JP2000344993A - 難燃性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

難燃性熱可塑性樹脂組成物

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JP2000344993A
JP2000344993A JP11157678A JP15767899A JP2000344993A JP 2000344993 A JP2000344993 A JP 2000344993A JP 11157678 A JP11157678 A JP 11157678A JP 15767899 A JP15767899 A JP 15767899A JP 2000344993 A JP2000344993 A JP 2000344993A
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雅彦 野呂
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 透明性、レーザーマーキング性に優れる難燃
性熱可塑性樹脂組成物を提供すること。 【解決手段】 (A)ゴム質重合体の存在下に、(メ
タ)アクリル酸エステル化合物を含む単量体成分を重合
して得られるゴム強化重合体を主成分とする熱可塑性樹
脂に対して、(B)リン酸エステル化合物および/また
は縮合リン酸エステル化合物、ならびに(C)ポリエー
テルエステルアミド、ポリエーテルアミド、および芳香
族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物
の群から選ばれた少なくとも1種、さらに必要に応じ
て、(D)黒色系化合物を配合してなる難燃性熱可塑性
樹脂組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透明性に優れ、さ
らにレーザーマーキング性にも優れた溶融滴下性の難燃
性熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、難燃性を付与したABS樹脂は、
成形加工性、機械的性質などが優れていることより、電
気・電子分野、OA機器分野に幅広く使用されている。
しかしながら、ABS樹脂は、燃えやすいという欠点を
有しており、難燃性が要求される分野では、難燃剤、難
燃助剤などを配合した難燃性ABS樹脂組成物が一般に
使用されている。一方、近年、デザイン上の要求とし
て、透明性の要求が増えてきているが、通常、ABS樹
脂は不透明であり、ABS樹脂に難燃剤を付与した難燃
性ABS樹脂組成物も当然不透明である。また、透明用
途で従来使用されている透明ABS樹脂に、単純に難燃
剤を配合した場合は、難燃性は得られるが、透明性が損
なわれる。そのため、これまで、ABS樹脂組成物の透
明性を維持しながら難燃化する技術は無い。また、熱可
塑性樹脂にある種の黒色系の化合物を配合した樹脂材料
にレーザー光を照射すると、照射部分が黒色、白色ある
いは有彩色に変色するレーザーマーキング技術が知られ
ている。このようなレーザーマーキング技術は、キーボ
ードのキー印字、FAXなどのOA機器パネルの文字印
字などに使用されており、従来用いられてきたタンポ印
刷などに較べ、インク、塗装材料を使用しないため、低
コスト、文字の耐久性、樹脂のリサイクル性などの点で
大変優れている。このように、透明性であり、かつレー
ザーマーキング性に優れた難燃性のABS樹脂組成物も
また、これまで開発されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、かかる
現状に鑑み、鋭意材料の開発について検討した結果、特
定の構成を有する樹脂組成物に、特定の構造を有する難
燃剤、および必要に応じて黒色系化合物を配合すること
で、透明性、レーザーマーキング性に優れた溶融滴下性
の難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供できることを見いだ
し、本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、(A)ゴム質
重合体の存在下に、(メタ)アクリル酸エステル化合物
50重量%以上を含む単量体成分をグラフト重合して得
られるゴム強化重合体(a)を主成分とする熱可塑性樹
脂100重量部に対して、(B)下記一般式(I)で表
されるリン酸エステル化合物および/または下記一般式
(II)で表される縮合リン酸エステル化合物(以下
「(B)難燃剤」ともいう)5〜20重量部、ならびに
(C)エチレンオキサイド単位を35〜65重量%含
む、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミ
ド、および芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合
体の水素添加物の群から選ばれた少なくとも1種を0〜
5重量部を配合したことを特徴とする難燃性熱可塑性樹
脂組成物に関する。 (ただし、R1 、R2 およびR3 は、それぞれ相互に独
立して選ばれる炭素数1〜8のアルキル基、またはアル
キル置換されていることもある炭素数6〜20のアリー
ル基を表し、nは0または1である。)
【0005】
【化2】
【0006】〔ただし、R4 、R5 、R6 およびR
7 は、それぞれ相互に独立して選ばれるアリール基また
はアルカリール基を表し、Xはアリーレン基を表し、
j、k、l、およびmは、それぞれ相互に独立して0ま
たは1であり、Nは1〜5の整数であるが、リン酸エス
テル化合物の混合物の場合は、Nは平均値(1≦N≦
5)を表す。〕 また、本発明は、上記(A)熱可塑性樹脂100重量部
に対して、(B)成分5〜20重量部、(C)成分0〜
5重量部、(D)黒色系化合物0.01〜5重量部を配
合した、レーザーマーキング性を有する難燃性熱可塑性
樹脂組成物に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の(A)熱可塑性樹脂は、
ゴム強化重合体(a)を主成分とする。上記ゴム強化重
合体(a)は、ゴム質重合体の存在下に、(メタ)アク
リル酸エステル50重量%以上を含む単量体成分をグラ
フト重合して得られる。なお、ゴム強化重合体(a)
は、上記ゴム質重合体に、(メタ)アクリル酸エステル
化合物単体をグラフト重合しても得られるし、さらに、
(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合可能な芳香
族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド系
化合物、酸無水物などの単量体の群から選ばれた少なく
とも1種の単量体との混合物をグラフト重合しても得ら
れる。そして、(A)熱可塑性樹脂は、上記ゴム強化重
合体(a)単体でもよいし、上記単量体の群から選ばれ
た少なくとも1種の単量体の重合体もしくは共重合体を
別に製造し、ゴム強化重合体(a)(グラフト共重合
体)とブレンドして製造したものでもよい。
【0008】上記ゴム質重合体としては、ポリブタジエ
ン、ポリブタジエンの水素添加物、スチレン−ブタジエ
ン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、
エチレン−プロピレン−(非共役ジエン)共重合体、エ
チレン−ブテン−1−(非共役ジエン)共重合体、イソ
