以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係る露光装置EXを備えたデバイス製造システムSYSを示す図である。図1において、デバイス製造システムSYSは、露光装置EXと、露光装置EXに接続されたコータ・デベロッパ装置CDとを備えている。
露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージ3と、基板Pを保持する基板ホルダ4Hを有し、基板ホルダ4Hに基板Pを保持して移動可能な基板ステージ4と、マスクステージ3に保持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターン像を基板P上に投影する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置7とを備えている。
本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向に同期移動しつつマスクMに形成されたパターンを基板Pに露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、水平面内においてマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向)をY軸方向、水平面内においてY軸方向と直交する方向をX軸方向(非走査方向)、X軸及びY軸方向に垂直で投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置である。露光装置EXにおいて、基板ステージ4に保持された基板P上に液体LQの液浸領域LRを形成し、液浸領域LRの液体LQを介して基板P上に露光光ELを照射して基板Pを露光する。本実施形態では、液体LQとして、水(純水)を用いる。
コータ・デベロッパ装置CDは、露光処理される前の基板Pの基材上に所定の膜を被覆するコーティング装置、及び露光処理された後の基板Pを現像するデベロッパ装置を含む。露光装置EXとコータ・デベロッパ装置CDとはインターフェースIFを介して接続されている。基板Pは不図示の搬送装置により、露光装置EXとコータ・デベロッパ装置CDとの間でインターフェースIFを介して搬送可能である。
図2はコータ・デベロッパ装置CDのコーティング装置によって所定の膜が被覆された基材を含む基板Pの一例を示す図である。図2において、基板Pは、半導体ウエハ等の基材Wと、その基材W上に被覆された第1膜Rgと、その第1膜Rg上に被覆された第2膜Tcとを有している。第1膜Rgは、感光材(フォトレジスト)からなる膜である。第2膜Tcは、トップコート膜と呼ばれる膜であって、例えば感光材からなる第1膜Rgや基材Wを液体LQから保護する機能等を有しており、液体LQに対して撥液性(撥水性)を有している。撥液性の膜である第2膜Tcを設けることにより、液体LQの回収性を高めることもできる。第1膜Rgは、例えばスピンコーティング方式によって、基材W上に感光材(フォトレジスト)を塗布することによって形成される。同様に、第2膜Tcも、トップコート膜を形成するための材料を塗布することによって形成される。液体LQの液浸領域LRは、基板Pの第2膜Tc上に形成されるため、基板Pのうち、第2膜Tcが、液浸領域LRの液体LQと接触する液体接触面を形成する。
次に、図3を参照しながら露光装置EXについて説明する。図3は本実施形態に係る露光装置EXを示す概略構成図である。露光装置EXは、投影光学系PLの像面近傍の露光光ELの光路空間Kを液体LQで満たして液浸領域LRを形成する液浸システム1を備えている。液浸システム1の動作は制御装置7に制御される。液浸システム1は、投影光学系PLの複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い最終光学素子FLの下面と、投影光学系PLの像面側に配置された基板ホルダ4H上の基板Pの表面との間の露光光ELの光路空間Kを液体LQで満たすように基板P上に液浸領域LRを形成する。
露光装置EXは、少なくともマスクMのパターン像を基板Pに投影している間、液浸システム1を用いて、露光光ELの光路空間Kを液体LQで満たす。露光装置EXは、投影光学系PLと露光光ELの光路空間Kに満たされた液体LQとを介してマスクMを通過した露光光ELを基板ホルダ4Hに保持された基板P上に照射することによって、マスクMのパターン像を基板P上に投影して、基板Pを露光する。また、本実施形態の露光装置EXは、最終光学素子FLと基板Pとの間の露光光ELの光路空間Kに満たされた液体LQが、投影光学系PLの投影領域ARを含む基板P上の一部の領域に、投影領域ARよりも大きく且つ基板Pよりも小さい液体LQの液浸領域LRを局所的に形成する局所液浸方式を採用している。
なお、液浸領域LRは、基板P上だけでなく、投影光学系PLの像面側において、最終光学素子FLの下面と対向する位置に配置された物体上、例えば基板ステージ4の一部などにも形成可能である。
照明光学系ILは、マスクM上の所定の照明領域を均一な照度分布の露光光ELで照明するものである。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態においてはArFエキシマレーザ光が用いられる。
