以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。そして、水平面内における所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係る露光装置EXを備えたデバイス製造システムSYSを示す図である。図1において、デバイス製造システムSYSは、露光装置EXと、露光装置EXに接続されたコータ・デベロッパ装置CDとを備えている。
露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージ3と、基板Pを保持する基板ホルダ4Hを有し、基板ホルダ4Hに基板Pを保持して移動可能な基板ステージ4と、マスクステージ3に保持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターン像を基板P上に投影する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置7とを備えている。
本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置であって、基板ステージ4に保持された基板P上に液体LQの液浸領域LRを形成し、液浸領域LRの液体LQを介して基板P上に露光光ELを照射して基板Pを露光する。本実施形態では、液体LQとして、水(純水)を用いる。
コータ・デベロッパ装置CDは、露光処理される前の基板Pの基材上に所定の膜を被覆するコーティング装置、及び露光処理された後の基板Pを現像するデベロッパ装置を含む。露光装置EXとコータ・デベロッパ装置CDとはインターフェースIFを介して接続されており、基板Pは不図示の搬送装置により、露光装置EXとコータ・デベロッパ装置CDとの間でインターフェースIFを介して搬送可能である。
図2はコータ・デベロッパ装置CDのコーティング装置によって所定の膜が被覆された基材を含む基板Pの一例を示す図である。図2において、基板Pは、半導体ウエハ等の基材Wと、その基材W上に被覆された第1膜Rgと、その第1膜Rg上に被覆された第2膜Tcとを有している。第1膜Rgは、感光材(フォトレジスト)からなる膜である。第2膜Tcは、トップコート膜と呼ばれる膜であって、例えば液体LQから第1膜Rgや基材Wを保護する機能などを有しており、液体LQに対して撥液性(撥水性)を有している。また、撥液性の膜である第2膜Tcを設けることにより、液体LQの回収性を高めることもできる。第1膜Rgは、例えばスピンコーティング方式によって、基材W上に感光材(フォトレジスト)を塗布することによって形成される。同様に、第2膜Tcも、トップコート膜を形成するための材料を塗布することによって形成される。液体LQの液浸領域LRは、基板Pの第2膜Tc上に形成されるため、基板Pのうち、第2膜Tcが、液浸領域LRの液体LQと接触する液体接触面を形成する。
次に、図3を参照しながら露光装置EXについて説明する。図3は本実施形態に係る露光装置EXを示す概略構成図である。露光装置EXは、投影光学系PLの像面近傍の露光光ELの光路Kを液体LQで満たして液浸領域LRを形成する液浸システム1を備えている。液浸システム1の動作は制御装置7に制御される。液浸システム1は、投影光学系PLの複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い最終光学素子FLの下面と、投影光学系PLの像面側に配置された基板ホルダ4H上の基板Pの表面との間の露光光ELの光路Kを液体LQで満たすように基板P上に液浸領域LRを形成する。
露光装置EXは、少なくともマスクMのパターン像を基板Pに投影している間、液浸システム1を用いて、露光光ELの光路Kを液体LQで満たす。露光装置EXは、投影光学系PLと露光光ELの光路Kに満たされた液体LQとを介してマスクMを通過した露光光ELを基板ホルダ4Hに保持された基板P上に照射することによって、マスクMのパターン像を基板P上に投影して、基板Pを露光する。また、本実施形態の露光装置EXは、最終光学素子FLと基板Pとの間の露光光ELの光路Kに満たされた液体LQが、投影光学系PLの投影領域ARを含む基板P上の一部の領域に、投影領域ARよりも大きく且つ基板Pよりも小さい液体LQの液浸領域LRを局所的に形成する局所液浸方式を採用している。
