JP2018012820A - 耐衝撃性改良剤、熱可塑性樹脂組成物およびフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】高屈折率で、耐熱分解性、透明性及び耐衝撃性に優れる熱可塑性樹脂組成物が得られる混練時に熱分解しにくい耐衝撃性改良剤の提供。【解決手段】センターコア/インナーシェル/アウターシェルを有するコアシェル架橋ゴム粒子を含有して成り、センターコア及びインナーシェルの少なくとも一つが架橋ゴム重合体であり、センターコア又はインナーシェルを構成する重合体の硫黄成分含有率がアウターシェルを構成する重合体の硫黄成分含有率よりも高く、コア粒子の平均粒子径Dが150nm以上300nm以下であり、センターコアを構成する重合体の屈折率ndCCとインナーシェルを構成する重合体の屈折率ndISが0nm≦|ndCC−ndIS|×D≦9nmの関係を満たし、且つコアシェル架橋ゴム粒子の屈折率ndが1.50〜1.55である耐衝撃性改良剤。【選択図】なし

Description

本発明は耐衝撃性改良剤、熱可塑性樹脂組成物およびフィルムに関する。より詳細に、本発明は、屈折率が高く、且つ耐熱分解性、透明性及び耐衝撃性に優れるフィルムなどの成形体、そのような成形体を得るのに適した熱可塑性樹脂組成物、およびそのような熱可塑性樹脂組成物を得るために熱可塑性樹脂と熔融混練して高熱に晒されても熱分解しにくい耐衝撃性改良剤に関する。
発光ダイオード、イメージセンサなどの光デバイス;レンズ、プリズムなどの光学部材;反射防止膜、防眩膜などの光制御フィルムなどには高屈折率の樹脂材料が求められる。高屈折率の樹脂は、例えば、高い分子屈折を示す置換基を分子鎖に導入したり、モル体積を低下させる分子鎖構造若しくは分子量に調整したりすることで得られる。また、高屈折率の樹脂組成物は、例えば、樹脂に高屈折率のナノ粒子を配合することによって得ることができる。
高屈折率のメタクリル樹脂として、ハロゲン化カルバゾール環を有するポリメタクリル酸メチルが知られている(特許文献1)。しかし、ハロゲン元素は環境汚染防止の観点から電子部品などへの使用が制限されている。
特許文献2は、フルオレンにスピロ炭素を介して環状構造が結合してなるスピロ環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを含有する組成物を重合してなる高屈折率の硬化物を開示している。特許文献3は(メタ)アクリロキシメチルベンジルオキシナフタレンに置換基を有する単量体を含有する組成物を重合してなる高屈折率の硬化物を開示している。特許文献4は(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]−デカ−8−イルと他の単量体とを共重合してなる光学用樹脂材料を開示している。特許文献5は、ジチア環構造を有する(メタ)アクリレートを含有する組成物を重合してなる高屈折率の硬化物を開示している。これらの樹脂材料は硬く脆いので用途が限定される。
硬く脆い樹脂材料の耐衝撃性を向上させるためにエラストマーを配合することが提案されている。
例えば、特許文献6は、芳香族チオアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体から得られる重合体部位と芳香族チオアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを主成分としない単量体から得られる重合体部位とを含有し、全体の屈折率nが1.570以上で、メチルエチルケトンに不溶で、且つガラス転移温度が−10℃以下である高屈折率エラストマーと熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物を開示している。
特許文献7は、芳香族ビニル重合体を内包してなる非共役ジエン系ゴムに、(メタ)アクリル酸エステルなどの単量体をグラフト重合してなる共重合体を含む樹脂組成物を開示している。
特許文献8は、スチレン系化合物を主体とする単量体を重合してなるコア層と、アルキルアクリレートを主体とする単量体を重合してなる中間層と、メチルメタクリレートを主体とする単量体を重合してなるシェル層とからなる屈折率が1.547〜1.574である3層コアシェル構造粒子をポリエチレンテレフタレート系樹脂に配合してなる樹脂組成物を開示している。
特許文献9は、ゴム状重合部とグラフト重合部とから構成されるゴムグラフト共重合体であって、前記ゴムグラフト共重合体がアリール(メタ)アクリレートから得られる単位を必須構造単位として含み、前記ゴム状重合部が多段階層構造を有しており、最内層の屈折率が1.58以上であり、且つ前記ゴム状重合部全体の屈折率が1.56以上であるゴムグラフト共重合体と、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、およびポリ(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物を開示している。
US 5132430 A 特開2011−225488号公報 特開2015−67796号公報 特開昭61−73705号公報 特開2003−183334号公報 特開2011−252146号公報 特開平7−48496号公報 特開2001−31852号公報 特開2014−162878号公報
エラストマーやゴムは分子構造の調整などで屈折率を高くするほど靭性や透明性が低下しやすく、また熔融混練において高熱に曝されると熱分解してフィルムなどの成形体にシルバーストリーク、気泡、着色、異物などによる外観不良、または透明性低下を引き起こすことがある。
本発明の課題は、屈折率が高く、且つ耐熱分解性、透明性及び耐衝撃性に優れるフィルムなどの成形体、そのような成形体を得るのに適した熱可塑性樹脂組成物、およびそのような熱可塑性樹脂組成物を得るために熱可塑性樹脂と熔融混練して高熱に晒されても熱分解しにくい耐衝撃性改良剤を提供することである。
上記課題を解決するために検討した結果、下記の態様を包含する本発明を完成するに至った。
〔1〕 センターコアおよびセンターコアを囲むインナーシェルを有するコア粒子、ならびにコア粒子を囲むアウターシェルを有するコアシェル架橋ゴム粒子を含有して成り、
センターコアおよびインナーシェルを構成する重合体の少なくとも一つが架橋ゴム重合体であり、
センターコアを構成する重合体の質量に対するセンターコアを構成する重合体に含有する硫黄成分の質量の比またはインナーシェルを構成する重合体の質量に対するインナーシェルを構成する重合体に含有する硫黄成分の質量の比のいずれかがアウターシェルを構成する重合体の質量に対するアウターシェルを構成する重合体に含有する硫黄成分の質量の比よりも多く、
コア粒子の平均粒子径Dが150nm以上300nm以下であり、
センターコアを構成する重合体の屈折率ndCCとインナーシェルを構成する重合体の屈折率ndISが0nm≦|ndCC−ndIS|×D≦9nmの関係を満たし、且つ
コアシェル架橋ゴム粒子の屈折率ndが1.50〜1.55である耐衝撃性改良剤。
〔2〕 架橋ゴム重合体がアクリル酸エステルまたは共役ジエンに由来する構造単位を含有する重合体(i)であり、
センターコアおよびインナーシェルを構成する架橋ゴム重合体以外の重合体がメタクリル酸エステルに由来する構造単位を含有する重合体(ii)であり、且つ
アウターシェルを構成する重合体がメタクリル酸メチルに由来する構造単位を含有する重合体(iii)である、〔1〕に記載の耐衝撃性改良剤。
〔3〕 架橋ゴム重合体がアクリル酸エステルに由来する構造単位を50質量%以上含有する重合体(i)であり、
センターコアおよびインナーシェルを構成する架橋ゴム重合体以外の重合体が芳香族ビニルに由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位とを合計で50質量%以上含有する重合体(ii)であり、且つ
アウターシェルを構成する重合体がメタクリル酸メチルに由来する構造単位を50質量%以上含有する重合体(iii)である、〔1〕に記載の耐衝撃性改良剤。
〔4〕 重合体(i)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位10質量%未満を含有し、
重合体(ii)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位10質量%以上を含有する、〔2〕または〔3〕に記載の耐衝撃性改良剤。
〔5〕 重合体(i)は、アルキル基の炭素数が4〜12であるアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位の含有量が、重合体(i)の質量に対して50質量%未満である、〔2〕〜〔4〕のいずれかひとつに記載の耐衝撃性改良剤。
〔6〕 窒素流量10ml/分、昇温速度20℃/分で測定した1.0%加熱減量温度が、310℃以上である、〔1〕〜〔5〕のいずれかひとつに記載の耐衝撃性改良剤。
〔7〕 センターコアを構成する重合体を得るための単量体を乳化重合してシード粒子を得、
シード粒子の存在下にインナーシェルを構成する重合体を得るための単量体をシード乳化重合してコア粒子を得、
コア粒子の存在下にアウターシェルを構成する重合体を得るための単量体をシード乳化重合してコアシェル架橋ゴム粒子を得ることを含む、
前記〔1〕〜〔6〕のいずれかひとつに記載の耐衝撃性改良剤の製造方法。
〔8〕 熱可塑性樹脂(A)と前記〔1〕〜〔6〕のいずれかひとつに記載の耐衝撃性改良剤(B)とを含有して成る熱可塑性樹脂組成物。
〔9〕 熱可塑性樹脂(A)が、>CH−O−C(=O)−基を含む環構造、−C(=O)−O−C(=O)−基を含む環構造、−C(=O)−N−C(=O)−基を含む環構造、および>CH−O−CH<基を含む環構造からなる群から選ばれる少なくとも一つの環構造を主鎖に有する構造単位と、メタクリル酸メチルに由来する構造単位とを含むものであり、
耐衝撃性改良剤(B)に対する熱可塑性樹脂(A)の質量比(A)/(B)が95/5〜10/90である、〔8〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔10〕 熱可塑性樹脂(A)が、メタクリル酸環式炭化水素エステルに由来する構造単位10〜50質量%、メタクリル酸環式炭化水素エステル以外のメタクリル酸エステルに由来する構造単位50〜90質量%、およびアクリル酸エステルに由来する構造単位0〜20質量%を含むものである、〔8〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔11〕 メタクリル酸環式炭化水素エステルが、式(2)で表される化合物である、〔10〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。

