JP2006233013A - 複合ゴム粒子、複合ゴム強化ビニル系樹脂及び熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の複合ゴム粒子は、下記成分(A)からなり且つ重量平均粒子径が50nm以下である樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面の少なくとも一部に形成され且つ下記成分(B)からなる被覆部とを備え、1つの屈折率を有し、重量平均粒子径が5〜3000nmである。
成分(A)は、多官能性単量体(a1)0.01〜5質量%及び他のビニル系単量体(a2)95〜99.99質量%からなる単量体の重合体であり、且つ、ガラス転移温度が0℃以上である樹脂、成分(B)は、多官能性単量体(b1)0.01〜5質量%及び他の単量体(b2)95〜99.99質量%からなる単量体の重合体であり、ガラス転移温度が0℃未満であり、且つ、屈折率が上記成分(A)より低いゴム質重合体。
【選択図】 図1
Description
これらのABS樹脂及びASA樹脂は、ゴム成分の屈折率と、ゴム成分以外の重合体からなるマトリックス成分の屈折率との差が大きいため、成形品とした場合、本質的に光線透過率の低い且つ不透明な成形品となる。そのため、これらの樹脂が、着色剤を含有した場合には、得られる成形品の着色鮮映性に劣ることとなる。従って、これらの樹脂を用いた成形品に、優れた着色鮮映性、外観性を付与させるためには、成形品の表面に塗装を施さなければならなかった。尚、優れた着色鮮映性を備えた成形品を得るためには、一般に、樹脂自体の全光線透過率が50%以上であることが求められ、全光線透過率が30%未満の場合には、着色鮮明性が十分ではないのが実情である。
本発明は、以下に示される。
1.下記成分(A)からなり且つ重量平均粒子径が50nm以下である樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面の少なくとも一部に形成され且つ下記成分(B)からなる被覆部とを備え、1つの屈折率を有し、重量平均粒子径が5〜3000nmであることを特徴とする複合ゴム粒子。
成分(A);多官能性単量体(a1)0.01〜5質量%及び他のビニル系単量体(a2)95〜99.99質量%からなる単量体〔但し、(a1)+(a2)=100質量%である。〕の重合体であり、且つ、ガラス転移温度が0℃以上である樹脂。
成分(B);多官能性単量体(b1)0.01〜5質量%及び他の単量体(b2)95〜99.99質量%からなる単量体〔但し、(b1)+(b2)=100質量%である。〕の重合体であり、ガラス転移温度が0℃未満であり、且つ、屈折率が上記成分(A)より低いゴム質重合体。
2.上記1に記載の複合ゴム粒子であって、重量平均粒子径が30〜3000nmである複合ゴム粒子の存在下に、ビニル系単量体(c)を重合して得られ、且つ、上記複合ゴム粒子の屈折率と、該ビニル系単量体(c)の(共)重合体の屈折率との差が0.02以下であることを特徴とする複合ゴム強化ビニル系樹脂。
3.上記2に記載の複合ゴム強化ビニル系樹脂と、他の熱可塑性樹脂とを含有する組成物であって、該複合ゴム強化ビニル系樹脂の屈折率と、該熱可塑性樹脂の屈折率との差が0.02以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
本発明の複合ゴム強化ビニル系樹脂は、特定の重量平均粒子径を有する複合ゴム粒子の存在下に、ビニル系単量体(c)を重合して得られたものであることから、高い光線透過率を有し、透明性及び力学的強度に優れた成形品を得ることができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記複合ゴム強化ビニル系樹脂と、他の熱可塑性樹脂とを含有することから、光の透過性、透明性及び力学的強度に優れ、着色剤を含む場合には着色鮮映性に優れた成形品とすることができる。
尚、本発明において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。
