JP5214955B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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一方、ABS樹脂は優れた物性バランスおよび成形加工性を有しており、広範な分野に利用されているが、原料は石油資源に依存している。これら両者の欠点を補うことを目的に下記の従来技術が提案されているが、衝撃強度、耐熱性、加工性、外観の均一性の諸物性を全て満足することはできず、改良が望まれている。
本発明において、ポリ乳酸樹脂は熱可塑性樹脂組成物の必須成分を構成する。市販されているポリ樹脂としては、例えば三井化学(株)製 商品名:レイシア、ユニチカ(株)製 商品名:テラマック等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ゴム含有グラフト共重合体の製造に好適に用いられるビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体が挙げられるが、本発明においては、これらビニル系単量体の70重量%以上が(メタ)アクリル酸エステル系単量体であることが必要である。(メタ)アクリル酸エステル系単量体が70重量%未満では外観の均一性が低下する。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタアクリレート等が挙げられ、特にメチルメタクリレートが好ましい。更には、ビニル系単量体の内、80重量%以上がメチルメタクリレートおよび/またはメチルアクリレートであることが好ましい。
スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。特にアクリロニトリルが好ましい。
また、上記ビニル系単量体と共に無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等の不飽和酸系単量体、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体などを用いることも可能である。
上記のゴム含有グラフト共重合体を構成するゴム状重合体とビニル系単量体の割合については特に制限はないが、好ましくはゴム状重合体15〜65重量%および(メタ)アクリル酸エステル系単量体を70重量%以上含むビニル系単量体35〜85重量%である。
また、ゴム含有グラフト共重合体の重合方法についても特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせにより製造することができるが、高温高湿環境下における経時安定性維持の観点から、ゴム含有グラフト共重合体に含有されるアルカリ金属の含有量が0.01重量%以下であることが好ましい。
また、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(Z)の重合方法についても特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせにより製造することができる。
ポリ乳酸樹脂(L)の配合比率が5重量部未満では、原料の殆どを石油資源に依存しているという環境負荷は低減されず、60重量部を超えると耐熱性が低下する。好ましくは10〜50重量部、更に好ましくは15〜45重量部である。
ゴム含有グラフト共重合体(Y)の配合比率が10重量部未満では衝撃強度が劣り、70重量部を超えると加工性や耐熱性が低下する。好ましくは15〜65重量部、更に好ましくは20〜60重量部である。
α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(Z)の配合比率が10重量部未満では耐熱性が劣り、85重量部を超えると衝撃強度が低下する。好ましくは15〜70重量部、更に好ましくは20〜60重量部である。
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
また、特段の断りが無い限り、%や部は重量を基準とする。
ポリ乳酸樹脂(X)として、三井化学株式会社製LACEA H−400を用いた。
ゴム状重合体1:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水130部、ロジン酸カリウム2.0部、オレイン酸カリウム0.5部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物1.0部、水酸化ナトリウム0.05部、ブタジエン95部、スチレン3部、アクリロニトリル2部、t−ドデシルメルカプタン0.20部を加えて十分攪拌しながら67℃に昇温した後、過硫酸カリウム0.8部を仕込み67℃で重合を開始した。重合転化率が66%を越えた時点で過硫酸カリウム0.2部を仕込み、反応温度を72℃に上げて反応を継続し、重合転化率が98%を超えたことを確認して槽内温度を35℃以下に冷却した。安定剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.04部を加えた後、燐酸アグロメ法によって重合体粒子を肥大化させ、ラテックス状のゴム状重合体1を得た。その固形分濃度は38.7重量%、pH10.4、平均粒子径は390nmであった。
ゴム含有グラフト共重合体Y1:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水92.5部、ロジン酸カリウム0.3部、オレイン酸カリウム1.0部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物0.7部、水酸化ナトリウム0.15部、ゴム状重合体1を固形分で30部、ブドウ糖0.08部、硫酸第一鉄0.004部を仕込んで十分攪拌しながら67℃に昇温した後、過硫酸カリウム0.30部を仕込み67℃で重合を開始した。開始直後からメチルメタクリレート68部、メチルアクリレート2部、t−ドデシルメルカプタン0.25部の混合物を5時間にわたって連続添加し、重合転化率が66%を越えた時点でt−ブチルハイドロパーオキサイド0.04部を仕込み、反応温度を72℃に上げて反応を2時間以上継続し、重合転化率が97%を超えたことを確認して槽内温度を40℃以下に冷却した。得られたラテックス状のゴム含有グラフト共重合体を多量のメタノール中に投入して沈殿させ、150メッシュのステンレス製金網に流した後、先ず適量のメタノール、次に多量の純水で洗浄した。その後、減圧下で含水率が1重量%以下になるまで乾燥させ、パウダー状のゴム含有グラフト共重合体Y1を得た。
得られたゴム含有グラフト共重合体Y1を灰化後、酸溶解してICP発光分光法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.003重量%であった。
得られたゴム含有グラフト共重合体Y2を灰化後、酸溶解してICP発光分光法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.005重量%であった。
得られたゴム含有グラフト共重合体Y3を灰化後、酸溶解してICP発光分光法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.003重量%であった。