なお、液浸領域LRは、基板P上だけでなく、投影光学系PLの像面側において、最終光学素子FLの下面と対向する位置に配置された物体上、例えば基板ステージ4の一部などにも形成可能である。
照明光学系ILは、マスクM上の所定の照明領域を均一な照度分布の露光光ELで照明するものである。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態においてはArFエキシマレーザ光が用いられる。
マスクステージ3は、リニアモータ等のアクチュエータを含むマスクステージ駆動装置3Dの駆動により、マスクMを保持した状態で、X軸、Y軸、及びθZ方向に移動可能である。マスクステージ3(ひいてはマスクM)の位置情報は、レーザ干渉計3Lによって計測される。レーザ干渉計3Lは、マスクステージ3上に設けられた移動鏡3Kを用いてマスクステージ3の位置情報を計測する。制御装置7は、レーザ干渉計3Lの計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置3Dを駆動し、マスクステージ3に保持されているマスクMの位置制御を行う。なお、ここでいうマスクは基板上に縮小投影されるデバイスパターンを形成されたレチクルを含む。また、本実施形態においては、マスクとして透過型のマスクを用いるが、反射型のマスクを用いてもよい。
投影光学系PLは、マスクMのパターン像を所定の投影倍率で基板Pに投影するものであって、複数の光学素子を有しており、それら光学素子は鏡筒PKで保持されている。本実施形態の投影光学系PLは、その投影倍率が例えば1/4、1/5、1/8等の縮小系である。なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。本実施形態では、投影光学系PLの光軸AXはZ軸方向と平行となっている。また、投影光学系PLは、反射光学素子を含まない屈折系、屈折光学素子を含まない反射系、反射光学素子と屈折光学素子とを含む反射屈折系のいずれであってもよい。また、投影光学系PLは、倒立像と正立像とのいずれを形成してもよい。
基板ステージ4は、基板Pを保持する基板ホルダ4Hを有しており、リニアモータ等のアクチュエータを含む基板ステージ駆動装置4Dの駆動により、基板ホルダ4Hに基板Pを保持した状態で、ベース部材BP上で、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。基板ホルダ4Hは、基板ステージ4上に設けられた凹部4Rに配置されており、基板ステージ4のうち凹部4R以外の上面4Fは、基板ホルダ4Hに保持された基板Pの表面とほぼ同じ高さ(面一)になるような平坦面となっている。なお、基板ホルダ4Hに保持された基板Pの表面と、基板ステージ4の上面4Fとの間に段差があってもよい。
基板ステージ4(ひいては基板P)の位置情報は、レーザ干渉計4Lによって計測される。レーザ干渉計4Lは、基板ステージ4に設けられた移動鏡4Kを用いて、基板ステージ4のX軸、Y軸、及びθZ方向に関する位置情報を計測する。また、基板ステージ4に保持されている基板Pの表面の面位置情報(Z軸、θX、及びθY方向に関する位置情報)は、不図示のフォーカス・レベリング検出系によって検出される。制御装置7は、レーザ干渉計4Lの計測結果及びフォーカス・レベリング検出系の検出結果に基づいて、基板ステージ駆動装置4Dを駆動し、基板ステージ4に保持されている基板Pの位置制御を行う。
次に、液浸システム1について図4を参照しながら説明する。図4は図3の要部を示す拡大図である。液浸システム1は、投影光学系PLの最終光学素子FLと、その最終光学素子FLと対向する位置に配置され、基板ホルダ4Hに保持された基板Pとの間の露光光ELの光路Kを液体LQで満たす。液浸システム1は、最終光学素子FLと基板Pとの間の露光光ELの光路Kの近傍に設けられ、その光路Kに対して液体LQを供給するための供給口12及び液体LQを回収するための回収口22を有するノズル部材71と、供給管13、及びノズル部材71の内部に形成された供給流路14を介して供給口12に液体LQを供給する液体供給装置11と、ノズル部材71の回収口22から回収された液体LQを、ノズル部材71の内部に形成された回収流路24、及び回収管23を介して回収する液体回収装置21とを備えている。供給口12と供給管13とは供給流路14を介して接続されており、回収口22と回収管23とは回収流路24を介して接続されている。本実施形態においては、ノズル部材71は、露光光ELの光路Kを囲むように環状に設けられており、液体LQを供給する供給口12は、ノズル部材71のうち、露光光ELの光路Kを向く内側面に設けられ、液体LQを回収する回収口22は、ノズル部材71のうち、基板Pの表面と対向する下面に設けられている。また、本実施形態においては、回収口22には多孔部材(メッシュ)25が配置されている。