本発明の複合ゴム粒子は、下記成分(A)からなり且つ重量平均粒子径が50nm以下である樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面の少なくとも一部に形成され且つ下記成分(B)からなる被覆部とを備え、1つの屈折率を有し、重量平均粒子径が5〜3000nmである。
成分(A)は、多官能性単量体(a1)0.01〜5質量%及び他のビニル系単量体(a2)95〜99.99質量%からなる単量体〔但し、(a1)+(a2)=100質量%である。〕の重合体であり、且つ、ガラス転移温度が0℃以上である樹脂であり、成分(B)は、多官能性単量体(b1)0.01〜5質量%及び他の単量体(b2)95〜99.99質量%からなる単量体〔但し、(b1)+(b2)=100質量%である。〕の重合体であり、ガラス転移温度が0℃未満であり、且つ、屈折率が上記成分(A)より低いゴム質重合体である。
この樹脂粒子は、ガラス転移温度が0℃以上の樹脂(成分(A))からなり、且つ、重量平均粒子径が50nm以下である。この成分(A)は、多官能性単量体(a1)0.01〜5質量%及び他のビニル系単量体(a2)95〜99.99質量%からなる単量体混合物(I)を重合することにより得ることができる。
マレイミド化合物としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、マレイミド系化合物を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸を共重合し、その後にイミド化する方法でもよい。
上記多官能性単量体(a1)の含有量が少なすぎる場合(上記ビニル系単量体(a2)の含有量が多すぎる場合)、成分(A)の架橋度が低くなり、樹脂粒子としての形状の保持が困難となり、更に、後に被覆部を形成するための反応起点が少なくなり、本発明の複合ゴム粒子におけるコアシェル型構造が得られない場合がある。また、得られる複合ゴム粒子の透明性が十分でない場合がある。
一方、上記多官能性単量体(a1)の含有量が多すぎる場合(上記ビニル系単量体(a2)の含有量が少なすぎる場合)、樹脂粒子の表面において、後に被覆部を形成するための反応起点が多すぎるため、分子鎖の短い成分(B)が多量に生成してなる被覆部を形成するため、成分(B))のゴム弾性を損なうこととなる。従って、被覆部が硬くなるため、最終的に得られる樹脂組成物の力学的強度が低下する。
尚、上記樹脂粒子は、全体としての重量平均粒子径が50nm以下のものであれば、異なる粒子径又は粒子径分布を有する樹脂粒子の2種類以上を混合して用いてもよい。
更に、ビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アリル基、アリルエーテル基、プロペニル基等の高い反応性を示す重合性不飽和結合を有する反応性乳化剤を用いることもできる。
これらの乳化剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の乳化剤のうち、不均化ロジン酸、オレイン酸塩、ラウリル酸塩、反応性乳化剤が好ましい。
上記乳化剤の使用量は、単量体混合物(I)の全量を100質量部とした場合、通常、0.1〜20質量部である。
上記重合開始剤の使用量は、単量体混合物(I)の全量を100質量部とした場合、通常、0.01〜3.0質量部、好ましくは0.1〜1.5質量部である。
上記分子量調節剤の使用量は、単量体混合物(I)の全量を100質量部とした場合、通常、0.01〜2.0質量部である。
乳化重合は、公知の条件で行えばよく、例えば、重合温度は、好ましくは40〜90℃、より好ましくは45〜85℃である。また、重合時間は、通常、3〜10時間である。
この被覆部は、ガラス転移温度が0℃未満のゴム質重合体(成分(B))からなる。この成分(B)は、多官能性単量体(b1)0.01〜5質量%及び他の単量体(b2)95〜99.99質量%からなる単量体混合物(II)を重合することにより得ることができる。