Figure 2018012820

(式(2)中、Xは炭素数6以上の環式炭化水素基を表す。)
〔12〕 炭素数6以上の環式炭化水素基が、イソボルナン−2−イル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、または置換基を有していてもよいシクロヘキシル基である、〔11〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔13〕 熱可塑性樹脂(A)が、ポリカーボネート樹脂を、熱可塑性樹脂(A)に対して2〜50質量%で含有するものである、〔8〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔14〕 前記〔8〕〜〔13〕のいずれかひとつに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
〔15〕 前記〔8〕〜〔13〕のいずれかひとつに記載の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム。
〔16〕 厚さが10〜50μmである、〔15〕に記載のフィルム。
〔17〕 前記〔15〕または〔16〕に記載のフィルムからなる偏光子保護フィルム。
〔18〕 前記〔15〕または〔16〕に記載のフィルムからなる位相差フィルム。
〔19〕 前記〔15〕または〔16〕に記載のフィルムと有機発光ダイオードとを有する照明若しくは表示装置。
〔20〕 前記〔15〕または〔16〕に記載のフィルムと液晶セルとを有する表示装置。
本発明の耐衝撃性改良剤は、熱可塑性樹脂と熔融混練して高熱に晒されても熱分解しにくい。本発明の耐衝撃性改良剤と熱可塑性樹脂とを含有する熱可塑性樹脂組成物を成形してなるフィルムなどの成形体は、屈折率が高く、且つ耐熱分解性、透明性及び耐衝撃性に優れる。
本発明の耐衝撃性改良剤は、コアシェル架橋ゴム粒子を含有して成るものである。該コアシェル架橋ゴム粒子は、コア粒子とコア粒子を囲むアウターシェルを有する。コア粒子はセンターコアとセンターコアを囲むインナーシェルを有する。センターコア、インナーシェルおよびアウターシェルの相互間は隙間無く接していることが好ましい。センターコアとアウターシェルの間に在るインナーシェルは1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。
コアシェル架橋ゴム粒子は、センターコアおよびインナーシェルを構成する重合体の少なくとも一つが架橋ゴム重合体(以下、重合体(i)ということがある。)である。コアシェル架橋ゴム粒子は、センターコアおよびインナーシェルを構成する重合体のすべてが重合体(i)であってもよいし、センターコアを構成する重合体だけが重合体(i)であってもよいし、インナーシェルを構成する重合体すべてだけが重合体(i)であってもよいし、インナーシェルを構成する重合体の少なくとも一つが重合体(i)であってもよい。センターコアおよびインナーシェルを構成する重合体のうち重合体(i)でない部分を構成する重合体は重合体(ii)であることができる。アウターシェルを構成する重合体は重合体(iii)である。
すなわち、コアシェル架橋ゴム粒子は、〔センターコア〕/〔インナーシェル〕/〔アウターシェル〕を構成する重合体の組合せ態様が、〔重合体(i)〕/〔重合体(ii)〕/〔重合体(iii)〕、〔重合体(i)〕/〔重合体(i)〕/〔重合体(iii)〕、〔重合体(ii)〕/〔重合体(i)〕/〔重合体(iii)〕などのインナーシェル1層のもの; 〔重合体(ii)〕/〔重合体(i)/重合体(ii)〕/〔重合体(iii)〕、〔重合体(i)〕/〔重合体(ii)/重合体(i)〕/〔重合体(iii)〕、〔重合体(ii)〕/〔重合体(i)/重合体(ii)/重合体(i)〕/〔重合体(iii)〕などのインナーシェル2層以上のものなどを包含する。これらのうち、〔重合体(ii)〕/〔重合体(i)〕/〔重合体(iii)〕の態様が好ましい。〔重合体(ii)〕/〔重合体(i)/重合体(ii)/重合体(i)〕/〔重合体(iii)〕のように異なる部分に用いられる2以上の重合体(i)または重合体(ii)は単量体組成などの物性が相互に同じでも異なってもよい。
コアシェル架橋ゴム粒子は、コア粒子の平均粒子径Dが、150nm以上300nm以下、好ましくは190nm以上270nm以下である。コア粒子の平均粒子径Dが上記範囲内であると、耐衝撃性の向上およびヘイズの低減に効果を発揮しやすい。
コア粒子の平均粒子径Dは、次のようにして決定する。
先ず、コアシェル架橋ゴム粒子を製造する際の中間に生成するコア粒子水分散液をサンプリングし、コア粒子が濃度0.05質量%になるようにイオン交換水で希釈する。希釈液をガラスプレートに展開して、乾燥する。このようにするとコア粒子が凝集することなくガラスプレート上に分散して存在するようになる。次いで、乾燥させたガラスプレート表面に白金・パラジウムを蒸着させ、それを電子顕微鏡で観察し写真を撮る。電子顕微鏡写真から、無作為に100個の粒子を選び、それぞれの粒子径を測定し、それら測定値を算術平均した値を平均粒子径Dとした。
尚、簡易的に次のような方法でコア粒子の平均粒子径Dを推量することができる。
1)平均粒子径Dが既知のコア粒子水分散液(コア粒子濃度:0.05質量%)を複数調製し、コア粒子水分散液の吸光度と平均粒子径Dとの関係を示す検量線を作成し、平均粒子径が未知のコア粒子水分散液(コア粒子濃度:0.05質量%)の吸光度の測定値から平均粒子径Dを推量することができる。なお、吸光度は、例えば、光路長10mmのクウォーツセルにて、波長590nmで測定した値を使用することができる。
2)コアシェル架橋ゴム粒子を熱可塑性樹脂(A)に混練し染色し電子顕微鏡で観察すると、メタクリル骨格の割合が多いアウターシェルの輪郭は薄く観察され、アクリル骨格又は不飽和結合の割合が多いコア粒子の輪郭が濃く観察される。そこで、平均粒子径Dが既知のコア粒子を含有するコアシェル架橋ゴム粒子を複数用意し、上記のようにして濃い輪郭の大きさをそれぞれ測定する。濃い輪郭の大きさと平均粒子径Dとの関係を示す検量線を作成し、平均粒子径が未知のコア粒子を含有するコアシェル架橋ゴム粒子における濃い輪郭の大きさから平均粒子径Dを推量することができる。
コアシェル架橋ゴム粒子は、センターコアを構成する重合体の屈折率ndCCとインナーシェルを構成する重合体の屈折率ndISが、透明性の観点から、0nm≦|ndCC−ndIS|×D≦9nmの関係、好ましくは0nm≦|ndCC−ndIS|×D≦8nmの関係を満たす。さらに、インナーシェルを構成する重合体の屈折率ndISとアウターシェルを構成する重合体の屈折率ndOSとの差の絶対値が、好ましくは0.005未満、より好ましくは0.004未満、さらに好ましくは0.003未満である。
なお、センターコアを構成する重合体の屈折率ndCC、インナーシェルを構成する重合体の屈折率ndIS、およびアウターシェルを構成する重合体の屈折率ndOSは、それぞれの重合体を構成する単量体単位のホモポリマーの屈折率に重合体に占める単量体単位の質量比を掛けた値の総和である。
なお、インナーシェルを構成する重合体が2以上ある場合、その屈折率ndISは、それぞれの重合体の屈折率(ndIS(i))にインナーシェル中のそれぞれの重合体の質量比(xi)を掛けた値の総和で算出される値である。
重合体(i)は、架橋性単量体に由来する構造単位を有し、該構造単位が高分子鎖に橋を掛けてなる構造を有するゴム弾性重合体である。ゴム弾性重合体は、常温での弾性率(ヤング率)が、好ましくは1〜10MPaである。
架橋性単量体は、一分子中に2つ以上の重合性官能基を有する単量体である。架橋性単量体としては、例えば、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、1−アクリロキシ−3−ブテン、1−メタクリロキシ−3−ブテン、1,2−ジアクリロキシ−エタン、1,2−ジメタクリロキシ−エタン、1,2−ジアクリロキシ−プロパン、1,3−ジアクリロキシ−プロパン、1,4−ジアクリロキシ−ブタン、1,3−ジメタクリロキシ−プロパン、1,2−ジメタクリロキシ−プロパン、1,4−ジメタクリロキシ−ブタン、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1.9−ノナンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1.9−ノナンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−ペンタジエン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどを挙げることができる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合体(i)に含まれる架橋性単量体に由来する構造単位の量は、重合体(i)の全質量に対して、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.5〜7質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。
重合体(i)は、高分子鎖が、ゴム弾性を発現するものであれば特に制限されない。重合体(i)は、高分子鎖が、アクリル酸エステルに由来する構造単位および共役ジエンに由来する構造単位のいずれか一方または両方を有するものであることが好ましい。
重合体(i)に用いられるアクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシルなどのアクリル酸非環状アルキルエステル;アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸環状アルキルエステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸ナフチルなどのアクリル酸アリールエステル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジルなどの官能基含有アクリル酸非環状アルキルエステル;式(1a)で表される単量体(以下、単量体(1a)ということがある。)などを挙げることができる。屈折率を高めるという観点から単量体(1a)が好ましく用いられる。
Figure 2018012820

(式(1a)中、R18は芳香環を含む炭素数6〜20の有機基を表す。Yは炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数2〜6のアルキレンオキシ基を表し、該アルキレン基及び該アルキレンオキシ基は、水酸基、オキソ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシジルオキシ基、炭素数2〜4のアシル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。mは1〜6の整数を表し、mが2以上の整数である場合、Yは相互に同じでも異なってもよい。)
芳香環を含む炭素数6〜20の有機基としては、ピリジルメチル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、ピラジノ[2,3−b]ピラジル基、ピリド[2,3−b]ピラジル基、キノキサリル基、キノリル基、ナフタレニル基、ピリド[3,4−b]キノキサリル基、ピリド[3,4−b][1.7]ナフチリジニル基、フェナジニル基、フェナントロリル基フェナントリジニル基、アクリジニル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピリド[3,2−f][1.7]フェナントロリニル基、ビフェニル基などを挙げることができる。
炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1,3−ブタンジイル基、1,2−ブタンジイル基、ペンタメチレン基、へキサメチレン基などを挙げることができる。
炭素数2〜6のアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、トリメチレンオキシ基、テトラメチレンオキシ基、ヘキサメチレンオキシ基などを挙げることができる。炭素数2〜6のアルキレンオキシ基は、オキシ基がR18に結合することが好ましい。
本発明に用いられる単量体(1a)としては、アクリロイルオキシメチルベンゼン、2−(アクリロイルオキシ)エチルベンゼン、2−(アクリロイルオキシ)エチルオキシベンゼン、2−(アクリロイルオキシ)エチルオキシ−4−α−クミルフェノール、2−(アクリロイルオキシ)エチルオキシ−2−o−フェニルフェノール;2−(アクリロイルオキシ)エチルオキシ−1−ベンジルオキシナフタレン;特開2014−201735号公報に記載の2−[2’−ヒドロキシ−5’−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(アクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−(2’−アクリロイルオキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[(2’−ヒドロキシ−5’−(アクリロイルオキシエチル)フェニル)−5−クロロ]−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール構造含有アクリレート;2−ベンゾイル−5−(2’−ヒドロキシ−3’−アクリロイルオキシプロポキシ)−フェノール、2−ベンゾイル−5−(2’−アクリロイルオキシエトキシ)−フェノール、2−ベンゾイル−5−(2’−アクリロイルオキシエトキシ)−6−tert−ブチル−フェノール等のベンゾフェノン構造含有アクリレート;2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピオキシ)]−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン等のトリアジン構造含有アクリレート;特開2015−67796号公報に記載の(アクリロイルオキシメチル)ベンジルオキシ−ナフタレン;特開2013−209573号公報に記載の1−(アクリロイルオキシ)エチル−ナフタレン;特開2013−209572号公報に記載の1(アクリロイルオキシ)エチル−ビフェニルなど;特開2013−181097号公報に記載の9−アクリロイルオキシ−9−アルキルフルオレン等;特開2013−112744号公報に記載のターフェニル構造を有するアクリレート等;特開2011−225488号公報に記載の9−ジチアスピロフルオレン構造を有するアクリレート等;特開2001−124904号公報に記載のフェニルフェノールエトキシアクリレートなどを挙げることができる。
単量体(1a)のうち、式(D-1a)〜(D-3a)で表される単量体が好ましく、式(D-1-1)、式(D-2-1)または式(D-3-1)で表される単量体がより好ましい。

Figure 2018012820

Figure 2018012820

Figure 2018012820

(式(D-1a)〜(D-3a)中、Y1は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。該アルキレン基は、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基又はオキソ基で置換されていてもよい。R19は、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはグリシジルオキシ基を表す。nは0〜5の整数、pは0〜4の整数、qは0〜5の整数を表す。mは、式(1a)におけるものと同じ意味を表す。mが2以上の整数である場合、複数のY1は、同じであっても異なってもよい。p及びqが2以上の整数である場合、複数のR19は、同一であっても異なってもよい。)
Figure 2018012820

Figure 2018012820

Figure 2018012820
共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、ミルセン、シクロペンタジエンなどを挙げることができる。
重合体(i)に含まれ得るアクリル酸エステルに由来する構造単位と共役ジエンに由来する構造単位との合計量は、重合体(i)の全質量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45〜99質量%、さらに好ましくは50〜98質量%である。なお、高分子鎖は、耐光性を高めるという観点から、共役ジエンに由来する構造単位を含有しないものが好ましい。重合体(i)に含まれ得るアクリル酸エステルに由来する構造単位の量は、重合体(i)の全質量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。
重合体(i)は、アルキル基の炭素数が4〜12であるアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位の含有量が、重合体(i)の質量に対して、好ましくは99質量%未満、より好ましくは98質量%未満、さらに好ましくは90質量%未満である。
重合体(i)は、アクリル酸エステル、共役ジエン、および架橋性単量体以外に、他のビニル系単量体に由来する構造単位を有してもよい。
他のビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸非環状アルキルエステル;メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸環状アルキルエステル;メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチルなどのメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル;式(1b)で表される単量体(以下、単量体(1b)ということがある。);スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;N−プロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸などを挙げることができる。これらのうち、屈折率を高める観点から、芳香族ビニル単量体または単量体(1b)が好ましく、スチレンがより好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合体(i)に含まれ得る他のビニル系単量体に由来する構造単位の量は、重合体(i)の全質量に対して、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下であり、好ましくは40質量%以上である。
重合体(i)としては、アクリル酸エステルに由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位と必要に応じてその他のビニル系単量体に由来する構造単位とを有する共重合体、共役ジエンに由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位と必要に応じてその他のビニル系単量体に由来する構造単位とを有する共重合体、アクリル酸エステルに由来する構造単位と共役ジエンに由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位と必要に応じてその他のビニル系単量体に由来する構造単位とを有する共重合体などを挙げることができる。これらのうち、重合体(i)は、アクリル酸エステルに由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位と必要に応じてその他のビニル系単量体に由来する構造単位とを有する共重合体が好ましい。
重合体(ii)は、重合体(i)以外の重合体であれば特に制限されない。重合体(ii)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を有するものが好ましい。重合体(ii)に用いられるメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸非環状アルキルエステル;メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸環状アルキルエステル;メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジルなどの官能基含有メタクリル酸非環状アルキルエステル;単量体(1b)などを挙げることができる。屈折率を高めるという観点から単量体(1b)が好ましく用いられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。
Figure 2018012820

(式(1b)中、R18は芳香環を含む炭素数6〜20の有機基を表す。Yは炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数2〜6のアルキレンオキシ基を表し、該アルキレン基及び該アルキレンオキシ基は、水酸基、オキソ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシジルオキシ基、炭素数2〜4のアシル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。mは1〜6の整数を表し、mが2以上の整数である場合、Yは相互に同じでも異なってもよい。)
芳香環を含む炭素数6〜20の有機基、炭素数1〜6のアルキレン基、および炭素数2〜6のアルキレンオキシ基は式(1a)の説明において述べたとおりのものである。
本発明に用いられる単量体(1b)としては、メタクリロイルオキシメチルベンゼン、2−(メタクリロイルオキシ)エチルベンゼン、2−(メタクリロイルオキシ)エチルオキシベンゼン、2−(メタクリロイルオキシ)エチルオキシ−4−α−クミルフェノール、2−(メタクリロイルオキシ)エチルオキシ−2−o−フェニルフェノール;2−(メタクリロイルオキシ)エチルオキシ−1−ベンジルオキシナフタレン;特開2014−201735号公報に記載の2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−(2’−メタクリロイルオキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[(2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル)−5−クロロ]−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール構造含有メタクリレート;2−ベンゾイル−5−(2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルオキシプロポキシ)−フェノール、2−ベンゾイル−5−(2’−メタクリロイルオキシエトキシ)−フェノール、2−ベンゾイル−5−(2’−メタクリロイルオキシエトキシ)−6−tert−ブチル−フェノール等のベンゾフェノン構造含有メタクリレート;2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピオキシ)]−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(11−メタクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン等のトリアジン構造含有メタクリレート;特開2015−67796号公報に記載の(メタクリロイルオキシメチル)ベンジルオキシ−ナフタレン;特開2013−209573号公報に記載の1−(メタクリロイルオキシ)エチル−ナフタレン;特開2013−209572号公報に記載の1(メタクリロイルオキシ)エチル−ビフェニルなど;特開2013−181097号公報に記載の9−メタクリロイルオキシ−9−アルキルフルオレン等;特開2013−112744号公報に記載のターフェニル構造を有するメタクリレート等;特開2011−225488号公報に記載の9−ジチアスピロフルオレン構造を有するメタクリレートなどを挙げることができる。
単量体(1b)のうち、式(D-1b)〜(D-3b)で表される単量体が好ましく、式(D-1-2)で表される単量体がより好ましい。

