JP4994586B2 - プロセスチーズ類及びその製造方法 - Google Patents
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そのため、従来より、ナチュラルチーズの特性を有するプロセスチーズ類を製造する試みが多くなされている。
例えば、熟度指標12%以下に調整した原料チーズに溶融塩、ガム類、微細結晶セルロースを添加し、400〜1400rpmの中速から高速で加熱乳化することからなる、糸曳き性の良好なプロセスチーズまたはチーズフードの製造方法が提案されている(特許文献1)。
また、溶融塩およびHLB7以上のO/W型乳化剤を含む原料を、75℃以上に加熱溶融し、最高温度到達から60℃になるまでに少なくとも20分、且つ最高温度到達から40℃になるまでに60分かけて冷却することからなる、加熱溶融性に優れたプロセスチーズ類の製造方法が提案されている(特許文献2)。
すなわち、従来技術では、ナチュラルチーズが有する良好な加熱溶融性と糸曳き性を有し、さらに、加工適性の改善のために求められる良好なシュレッド適性を有するプロセスチーズ類を得ることができなかった。
したがって、本発明は、良好な加熱溶融性及び糸曳き性を有し、さらに良好なシュレッド適性を有するプロセスチーズまたはチーズフードを提供することを課題とする。
すなわち、本発明は、原料チーズ、溶融塩、ガム類及びHLBが11〜15のショ糖脂肪酸エステルを含有し、熟度指標が15%以下であり、加熱溶融性が60%以上であり、糸曳き性が300mm以上であることを特徴とするプロセスチーズまたはチーズフードである。
本発明はまた、原料チーズに対して、溶融塩0.1〜0.8重量%、ガム類0.1〜0.7重量%及びHLBが11〜15のショ糖脂肪酸エステル0.1〜1.0重量%の割合で含有することを特徴とする記載のプロセスチーズまたはチーズフードである。
本発明はまた、熟度指標が15%以下であるか、または熟度指標を15%以下に調整した原料チーズに、溶融塩0.1〜0.8重量%、ガム類0.1〜0.7重量%及びHLBが11〜15のショ糖脂肪酸エステル0.1〜1.0重量%を添加し、加熱乳化した後、急冷することを特徴とするプロセスチーズまたはチーズフードの製造方法である。
なお、熟度指標は以下の式で計算することができる。
熟度指標(%)=(可溶性窒素量/全窒素量)×100
加熱溶融性(%)=〔(15−加熱後のチーズの高さ)/15〕×100
一辺が15mmの立方体状への成形は、測定するチーズの形態に応じて以下のようにして行う。
ブロック状チーズの場合:抜き出し。
スライス状チーズの場合:厚さ15mm以上となるように重ねてから抜き出し。
シュレッドチーズの場合:小さい直方体状に成形し、それを一辺が15mmの立方体となるように隙間なく組み上げるか、あるいは一辺が15mm以上となるように組み上げてから抜き出し。
ダイスチーズの場合:シュレッドチーズと同様にして行う。
クラッシュチーズの場合:シュレッドチーズと同様にして行う。
また、本明細書において、オイルオフとは、加熱によりチーズの組織から油脂が遊離し表面に油膜が形成される状態をいう。
さらに、「急冷」とは、乳化後20分以内に60℃より低い温度となるように冷却することをいう。
これらは単独でも、2種以上を組み合せても用いることができる。この中でも解膠作用が弱いクエン酸ナトリウム、モノリン酸ナトリウム等を用いることが好ましい。解膠作用とは、タンパク質の膨潤・吸水性を起こす作用をいう。すなわち、本発明においては、溶融塩の本質的作用・効果であるイオン交換力があり、糸曳き性及び加熱溶融性を向上させるがタンパク質の膨潤・吸水性が低く、オイルオフの低減を抑えるものを用いることが望ましい。
なお、本発明における溶融塩の添加量は、原料チーズに対して0.1〜0.8重量%とすることが好ましい。添加量が0.1重量%未満では、乳化が安定せず、好ましくなく、添加量が0.8重量%を超えると過度に乳化が進み、加熱溶融性及び糸曳き性が低下するため好ましくない。