上記多官能性単量体(b1)のうち、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリレート及びトリアリルシアヌレートが好ましく、メタクリル酸アリルが特に好ましい。
(メタ)アクリル酸のエステルとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−メチルペンチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸n−オクタデシル等が好ましい。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記単量体(b2)としては、アクリル酸エステル及び/又はジエン系化合物を主とする単量体が好ましく、アクリル酸エステルが特に好ましい。このアクリル酸エステルを用いることにより、Tgの低い成分(B)が得られやすく、そして、複合ゴム粒子、複合ゴム強化ビニル系樹脂の熱劣化安定性、耐薬品性、耐候性等に優れる。
上記多官能性単量体(b1)の含有量が少なすぎる場合(上記単量体(b2)の含有量が多すぎる場合)、被覆部を形成する際に、樹脂粒子に対する反応起点が少なくなり、コアシェル型構造の形成が不十分となる場合がある。また、成分(B)の架橋度が低くなり、被覆部のゴム弾性が小さくなるため、そのような複合ゴム粒子を用いて、複合ゴム強化ビニル系樹脂、更には、熱可塑性樹脂組成物を形成し、成形品を製造したとき、成形品の中で複合ゴム粒子の変形が著しく、力学的強度が低下することがあり、また、成形品に異方性を生じることがある。
一方、上記多官能性単量体(b1)の含有量が多すぎる場合(上記単量体(b2)の含有量が少なすぎる場合)、成分(B)の架橋度が高くなり過ぎ、ゴム弾性を失って硬くなることがある。このような、硬い被覆部を有する複合ゴム粒子を用いて、複合ゴム強化ビニル系樹脂、更には、熱可塑性樹脂組成物を形成すると、力学的強度が低下することがある。
また、この被覆部の厚さは、好ましくは75nm以下、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは30nm以下である。但し、下限は、通常、5nmである。ここで、「被覆部の厚さ」とは、本発明の複合ゴム粒子の重量平均粒子径と、樹脂粒子の重量平均粒子径との差の半分の値として得られる。上記被覆部の厚さが上記範囲であれば、複合ゴム粒子が、より均一で且つ透明なものとなる。尚、上記厚さが厚すぎると、透明性が不十分となる場合がある。また、薄すぎると、十分なゴム弾性が得られず、本発明の複合ゴム粒子や、複合ゴム強化ビニル系樹脂、更には、熱可塑性樹脂組成物の力学的強度が低下する場合がある。
本発明の複合ゴム粒子は、樹脂粒子の存在下に、単量体混合物(II)を重合することにより製造することができる。
好ましい製造方法は、乳化重合による方法であり、樹脂粒子を乳化重合により製造した場合には、得られたラテックスをそのまま用いることができる。
上記乳化剤の使用量は、単量体混合物(II)の全量を100質量部とした場合、通常、0〜10質量部である。
上記重合開始剤の使用量は、単量体混合物(II)の全量を100質量部とした場合、通常、0.01〜3.0質量部、好ましくは0.1〜1.5質量部である。
また、上記分子量調節剤の使用量は、単量体混合物(II)の全量を100質量部とした場合、通常、0.01〜2.0質量部である。
乳化重合は、公知の条件で行えばよく、例えば、重合温度は、好ましくは40〜90℃、より好ましくは45〜85℃である。また、重合時間は、通常、3〜10時間である。
即ち、図1の複合ゴム粒子1は、樹脂粒子11と、被覆部12とを備える。
本発明の複合ゴム粒子のうち、肥大化複合ゴム粒子は、上記の複合ゴム粒子が凝集して肥大化したものであり、その模式図は図2に示される。
即ち、図2の肥大化複合ゴム粒子1’は、複合ゴム粒子1の凝集物である。
本発明においては、無水酢酸を用いることが特に好ましく、これにより、任意の粒子径の複合ゴム粒子が得られ、また、得られた複合ゴム粒子の粒子径が経時的に安定である。尚、複合ゴム粒子を形成した後は、必要に応じて、分散体を中和する等の方法が適用される。