マスクステージ3は、リニアモータ等のアクチュエータを含むマスクステージ駆動装置3Dの駆動により、マスクMを保持した状態で、X軸、Y軸、及びθZ方向に移動可能である。マスクステージ3(ひいてはマスクM)の位置情報は、レーザ干渉計3Lによって計測される。レーザ干渉計3Lは、マスクステージ3上に設けられた移動鏡3Kを用いてマスクステージ3の位置情報を計測する。制御装置7は、レーザ干渉計3Lの計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置3Dを駆動し、マスクステージ3に保持されているマスクMの位置制御を行う。なお、ここでいうマスクは基板上に縮小投影されるデバイスパターンを形成されたレチクルを含む。また、本実施形態においては、マスクとして透過型のマスクを用いるが、反射型のマスクを用いてもよい。
なお、移動鏡3Kは平面鏡のみでなくコーナーキューブ(レトロリフレクタ)を含むものとしてもよいし、移動鏡3Kをマスクステージ3に固設する代わりに、例えばマスクステージ3の端面(側面)を鏡面加工して形成される反射面を用いてもよい。また、マスクステージ3は、例えば特開平8−130179号公報(対応米国特許第6,721,034号)に開示される粗微動可能な構成としてもよい。
投影光学系PLは、マスクMのパターン像を所定の投影倍率で基板Pに投影するものであって、複数の光学素子を有しており、それら光学素子は鏡筒PKで保持されている。本実施形態の投影光学系PLは、その投影倍率が例えば1/4、1/5、1/8等の縮小系であり、前述の照明領域と共役な投影領域ARにマスクパターンの縮小像を形成する。なお、投影光学系PLは縮小系、等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、投影光学系PLは、反射光学素子を含まない屈折系、屈折光学素子を含まない反射系、反射光学素子と屈折光学素子とを含む反射屈折系のいずれであってもよい。また、投影光学系PLは、倒立像と正立像とのいずれを形成してもよい。
基板ステージ4は、基板Pを保持する基板ホルダ4Hを有しており、リニアモータ等のアクチュエータを含む基板ステージ駆動装置4Dの駆動により、基板ホルダ4Hに基板Pを保持した状態で、ベース部材BP上で、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。基板ホルダ4Hは、基板ステージ4上に設けられた凹部4Rに配置されており、基板ステージ4のうち凹部4R以外の上面4Fは、基板ホルダ4Hに保持された基板Pの表面とほぼ同じ高さ(面一)になるような平坦面となっている。これは、例えば基板Pの露光動作時、液浸領域LRの一部が基板Pの表面からはみ出して上面4Fに形成されるためである。なお、基板ステージ4の上面4Fの一部、例えば基板Pを囲む所定領域(液浸領域LRがはみ出す範囲を含む)のみ、基板Pの表面とほぼ同じ高さとしてもよい。また、投影光学系PLの像面側の光路空間Kを液体LQで満たし続けることができる(即ち、液浸領域LRを良好に保持できる)ならば、基板ホルダ4Hに保持された基板Pの表面と、基板ステージ4の上面4Fとの間に段差があってもよい。さらに、基板ホルダ4Hを基板ステージ4の一部と一体に形成してもよいが、本実施形態では基板ホルダ4Hと基板ステージ4とを別々に構成し、例えば真空吸着などによって基板ホルダ4Hを凹部4Rに固定している。
基板ステージ4(ひいては基板P)の位置情報は、レーザ干渉計4Lによって計測される。レーザ干渉計4Lは、基板ステージ4に設けられた移動鏡4Kを用いて、基板ステージ4のX軸、Y軸、及びθZ方向に関する位置情報を計測する。また、基板ステージ4に保持されている基板Pの表面の面位置情報(Z軸、θX、及びθY方向に関する位置情報)は、不図示のフォーカス・レベリング検出系によって検出される。制御装置7は、レーザ干渉計4Lの計測結果及びフォーカス・レベリング検出系の検出結果に基づいて、基板ステージ駆動装置4Dを駆動し、基板ステージ4に保持されている基板Pの位置制御を行う。
なお、レーザ干渉計4Lは基板ステージ4のZ軸方向の位置、及びθX、θY方向の回転情報をも計測可能としてよく、その詳細は、例えば特表2001−510577号公報(対応国際公開第1999/28790号パンフレット)に開示されている。さらに、移動鏡4Kを基板ステージ4に固設する代わりに、例えば基板ステージ4の一部(側面など)を鏡面加工して形成される反射面を用いてもよい。
また、フォーカス・レベリング検出系はその複数の計測点でそれぞれ基板PのZ軸方向の位置情報を計測することで、基板PのθX及びθY方向の傾斜情報(回転角)を検出するものであるが、この複数の計測点はその少なくとも一部が液浸領域LR(又は投影領域AR)内に設定されてもよいし、あるいはその全てが液浸領域LRの外側に設定されてもよい。さらに、例えばレーザ干渉計4Lが基板PのZ軸、θX及びθY方向の位置情報を計測可能であるときは、基板Pの露光動作中にそのZ軸方向の位置情報が計測可能となるようにフォーカス・レベリング検出系を設けなくてもよく、少なくとも露光動作中はレーザ干渉計4Lの計測結果を用いてZ軸、θX及びθY方向に関する基板Pの位置制御を行うようにしてもよい。
