金属がカルシウム、ニッケル、鉄、バリウム、ナトリウム、銅、モリブデン、コバルト、マンガン、亜鉛、チタン、マグネシウム、カリウムなどのものが好ましい。具体的な有機顔料としては、ウォッチングレッド(Ca)、グリーンゴールド(Ni)、ピグメントグリーンB(Fe)、ピグメントスカーレット3B(Ba)、ファーストスカイブルー(Ba)、フタロシアニングリーン(Fe)、フタロシアニンブルー(Cu)、ブリリアントカーミン6B(Ca)、ボルドー10B(Na)、リソールレッドR(Na)、レーキレッドD(Na)、ブリリアントスカーレットG(Ca)、マンガンバイオレット(Mn)、コバルトバイオレット(Co)などが挙げられる。なお、有機顔料に含まれる元素を、これらの名称の後の括弧内に示した。
【0043】
(D)成分の配合量は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部であり、好ましくは0.05〜3重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部である。(D)成分の配合量が0.01重量部未満であると、レーザーマーキング発色に劣り、一方、5重量部を超えると、レーザーマーキング発色、耐衝撃性に劣る。
【0044】
レーザーマーキング性を有する難燃性熱可塑性樹脂組成物は、その成形品表面をレーザー光で照射することで、照射部分を明彩に発色させることが可能である。ここで、レーザー光としては、He−Ne、Arレーザー、COレーザー、エキシマレーザーなどの気体レーザー、YAGレーザーなどの固体レーザー、半導体レーザー、色素レーザーなどが挙げられ、なかでも、COレーザー、YAGレーザーが好ましい。YAGレーザー光の波長は、1,054nmである。
【0045】
レーザーマーキング性を有する難燃性熱可塑性樹脂組成物の成形表面をレーザー光で照射すると、レーザー光照射部分は、通常、レーザー光照射による発泡現象で、未照射部分よりやや盛り上がる。この照射部分の好ましい盛り上がり高さは、1〜100μm程度であるが、10〜80μm程度が、レーザーマーキング発色、照射(文字)部分の認識が鮮明で好ましい。また、この文字高さを利用して、点字用の成形品を作製することも可能である。なお、当然のことながら、レーザー光照射により、樹脂表面内部にも発泡現象が生じる。
【0046】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、ガラス繊維、炭素繊維、ワラストナイト、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ミルドファイバー、酸化亜鉛ウィスカー、チタン酸カリウムウィスカーなどの充填材を、1種単独でまたは2種以上併用することができる。これらの充填材を配合することで、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物に剛性を付与することができる。また、タルクなどを配合することで、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物に艶消し性を付与することができる。上記ガラス繊維、炭素繊維の好ましい形状としては、繊維径が6〜20μm、繊維長が30μm以上である。これらの充填材の配合量は、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、好ましくは、1〜50重量部、さらに好ましくは、2〜30重量部である。充填材の配合量が50重量部を超えると、レーザーマーキング性、成形品外観、実用耐衝撃性が損なわれる。
【0047】
また、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、アンチモン化合物などの難燃助剤、公知のカップリング剤、抗菌剤、防カビ剤、酸化防止剤、耐候(耐光)剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料など)、滑剤、帯電防止剤、シリコーンオイルなどの添加物を、要求される性能を損なわない範囲で配合することができる。
【0048】
さらに、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、要求される性能に応じて、他の熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂などの他の(共)重合体を配合することができる。ここで、他の重合体としては、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミドエラストマー、ポリアミドイミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂などが挙げられる。これらのなかで、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを配合すると、レーザーマーキング性発色をより明彩にすることができる。
【0049】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、各種押し出し機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダーなどを用い、各成分を混練りすることにより得られる。好ましい製造方法は、押し出し機、バンバリーミキサーを用いる方法である。また、各成分を混練りするに際しては、各成分を一括して混練りしてもよく、数回に分けて添加混練りしてもよい。混練りは、押し出し機で多段添加式で混練りしてもよく、またバンバリーミキサー、ニーダーなどで混練りし、その後、押し出し機でペレット化することもできる。
【0050】
このようにして得られる本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、シート押し出し、真空成形、異形成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形などによって、各種成形品に成形することができる。
【0051】
