JP4197068B2 - 難燃性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

難燃性熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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  • Graft Or Block Polymers (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性に優れ、溶融滴下性の難燃性熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、難燃性を付与したABS樹脂は、成形加工性、機械的性質などが優れていることより、電気・電子分野、OA機器分野に幅広く使用されている。しかしながら、ABS樹脂は、燃えやすいという欠点を有しており、難燃性が要求される分野では、難燃剤、難燃助剤などを配合した難燃性ABS樹脂組成物が一般に使用されている。一方、近年デザイン上の要求として、透明性の要求が増えてきているが、通常、ABS樹脂は不透明であり、ABS樹脂に難燃剤を付与した難燃性ABS樹脂組成物も当然不透明である。また、透明用途で従来使用されている透明ABS樹脂に、単純に難燃剤を配合した場合は、難燃性は得られるが、透明性が損なわれる。そのため、これまで、ABS樹脂組成物の透明性を維持しながら難燃化する技術は無かった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、鋭意材料の開発について検討した結果、特定の構成を有する樹脂組成物に、特定の構造を有する難燃剤を配合することで、透明性に優れ、溶融滴下性の難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)ポリブタジエンおよび/またはスチレン−ブタジエンコポリマーからなるゴム質重合体の存在下に、(メタ)アクリル酸エステル化合物を50〜95重量%含む単量体成分をグラフト重合して得られるゴム強化重合体100重量部に対し、(B)下記一般式(I)で表される化合物を難燃剤として5〜20重量部、ならびに(C)エチレンオキサイド単位を35〜65重量%含む、ポリエーテルエステルアミドおよびポリエーテルアミド、ならびに芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物の群から選ばれた少なくとも1種を0〜5重量部を配合したことを特徴とする透明性に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【0005】
【化2】
Figure 0004197068
【0006】
(ただし、p,q,rは、それぞれ3〜5の整数を表す。)
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の(A)ゴム強化重合体は、ポリブタジエンおよび/またはスチレン−ブタジエンコポリマーからなるゴム質重合体の存在下に、(メタ)アクリル酸エステル化合物40重量%以上を含む単量体成分をグラフト重合して得られるゴム強化重合体である。
なお、(A)ゴム強化重合体は、上記ゴム質重合体に、(メタ)アクリル酸エステル化合物単体をグラフト重合しても得られるし、さらに、(メタ)アクリル酸エステル化合物およびこれと共重合可能な芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物などの単量体の群から選ばれた少なくとも1種の単量体との混合物をグラフト重合しても得られる。あるいは、前記単量体の群から選ばれた少なくとも1種の単量体の重合体もしくは共重合体を別に製造し、上記グラフト共重合体とブレンドして製造することもできる。
【0008】
ゴム質重合体であるポリブタジエンとしては、ポリブタジエンのほか、ポリブタジエンの水素添加物も挙げられる。ここで、ポリブタジエンの水素添加物としては、ポリブタジエン中の1,2−ビニル結合含量が20重量%以下のブロックと、1,2−ビニル結合含量が20重量%を超えるポリブタジエンブロックからなる重合体の水素添加物などが含まれる。
また、ゴム質重合体であるスチレン−ブタジエンコポリマーとしては、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物などが挙げられる。
さらに、上記スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物には、上記ブロック共重合体の水素添加物のほかに、スチレンブロックとスチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加物などが含まれる。
本発明のゴム質重合体は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0009】
本発明の(A)成分を、ゴム質重合体存在下に、乳化重合で得る場合、使用されるゴム質重合体の平均粒径は、150〜500nm、好ましくは150〜400nm、特に好ましくは200〜350nmである。
平均粒径が150nm未満では、耐衝撃強度が低く、一方、500nmを超えると、透明性、特に曇価(Haze)が低下する。また、異なる2種の平均粒径を有するゴム質重合体を用いることもできる。