得られたゴム含有グラフト共重合体Y4を灰化後、酸溶解してICP発光分光法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.004重量%であった。
プラグフロー塔型反応槽にエチルベンゼン20重量部、メチルメタクリレート63重量部、メチルアクリレート7重量部、ジエン系ゴム状重合体として、日本ゼオン社製Nipol NS320Sを10重量部、t−ドデシルメルカプタン0.25重量部、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン0.040重量部からなる原料を調整し、この原料を3段の攪拌式重合槽列反応器に毎時10kgで連続的に供給して単量体の重合を行った。3段目の槽より重合液を予熱器と減圧室より成る分離回収工程に導いた。
回収工程から出た樹脂は押出工程を経て粒状のペレットとしてゴム含有グラフト共重合体Y5を得た。このペレットの組成分析を熱分解クロマトグラフィーで実施したところ、ジエン系ゴム成分20.0重量%、メチルメタクリレート単量体成分72.0重量%、メチルアクリレート単量体成分8.0重量%であった。
得られたゴム含有グラフト共重合体Y5を灰化後、酸溶解してICP発光分光法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.0005重量%であった。
回収工程から出た樹脂は押出工程を経て粒状のペレットとしてゴム含有グラフト共重合体Y6を得た。このペレットの組成分析を熱分解クロマトグラフィーで実施したところ、ジエン系ゴム成分26.0重量%、メチルメタクリレート単量体成分70.3重量%、メチルアクリレート単量体成分3.7重量%であった。
得られたゴム含有グラフト共重合体Y6を灰化後、酸溶解してICP発光分光法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.0004重量%であった。
回収工程から出た樹脂は押出工程を経て粒状のペレットとしてゴム含有グラフト共重合体Y7を得た。このペレットの組成分析を熱分解クロマトグラフィーで実施したところ、ジエン系ゴム成分26.0重量%、メチルメタクリレート単量体成分70.5重量%、アクリロニトリル単量体成分3.5重量%であった。
得られたゴム含有グラフト共重合体Y7を灰化後、酸溶解してICP発光分光法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.0006重量%であった。
回収工程から出た樹脂は押出工程を経て粒状のペレットとしてゴム含有グラフト共重合体Y8を得た。このペレットの組成分析を熱分解クロマトグラフィーで実施したところ、ジエン系ゴム成分24.0重量%、メチルメタクリレート単量体成分45.6重量%、アクリロニトリル単量体成分15.0重量%、スチレン単量体成分15.4重量%であった。
得られたゴム含有グラフト共重合体Y8を灰化後、酸溶解してICP発光分光法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.0004重量%であった。
α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体Z1:容積が15リットルのプラグフロー塔型反応槽に10リットルの完全混合槽2基を直列に接続した連続的塊状重合装置を用いた。
プラグフロー塔型反応槽にエチルベンゼン30重量部、α−メチルスチレン49.7重量部、アクリロニトリル20.3重量部、t−ドデシルメルカプタン0.20重量部、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン0.090重量部からなる原料を調整し、この原料を3段の攪拌式重合槽列反応器に毎時9kgで連続的に供給して単量体の重合を行った。3段目の槽より重合液を予熱器と減圧室より成る分離回収工程に導いた。
回収工程から出た樹脂は押出工程を経て粒状のペレットとしてα−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体
Z1を得た。このペレットの組成分析を熱分解クロマトグラフィーで実施したところ、α−メチルスチレン単量体成分71重量%、アクリロニトリル単量体成分29重量%であった。
上記、ポリ乳酸樹脂(X)、ゴム含有グラフト共重合体(Y1〜Y8)、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(Z1〜Z2)を表1に示す配合割合で混合し、30mmニ軸押出機を用いて230℃から250℃で溶融混合し、ペレット化した後、射出成形機にて各種試験片を作成して物性を評価した。それぞれの評価方法を以下に示し、評価結果を表1にまとめた。
加工性:ISO 1133に基づき220℃、10Kgの条件でメルトインデックスを測定した。単位はg/10分。得られた測定結果に基づいて下記の様に相対区分した。
◎(優秀):40以上
○(良好):20以上〜40未満
△(微劣):5以上〜20未満
×(不良):5未満
得られた測定結果に基づいて下記の様に相対区分した。
◎(優秀):15以上
○(良好):10以上〜15未満
△(微劣):5以上10未満
×(不良):5未満
得られた測定結果に基づいて下記の様に相対区分した。
◎(優秀):75℃以上
○(良好):70℃以上〜75℃未満
△(微劣):65℃以上〜70℃未満
×(不良):65℃未満
下記の様に相対区分した。
◎(優秀):まったくウェルドラインが観察されず、表面光沢も良好。
○(良好):明確なウェルドラインは認められないが、テストピース中央の光沢がやや不均一。
△(微劣):ウェルドラインが認められ、光沢も不均一。
×(不良):明確なウェルドラインが認められる。
また、石油資源消費の抑制にも貢献できる環境対応型材料である。
Claims (4)
- ポリ乳酸樹脂(X)5〜60重量部、ゴム含有グラフト共重合体(Y)10〜70重量部、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(Z)10〜85重量部からなる熱可塑性樹脂組成物(ただし、(X)、(Y)、(Z)の合計は100重量部である)であって、該ゴム含有グラフト共重合体(Y)のグラフト重合に用いるビニル単量体のうち、70重量%以上が(メタ)アクリル酸エステル系単量体であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(Z)が、α−メチルスチレン60〜80重量%およびアクリロニトリル20〜40重量%からなる共重合体である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ゴム含有グラフト共重合体(Y)のグラフト重合に用いる単量体のうち、80重量%以上がメチルメタクリレートおよび/またはメチルアクリレートであることを特徴とする請求項1〜2何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ゴム含有グラフト共重合体(Y)のアルカリ金属含有量が0.01重量%以下である請求項1〜3何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
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