次に、液浸システム1について図4を参照しながら説明する。図4は図3の要部を示す拡大図である。液浸システム1は、投影光学系PLの最終光学素子FLと、その最終光学素子FLと対向する位置に配置され、基板ホルダ4Hに保持された基板Pとの間の露光光ELの光路空間Kを液体LQで満たす。液浸システム1は、最終光学素子FLと基板Pとの間の露光光ELの光路空間Kの近傍に設けられ、その光路空間Kに対して液体LQを供給するための供給口12及び液体LQを回収するための回収口22を有するノズル部材71と、供給管13、及びノズル部材71の内部に形成された供給流路14を介して供給口12に液体LQを供給する液体供給装置11と、ノズル部材71の回収口22から回収された液体LQを、ノズル部材71の内部に形成された回収流路24、及び回収管23を介して回収する液体回収装置21とを備えている。供給口12と供給管13とは供給流路14を介して接続されている。回収口22と回収管23とは回収流路24を介して接続されている。本実施形態においては、ノズル部材71は、露光光ELの光路空間Kを囲むように環状に設けられている。液体LQを供給する供給口12は、ノズル部材71のうち、露光光ELの光路空間Kを向く内側面に設けられている。液体LQを回収する回収口22は、ノズル部材71のうち、基板Pの表面と対向する下面に設けられている。本実施形態においては、回収口22には多孔部材(メッシュ)25が配置されている。
液体供給装置11は、供給する液体LQの温度を調整する温度調整装置、液体LQ中の気体成分を低減する脱気装置、及び液体LQ中の異物を取り除くフィルタユニット等を備えており、清浄で温度調整された液体LQを送出可能である。また、液体回収装置21は、真空系等を備えており、液体LQを回収可能である。液体供給装置11及び液体回収装置21の動作は制御装置7に制御される。液体供給装置11から送出された液体LQは、供給管13、及びノズル部材71の供給流路14を流れた後、供給口12より露光光ELの光路空間Kに供給される。また、液体回収装置21を駆動することにより回収口22から回収された液体LQは、ノズル部材71の回収流路24を流れた後、回収管23を介して液体回収装置21に回収される。制御装置7は、液浸システム1を制御して、液体供給装置11による液体供給動作と液体回収装置21による液体回収動作とを並行して行うことで、最終光学素子FLと基板Pとの間の露光光ELの光路空間Kを液体LQで満たし、基板P上の一部の領域に液体LQの液浸領域LRを局所的に形成する。
次に、上述の露光装置EXを用いて基板Pを露光する方法について説明する。コータ・デベロッパ装置CDのコーティング装置において、基材Wの上面に感光材からなる第1膜Rgを被覆(塗布)する処理が行われる。次いで、基材Wの上面の周縁領域や側面などの感光材を例えば溶剤などを使って除去する処理(エッジリンス処理)、ベーク処理などを含む所定の処理が施される。
次いで、基材W上の第1膜Rg上にトップコート膜となる第2膜Tcを被覆(塗布)する処理が行われる。上述したように、第2膜Tcは、基材W上に形成されている感光材からなる第1膜Rgを液体LQから保護する機能を有する。次いで、必要に応じてエッジリンス処理が行われた後、ベーク処理を含む所定の処理が施される。
その後、基板Pは所定の搬送装置によって露光装置EXへ搬送される。露光装置EXは、基板Pの第2膜Tc上に液体LQの液浸領域LRを形成して基板Pに露光光ELを照射する。
図5は基板Pを露光するときの液浸領域LRと基板Pを保持した基板ステージ4との位置関係の一例を説明するための図である。図5に示すように、基板P上にはマトリクス状に複数のショット領域S1〜S21が設定されている。上述のように、本実施形態の露光装置EXは、マスクMと基板PとをY軸方向(走査方向)に移動しながらマスクMのパターンを基板Pに投影露光するものである。基板Pのショット領域S1〜S21のそれぞれを露光するとき、制御装置7は、図5中、例えば矢印y1で示すように、投影光学系PLの投影領域AR及びそれを覆う液体LQの液浸領域LRと基板Pとを相対的に移動しつつ、液浸領域LRの液体LQを介して基板P上に露光光ELを照射する。制御装置7は、投影光学系PLの投影領域AR(露光光EL)が基板P上で矢印y1に沿って移動するように、基板ステージ4の動作を制御する。制御装置7は、1つのショット領域の露光終了後に、基板P(基板ステージ4)をステッピング移動して次のショット領域を露光開始位置に移動し、以下、ステップ・アンド・スキャン方式で基板Pを移動しながら各ショット領域S1〜S21を順次走査露光する。
露光された基板Pには、露光不良が発生する可能性がある。露光不良は、露光によって基板P上に形成されたパターンの欠陥を含む。露光不良(パターンの欠陥)が発生する原因には、基板Pの表面に形成された第2膜Tcの異常、及び液体LQ中の異物(気泡、パーティクル)の少なくとも一方が含まれる。
第2膜Tcの異常は、第2膜Tcに液体LQが染み込んだ状態、第2膜Tcの内部に異物(気泡、パーティクル)が存在する状態、第2膜Tcの一部が剥離した状態、及び第2膜Tcに異物(パーティクル)が付着した状態の少なくとも一つを含む。
基板Pを液浸露光するときには、液浸領域LRの液体LQと基板Pの表面に形成された第2膜Tcとが接触するが、例えば、図6の模式図に示すように、基板P上の第2膜Tcに接触した液体LQが、第2膜Tcの内部に染み込む(浸入する)可能性がある。図6に示す例では、第2膜Tcの内部に染み込んだ液体LQは、第1膜Rgと第2膜Tcとの間に存在している。このような状態で、基板Pに露光光ELが照射された場合、染み込んだ液体LQによって、第1膜Rg(又は基材W)に対する露光光ELの照射状態が変動する可能性がある。すなわち、第2膜Tcと染み込んだ液体との界面で、露光光ELの光路が変化する可能性がある。第2膜Tcと染み込んだ液体との界面で露光光ELの光路が変化した場合、第1膜Rgの所望位置に露光光ELが到達せず、所望のパターン像が形成されないため、基材Wに形成されるパターンに欠陥が生じる等、露光不良が発生する可能性がある。また、第2膜Tcの内部に染み込んだ液体LQと第2膜Tcとの界面において、露光光ELの一部が反射し、所望の光量(強度)を有する露光光ELで第1膜Rgを照射できなくなる不具合が生じる可能性もある。また、染み込んだ液体LQによって、露光光ELが乱反射する可能性もある。