(A)成分中のゴム質重合体の配合量は、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。ゴム質重合体の配合量が5重量%未満では、耐衝撃強度が低下し、一方、40重量%を超えた場合は、剛性、燃焼性が劣る。
【0010】
(A)成分に用いられる(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルが好ましい。
(A)成分中の(メタ)アクリル酸エステル化合物の含有量は、単量体成分中に、50〜90重量%、好ましくは55〜80重量%である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の含有量が50重量%未満では、透明性が低下する。
【0011】
上記グラフト重合の際に用いられる、(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の単量体としては、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和酸無水物、マレイミド系化合物などが挙げられる。
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、これらの中で、アクリロニトリルが好ましい。
【0012】
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、メチル−α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレンなどの塩素化スチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレンなどの臭素化スチレン、フルオロスチレンなどのフッ素化スチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンが好ましい。
【0013】
不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられ、無水マレイン酸が好ましい。
マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられ、N−フェニルマレイミドが好ましい。
これらの(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の単量体は、単独であるいは2種以上混合して用いられる。
【0014】
さらに、(A)成分には、必要に応じて、官能基含有ビニル単量体を共重合することもできる。
官能基含有ビニル単量体としては、具体例として、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有不飽和化合物;3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシスチレンなどの水酸基含有不飽和化合物;アクリルアミド、メタクリルアミドなどの不飽和カルボン酸アミド;アクリルアミン、メタクリル酸アミノメチル、メタクリル酸アミノエーテル、メタクリル酸アミノプロピル、アミノスチレンなどのアミノ基含有不飽和化合物;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和酸;ビニルオキサゾリンなどのオキサゾリン基含有不飽和化合物などが挙げられる。上記官能基含有ビニル単量体は、単独であるいは2種以上混合して用いられる。
また、(A)成分中の上記官能基含有ビニル単量体の含有率は、単量体成分中に好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜12重量%共重合される。
【0015】
(A)ゴム強化重合体中の、(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の単量体成分の含有量は、40重量%未満、好ましくは40〜10重量%、さらに好ましくは40〜20重量%である。(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の単量体成分が40重量%以上では、透明性が低下する。
【0016】
(A)ゴム強化重合体中の、(メタ)アクリル酸エステル化合物を50〜95重量%含む単量体成分の含有量は、好ましくは95〜60重量%、さらに好ましくは95〜70重量%、特に好ましくは90〜70重量%である。単量体成分が95重量%を超えると、耐衝撃強度が低下し、60重量%未満であると、剛性、燃焼性に劣る。
【0017】
上記(A)成分であるゴム強化重合体のグラフト率は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは15〜90%、特に好ましくは20〜70%である。グラフト率が10%未満では、得られる難燃性熱可塑性樹脂組成物の外観不良、耐衝撃強度の低下が生じ好ましくない。一方、100%を超えると、成形加工性が低下する。
上記グラフト率は、ゴム質重合体、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などの種類や量、さらに重合時間、重合温度などを変えることにより容易に調整することができる。
ここで、グラフト率(%)は、(A)ゴム強化重合体1g中のゴム成分重量をx、メチルエチルケトン不溶分重量をyとすると、次式により求められた値である。
グラフト率(%)=〔(y−x)/x〕×100
