本発明の製造方法において、分散液中に含まれるトナー母粒子の製造方法は特に限定はないが、湿式法により調製されたものであることが好ましい。湿式法とは、トナー母粒子の製造工程において、水等の分散媒等を用いる静電荷像現像用トナーの製造方法であり、例えば、(a)水系媒体中に重合性単量体、重合開始剤、着色剤等を懸濁分散させた後に重合させてトナー母粒子を製造する懸濁重合法、(b)重合開始剤、乳化剤等を含有する水性媒体中に重合性単量体を乳化させ、攪拌下に重合性単量体を重合させて得られた重合体一次粒子の分散液に、着色剤等を添加して前記重合体一次粒子を凝集、熟成させてトナー母粒子を製造する乳化重合凝集法、(c)あらかじめ溶媒に溶解、分散したポリマー、着色剤等の溶解分散液(トナー組成の溶解分散液)を水系媒体中に分散し、これを加熱又は減圧等によって溶媒を除去することにより、水系媒体に分散されたトナー母粒子を製造する溶解懸濁法等が挙げられる。
以下、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法について、まず全ての湿式法に共通する事項について詳細に説明する。
本発明の製造方法による静電荷像現像用トナーは、バインダー樹脂及び着色剤を含有し、必要に応じて、ワックス、帯電制御剤及びその他の添加剤等を含むトナー母粒子に、必要により固体微粒子が外添されてなるものである。
本発明に用いられるバインダー樹脂としては、トナーに適した公知の種々のものが使用できる。例えば、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられ、これらの混合物であってもよい。本発明に用いるのに特に好ましい樹脂としては、スチレン系樹脂を挙げることができる。
スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体(スチレン−アクリル酸メチル−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸フェニル−アクリル酸共重合体等)、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体(スチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸フェニル−メタクリル酸共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸オクチル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル−アクリル酸共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸オクチル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル−メタクリル酸共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体及びスチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン又はスチレン誘導体を含む単独重合体又は共重合体が挙げられ、これらの混合物であってもよい。更には、前記アクリル酸、メタクリル酸の一部又は全てを、α−クロルアクリル酸、α−ブロムアクリル酸等の置換モノカルボン酸類、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸類、それらの無水物又はそれらのハーフエステル類等で置換したものも好適に用いることができる。
中でも、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体の中から選ばれるバインダー樹脂であるのが好ましい。特に、スチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体の中から選ばれる酸基を有するバインダー樹脂は、定着助剤との親和性・分散性が向上してトナーとした時の定着性や耐久性の面で優れ、しかもトナーの帯電安定性(特に負帯電性)が向上するのでより好ましい。なお、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルにおけるエステル基は限定されないが、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、オクチルエステル、フェニルエステル等が挙げられる。
前記バインダー樹脂の示差走査熱量計(以下、「DSC」と略記する)によって測定されるガラス転移温度(以下、「Tg」と略記する)は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下であることが望ましい。Tgが80℃を超える場合は、得られたトナーの低温定着性が悪化する場合や、フルカラートナーとした場合にトナーの透明性が得られない場合がある。また、Tgが40℃未満ではトナーの保存安定性、耐ブロッキング性等が悪くなる場合がある。本発明においてTgは、示差走査熱量計(島津製作所社製DTA−40)において、昇温速度10℃/分の条件で測定した曲線の転移(変曲)開始部に接線を引き、2つの接線の交点の温度として求めた値である。
また、本発明に使用するバインダー樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する)におけるピーク分子量のうち少なくとも1つが、好ましくは3000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上であり、好ましくは10万以下、より好ましくは7万以下、更に好ましくは6万以下に存在することが望ましい。ピーク分子量が3000未満であると、定着性は良好であるが、ホットオフセットが発生しやすくなり使用可能温度幅が狭くなる傾向にある。又、10万を超えると低温領域での定着性が不良となり、定着下限温度が上昇する傾向にある。本発明において、GPC測定は、テトラヒドロフランを溶媒にして、溶媒不溶分を濾過して可溶分だけを測定し、分子量は標準ポリスチレンでキャリブレーションした値である。
本発明に用いられる着色剤は特に限定されるものではなく、トナーの着色剤として一般に用いられている各種の無機系及び有機系の染料や顔料等が用いられ、具体的には、例えば、鉄粉、銅粉等の金属粉、ベンガラ等の金属酸化物、ファーネスブラック、ランプブラック等のカーボンブラックに代表されるカーボン類等の無機系顔料、ベンジジンイエロー、ベンジジンオレンジ等のアゾ系、キノリンイエロー、アシッドグリーン、アルカリブルー等の染料の沈殿剤による沈殿物やローダミン、マゼンタ、マカライトグリーン等の染料のタンニン酸、リンモリブデン酸等による沈殿物等の酸性染料や塩基性染料、ヒドロキシアントラキノン類の金属塩等の染料、フタロシアニンブルー、スルホン酸銅フタロシアニン等のフタロシアニン系、キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット等のキナクリドン系やジオキサン系等の有機系顔料、アニリン黒、アゾ染料、ナフトキノン染料、インジゴ染料、ニグロシン染料、フタロシアニン染料、ポリメチン染料、ジ及びトリアリルメタン染料等の合成染料等が挙げられ、これらの2種以上を併用することもできる。
フルカラートナーに用いる着色剤としては、イエロー用としてアゾ系顔料(不溶性モノアゾ系、不溶性ジスアゾ系、縮合アゾ系等)、多環式顔料(イソインドリン系、イソインドリノン系、スレン系、キノフタロン系等)等が挙げられ、マゼンタ用としてアゾ系顔料(アゾレーキ系、不溶性モノアゾ系、不溶性ジスアゾ系、縮合アゾ系等)、多環式顔料(キナクリドン顔料、ペリレン顔料等)等が挙げられ、シアン用としてフタロシアニン顔料、スレン系顔料等が挙げられる。着色剤の組合せは色相等を勘案して適宜選べばよいが、中でも、イエロー着色剤としてはC.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー155から選ばれる少なくとも1種が、マゼンタ着色剤としてはC.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド122から選ばれる少なくとも1種が、シアン着色剤としてはC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3から選ばれる少なくとも1種が、ブラック着色剤としてはファーネス法カーボンブラックが、それぞれ好適である。
前記着色剤の含有割合は、前記バインダー樹脂100重量部に対して、1〜20重量部であるのが好ましく、2〜15重量部であるのがより好ましく、特には3〜10重量部であるのが好ましい。2種以上の着色剤を併用する場合は、合計量として前記範囲であることが好ましい。