Figure 2018012820

Figure 2018012820

Figure 2018012820

(式(D-1b)〜(D-3b)中、Y1は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。該アルキレン基は、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基又はオキソ基で置換されていてもよい。R19は、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはグリシジルオキシ基を表す。nは0〜5の整数、pは0〜4の整数、qは0〜5の整数を表す。mは、式(1a)におけるものと同じ意味を表す。mが2以上の整数である場合、複数のY1は、同じであっても異なってもよい。p及びqが2以上の整数である場合、複数のR19は、同一であっても異なってもよい。)
Figure 2018012820
重合体(ii)に含有し得るメタクリル酸エステルに由来する構造単位の量は、重合体(ii)の質量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜60質量%、さらに好ましくは25〜50質量%である。
重合体(ii)は、架橋性単量体に由来する構造単位を有してもよい。重合体(ii)に用いられる架橋性単量体としては、重合体(i)に用いられる架橋性単量体として例示したものを挙げることができる。重合体(ii)における架橋性単量体に由来する構造単位の量は、重合体(ii)の質量に対して、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%、さらに好ましくは0.02〜2質量%である。
重合体(ii)は、メタクリル酸エステル、および架橋性単量体以外に、他のビニル系単量体に由来する構造単位または共役ジエンに由来する構造単位を有してもよい。なお、耐光性を高めるという観点から、共役ジエンに由来する構造単位を含有しないものが好ましい。
他のビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸非環状アルキルエステル、アクリル酸環状アルキルエステル、アクリル酸アリールエステル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、単量体(1a);スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;N−プロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などを挙げることができる。これらのうち、屈折率を高める観点から、芳香族ビニル単量体が好ましく、スチレンがより好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合体(ii)に含有し得る他のビニル系単量体に由来する構造単位の量は、重合体(ii)の質量に対して、好ましくは98質量%以下、より好ましくは96質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下であり、好ましくは40質量%以上である。重合体(ii)に含有し得る芳香族ビニル単量体に由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位との合計量は、重合体(ii)の質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
重合体(ii)としては、メタクリル酸エステルに由来する構造単位と必要に応じてその他のビニル系単量体に由来する構造単位とを有する共重合体、メタクリル酸エステルに由来する構造単位と共役ジエンに由来する構造単位と必要に応じてその他のビニル系単量体に由来する構造単位とを有する共重合体、メタクリル酸エステルに由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位と必要に応じてその他のビニル系単量体に由来する構造単位とを有する共重合体、メタクリル酸エステルに由来する構造単位と共役ジエンに由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位と必要に応じてその他のビニル系単量体に由来する構造単位とを有する共重合体、などを挙げることができる。これらのうち、重合体(ii)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位と必要に応じてその他のビニル系単量体に由来する構造単位とを有する共重合体が好ましい。
センターコアおよびインナーシェルを構成する重合体の少なくとも一つは、単量体(1a)または単量体(1b)に由来する構造単位を含むことが好ましい。センターコアおよびインナーシェルを構成する重合体の少なくとも一つに含有し得る単量体(1a)または単量体(1b)に由来する構造単位の量は、センターコアおよびインナーシェルを構成する重合体のうち単量体(1a)または単量体(1b)に由来する構造単位を含有する重合体の質量に対して、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは2〜65質量%、さらに好ましくは5〜60質量%である。
また、センターコアおよびインナーシェルを構成する重合体の少なくとも一つに含まれる単量体(1a)または単量体(1b)に由来する構造単位の量は、コアシェル架橋ゴム粒子の全質量に対して、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%、さらに好ましくは20〜35質量%である。
重合体(iii)は、センターコアおよびインナーシェルを構成する重合体として選抜された重合体(i)および重合体(ii)以外の重合体であれば特に制限されない。重合体(iii)は、本発明の耐衝撃性改良剤が添加され熔融混練される熱可塑性樹脂(A)と相溶性のある熱可塑性重合体であることが好ましい。
重合体(iii)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位と必要に応じてその他のビニル系単量体に由来する構造単位とを有する熱可塑性重合体であることが好ましい。
重合体(iii)に用いられるメタクリル酸エステルは、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単量体、または炭素原子数6〜24の芳香族基を有するメタクリル酸芳香族エステルであることが好ましい。メタクリル酸エステル単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジルなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちメタクリル酸メチルが好ましい。
重合体(iii)に含まれるメタクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の量は、重合体(iii)の質量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、最も好ましくは90質量%以上である。
重合体(iii)に用い得るその他のビニル系単量体としては、前述の重合体(ii)において例示したその他のビニル系単量体と同じものを挙げることができる。重合体(iii)に含まれ得るその他のビニル系単量体に由来する構造単位の量は、重合体(iii)の質量に対して、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
コアシェル架橋ゴム粒子は、該粒子の質量に対して、アウターシェルの量が、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは15〜50質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。また、センターコアとインナーシェルの合計質量に対して、重合体(i)の量が、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは30〜70質量%である。
コアシェル架橋ゴム粒子は、センターコアおよびインナーシェルを構成する重合体の少なくとも一つが硫黄成分を含有していることが好ましく、センターコアを構成する重合体が硫黄成分を含有していることがより好ましい。
さらに、センターコアを構成する重合体の質量に対するセンターコアを構成する重合体に含有する硫黄成分の質量の比またはインナーシェルを構成する重合体の質量に対するインナーシェルを構成する重合体に含有する硫黄成分の質量の比のいずれかがアウターシェルを構成する重合体の質量に対するアウターシェルを構成する重合体に含有する硫黄成分の質量の比よりも多い。
センターコアを構成する重合体の質量に対するセンターコアを構成する重合体に含有する硫黄成分の質量の比またはインナーシェルを構成する重合体の質量に対するインナーシェルを構成する重合体に含有する硫黄成分の質量の比のいずれかは、好ましくは0.05〜2質量%、より好ましくは0.1〜1.5質量%である。
アウターシェルを構成する重合体の質量に対するアウターシェルを構成する重合体に含有する硫黄成分の質量の比は、好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.02〜0.4質量%である。
重合体に含有する硫黄成分の量は、コアシェル架橋ゴム粒子を製造する際の各ステージにおいて使用される硫黄含有化合物の種類や量によって調節することができる。硫黄含有化合物としては、乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤などを挙げることができる。
重合体の質量に対する該重合体に含有する硫黄成分の質量の比は次のようにして決定する。
まず、試料重合体、具体的にはコアシェル架橋ゴム粒子を製造する際の各ステージで得られるシード粒子、コア粒子またはコアシェル架橋ゴム粒子、各0.2gを精秤し容器に入れる。これに濃硝酸10mlを加え、容器を密閉し、マイクロウェーブ試料分解装置(マイルストーンゼネラル社製 ETHOS−1600型)にて500〜1000Wの出力で55分間分解処理する。次いで、ICP発光分光分析装置(セイコーインスツルーメンツ社製、CCD多元素同時型ICP発光分光分析装置、ICP−OES VISTA−PRO)にて硫黄成分(質量%)を定量する。アウターシェルを構成する重合体に含有する硫黄成分の量は、コアシェル架橋ゴム粒子に含有する硫黄成分の量からセンターコアおよびインナーシェルを構成する重合体(コア粒子)に含有する硫黄成分の量を差し引くことで算出することができ、インナーシェルを構成する重合体に含有する硫黄成分の量は、コア粒子に含有する硫黄成分の量からセンターコアを構成する重合体(シード粒子)に含有する硫黄成分の量を差し引くことで算出することができる。
本発明の耐衝撃性改良剤は、コアシェル架橋ゴム粒子の平均粒子径が、好ましくは0.16〜1μm、より好ましくは0.18〜0.5μm、さらに好ましくは0.2〜0.4μmである。なお、本明細書において、平均粒子径は、電子顕微鏡観察に基いて算出した値である。熱可塑性樹脂(A)と本発明の耐衝撃性改良剤(B)との熔融混練においてコアシェル架橋ゴム粒子を熱可塑性樹脂(A)に均一に分散させ易いという観点から、本発明の耐衝撃性改良剤は、上記のようなコアシェル架橋ゴム粒子が、1000μm以下の大きさに造粒されたものであることが好ましく、500μm以下の大きさに造粒されたものであることがより好ましい。コアシェル架橋ゴム粒子の造粒物は、アウターシェルが相互に融着した状態で凝集したものであってもよい。コアシェル架橋ゴム粒子の造粒物は、ペレット、グラニュール、パウダーなどの形態であってもよい。
コアシェル架橋ゴム粒子は、JIS K 0070:1992で測定される酸価が、好ましくは10mg/g以下、より好ましくは7mg/g以下、さらに好ましくは5mg/g以下、よりさらに好ましくは3mg/g以下、最も好ましくは1mg/g以下である。コアシェル架橋ゴム粒子の酸価は、例えば、水で洗浄するなどして調節することができる。コアシェル架橋ゴム粒子の酸価は、コアシェル架橋ゴム粒子を12時間以上室温にてクロロホルム中で撹拌させて得られる試料液を用いて測定する。コアシェル架橋ゴム粒子はクロロホルムに完全に溶解しないことがあるので、試料液には未溶解分が含まれていることがある。測定の直前に試料液から未溶解分を取り除いてもよい。
コアシェル架橋ゴム粒子は、屈折率(nd23)が、1.50〜1.55、好ましくは1.50〜1.54、より好ましくは1.51〜1.54である。コアシェル架橋ゴム粒子と熱可塑性樹脂(A)とを含有する熱可塑性樹脂組成物の透明性を高める観点から、熱可塑性樹脂(A)とコアシェル架橋ゴム粒子との屈折率の差が、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.02以下、さらに好ましくは0.01以下、最も好ましくは0.005以下になるようにすることが好ましい。
さらに、本発明の耐衝撃性改良剤は、窒素流量10ml/分、昇温速度20℃/分で測定した1.0%加熱減量温度が、好ましくは310℃以上、より好ましくは315〜350℃である。1.0%加熱減量温度がこの範囲に在る場合、ロールや金型汚れが抑制され、成形にて得られるフィルムへの気泡混入を防ぐことができる。
本発明の耐衝撃性改良剤の製造方法は、上記のようなコアシェル架橋ゴム粒子を得ることができる方法であれば、特に制限されない。本発明の耐衝撃性改良剤の好ましい製造方法は、センターコアを構成する重合体を得るための単量体を乳化重合(第一段目重合)してシード粒子を得、シード粒子の存在下にインナーシェルを構成する重合体を得るための単量体をシード乳化重合(第二段目重合)してコア粒子を得、コア粒子の存在下にアウターシェルを構成する重合体を得るための単量体をシード乳化重合(第三段目重合)してコアシェル架橋ゴム粒子を得ることを含むものである。乳化重合法若しくはシード乳化重合法は、一般的なコアシェル粒子を得るための手法として当該技術分野においてよく知られた技術であるので詳しい説明は他の文献を参照することができる。インナーシェルを構成する重合体が2以上である場合、第二段目重合を2回以上行う。
乳化重合若しくはシード乳化重合に用いられる乳化剤としては、例えば、アニオン系乳化剤であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;ノニオン系乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなど;ノニオン・アニオン系乳化剤であるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウムなどのアルキルエーテルカルボン酸塩;を挙げることができる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ノニオン系乳化剤およびノニオン・アニオン系乳化剤の例示化合物におけるエチレンオキシド単位の平均繰返し単位数は、乳化剤の発泡性が極端に大きくならないようにするために、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。
乳化重合若しくはシード乳化重合に用いられる重合開始剤は特に限定されない。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤;パースルホキシレート/有機過酸化物、過硫酸塩/亜硫酸塩などのレドックス系開始剤を挙げることができる。
乳化重合若しくはシード乳化重合に用いられる連鎖移動剤は特に限定されない。例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタンなどの単官能チオール化合物、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、トリスヒドロキシエチルトリスチオプロピオネート、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタンなどの多官能チオール化合物、チオフェノール、テトラエチルチウラムジスルフィド、ペンタンフェニルエタン、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、四塩化炭素、臭化エチレンなどを挙げることができる。これらのうち、n−オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)が好ましい。連鎖移動剤は単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
第一段目重合または第二段目重合において使用される連鎖移動剤の量は、それぞれ、第一段目重合または第二段目重合において供される単量体の総重量に対して、好ましくは0.05〜2質量%、より好ましくは0.1〜1.5質量%である。また、第三段目重合において使用される連鎖移動剤の量は、第三段目重合において供される単量体の総重量に対して、好ましくは0.05〜0.5質量%、より好ましくは0.1〜0.4質量%である。
特に、第1段目重合において連鎖移動剤を用いることで、本発明の耐衝撃性改良剤の、窒素流量10ml/分、昇温速度20℃/分で測定した1.0%加熱減量温度を高くできる。
シード乳化重合によって得られるエマルジョンからのコアシェル架橋ゴム粒子の分離取得は、塩析凝固法、凍結凝固法、噴霧乾燥法などの公知の方法によって行うことができる。コアシェル架橋ゴム粒子に含まれる不純物を水洗により容易に除去できる点から、塩析凝固法および凍結凝固法が好ましく、凍結凝固法がより好ましい。凍結凝固法においては凝集剤を用いないので耐水性に優れた成形体が得られやすい。エマルジョンに含まれていることがある異物を除去することができるので、凝固工程の前に目開き50μm以下の金網などでエマルジョンを濾過することが好ましい。
本発明の耐衝撃性改良剤を熱可塑性樹脂に添加し混練することにより、透明性、耐衝撃性などに優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と本発明の耐衝撃性改良剤(B)とを含有して成るものである。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(A)は特に制限されない。例えば、メタクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂;ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン−1樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、ポリノルボルネン樹脂、ノルボルネン系開環重合体またはその水添物、ノルボルネン系付加重合体またはその水添物などのポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、SISなどのスチレン系熱可塑性エラストマー、IR、EPR、EPDMなどのオレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル系ブロック共重合体などのアクリル系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。熱可塑性樹脂(A)は、屈折率n25 dが1.5〜1.6であること好ましい。これらのうち、熱可塑性樹脂(A)として、メタクリル樹脂のみの使用が好ましく、メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂との併用がより好ましい。メタクリル樹脂のみの使用またはメタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂との併用をした場合でも、これら以外の熱可塑性樹脂を好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、最も好ましくは0質量%で、必要に応じて併用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、熱可塑性樹脂(A)と本発明の耐衝撃性改良剤(B)との質量比は、特に制限されない。本発明の熱可塑性樹脂(A)と耐衝撃性改良剤(B)の質量比(A)/(B)は、好ましくは95/5〜10/90、より好ましくは90/10〜30/70、さらに好ましくは85/15〜40/60、よりさらに好ましくは80/20〜50/50である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(A)と本発明の耐衝撃性改良剤(B)との合計量は、熱可塑性樹脂組成物の質量に対して、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは60〜100質量%、さらに好ましくは70〜100質量%、最も好ましくは80〜100質量%である。
本発明に好ましく用いられる熱可塑性樹脂(A)の一つは、メタクリル酸メチルに由来する構造単位のみを含有してなる重合体またはメタクリル酸メチルに由来する構造単位と他の単量体に由来し且つ環構造を主鎖に有しない構造単位を含有してなるランダム共重合体(以下、これらをメタクリル樹脂[Aa]という。)である。係る他の単量体としては、アクリル酸非環状アルキルエステル;アクリル酸アリールエステル;アクリル酸アラルキルエステル;アクリル酸環状アルキルエステル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル;メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸非環状アルキルエステル;メタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸アラルキルエステル;メタクリル酸環状アルキルエステル;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル;不飽和カルボン酸;オレフィン;共役ジエン;芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどを挙げることができる。
メタクリル樹脂[Aa]は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の量が、全構造単位に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上、最も好ましくは99.5質量%以上である。他の単量体に由来し且つ環構造を主鎖に有しない構造単位の量は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の量とバランスする限り制限されず、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下である。
メタクリル樹脂[Aa]は、分子鎖上の不斉炭素の立体配座によって、特に制限されない。二連子(ダイアド)中で立体配座が同じ構造(イソタクチックダイアド構造またはメソ構造[m])、二連子(ダイアド)中で立体配座が異なる構造(シンジオタクチックダイアド構造またはラセモ構造[r])、三連子(トライアド)中でイソタクチックダイアド構造が並ぶ構造(イソタクチックトライアド構造、[m,m])、三連子(トライアド)中でシンジオタクチックダイアド構造が並ぶ構造(シンジオタクチックトライアド構造、[r,r])、三連子(トライアド)中でイソタクチックダイアド構造とシンジオタクチックダイアド構造とが並ぶ構造(ヘテロタクチックトライアド構造、[m,r]または[r,m])などを挙げることができる。本発明に用いられるメタクリル樹脂[Aa]は、耐熱性の観点から、シンジオタクチックトライアド構造を多く有することが好ましい。
メタクリル樹脂[Aa]は、シンジオタクティシティ(rr)の下限が、好ましくは58%、より好ましくは59%、さらに好ましくは60%である。メタクリル樹脂[Aa]のシンジオタクティシティ(rr)の上限は、特に制限されないが、製膜性の観点から、好ましくは99%、より好ましくは85%、さらに好ましくは77%、よりさらに好ましくは65%、最も好ましくは64%である。
シンジオタクティシティ(rr)は、全トライアド構造に対するシンジオタクチックトライアド構造の割合である。シンジオタクティシティ(rr)(%)は、重水素化クロロホルム中、30℃で1H−NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルからTMSを0ppmとした際の0.6〜0.95ppmの領域の面積(X)と0.6〜1.35ppmの領域の面積(Y)とを計測し、式:(X/Y)×100にて算出することができる。
メタクリル樹脂[Aa]は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが、好ましくは5万〜20万、より好ましくは5.5万〜16万、さらに好ましくは6万〜12万である。Mwが高くなるほど、メタクリル樹脂[Aa]から得られる成形体の強度が高くなる傾向がある。Mwが低くなるほど、タクリル樹脂[Aa]の成形加工性が良好になり、得られる成形体の表面平滑性が良好になる傾向がある。
メタクリル樹脂[Aa]は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比Mw/Mnが、好ましくは1.05以上3以下、好ましくは1.3以上2.5以下、さらに好ましくは1.3以上1.7以下である。Mw/Mnが低くなるほど、耐衝撃性や靭性が良好になる傾向がある。Mw/Mnが高くなるほど、メタクリル樹脂[Aa]の熔融流動性が高くなり、得られる成形体の表面平滑性が良好になる傾向がある。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる測定は、以下のようにして行う。溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いる。分析装置として、示差屈折率検出器(RI検出器)を備えた東ソー株式会社製のHLC−8320(品番)を使用した。試験対象のメタクリル樹脂4mgをテトラヒドロフラン5mlに溶解させて、試験対象溶液を調製する。カラムオーブンの温度を40℃に設定し、溶離液流量0.35ml/分で、試験対象溶液20μlを注入して、クロマトグラムを測定する。
クロマトグラムは、試験対象溶液と参照溶液との屈折率差に由来する電気信号値(強度Y)をリテンションタイムXに対してプロットしたチャートである。
分子量400〜5000000の範囲の標準ポリスチレンをゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定し、リテンションタイムと分子量との関係を示す検量線を作成する。クロマトグラムの高分子量側の傾きがゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとする。クロマトグラムが複数のピークを示す場合は、最も高分子量側のピークの傾きがゼロからプラスに変化する点と、最も低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとする。
メタクリル樹脂[Aa]は、230℃および3.8kg荷重の条件で測定して決定されるメルトフローレートが、好ましくは0.1〜30g/10分、より好ましくは0.5〜20g/10分、さらに好ましくは1〜15g/10分である。
また、メタクリル樹脂[Aa]は、ガラス転移温度が、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは123℃以上である。メタクリル樹脂[Aa]のガラス転移温度の上限は、特に制限はないが、好ましくは131℃である。
ガラス転移温度(Tg)は、DSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度である。DSC曲線は、測定対象樹脂を、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分で室温から230℃まで一度昇温(1stラン)し、次いで室温まで冷却し、次いで室温から230℃までを10℃/分で昇温(2ndラン)させたときの、2ndランの昇温時の示差走査熱量測定で得られるものである。
本発明に好ましく用いられる熱可塑性樹脂(A)の別の一つは、環構造を主鎖に有する構造単位と、メタクリル酸メチルに由来する構造単位とを含むメタクリル樹脂[Ab]である。メタクリル樹脂[Ab]は、高いガラス転移温度、低吸水性、および高温高湿度での収縮が小さいという特長がある。
メタクリル樹脂[Ab]は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が、好ましくは20〜99質量%、より好ましくは30〜95質量%、さらに好ましくは40〜90質量%であり、環構造を主鎖に有する構造単位の含有量が、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%である。なお、メタクリル樹脂[Ab]における、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量には、メタクリル酸メチルに由来する構造単位のうち分子内環化によって環構造を主鎖に有する構造単位に転換されたものを含まない。
メタクリル樹脂[Ab]はメタクリル酸メチルに由来する構造単位および環構造を主鎖に有する構造単位以外の他の構造単位を有してもよい。係る他の構造単位の由来となる単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸t−ブチルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸1−メチルシクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸シクロオクチル、メタクリル酸ノルボルネニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、メタクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル;メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸アラルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸グリシジル;アクリル酸アリル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどのアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリル酸3−ジメチルアミノエチル;アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイルなどのアクリル酸アリールエステル;アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アラルキルエステル;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリルアミド;メタクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;などの一分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を一つだけ有するビニル系単量体を挙げることができる。
環構造を主鎖に有する構造単位としては、>CH−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位、−C(=O)−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位、−C(=O)−N−C(=O)−基を環構造に含む構造単位、または>CH−O−CH<基を環構造に含む構造単位が好ましい。
環構造を主鎖に有する構造単位は、無水マレイン酸、N−置換マレイミドなどのような重合性不飽和炭素−炭素二重結合を有する環状単量体をメタクリル酸メチルなどと共重合させることによって、または重合によって得られたメタクリル樹脂の分子鎖の一部を分子内縮合環化させることによって、メタクリル樹脂[Ab]に含有させることができる。
>CH−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位としては、β−プロピオラクトンジイル(別名:オキソオキセタンジイル)構造単位、γ−ブチロラクトンジイル(別名:2−オキソジヒドロフランジイル)構造単位、δ−バレロラクトンジイル(別名:2−オキソジヒドロピランジイル)構造単位などのラクトンジイル構造単位を挙げることができる。なお、式中の「>C」は炭素原子Cに結合手が2つあることを意味する。
例えば、δ−バレロラクトンジイル構造単位としては、式(I)で表される構造単位を挙げることができる。