ブチレン−イソプレン共重合体、アクリルゴム、スチレ
ン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン
−イソプレン−スチレンブロック共重合体、SEBSな
どの水素添加ジエン系(ブロック、ランダム、およびホ
モ)重合体、ポリウレタンゴムおよびシリコーンゴムな
どが挙げられる。上記スチレン−ブタジエン共重合体と
しては、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチ
レン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジ
エンブロック共重合体の水素添加物などが挙げられる。
さらに、上記スチレン−ブタジエンブロック共重合体の
水素添加物には、上記ブロック共重合体の水素添加物の
ほかに、スチレンブロックとスチレン−ブタジエンラン
ダム共重合体の水素添加物などが含まれる。本発明のゴ
ム質重合体は、1種単独で使用することも、あるいは2
種以上を混合して使用することもできる。
【0009】上記ゴム質重合体の平均粒径は、好ましく
は150〜500nmであり、さらに好ましくは150
〜400nm、特に好ましくは200〜350nmであ
る。平均粒径が150nm未満では、得られる難燃性熱
可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低く、一方、500nm
を超えると、樹脂組成物の透明性、特に曇価(Haz
e)が低下する。上記ゴム質重合体は、1種単独で使用
することも、または異なる2種の平均粒径を有するゴム
質重合体を混合して使用することもできる。
【0010】上記ゴム強化重合体(a)中のゴム質重合
体の配合量は、好ましくは5〜40重量%、さらに好ま
しくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜30重量
%である。ゴム質重合体の配合量が5重量%未満では、
耐衝撃強度が低下し、一方、40重量%を超える場合
は、剛性、燃焼性に劣る。
【0011】ゴム強化重合体(a)に用いられる(メ
タ)アクリル酸エステル化合物としては、アクリル酸メ
チル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリ
ル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、
アクリル酸オクチル、2−エチルヘキシルアクリレー
ト、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレー
ト、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレー
ト、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステル;
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル
酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミ
ル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、2
−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタ
クリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメ
タクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタ
クリレートなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられ
る。これらの中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸ブ
チル、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0012】ゴム強化重合体(a)中の(メタ)アクリ
ル酸エステル化合物の配合量は、単量体全成分中に50
重量%以上、好ましくは50〜90重量%、さらに好ま
しくは55〜80重量%である。(メタ)アクリル酸エ
ステル化合物の配合量が、単量体全成分中に50重量%
以上であると、透明性、レーザーマーキング性に優れる
が、一方、50重量%未満では、透明性が低下する。
【0013】上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合
可能な単量体成分としては、芳香族ビニル化合物、シア
ン化ビニル化合物、酸無水物、マレイミド系化合物など
が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレ
ン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メ
チルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、
メチル−α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,
1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミ
ノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノメチ
ルスチレン、ビニルピリジン、ビニルキシレンなどが挙
げられ、特にスチレン、α−メチルスチレン、p−メチ
ルスチレンが好ましい。単量体成分中に、α−メチルス
チレンを10〜50重量%、好ましくは20〜30重量
%用いると、本発明の難燃性樹脂組成物に耐熱性を付与
することができる。
【0014】シアン化ビニル化合物としては、アクリロ
ニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、アクリ
ロニトリルが好ましい。酸無水物としては、無水マレイ
ン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げら
れ、無水マレイン酸が好ましい。マレイミド系化合物と
しては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチ
ルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メ
チルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェ
ニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなど
が挙げられ、N−フェニルマレイミドが好ましい。これ
らの単量体成分は、単独であるいは2種以上混合して用
いられる。
【0015】さらに、上記単量体成分には、必要に応じ
て、官能基含有ビニル単量体を共重合することもでき
る。官能基含有ビニル単量体としては、具体例として、
グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、
アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有不飽和
化合物;3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキ
シ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、
トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキ
シ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチル
アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、
ヒドロキシスチレンなどの水酸基含有不飽和化合物;ア
クリルアミド、メタクリルアミドなどの不飽和カルボン
酸アミド;アクリルアミン、メタクリル酸アミノメチ
ル、メタクリル酸アミノエーテル、メタクリル酸アミノ
プロピル、アミノスチレンなどのアミノ基含有不飽和化
合物;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和酸;ビニ
ルオキサゾリンなどのオキサゾリン基含有不飽和化合物
などが挙げられる。上記官能基含有ビニル単量体は、単
独であるいは2種以上混合して用いられる。これらの官
能基含有ビニル単量体を共重合することで、他の樹脂を
配合した場合に、該樹脂との界面密着(相溶性)を高め
ることができる。また、ゴム強化重合体(a)中の上記
官能基含有ビニル単量体の配合量は、単量体成分中に好
ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.5
〜12重量%である。
【0016】ゴム強化重合体(a)中の(メタ)アクリ
ル酸エステル化合物以外の単量体成分の含有量は、50
重量%未満、好ましくは40重量%未満10重量%以
上、さらに好ましくは40重量%未満20重量%以上で
ある。(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の単量体
成分が50重量%以上では、透明性が低下する。ゴム強
化重合体(a)中の単量体全成分の配合量は、好ましく
は95〜60重量%、さらに好ましくは95〜70重量
%、特に好ましくは90〜70重量%である。単量体全
成分の配合量が、95重量%を超えると、耐衝撃強度が
低下し、一方、60重量%未満では、剛性、燃焼性が劣
る。
【0017】上記ゴム強化重合体(a)のグラフト率
は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは15
〜90%、特に好ましくは20〜70%である。グラフ
ト率が10%未満では、得られる難燃性樹脂組成物の外
観不良、耐衝撃強度の低下が生じ好ましくない。一方、
100%を超えると、成形加工性が劣るここで、グラフ
ト率(%)は、ゴム強化重合体1g中のゴム成分重量を
x、メチルエチルケトン不溶分重量をyとすると、次式
により求められた値である。 グラフト率(%)=〔(y−x)/x〕×100
【0018】また、本発明のゴム強化重合体(a)のマ
トリックス成分であるメチルエチルケトン可溶分の極限
粘度〔η〕(30℃、メチルエチルケトン中で測定)
は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、さらに好まし
くは0.2〜0.9dl/g、特に好ましくは0.3〜
0.7dl/gである。極限粘度〔η〕が上記範囲内で
あると、耐衝撃性、成形加工性(流動性)に優れた本発
明の難燃性熱可塑性樹脂組成物が得られる。なお、上記
グラフト率(%)、極限粘度〔η〕は、重合開始剤、連
鎖移動剤、乳化剤、溶剤などの種類や量、さらに重合時
間、重合温度などを変えることにより、容易に制御する
ことができる。
【0019】また、本発明のゴム強化重合体(a)のゴ
ム質重合体(ゴム成分)の屈折率とマトリックス樹脂の
屈折率との差は、好ましくは0.05以下、さらに好ま
しくは0.02以下、特に好ましくは0.01以下であ
る。上記屈折率の差が上記範囲内であると、透明性の良
好な、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0020】さらに、本発明のゴム強化重合体(a)の
曇価(Haze)は、難燃性熱可塑性樹脂組成物の成形
品(厚み2.4mm)とした場合、好ましくは15以
下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは8以下
である。また、本発明のゴム強化重合体(a)の全光線
透過率(Tt)は、難燃性熱可塑性樹脂組成物の成形品
(厚み2.4mm)とした場合、好ましくは75%以
上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは85
%以上である。
【0021】本発明のゴム強化重合体(a)は、ゴム質
重合体の存在下に、アクリル酸エステル化合物50重量
%以上を含む単量体成分を、公知の乳化重合、懸濁重
合、溶液重合、塊状重合などでラジカルグラフト重合を
行い、製造することができる。この際、乳化重合には、
重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水
などが用いられる。なお、ゴム強化重合体(a)を製造
するのに用いるゴム質重合体および単量体成分は、ゴム
質重合体全量の存在下に、単量体成分を一括添加して重
合してもよく、分割もしくは連続添加して重合してもよ
い。また、これらを組み合わせた方法で、重合してもよ
い。さらに、ゴム質重合体の全量または一部を、重合途
中で添加して重合してもよい。
【0022】重合開始剤としては、クメンハイドロパー
オキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキ
サイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどで代
表される有機ハイドロパーオキサイド類と含糖ピロリン
酸処方、スルホキシレート処方などで代表される還元剤
との組み合わせによるレドックス系、あるいは過硫酸カ
リウムなどの過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル
(AIBN)、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、
ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウ
レイト、t−ブチルパーオキシモノカーボネートなどの
過酸化物が使用される。また、上記油溶性開始剤と水溶
性開始剤とを組み合わせてもよい。組み合わせる場合の
水溶性開始剤の添加比率は、全添加量の好ましくは50
重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下である。
さらに、重合開始剤は、重合系に一括または連続的に添
加することができる。重合開始剤の使用量は、単量体成
分に対し、通常、0.1〜1.5重量%、好ましくは
0.2〜0.7重量%である。
【0023】連鎖移動剤は、公知のものが使用できる。
具体的には、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメル
カプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメ
ルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テト
ラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン
などのメルカプタン類、テトラエチルチウラムスルフィ
ド、四塩化炭素、臭化エチレン、ペンタフェニルエタン
などの炭化水素塩類、テルペン類、またはアクロレイ
ン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘ
キシルチオグリコール、α−メチルスチレンのダイマー
などが挙げられる。これら連鎖移動剤は、単独でも2種
以上を組み合わせても使用することができる。連鎖移動
剤の使用量は、単量体成分に対して、通常、0.05〜
2.0重量%用いられる。
【0024】乳化重合の場合に使用する乳化剤は、公知
のものが使用できる。具体的には、高級アルコールの硫
酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムな
どのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナト
リウムなどの脂肪族スルホン酸塩、高級脂肪族カルボン
酸塩、リン酸系などのアニオン性界面活性剤、ポリエチ
レングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテ
ル型などのノニオン系界面活性剤が挙げられる。これら
は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混
合して用いることもできる。乳化剤の使用量は、通常、
単量体成分に対して、通常、0.3〜5.0重量%であ
る。
【0025】ゴム強化重合体(a)を乳化重合により製
造する場合、通常、凝固剤により凝固して得られた粉末
を水洗後、乾燥することによって精製される。この凝固
剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化
マグネシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩や、硫酸、
塩酸などの酸を使用することができる。
【0026】本発明の(A)熱可塑性樹脂は、上記ゴム
強化重合体(a)単体でもよいし、必要に応じてゴム強
化重合体(a)に(共)重合体を配合してもよい。ここ
で、(共)重合体は、ゴム強化重合体(a)の単量体成
分と同一の組成であっても、異なっていてもよい。ま
た、上記(共)重合体は、幾つかの(共)重合体成分の
組み合わせであってもよい。(A)熱可塑性樹脂中の、
ゴム強化重合体(a)以外の(共)重合体の含有量は、
(A)成分中に50重量%未満、好ましくは0〜40重
量%、さらに好ましくは0〜30重量%である。
【0027】代表的な(A)熱可塑性樹脂としては、下
記のような組成が挙げられるが、本発明の権利範囲は、
その請求範囲を越えないかぎり、下記の例示に何ら限定
されるものではない。 メタクリル酸メチル(MMA)をグラフト重合したA
BS樹脂 MMAをグラフト重合したABS樹脂/MMA−スチ
レン(ST)−アクリロニトリル(AN)の3元共重合
体 MMAをグラフト重合したAES樹脂 スチレン−ブタジエンゴムにMMA−ST−ANをグ
ラフト重合した樹脂 スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物にMMA
−ST−ANをグラフト重合した樹脂
【0028】次に、本発明の(B)難燃剤は、上記一般
式(I)で表されるリン酸エステル化合物および/また
は上記一般式(II)で表される縮合リン酸エステル化合
物である。
【0029】ここで、一般式(I)で表されるリン酸エ
ステル化合物の具体例としては、ビス−(フェニル)−
メチルホスフェート、ビス−(エチル)−フェニルホス
フェート、ビス−(エチル)−2,6−ジメチルフェニ
ルホスフェート、ビス−(フェニル)−エチルホスフェ
ート、ビス−(フェニル)−ブチルホスフェート、ビス
−(ネオペンチル)−フェニルホスフェート、ビス−
(4−メチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスフェ
ート、ビス−(2−エチルヘキシル)−フェニルホスフ
ェート、ビス−(フェニル)−2−エチルヘキシルホス
フェート、ビス−(フェニル)−オクチルホスフェー
ト、ビス−(オクチル)フェニルホスフェート、ビス−
(3,5,5−トリメチルヘキシル)フェニルホスフェ
ート、ビス−(2,5,5−トリメチルヘキシル)−4
−メチルフェニルホスフェート、ビス−(フェニル)−
イソデシルホスフェート、ビス−(ドデシル)−4−メ
チルフェニルホスフェート、ビス−(ドデシル)フェニ
ルホスフェート、トリス−(フェニル)ホスフェート、
トリス−(2−メチルフェニル)ホスフェート、トリス
−(4−メチルフェニル)ホスフェート、ビス−(2−
メチルフェニル)フェニルホスフェート、ビス−(4−
メチルフェニルフェニル)フェニルホスフェート、ビス
−(フェニル)−2−メチルフェニルホスフェート、ビ
ス−(フェニル)−4−メチルフェニルホスフェート、
トリス−(イソプロピルフェニル)ホスフェート、ビス
−(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、ビ
ス−(フェニル)−イソプロピルフェニルホスフェー
ト、トリス−(ノニルフェニル)ホスフェート、トリス
−(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、ビス−
(2,6−ジメチルフェニル)フェニルホスフェート、
ビス−(2,6−ジメチルフェニル)−2,6−ジメチ
ルフェニルホスフェート、ビス−(2,6−ジメチルフ
ェニル)−4−t−ブチルフェニルホスフェート、ビス
−(2,6−ジメチルフェニル)−4−メチルフェニル
ホスフェート、ビス−(2,6−ジメチルフェニル)−
3−メチルフェニルホスフェート、ビス−(2,6−ジ
メチルフェニル)−4−イソプロピルフェニルホスフェ
ート、ビス−(2,6−ジメチルフェニル)−2−イソ
プロピルフェニルホスフェートである。
【0030】また、一般式(II) で表される縮合リン酸
エステル化合物は、1種類の化合物として、または2種
類以上の異なる縮合リン酸エステル化合物の混合物とし
てのいずれの形態でも使用することができる。混合物の
場合は、Nの値は、縮合リン酸エステル化合物の混合物
中の平均値を表す。アリール基であるR4 、R5 、R6
およびR7 は、好ましくはクレジル基、フェニル基、キ
シレニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、
およびこれらの塩素化または臭素化誘導体の群から選ば
れた少なくとも1種である。上記アリール基は、その水
素原子がハロゲン原子またはアルキル基により置換され
ていてもよい。アリーレン基Xは、例えば、レゾルシノ
ール、ハイドロキノン、ビスフェノールAおよびこれら
の塩素化物および臭素化物などのジヒドロキシ化合物か
ら誘導される基である。これらの化合物は、それ自体公
知である。それぞれが異なるN値を有する上記縮合リン
酸エステル化合物の混合物も、容易に使用することがで
きる。好適に使用される縮合リン酸エステル化合物は、
j、k、l、およびmが全て1であり、R4 、R5 、R
6 およびR7 がすべてフェニル基を表し、Xがフェニレ
ン基を表し、Nが1.2〜1.7である一般式(II)で
表される縮合リン酸エステル化合物またはリン酸エステ