また、前記着色剤は磁性を有していてもよく、磁性着色剤としては、複写機等の使用環境温度である0〜60℃付近においてフェリ磁性或いはフェロ磁性を示す強磁性物質、具体的には、例えば、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマタイト(γ−Fe2O3)、マグネタイトとマグヘマタイトの中間物や混合物、MxFe3−xO4(式中、Mは、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd等)のスピネルフェライト、BaO・6Fe2O3、SrO・6Fe2O3等の6方晶フェライト、Y3Fe5O12、Sm3Fe5O12等のガーネット型酸化物、CrO2等のルチル型酸化物、及び、Cr、Mn、Fe、Co、Ni等の金属或いはそれらの強磁性合金等のうち0〜60℃付近において磁性を示すものが挙げられ、中でも、マグネタイト、マグヘマタイト、又はマグネタイトとマグヘマタイトの中間体が好ましい。非磁性トナーとしての特性を持たせつつ、飛散防止や帯電制御等の観点で添加する場合は、その添加量は前記バインダー樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部、好ましくは0.5〜8重量部、より好ましくは1〜5重量部である。また、磁性トナーとして使用する場合の添加量は、前記バインダー樹脂100重量部に対して20重量部以上、150重量部以下が好ましい。
本発明における静電荷像現像用トナーには、ワックスが含有されていてもよい。ワックスを含有することによって、低温定着性、高温耐オフセット性、耐フィルミング性等が向上する場合があるので好ましい。
前記ワックスはトナー用途に通常使用されているものであれば限定されず、具体的には低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;アルキル基を有するシリコンワックス;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン類;水添ひまし油カルナバワックス等の植物系ワックス;グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸より得られるエステル類又は部分エステル類;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステル等が例示される。本発明に好適なワックスとしては、エステル系ワックス、パラフィンワックス、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックスや、アルキル基を有するシリコーンワックスから選択することにより好適に使用できる。また、ワックスは、DSCによる吸熱ピークを50〜100℃に少なくとも1つ有することが好ましい。
ワックスを含有する場合のその含有量は、トナー100重量部に対し0.05重量部以上が好ましく、より好ましくは0.1重量部以上、更に好ましくは1重量部以上であり、20重量部以下であるのが好ましく、より好ましくは15重量部以下であるのがよい。
本発明における静電荷像現像用トナー中のワックスの分散粒径は、体積平均粒径として好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下である。平均粒径が0.1μm未満では、トナーの離型性改良の効果が充分でない場合があり、また平均粒径が3μmを超えると、トナーの表面に露出しやすくなり帯電性や耐熱性が低下する場合がある。なお、ワックスの平均粒径は、トナーを薄片化して電子顕微鏡観察する方法の他、ワックスが溶解しない有機溶剤等でトナーのバインダー樹脂を溶解し、溶液中のワックスの粒径を計測する方法等により確認することができる。
本発明における静電荷像現像用トナーには、帯電量、帯電安定性付与のため、帯電制御剤が含有されていてもよい。帯電制御剤としては、従来公知の化合物が使用され、例えば、正荷電性帯電制御剤としては、ニグロシン系染料、四級アンモニウム塩、トリアミノトリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂等、負荷電性帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアゾ錯化合物染料やアルキルサリチル酸錯化合物、カリックスアレン化合物等が挙げられる。フルカラートナーでは、トナーとしての色調障害を回避するために、帯電制御剤の色調は無色ないしは、淡色のものを選択する必要があり、その用途のためには、上記のうちでも正荷電性帯電制御剤としては、四級アンモニウム塩、イミダゾール系化合物であるのが好ましく、負荷電性帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアルキルサリチル酸錯化合物、カリックスアレン化合物が好ましい。また、これらの混合物であってもよい。帯電制御剤の添加量は、バインダー樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部の範囲が好ましい。
更に、本発明においてトナー中には、トナーの粘着性、凝集性、流動性、帯電性、表面抵抗等の改質のために公知の各種内添剤、例えば、シリコンオイル、シリコンワニス等を含有させることもできる。
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法では、(a)懸濁重合法、(b)乳化重合凝集法、(c)溶解懸濁法等の湿式法等により得られたトナー母粒子が用いられる。(a)、(b)、(c)の中で、(b)乳化重合凝集法を採用した場合、凝集工程を経るため粗粒が発生しやすく、そのため特に、湿式法によるトナー母粒子の製造法の中では、(b)乳化重合凝集法によるものが、本発明の篩いの効果を顕著に奏する点で好ましい。
以下、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法について、湿式法の中でも(a)懸濁重合法、(b)乳化重合凝集法、(c)溶解懸濁法、のそれぞれについて、(a)(c)(b)の順に更に詳細に説明する。
本発明におけるトナー母粒子を(a)懸濁重合法で製造する場合、従来公知の方法に従って行うことができる。すなわち、通常は、水系媒体中にバインダー樹脂を構成する重合性モノマー、懸濁重合分散剤、重合開始剤、着色剤及び、必要に応じて添加される帯電制御剤やワックス等のその他の成分をディスパーザー等の分散機を用いて適当な粒径に懸濁分散させた後、該重合性モノマーを重合させてトナー母粒子を得る。重合の温度は、好ましくは30〜200℃、より好ましくは60〜100℃が望ましく、重合時の圧力は、加圧下、常圧下、減圧下の何れであってもよい。また、重合時間は、好ましくは1〜15時間、より好ましくは3〜10時間が望ましい。
懸濁重合法によるトナー母粒子を構成するバインダー樹脂としては、前記したスチレン系樹脂が用いられるが、重合性モノマーとしては、後述する乳化重合凝集法に用いられる重合性モノマーと同様のものを使用することができる。
懸濁重合分散剤としては、公知の燐酸カルシウム、タルク、ベントナイト、ケイ酸、珪藻土、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等、水系媒体に難溶性又は不溶性の無機粉末等が使用され、その添加量は水系媒体100重量部に対して、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは1〜3重量部である。懸濁重合分散剤の量は、製造される樹脂の粒度分布に影響を与え、量を多くすると粒径は細かくなる。
重合開始剤としては、公知の重合開始剤等が使用され、その具体例としては、過酸化ベンゾイル、オクタノニルパーオキシド、デカノニルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、m−トルオイルパーオキシド等の過酸化物が好適に使用される。重合開始剤の添加量は重合性単量体に対して好ましくは0.5〜10重量部である。
本発明におけるトナー母粒子を(c)溶解懸濁法で製造する場合、従来公知の方法に従って製造することができる。すなわち、通常は、バインダー樹脂が溶解する溶剤に、バインダー樹脂及び着色剤、必要に応じて帯電制御剤、離型剤、磁性体等を溶解又は分散させ、この溶液をバインダー樹脂にとって溶解性の低い液体と混合することによって粒子を析出させてトナー母粒子を得る。
次に、本発明において、特に好ましい乳化重合凝集法による場合について、詳細に説明する。
乳化重合凝集法によりトナー母粒子を製造する場合、通常、乳化重合工程、混合工程、凝集工程、熟成工程を有するが、各工程は重複する場合があってもかまわない。本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも乳化重合法で得られた重合体一次粒子分散液と着色剤粒子分散液とを混合し、分散液中の粒子を凝集させて粒子凝集体とする凝集工程、次いで該粒子凝集体を分散液中で加熱融着させてトナー微粒子とする熟成工程、次いで該トナー微粒子を分散液の状態で篩う篩別工程を含む製造方法で製造されることが好ましい。
すなわち、本発明のトナー母粒子は、少なくとも乳化重合法で得られた重合体一次粒子分散液と着色剤粒子分散液とを混合し、分散液中の粒子を凝集、加熱融着させて得られるものであることが好ましい。具体的には、乳化重合により得られたバインダー樹脂としての重合体一次粒子を含む分散液に、着色剤、必要に応じて帯電制御剤、ワックス等を混合し、この分散液中の一次粒子を凝集、熟成させて体積平均粒径3〜8μm程度の粒子凝集体とし、その後、得られたトナー母粒子の分散液を篩い、洗浄、乾燥することが好ましい。