Figure 2018012820

式(I)中、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基であり、R14が水素原子、R15がメチル基であるのが好ましい。R16は−COORであり、Rは水素原子または炭素数1〜20の有機残基であり好ましくはメチル基である。*は結合手を意味する。
なお、式(I)における、有機残基としては、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、および−CN基等を挙げることができる。有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。「Ac」はアセチル基を示す。有機残基は、その炭素数が、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
δ−バレロラクトンジイル構造単位は、隣り合う二つのメタクリル酸メチルに由来する構造単位の分子内環化などによって、メタクリル樹脂に含有させることができる。
−C(=O)−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位としては、2,5−ジオキソジヒドロフランジイル構造単位、2,6−ジオキソジヒドロピランジイル構造単位、2,7−ジオキソオキセパンジイル構造単位などを挙げることができる。
例えば、2,5−ジオキソジヒドロフランジイル構造単位としては、式(II)で表される構造単位を挙げることができる。

Figure 2018012820

式(II)中、R21およびR22はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。*は結合手を意味する。
なお、式(II)における、有機残基としては、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、および−CN基等を挙げることができる。有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。「Ac」はアセチル基を示す。有機残基は、その炭素数が、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
21およびR22はいずれも水素原子であるのがより好ましい。その場合、製造容易性および固有複屈折の調節等の観点から、通常、スチレン等が共重合されていることが好ましい。具体的にはWO2014/021264 Aに記載されているような、スチレンに由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合体を挙げることができる。
2,5−ジオキソジヒドロフランジイル構造単位は、無水マレイン酸の共重合などによって、メタクリル樹脂に含有させることができる。
2,6−ジオキソジヒドロピランジイル構造単位としては、式(III)で表される構造単位を挙げることができる。

Figure 2018012820

式(III)中、R33およびR34はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。*は結合手を意味する。
なお、式(III)における、有機残基としては、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、および−CN基等を挙げることができる。有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。「Ac」はアセチル基を示す。有機残基は、その炭素数が、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5、もっとも好ましくは1である。最も好ましい有機残基はメチル基である。
2,6−ジオキソジヒドロピランジイル構造単位は、隣り合う二つのメタクリル酸メチルに由来する構造単位の分子内環化などによって、メタクリル樹脂に含有させることができる。
−C(=O)−N−C(=O)−基を環構造に含む構造単位(なお、Nが有するもう一つ結合手は表記を省略している。)としては、2,5−ジオキソピロリジンジイル構造単位、2,6−ジオキソピペリジンジイル構造単位、2,7−ジオキソアゼパンジイル構造単位などを挙げることができる。
例えば、2,6−ジオキソピペリジンジイル構造単位としては、式(IV)で表される構造単位を挙げることができる。

Figure 2018012820

式(IV)中、R41およびR42はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、R43は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基である。*は結合手を意味する。
原料入手の容易さ、費用、耐熱性などの観点から、R41およびR42はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であることが好ましく、R41がメチル基でありR42が水素原子であることがより好ましい。R43は水素原子、メチル基、n−ブチル基、シクロへキシル基またはベンジル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
2,5−ジオキソピロリジンジイル構造単位としては、式(V)で表される構造単位を挙げることができる。