ル化合物の混合物である。
【0031】本発明の(B)難燃剤は、(A)熱可塑性
樹脂100重量部に対し、5〜20重量部、好ましくは
5〜17重量部、さらに好ましくは6〜15重量部、特
に好ましくは8〜13重量部使用される。(B)成分
は、(A)成分100重量部に対し、5〜20重量部の
範囲内で、必要とする燃焼性を発現する量を任意に配合
できるが、5重量部未満では燃焼性が低下する。一方、
必要以上の(B)成分の使用は、コスト、物性面でマイ
ナスであり、特に使用量が20重量部を超えると、耐衝
撃性が低下する。
【0032】本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、
耐衝撃性を向上させる目的で、必要に応じて、(C)エ
チレンオキサイド単位を35〜65重量%含む、ポリエ
ーテルエステルアミド、ポリエーテルアミド、および芳
香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加
物の群から選ばれた少なくとも1種を配合することがで
きる。上記ポリエーテルエステルアミドとしては、ポリ
アミド/テレフタル酸、イソフタル酸、またはアジピン
酸などの脂肪族(あるいは芳香族)ジカルボン酸/エチ
レングリコールなどの脂肪族ジオール、の組み合わせ、
ポリアミドエステルのエチレンオキサイドとの組み合わ
せの、グラフト反応物やブロック反応物などが挙げられ
る。ポリエーテルアミドとしては、ヘキサメチレンジア
ミンとアジピン酸塩などのジカルボン酸とジアミンの塩
の混合物、またはラクタムと、エチレンオキサイドとの
グラフト反応物やブロック反応物などが挙げられる。な
お、上記ポリエーテルエステルアミドやポリエーテルア
ミドの屈折率は、好ましくは1.49〜1.53であ
り、さらに好ましくは1.51〜1.52である。
【0033】上記(C)成分を構成するポリエーテルエ
ステルアミドやポリエーテルアミド中のエチレンオキサ
イド単位の含有量は、35〜65重量%であり、好まし
くは40〜60重量%である。エチレンオキサイド単位
の含有量が、35重量%未満では、透明性が低下し、一
方、65重量%を超えると、耐衝撃強度、熱安定性が低
下する。
【0034】芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重
合体の水素添加物としては、一般式Xp ・Yq ・Zr
表される組成を有するブロック共重合体を水素添加して
得られる誘導体である。ただし、Xは芳香族ビニル化合
物の重合体ブロック、Yは共役ジエンのエラストマー重
合体ブロック、Zは、Sn、Siなどのカップリング剤
残基であり、pおよびqは、それぞれ0〜5の整数であ
り、rは0または1である。上記Xを構成する芳香族ビ
ニル化合物としては、好ましくはスチレン、α−メチル
スチレン、ビニルトルエンなどであり、特にスチレンが
好ましい。上記Yを構成する共役ジエンとしては、ブタ
ジエン、イソプレンが好ましい。上記芳香族ビニル−共
役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物の屈折率は、
好ましくは1.49〜1.53であり、さらに好ましく
は1.50〜1.52である。
【0035】本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物中の
(C)成分の配合量は、(A)熱可塑性樹脂100重量
部に対し、0〜5重量部であり、この範囲内であれば、
透明性を維持したまま、耐衝撃強度を大幅に改良でき
る。(C)成分の配合量は、好ましくは0.5〜3重量
部、さらに好ましくは1〜3重量部である。配合量が5
重量部を超えると、難燃性、透明性が低下し好ましくな
い。
【0036】本発明の(A)熱可塑性樹脂100重量部
に対して、(B)成分5〜20重量部、(C)成分0〜
5重量部、(D)黒色系化合物0.01〜5重量部を配
合すると、レーザーマーキング性を有する難燃性熱可塑
性樹脂組成物が得られる。本発明に用いられる(D)黒
色系化合物は、波長−反射率曲線で表すのであれば、4
00〜700nmの波長の全領域に対して、反射率が1
0%以下、好ましくは5%以下のものである。すなわ
ち、この400〜700nmの全領域の波長の光を吸収
する化合物であれば、本発明の(D)成分として使用で
きる。
【0037】上記(D)黒色系化合物としては、カーボ
ンブラック、黒色酸化鉄、チタンブラック、黒色染料、
黒鉛などが挙げられる。カーボンブラックとしては、ア
セチレンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラ
ック、ケッチェンブラックなどのいずれも使用可能であ
る。カーボンブラックの好ましい粒径は、10〜80n
m、さらに好ましくは、12〜40nmである。粒径が
小さい方が樹脂中での分散性が良く、レーザーマーキン
グ発色性が良好である。また、カーボンブラックの好ま
しい比表面積は20〜1,500m2 /g、好ましい吸
油量は35〜300ml/100g、好ましいpHは2
〜10である。
【0038】また、黒色酸化鉄は、Fe3 4 やFeO
・Fe2 3 で表される黒色の鉄酸化物である。黒色酸
化鉄の好ましい粒径は、0.3〜0.8μm、さらに好
ましくは、0.4〜0.6μmであり、その形状として
は、球状、立方状、針状などのいずれも使用できるが、
立方状が好ましい。さらに、チタンブラックは、二酸化
チタンを還元することによって得られる化合物である。
チタンブラックの好ましい粒径は、0.1〜60μm、
さらに好ましくは、1〜20μmである。
【0039】本発明のレーザーマーキング用熱可塑性樹
脂組成物には、染料・有機顔料などを配合することもで
きる。これらの、染料・有機顔料などと黒色系化合物を
併用することで、有彩色を呈するレーザーマーキング性
が得られる。上記染料・有機顔料などを波長−反射率曲
線で表すのであれば、400〜700nmの波長領域に
おいて、部分的に反射率が40%以上の領域、好ましく
は50%以上の領域を有する、染料・有機顔料である。
これらの染料・有機顔料を適切に選定することで、黄
色、赤、青、緑、紫などの有彩色を明彩に発色すること
ができる。基本的には、配合する染料・有機顔料の色彩
が、レーザー光照射時に照射部分を発色させる。
【0040】本発明に使用可能な染料としては、ニトロ
ソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、
ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン
染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン染料、チ
アゾール染料、インダミン染料、アジン染料、オキサジ
ン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン染料、
アントラキノン染料、インジゴイド染料などが挙げられ
る。
【0041】これらの染料の具体例としては、Mord
ant Green 4、Disperse Yell
ow 14、Disperse Yellow 31、
Acid Yellow 2、Direct Yell
ow 59、Basic Yellow 2、Basi
c Orange 23、Direct Orange
71、Direct Red 28、Acid Re
d 52、Solvent Blue 22、Acid