乳化重合凝集法に用いられる重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂としては、前記した樹脂が用いられる。重合性モノマーとしては、極性基を有する重合性モノマーを使用することが好ましく、すなわちブレンステッド酸性基を有するモノマー(以下単に、「酸性モノマー」と略記する)又はブレンステッド塩基性基を有するモノマー(以下単に、「塩基性モノマー」と略記する)を使用することが好ましい。また更に、ブレンステッド酸性基又はブレンステッド塩基性基の何れをも有さないモノマー(以下、「その他のモノマー」と略記する)を原料モノマーとして併用することが好ましい。この際、各モノマーは別々に加えても、あらかじめ複数のモノマーを混合しておいて同時に添加してもよい。また、重合性モノマーはそのまま添加してもよいし、あらかじめ水や乳化剤等と混合、調製した乳化液として添加することもできる。
酸性モノマーとしては特に限定はないが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有するモノマー、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー、ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有するモノマー等が挙げられる。また、塩基性モノマーとしては特に限定はないが、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の窒素含有複素環含有モノマー、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これら酸性モノマー、塩基性モノマーは、単独で用いても複数を混合して用いてもよく、また、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。中でも、酸性モノマーを用いるのが好ましく、アクリル酸及び/又はメタクリル酸が特に好ましい。
前記極性基を有する重合性モノマーの合計量は、バインダー樹脂としての重合体一次粒子を構成する全モノマー100重量部に対して、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、更に好ましくは1重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下であることが望ましい。
その他のモノマーとしては特に限定はないが、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド等のアクリル酸アミド類等が挙げられ、これらその他のモノマーは、単独で用いてもよく、また複数を組み合わせて用いてもよい。この中でも特にスチレンが好ましい。
更に、重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂として架橋樹脂を用いる場合、上述の重合性モノマーと共用される架橋剤としては、ラジカル重合性を有する多官能性モノマーが用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、反応性基をペンダントグループに有するモノマー、例えばグリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、アクロレイン等を用いることも可能である。中でもラジカル重合性の二官能性モノマーが好ましく、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが特に好ましい。これら多官能性モノマーは、単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂として架橋樹脂を用いる場合は、樹脂を構成する全重合性モノマー中に占める多官能性モノマーの配合率は、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であることが、定着性、高温耐オフセット性、ブロッキング性等を良くするために好ましい。
乳化重合に用いる乳化剤としては公知のものが使用できるが、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を併用して用いることができる。
カチオン性界面活性剤としては特に限定はないが、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
乳化剤の使用量は、通常、重合性単量体100重量部に対して0.1〜10重量部とされ、また、これらの乳化剤に、例えば、部分或いは完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等の1種或いは2種以上を保護コロイドとして併用することができる。
重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の有機過酸化物類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物類等の1種或いは2種以上が、通常、重合性単量体100重量部に対して0.1〜3重量部の量で用いられる。また、これらの重合開始剤に、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸等の還元性有機化合物類、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物類等の還元剤の1種或いは2種以上を併用したレドックス系開始剤とすることもできる。中でも、開始剤としては、過酸化水素、有機過酸化物類、アゾ系化合物類が好ましい。
また、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の1種或いは2種以上の懸濁安定剤を、重合性単量体100重量部に対して、1〜10重量部の量で用いてもよい。前記重合開始剤及び懸濁安定剤は、何れも、重合性モノマー添加前、添加と同時、添加後の何れの時期に重合系に添加してもよく、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせてもよい。
乳化重合に際しては、必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤は特に限定はないが、具体的には例えば、t―ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等が挙げられる。連鎖移動剤は、単独又は2種類以上の併用でもよく、全重合性モノマーに対して、5質量%以下の範囲で用いることが好ましい。
また反応系には、更に、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤等を適宜添加することができる。
乳化重合では、上記の重合性モノマー類を重合開始剤の存在下で所定時間重合するが、重合温度は、通常50〜120℃、好ましくは60〜100℃、更に好ましくは70〜90℃であり、重合時の圧力は、加圧下、常圧下、減圧下の何れであってもよい。
乳化重合により得られた重合体一次粒子の体積平均粒径は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上であり、通常3μm以下、好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.5μm以下であることが望ましい。粒径が0.02μm未満では、凝集工程において凝集速度の制御が困難となる場合があり、3μmを超えると、凝集して得られるトナーの粒径が大きくなり易く、目的とする粒径のトナーを得ることが困難となる場合がある。
本発明の製造方法においては、乳化重合と異なる重合方法で得られた樹脂を重合体一次粒子として併用することもでき、そのような樹脂についても、体積平均粒径が、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上であり、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下であるものを用いることが望ましい。
乳化重合凝集法における着色剤の配合方法としては特に限定はないが、重合体一次粒子の分散液と着色剤粒子の分散液とを混合して混合分散液とした後、これを凝集させて粒子凝集体とすることが好ましい。着色剤は、乳化剤の存在下で水中に乳化させた状態で用いるのが特に好ましく、着色剤粒子の体積平均粒径は、0.01〜3μmであることが好ましい。
乳化重合凝集法におけるワックスの配合方法としては特に限定はないが、あらかじめ水中に体積平均粒径0.01〜2.0μm、より好ましくは0.01〜0.5μmに乳化分散したワックス乳液を乳化重合時に添加するか、あるいは凝集工程で添加することが好ましい。トナー中に好適な分散粒径でワックスを分散させるためには、乳化重合時にワックスをシードとして添加することが好ましい。シードとして添加することにより、ワックスがトナー中に微細かつ均一に分散するため、トナーの帯電性や耐熱性の悪化を抑制することができる。