Figure 2018012820

式(V)中、R52およびR53はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数6〜14のアルキル基であり、R51は、炭素数7〜14のアリールアルキル基、または無置換の若しくは置換基を有する炭素数6〜14のアリール基である。アリール基に置換される基は、ハロゲノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数7〜14のアリールアルキル基である。*は結合手を意味する。R51はフェニル基またはシクロヘキシル基であるのが好ましく、R52およびR53は共に水素原子であるのが好ましい。
2,5−ジオキソピロリジンジイル構造単位は、N−置換マレイミドの共重合などによって、メタクリル樹脂に含有させることができる。
>CH−O−CH<基を環構造に含む構造単位としては、オキセタンジイル構造単位、テトラヒドロフランジイル構造単位、テトラヒドロピランジイル構造単位、オキセパンジイル構造単位などを挙げることができる。なお、式中の「>C」は炭素原子Cに結合手が2つあることを意味する。
例えば、テトラヒドロピランジイル構造単位としては、式(VI)で表される構造単位を挙げることができる。

Figure 2018012820

式(VI)中、R61およびR62はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基、または環構造を有する炭素数3〜20の炭化水素基である。*は結合手を意味する。
61およびR62としては、それぞれ独立に、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−イル基、t−ブチル基、または4−t−ブチルシクロヘキサニル基が好ましい。
上記の環構造を主鎖に有する構造単位のうち、原料および製造の容易さの観点から、δ−バレロラクトンジイル構造単位、または2,5−ジオキソジヒドロフランジイル構造単位が好ましい。
メタクリル樹脂[Ab]は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが、好ましくは4万〜20万、より好ましくは4万〜15万、さらに好ましくは5万〜12万である。Mwが高くなるほど、メタクリル樹脂[Ab]から得られる成形体の強度が高くなる傾向がある。Mwが低くなるほど、メタクリル樹脂[Ab]の成形加工性が良好になり、得られる成形体の表面平滑性が良好になる傾向がある。
メタクリル樹脂[Ab]は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比Mw/Mnが、好ましくは12以上5.0以下、好ましくは1.3以上3.5以下である。Mw/Mnが低くなるほど、耐衝撃性や靭性が良好になる傾向がある。Mw/Mnが高くなるほど、メタクリル樹脂[Ab]の熔融流動性が高くなり、得られる成形体の表面平滑性が良好になる傾向がある。
メタクリル樹脂[Ab]は、230℃および3.8kg荷重の条件で測定して決定されるメルトフローレートが、好ましくは0.1〜20g/10分、より好ましくは0.5〜15g/10分、さらに好ましくは1.0〜10g/10分である。
また、メタクリル樹脂[Ab]は、ガラス転移温度が、好ましくは120℃以上、より好ましくは123℃以上、さらに好ましくは124℃以上である。メタクリル樹脂[Ab]のガラス転移温度の上限は、特に制限はないが、好ましくは160℃である。
本発明に好ましく用いられる熱可塑性樹脂(A)の別の一つは、メタクリル酸環式炭化水素エステルに由来する構造単位とメタクリル酸環式炭化水素エステル以外のメタクリル酸エステルに由来する構造単位と必要に応じてアクリル酸エステルに由来する構造単位を含むメタクリル樹脂[Ac]である。メタクリル樹脂[Ac]は環構造が主鎖にペンダント状に結合した構造を有する。メタクリル樹脂[Ac]は、高いガラス転移温度、低吸水性、および高温高湿度での収縮が小さいという特長がある。
メタクリル酸環式炭化水素エステルを構成する環式炭化水素基としては、例えば、オクタヒドロペンタレン−1−イル基、オクタヒドロペンタレン−2−イル基、オクタヒドロ−1−1H−インデン−4−イル基、オクタヒドロ−1−1H−インデン−5−イル基、ヘキサヒドロ−1,5−メタノ−ペンタレン−3A−イル基、デカヒドロナフタレン−1−イル基、デカヒドロナフタレン−2−イル基、オクタヒドロシクロペンタ[c,d]ペンタレン−2A−2a(2H)−イル基、3a,6a−ジメチルオクタヒドロペンタレン−2−イル基、テトラデカヒドロアントラセン−9−イル基、アンドロスタン−4−イル基、コレスタン−2−イル基、コレスタン−5−イル基等の縮合多環式炭化水素基;ノルボルナン−2−イル基、2−メチルノルボルナン−2−イル基、2−エチルノルボルナン−2−イル基、1,3,3−トリメチルノルボルナン−2−イル基、1,2,3,3−テトラメチルノルボルナン−2−イル基、1,3,3−トリメチルノルボルナン−2−イル基、イソボルナン−2−イル基、2−メチルイソボルナン−2−イル基、2−エチルイソボルナン−2−イル基、デカヒドロ−2,5−メタノ−7,10−メタノナフタレン−1−イル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、アダマンタン−1−イル基、アダマンタン−2−イル基、2−メチルアダマンタン−2−イル基、2−エチルアダマンタン−2−イル基、デカヒドロ−3,6−メタノ−2,2,7,7−テトラメチルナフタレン−1−イル基等の橋かけ環式炭化水素基;スピロビシクロペンタン−2−イル基、スピロビシクロペンタン−3−イル基、スピロビシクロヘキサン−2−イル基、スピロビシクロヘキサン−3−イル基等のスピロ構造をもつ多環式炭化水素基;シクロペンチル基、アルキル基で置換されたシクロペンチル基、シクロヘキシル基、アルキル基で置換されたシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの単環炭化水素基、フェニル基、アルキル基で置換されたフェニル基、ナフチル基、アルキル基で置換されたナフチル基等の芳香族炭化水素基;などを挙げることができる。なお、前記「アルキル基で置換された」におけるアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。環式炭化水素基としては、脂肪族環式炭化水素基が好ましい。
メタクリル酸環式炭化水素エステルは、式(2)で表される化合物であることが好ましい。