液体供給装置11は、供給する液体LQの温度を調整する温度調整装置、液体LQ中の気体成分を低減する脱気装置、及び液体LQ中の異物を取り除くフィルタユニット等を備えており、清浄で温度調整された液体LQを送出可能である。また、液体回収装置21は、真空系等を備えており、液体LQを回収可能である。液体供給装置11及び液体回収装置21の動作は制御装置7に制御される。液体供給装置11から送出された液体LQは、供給管13、及びノズル部材71の供給流路14を流れた後、供給口12より露光光ELの光路Kに供給される。また、液体回収装置21を駆動することにより回収口22から回収された液体LQは、ノズル部材71の回収流路24を流れた後、回収管23を介して液体回収装置21に回収される。制御装置7は、液浸システム1を制御して、液体供給装置11による液体供給動作と液体回収装置21による液体回収動作とを並行して行うことで、最終光学素子FLと基板Pとの間の露光光ELの光路Kを液体LQで満たし、基板P上の一部の領域に液体LQの液浸領域LRを局所的に形成する。
図4に示すように、液体LQの液浸領域LRは、基板Pの第2膜Tc上に形成され、基板Pのうち、第2膜Tcが、液浸領域LRの液体LQと接触する。第2膜Tcに接触した液体LQが第2膜Tcの内部に浸入する可能性があり、第2膜Tcに影響を及ぼす可能性がある。
例えば、図5の模式図に示すように、液体LQが第2膜Tcの内部に浸入する(染み込む)可能性がある。図5に示す例では、第2膜Tcの内部に浸入した液体LQは、第1膜Rgと第2膜Tcとの間に存在している。このような状態で、基板Pに露光光ELが照射された場合、浸入した液体LQによって、第1膜Rg(又は基材W)に対する露光光ELの照射状態が変動する可能性がある。すなわち、第2膜Tcの内部に浸入した液体部分で、露光光ELの光路が変化する可能性がある。第2膜Tcの露光光ELに対する屈折率と、液体LQの露光光ELに対する屈折率とが大きく異なっている場合、第2膜Tcの内部に浸入した液体部分、具体的には、第2膜Tcの内部に浸入した液体LQと第2膜Tcとの界面において、露光光ELが大きく屈折し、露光光ELの照射状態が大きく変動する可能性がある。第2膜Tcの内部に浸入した液体部分で露光光ELの光路が変化した場合、第1膜Rgの所望位置に露光光ELが到達せず、所望のパターン像が形成できず、基材Wに形成されるパターンに欠陥が生じる等、露光不良が発生する不具合が生じる可能性がある。また、第2膜Tcの内部に浸入した液体LQと第2膜Tcとの界面において、露光光ELの一部が反射し、所望の光量(強度)を有する露光光ELで第1膜Rgを照射できなくなる不具合が生じる可能性もある。また、浸入した液体部分によって、露光光ELが乱反射する可能性もある。
また、図6に示すように、第2膜Tcの内部に浸入した液体LQによって、第2膜Tcが膨潤するなどして、第2膜Tcの形状が局所的に変化する可能性もある。図6においても、その第2膜Tcの内部に浸入した液体部分で、露光光ELの光路が変化するなどの不具合が生じ、第1膜Rgに対する露光光ELの照射状態が変動する可能性がある。そして、第2膜Tcの露光光ELに対する屈折率と、液体LQの露光光ELに対する屈折率とが大きく異なっている場合、露光光ELの照射状態の変動は大きくなる可能性があり、露光不良が発生する可能性がある。
また、露光光ELのみならず、露光に関する所定の計測を行うために基板P上に計測光を照射する場合、第2膜Tcの内部に浸入した液体LQによって、その計測光の照射状態が変動したり、計測光の光路が変動し、計測精度が劣化するなどの不具合が生じる可能性がある。