【0018】
また、本発明の(A)成分のゴム強化重合体の分子量は、マトリックス成分であるメチルエチルケトン可溶分の極限粘度〔η〕(30℃、メチルエチルケトン中で測定)が、好ましくは0.1〜1.0dl/g、さらに好ましくは0.2〜0.9dl/g、特に好ましくは0.3〜0.7dl/gである。この極限粘度〔η〕が上記好ましい範囲内であると、耐衝撃性、成形加工性(流動性)に優れた、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物が得られる。
なお、上記極限粘度〔η〕は、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤などの種類や量、さらに重合時間、重合温度などを変えることにより、容易に制御することができる。
【0019】
本発明の(A)成分の、ゴム質重合体とマトリックス樹脂の屈折率の差は、好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.02以下、特に好ましくは0.01以下である。上記屈折率の差が、0.05以下であると、本発明の透明性に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0020】
本発明の(A)成分の、厚み2.4mm成形品の曇価(Haze)は、好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは8以下である。
また、本発明の(A)成分の、厚み2.4mm成形品の全光線透過率(Tt)は、好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上である。
【0021】
本発明の(A)成分のゴム強化重合体は、ゴム質重合体の存在下に、アクリル酸エステル化合物40重量%以上を含む単量体成分を、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合などでラジカルグラフト重合を行い、製造することができる。好ましくは、乳化重合である。
この際、乳化重合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水などが用いられる。
なお、(A)成分のゴム強化重合体を製造するのに用いるゴム質重合体および単量体成分は、ゴム質重合体全量の存在下に、単量体成分を一括添加して重合してもよく、分割もしくは連続添加して重合してもよい。また、これらを組み合わせた方法で、重合してもよい。さらに、ゴム質重合体の全量または一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
【0022】
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどで代表される有機ハイドロパーオキサイド類と含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方などで代表される還元剤との組み合わせによるレドックス系、あるいは過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレイト、t−ブチルパーオキシモノカーボネートなどの過酸化物が使用される。好ましくは、油溶性開始剤であり、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどで代表される有機ハイドロパーオキサイド類と含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方などで代表される還元剤との組み合わせによるレドックス系がよい。また、上記油溶性開始剤と水溶性開始剤とを組み合わせてもよい。組み合わせる場合の水溶性開始剤の添加比率は、全添加量の好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下である。さらに、重合開始剤は、重合系に一括または連続的に添加することができる。重合開始剤の使用量は、単量体成分に対し、通常、0.1〜1.5重量%、好ましくは0.2〜0.7重量%である。
【0023】
(A)成分を乳化重合により製造した場合、通常、凝固剤により凝固して得られた粉末を水洗後、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩や、硫酸、塩酸などの酸を使用することができる。
【0024】
代表的な(A)成分としては、下記の様な組成が挙げられるが、本発明の権利範囲は、その請求範囲を超えないかぎり、下記の例示に何ら限定されるものではない。
▲1▼メタクリル酸メチル(MMA)をグラフト重合したABS樹脂
▲2▼MMAをグラフト重合したABS樹脂/MMA−スチレン(ST)−アクリロニトリル(AN)の3元共重合体
▲3▼MMAをグラフト重合したAES樹脂
▲4▼スチレン−ブタジエンゴムにMMA−ST−ANをグラフト重合した樹脂
▲5▼スチレン−ブタジエンコポリマーの水素添加物にMMA−ST−ANをグラフト重合した樹脂
【0025】
次に、本発明の(B)難燃剤は、上記一般式(I)で表されるが、その具体例としては、下記式(II)で表される構造の難燃剤〔2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン〕が挙げられる。ただし、本発明の(B)難燃剤は、芳香環上の臭素数は、下記式(II)で示されている3のみに限定されず、3以上5以下の整数である。また、芳香環の結合位置も、下式(II)で示されている2,4,6位に限定されない。上記(B)難燃剤は、1種単独で、または2種以上混合して使用される。