Figure 2018012820

式(2)中、Xは、炭素数6以上の環式炭化水素基、好ましくは炭素数10以上の橋かけ環式炭化水素基である。なお、橋かけ環式炭化水素基は、環を構成する隣り合わない二つの炭素原子が1以上の炭素原子からなる炭素鎖で結ばれた構造を有する脂環式炭化水素基である。係る橋かけ環式炭化水素基は、炭素鎖で結ばれた構造以外に、縮合環構造、スピロ環構造を有してもよい。橋かけ環式炭化水素基を構成する炭素原子の数は、10〜20であることがより好ましい。アルキルなどの非環式炭化水素基にシクロへキシル基やフェニル基などが置換したものは環式炭化水素基に含まない。
炭素数6以上の環式炭化水素基としては、オクタヒドロシクロペンタ[c,d]ペンタレン−2A−2a(2H)−イル基、3a,6a−ジメチルオクタヒドロペンタレン−2−イル基、テトラデカヒドロアントラセン−9−イル基、アンドロスタン−4−イル基、コレスタン−2−イル基、コレスタン−5−イル基、1,3,3−トリメチルノルボルナン−2−イル基、1,2,3,3−テトラメチルノルボルナン−2−イル基、1,3,3−トリメチルノルボルナン−2−イル基、イソボルナン−2−イル基、2−メチルイソボルナン−2−イル基、2−エチルイソボルナン−2−イル基、デカヒドロ−2,5−メタノ−7,10−メタノナフタレン−1−イル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、アダマンタン−1−イル基、アダマンタン−2−イル基、2−メチルアダマンタン−2−イル基、2−エチルアダマンタン−2−イル基、デカヒドロ−3,6−メタノ−2,2,7,7−テトラメチルナフタレン−1−イル基、スピロビシクロヘキサン−2−イル基、スピロビシクロヘキサン−3−イル基などを挙げることができる。
これらの中でも、1,3,3−トリメチルノルボルナン−2−イル基、1,2,3,3−テトラメチルノルボルナン−2−イル基、1,3,3−トリメチルノルボルナン−2−イル基、イソボルナン−2−イル基、2−メチルイソボルナン−2−イル基、2−エチルイソボルナン−2−イル基、デカヒドロ−2,5−メタノ−7,10−メタノナフタレン−1−イル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、アダマンタン−1−イル基、アダマンタン−2−イル基、2−メチルアダマンタン−2−イル基、2−エチルアダマンタン−2−イル基、シクロヘキシル基、アルキル基で置換されたシクロヘキシル基、フェニル基、アルキル基で置換されたフェニル基、ナフチル基、アルキル基で置換されたナフチル基が好ましく、イソボルナン−2−イル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基がより好ましく、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基(慣用名:ジシクロペンタニル基)が特に好ましい。
メタクリル樹脂[Ac]に有するメタクリル酸環式炭化水素エステルに由来する構造単位の量は、メタクリル樹脂[Ac]に対して、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%、さらに好ましくは20〜30質量%である。
メタクリル樹脂[Ac]において用いられる、メタクリル酸環式炭化水素エステル以外のメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸非環式炭化水素エステル:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチルなどを挙げることができる。これらの中でも、透明性、耐熱性を向上させる観点から、メタクリル酸非環式炭化水素エステルが好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチルより好ましく、メタクリル酸メチルが最も好ましい。
メタクリル樹脂[Ac]に有するメタクリル酸環式炭化水素エステル以外のメタクリル酸エステルに由来する構造単位の量は、メタクリル樹脂[Ac]に対して、好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜85質量%、さらに好ましくは70〜80質量%である。
メタクリル樹脂[Ac]において用いられる、アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシルなどのアクリル酸非環式炭化水素エステル;アクリル酸フェニルなどのアクリル酸芳香族炭化水素エステル;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニルなどのアクリル酸脂環式炭化水素エステルなどを挙げることができる。これらの中でも熱分解が抑制でき、成形性を向上させる点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが好ましく、アクリル酸メチルが特に好ましい。
メタクリル樹脂[Ac]に有するアクリル酸エステルに由来する構造単位の量は、メタクリル樹脂[Ac]に対して、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%、さらに好ましくは0〜5質量%である。
メタクリル樹脂[Ac]は、メタクリル酸エステル並びにアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を有してもよい。係る単量体としては、例えば、アクリルアミド;メタクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリロニトリル、スチレンなどの一分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を一つだけ有する単量体を挙げることができる。なお、アクリル酸、メタクリル酸、4−ビニルベンゼンスルホン酸などの酸性官能基を有する単量体に由来する構造単位は、酸価を増大させ、また吸水性を高くするので、含まないことが好ましい。
メタクリル樹脂[Ac]に有することがあるメタクリル酸エステル並びにアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の量は、メタクリル樹脂[Ac]の質量に対して、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%、さらに好ましくは0〜2質量%である。
メタクリル樹脂[Ac]は、重量平均分子量(以下、「Mw」と称することがある。)が、好ましくは6万〜20万、より好ましくは8万〜16万、さらに好ましくは9万〜15万、特に好ましくは10万〜13万である。メタクリル樹脂[Ac]のMwが大きいと、本発明の樹脂組成物からなるフィルムの強度が高く、割れ難く、延伸し易いため、より薄いフィルムを得ることができる。またメタクリル樹脂[Ac]のMwが小さいと、メタクリル樹脂[Ac]は成形加工性が高まるので、本発明の樹脂組成物からなるフィルムの厚さが均一で且つ表面平滑性に優れる傾向となる。
メタクリル樹脂[Ac]は、数平均分子量(以下、「Mn」と称することがある。)に対するMwの比(Mw/Mn:以下、この値を「分子量分布」と称することがある。)が、好ましくは1.2〜5.0、より好ましくは1.5〜3.5である。分子量分布が1.2以上であると、メタクリル樹脂[Ac]の流動性が向上し、本発明の樹脂組成物からなるフィルムは表面平滑性に優れる傾向となる。分子量分布が5.0以下であると、本発明の樹脂組成物からなるフィルムは耐衝撃性および靭性に優れる傾向となる。なお、MwおよびMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したクロマトグラムを標準ポリスチレンの分子量に換算した値である。
メタクリル樹脂[Ac]は、JIS K7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重の条件において測定される、メルトフローレートが、好ましくは0.1〜15g/10分、より好ましくは0.5〜5g/10分、さらに好ましくは0.8〜3g/10分である。
メタクリル樹脂[Ac]の酸価は、JIS K 0070:1992で測定される。その酸価は、好ましくは7mg/g以下であり、5mg/g以下が好ましく、3mg/g以下がより好ましく、1.0mg/g以下がさらに好ましく、0.5mg/g以下が最も好ましい。酸価がこの範囲にあることで、メタクリル樹脂[Ac]中のメタクリル酸環式炭化水素エステルに由来する構造単位に由来する熱分解を抑制できる。
メタクリル樹脂[Ac]のガラス転移温度は、好ましくは90℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは125℃以上である。メタクリル樹脂[Ac]のガラス転移温度の上限は、通常140℃である。ガラス転移温度は、メタクリル酸環式炭化水素エステルに由来する構造単位の割合を調節することによって制御することができる。ガラス転移温度がこの範囲にあると、得られるフィルムの耐熱性が向上し、熱収縮などの変形が起こり難い。
ここで、ガラス転移温度(Tg)は、室温以上の領域においてJIS K7121に準拠して行うものであり、示差走査熱量計を用いて、室温から230℃まで昇温速度10℃/分で一度昇温(1stラン)し、次いで室温まで冷却し、次いで室温から230℃までを10℃/分で昇温(2ndラン)させたときの、2ndランの昇温時の示差走査熱量測定で得られるものである。
メタクリル樹脂[Aa]、[Ab]または[Ac]は、それの製造方法によって特に制限されない。例えば、ラジカル重合法、アニオン重合法などの公知の重合法によって製造することができる。ラジカル重合は、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法または乳化重合法によって行うことができ、これらのうち、生産性および耐熱分解性の観点から、懸濁重合法または塊状重合法によって行うことが好ましい。塊状重合法は連続流通式で行うことが好ましい。
メタクリル樹脂[Aa]、[Ab]または[Ac]の特性値は、重合条件を調整することによって、具体的には、重合温度、重合時間、連鎖移動剤の種類や量、重合開始剤の種類や量などを調整することによって行うことができる。
本発明に好ましく用いられる熱可塑性樹脂(A)のさらに別の一つは、ポリカーボネート樹脂である。特に、芳香族ポリカーボネート樹脂は、メタクリル樹脂との併用において、高い相溶性、高い透明性および優れた表面平滑性を奏することがある。係る熱可塑性樹脂(A)はポリカーボネート樹脂を熱可塑性樹脂(A)に対して2〜50質量%で含有するものであることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂は、300℃、1.2Kgでのメルトボリュームフローレート(MVR)が、好ましくは1〜250cm3/10分、より好ましくは3〜230cm3/10分である。
ポリカーボネート樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したクロマトグラムを標準ポリスチレンの分子量に換算して算出される重量平均分子量が、好ましくは1.8万〜7.5万、より好ましくは2万〜6万である。なお、ポリカーボネート樹脂のMVR値や重量平均分子量の調節は末端停止剤や分岐剤の量を調整することによって行うことができる。
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上、さらに好ましくは140℃以上である。該ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度の上限は、通常180℃である。
ここで、ガラス転移温度(Tg)は、室温以上の領域においてJIS K7121に準拠して行うものであり、示差走査熱量計を用いて、室温から230℃まで昇温速度10℃/分で一度昇温(1stラン)し、次いで室温まで冷却し、次いで室温から230℃までを10℃/分で昇温(2ndラン)させたときの、2ndランの昇温時の示差走査熱量測定で得られるものである。
ポリカーボネート樹脂は、その製造方法によって特に限定されない。例えば、ホスゲン法(界面重合法)及び熔融重合法(エステル交換法)などを挙げることができる。また、本発明に好ましく用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂は、熔融重合法で製造したポリカーボネート樹脂原料に、末端ヒドロキシ基量を調整するための処理を施して成るものであってもよい。また、ポリカーボネート樹脂は、市販品やその他公知のものを用いることができる。
ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート単位以外に、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルまたはポリシロキサン構造を有する単位等を含有しているものであってもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂とメタクリル樹脂との併用において、相溶性の観点から、メタクリル樹脂(PMMA)とポリカーボネート樹脂(PC)の質量比(PMMA)/(PC)は、好ましくは98/2〜50/50、より好ましくは98/2〜60/40である。高い相溶性は、高い透明性、高い屈折率、良好な表面平滑性を与えやすい。またメタクリル樹脂(PMMA)とポリカーボネート樹脂(PC)の質量比(PMMA)/(PC)を98/2〜90/10にした場合には複屈折による位相差(レタデーション)の小さい成形体を得やすい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてフィラーを含んでいてもよい。フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物に含有し得るフィラーの量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、蛍光体などの添加剤を含有していてもよい。
これらの添加剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの添加剤は、熱可塑性樹脂(A)または本発明の耐衝撃性改良剤(B)を製造する際に添加してもよいし、製造された熱可塑性樹脂(A)または本発明の耐衝撃性改良剤(B)に添加してもよいし、本発明の熱可塑性樹脂組成物を調製する際に添加してもよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物に含有される添加剤の合計量は、熱可塑性樹脂(A)に対して、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、本発明の耐衝撃性改良剤(B)の存在下に熱可塑性樹脂(A)を得るための単量体を重合してin situにて熱可塑性樹脂組成物を得ることを含む方法、熱可塑性樹脂(A)と本発明の耐衝撃性改良剤(B)とを混練することを含む方法などを挙げることができる。
混練に使用することができる装置としては、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどを挙げることができる。これらのうち、二軸押出機が好ましい。混練時の温度は、熱可塑性樹脂(A)の軟化温度および本発明の耐衝撃性改良剤(B)の軟化温度などに応じて適宜調節することができるが、好ましくは110℃〜280℃、より好ましくは200℃〜270℃である。熔融温度が高すぎると熱可塑性樹脂組成物の酸価が高くなることがある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ガラス転移温度が、好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは122℃以上、特に好ましくは125℃以上である。本発明の熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度の上限は特に制限はないが、好ましくは135℃である。
ここで、ガラス転移温度(Tg)は、室温以上の領域においてJIS K7121に準拠して行うものであり、示差走査熱量計を用いて、室温から230℃まで昇温速度10℃/分で一度昇温(1stラン)し、次いで室温まで冷却し、次いで室温から230℃までを10℃/分で昇温(2ndラン)させたときの、2ndランの昇温時の示差走査熱量測定で得られるものである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の溶媒可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定にて決定されるMwは、好ましくは7万〜20万、より好ましくは7.2万〜18万、さらに好ましくは7.5万〜15万である。本発明の熱可塑性樹脂組成物の溶媒可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定にて決定されるMw/Mnは、好ましくは1.2〜5.0、より好ましくは1.5〜3.5である。MwやMw/Mnがこの範囲にあると、樹脂組成物の成形加工性が良好となり、耐衝撃性や靭性に優れた成形体を得易くなる。ここで溶媒としてテトラヒドロフランを使用する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、230℃および3.8kg荷重の条件で測定して決定されるメルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.1〜15g/10分、さらに好ましくは0.5〜5g/10分、最も好ましくは1.0〜3g/10分である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、1.0mm厚さのヘイズが、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.7%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、低イエロインデックス、変色抑制または異物生成抑制などの観点から、酸価が、好ましくは7mg/g以下、より好ましくは5mg/g以下、さらに好ましくは3mg/g以下、よりさらに好ましくは1.0mg/g以下、最も好ましくは0.5mg/g以下である。酸価は、JIS K 0070:1992に準拠して測定することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ペレット、グラニュール、パウダーなどの任意の形態にして、フィルムなどへの成形工程に供することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を公知の方法によって成形し、各種成形体にすることができる。成形法としては、例えば、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、溶液キャスト法などが挙げられる。また、他の材料との複合成形体を得るために、インサート成形法、被覆成形法などの公知の複合成形体の製法を採用できる。
本発明のフィルムは、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる。本発明のフィルムの製法は、特に限定されず、例えば、溶液キャスト法、熔融流延法、押出成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法などを挙げることができる。これらのうち、押出成形法が好ましい。押出成形法によれば、透明性に優れ、改善された靭性を持ち、取扱い性に優れ、靭性と表面硬度および剛性とのバランスに優れたフィルムを得ることができる。押出機から吐出される本発明に係る熱可塑性樹脂組成物の温度は、好ましくは160〜270℃、より好ましくは220〜260℃に設定する。熱可塑性樹脂組成物の温度が高いと、得られるフィルムの酸価が高い傾向がある。
フィルムの表面平滑性および厚さ均一性の観点から、押出されたフィルム状熔融樹脂組成物を、鏡面ロールまたは鏡面ベルトの間に引き取り挟圧することが好ましい。鏡面ロールまたは鏡面ベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。鏡面ロールまたは鏡面ベルト間の線圧は、好ましくは10N/mm以上、より好ましく30N/mm以上である。鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの表面温度は、表面平滑性、ヘイズ、外観などの観点から、下限が、好ましくは60℃、より好ましくは70℃であり、上限が、好ましくは130℃、より好ましくは100℃である。
熱可塑性樹脂組成物をフィルムに成形した後、延伸処理を施してもよい。延伸処理によって、機械的強度が向上し、ひび割れし難くなることがある。延伸の方法は特に限定されず、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法、圧延法などが挙げられる。延伸時の温度は、下限が熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度より5℃高い温度であり、上限が熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度より40℃高い温度である。延伸の速度は、好ましくは100〜5000%/分である。延伸処理においては延伸段階の後に熱固定段階を行うことがさらに好ましい。熱固定によって、熱収縮の少ないフィルムを得ることができる。
本発明のフィルムは、その厚さが、好ましくは1〜200μm、より好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。
本発明のフィルムは、厚さ40μmにおけるヘイズが、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。
本発明のフィルムは、低位相差の光学フィルムとして用いる場合、波長590nmの光に対する厚さ40μmにおける面内方向位相差Reが、好ましくは19nm以下、より好ましくは15nm以下、さらに好ましくは10nm以下、特に好ましくは5nm以下、最も好ましくは1nm以下である。
本発明のフィルムは、低位相差の光学フィルムとして用いる場合、波長590nmの光に対する厚さ40μmにおける厚さ方向位相差Rthが、好ましくは−12nm以上12nm以下、より好ましくは−5nm以上5nm以下、さらに好ましくは−3nm以上3nm以下、特に好ましくは−2nm以上2nm以下、最も好ましくは−1nm以上1nm以下である。
なお、面内方向位相差Reおよび厚さ方向位相差Rthは、それぞれ、以下の式で定義される値である。
Re=(nx−ny)×d
th=((nx+ny)/2−nz)×d
ここで、nxはフィルムの遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルムの進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚さ方向の屈折率であり、d[nm]はフィルムの厚さである。遅相軸はフィルム面内の屈折率が最大になる方向の軸である。進相軸は面内において遅相軸に対して直角となる方向の軸である。
本発明のフィルムは、波長590nmの光に対する光弾性係数βが、好ましくは−3.0×10-12Pa-1以上3.0×10-12Pa-1以下、より好ましくは−2.0×10-12Pa-1以上2.0×10-12Pa-1以下、さらに好ましくは−1.0×10-12Pa-1以上1.0×10-12Pa-1以下である。なお、光弾性係数β[10-12Pa-1]は、次式のとおり、応力σ[Pa]を印加した際の面内方向位相差Rin〔nm〕と、フィルム厚さd[nm]との関係から算出することができる。
in=β×σ×d
面内方向位相差Re、厚さ方向位相差Rthおよび光弾性係数βが上記のような範囲であれば、位相差に起因する画像表示装置の表示特性への影響が顕著に抑制され得る。より具体的には、干渉ムラや3Dディスプレイ用液晶表示装置に用いる場合の3D像の歪みが顕著に抑制され得る。
本発明のフィルムを位相差フィルムとして用いる場合、厚み40μmあたりの面内位相差Reが10〜200nmであることが好ましく、10〜180nmであることがより好ましく、10〜150nmであることがさらに好ましい。そして、厚さ方向位相差Rthは−10〜−250nmであることが好ましく、−20〜−230nmであることがより好ましく、−30〜−200nmであることがさらに好ましい。
本発明のフィルムの表面に機能層を設けてもよい。機能層としては、ハードコート層、アンチグレア層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、防眩層、静電気防止層、防汚層、微粒子などを用いて成る易滑性層、ガスバリア層、銀ナノワイヤーやカーボンナノチューブなどを用いて成る透明導電層等を挙げることができる。
本発明のフィルムは、耐熱分解性に優れ、耐衝撃性および透明性を有するため、位相差フィルム、偏光子保護フィルム、液晶保護板、携帯型情報端末の表面材、携帯型情報端末の表示窓保護フィルム、導光フィルム、光学用ガスバリアフィルム、各種ディスプレイの前面板、透明導電フィルムなどの光学用途に好適である。さらに、本発明のフィルムは、IRカットフィルム、防犯フィルム、飛散防止フィルム、加飾フィルム、金属加飾フィルム、太陽電池のバックシート、フレキシブル太陽電池用フロントシート、シュリンクフィルム、インモールドラベル用フィルムなどの光学用途以外の用途にも適している。