尚、上記方法(2)により得られた肥大化複合ゴム粒子の重量平均粒子径は、通常、70〜3000nm、好ましくは85〜2900nmである。
本発明の複合ゴム強化ビニル系樹脂は、重量平均粒子径が30〜3000nmである複合ゴム粒子の存在下に、ビニル系単量体(c)を重合して得られたものである。
ビニル系単量体(c)としては、(メタ)アクリル酸エステル;芳香族ビニル化合物;シアン化ビニル化合物;マレイミド系化合物;不飽和酸;酸無水物;官能基を有する化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
シアン化ビニル化合物としては、上記樹脂粒子の形成に用いるビニル系単量体(a2)として例示したものを、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
オキサゾリン基を有する化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(メタ)アクリル酸エステルを使用する場合には、好ましくは1〜95質量%、更に好ましくは5〜95質量%である。この範囲にあると、着色性及び成形加工性の物性バランスに優れる。
芳香族ビニル化合物の使用量は、好ましくは1〜95質量%、更に好ましくは5〜95質量%である。この範囲にあると、成形加工性及び力学的強度の物性バランスに優れる。
シアン化ビニル化合物を使用する場合には、好ましくは0.5〜50質量%、更に好ましくは1〜45質量%である。この範囲にあると、耐薬品性、色調及び成形加工性の物性バランスに優れる。
不飽和酸を使用する場合には、好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは1〜25質量%である。この範囲にあると、相溶性付与効果及び成形加工性の物性バランスに優れる。
酸無水物を使用する場合には、好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは1〜25質量%である。この範囲にあると、相溶性付与効果及び成形加工性の物性バランスに優れる。
官能基を有するビニル系化合物を使用する場合には、好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは1〜25質量%である。この範囲にあると、相溶性付与効果及び成形加工性の物性バランスに優れる。
尚、複合ゴム粒子の使用量は、複合ゴム強化ビニル系樹脂100質量部の製造に際し、好ましくは5〜80質量部、更に好ましくは6〜70質量部である。この範囲にあれば、透明性及び力学的強度に優れる複合ゴム強化ビニル系樹脂を効率よく製造することができる。
乳化重合は、公知の条件で行えばよく、例えば、重合温度は、好ましくは40〜95℃、より好ましくは40〜85℃である。また、重合時間は、通常、2〜10時間である。
ここで、グラフト率とは、複合ゴム強化ビニル系樹脂1グラム中の複合ゴム粒子をxグラム、複合ゴム強化ビニル系樹脂1グラムをアセトンに溶解させた際の不溶分をyグラムとしたときに、次式により求められる値である。
グラフト率(%)={(y−x)/x}×100
尚、上記のグラフト率及び極限粘度[η]は、複合ゴム強化ビニル系樹脂を製造する際に用いる、乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤、溶媒等の種類・量、更には重合時間、重合温度等を選択することにより、容易に制御することができる。
特に、着色剤を含む複合ゴム強化ビニル系樹脂は、着色鮮映性に優れ、例えば、着色剤としてカーボンブラックを配合した場合には、漆黒性に優れた成形品とすることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記の複合ゴム強化ビニル系樹脂と、他の熱可塑性樹脂(以下、「成分(D)」ともいう。)とを含有する。
成分(D)としては、特に限定されないが、複合ゴム強化ビニル系樹脂の屈折率と、成分(D)の屈折率の差(の絶対値)が0.02以下となるように、更に好ましくは0.01以下となるような物質を用いる。