上記成形法によって得られる各種成形品は、難燃性(溶融滴下性)、透明性に優れ、かつ実用的な耐衝撃強度、熱変形温度を有しており、OA・家電分野、電気・電子・通信分野、コンピュータ分野、雑貨分野、サニタリー分野、自動車分野、携帯電話、PPCなどの透明性を要求される各種パーツ、ハウジング、シャーシ、トレー、ボタン、スイッチ、表示枠などに使用することができる。また、本発明のレーザーマーキング性に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物は、FAX、プリンター、コンピュータ、リモコンなどのOA機器、掃除機、電子レンジ、エアコンなどの家電機器、電卓のキーキャップ、パソコンのキーボードなどに適用され、それらへのメーカー名、数字、アルファベット、バーコード、品質などの表示にレーザーマーキング技術が使用できる。レーザーマーキングで発色させた文字部分は、印刷した文字部分よりも、耐候性が優れ、かつ、耐摩耗性にも優れるので、印刷よりも遙かに実用上好ましい。
【0052】
【実施例】
以下、実験例を挙げ本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実験例に何等制約されるものではない。なお、実験例中、部および%は特に断らない限り重量基準である。また、実験例中の各種評価は、次のようにして測定したものである。
グラフト率
本文中に記載
【0053】
極限粘度〔η〕
ゴム強化重合体をメチルエチルケトンに投入し、振とう機で6時間振とうする。これを、遠心分離機(回転数23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離する。この可溶分を真空乾燥機で充分乾燥する。この可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作る。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度〔η〕を求めた。
屈折率
サンプルをフィルム状にし、アッベ屈折率計で測定した。
【0054】
耐衝撃性(アイゾット衝撃強度)
(株)日本製鋼所製射出成形機J100E−C5を用い、シリンダー温度220℃、金型温度50℃で、JIS K7110の2号型試験片を成形し、アイゾット衝撃強度を測定した。単位は、J/mである。
流動性(メルトフローレート)
ASTM D1238に準じて測定した。測定温度は220℃、荷重は10kg、単位はg/10分である。
【0055】
熱変形温度
幅6.4mm×長さ128mm×厚み12.8mmの試験片を使用し、JISK7207に準拠して、曲げ応力18.5kgf/cmで測定した。
燃焼性(難燃性)
UL94規格に定められた方法により、長さ5″×幅1/2″×厚み1/12″の試験片について垂直燃焼試験を行った。本発明においては、UL94規格V−2ランクを溶融滴下性ありとした。評価結果について、Bは、燃焼(burning)で、V−2不適合を表す。
【0056】
透明性〔曇価(Haze)〕
厚み2.4mmの試験片を使用し、ASTM D1003に準拠して測定した。単位は%である。
全光線透過率(Tt)
厚み2.4mmの試験片を使用し、ASTM D1003に準拠して測定した。単位は%である。
【0057】
レーザーマーキング性
難燃性熱可塑性樹脂組成物を射出成形機を用いて板状の成形品を作製した。その成形品表面を、カールバーゼル社製のレーザーマーカー(スターマーク65W;YAGレーザー光)を用いてレーザーマーキングした。照射することにより、発色する部分の発色性、認識性、鮮明さを目視で判断し、下記の評価基準で表した。
○;良好(鮮明でかつ認識性良好な文字発色を呈する場合)
△;良(鮮明度と認識性の何れかが劣る場合)
×;劣る(鮮明度、認識性ともに劣る場合)
【0058】
参考例1〔ゴム強化重合体(a−1)〜(a−2)の調製〕
攪拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、ポリブタジエン15部(固形分換算)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、およびイオン交換水100部を混合し、スチレン5部、アクリロニトリル5部およびメタクリル酸メチル10部を加えた。攪拌しながら45℃まで昇温後、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート・2水和物0.2部およびイオン交換水15部よりなる活性剤水溶液、ならびにジイソプロプルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部を添加し、1時間反応を続けた。
【0059】
その後、スチレン10部、アクリロニトリル5部、メタクリル酸メチル50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.2部、イオン交換水50部からなるインクレメンタル重合成分を3時間にわたって連続的に添加し、重合反応を続けた。添加終了後、さらに1時間攪拌を続けた後、2,2−メチレン−ビス−(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し、反応生成物をフラスコより取り出した。反応生成物のラテックスを塩化カルシウム2部で凝固し、反応生成物を良く水洗した後、75℃で24時間乾燥し、白色粉末のゴム強化重合体(a−1)を得た。重合転化率は、98.5%、グラフト率は40%、極限粘度〔η〕は、0.40dl/gであった。ゴム成分の屈折率は、1.513、マトリックス樹脂の屈折率は、1.517であった。同様の方法により、表1に示すように、単量体成分の種類・配合処方、連鎖移動剤の使用量、重合温度、重合時間などを変えて、ゴム強化重合体(a−2)を得た。
【0060】
参考例2〔共重合体(a−3)の調製〕
また、同様の方法により、表1に示すような単量体成分の種類・配合処方で、ゴム強化重合体(a)成分の単量体成分のみを別途重合し、MMA−スチレン−アクリロニトリル3元共重合体(a−3)を得た。得られた(A)成分(a−1)〜(a−3)のグラフト率、極限粘度〔η〕、および屈折率を表1に示す。