本発明に係る偏光板は、偏光子と、該偏光子に積層された本発明のフィルムとを少なくとも有する。本発明のフィルムは、偏光子の両面に積層されていてもよいし、片面に積層されていてもよい。偏光子の片面に本発明のフィルムを偏光子保護フィルムとして積層した場合は、別の片面に本発明のフィルム以外の光学フィルムを積層することができる。係る光学フィルムとしては、偏光子保護フィルム、視野角調整フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどを挙げることができる。積層は接着剤層を介して行うこともできる。
本発明のフィルムである偏光子保護フィルムを有する偏光板は、画像表示装置に使用することができる。画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED)のような自発光型の画像表示装置、液晶ディスプレイ(LCD)、液晶プロジェクタなどのような液晶セルを用いた画像表示装置などを挙げることができる。液晶ディスプレイにおいては、例えば、液晶セルを挟む2枚の偏光板のうち少なくとも一方に本発明の偏光子保護フィルムと偏光子(偏光フィルム)を貼り合わせてなる直線偏光板を用いることができる。エレクトロルミネッセンスディスプレイにおいては、例えば、外光の反射を防止するために、λ/4位相差を有するように調整された本発明のフィルムを入射光のうちの一方の直線偏光のみを透過する偏光フィルムに貼り合わせてなる円偏光板を用いることができる。本発明のフィルムは有機発光ダイオードを用いた照明装置若しくは表示装置、または液晶セルを用いた表示装置に好ましく使用することができる。
次に、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されない。
物性値等は以下の方法によって決定した。
(樹脂単量体組成)
核磁気共鳴装置(Bruker社製 ULTRA SHIELD 400 PLUS)を用い、樹脂10mgに対して重水素化クロロホルム1mL、室温、積算回数64回の条件にて、1H−NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルから樹脂中の単量体単位の組成を算出した。
(重量平均分子量(Mw))
Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて下記の条件でクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンの分子量に換算した値から算出した。
GPC装置:東ソー株式会社製、HLC−8320
検出器:示差屈折率検出器
カラム:東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いた。
溶離剤: テトラヒドロフラン
溶離剤流量: 0.35ml/分
カラム温度: 40℃
検量線:標準ポリスチレン10点のデータを用いて作成
(粒子径測定)
実施例1および4ならびに比較例3で得られたコアシェル架橋ゴム粒子に含有されるコア粒子の平均粒子径Dは次のようにして決定した。
先ず、コアシェル架橋ゴム粒子を製造する際の中間に生成するコア粒子水分散液をサンプリングし、コア粒子が濃度0.05質量%になるようにイオン交換水で希釈する。希釈液をガラスプレートに展開して、乾燥する。このようにするとコア粒子が凝集することなくガラスプレート上に分散して存在するようになる。次いで、乾燥させたガラスプレート表面に白金・パラジウムを蒸着させ、それを電子顕微鏡で観察し写真を撮る。電子顕微鏡写真から、無作為に100個の粒子を選び、それぞれの粒子径を測定し、それら測定値を算術平均した値をコア粒子の平均粒子径Dとした。
実施例2〜3および5〜9ならびに比較例1〜2および4で得られたコアシェル架橋ゴム粒子に含有されるコア粒子の平均粒子径Dは次のようにして測定した。
実施例1および4ならびに比較例3で得られたコアシェル架橋ゴム粒子に含有されるコア粒子の水分散液(コア粒子濃度:0.05質量%)を光路長10mmのクウォーツセルに注ぎ入れ、波長590nmでの吸光度をそれぞれ測定した。実施例1および4ならびに比較例2で得られたコアシェル架橋ゴム粒子に含有されるコア粒子水分散液の吸光度と平均粒子径Dとの関係を示す検量線を作成した。
実施例2〜3および5〜9ならびに比較例1〜2および4で得られたコアシェル架橋ゴム粒子に含有されるコア粒子の水分散液(コア粒子濃度:0.05質量%)の吸光度を光路長10mmのクウォーツセルにて波長590nmで測定した。その測定値から検量線を用いて平均粒子径Dを得た。
(硫黄成分含有量)
コアシェル架橋ゴム粒子を製造する際の各ステージで得られるシード粒子、コア粒子またはコアシェル架橋ゴム粒子、各0.2gを精秤し容器に入れた。これに濃硝酸10mlを加え、容器を密閉し、マイクロウェーブ試料分解装置(マイルストーンゼネラル社製 ETHOS−1600型)にて500〜1000Wの出力で55分間分解処理した。次いで、ICP発光分光分析装置(セイコーインスツルーメンツ社製、CCD多元素同時型ICP発光分光分析装置、ICP−OES VISTA−PRO)にて硫黄成分(質量%)を定量した。シード粒子、コア粒子またはコアシェル架橋ゴム粒子についての定量値から、センターコア、インナーシェルおよびアウターシェルに含まれる各硫黄成分の質量比を算出した。
表1および2においては、センターコアを構成する重合体の質量に対するセンターコアを構成する重合体に含有する硫黄成分の質量の比、インナーシェルを構成する重合体の質量に対するインナーシェルを構成する重合体に含有する硫黄成分の質量の比、およびアウターシェルを構成する重合体の質量に対するアウターシェルを構成する重合体に含有する硫黄成分の質量の比を、センターコア/インナーシェル/アウターシェルの順に記載している。
(全光線透過率)
射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SE−180DU−HP)を使用し、樹脂組成物を、シリンダ温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル1分で射出成形して長さ50mm、幅50mm、厚さ1mmの試験片を得た。光路長1mmの該試験片について、JIS K7361−1に準じて、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて測定された全光線透過率を、樹脂組成物の全光線透過率(TtA)とした。
プレス成形機を使用し、耐衝撃性改良剤を200℃にてプレス成形して得られた光路長3mmの試験片について、JIS K7361−1に準じて、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて測定した全光線透過率を、耐衝撃性改良剤の全光線透過率(TtB)とした。
(ヘイズ)
射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SE−180DU−HP)を使用し、樹脂組成物を、シリンダ温度280℃、金型温度75℃、成形サイクル1分で射出成形して長さ50mm、幅50mm、厚さ1mmの試験片を得た。光路長1mmの該試験片についてJIS K7136に準拠して、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて測定したヘイズを、樹脂組成物のヘイズ(HA)とした。
プレス成形機を使用し、耐衝撃性改良剤を200℃にてプレス成形して得られた光路長3mmの試験片について、JIS K7136に準拠して、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて測定したヘイズを、耐衝撃性改良剤のヘイズ(HB)とした。
(屈折率)
プレス成形機を使用し、耐衝撃性改良剤または樹脂組成物を200℃にてプレス成形して、厚さ3mm板を得、この板から30mm×30mmの試験片を切り出した。この試験片について、精密屈折率計(島津製作所製 カルニュー KPR−20)を用いて、25℃、ヘリウムd線(587.56nm)にて測定した屈折率を、耐衝撃性改良剤または樹脂組成物の屈折率(n25 dBまたはn25 dA)とした。
センタ−コアおよびインナーシェルの屈折率(n25 dCCおよびn25 dIS)は、それぞれの重合体を構成する単量体単位のホモポリマーの屈折率に重合体に占める単量体単位の質量比を掛けた値を総和したものである。
(加熱減量温度)
熱重量測定装置(島津製作所製 TGA−50)にて、窒素流量が10ml/分、昇温速度20℃/分の条件で測定し、150℃での重量を基準(100重量%)に、1.0重量%減量したときの温度を1.0%加熱減量温度(T1.0 HL)、2.5%重量%減量したときの温度を2.5%加熱減量温度(T2.5 HL)、および5.0%重量%減量したときの温度を5.0%加熱減量温度(T5.0 HL)とした。
(耐衝撃性)
射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SE−180DU−HP)を使用し、樹脂組成物を、シリンダ温度230℃、金型温度65℃、成形サイクル0.5分で射出成形して長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を得た、該試験片について、ISO179−1に準拠し、シャルピー衝撃試験を行って測定したノッチ無しのシャルピー衝撃強度を、樹脂組成物のシャルピー衝撃強度(Ic)とした。
(製膜性)
樹脂組成物をOptical Control System社製の製膜機(型式FS−5)にて、シリンダおよびTダイの温度300℃、リップ間隙0.5mm、吐出量2.7kg/hr、ロール温度85℃、フィルム引取り速度2.2m/分で押出成形し、厚さ100μmのフィルムを連続して製造した。製造開始から1時間経過した時にロールの表面を肉眼観察した。製膜性の評価を以下の指標で表した。
A:ロール汚れが全く若しくは殆どない。
B:ロール汚れが僅かにある。
C:ロール汚れが著しい。
<実施例1>
〔第1段目重合〕
コンデンサー、温度計および撹拌機を備えたグラスライニングを施した容量100Lの反応槽に、イオン交換水480質量部を投入し、次いでポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)0.06質量部を添加し溶解させた。反応槽内の液を撹拌しながら80℃に上げて、スチレン62.0質量%、メタクリル酸メチル33.5質量%、ジビニルベンゼン3.3質量%およびn−オクチルメルカプタン1.2質量%からなる混合物176.4質量部とポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)0.78質量部とを含む溶液(〔重合体(ii)〕の原料)を80℃にて添加した。その後、3%過硫酸カリウム水溶液4.26質量部を添加して80℃にて乳化重合を開始させた。反応熱による反応槽内の温度上昇が収まった後、80℃にて30分間保持して、シード粒子を含有するエマルジョンを得た。
〔第2段目重合〕
第1段目重合で得られたエマルジョンに、3%過硫酸ナトリウム水溶液5.32質量部を添加した。その後、アクリル酸ブチル54.1質量%、スチレン43.9質量%、およびメタクリル酸アリル2質量%からなる混合物80.2質量部とポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)0.375質量部とを含む溶液(〔重合体(i)〕の原料)を80℃にて60分間かけて滴下してシード乳化重合を行った。滴下終了後、80℃にて60分間保持して、平均粒子径220nmのコア粒子を含有するエマルジョンを得た。
〔第3段目重合〕
第2段目重合で得られたエマルジョンに、3%過硫酸カリウム水溶液2.72質量部を添加した。その後、メタクリル酸メチル29質量%、アクリル酸メチル4.9質量%、メタクリル酸ベンジル65.9質量%およびn−オクチルメルカプタン0.2質量%からなる混合物64.1質量部(〔重合体(iii)〕の材料)を80℃にて30分間かけて添加してシード乳化重合を行った。添加終了後、80℃にて60分間保持してコアシェル架橋ゴム粒子を40%含有するエマルジョンを得た。
〔造粒〕
第3段目重合で得られたエマルジョンを室温まで冷やした。次いで該エマルジョンを−20℃にて2時間静置して凍結させた。凍結したエマルジョンをそれの2倍量の80℃の温水に投入し氷解させてスラリーを得た。該スラリーを80℃にて20分間保持し、次いで脱水し、残部を70℃で乾燥させて、コアシェル架橋ゴム粒子からなるグラニュール(耐衝撃性改良剤B1)を得た。耐衝撃性改良剤B1の評価結果を表1に示す。
<実施例2>
第1段目重合、第2段目重合および第3段目重合において添加した混合物の組成を表1に示す比率に変えた以外は実施例1と同じ手法でコアシェル架橋ゴム粒子からなるグラニュール(耐衝撃性改良剤B2)を得た。耐衝撃性改良剤B2の評価結果を表1に示す。
<実施例3>
第1段目重合、第2段目重合および第3段目重合において添加した混合物の組成を表1に示す比率に変え、且つ第1段目重合、第2段目重合および第3段目重合において添加した混合物の量を、それぞれ、121.9質量部、134.7質量部および64.1質量部に変えた以外は実施例1と同じ手法でコアシェル架橋ゴム粒子からなるグラニュール(耐衝撃性改良剤B3)を得た。耐衝撃性改良剤B3の評価結果を表1に示す。
<実施例4>
第1段目重合、第2段目重合および第3段目重合において添加した混合物の組成を表1に示す比率に変え、第2段目重合において混合物とともに添加するポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)の量を0.24質量部に変え、且つ第1段目重合、第2段目重合および第3段目重合において添加した混合物の量を、それぞれ、160.4質量部、96.2質量部および64.1質量部に変えた以外は実施例1と同じ手法でコアシェル架橋ゴム粒子からなるグラニュール(耐衝撃性改良剤B4)を得た。耐衝撃性改良剤B4の評価結果を表1に示す。
<実施例5>
第1段目重合、第2段目重合および第3段目重合において添加した混合物の組成を表1に示す比率に変え、且つ第1段目重合、第2段目重合および第3段目重合において添加した混合物の量を、それぞれ、112.2質量部、144.3質量部および64.1質量部に変えた以外は実施例1と同じ手法でコアシェル架橋ゴム粒子からなるグラニュール(耐衝撃性改良剤B5)を得た。耐衝撃性改良剤B5の評価結果を表1に示す。
<比較例1>
第1段目重合、第2段目重合および第3段目重合において添加した混合物の組成を表1に示す比率に変えた以外は実施例1と同じ手法でコアシェル架橋ゴム粒子からなるグラニュール(耐衝撃性改良剤B6)を得た。耐衝撃性改良剤B6の評価結果を表1に示す。
<比較例2>
第1段目重合、第2段目重合および第3段目重合において添加した混合物の組成を表1に示す比率に変え、且つ第2段目重合において混合物とともに添加するポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)の量を0.3質量部に変えた以外は実施例1と同じ手法でコアシェル架橋ゴム粒子からなるグラニュール(耐衝撃性改良剤B7)を得た。耐衝撃性改良剤B7の評価結果を表1に示す。
Figure 2018012820
<比較例3>
第1段目重合、第2段目重合および第3段目重合において添加した混合物の組成を表2に示す比率に変え、且つ第2段目重合において混合物とともに添加するポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)の量を0.045質量部に変えた以外は実施例1と同じ手法でコアシェル架橋ゴム粒子からなるグラニュール(耐衝撃性改良剤B8)を得た。耐衝撃性改良剤B8の評価結果を表2に示す。
<比較例4>
第1段目重合、第2段目重合および第3段目重合において添加した混合物の組成を表2に示す比率に変え、且つ第2段目重合において混合物とともに添加するポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)の量を0.05質量部とした以外は実施例1と同じ手法でコアシェル架橋ゴム粒子からなるグラニュール(耐衝撃性改良剤B9)を得た。耐衝撃性改良剤B9の評価結果を表2に示す。
<実施例6>
〔第1段目重合〕
コンデンサー、温度計および撹拌機を備え且つグラスライニングの施された容量100Lの反応槽に、イオン交換水480質量部を投入し、次いでポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)0.06質量部を添加し溶解させた。反応槽内の液を撹拌しながら80℃に上げて、スチレン64.5質量%、メタクリル酸メチル28.0質量%、アクリル酸メチル4.9質量%、メタクリル酸アリル1.4質量%およびn−オクチルメルカプタン1.2質量%からなる混合物112.1質量部とポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)0.78質量部とを含む溶液(〔重合体(ii)〕の原料)を添加した。その後、3%過硫酸カリウム水溶液4.26質量部を添加して80℃にて乳化重合反応を開始させた。反応熱による反応槽内の温度上昇が収まった後、80℃にて30分間保持して、シード粒子を含有するエマルジョンを得た。
〔第2段目重合〕
第1段目重合で得られたエマルジョンに、3%過硫酸ナトリウム水溶液5.32質量部を添加した。その後、アクリル酸2エチルヘキシル50.0質量%、新中村化学工業社(株)製NKエステルA−LEN−10(エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート;既存化学物質番号:4-1693、CAS:72009-86-0)49.0質量%およびメタクリル酸アリル1.0質量%からなる混合物142.7質量部とポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)0.375質量部とを含む溶液(〔重合体(i)〕の原料)を80℃にて60分間かけて滴下してシード乳化重合を行った。滴下終了後、80℃にて60分間保持して、平均粒子径220nmのコア粒子を含有するエマルジョンを得た。
〔第3段目重合〕
第2段目重合で得られたエマルジョンに、3%過硫酸カリウム水溶液2.72質量部を添加した。その後、メタクリル酸メチル38.0質量%、メタクリル酸ベンジル、4.8質量%、アクリル酸メチル57.0質量%およびn−オクチルメルカプタン0.2質量%からなる混合物65.9質量部(〔重合体(iii)〕の材料)を80℃にて30分間かけて添加してシード乳化重合を行った。添加終了後、80℃にて60分間保持してコアシェル架橋ゴム粒子を40%含有するエマルジョンを得た。
〔造粒〕
第3段目重合で得られたエマルジョンを室温まで冷やした。次いで該エマルジョンを−20℃にて2時間静置して凍結させた。凍結したエマルジョンをそれの2倍量の80℃の温水に投入し氷解させてスラリーを得た。該スラリーを80℃にて20分間保持し、次いで脱水し、残部を70℃で乾燥させて、コアシェル架橋ゴム粒子からなるグラニュール(耐衝撃性改良剤B10)を得た。耐衝撃性改良剤B10の評価結果を表2に示す。
<実施例7および8>
第1段目重合、第2段目重合および第3段目重合において添加した混合物の組成を表2に示す比率に変えた以外は実施例6と同じ手法でコアシェル架橋ゴム粒子からなるグラニュール(耐衝撃性改良剤B11およびB12)を得た。耐衝撃性改良剤B11およびB12の評価結果を表2に示す。
<実施例9>
第1段目重合においてイオン交換水480質量部に添加されるポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)0.06質量部を0.24質量部に変え、第1段目重合、第2段目重合および第3段目重合において添加した混合物の組成を表2に示す比率に変えた以外は実施例6と同じ手法でコアシェル架橋ゴム粒子からなるグラニュール(耐衝撃性改良剤B13)を得た。コア粒子の平均粒子径は150nmであった。耐衝撃性改良剤B13の評価結果を表2に示す。
Figure 2018012820
表中の略号の意味は以下のとおりである。
St: スチレン
MMA: メタクリル酸メチル
BA: アクリル酸ブチル
DVB: ジビニルベンゼン
MA: アクリル酸メチル
ALMA: メタクリル酸アリル
n−OM: n−オクチルメルカプタン
2−EHA: アクリル酸2−エチルヘキシル
BzA: アクリル酸ベンジル
BzMA: メタクリル酸ベンジル
PTMB: ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)
A−LEN−10:新中村化学工業社(株)製NKエステルA−LEN−10(既存化学物質番号:4-1693、CAS:72009-86-0)
M110: 東亜合成(株)製 アロニックスM110(パラクミルフェノールEO変性アクリレート)
<熱可塑性樹脂(A1)>
熱可塑性樹脂(A1)としてスチレン−無水マレイン酸−メタクリル酸メチルランダム共重合体(電気化学工業株式会社製 R−200;スチレン単位56質量%、無水マレイン酸単位18質量%およびメタクリル酸メチル単位26質量%〔13C‐NMR分析〕;Mw=168,000、Mw/Mn=2.49、Tg=138℃、屈折率n23 d=1.5550)を用意した。
<熱可塑性樹脂(A2)>
オートクレーブに、メタクリル酸メチル63質量部、メタクリル酸ジシクロペンタニル(TCDMA)35質量部、アクリル酸メチル2質量部、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート0.47質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.06質量部、1,1−ビス(1,1−ジメチルペルオキシ)シクロへキサン0.01質量部、水231質量部、分散剤1.4質量部およびpH調整剤17.5質量部を投入した。
オートクレーブ内の液を攪拌しながら70℃に上げ、70℃で120分間保持し、その後120℃で60分間保持して、重合を行った。オートクレーブ内の液を室温まで冷まし、次いでオートクレーブから抜き出した。抜き出した液を濾過して固形分を取り出し、該固形分を水で洗浄し、次いで80℃にて24時間熱風乾燥させた。得られた乾燥物を、2軸押出機にてシリンダ温度230℃で混練し、ストランド状に押出し、ペレタイザでカットして、Mw=127,000、TCDMA単位32.5質量%、Tg=126℃、酸価0.1mg/g、屈折率1.500のメタクリル樹脂のペレット(熱可塑性樹脂(A2))を得た。
<熱可塑性樹脂(A3)>
熱可塑性樹脂(A3)としてポリカーボネート樹脂(住化スタイロンポリカーボネート社製、商品名:カリバー300−22、Mw=42,000、屈折率=1.585)を用意した。
<熱可塑性樹脂(A4)>
熱可塑性樹脂(A4)としてメタクリル樹脂(クラレ社製、商品名:パラペット(登録商標)HR−1000S)を用意した。
<実施例10>
熱可塑性樹脂(A1)51.8質量%、耐衝撃性改良剤(B1)30.0質量%および熱可塑性樹脂(A4)18.2質量%をタンブラーにて乾式混合した。
得られた混合物を、二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW−45MG−NH−600;軸径=20mm)で、シリンダ温度200〜250℃、ダイ温度240℃、スクリュ回転数100rpmの条件で、熔融混練し、ストランド状に押出し、ペレタイザでカットして、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。熱可塑性樹脂組成物の評価結果を表3に示す。
<実施例11〜15および比較例5〜6>
表3に示す配合比率に変えた以外は実施例10と同じ手法で熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。熱可塑性樹脂組成物の評価結果を表3に示す。
Figure 2018012820
<比較例7〜8>
表4に示す配合比率に変えた以外は実施例10と同じ手法で熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。熱可塑性樹脂組成物の評価結果を表4に示す。
<実施例16>
熱可塑性樹脂(A1)52.5質量%、耐衝撃性改良剤(B10)30.0質量%および熱可塑性樹脂(A4)17.5質量%をタンブラーにて乾式混合した。
得られた混合物を、二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW−45MG−NH−600)で、シリンダ温度200〜250℃、ダイ温度240℃、スクリュ回転数100rpmの条件で、混練し、ストランド状に押出し、ペレタイザでカットして、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。熱可塑性樹脂組成物の評価結果を表4に示す。
<実施例17〜20>
表4に示す配合比率に変えた以外は実施例16と同じ手法で熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。熱可塑性樹脂組成物の評価結果を表4に示す。
Figure 2018012820
これらの結果が示すとおり、本発明の耐衝撃性改良剤(実施例1〜9)と熱可塑性樹脂とを含有する熱可塑性樹脂組成物(実施例10〜20)は、高シャルピー衝撃強度(Ic)、高1.0%加熱減量温度(T1.0 HL)、高全光線透過率(TtA)、低ヘイズ(HA)および良好な製膜性であり、各物性のバランスに優れている。