(メタ)アクリル酸エステルを使用する場合には、好ましくは1〜95質量%、更に好ましくは5〜95質量%である。この範囲にあると、着色性及び成形加工性の物性バランスに優れる。
芳香族ビニル化合物の使用量は、好ましくは1〜95質量%、更に好ましくは5〜95質量%である。この範囲にあると、成形加工性及び力学的強度の物性バランスに優れる。
シアン化ビニル化合物を使用する場合には、好ましくは0.5〜50質量%、更に好ましくは1〜45質量%である。この範囲にあると、耐薬品性、色調及び成形加工性の物性バランスに優れる。
不飽和酸を使用する場合には、好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは1〜25質量%である。この範囲にあると、相溶性付与効果及び成形加工性の物性バランスに優れる。
酸無水物を使用する場合には、好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは1〜25質量%である。この範囲にあると、相溶性付与効果及び成形加工性の物性バランスに優れる。
官能基を有するビニル系化合物を使用する場合には、好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは1〜25質量%である。この範囲にあると、相溶性付与効果及び成形加工性の物性バランスに優れる。
上記ビニル系単量体(c)として、好ましくは、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル(なかでも、メタクリル酸メチル)及びマレイミド化合物から選ばれた少なくとも2種であり、更に好ましくは、少なくとも3種である。
上記ビニル系樹脂及びゴム質重合体強化ビニル系樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、このゴム質重合体のゲル含率、重量平均粒子径等は、特に限定されない。
上記ゴム質重合体強化ビニル系樹脂における、ゴム質重合体の含有量は、好ましくは5〜70質量%、更に好ましくは5〜65質量%である。
特に、着色剤を含む組成物は、着色鮮映性に優れ、例えば、着色剤としてカーボンブラックを配合した場合には、漆黒性に優れた成形品とすることができる。
この成形品は、光の透過性、透明性及び力学的強度に優れるため、良好な表面外観の要求されるOA・家電製品、電気・電子分野、サニタリー分野、車輌用途等の各種パーツ、シャーシ、ハウジング、雑貨類等に好適できる。また、着色剤を含む場合には、着色鮮映性に優れる。
また、着色剤を含む成形品は、その表面にレーザーを照射することによって、黒発色、白発色、多色等のレーザーマーキングをすることもできる。
(1)樹脂粒子、複合ゴム粒子及び肥大化複合ゴム粒子の重量平均粒子径
HONEYWELL社製の「マイクロトラックUPA150型」を用い、室温で測定した。単位はnmである。
(2)ガラス転移温度(Tg)
ASTM D3418に準拠し、窒素ガス雰囲気下で測定した。単位は℃である。
(3)屈折率
アッベの屈折計にてd線の25℃で測定した。
熱プレス成形によりフィルム化(厚さ50μm)し、以下の基準にて評価した。
○:目視で透明である。
△:目視で半透明である。
×:目視で不透明である。
(5)複合ゴム強化ビニル系樹脂、熱可塑性樹脂組成物の力学的強度
熱プレス成形によりシート化(厚さ100μm)し、手で折り曲げ、以下の基準にて評価した。
◎:折り曲げにより延性的に変形し、1回の折り曲げでは破壊しなかった。
○:折り曲げにより延性的に破壊した。
△:試験片によっては、一部に延性的に破壊するものもあった。
×:折り曲げにより脆性的に破壊した。
(6)全光線透過率
射出成形により試験片(縦80mm、横40mm、厚さ3.2mm)を作製し、ASTM D1003に準拠して測定した。単位は%である。
製造例1