Blue 59、Mordant Blue10、A
cid Blue 45、Vat Blue 41、ト
ルイジンマルーン、パーマネントレッドAG、ハンザエ
ローG、ハンザエロー10G、ベンジジンオレンジ2G
などが挙げられる。
【0042】また、有機顔料としては、一般的に用いら
れるものが使用できるが、なかでも、配位している金属
がカルシウム、ニッケル、鉄、バリウム、ナトリウム、
銅、モリブデン、コバルト、マンガン、亜鉛、チタン、
マグネシウム、カリウムなどのものが好ましい。具体的
な有機顔料としては、ウォッチングレッド(Ca)、グ
リーンゴールド(Ni)、ピグメントグリーンB(F
e)、ピグメントスカーレット3B(Ba)、ファース
トスカイブルー(Ba)、フタロシアニングリーン(F
e)、フタロシアニンブルー(Cu)、ブリリアントカ
ーミン6B(Ca)、ボルドー10B(Na)、リソー
ルレッドR(Na)、レーキレッドD(Na)、ブリリ
アントスカーレットG(Ca)、マンガンバイオレット
(Mn)、コバルトバイオレット(Co)などが挙げら
れる。なお、有機顔料に含まれる元素を、これらの名称
の後の括弧内に示した。
【0043】本発明のレーザーマーキング性を有する難
燃性熱可塑性樹脂組成物中の(D)成分の配合量は、
(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.01〜5
重量部であり、好ましくは0.05〜3重量部、さらに
好ましくは0.1〜1重量部である。(D)成分の配合
量が0.01重量部未満であると、レーザーマーキング
発色に劣り、一方、5重量部を超えると、レーザーマー
キング発色、耐衝撃性に劣る。
【0044】本発明のレーザーマーキング性を有する難
燃性熱可塑性樹脂組成物は、その成形品表面をレーザー
光で照射することで、照射部分を明彩に発色させること
が可能である。ここで、レーザー光としては、He−N
e、Arレーザー、CO2 レーザー、エキシマレーザー
などの気体レーザー、YAGレーザーなどの固体レーザ
ー、半導体レーザー、色素レーザーなどが挙げられ、な
かでも、CO2 レーザー、YAGレーザーが好ましい。
YAGレーザー光の波長は、1,054nmである。
【0045】本発明のレーザーマーキング性を有する難
燃性熱可塑性樹脂組成物の成形表面をレーザー光で照射
すると、レーザー光照射部分は、通常、レーザー光照射
による発泡現象で、未照射部分よりやや盛り上がる。こ
の照射部分の好ましい盛り上がり高さは、1〜100μ
m程度であるが、10〜80μm程度が、レーザーマー
キング発色、照射(文字)部分の認識が鮮明で好まし
い。また、この文字高さを利用して、点字用の成形品を
作製することも可能である。なお、当然のことながら、
レーザー光照射により、樹脂表面内部にも発泡現象が生
じる。
【0046】本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、
必要に応じて、ガラス繊維、炭素繊維、ワラストナイ
ト、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ミルドファイバ
ー、酸化亜鉛ウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー
などの充填材を、1種単独でまたは2種以上併用するこ
とができる。これらの充填材を配合することで、本発明
の難燃性熱可塑性樹脂組成物に剛性を付与することがで
きる。また、タルクなどを配合することで、本発明の難
燃性熱可塑性樹脂組成物に艶消し性を付与することがで
きる。上記ガラス繊維、炭素繊維の好ましい形状として
は、繊維径が6〜20μm、繊維長が30μm以上であ
る。これらの充填材の配合量は、本発明の難燃性熱可塑
性樹脂組成物100重量部に対し、好ましくは、1〜5
0重量部、さらに好ましくは、2〜30重量部である。
充填材の配合量が50重量部を超えると、レーザーマー
キング性、成形品外観、実用耐衝撃性が損なわれる。
【0047】また、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物
には、アンチモン化合物などの難燃助剤、公知のカップ
リング剤、抗菌剤、防カビ剤、酸化防止剤、耐候(耐
光)剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料など)、滑剤、帯
電防止剤、シリコーンオイルなどの添加物を、要求され
る性能を損なわない範囲で配合することができる。
【0048】さらに、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成
物には、要求される性能に応じて、他の熱可塑性樹脂・
熱硬化性樹脂などの他の(共)重合体を配合することが
できる。ここで、他の重合体としては、ポリカーボネー
ト、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ
エステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ
フェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリフッ化ビニ
リデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン−酢酸
ビニル共重合体、ポリアミドエラストマー、ポリアミド
イミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、フェ
ノール樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂などが挙げ
られる。これらのなかで、ポリアミド、ポリエチレン、
ポリプロピレンなどを配合すると、レーザーマーキング
性発色をより明彩にすることができる。
【0049】本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、各
種押し出し機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロー
ル、フィーダールーダーなどを用い、各成分を混練りす
ることにより得られる。好ましい製造方法は、押し出し
機、バンバリーミキサーを用いる方法である。また、各
成分を混練りするに際しては、各成分を一括して混練り
してもよく、数回に分けて添加混練りしてもよい。混練
りは、押し出し機で多段添加式で混練りしてもよく、ま
たバンバリーミキサー、ニーダーなどで混練りし、その
後、押し出し機でペレット化することもできる。
【0050】このようにして得られる本発明の難燃性熱
可塑性樹脂組成物は、射出成形、シート押し出し、真空
成形、異形成形、発泡成形、インジェクションプレス、
プレス成形、ブロー成形などによって、各種成形品に成
形することができる。
【0051】上記成形法によって得られる各種成形品
は、難燃性(溶融滴下性)、透明性に優れ、かつ実用的
な耐衝撃強度、熱変形温度を有しており、OA・家電分
野、電気・電子・通信分野、コンピュータ分野、雑貨分
野、サニタリー分野、自動車分野、携帯電話、PPCな
どの透明性を要求される各種パーツ、ハウジング、シャ
ーシ、トレー、ボタン、スイッチ、表示枠などに使用す
ることができる。また、本発明のレーザーマーキング性
に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物は、FAX、プリン