乳化重合凝集法においてトナー中に帯電制御剤を含有させる場合、その含有させる方法には特に限定はないが、乳化重合時にモノマー等とともに帯電制御剤を添加するか、重合体一次粒子及び着色剤等とともに凝集工程で添加するか、重合体一次粒子及び着色剤等を凝集させてほぼトナーとして適当な粒径となった後に添加する等の方法によって配合することが挙げられる。これらのうち、乳化剤を用いて帯電制御剤を水中に乳化分散させ、それを凝集工程で添加することが特に好ましい。その場合の帯電制御剤の体積平均粒径は、0.01〜3μmであることが好ましい。
なお、以上の分散液中の重合体一次粒子、着色剤分散粒子、ワックス分散粒子、帯電制御剤分散粒子等の体積平均粒径は、マイクロトラックUPA(日機装社製)を用いて測定したものである。
乳化重合凝集法における凝集工程においては、上述の、重合体一次粒子、着色剤粒子、必要に応じて帯電制御剤、ワックス等の配合成分は、同時にあるいは逐次に混合するが、あらかじめそれぞれの成分の分散液、即ち、重合体一次粒子分散液、着色剤粒子分散液、必要に応じ帯電制御剤分散液、ワックス微粒子分散液を作製しておき、これらを混合して混合分散液を得ることが、組成の均一性及び粒径の均一性の点で好ましい。
前記の凝集処理は通常、攪拌槽内で、加熱する方法、電解質を加える方法、これらを組み合わせる方法等がある。一次粒子を攪拌下に凝集してほぼトナーの大きさに近い粒子凝集体を得ようとする場合、粒子同士の凝集力と攪拌による剪断力とのバランスから粒子凝集体の粒径が制御されるが、加熱するか、或いは電解質を加えることによって凝集力を大きくすることができる。
電解質を添加して凝集を行う場合の電解質としては特に限定はなく、有機塩、無機塩の何れでもよいが、具体的には、NaCl、KCl、LiCl、Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、MgCl2、CaCl2、MgSO4、CaSO4、ZnSO4、Al2(SO4)3、Fe2(SO4)3、CH3COONa、C6H5SO3Na等が挙げられる。
前記電解質の添加量は、電解質の種類、目的とするトナー母粒子の粒径等によって異なるが、混合分散液の固形成分100重量部に対して、通常0.05〜25重量部、好ましくは0.1〜15重量部、更に好ましくは0.1〜10重量部である。添加量が、0.05重量部未満の場合は、凝集反応の進行が遅くなり、凝集反応後も1μm以下の微粉が残ったり、得られた粒子凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しない等の問題を生じる場合があり、25重量部を超える場合は、急速な凝集となりやすく粒径の制御が困難となり、得られた凝集粒子中に粗粉や不定形のものが含まれる等の問題を生じる場合がある。電解質を加えて凝集を行う場合の凝集温度は限定されないが、20〜70℃が好ましく、30〜60℃が更に好ましい。
電解質を用いずに加熱のみによって凝集を行う場合の凝集温度は特に限定はないが、重合体一次粒子のTgをTg1としたとき、(Tg1−20℃)〜Tg1の温度範囲であることが好ましく、(Tg1−10℃)〜(Tg1−5℃)の範囲であることが特に好ましい。
凝集に要する時間は装置形状や処理スケールにより最適化されるが、トナー粒子の粒径を目的とする粒径に到達するためには、前記した所定の温度で、少なくとも30分以上保持することが望ましい。所定の温度へ到達するまでの昇温は、一定速度で昇温してもよいし、段階的に昇温することもできる。
本発明においては、上述の凝集処理後の粒子凝集体表面に、必要に応じて樹脂微粒子を被覆(付着又は固着)してトナー母粒子を形成することもできる。粒子凝集体表面を樹脂微粒子で被覆することにより、帯電性や耐熱性を向上できる場合がある。該樹脂微粒子の体積平均粒径は、好ましくは0.02〜3μm、より好ましくは0.05〜1.5μmである。樹脂微粒子としては、前述の重合体一次粒子に用いられるモノマーと同様なモノマーを重合して得られたもの等を用いることができるが、中でも多官能性モノマーを原料に含む架橋樹脂が好ましく、また、重合体一次粒子のTgよりも高いTg、好ましくは5℃以上高いTgをもつことが望ましい。
この樹脂微粒子は、通常、乳化剤により水又は水を主体とする液中に分散した分散液として用いるが、前記の帯電制御剤を凝集処理後に加える場合には、粒子凝集体を含む分散液に帯電制御剤を加えた後に樹脂微粒子を加えることが好ましい。
乳化重合凝集法においては、凝集で得られた粒子凝集体の安定性を増すために、凝集した粒子間の融着を起こす熟成工程を加えることが好ましい。該熟成工程の温度は、好ましくは一次粒子を構成するバインダー樹脂のTg以上、より好ましくは該Tgより5℃高い温度以上であり、また、好ましくは該Tgより80℃高い温度以下、より好ましくは該Tgより50℃高い温度以下である。また、熟成工程に要する時間は、目的とするトナーの形状により異なるが、一次粒子を構成するバインダー樹脂のTg以上に到達した後、0.1〜10時間保持することが好ましく、1〜6時間保持することが特に好ましい。
なお、乳化重合凝集法においては、上記凝集工程以降、好ましくは熟成工程以前又は熟成工程中の段階で、乳化剤を添加するか、凝集液のpH値を上げることが好ましい。ここで用いられる乳化剤としては、前記の重合体一次粒子を製造する際に用いることのできる乳化剤から1種以上を選択して用いることができるが、特に重合体一次粒子を製造した際に用いた乳化剤と同じものを用いることが好ましい。乳化剤を添加する場合の添加量は限定されないが、混合分散液の固形成分100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは3重量部以上であり、また、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下、更に好ましくは10重量部以下である。凝集工程以降、熟成工程の完了前の間に乳化剤を添加するか、凝集液のpH値を上げることにより、凝集工程で凝集した粒子凝集体同士の凝集等を抑制することができ、熟成工程後のトナー母粒子中に粗大粒子が生じることを抑制できる場合がある。
このような加熱処理により、凝集体における一次粒子同士の融着一体化がなされ、凝集体としてのトナー粒子形状も球形に近いものとなる。熟成工程前の粒子凝集体は、一次粒子の静電的あるいは物理的凝集による集合体であると考えられるが、熟成工程後は、粒子凝集体を構成する重合体一次粒子は互いに融着しており、粒子の形状も球状に近いものとすることが可能となる。この様な熟成工程によれば、熟成工程の温度及び時間等を制御することにより、一次粒子が凝集した形状である葡萄型、融着が進んだジャガイモ型、更に融着が進んだ球状等、目的に応じて様々な形状のトナーを製造することができる。
本発明における静電荷像現像用トナーは、前記の粒子の表面に、更に、重合体を主成分とする外層を、好ましくは0.01〜0.5μmの厚みで形成させることによって、カプセル化されたトナー母粒子とすることもできる。カプセル化トナー粒子における前記外層重合体のTgは70〜110℃であるのが好ましく、また、前記凝集(熟成)体粒子を構成する重合体のTgより高いことが好ましい。
本発明の製造方法は、こうして生成されたトナー母粒子を篩別する工程に特徴を有し、具体的には、該篩別工程がトナー母粒子の分散液を篩う工程を有することを特徴とする。
更に、本発明は、トナー母粒子の分散液を篩う工程を有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、上記工程に用いる篩上に存在する篩の目開き以上の粒子個数をY(個/cm2)、篩の目開きをM(μm)、篩の材質の線径をr(μm)としたときに、下記式(1)を満たすことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
Y ≦ {1/(M2+r2+2Mr)}×108×0.6 (1)
上記式(1)中の右辺は、篩の目開きをM(μm)、篩の材質の線径をr(μm)としたときの単位面積当たりの篩の開口数(個/cm2)の6割の値を示したものである。そして、篩上に存在する目開き以上の粒子個数Y(個/cm2)が右辺よりも小さければ、目が詰ることなくトナー母粒子の分散液を篩い続けられるのである。理論上では、全ての目が詰った場合、すなわち、Yが{1/(M2+r2+2Mr)}×108と等しくなった場合にトナー母粒子の分散液が篩いを抜けられなくなってオーバーフローする。しかしながら、ある程度篩の目が詰った段階で篩いを抜けていく排出量より供給量が上回るため、実際には60%程度目詰りした時にオーバーフローするのである。厳密には、トナー母粒子の分散液の供給量、供給速度、供給方法により、オーバーフローしてしまう目詰り割合は変化するが、静電荷像現像用トナーの製造方法にあっては、生産効率の点で60%程度が上限値である。そして、好ましくはこの値は50%以下であり、より好ましくは40%以下であり、更により好ましくは30%以下である。この値は0%であることが好ましいが、工業的見地から下限0.01%以上である。本発明は、上記式(1)を満足しながらトナー母粒子の分散液を篩う発明であり、篩上から溢れてしまうことなしに連続的に篩い続けることができるのである。
従って、トナー母粒子を製造し、そのトナー母粒子の分散液を篩うことによって、歩留まりよく、また効率的に静電荷像現像用トナーを製造することができる。