また、図7の模式図に示すように、第2膜Tcの内部に染み込んだ液体LQによって、第2膜Tcが膨潤するなどして、第2膜Tcの形状が局所的に変化する可能性もある。図7においても、露光光ELの光路が変化するなどの不具合が生じ、基材W上に形成されるパターンに欠陥が生じる等、露光不良が発生する可能性がある。
また、図8の模式図に示すように、第2膜Tcの内部に、気泡、パーティクル等の異物が存在すると、その異物(気泡、パーティクル)によって、露光光ELの光路が変化するなどの不具合が生じ、基材W上に形成されるパターンに欠陥が生じる等、露光不良が発生する可能性がある。
また、図9の模式図に示すように、第2膜Tcの一部が剥離した場合、その剥離した部分によって、露光光ELの光路が変化するなどの不具合が生じ、基材W上に形成されるパターンに欠陥が生じる等、露光不良が発生する可能性がある。
また、図10の模式図に示すように、第2膜Tc上に付着したパーティクル等の異物によって、露光光ELの光路が変化するなどの不具合が生じ、基材W上に形成されるパターンに欠陥が生じる等、露光不良が発生する可能性がある。なお、第2膜Tc上に付着する異物としては、ウォーターマークも挙げられる。
また、図11の模式図に示すように、液浸領域LRの液体LQ中に存在する気泡、パーティクル等の異物によって、露光光ELの光路が変化するなどの不具合が生じ、基材W上に形成されるパターンに欠陥が生じる等、露光不良が発生する可能性がある。
本実施形態では、液体LQを介して露光された基板Pの露光不良の解析を行い、露光不良の原因を特定する。
液体LQを介して露光された基板Pの露光不良を解析する方法について、図12のフローチャート図を参照しながら説明する。
液体LQを介した基板Pの露光処理(ステップSA30)が終了した後、その基板Pに対してベーク処理(ポストベーク)が施される(ステップSA40)。次いで、現像される前の基板Pの異常を計測する第1の計測処理が行われる(ステップSA50)。
第1の計測処理では、露光された後であって現像される前の基板P上の第2膜Tcの異常が計測され、異常が生じている位置が特定されるとともに、その異常が生じている位置近傍の画像(光学像)が所定の計測装置(欠陥検査装置)を用いて取得される。なお、計測装置(欠陥検査装置)としては、例えば特表2002−519667号公報の従来技術や発明の実施形態の欄に記載されている装置を用いることができる。
図13は所定の計測装置を用いて基板Pの異常を計測する動作を説明するための模式図である。図13に示すように、基板P上には複数のショット領域が設定されており、計測装置は、現像される前の基板P上の第2膜Tcの異常を計測する。計測装置は、所定の計測エリアMAを有しており、計測エリアMA内の基板P表面(第2膜Tc)の画像(光学像)を取得する。本実施形態では、計測装置は、基板Pの表面に座標系(XY座標系)を設定し、計測エリアMAと基板Pとを相対的に移動しつつ、基板P上に設定した座標系の各位置における第2膜Tcの画像(光学像)を取得する。そして、例えば隣り合う計測エリアMA内の画像どうしを比較し、その比較した結果に基づいて、第2膜Tcのうち、異常が生じている位置を特定する。計測装置は、基板Pの表面のほぼ全域を計測する。
また、本実施形態では、基板P上の第2膜Tcのうち、計測装置によって特定された、異常が生じている位置近傍の画像が、走査型電子顕微鏡(SEM)によって更に高精度で取得される。計測装置は、第2膜Tc上において異常が生じている位置情報を走査型電子顕微鏡に出力する。走査型電子顕微鏡は、計測装置から出力された位置情報に基づいて、異常が生じている位置近傍の画像を効率良く取得することができる。
第1の計測処理が終了した後、その基板Pに対して現像処理が施される(ステップSA60)。基板Pは、コータ・デベロッパ装置CDのデベロッパ装置において現像処理される。これにより、第2膜Tcが除去されるとともに、第1膜Rgがポジ型レジストである場合には、露光光ELが照射された部分が除去される。なお、第1膜Rgがネガ型レジストの場合には、露光光ELが照射された部分が残存する。エッチング処理等の所定の処理を基板Pに対して施すことにより、基板P(基材W)上にパターン(配線パターン)が形成される。
次いで、現像された後の基板Pの異常を計測する第2の計測処理が行われる(ステップSA70)。第2の計測処理では、上述の計測装置(欠陥検査装置)を用いて、基板P(基材W)上のほぼ全域の異常が計測される。計測装置は、基板P(基材W)のうち、異常(パターンの欠陥、露光不良)が生じている位置を特定する。また、走査型電子顕微鏡(SEM)が、基板P(基材W)のうち、異常が生じている位置近傍の画像を取得する。
次いで、第1の計測処理の計測結果及び第2の計測処理の計測結果に基づいて、液体LQを介して露光された基板Pの露光不良を解析する解析処理が行われる(ステップSA80)。解析処理では、第1の計測処理の計測結果及び第2の計測処理の計測結果に基づいて、露光不良(パターンの欠陥)の原因の特定が行われる。
本実施形態の解析処理では、露光不良(パターンの欠陥)の原因が、第2膜Tcの異常に起因するか否か、あるいは液体LQ中の異物に起因するか否かが判別される。