そこで、本実施形態では、露光不良の発生を抑えるために、第2膜Tcの露光光ELに対する屈折率と、液体LQの露光光ELに対する屈折率とをほぼ同じにする。こうすることにより、第2膜Tcの内部に液体LQが浸入したとしても、その第2膜Tcの内部に浸入した液体部分で露光光ELの光路が変化することを抑えることができ、その浸入した液体LQに起因する露光光ELの照射状態の変動を抑えることができる。また、露光光ELの一部が反射することを抑えることができる。
なお、本実施形態においては、露光光ELに対する液体LQの屈折率をnとして、露光光ELに対する屈折率Nが0.95n<N<1.05nとなる第2膜Tcが使用される。
次に、上述の構成を有する露光装置EXを用いて基板Pを露光する方法について図7のフローチャート図を参照しながら説明する。
コータ・デベロッパ装置CDのコーティング装置において、基材Wの上面に感光材からなる第1膜Rgを被覆(塗布)する処理が行われる(ステップSA1)。次いで、基材Wの上面の周縁領域や側面などの感光材を例えば溶剤などを使って除去する処理(エッジリンス処理)が行われた後、ベーク処理を含む所定の処理が施される(ステップSA2)。
次いで、基材W上の第1膜Rg上にトップコート膜となる第2膜Tcを被覆(塗布)する処理が行われる(ステップSA3)。ここで、上述したように、本実施形態においては、液体LQとして水(純水)が用いられる。そこで、第2膜Tcとしては、その露光光ELに対する屈折率が、液体(水)LQの露光光ELに対する屈折率とほぼ同じものが用いられる。次いで、必要に応じてエッジリンス処理が行われた後、ベーク処理を含む所定の処理が施される(ステップSA4)。
本実施形態では、基板P上に形成された第2膜Tc上に、更にトップコート膜となる第2膜Tcを被覆(塗布)する処理が行われる(ステップSA5)。第2膜Tcとしては、その露光光ELに対する屈折率が、液体(水)LQの露光光ELに対する屈折率とほぼ同じものが用いられる。次いで、必要に応じてエッジリンス処理が行われた後、ベーク処理を含む所定の処理が施される(ステップSA6)。
その後、基板Pは所定の搬送装置によって露光装置EXへ搬送される。露光装置EXは、基板Pの第2膜Tc上に液体LQの液浸領域LRを形成して基板Pに露光光ELを照射する(ステップSA7)。液体LQの屈折率に応じた屈折率を有する第2膜Tcを設け、第2膜Tcの露光光ELに対する屈折率と、液体LQの露光光ELに対する屈折率とをほぼ同じにした状態で、基板Pに露光光ELを照射するので、露光光ELの光路の変化を含む露光光ELの照射状態の変動を抑えた状態で、基板Pを露光することができる。
以上説明したように、膜の露光光ELに対する屈折率と、液体LQの露光光ELに対する屈折率とをほぼ同じにすることで、膜の内部に液体LQが浸入した場合でも、その浸入した液体LQに起因する露光光ELの照射状態の変動や反射状態の変動、露光光ELの光路の変化を抑え、露光不良の発生を抑えることができる。
また、本実施形態では、図7に示したステップSA3、SA5のように、トップコート膜となる第2膜Tcを塗布する工程を2回行っている。これにより、基板P上の第2膜Tcの厚さを厚くすることができ、液体LQの第2膜Tcの内部への浸入(染み込み)を抑制する効果が期待できる。
第2膜Tcを塗布し(ステップSA3)、ベーク処理することにより(ステップSA4)、第2膜Tcにクラックが形成される可能性がある。クラックが形成された状態で第2膜Tc上に液浸領域LRを形成した場合、第2膜Tcの内部に液体LQが浸入し易くなる可能性がある。本実施形態では、第2膜Tcの屈折率と液体LQの屈折率とをほぼ同じにしているものの、第1膜Rgに液体LQが浸入することは好ましくない。そこで、第2膜Tcを塗布し(ステップSA3)、ベークした後(ステップSA4)、更にその上に第2膜Tcを塗布することで(ステップSA5)、第1層目の第2膜Tcにクラックが形成されていても、第2層目の第2膜Tcでそのクラックを埋める(補修する)ことができる可能性がある。このように、トップコート膜となる第2膜Tcを塗布する工程を2回以上行うことにより、第1層目の第2膜Tcのクラックに起因する液体LQの第2膜Tcの内部への浸入(染み込み)を抑制する効果が期待できる。また、第2層目の第2膜Tcをベーク処理(ステップSA6)することにより、その第2層目の第2膜Tcにもクラックが形成されることが考えられるが、第1層目の第2膜Tcに形成されたクラックの位置と、第2層目の第2膜Tcに形成されたクラックの位置とが一致する確率は非常に低いため、第2膜Tcを複数回塗布することにより、液体LQの浸入を抑えることができる可能性がある。