また、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法において、トナー母粒子の分散液を篩う工程において使用する篩は特に限定されるものではないが、目開き径に対して近い粒径を有する粒子あるいは目開き径相当の粒子の目詰まりを抑制するように、篩に特定の振動を与えて動的にうねる皺を形成し、目開き開口形状を変化させて、詰った粒子を篩の表面に排出させたり、篩に特定の振動を与えてトナー母粒子の分散液を篩の中心から外に向かって移動させながら篩うことが好ましい。このときの移動は渦を巻くように移動させることが特に好ましい。
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法においては、以下の1、2又は3の篩を配置した篩装置を使用することが好適である。
1.篩が、粒子が通過する篩の最小開口単位の形状が篩い工程中の振動によって静止状態に対して変化するものであることを特徴とする篩装置。
2.篩が、実質的に張力のかかっていないものであることを特徴とする篩装置。
3.篩が、主たる材質としてヤング率100GPa以下の材質で構成されており、該篩の固定部内の篩別用開口部の面積(S1)より、固定部内に存在する篩を平面に展開したときの面積(S2)の方が大きいものであることを特徴とする篩装置。
以下、篩の目詰まりを抑制することのできる、上記1.〜3.の本発明の篩装置について同順に詳細に説明する。
1.の篩装置は、粒子が通過する篩の最小開口単位の形状が、静止状態に対して篩別操作中に変化することを特徴とする篩装置である。篩の目詰まりとは、略固定された目開き開口部に粒子がはまり込み、その粒子が外れない状態のことをいい、上記1.の篩装置によれば、静止状態に対して篩別操作中に篩の目開き開口形状が変化するため、目詰まりを起こした粒子が抜ける、或いは、篩面上に浮上して、連続運転を可能にするのである。静電荷像現像用トナーの製造方法にあっては、篩面上に目つまりした粒子を浮上させることが好ましい。
篩別操作中に最小開口単位の形状を変化させる方法としては、温度等による材質の性質を変化させる方法や篩いを振動させ変形させる方法等が挙げられる。温度等により材質の性質が変化するものには、弾性率可変材料(例えば、特開平7−097526号公報に記載)等を使用することができる。また、篩いを振動させ変形させる方法としては、振動が篩の形状変化を誘発するように適宜設置するようにしてできる。
2.の篩装置は、篩が実質的に張力のかかっていない篩装置である。通常、篩装置においては、固定時に張力調整を行いながらふるい網を組み込んでおり、ふるい網の張力を均一にして張りムラがないようにするものであるが(例えば、特開平5−068946号公報、特開2000−343038号公報)、上記2.の篩装置は、それとは反対に張力をかけないことを特徴とするものである。張力をかけると、目開きが均一になり篩別能力は向上するが、篩の目開きの開口部(篩の最小開口単位の形状)が変化しないため目詰まりを発生し易くなる。本発明は、従来技術とは反対に、篩に張力をかけずゆったり設置することで目開きの開口部の形状を変化させることができ、目詰まりの発生を抑制できるものである。また、篩の破損防止にも効果がある。
3.の篩装置は、篩が主たる材質としてヤング率100GPa以下の材質で構成されており、該篩の固定部内の篩別用開口部の面積(以下、「S1」と略記する)より、固定部内に存在する篩を平面に展開したときの面積(以下、「S2」と略記する)の方が大きいものであることを特徴とする篩装置である。S1よりS2が大きい場合には、2.の篩装置同様、目開きの開口部の形状を変化させることができ、目詰まりの発生を抑制できる。S2は好ましくはS1に対して、1.000001倍〜5倍の範囲で大きいことが好ましく、1.00001倍〜3倍の範囲で大きいことが特に好ましい。上記範囲内であれば、篩が篩同士の重なりが大きくならず篩別能力を低下することなく篩うことができる。
更に、3.の篩装置によれば、主たる材質としてヤング率100GPa以下の材質で構成される篩を使用することにより、目開きの開口部の形状を変化させることができる。一方、ヤング率が100GPaを超える場合では、S1<S2という関係を満たしたとしても、効果的に目開きの開口部の形状を変化させることはできず、目詰りを誘発する場合がある。
また、上記篩を静止状態で篩の自重以上の張力をかけることなく引き上げたとき、該篩の固定部水平方向と引き上げた篩の為す角度が0度を越えることが好ましく、0.1度以上が特に好ましく、0.5度以上が更に好ましく、1度以上がより更に好ましい。上限値は、60度以下が好ましく、50度以下が更に好ましい。上記範囲内であれば、篩が篩同士の重なりが大きくならず篩別能力を低下することなく篩うことができる。
また、上記篩を静止状態で張力をかけることなく引き上げたとき、その篩の頂点から該篩の固定部水平方向への垂線を下ろしたときの最大高さ(以下、「最大たるみ高さ」と略記する)が、篩の最長径の1/1000以上が好ましく、1/500以上が更に好ましく、1/100以上が特に好ましい。また、上限値は特に限定されないが、篩の最長径以下であることが好ましく、篩の最長径の1/2以下であることが更に好ましい。
本発明には、湿式篩が用いられる。本発明における湿式篩とは、分散液を通過させることによって、通過可能な粒子と通過不可能な粒子とを分別することが可能な篩を意味する。本発明において分散液を構成する液体は限定されず、水、有機液体、これらの混合液若しくは懸濁液等の何れであってもよいが、前記の通り湿式法で生成されたトナー母粒子の水系分散液を、トナー母粒子の濾別前にそのまま用いることが好ましい。
本発明の製造方法においては、篩は振動させながら用いられるが、振動させる方式については特に限定はなく、機械的な振動のほか、超音波により振動を付与することもできる。このように篩を振動して用いることにより、篩別効率が向上するとともに、篩の目詰まりを抑制できる傾向にあるので好ましい。また、中でも機械的な振動であることが、上記効果がより顕著に得られる点で特に好ましい。
本発明においては、トナー母粒子の分散液を、篩の中心から外に向かって渦を巻くように移動させながら篩うことが好ましい。すなわち、トナー母粒子の分散液が上記のように移動するように篩に振動を与えることが好ましい。渦は、篩い上の分散液の滞留時間を最も長くするように巻かせることが好ましい。
また、本発明においては、篩い工程中に篩に振動を与えて、篩に動的にうねる皺を形成させることが好ましい。また、篩の材質は、篩い工程で篩に振動が与えられたとき、動的にうねる皺ができるような材質が好ましい。かかる動的にうねる皺によって、篩の目開きの開口部の形状が変化して、目詰った粒子を篩面上に浮上させて除去できるのである。
また、かかる振動は、偏心重りの回転により発生させることが、上記篩別効果がより顕著に得られる点で好ましい。また、上記渦を巻きながら移動する性質を有する振動が得られ易いという点からも好ましい。以下、このように篩いに振動を与える方式を「偏心重り方式」と略記する。
偏心重り方式は、篩の振動が、篩の中心軸と回転軸を共通にするモーターの回転によって得られるものであって、その重心を回転軸からずれるように回転軸に固定された少なくとも2個の偏心重りにより得られるものが好ましい。
偏心重り方式を用いて篩を振動させるための装置としては、例えば、晃栄産業株式会社製佐藤式振動ふるい機、直下排出型振動ふるい機、解砕機構付振動ふるい機、高振動タイプ振動ふるい機等が挙げられる。
偏心重り方式の中でも、2個の偏心重りを用い、「第1の重りが回転軸に固定されている点と第1の重りの重心を結ぶ直線」及び「第2の重りが回転軸に固定されている点と第2の重りの重心を結ぶ直線」とがなす捻れ角(以下、「位相角」と略記する)が、特定の範囲となるように回転軸に固定されているものが好ましい。また、2個の偏心重りは、回転軸に対して、それぞれ垂直面上に固定されていることが好ましい。
位相角は、5°以上、好ましくは10°以上、より好ましくは15°以上であることが望ましく、また、30°以下、好ましくは25°以下、より好ましくは20°以下で行うことが望ましい。篩操作における位相角が5°未満であると、篩う対象のトナー母粒子が篩の中心から外周方向へ直線的に移動する(曲率半径が大きい)傾向にあるため、本来篩い下の製品となるべき粒子が粗粒と共に機外へ排出され歩留まりロスが発生し、篩別効率が低下する場合がある。また位相角が30°を超えると、篩う対象のトナー母粒子が篩の外周から中心方向へ移動する(曲率半径が小さすぎる又はない)傾向にあるため、粗粒が機外へ排出されず目詰まりし、篩別効率が低下する場合がある。位相角が前記範囲であれば、篩う対象としてのトナー母粒子が、篩面上で中心から外周へ向かって渦巻き運動を生じる傾向にあるので、均一かつ精度の高い篩別が可能となるとともに、目詰まりも起こし難い傾向にある。
篩の形態は特に限定されず、直交網目状、斜交網目状、蛇行網目状、亀甲状等の網目による篩や、不織布のような3次元に隙間を構成する形態のもののほか、多孔質材料や中空糸のように実質的に粗粒が通過不可能な篩機能を有するものであれば、何れも適用することができる。中でも、網目による篩(以下、「網目篩」と略記する)を用いることが、篩別効率が良好である点で好ましい。