【0061】
参考例3〔ゴム強化重合体(a−4)、AS樹脂の調製〕
(a−1)と同様の方法により、表1に示すような単量体成分、量を変えて、ゴム強化重合体(a−4)およびAS樹脂を得た。
【0062】
【表1】
Figure 0003868666
【0063】
参考例3〔難燃剤(B−1)〜(B−3)の調製〕
下記に示す難燃剤(B−1)〜(B−2)、比較用難燃剤(B−3)を使用した。
(B−1);上記一般式(II)で表される縮合リン酸エステル化合物(ただし、R、R、RおよびRは、2,6−ジメチルフェニル基を表し、Xはアリーレン基を表し、j、k、l、およびmは、それぞれ1であり、Nは1である。)、大八化学工業(株)製(商品名;PX200)
(B−2);トリフェニルフォスフェート(下記一般式(I)で表されるリン酸エステル化合物であり、R、RおよびRは、フェニル基を表す。)、大八化学工業(株)製比較用難燃剤
(B−3);テトラブロモビスフェノールAとエピクロルヒドリンからなる両末端の少なくとも80%以上をトリブロモフェノールで封止したオリゴマー(臭素化エポキシ樹脂)、臭素含有量56%、分子量約2,000
【化2】
Figure 0003868666
【0064】
参考例4〔(C)成分の調製〕
(C)成分として、下記に示すポリエーテルエステルアミドを使用した。
ポリエーテルエステルアミド;ナイロン6ブロック/ポリエチレンオキサイド=50/50(%)、屈折率1.513ナイロン6とポリエチレンオキサイドは、テレフタル酸でエステル化した。
【0065】
参考例5〔(D)成分の調製〕
下記に示す黒色系化合物(D−1)〜(D−2)を使用した。
(D−1);デグサ(株)社製カーボンブラック
【0066】
実験例1〜12
上記各成分を、表2に示す配合割合でヘンシェルミキサーにより3分間ミキシングした後、ナカタニ機械(株)製NVC型50mmベント押し出し機でシリンダー設定温度220℃で溶融混練り押し出しし、ペレットを得た。得られたペレットを充分に乾燥し、(株)日本製鋼所製射出成形機J100E−C5を用い、シリンダー温度220℃、金型温度50℃で射出成形し、試験片を得た。この試験片を用い、上記評価法で評価した。評価結果を表2に示す(発明品:実験例1及び2、比較品:実験例5、6〜9及び11、参考品:実験例3、4、10及び12)。
【0067】
【表2】
Figure 0003868666
【0000】
【表3】
Figure 0003868666
【0069】
実験例1及び2より明らかなように、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、いずれも実用レベルの耐衝撃強度、流動性、難燃性、透明性を有し、優れた材料であった。また、実施例3および6において、黒色系化合物を配合して、試験片を作成し、YAGレーザー光を照射したところ、照射部分が明瞭な白発色を呈した。このように、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、適切な着色剤を使用することで、レーザーマーキング用途にも好適である。
【0070】
一方、実験例7は、(B)成分の配合量が本発明の範囲を超える例であり、耐衝撃強度、透明性が劣る。実験例8は、(B)成分が本発明の難燃剤ではなく、透明性(曇価)、全光線透過率(Tt)が劣る。実験例9は、(a)成分の単量体配合割合が本発明の範囲外であり、透明性が劣る。比較例4は、(C)成分の配合量が所定の範囲を超えており、難燃性、熱変形温度、透明性が劣る。実験例11は、(B)成分の配合量が本発明に規定する量未満であり、難燃性、透明性が劣る。実験例12は、(D)成分の配合量が所定の範囲を超えており、難燃性、レーザーマーキング性が劣る。
【0071】
【発明の効果】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、難燃性(溶融滴下性)、透明性に優れ、かつ実用的な耐衝撃強度、熱変形温度を有しており、広範囲の用途、例えばOA・家電機器分野、電気・電子分野、通信機器分野、サニタリー分野、自動車分野、雑貨分野、携帯電話、PPCなどの透明性を要求される各種パーツ、ハウジング、シャーシ、トレー、ボタン、スイッチ、表示枠などに有用である。また、黒色系化合物を配合した本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、レーザーマーキング性に優れ、上記各種成形品へのメーカー名、数字、アルファベット、バーコード、品質などの表示にレーザーマーキング技術が使用できる。

Claims (3)

  1. (A)ゴム質重合体の存在下に、(メタ)アクリル酸エステル化合物50重量%以上を含む単量体成分をグラフト重合して得られるゴム強化重合体(a)を主成分とする熱可塑性樹脂100重量部に対して、
    (B)下記一般式(II)で表される縮合リン酸エステル化合物5〜20重量部を配合したことを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 0003868666
    〔ただし、R、R、RおよびRは、それぞれ相互に独立して選ばれるアリール基またはアルカリール基を表し、Xはアリーレン基を表し、j、k、l、およびmは、それぞれ相互に独立して0または1であり、Nは1〜5の整数であるが、リン酸エステル化合物の混合物の場合は、Nは平均値(1≦N≦5)を表す。〕
  2. 成形品としたときの全光線透過率が75%以上であり、かつヘイズが15以下である請求項1記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
  3. 上記ゴム質重合体の平均粒径が150〜500nmであり、上記ゴム強化重合体(a)のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度が0.1〜1.0dl/gである請求項1又は2記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
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