なお、本実施形態では、第2膜Tcを塗布する工程を2回行っているが、もちろん、3回以上の任意の複数回行うことができる。また、液体LQの浸入を抑制できる、あるいは許容できるのであれば、第2膜Tcを塗布する工程は1回でもよい。
また、第2膜Tcを複数回塗布することによって液体LQの浸入が抑制できる場合には、液体LQの屈折率と第2膜Tcの屈折率とがほぼ同じでなくてもよい。
なお、本実施形態においては、液体LQとして水を用いており、第2膜Tcとしては、その屈折率が、水の屈折率とほぼ同じものが用いられているが、液体LQとして、水以外のものを用いた場合には、上述のステップSA3、SA5においては、その液体LQに応じた(その液体LQとほぼ同じ)屈折率を有する第2膜Tcを被覆すればよい。
<第2実施形態>
次に第2実施形態について説明する。第1実施形態では、第2膜Tcを被覆するときの被覆工程において、基材W(基板P)上に、液体LQに応じた屈折率を有する第2膜Tcを被覆しているが、第2実施形態の特徴的な部分は、基板P上に液浸領域LRを形成して基板Pを露光する露光工程において、露光装置EXの液体供給装置11が、第2膜Tcに応じた屈折率を有する液体LQを供給する点にある。すなわち、本実施形態の特徴的な部分は、液体供給装置11が、第2膜Tcの露光光ELに対する屈折率とほぼ同じ屈折率を有する液体LQを供給する点にある。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図8は第2実施形態に係る液体供給装置11を示す概略構成図である。液体供給装置11は、第2膜Tc上に液浸領域LRを形成するための液体LQを供給するが、第2膜Tcの露光光ELに対する屈折率とほぼ同じ屈折率を有する液体LQを供給する。液体供給装置11は、例えば水などの第1の液体を供給可能な第1液体供給器11Aと、第1の液体の屈折率を調整するための第2の液体を供給する第2液体供給器11Bと、第1の液体と第2の液体とを混合する混合器11Cとを備えており、混合器11Cで生成された液体LQが、供給口12を介して光路K(基板P上)に供給される。第2の液体は、第1の液体の屈折率を変えることができる添加剤であってもよい。制御装置7は、第1の液体と第2の液体との混合比を調整可能であり、これにより、供給口12を介して基板P上に供給される液体LQの露光光ELに対する屈折率を調整可能である。そして、制御装置7は、基板Pを露光する露光工程において、供給口12から供給する液体LQの露光光ELに対する屈折率(具体的には上述の混合比)が、第2膜Tcの露光光ELに対する屈折率とほぼ同じになるように調整する。こうすることにより、第2膜Tcの内部に液体LQが浸入したとしても、その内部に浸入した液体部分での露光光ELの光路の変化を抑え、露光不良の発生を抑えることができる。
なお、本実施形態においては、露光光ELに対する第2膜Tcの屈折率をNとして、露光光ELに対する屈折率nが0.95N<n<1.05Nとなるように、液体LQの屈折率nの調整が行われる。
また、ここでは、2種類の液体を混合しているが、もちろん、3種類以上の任意の複数種類の液体を混合してもよい。また、互いに異なる屈折率を有する液体を複数種類用意しておき、第2膜Tcの屈折率に応じて、複数種類の液体のうちの1つの液体を基板P上に供給するようにしてもよい。
また、液体LQの温度を調整して、液体LQの露光光ELに対する屈折率と第2膜Tcの露光光ELに対する屈折率とがほぼ同じになるようにしてもよい。
なお、上述の実施形態において、露光装置EXで使用される液体LQの種類(屈折率)が、例えばロット毎に変更される場合には、露光装置EXで使用される液体LQの情報をコータ・デベロッパ装置CDに送信することができる。例えば、図9の模式図に示すように、露光装置EXに、コータ・デベロッパ装置CDと通信可能な通信装置COMを設けておき、その通信装置COMを介して、液体LQに関する情報(液体LQの屈折率に関する情報)を送信する。コータ・デベロッパ装置CDは、その情報に基づいて、液体LQとほぼ同じ屈折率を有する膜(第2膜Tc)を被覆することができる。このように、露光装置EXは、使用する液体LQに応じて、コータ・デベロッパ装置CDに対して、指令信号を送ることができる。また、例えばオペレータが、露光装置EXで用いられる液体LQの情報を、コータ・デベロッパ装置CDに対して所定の入力装置(キーボードなど)を介して入力するようにしてもよい。