本発明におけるガム類の添加量は、原料チーズに対して0.1〜0.7重量%とすることが好ましく、0.2〜0.6重量%とすることが特に好ましい。ガム類の添加量が0.1重量%未満では、乳化時に離水が生じて好ましくなく、添加量が0.7重量%を超えると、加熱時にオイルオフによる油膜が形成されないことがあり、好ましくない。
本発明における乳化剤の添加量は、原料チーズに対して0.1〜1.0重量%とすることが好ましい。添加量が0.1重量%未満では、効果が充分でなく、1.0重量%を超えると風味への影響及び過度の乳化進行により、加熱溶融性及び糸曳き性が低下するため好ましくない。またシュレッド適性も劣化する。
本発明のプロセスチーズまたはチーズフードには、この他に、製品の風味や物性調整のために、香辛料、香料、植物性脂肪、糖質等を配合することもできる。
本発明において、乳化は、プロセスチーズ類の乳化に通常用いられる乳化機、例えば高速剪断乳化釜等を用い、400〜1800rpmの中速から高速で攪拌することが好ましい。
本発明において、急冷は、乳化チーズを薄層状に包装して冷却効率を上げる方法、またはサーモシリンダーのような熱交換機を用いる方法等により行うことができる。
なお、本発明の方法により得られるプロセスチーズまたはチーズフードは、原料チーズと同様、熟度指数が15%以下であり、種々の物性がナチュラルチーズと同様であることを特徴とする。
実施例1で得られた製品について、(1)加熱溶融性、(2)糸曳き性、(3)シュレッド適性について以下に示す方法で試験を行なった。
(1)加熱溶融性
チーズを、前記したように、一辺15mmの立方体状に成形し、電子レンジ(松下電器産業社製:NE−S1A)500Wで10秒加熱した後、チーズの高さを測定して、下記式で溶融性の評価を行なった。数値が大きいほど溶融性が良好である。
加熱溶融性(%)=〔(15−加熱後のチーズの高さ)/15〕×100
(2)糸曳き性
チーズ20gを直径65mmのシャーレに採取し、500Wの電子レンジ(松下電器産業社製:NE−S1A)で30秒加熱した後、2mm規格のL字型六角レンチの短辺(16mm)がシャーレの底につくように溶融したチーズの中央部に入れて、糸曳き測定機(富士精機製作所社製)によって10cm/秒の速度で引き上げたときに、切断するまでのチーズの伸びた長さを測定した。300mm以上を糸曳き性が良好であるものとする。
(3)シュレッド適性
チーズを8mm×30mmにシュレッドし、10℃で1ヵ月保存後チーズ同士の結着を官能的に評価した。なお評価は、結着なし:5点とし、これを最高点に、少し結着あり:4点、結着あり:3点、多くの結着あり:2点、全体が結着:1点とした。以上の結果を表1に示す。
加熱乳化後の急冷を行わなかったこと以外は、実施例1における熟度指標15%配合の場合と同様にして、プロセスチーズを得た。得られたプロセスチーズは、加熱溶融性が30%未満、糸曳き性が90mmであり、望ましい物性が得られなかった。
Claims (2)
- 原料チーズに対して、溶融塩0.1〜0.8重量%、ガム類0.1〜0.7重量%及びHLBが11〜15のショ糖脂肪酸エステル0.1〜1.0重量%を原料として含有する、熟度指標が15%以下であり、加熱溶融性が60%以上であり、糸曳き性が300mm以上であることを特徴とするプロセスチーズまたはチーズフード。
- 熟度指標が15%以下であるか、または熟度指標を15%以下に調整した原料チーズに、溶融塩0.1〜0.8重量%、ガム類0.1〜0.7重量%及びHLBが11〜15のショ糖脂肪酸エステル0.1〜1.0重量%を添加し、加熱乳化した後、急冷することを特徴とするプロセスチーズまたはチーズフードの製造方法。
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