例えば、図6、図7に示したような第2膜Tcの内部に液体LQが染み込んだ状態、図8に示したような第2膜Tcの内部に異物(気泡、パーティクル)が存在する状態、図9に示したような第2膜Tcの一部が剥離した状態、及び図10に示したような第2膜Tcに異物(パーティクル)が付着した状態等、第2膜Tcに異常が生じている場合には、現像される前の基板Pを計測する第1の計測処理においては、その異常が生じている基板P(第2膜Tc)の位置近傍の画像として、例えば図14Aに示すような画像が取得される。
なお、本実施形態では、計測装置は、第2膜Tcを画像として取得しているので、図6、図7に示したような液体LQが染み込んだ状態、図8に示したような第2膜Tcの内部に異物が存在する状態、図9に示したような第2膜Tcの一部が剥離した状態、及び図10に示したような第2膜Tcに異物が付着した状態のいずれが生じているのかを判断することができる。
現像された後の基板Pを計測する第2の計測処理において、基板P(基材W)のうち、第2膜Tcの異常が生じている位置に対応する位置近傍の画像として、図14Bに示すような画像が取得された場合、第2膜Tcの異常に起因して、基板P(基材W)にパターンの欠陥(露光不良)が生じたと判断することができる。図14Bには、基板P(基材W)上に形成された配線パターンの一部が断線、あるいはその線幅が不均一となるパターンの欠陥が発生している状態の画像が示されている。
このように、現像される前の基板P(第2膜Tc)の所定位置に異常が有り、現像された後の基板P(基材W)のうち、第2膜Tcの異常が生じている位置に対応する位置に異常(パターンの欠陥)が有る場合には、その基板Pのパターンの欠陥(露光不良)の原因が、第2膜Tcの異常に起因すると判断することができる。
一方、図15Aに示すように、現像される前の基板P(第2膜Tc)に異常が無く、図15Bに示すように、現像された後の基板P(基材W)に異常(パターンの欠陥)が有る場合には、その基板Pのパターンの欠陥(露光不良)の原因が、液体LQ中の異物(気泡、パーティクル)に起因すると判断することができる。液体LQ中の異物は、第2膜Tcに影響を与えず、第1の計測処理では計測されないため、現像される前の基板P(第2膜Tc)に異常が無く、現像された後の基板P(基材W)の所定位置にパターンの欠陥が有る場合には、その基板Pのパターンの欠陥(露光不良)の原因が、液体LQ中の異物に起因すると判断することができる。
以上説明したように、液体LQを介して露光され、現像される前の基板Pの異常を計測した計測結果と、現像された後の基板Pの異常を計測した計測結果とに基づいて、露光不良(パターンの欠陥)が、第2膜Tcの異常に起因して発生したのか、第2膜Tcの異常以外の異常に起因して発生したのかを判断することができる。第1の計測処理で基板P(第2膜Tc)の異常を検出した場合には、露光不良(パターンの欠陥)の原因が第2膜Tcの異常に起因したものであると判断することができ、第1の計測処理では異常が検出されず、第2の計測処理で基板P(基材W)の異常(パターンの欠陥)を検出した場合には、露光不良の原因(パターンの欠陥)が液体LQ中の異物に起因したものであると判断することができる。
制御装置7は、解析結果に基づいて、露光条件を設定し、設定した露光条件で基板Pを露光することができる。露光条件は、露光光ELの光路空間Kを液体LQで満たすときの液浸条件、及び光路空間Kに対する基板Pの移動条件の少なくとも一方を含む。液浸条件としては、露光光ELの光路空間Kを満たすための液体LQを供給するときの供給条件、及び液体LQを回収するときの回収条件の少なくとも一方を含む。また、基板Pの移動条件は、移動速度、加速度(減速度)、移動方向(移動軌跡)、及び所定の一方向へ移動するときの移動距離の少なくとも一つを含む。
例えば、露光不良(パターンの欠陥)の原因が、液体LQ中の異物(気泡)に起因したものであると判断された場合には、制御装置7は、液体LQ中の気泡の発生を抑えるために、例えば露光光ELの光路空間Kを液体LQで満たすときの液浸条件を調整したり、液体LQで満たされた光路空間Kに対する基板Pの移動条件を調整する。具体的には、例えば液浸領域LRを形成する液体LQ中の気泡の発生を抑えるために、液体供給装置11の脱気装置の脱気能力を高めたり、供給口12から光路空間Kに供給される単位時間当たりの液体供給量を調整する。あるいは、液浸領域LRを形成する液体LQ中の気泡の発生を抑えるために、回収口22を介した単位時間当たりの液体回収量を調整するようにしてもよい。また、液浸領域LRの液体LQに対する基板Pの移動速度や加速度等を調整することによっても、液浸領域LRを形成する液体LQ中の気泡の発生を抑えることができる。また、基板Pの液体接触面(すなわち第2膜Tc)と液体LQとの接触角を調整することによっても、液浸領域LRを形成する液体LQ中の気泡の発生を抑えることができる。
また、露光不良(パターンの欠陥)の原因が、第2膜Tcの異常に起因したものであると判断された場合には、例えば、第2膜Tcの材料の再選定を行ったり、コーティング装置で第2膜Tcを塗布するときの塗布条件を調整する等、適切な処置を講ずることができる。また、上述の液浸条件や基板Pの移動条件を調整することによって、第2膜Tcと液体LQとの接触時間の調整等を行って、第2膜Tcの異常の発生を抑えることができる可能性がある。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について図16のフローチャート図を参照しながら説明する。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一又は同等の構成部分には同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