篩本体の外形状も特に限定はないが、網目篩の場合は、円形であることが篩別効率の点で好ましい。また、篩別操作は1段で行っても多段で行ってもよい。粗粒が多く存在する場合は、目開きの異なる篩を多段で設置することが好ましい。
本発明において、篩の目開きについては特に限定はないが、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上が更に好ましい。篩の目開きが小さすぎると、歩留まりの悪化により所望の粒径のトナーを効率良く得ることが困難になる場合があり、また、篩の目詰まりを生じやすい傾向にある。また、篩の目開きは、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。篩の目開きが大きすぎると、篩い下側へ粗粒の飛び込む確率が増し、粗粒を効率良く除去することが困難な傾向にあり、製品の品質上好ましくない場合がある。ここで、篩の目開きとは、網目を構成する材質間の間隙距離を意味する。
本発明において、篩の材質は限定されず、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、アクリル樹脂等の樹脂;綿布等の天然繊維;ステンレス等の金属等が挙げられる。中でも、長時間使用しても、折り曲げに対し耐久性が持続でき、耐酸性の樹脂性のものが好ましく、特にポリエステル樹脂製のものが好ましい。
また、ヤング率で表わせば、上限値としてヤング率100GPa以下の材質を主として構成されるものが好ましく、特に好ましくは50GPa、更に好ましくは10GPaである。また下限値は、0GPa以上、特に好ましくは3.0GPa以上である。上記範囲内であれば、折り曲げに対しての耐久性、及び、篩の目開きの開口部の形状を振動により変化させる際の変化率のバランス等に特に優れる。
また、篩が線状物を編んで構成されている場合には、かかる線状物の線径は、下限値として好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上、より更に好ましくは25μm以上であり、上限値として好ましくは100μm以下であり、更に好ましくは80μmであり、より更に好ましくは70μmである。また、線状物を編んで構成されていない場合でも、篩の厚さが上記範囲であることが好ましい。ヤング率及び/又は線径等が上記範囲に入っているときには、篩に動的にうねる皺を形成させ易く、折り曲げに対しての耐久性、及び、篩の目開きの開口部の形状、すなわち篩の最小開口単位の形状を振動により変化させ易い。
また、本発明の篩装置では、そこに設置される篩が下に垂れないようにするため、該篩を支持する篩(以下、「支持篩」と略記する)により支えられることが好ましい。該支持篩としては、該篩が垂れ下がらない程度の強度があればよく、篩の破損防止、均一な篩別を行うため、篩別には影響しない形状、すなわち篩より目開きが大きい支持篩で保持することが好ましい。市販の振動篩機の篩を前記支持篩として、その上に上記篩を設置することも好ましい。上記支持篩の存在により、より効果的に動的にうねる皺を形成することもできる。また、主たる材質としてヤング率100GPaを越える材質で構成される篩や分厚い樹脂のパンチング・プレートを使用した篩を支持篩として使用することもできる。中でも、主たる材質としてヤング率100GPaを越える材質で構成される篩を支持篩として用いることが特に好ましい。
該篩別工程に供するトナー母粒子の分散液は、乳化剤又は懸濁安定剤を所定量含有することが望ましく、分散液全体に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上含有されていることが望ましい。乳化剤又は懸濁安定剤の含有量が少なすぎると、篩別工程におけるトナー母粒子が凝集する傾向にあり、篩の目詰まりが促進されるので好ましくない。乳化剤又は懸濁安定剤の含有量の上限は限定されないが、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下であることが望ましい。
該篩別工程に供する分散液全体に対するトナー母粒子の濃度は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは30質量%以下であることが望ましい。分散液中のトナー母粒子の濃度が前記範囲であると、篩の目詰まりを起こさずに効率よく篩別できる傾向にあるので好ましい。
こうして分散状態で篩別されたトナー母粒子は、コールターカウンターにより測定した粒径25μm以上の体積分率が、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.1%以下、特に好ましくは0.05%以下であることが望ましい。粒径25μm以上の粗粉は全く存在しないのが最も好ましいが、通常は0.5%以上である。更に、粒径15μm以上の体積分率が、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、更に好ましくは0.1%以下であることが望ましい。粒径15μm以上の粗粉も全く存在しないのが最も好ましいが、通常は1%以上である。これは、粗粒が一定量より少ないことを意味しているが、本発明によれば、粗粒が少ないトナー母粒子を製造することができるので、連続現像の際のトナーの消費量が少なく、画質が安定する傾向にある。また、白斑・白スジ・トナー飛散等の画像欠陥もない。
上記の通り、湿式法により生成されたトナー母粒子を、分散状態で篩別することにより、効率よく粗粒を除去することができる。特に、後述する外添工程の後に得られたトナーを乾式篩、気流分級機等の装置を用いて篩別・分級する方法と比較し、あらかじめトナー母粒子を分散状態で篩別することにより、規格外品となるトナーの量を削減することが可能であるとともに、洗浄時のフィルターの目詰まり防止等が可能となる。また、あらかじめトナー母粒子を分散状態で篩別しておけば、弱い凝集力で凝集しているトナー母粒子であれば懸濁液中で解砕することができる。この効果は、篩を振動させることにより、更に顕著に発揮することができる。また、凝集したトナー母粒子を乾燥後に解砕しようとすれば、解砕工程のための設備が必要となり製造効率が低下するとともに、目的のトナー母粒子も破砕されてしまう場合があるが、本発明の製造方法を用いればそのようなことは起こらず、所望外の粗粒のみを効率よく除去することができる。
本発明の製造方法は、湿式法により得られたトナー母粒子を洗浄する洗浄工程を経ることができる。洗浄に用いる液体としては、(a)懸濁重合法、(b)乳化重合凝集法、(c)溶解懸濁法等における最終工程においてトナーを浸漬している水をより純度の高い水に置換することのみによって行うこともできるが、酸又はアルカリの液又はこれらの水溶液で洗浄することもでき、具体的には、例えば硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸やクエン酸等の有機酸を用いることができる。また、該洗浄は常温のみならず加熱して行うこともでき、これらの方法を組み合わせて用いることもできる。このような洗浄工程を経ることによって、懸濁安定剤や乳化剤、溶剤、未反応の残存モノマー、所望より小粒径のトナー等を低減、除去することができるため好ましい。該洗浄工程は、洗浄する液体を、例えば濾過、デカンテーション等することによってトナー母粒子を濃縮或いはウエットケーキ状とし、これに新たに洗浄するための液体を加えてトナー母粒子を分散する操作を繰り返すことが好ましい。また、洗浄後のトナー母粒子は、ウエットケーキ状に回収することが、引き続き行われる乾燥工程における取り扱いの面で好ましい。
本発明の製造方法において、前記洗浄工程は、分散液を篩う工程の前に行っても後に行ってもよいが、後に行うことが好ましい。分散液を篩う工程すなわち粗粒除去工程の前に洗浄を行う場合は、洗浄時の濾材に目詰まりを生じる場合がある。また、洗浄によって懸濁安定剤や乳化剤の含有量が低下するために、トナー母粒子の凝集が促進される場合がある。
こうして洗浄、乾燥して得られたトナー母粒子の体積平均粒径は、好ましくは、3〜15μm、より好ましくは5〜10μmの範囲である。
トナー母粒子の形状は、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定した50%円形度が、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.92以上、更に好ましくは0.94以上である。50%円形度が0.90未満の場合は、外添剤の付着不良による帯電悪化から画像濃度の低下を引き起こす場合がある。また、該50%円形度は、0.98以下であることが望ましい。50%円形度が0.98を超えるとクリーニング不良となる場合がある。
また、トナー母粒子のDSC法によるTgは、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下であることが望ましい。Tgが前記範囲である場合、トナーの保存性、定着性が良好となるため望ましい。ここで、トナー母粒子のTgが他の成分に基づく熱量変化、例えばワックスの融解ピークと重なるために明確に判断できない場合には、このような他の成分を除いた状態でトナーを作成した際のTgを意味するものとする。
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法においては、流動性や現像性を制御する為に、トナー母粒子表面に固体微粒子等の公知の外添剤が添加されていてもよい。