ター、コンピューター、リモコンなどのOA機器、掃除
機、電子レンジ、エアコンなどの家電機器、電卓のキー
キャップ、パソコンのキーボードなどに適用され、それ
らへのメーカー名、数字、アルファベット、バーコー
ド、品質などの表示にレーザーマーキング技術が使用で
きる。レーザーマーキングで発色させた文字部分は、印
刷した文字部分よりも、耐候性が優れ、かつ、耐摩耗性
にも優れるので、印刷よりも遙かに実用上好ましい。
【0052】
【実施例】以下、実施例を挙げ本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の
実施例に何等制約されるものではない。なお、実施例
中、部および%は特に断らない限り重量基準である。ま
た、実施例中の各種評価は、次のようにして測定したも
のである。グラフト率 本文中に記載
【0053】極限粘度〔η〕 ゴム強化重合体をメチルエチルケトンに投入し、振とう
機で6時間振とうする。これを、遠心分離機(回転数2
3,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可
溶分とを分離する。この可溶分を真空乾燥機で充分乾燥
する。この可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃
度の異なるものを5点作る。ウベローデ粘度管を用い、
30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘
度〔η〕を求めた。屈折率 サンプルをフィルム状にし、アッベ屈折率計で測定し
た。
【0054】耐衝撃性(アイゾット衝撃強度) (株)日本製鋼所製射出成形機J100E−C5を用
い、シリンダー温度220℃、金型温度50℃で、JI
S K7110の2号型試験片を成形し、アイゾット衝
撃強度を測定した。単位は、J/mである。流動性(メルトフローレート) ASTM D1238に準じて測定した。測定温度は2
20℃、荷重は10kg、単位はg/10分である。
【0055】熱変形温度 幅6.4mm×長さ128mm×厚み12.8mmの試
験片を使用し、JISK7207に準拠して、曲げ応力
18.5kgf/cm2 で測定した。燃焼性(難燃性) UL94規格に定められた方法により、長さ5″×幅1
/2″×厚み1/12″の試験片について垂直燃焼試験
を行った。本発明においては、UL94規格V−2ラン
クを溶融滴下性ありとした。評価結果について、Bは、
燃焼(burning)で、V−2不適合を表す。
【0056】透明性〔曇価(Haze)〕 厚み2.4mmの試験片を使用し、ASTM D100
3に準拠して測定した。単位は%である。全光線透過率(Tt) 厚み2.4mmの試験片を使用し、ASTM D100
3に準拠して測定した。単位は%である。
【0057】レーザーマーキング性 難燃性熱可塑性樹脂組成物を射出成形機を用いて板状の
成形品を作製した。その成形品表面を、カールバーゼル
社製のレーザーマーカー(スターマーク65W;YAG
レーザー光)を用いてレーザーマーキングした。照射す
ることにより、発色する部分の発色性、認識性、鮮明さ
を目視で判断し、下記の評価基準で表した。 ○;良好(鮮明でかつ認識性良好な文字発色を呈する場
合) △;良(鮮明度と認識性の何れかが劣る場合) ×;劣る(鮮明度、認識性ともに劣る場合)
【0058】参考例1〔ゴム強化重合体(a−1)〜
(a−2)の調製〕 攪拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコ
に、ポリブタジエン15部(固形分換算)、ドデシルベ
ンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、t−ドデシルメ
ルカプタン0.1部、およびイオン交換水100部を混
合し、スチレン5部、アクリロニトリル5部およびメタ
クリル酸メチル10部を加えた。攪拌しながら45℃ま
で昇温後、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.1
部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリ
ウムスルホキシレート・2水和物0.2部およびイオン
交換水15部よりなる活性剤水溶液、ならびにジイソプ
ロプルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部を添加
し、1時間反応を続けた。
【0059】その後、スチレン10部、アクリロニトリ
ル5部、メタクリル酸メチル50部、ドデシルベンゼン
スルホン酸ナトリウム1部、t−ドデシルメルカプタン
0.1部、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサ
イド0.2部、イオン交換水50部からなるインクレメ
ンタル重合成分を3時間にわたって連続的に添加し、重
合反応を続けた。添加終了後、さらに1時間攪拌を続け
た後、2,2−メチレン−ビス−(4−エチレン−6−
t−ブチルフェノール)0.2部を添加し、反応生成物
をフラスコより取り出した。反応生成物のラテックスを
塩化カルシウム2部で凝固し、反応生成物を良く水洗し
た後、75℃で24時間乾燥し、白色粉末のゴム強化重
合体(a−1)を得た。重合転化率は、98.5%、グ
ラフト率は40%、極限粘度〔η〕は、0.40dl/
gであった。ゴム成分の屈折率は、1.513、マトリ
ックス樹脂の屈折率は、1.517であった。同様の方
法により、表1に示すように、単量体成分の種類・配合
処方、連鎖移動剤の使用量、重合温度、重合時間などを
変えて、ゴム強化重合体(a−2)を得た。
【0060】参考例2〔共重合体(a−3)の調製〕 また、同様の方法により、表1に示すような単量体成分
の種類・配合処方で、ゴム強化重合体(a)成分の単量
体成分のみを別途重合し、MMA−スチレン−アクリロ
ニトリル3元共重合体(a−3)を得た。得られた
(A)成分(a−1)〜(a−3)のグラフト率、極限
粘度〔η〕、および屈折率を表1に示す。
【0061】参考例3〔ゴム強化重合体(a−4)、A
S樹脂の調製〕 (a−1)と同様の方法により、表1に示すような単量
体成分、量を変えて、ゴム強化重合体(a−4)および
AS樹脂を得た。
【0062】
【表1】
【0063】参考例3〔難燃剤(B−1)〜(B−3)
の調製〕 下記に示す難燃剤(B−1)〜(B−2)、比較用難燃
剤(B−3)を使用した。 (B−1);上記一般式(II)で表される縮合リン酸エ
ステル化合物(ただし、R4 、R5 、R6 およびR
7 は、2,6−ジメチルフェニル基を表し、Xはアリー
レン基を表し、j、k、l、およびmは、それぞれ1で
あり、Nは1である。)、大八化学工業(株)製(商品
名;PX200) (B−2);トリフェニルフォスフェート(上記一般式
(I)で表されるリン酸エステル化合物であり、R1
2 およびR3 は、フェニル基を表す。)、大八化学工
業(株)製 比較用難燃剤(B−3);テトラブロモビスフェノール
Aとエピクロルヒドリンからなる両末端の少なくとも8
0%以上をトリブロモフェノールで封止したオリゴマー
(臭素化エポキシ樹脂)、臭素含有量56%、分子量約
2,000
【0064】参考例4〔(C)成分の調製〕 (C)成分として、下記に示すポリエーテルエステルア
ミドを使用した。 ポリエーテルエステルアミド;ナイロン6ブロック/ポ
リエチレンオキサイド=50/50(%)、屈折率1.