上述の第1実施形態においては、露光した後の基板Pの異常を計測しているが、第2実施形態においては、露光する前の基板Pの異常の計測が追加されている。すなわち、図16において、まず、露光される前の基材(ウエハ)Wの異常が、上述の計測装置(欠陥検査装置)等を用いて計測される(ステップSA1)。次に、例えば基材W上に反射防止膜が塗布され(ステップSA2)、その反射防止膜の異常が計測される(ステップSA3)。次いで、反射防止膜上に感光材からなる第1膜Rgが塗布され(ステップSA10)、その第1膜Rgの異常が計測される(ステップSA15)。次いで、第1膜Rg上にトップコート膜となる第2膜Tcが塗布され(ステップSA20)、その第2膜Tcの異常が計測される(ステップSA25)。そして、基板Pの露光(ステップSA30)、露光された後の基板Pに対するポストベーク処理(ステップSA40)、第1の計測処理(ステップSA50)、現像(ステップSA60)、第2の計測処理(ステップSA70)、及び解析処理(ステップSA80)が順次行われる。
このように、露光後のみならず、露光前の基板P上に塗布される各膜の異常の有無を計測し、その計測結果と、第1の計測処理の計測結果と、第2の計測結果とに基づいて、露光不良(パターンの欠陥)の原因をより的確に特定することができる。
なお、上述の第1、第2実施形態において、現像される前の基板Pを計測する第1の計測処理で異常が検出され、現像された後の基板Pを計測する第2の計測処理でも異常が検出された場合には、露光不良の原因が第2膜Tcの異常に起因すると判断される。また、第1及び第2実施形態において、現像される前の基板Pを計測する第1の計測処理で異常が検出されず、現像された後の基板Pを計測する第2の計測処理で異常が検出された場合には、露光不良の原因が液体LQ中の異物に起因すると判断されている。しかし、第1及び第2実施形態において、現像される前の基板Pを計測する第1の計測処理で異常が検出され、現像された後の基板Pを計測する第2の計測処理で異常が検出されない状況が生じる可能性がある。例えば、図5において、基板P上に設定された複数のショット領域S1〜S21のうち、例えば第1のショット領域S1上に液浸領域LRを形成し、その液浸領域LRの液体LQを介して第1のショット領域S1を露光しているときには、第1のショット領域S1の第2膜Tcには異常が無かったが、他のショット領域(例えば、第1のショット領域S1に隣接するショット領域S2、S6、S7、S8など)を露光しているときに、それら他のショット領域を覆う液浸領域LRの液体LQが第1ショット領域S1に接触する可能性がある。その場合、第1ショット領域S1の第2膜Tcは長時間、液体LQと接触することとなり、図6、図7に示したように、第2膜Tcの内部に液体LQが染み込む可能性がある。すなわち、第1のショット領域S1に露光光ELを照射しているときには、その第1のショット領域S1の第2膜Tcには異常が無く、第1のショット領域S1は露光不良を生じることなく良好に露光されるが、露光が終了した後、その第1のショット領域S1の第2膜Tcに異常が生じる可能性がある。このような状況が生じた場合、第1の計測処理においては、第1のショット領域S1の第2膜Tcの異常が検出されるが、第2の計測処理においては、第1のショット領域S1の基材Wの異常は検出されない。このような第2膜Tcに関しては、液体LQと接触している時間が所定時間以下である場合には、液体LQの浸入(染み込み)が生じず、液体LQと接触している時間が所定時間以上である場合に、液体LQの浸入(染み込み)が生じると判断することができる。したがって、その所定時間を考慮して、露光条件を設定したり、第2膜Tcの再選定を行うことができる。
なお、上述の各実施形態においては、第1の計測処理及び第2の計測処理において、計測装置(欠陥検査装置)で基板Pの異常を計測するとともに、その異常が生じている位置を特定し、その位置近傍の画像を走査型電子顕微鏡で更に高精度に取得しているが、基板Pの異常を計測できるのであれば、必ずしも走査型電子顕微鏡を用いる必要はなく、任意の構成を採用することができる。
なお、上述の各実施形態においては、基板Pは、基材W上に形成された感光材からなる第1膜Rgを覆う第2膜(トップコート膜)Tcを有しているが、第2膜Tcを設けない構成とすることもできる。その場合、第1の計測処理で、現像される前の基板P上の第1膜Rgの異常が計測され、第2の計測処理で、現像された後の基板Pの異常が計測される。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、基板P表面における液体LQの後退接触角θRに基づいて、基板Pの最表層の膜(第2膜Tc、又は第1膜Rg)が、露光不良(パターンの欠陥)が少ない膜であるかを判断する点にある。
図17の模式図を参照しながら後退接触角θRについて説明する。後退接触角θRとは、物体の表面(ここでは基板Pの表面)に液体LQの液滴を付着させた状態で、その物体の表面を水平面に対して傾斜させたとき、物体の表面に付着していた液体LQの液滴が、重力作用によって下方に滑り出す(移動を開始する)ときの、液滴の後側の接触角を言う。換言すれば、後退接触角θRとは、液体LQの液滴が付着した物体の表面を傾けたとき、その液滴が滑り落ちる滑落角αの臨界角度における、液滴の後側の接触角を言う。なお、物体の表面に付着していた液体LQの液滴が、重力作用によって下方に滑り出す(移動を開始する)ときとは、液滴が移動を開始する瞬間を意味するが、移動を開始する直前、及び移動を開始する直後の少なくとも一部の状態であってもよい。なお、後退接触角θRは、公知の計測装置を用いて容易に計測可能である。