本発明で使用する外添剤としての固体微粒子は、各種無機又は有機微粒子の中から適宜選択して使用することができる。無機微粒子としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム等の各種炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ケイ素等の各種窒化物、ホウ化ジルコニウム等の各種ホウ化物、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化セリウム、シリカ、コロイダルシリカ等の各種酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の各種チタン酸化合物、リン酸カルシウム等のリン酸化合物、二硫化モリブデン等の硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素等のフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の各種金属石鹸、タルク、ハイドロタルサイト、滑石、ベントナイト、各種カーボンブラックや導電性カーボンブラック、マグネタイト、フェライト等を用いることができる。有機微粒子としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂等の微粒子を用いることができる。また、固体微粒子は、前記の無機又は有機微粒子の表面を、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコンオイル、変性シリコンオイル、シリコンワニス、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系シリコンオイル、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤等の処理剤によって疎水化等の表面処理が施されているものを使用することもでき、該処理剤は2種以上を併用することもできる。
これら固体微粒子の中では、特にシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、各種カーボンブラックや導電性カーボンブラック等が好適に使用され、特に、疎水化されたシリカが好ましい。
また、前記固体微粒子は、異なる2種以上を併用することもでき、表面処理されたものと表面処理されていないものを併用することや、異なる表面処理がされたものを併用することもでき、正帯電性のものと負帯電性のものを適宜組み合わせて使用することもできる。なお、前記の帯電制御剤を外添剤として用いることもできる。
固体微粒子の平均一次粒子径は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、通常500nm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下であることが望ましい。また、前記粒径範囲において異なる粒径のものを併用することもできる。固体微粒子の平均粒径は電子顕微鏡観察により求めるか、BET法による比表面積から換算することができる。
固体微粒子の添加量は、トナー母粒子100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、更に好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは6重量部以下、より好ましくは5重量部以下、更に好ましくは4重量部以下であるのが望ましい。添加量が前記範囲未満では、静電荷像現像用トナーとして用いたときに、流動性が悪化してトナー消費の不良等が発生することがあり、一方、前記範囲超過では、フィルミングによる画質不良や白斑が発生する場合がある。
本発明において、前記トナー母粒子の表面に外添剤を添加する際の装置や混合条件に制約は無い。外添工程に用いる前記混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、V型ミキサー、ダブルコーンミキサー、ドラム型ミキサー等が挙げられ、中でもヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌型の混合機が好ましい。
また、外添方法として、圧縮剪断応力を加えることのできる装置(以下、圧縮剪断処理装置という)やトナー母粒子表面を溶融又は軟化することのできる装置(以下、粒子表面溶融処理装置という)等を用いた固着処理を行うこともできる。このような固着処理を前記の混合、乾燥工程と併用することにより、トナー母粒子の実質的な粉砕を伴うことなく、固体微粒子がトナー母粒子表面に強固に添着されるため、高温保存下での耐ブロッキング性が向上し、連続実写時にも複写機/プリンター部材への融着の起こりにくいトナーを製造することができる場合がある。
前記圧縮剪断処理装置は、一般に、間隔を保持しながら相対的に運動するヘッド面とヘッド面、ヘッド面と壁面、あるいは壁面と壁面によって構成される狭い間隙部を有し、被処理粒子が該間隙部を強制的に通過させられることによって、実質的に粉砕されることなく、粒子表面に対して圧縮応力及び剪断応力が加えられるように構成されている。このような装置としては、例えばホソカワミクロン社製のメカノフュージョン装置等が挙げられる。また、前記粒子表面溶融処理装置は、一般に、熱風気流等を利用し、母体微粒子と外添微粒子の混合物を母体微粒子の溶融開始温度以上に瞬時に加熱し外添微粒子を固着できるように構成される。このような装置としては、例えば日本ニューマチック社製のサーフュージングシステム等が挙げられる。
外添後のトナーは、乾式の分級操作を行ってもよく、トナーの分級に適用可能な公知の方法を用いることができる。
こうして、本発明の製造方法により得られる静電荷像現像用トナーは、体積平均粒径(Dv)は好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上、更に好ましくは5μm以上が望ましい。又、好ましくは9μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下が望ましい。体積平均粒径が9μmを超えると高解像度の画像形成に適さない場合があり、3μm未満では粉体としての取り扱いが困難な傾向にある。
また、本発明の製造方法で得られる静電荷像現像用トナーは、粗粒が少なく粒度分布のシャープなものを得ることができ、粒子個体間の帯電性が均一になる傾向にあり、高画質及び高速化を達成するための静電荷像現像用トナーとして好ましい。具体的には、体積平均粒径(Dv)を個数平均粒径(Dn)で除した値(Dv/Dn)が、好ましくは1.0〜1.25、より好ましくは1.0〜1.20、更に好ましくは1.0〜1.1であり、1.0に近い方が望ましい。なお、静電荷像現像用トナーの粒子径は、精密粒度分布測定装置コールターカウンター、マルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用いて測定したものである。
また、本発明の製造方法で得られる静電荷像現像用トナーは、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(シスメックス社製)により測定した粒径0.6〜2.12μm粒子の含有率が、好ましくは全トナー粒子数の15個数%以下、より好ましくは10個数%以下、更に好ましくは5個数%以下であることが望ましい。これは、微粉が一定量より少ないことを意味しているが、微粉が少ない場合にはトナーの流動性が向上し、かつ帯電性が均一となる傾向にある。該微粉は全く存在しないのが最も好ましいが、実際の製造上は困難であり、除去工程に設備も要することから、通常は0.5個数%以上、好ましくは1.0個数%以上である。
また、本発明の製造方法で得られる静電荷像現像用トナーは、コールターカウンターにより測定した粒径25μm以上の体積分率が、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.1%以下、特に好ましくは0.05%以下であることが望ましい。粒径25μm以上の粗粉は、実質的に存在しないのが最も好ましい。更に、粒径15μm以上の体積分率が、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、更に好ましくは0.1%以下であることが望ましい。粒径15μm以上の粗粉も実質的に存在しないのが最も好ましい。これは、粗粉が一定量より少ないことを意味しているが、本発明によれば、粗粉が少ないトナーを製造することができるので、連続現像の際のトナーの消費量が少なく、画質を安定にさせることができる。
また、静電荷像現像用トナーの形状は、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定した50%円形度が、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.92以上、更に好ましくは0.94以上である。50%円形度が前記範囲未満の場合は、外添剤の付着不良による帯電悪化から画像濃度の低下を引き起こす場合がある。また、該50%円形度は、0.99以下、好ましくは0.98以下であることが望ましい。50%円形度が前記範囲超過の場合はクリーニング不良となる場合がある。