また、上述の第2実施形態において、液体供給装置11が、第2膜Tcに応じた液体LQを供給する際、露光装置EXに入力装置(キーボード)を設けておき、例えばオペレータが、コータ・デベロッパ装置CDで基板Pに被覆される第2膜Tcに関する情報(第2膜Tcの屈折率に関する情報)を、露光装置EXに対して入力装置を介して入力するようにしてもよい。
また、第2膜Tcの種類(屈折率)が、例えばロット毎に変更される場合には、露光装置EXに、コータ・デベロッパ装置CDからの指令信号を受信可能な受信装置を設けておき、コータ・デベロッパ装置CDから送信された第2膜Tcに関する情報を受信するようにしてもよい。露光装置EXは、受信装置を介して受信した第2膜Tcに関する情報に基づいて、液体供給装置11から供給する液体LQの屈折率を調整することができる。また、使用される第2膜Tcが予め分かっている場合には、その第2膜Tcに関する情報を、露光装置EXの制御装置7に接続されている記憶装置に記憶しておいてもよい。露光装置EXは、記憶装置に記憶されている第2膜Tcに関する情報に基づいて、液体供給装置11から基板P上に供給する液体LQの屈折率を調整することができる。
なお、上述の各実施形態において、液体LQの露光光ELに対する屈折率と、第2膜Tcの露光光ELに対する屈折率とをほぼ同じにすることによって、第2膜Tcの露光光ELに対する屈折率と第1膜Rgの露光光ELに対する屈折率との差が大きくなり、第2膜Tcと第1膜Rgとの界面で露光光ELの一部が反射するなどして、露光光ELが所望の状態で第1膜Rgに入射しない可能性がある。このような場合には、第2膜Tcと第1膜Rgとの間に、露光光ELの光路(第1膜Rgへの入射角)を調整するために、露光光ELに対して所定の屈折率を有する膜を形成してもよい。
また、上述の各実施形態においては、第1膜Rg上に第2膜Tcが形成されているが、第2膜Tcを形成しなくてもよい。この場合には、第1膜Rgが液体LQと接触することになるので、第1膜Rgの露光光ELに対する屈折率と液体LQの露光光ELに対する屈折率とをほぼ同じにしておくことが望ましい。
上述の第1実施形態においては、液体LQとして純水を用いている。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。なお工場等から供給される純水の純度が低い場合には、露光装置が超純水製造器を持つようにしてもよい。
そして、波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nはほぼ1.44程度と言われており、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、基板P上では1/n、すなわち約134nmに短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、すなわち約1.44倍に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
本実施形態では、投影光学系PLの先端に光学素子FLが取り付けられており、この光学素子により投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整を行うことができる。なお、投影光学系PLの先端に取り付ける光学素子としては、投影光学系PLの光学特性の調整に用いる光学プレートであってもよい。あるいは露光光ELを透過可能な平行平面板であってもよい。
なお、液体LQの流れによって生じる投影光学系PLの先端の光学素子と基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その光学素子を交換可能とするのではなく、その圧力によって光学素子が動かないように堅固に固定してもよい。
なお、本実施形態では、投影光学系PLと基板P表面との間は液体LQで満たされている構成であるが、例えば基板Pの表面に平行平面板からなるカバーガラスを取り付けた状態で液体LQを満たす構成であってもよい。