【0026】
【化3】
Figure 0004197068
【0027】
本発明の(B)難燃剤は、(A)ゴム強化重合体100重量部に対し、5〜20重量部、好ましくは7〜15重量部、さらに好ましくは8〜13重量部、特に好ましくは9〜12重量部使用される。(B)成分は、(A)成分100重量部に対し、5〜20重量部の範囲内で、必要とする燃焼性を発現する量を任意に配合できるが、5重量部未満では燃焼性が低下する。一方、必要以上の(B)成分の使用は、コスト、物性面でマイナスであり、特に使用量が20重量部を超えると、耐衝撃性が低下する。
【0028】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、耐衝撃性を向上させる目的で、必要に応じて、(C)エチレンオキサイド単位を35〜65重量%含む、ポリエーテルエステルアミドおよびポリエーテルアミド、ならびに芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物の群から選ばれた少なくとも1種を配合することができる。
上記ポリエーテルエステルアミドとしては、ポリアミド/テレフタル酸、イソフタル酸、またはアジピン酸などの脂肪族(あるいは芳香族)ジカルボン酸/エチレングリコールなどの脂肪族ジオール、の組み合わせ、ポリアミドエステルのエチレンオキサイドとの組み合わせの、グラフト反応物やブロック反応物などが挙げられる。
ポリエーテルアミドとしては、ラクタムや、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸塩などのジカルボン酸とジアミンの塩の混合物、エチレンオキサイドとのグラフト反応物やブロック反応物などが挙げられる。
【0029】
なお、上記ポリエーテルエステルアミドやポリエーテルアミドの屈折率は、好ましくは1.49〜1.53であり、さらに好ましくは1.51〜1.52である。
【0030】
芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物としては、一般式Xi ・Yj ・Zk で表される組成を有するブロック共重合体を水素添加して得られる誘導体である。ただし、Xは、芳香族ビニル化合物の重合体ブロック、Yは、共役ジエンのエラストマー重合体ブロック、Zは、Sn、Siなどのカップリング剤残基であり、iおよびjは、それぞれ0〜5の整数であり、kは0または1である。
上記Xを構成する芳香族ビニル化合物としては、好ましくはスチレン、α−メチレンスチレン、ビニルトルエンなどであり、特にスチレンが好ましい。
上記Yを構成する共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレンが好ましい。
上記芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物の屈折率は、好ましくは1.49〜1.53であり、さらに好ましくは1.50〜1.52である。
【0031】
上記(C)成分を構成するポリエーテルエステルアミドやポリエーテルアミド中のエチレンオキサイド単位の含有量は、35〜65重量%であり、好ましくは40〜60重量%である。エチレンオキサイド単位の含有量が、35重量%未満では、透明性が低下し、65重量%を超えると、耐衝撃強度、熱安定性が低下する。
【0032】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物中の(C)成分の配合量は、(A)ゴム強化重合体100重量部に対し、0〜5重量部であり、この範囲内であれば、透明性を維持したまま、耐衝撃強度を大幅に改良できる。(C)成分の配合量は、好ましくは0.5〜3重量部、さらに好ましくは1〜3重量部である。配合量が5重量部を超えると、難燃性、透明性が低下し好ましくない。
【0033】
また、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、難燃助剤、公知のカップリング剤、抗菌剤、防カビ剤、酸化防止剤、耐候(耐光)剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料など)、滑剤、帯電防止剤、シリコーンオイルなどの添加物を透明性を損なわない範囲で配合することができる。
さらに、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、黒色系の染料および/または有彩色の染料を配合することで、透明材料にレーザーマーキング性を付与することができる。
【0034】
さらに、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、要求される性能に応じて、他の熱可塑性重合体、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルエラストマー、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリフッ化ビニリデンなどを、透明性を損なわない範囲で、適宜ブレンドすることもできる。