本願の発明者は、それぞれ最表層に異なる材料の膜が形成された複数の基板Pを液浸露光し、第1実施形態、第2実施形態で説明した方法を用いて、基板Pのパターンの欠陥(露光不良)を解析し、それぞれの基板Pのパターンの欠陥レベル(欠陥密度、欠陥数の少なくとも一方を含む)を検査したところ、基板P表面における液体LQの後退接触角θRに応じて、欠陥レベルが異なることを見出した。より具体的には、本願の発明者は、基板P表面における液体LQの後退接触角θRが大きいほど、欠陥レベルが低下することを見出した。
図18は、基板P表面における液体LQの後退接触角θRと欠陥レベルとの関係、より具体的には、後退接触角θRと欠陥密度と欠陥数との関係の一例を示す図である。図18では、上述の各基板Pの検査結果に対応する点と、それら検査結果をフィッティングした近似曲線とが示されている。図18に示すように、後退接触角θRが大きくなるほど、欠陥密度、欠陥数ともに減少する。
したがって、図18に示すような後退接触角と欠陥レベルとの関係を示す情報(近似曲線など)を予め準備しておけば、露光される基板Pの最表層の膜上における後退接触角θRを計測するだけで、上述の第1実施形態、第2実施形態で述べたような方法を実施しなくても、その基板Pの液浸露光後の欠陥レベル(欠陥密度、欠陥数など)を推測することができ、液浸露光法を用いたデバイスパターンの形成に適した膜であるか否かを判断することができる。図18より、後退接触角θRが、例えば約70度以上の膜を用いることが望ましいことが分かる。
また、基板Pの最表層の膜の選定の指標として、後退接触角θRを用いてもよい。例えば、複数種類の膜の後退接触角θRを計測することで、その中から露光不良(パターンの欠陥)が少ないと推測されるいくつかの膜をピックアップすることができる。したがって、そのピックアップされた膜に対してのみ詳細な調査(液浸露光及び欠陥検査等)を行って、最適な膜を選定することができる。このように、全ての種類の膜に対して詳細な調査(液浸露光及び欠陥検査等)を行うことなく、露光不良(パターンの欠陥)を生じ難い最適な膜を効率的に選定することができる。
また、基板Pの最表層の膜上における後退接触角θRに基づいて、基板Pの露光条件を決定するようにしてもよい。例えば、露光条件には、基板Pの移動条件及び/又は液浸条件(液体LQの供給量と回収量との少なくとも一方を含む)が含まれる。例えば、基板Pの速度を変化させることによって、露光不良(パターンの欠陥)が減少する場合には、後退接触角θRに応じて、露光不良(パターンの欠陥)が減少するように、基板Pの走査露光中における移動速度を設定することができる。なお、基板Pの移動速度だけでなく、基板Pの後退接触角θRに応じて、露光不良(パターンの欠陥)が減少するように、基板Pの加速度、減速度、移動方向の少なくとも一つを変えてもよい。また、液体LQの供給量(及び/又は回収量)を変化させることによって、露光不良(パターンの欠陥)が減少する場合には、後退接触角θRに応じて、露光不良(パターンの欠陥)が減少するように、液体LQの供給量(及び/又は回収量)を設定するようにしてもよい。
上記各実施形態では、液体LQとしては純水が用いられる。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジスト及び光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。なお工場等から供給される純水の純度が低い場合には、露光装置が超純水製造器を持つようにしてもよい。
波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nはほぼ1.44と言われており、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、基板P上では1/n、すなわち約134nmに短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、すなわち約1.44倍に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
上記各実施形態では、投影光学系PLの先端に光学素子FLが取り付けられており、この光学素子により投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整を行うことができる。なお、投影光学系PLの先端に取り付ける光学素子としては、投影光学系PLの光学特性の調整に用いる光学プレートであってもよい。あるいは露光光ELを透過可能な平行平面板(カバーガラスなど)であってもよい。
なお、液体LQの流れによって生じる投影光学系PLの先端の光学素子と基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その光学素子を交換可能とするのではなく、その圧力によって光学素子が動かないように堅固に固定してもよい。
なお、上記各実施形態では、投影光学系PLと基板P表面との間は液体LQで満たされている構成であるが、例えば基板Pの表面に平行平面板からなるカバーガラスを取り付けた状態で液体LQを満たす構成であってもよい。