先ず、スチレン98部及びメタクリル酸アリル2部を混合し、単量体混合物(I)を調製した。その後、反応原料及び助剤添加装置、攪拌装置、温度計、加熱装置等を備えた、容量10リットルのガラス製反応器に、水240部、乳化剤として高級脂肪酸ナトリウム石鹸5部及びアルケニルコハク酸カリウム石鹸5部を仕込み、窒素ガス気流下、撹拌しながら、内温を75℃まで昇温した。75℃に達した時点で、50部の水に過硫酸カリウム(以下、「KPS」と略記する。)1部を溶解した水溶液を反応系に添加した。その直後に、単量体混合物(I)100部を、3時間にわたって連続添加し、重合反応を進めた。単量体混合物(I)の連続添加が終了して1時間の間は、反応系の温度を75℃に保持したまま攪拌した。
次いで、10部の水にKPS0.2部を溶解した水溶液を反応器に添加し、更に1時間、反応系温度を75℃に保持して重合反応を終了し、樹脂粒子(A−1)を含むラテックスを得た。このときの重合転化率は98%であった。
得られた樹脂粒子(A−1)の重量平均粒子径は10nm、ガラス転移温度は100℃、屈折率は1.592であった(表1参照)。
単量体混合物(I)の組成を表1に示すものとした以外は、製造例1と同様にして、樹脂粒子(A−2)を製造した。重合後の重合転化率、並びに、樹脂粒子(A−2)の重量平均粒子径、ガラス転移温度及び屈折率は、表1に併記した。
乳化剤の使用量を表1に示す量とした以外は、製造例1と同様にして、樹脂粒子(A−3)を製造した。重合後の重合転化率、並びに、樹脂粒子(A−3)の重量平均粒子径、ガラス転移温度及び屈折率は、表1に併記した。
上記で得た樹脂粒子を用い、該樹脂粒子の存在下に、下記の単量体混合物(II)を重合して複合ゴム粒子を製造し、各種評価を行った。
先ず、アクリル酸n−ブチル59.9部及びメタクリル酸アリル0.1部を混合し、単量体混合物(II)を調製した。一方、20部の水に、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(以下、「EDTA」と略記する。)0.2部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(以下、「SFS」と略記する。)0.8部及び硫酸第一鉄0.06部を溶解した水溶液(以下、「RED水溶液(I)」と略記する。)を調製した。更に、20部の水に、アルケニルコハク酸カリウム石鹸1部及びキュメンハイドロパーオキサイド(以下、「CHP」と略記する。)0.015部を溶解した水溶液(以下、「OXI水溶液(I)」と略記する。)を調製した。
その後、製造例1において使用したガラス製反応器に、樹脂粒子(A−1)40部を含むラテックス160部、水20部及びアルケニルコハク酸カリウム石鹸2部を仕込み、窒素ガス気流下、撹拌しながら、内温を60℃まで昇温した。60℃に達した時点で、RED水溶液(I)の全量を反応系に添加した。その直後に、単量体混合物(II)60部及びOXI水溶液(I)の全量を、それぞれ、5時間にわたって連続添加し、重合反応を進めた。尚、反応系の温度は、60℃で保持した。単量体混合物(II)及びOXI水溶液(I)の連続添加が終了して1時間の間は、反応系の温度を60℃に保持した。その後、重合反応を終了し、複合ゴム粒子(B−1)を含むラテックスを得た。このときの重合転化率は95%であった。
得られた複合ゴム粒子(B−1)の重量平均粒子径は12nmであった(表2参照)。また、屈折率及び透明性の評価結果についても表2に併記した。尚、屈折率及び透明性の評価は、ラテックスを凝固し、更に、水洗、乾燥することにより単離した複合ゴム粒子を用いて測定した。
樹脂粒子(A−1)の存在下に、表2に示す各単量体混合物(II)を用いて重合した以外は、実施例1−1と同様にして、複合ゴム粒子(B−2)を含むラテックスを製造した。重合時の重合転化率、並びに、得られた複合ゴム粒子の重量平均粒子径、屈折率及び透明性は、表2に併記した。また、単量体混合物(II)のみからなる重合体の評価結果も表2に併記した。
樹脂粒子(A−1)に代えて、樹脂粒子(A−2)又は(A−3)を用いた以外は、実施例1−1と同様にして、複合ゴム粒子(B−3)及び(B−4)並びにゴム質重合体粒子(B−5)を含むラテックスを製造した。重合時の重合転化率、並びに、複合ゴム粒子(B−3)及び(B−4)並びにゴム質重合体粒子(B−5)の重量平均粒子径、屈折率及び透明性は、表2に併記した。また、単量体混合物(II)のみからなる重合体の評価結果も表2に併記した。