513 ナイロン6とポリエチレンオキサイドは、テレフタル酸
でエステル化した。
【0065】参考例5〔(D)成分の調製〕 下記に示す黒色系化合物(D−1)〜(D−2)を使用
した。 (D−1);デグサ(株)社製カーボンブラック
【0066】実施例1〜6、比較例1〜6 上記各成分を、表2〜3に示す配合割合でヘンシェルミ
キサーにより3分間ミキシングした後、ナカタニ機械
(株)製NVC型50mmベント押し出し機でシリンダ
ー設定温度220℃で溶融混練り押し出しし、ペレット
を得た。得られたペレットを充分に乾燥し、(株)日本
製鋼所製射出成形機J100E−C5を用い、シリンダ
ー温度220℃、金型温度50℃で射出成形し、試験片
を得た。この試験片を用い、上記評価法で評価した。評
価結果を表2〜3に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】実施例1〜6より明らかなように、本発明
の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、いずれも実用レベルの
耐衝撃強度、流動性、難燃性、透明性を有し、優れた材
料であった。また、実施例3および6において、黒色系
化合物を本発明の範囲内で配合して、試験片を作成し、
YAGレーザー光を照射したところ、照射部分が明瞭な
白発色を呈した。このように、本発明の難燃性熱可塑性
樹脂組成物は、適切な着色剤を使用することで、レーザ
ーマーキング用途にも好適である。
【0070】一方、比較例1は、(B)成分の配合量が
本発明の範囲を超える例であり、耐衝撃強度、透明性が
劣る。比較例2は、(B)成分が本発明の難燃剤ではな
く、透明性(曇価)、全光線透過率(Tt)が劣る。比
較例3は、(a)成分の単量体配合割合が本発明の範囲
外であり、透明性が劣る。比較例4は、(C)成分の配
合量が本発明の範囲を超えており、難燃性、熱変形温
度、透明性が劣る。比較例5は、(B)成分の配合量が
本発明に規定する量未満であり、難燃性、透明性が劣
る。比較例6は、(D)成分の配合量が本発明の範囲を
超えており、難燃性、レーザーマーキング性が劣る。
【0071】
【発明の効果】本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、
難燃性(溶融滴下性)、透明性に優れ、かつ実用的な耐
衝撃強度、熱変形温度を有しており、広範囲の用途、例
えばOA・家電機器分野、電気・電子分野、通信機器分
野、サニタリー分野、自動車分野、雑貨分野、携帯電
話、PPCなどの透明性を要求される各種パーツ、ハウ
ジング、シャーシー、トレー、ボタン、スイッチ、表示
枠などに有用である。また、黒色系化合物を配合した本
発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、レーザーマーキン
グ性に優れ、上記各種成形品へのメーカー名、数字、ア
ルファベット、バーコード、品質などの表示にレーザー
マーキング技術が使用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 77:00 53:02) (72)発明者 伊藤 博幸 東京都中央区京橋一丁目18番1号 テクノ ポリマー株式会社内 Fターム(参考) 4J002 BN131 BN161 BP012 CL072 CL082 DA027 DA037 DE117 DE137 EW046 FD097 FD136

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)ゴム質重合体の存在下に、(メ
    タ)アクリル酸エステル化合物50重量%以上を含む単
    量体成分をグラフト重合して得られるゴム強化重合体
    (a)を主成分とする熱可塑性樹脂100重量部に対し
    て、 (B)下記一般式(I)で表されるリン酸エステル化合
    物および/または下記一般式(II)で表される縮合リン
    酸エステル化合物5〜20重量部、ならびに (C)エチレンオキサイド単位を35〜65重量%含
    む、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミ
    ド、および芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合
    体の水素添加物の群から選ばれた少なくとも1種を0〜
    5重量部を配合したことを特徴とする難燃性熱可塑性樹
    脂組成物。 (ただし、R1 、R2 およびR3 は、それぞれ相互に独
    立して選ばれる炭素数1〜8のアルキル基、またはアル
    キル置換されていることもある炭素数6〜20のアリー
    ル基を表し、nは0または1である。) 【化1】 〔ただし、R4 、R5 、R6 およびR7 は、それぞれ相
    互に独立して選ばれるアリール基またはアルカリール基
    を表し、Xはアリーレン基を表し、j、k、l、および
    mは、それぞれ相互に独立して0または1であり、Nは
    1〜5の整数であるが、リン酸エステル化合物の混合物
    の場合は、Nは平均値(1≦N≦5)を表す。〕
  2. 【請求項2】 上記(A)熱可塑性樹脂100重量部に
    対して、(B)成分5〜20重量部、(C)成分0〜5
    重量部、(D)黒色系化合物0.01〜5重量部を配合
    してなる難燃性熱可塑性樹脂組成物。
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JP2005248138A (ja) * 2003-04-04 2005-09-15 Techno Polymer Co Ltd 成形材料
JP2015108037A (ja) * 2013-12-03 2015-06-11 Jx日鉱日石エネルギー株式会社 液晶ポリエステルアミド樹脂組成物、およびその射出成成形体を構成部材として含むカメラモジュール部品

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