【0035】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、各種押し出し機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダーなどを用い、各成分を混練りすることにより得られる。好ましい製造方法は、押し出し機、バンバリーミキサーを用いる方法である。また、各成分を混練りするに際しては、各成分を一括して混練りしてもよく、数回に分けて添加混練りしてもよい。混練りは、押し出し機で多段添加式で混練りしてもよく、またバンバリーミキサー、ニーダーなどで混練りし、その後、押し出し機でペレット化することもできる。
【0036】
このようにして得られる本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、シート押し出し、真空成形、異形成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形などによって、各種成形品に成形することができる。
【0037】
上記成形法によって得られる各種成形品は、難燃性(溶融滴下性)、透明性に優れ、かつ実用的な耐衝撃強度、熱変形温度を有しており、OA・家電分野、電気・電子分野、コンピュータ分野、雑貨分野、サニタリー分野、自動車分野、携帯電話、PPCなどの透明性を要求される各種パーツ、ハウジング、シャーシ、トレー、ボタン、スイッチ、表示枠などに使用することができる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例を挙げ本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何等制約されるものではない。
なお、実施例中、部および%は特に断らない限り重量基準である。また、実施例中の各種評価は、次のようにして測定したものである。
【0039】
平均粒径
分散粒子の平均粒径は、あらかじめ乳化状態で合成したラテックスの粒径がそのまま樹脂中の分散粒子の粒径を示すことを、電子顕微鏡で確認した後、ラテックス中の分散粒子の粒径を光散乱法で測定した。測定機器は、大塚電子(株)製、レーザー粒径解析システムLPA−3100であり、70回積算で、キュムラント法を用いて、平均粒径を測定した。
グラフト率
本文中に記載
【0040】
極限粘度〔η
ゴム強化重合体をメチルエチルケトンに投入し、振とう機で6時間振とうする。これを、遠心分離機(回転数23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離する。この可溶分を真空乾燥機で充分乾燥する。この可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作る。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度〔η〕を求めた。
【0041】
屈折率
サンプルをフィルム状にし、アッベ屈折率計で測定した。
耐衝撃性(アイゾット衝撃強度
(株)日本製鋼所製射出成形機J100E−C5を用い、シリンダー温度220℃、金型温度50℃で、JIS K7110の2号型試験片を成形し、アイゾット衝撃強度を測定した。単位は、J/mである。
【0042】
流動性(メルトフローレート)
ASTM D1238に準じて測定した。測定温度は220℃、荷重は10kg、単位はg/10分である。
熱変形温度
長さ128mm×幅12.8mm×厚み12.8mmの試験片を使用し、ASTM D648に準拠して、曲げ応力18.5kgf/cm2 で測定した。
燃焼性
UL94規格に定められた方法により、長さ5″×幅1/2″×厚み1/16″の試験片について垂直燃焼試験を行った。本発明においては、UL94規格V−2ランクを溶融滴下性ありとした。
【0043】
透明性〔曇価(Haze)〕
厚み2.4mmの試験片を使用し、ASTM D1003に準拠して測定した。単位は%である。
全光線透過率(Tt)
厚み2.4mmの試験片を使用し、ASTM D1003に準拠して測定した。単位は%である。
【0044】
参考例1〔ゴム強化重合体(A−1)〜(A−3)の調製〕
攪拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、ポリブタジエン15部(固形分換算)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、およびイオン交換水100部を混合し、スチレン5部、アクリロニトリル5部およびメタクリル酸メチル10部を加えた。攪拌しながら45℃まで昇温後、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート・2水和物0.2部およびイオン交換水15部よりなる活性剤水溶液、ならびにジイソプロプルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部を添加し、1時間反応を続けた。
【0045】
その後、スチレン10部、アクリロニトリル5部、メタクリル酸メチル50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、ジイソプロプルベンゼンハイドロパーオキサイド0.2部、イオン交換水50部からなるインクレメンタル重合成分を3時間にわたって連続的に添加し、重合反応を続けた。添加終了後、さらに1時間攪拌を続けた後、2,2−メチレン−ビス−(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し、反応生成物をフラスコより取り出した。反応生成物のラテックスを塩化カルシウム2部で凝固し、反応生成物を良く水洗した後、75℃で24時間乾燥し、白色粉末のゴム強化重合体(A−1)を得た。重合転化率は、98.5%、グラフト率は40%、極限粘度〔η〕は、0.40dl/gであった。ゴム部の屈折率は、1.513、マトリックス樹脂の屈折率は、1.517であった。