上記で得た複合ゴム粒子等を用い、下記の方法により肥大化複合ゴム粒子を製造し、各種評価を行った。
製造例1において使用したガラス製反応器に、複合ゴム粒子(B−1)100部を含むラテックス280部及び水20部を仕込み、撹拌しながら、内温を40℃まで昇温した。40℃に達した時点で、60部の水に、無水酢酸2.5部をホモジナイザーで分散させた懸濁溶液を反応系に添加した。次いで、反応系を40℃に保持しながら、撹拌を停止して粒径肥大化処理を30分間行った。この粒径肥大化処理の後、47.5部の水に、水酸化カリウム2.5部を溶解した水溶液と、9部の水に、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩1部を溶解した水溶液とを、反応系に添加し、撹拌した。その後、肥大化処理を終了し、肥大化複合ゴム粒子(C−1)を含むラテックスを得た。得られた肥大化複合ゴム粒子(C−1)の重量平均粒子径は340nmであった(表3参照)。また、屈折率及び透明性の評価結果についても表3に併記した。肥大化複合ゴム粒子(C−1)の単離方法は、実施例1−1と同様である。
表3に示す肥大化処方とした以外は、実施例2−1と同様にして、肥大化複合ゴム粒子(C−2)〜(C−6)を含む各ラテックスを得た。得られた肥大化複合ゴム粒子の重量平均粒子径、屈折率及び透明性は、表3に併記した。
上記で得た肥大化複合ゴム粒子等を用い、下記の方法により複合ゴム強化ビニル系樹脂を製造し、各種評価を行った。
先ず、メタクリル酸メチル92部、スチレン33部及びアクリロニトリル25部からなるビニル系単量体と、分子量調節剤としてのt−ドデシルメルカプタン0.5部とを混合し、単量体混合物(III)を調製した。一方、90部の水に、EDTA0.08部、SFS0.4部及び硫酸第一鉄0.008部を溶解した水溶液(以下、「RED水溶液(II)」と略記する。)を調製した。更に、45部の水に、アルケニルコハク酸カリウム石鹸7.5部及びt−ブチルハイドロパーオキサイド0.55部を溶解した水溶液(以下、「OXI水溶液(II)」と略記する。)を調製した。
その後、製造例1において使用したガラス製反応器に、肥大化複合ゴム粒子(C−1)100部を含むラテックス300部を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら、内温を40℃まで昇温した。40℃に達した時点で、RED水溶液(II)のうちの85%相当量を反応系に添加した。その直後に、単量体混合物(III)及びOXI水溶液(II)の85%相当分を、それぞれ、5時間にわたって連続添加し、重合反応を進めた。尚、反応系の温度は、重合開始から60℃まで昇温した後、この温度で保持した。
重合開始から5時間経過後、RED水溶液(II)の残り15%相当分及びOXI水溶液(II)の残り15%相当分を反応系に添加し、60℃で1時間保持した。その後、重合反応を終了し、複合ゴム強化ビニル系樹脂(R−1)を含むラテックスを得た。このときの重合転化率は94%であった。
得られた複合ゴム強化ビニル系樹脂(R−1)について、屈折率、透明性及び力学的強度の評価を行った。その結果を表4に示す。尚、これらの評価は、上記複合ゴム粒子等と同様、ラテックスを凝固し、更に、水洗、乾燥することにより単離した後、測定した。
(アセトン可溶分の単離方法)
複合ゴム強化ビニル系樹脂をアセトン中に投入し、浸とう機を用いて1時間浸とうした。その後、遠心分離機により、この溶液を遠心分離(22000rpm、1時間)し、不溶分を分離して可溶分を得た。次いで、可溶分を75℃のホットプレートで2時間、続いて120℃の真空乾燥機で2時間乾燥し、固体状のアセトン可溶分を得た。
表4及び表5に示す重合処方を用いた以外は、実施例3−1と同様にして、複合ゴム強化ビニル系樹脂(R−2)〜(R−11)を含む各ラテックスを得た。得られた複合ゴム強化ビニル系樹脂の評価結果は、表4及び表5に併記した。