また、上記実施形態では、投影光学系の先端の光学素子の像面側の光路空間を液体で満たしているが、国際公開第2004/019128号パンフレットに開示されているように、先端の光学素子の物体面側の光路空間も液体で満たす投影光学系を採用することもできる。
なお、上記各実施形態の液体LQは水であるが、水以外の液体であってもよい、例えば、露光光ELの光源がF2レーザである場合、このF2レーザ光は水を透過しないので、液体LQとしてはF2レーザ光を透過可能な例えば、過フッ化ポリエーテル(PFPE)、あるいはフッ素系オイル等のフッ素系流体であってもよい。この場合、液体LQと接触する部分には、例えばフッ素を含む極性の小さい分子構造の物質で薄膜を形成することで親液化処理する。また、液体LQとしては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PL及び基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。
また、液体LQとしては、屈折率が1.6〜1.8程度のものを使用してもよい。更に、石英あるいは蛍石よりも屈折率が高い(例えば1.6以上)材料で光学素子FLを形成してもよい。
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
また、露光装置EXとしては、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で第1パターンの縮小像を投影光学系(例えば1/8縮小倍率で反射素子を含まない屈折型投影光学系)を用いて基板P上に一括露光する方式の露光装置にも適用できる。この場合、更にその後に、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で第2パターンの縮小像をその投影光学系を用いて、第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光するスティッチ方式の一括露光装置にも適用できる。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
また、上記各実施形態では投影光学系PLを備えた露光装置を例に挙げて説明してきたが、投影光学系PLを用いない露光装置及び露光方法に本発明を適用することができる。投影光学系を用いない場合であっても、露光光はマスク又はレンズなどの光学部材を介して基板に照射され、そのような光学部材と基板との間の所定空間に液浸領域が形成される。
また、本発明は、例えば特開平10−163099号公報及び特開平10−214783号公報(対応米国特許第6,590,634号)、特表2000−505958号公報(対応米国特許第5,969,441号)、米国特許第6,208,407号などに開示されているような複数の基板ステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。
更に、特開平11−135400号公報(対応国際公開1999/23692)、及び特開2000−164504号公報(対応米国特許第6,897,963号)等に開示されているように、基板を保持する基板ステージと基準マークが形成された基準部材及び各種の光電センサを搭載した計測ステージとを備えた露光装置にも本発明を適用することができる。
また、上述の実施形態においては、投影光学系PLと基板Pとの間に局所的に液体を満たす露光装置を採用しているが、本発明は、例えば特開平6−124873号公報、特開平10−303114号公報、米国特許第5,825,043号などに開示されているような露光対象の基板の表面全体が液体中に浸かっている状態で露光を行う液浸露光装置にも適用可能である。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
なお、上記各実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6,778,257号公報に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスクとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いてもよい。
また、例えば国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞を基板P上に形成することによって、基板P上にライン・アンド・スペースパターンを露光する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
さらに、例えば特表2004−519850号公報(対応米国特許第6,611,316号)に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回のスキャン露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
なお、本国際出願で指定又は選択された国の法令で許容される限りにおいて、上記各実施形態及び変形例で引用した露光装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図19に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などの基板処理プロセスを含むステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。