Claims (20)

  1. センターコアおよびセンターコアを囲むインナーシェルを有するコア粒子、ならびにコア粒子を囲むアウターシェルを有するコアシェル架橋ゴム粒子を含有して成り、
    センターコアおよびインナーシェルを構成する重合体の少なくとも一つが架橋ゴム重合体であり、
    センターコアを構成する重合体の質量に対するセンターコアを構成する重合体に含有する硫黄成分の質量の比またはインナーシェルを構成する重合体の質量に対するインナーシェルを構成する重合体に含有する硫黄成分の質量の比のいずれかがアウターシェルを構成する重合体の質量に対するアウターシェルを構成する重合体に含有する硫黄成分の質量の比よりも多く、
    コア粒子の平均粒子径Dが150nm以上300nm以下であり、
    センターコアを構成する重合体の屈折率ndCCとインナーシェルを構成する重合体の屈折率ndISが0nm≦|ndCC−ndIS|×D≦9nmの関係を満たし、且つ
    コアシェル架橋ゴム粒子の屈折率ndが1.50〜1.55である耐衝撃性改良剤。
  2. 架橋ゴム重合体がアクリル酸エステルまたは共役ジエンに由来する構造単位を含有する重合体(i)であり、
    センターコアおよびインナーシェルを構成する架橋ゴム重合体以外の重合体がメタクリル酸エステルに由来する構造単位を含有する重合体(ii)であり、且つ
    アウターシェルを構成する重合体がメタクリル酸メチルに由来する構造単位を含有する重合体(iii)である、請求項1に記載の耐衝撃性改良剤。
  3. 架橋ゴム重合体がアクリル酸エステルに由来する構造単位を50質量%以上含有する重合体(i)であり、
    センターコアおよびインナーシェルを構成する架橋ゴム重合体以外の重合体が芳香族ビニルに由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位とを合計で50質量%以上含有する重合体(ii)であり、且つ
    アウターシェルを構成する重合体がメタクリル酸メチルに由来する構造単位を50質量%以上含有する重合体(iii)である、請求項1に記載の耐衝撃性改良剤。
  4. 重合体(i)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位10質量%未満を含有し、
    重合体(ii)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位10質量%以上を含有する、請求項2または3に記載の耐衝撃性改良剤。
  5. 重合体(i)は、アルキル基の炭素数が4〜12であるアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位の含有量が、重合体(i)の質量に対して50質量%未満である、請求項2〜4のいずれかひとつに記載の耐衝撃性改良剤。
  6. 窒素流量10ml/分、昇温速度20℃/分で測定した1.0%加熱減量温度が、310℃以上である、請求項1〜5のいずれかひとつに記載の耐衝撃性改良剤。
  7. センターコアを構成する重合体を得るための単量体を乳化重合してシード粒子を得、
    シード粒子の存在下にインナーシェルを構成する重合体を得るための単量体をシード乳化重合してコア粒子を得、
    コア粒子の存在下にアウターシェルを構成する重合体を得るための単量体をシード乳化重合してコアシェル架橋ゴム粒子を得ることを含む、
    請求項1〜6のいずれかひとつに記載の耐衝撃性改良剤の製造方法。
  8. 熱可塑性樹脂(A)と請求項1〜6のいずれかひとつに記載の耐衝撃性改良剤(B)とを含有して成る熱可塑性樹脂組成物。
  9. 熱可塑性樹脂(A)が、>CH−O−C(=O)−基を含む環構造、−C(=O)−O−C(=O)−基を含む環構造、−C(=O)−N−C(=O)−基を含む環構造、および>CH−O−CH<基を含む環構造からなる群から選ばれる少なくとも一つの環構造を主鎖に有する構造単位と、メタクリル酸メチルに由来する構造単位とを含むものであり、
    耐衝撃性改良剤(B)に対する熱可塑性樹脂(A)の質量比(A)/(B)が95/5〜10/90である、請求項8に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  10. 熱可塑性樹脂(A)が、メタクリル酸環式炭化水素エステルに由来する構造単位10〜50質量%、メタクリル酸環式炭化水素エステル以外のメタクリル酸エステルに由来する構造単位50〜90質量%、およびアクリル酸エステルに由来する構造単位0〜20質量%を含むものである、請求項8に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  11. メタクリル酸環式炭化水素エステルが、式(2)で表される化合物である、請求項10に記載の熱可塑性樹脂組成物。

    Figure 2018012820

    (式(2)中、Xは炭素数6以上の環式炭化水素基を表す。)
  12. 炭素数6以上の環式炭化水素基が、イソボルナン−2−イル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、または置換基を有していてもよいシクロヘキシル基である、請求項11に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  13. 熱可塑性樹脂(A)が、ポリカーボネート樹脂を、熱可塑性樹脂(A)に対して2〜50質量%で含有するものである、請求項8に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  14. 請求項8〜13のいずれかひとつに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
  15. 請求項8〜13のいずれかひとつに記載の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム。
  16. 厚さが10〜50μmである、請求項15に記載のフィルム。
  17. 請求項15または16に記載のフィルムからなる偏光子保護フィルム。
  18. 請求項15または16に記載のフィルムからなる位相差フィルム。
  19. 請求項15または16に記載のフィルムと有機発光ダイオードとを有する照明若しくは表示装置。
  20. 請求項15または16に記載のフィルムと液晶セルとを有する表示装置。
JP2016144908A 2016-07-22 2016-07-22 耐衝撃性改良剤、熱可塑性樹脂組成物およびフィルム Active JP6852997B2 (ja)

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