上記で得た複合ゴム強化ビニル系樹脂等を用い、下記の方法により熱可塑性樹脂組成物を製造し、全光線透過率、着色鮮映性及び力学的強度の評価を行った。尚、着色鮮映性については、以下の方法で平板状試験片を作製し、目視評価した。
溶融混練時に、カーボンブラック(デグサ社製)及びステアリン酸カルシウムを、樹脂成分100部に対して、それぞれ、0.5部及び0.3部配合して、黒色系樹脂組成物を製造し、射出成形により、試験片を得た。評価基準は下記の通りである。
○;漆黒性に優れている。
△;少し漆黒性に欠ける。
×;明らかに漆黒性に劣る。
複合ゴム強化ビニル系樹脂(R−1)100部と、熱安定剤として、フェノール系酸化防止剤(商品名「Irganox1010」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.1部とを、ミキサーにより5分間混合した後、単軸押出機を用い、シリンダー設定温度180〜220℃で溶融混練押出し、ペレット(熱可塑性樹脂組成物)を得た。このペレットを用いて、各種評価を行った。その結果を表6に示す。
複合ゴム強化ビニル系樹脂(R−1)に代えて、複合ゴム強化ビニル系樹脂(R−2)〜(R−9)を用いた以外は、実施例4−1と同様にしてペレットを得た。その評価結果を表6に併記した。
複合ゴム強化ビニル系樹脂(R−1)100部と、他の熱可塑性樹脂(S−1)として、屈折率が1.517であるメタクリル酸メチル・スチレン・アクリロニトリル共重合体(重合比60/20/20)100部とを、ミキサーにより5分間混合した後、単軸押出機を用い、シリンダー設定温度180〜220℃で溶融混練押出し、ペレット(熱可塑性樹脂組成物)を得た。このペレットを用いて、各種評価を行った。その結果を表7に示す。
熱可塑性樹脂(S−1)に代えて、熱可塑性樹脂(S−2)、即ち、屈折率が1.536であるメタクリル酸メチル・スチレン・アクリロニトリル共重合体(重合比44/40/16)を用いた以外は、実施例4−1と同様にしてペレットを得た。その評価結果を表7に併記した。
複合ゴム強化ビニル系樹脂(R−1)に代えて、複合ゴム強化ビニル系樹脂(R−10)を用いた以外は、実施例4−7と同様にしてペレットを得た。その評価結果を表7に併記した。
複合ゴム強化ビニル系樹脂(R−1)に代えて、複合ゴム強化ビニル系樹脂(R−11)を用いた以外は、実施例4−6と同様にしてペレットを得た。その評価結果を表7に併記した。
Claims (3)
- 下記成分(A)からなり且つ重量平均粒子径が50nm以下である樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面の少なくとも一部に形成され且つ下記成分(B)からなる被覆部とを備え、1つの屈折率を有し、重量平均粒子径が5〜3000nmであることを特徴とする複合ゴム粒子。
成分(A);多官能性単量体(a1)0.01〜5質量%及び他のビニル系単量体(a2)95〜99.99質量%からなる単量体〔但し、(a1)+(a2)=100質量%である。〕の重合体であり、且つ、ガラス転移温度が0℃以上である樹脂。
成分(B);多官能性単量体(b1)0.01〜5質量%及び他の単量体(b2)95〜99.99質量%からなる単量体〔但し、(b1)+(b2)=100質量%である。〕の重合体であり、ガラス転移温度が0℃未満であり、且つ、屈折率が上記成分(A)より低いゴム質重合体。 - 請求項1に記載の複合ゴム粒子であって、重量平均粒子径が30〜3000nmである複合ゴム粒子の存在下に、ビニル系単量体(c)を重合して得られ、且つ、上記複合ゴム粒子の屈折率と、該ビニル系単量体(c)の(共)重合体の屈折率との差が0.02以下であることを特徴とする複合ゴム強化ビニル系樹脂。
- 請求項2に記載の複合ゴム強化ビニル系樹脂と、他の熱可塑性樹脂とを含有する組成物であって、該複合ゴム強化ビニル系樹脂の屈折率と、該熱可塑性樹脂の屈折率との差が0.02以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
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