また、上述の実施形態の投影光学系は、先端の光学素子の像面側の光路を液体で満たしているが、国際公開第2004/019128号パンフレットに開示されているように、先端の光学素子の物体面側の光路も液体で満たす投影光学系を採用することもできる。
なお、上述のように、液体LQとしては、水以外の液体であってもよい、例えば、露光光ELの光源がF2レーザである場合、このF2レーザ光は水を透過しないので、液体LQとしてはF2レーザ光を透過可能な例えば、過フッ化ポリエーテル(PFPE)やフッ素系オイル等のフッ素系流体であってもよい。この場合、液体LQと接触する部分には、例えばフッ素を含む極性の小さい分子構造の物質で薄膜を形成することで親液化処理する。また、液体LQとしては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。
また、液体LQとしては、屈折率が1.6〜1.8程度のものを使用してもよい。更に、石英や蛍石よりも屈折率が高い(例えば1.6以上)材料で光学素子FLを形成してもよい。
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
また、露光装置EXとしては、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で第1パターンの縮小像を投影光学系(例えば1/8縮小倍率で反射素子を含まない屈折型投影光学系)を用いて基板P上に一括露光する方式の露光装置にも適用できる。この場合、更にその後に、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で第2パターンの縮小像をその投影光学系を用いて、第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光するスティッチ方式の一括露光装置にも適用できる。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
また、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報などに開示されているような複数の基板ステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。
更に、特開平11−135400号公報や特開2000−164504号公報に開示されているように、基板を保持する基板ステージと基準マークが形成された基準部材や各種の光電センサを搭載した計測ステージとを備えた露光装置にも本発明を適用することができる。
また、上述の実施形態においては、投影光学系PLと基板Pとの間に局所的に液体を満たす露光装置を採用しているが、本発明は、特開平6−124873号公報、特開平10−303114号公報、米国特許第5,825,043号などに開示されているような露光対象の基板の表面全体が液体中に浸かっている状態で露光を行う液浸露光装置にも適用可能である。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
なお、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6,778,257号公報に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスクを用いてもよい。
また、国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞を基板P上に形成することによって、基板P上にライン・アンド・スペースパターンを露光する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図10に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する露光処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
1…液浸システム、11…液体供給装置、4…基板ステージ、7…制御装置、EL…露光光、EX…露光装置、LQ…液体、LR…液浸領域、P…基板、Rg…第1膜、Tc…第2膜、W…基材