同様の方法により、表1に示すように、単量体成分の種類・配合処方、連鎖移動剤の使用量、重合温度、重合時間などを変えて、ゴム強化重合体(A−2)を得た。重合転化率は、97%であった。
また、同様の方法により、表1に示すような単量体成分の種類・配合処方で、(A)成分の単量体成分のみを別途重合し、MMA−スチレン−アクリロニトリル3元共重合体(A−3)を得た。
得られた(A)成分(A−1)〜(A−3)のグラフト率、極限粘度〔η〕、および屈折率を表1に示す。
【0046】
参考例2〔ゴム強化重合体(A−4)、AS樹脂の調製〕
(A−1)と同様の方法により、表1に示すような単量体成分、量を変えて、ゴム強化重合体(A−4)およびAS樹脂を得た。
【0047】
【表1】
Figure 0004197068
【0048】
参考例3〔難燃剤(B−1)〜(B−2)の調製〕
下記に示す難燃剤(B−1)、比較用難燃剤(B−2)を使用した。
(B−1);2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、第一工業製薬製(商品名SR−245)、臭素含有量67%
(B−2);テトラブロモビスフェノールAのオリゴマー(末端トリブロモフェノールで封止)、臭素含有量56%、分子量約2,000
【0049】
参考例4〔(C)成分の調製〕
(C)成分として、下記に示すポリエーテルエステルアミドを使用した。
ポリエーテルエステルアミド;ナイロン6ブロック/ポリエチレンオキサイド=50/50(%)、屈折率1.513
ナイロン6とポリエチレンオキサイドは、テレフタル酸でエステル化した。
【0050】
実施例1〜5、比較例1〜5
上記各成分を、表2〜3に示す配合割合でヘンシェルミキサーにより3分間ミキシングした後、ナカタニ機械(株)製NVC型50mmベント押し出し機でシリンダー設定温度220℃で溶融混練り押し出しし、ペレットを得た。得られたペレットを充分に乾燥し、(株)日本製鋼所製射出成形機J100E−C5を用い、シリンダー温度220℃、金型温度50℃で射出成形し、試験片を得た。この試験片を用い、上記評価法で評価した。評価結果を表2〜3に示す。
【0051】
【表2】
Figure 0004197068
【0052】
【表3】
Figure 0004197068
【0053】
*B;燃焼(burning)で、V−2不適合を表す。
【0054】
実施例1〜5より明らかなように、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、いずれも実用レベルの耐衝撃強度、流動性、難燃性、透明性を有し、優れた材料であった。
また、実施例1の組成に黒色染料を0.3部配合して、試験片を作成し、YAGレーザー光を照射したところ、照射部分が明瞭な白発色を呈した。このように、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、適切な着色剤を使用することで、レーザーマーキング用途にも使用可能である。
【0055】
一方、比較例1は、(B)成分の配合量が本発明の範囲を超える例であり、耐衝撃強度、透明性が劣る。比較例2は、(B)成分が本発明の難燃剤ではなく、透明性が劣る。比較例3は、(A)成分の単量体配合割合が本発明の範囲外であり、透明性が劣る。比較例4は、(A)成分がAS樹脂の例であり、透明性が劣る。比較例5は、(C)成分の配合量が本発明の範囲を超えており、難燃性、透明性が劣る。
【0056】
【発明の効果】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、難燃性(溶融滴下性)、透明性に優れ、かつ実用的な耐衝撃強度、熱変形温度を有しており、広範囲の用途、例えばOA・家電機器分野、電気・電子分野、通信機器分野、サニタリー分野、自動車分野、雑貨分野、携帯電話、PPCなどの透明性を要求される各種パーツ、ハウジング、シャーシー、トレー、ボタン、スイッチ、表示枠などに有用である。

Claims (1)

  1. (A)ポリブタジエンおよび/またはスチレン−ブタジエンコポリマーからなるゴム質重合体の存在下に、(メタ)アクリル酸エステル化合物を50〜95重量%含む単量体成分をグラフト重合して得られるゴム強化重合体100重量部に対し、(B)下記一般式(I)で表される化合物を難燃剤として5〜20重量部、ならびに(C)エチレンオキサイド単位を35〜65重量%含む、ポリエーテルエステルアミドおよびポリエーテルアミド、ならびに芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物の群から選ばれた少なくとも1種を0〜5重量部を配合したことを特徴とする透明性に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 0004197068
    (ただし、p,q,rは、それぞれ3〜5の整数を表す。)
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