また、本発明における静電荷像現像用トナーのTHF可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)におけるピーク分子量のうち少なくとも1つが、好ましくは30000以上、より好ましくは40000以上、更に好ましくは50000以上であり、好ましくは200000以下、より好ましくは150000以下、更に好ましくは100000以下であることが望ましい。ピーク分子量が前記範囲より低い場合は、非磁性一成分現像方式における機械的耐久性に難があり、ピーク分子量が前記範囲より高い場合は、低温定着性や定着強度が悪化し、フルカラートナーとしての透明性も低下するので好ましくない。
本発明の製造方法で得られる静電荷像現像用トナーは、トナーを磁力により静電潜像部に搬送するためのキャリアとしてのフェライト、マグネタイト等の磁性粉を共存させた磁性二成分現像剤用、又は、それらの磁性粉をトナー中に含有させた磁性一成分現像剤用、或いは、現像剤に磁性粉を用いない非磁性一成分現像剤用の何れに用いてもよいが、本発明の効果を顕著に発現するためには、特に非磁性の現像剤として用いるのが好ましい。また、本発明で得られるトナーは、トナー中に存在する粗粒が極めて少ないため、トナーと画像形成装置を構成する部材との接触機会が多い画像形成方法、例えば非磁性一成分現像方式や、接触現像方式による画像形成方法に用いるトナーとして好適に用いることができる。
また、本発明の製造方法で得られる静電荷像現像用トナーは、黒色トナー用、カラートナー用、フルカラートナー用の何れにも好適に用いることができる。
なお、前記磁性二成分現像剤として用いる場合には、トナーと混合して現像剤を形成するキャリアとしては、公知の鉄粉系、フェライト系、マグネタイト系キャリア等の磁性物質又は、それらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性樹脂キャリアを用いることができる。キャリアの被覆樹脂としては、一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が利用できるが、これらに限定されるものではない。キャリアの平均粒径は、特に制限はないが10〜200μmの平均粒径を有するものが好ましい。これらのキャリアは、トナー1重量部に対して5〜100重量部使用する事が好ましい。
以上の通り、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法によれば、湿式法によってトナー母粒子を効率よく製造することができ、しかも得られるトナー母粒子中に存在する粗粒が極めて少ないため、画像特性、画質、現像装置の耐傷付き性に優れた静電荷像現像用トナーを製造することができる。
以下、本発明の画像形成装置、画像形成方法について、非磁性一成分現像を例にして説明する。本発明に用いる画像形成装置は、トナー供給ローラ、層厚規制部材、現像ローラ、トナー攪拌部材等から選択される部材及び本発明の熱定着用トナー等から構成される。また、本発明における画像形成装置は、カートリッジ式であるものが好適に使用できる。
非磁性一成分現像を行う際は、通常、層厚規制部材によって現像ローラ上の現像剤の層厚を規制し、この際に現像剤と層厚規制部材とが接触摩擦することによって現像剤が帯電する。なお、層厚規制部材は、現像ローラを押圧するものであっても非接触のものであってもよいが、現像ローラを押圧するものである方が現像剤に対し効率的に帯電を付与する点で好ましい。また、本発明の現像ローラは、感光体と非接触の現像方式に用いても、接触する現像方式に用いてもよいが、接触方式である方が現像効率を高める点で好ましい。
前記の通り、本発明の静電荷像現像用トナーは、画像特性、画質が良好で、5000枚以上、特に10000枚以上複写した時、本発明の静電荷像現像用トナーの優れた効果が顕著に現れる。また、本発明の熱定着用トナーを有する画像形成装置は、長時間の現像処理においても現像ローラ等現像装置に傷が付かず、トナー飛散もなく、消費量も少ないものである。
以下、本発明を実施例等により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例等で「部」とあるのは「重量部」を意味し、「%」とあるのは「質量%」を意味する。
実 施 例 1
[重合体一次粒子分散液の製造]
攪拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えたガラス製反応器に、脱イオン水367部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下、「DBS」と略記する)0.268部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温した。その後、下記の開始剤−1を添加し、次いで下記のモノマー類及び乳化剤を5時間かけて添加した後、開始剤−2を6時間かけて添加して乳化重合を行った。
<モノマー類>
スチレン 77 部
アクリル酸ブチル 23 部
アクリル酸 2.0部
トリクロロブロモメタン 1.2部
ヘキサンジオールジアクリレート 1.3部
<乳化剤>
DBS 0.25部
脱イオン水 22 部
<開始剤−1>
8%過酸化水素水溶液 0.13部
8%アスコルビン酸水溶液 0.13部
<開始剤−2>
8%過酸化水素水溶液 0.72部
8%アスコルビン酸水溶液 0.72部
重合反応終了後、冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液を得た。得られた重合体一次粒子の平均粒径は0.160μm(マイクロトラック社製UPAで測定)、重量平均分子量(Mw)は10万、ピーク分子量(Mp)は4.5万であった。
[凝集工程、熟成工程(トナー母粒子の製造)]
重合体一次粒子分散液 100 部(固形分として)
黒色色素(MA100乳化液:日本カーバイト社製) 6.7 部(固形分として)
塩化ナトリウム1.0%水溶液 4.0 部(固形分として)
DBS 0.02部
ワックス(HYTEC E−433N:東邦化学社製)5.0 部
上記原料を混合し、攪拌しながら25℃より50℃まで1℃/分で昇温した後に50℃で2時間保持し、60℃に昇温して2時間保持後、更に30分保持した後にDBSを添加して凝集工程を終了した。次いで、72℃に昇温して1時間保持し、80℃に昇温して1時間保持、90℃に昇温して5時間保持して熟成工程を行った後、常温まで冷却してトナー母粒子分散液Aを得た。
トナー母粒子分散液Aの固形分濃度は19.5質量%であり、精密粒度分布測定装置コールターカウンター、マルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)(以下、「コールターカウンター」と略記する)で測定した体積平均粒径は7.1μm(偏差計数25%)、25μm以上の体積分率は1%であった。このとき、上記体積平均粒径は、分散媒に同社製アイソトンIIを用い、分散質濃度0.03質量%になるように分散させて測定した。
また、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000で測定した50%円形度は0.96、ピーク分子量(Mp)は4.4万であった。このとき、上記50%円形度は、以下のように測定し、以下のように定義する。すなわち、トナー母粒子を分散媒(アイソトンII、ベックマンコールター社製)に、5720〜7140個/μLの範囲になるように分散させ、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社(旧東亜医用電子社)製、FPIA2100)を用いて、以下の装置条件にて測定を行い、その値を「平均円形度」と定義する。本発明においては、同様の測定を3回行い、3個の「平均円形度」の相加平均値を、「平均円形度」として採用する。
・モード :HPF
・HPF分析量 :0.35μL
・HPF検出個数:2000〜2500個
[篩別工程]
固形分濃度19.5質量%のトナー母粒子分散液Aを、篩面の直径(すなわち「固定部内の篩別用開口部」の直径)700.0mmの円形篩を用いた晃栄産業社製佐藤式振動ふるい機によって、湿式の篩別を行った。篩は、ポリエステル製(SEFAR社製)の、目開き24μmの格子網目状のものを1段で用い、篩面に張力をかけずに、上記円形篩を支持篩として用い、その上に設置した。また、振動篩の位相角は20°とした。
上記篩の固定部内の篩別用開口部の面積(S1)は、π×0.35002=0.38485m2であり、また、固定部内に存在する篩を平面に展開したときの面積(S2)は0.38547m2であった。また、上記篩の目開きは、24μmであり、上記篩を構成するポリエステルのヤング率は3.9GPaであり、格子網目を形成する線状物の線径は、42μmであった。この篩を静止状態で張力をかけることなく引き上げたところ、該篩の固定部水平方向と引き上げた篩の為す角度は3.3度であった。また、この篩を静止状態で張力をかけることなく引き上げたときの最大たるみ高さは20mmであった。
また、上記ヤング率はASTM D882−64Tにより求めた。
トナー母粒子の分散液の供給速度は1m3/hとした。トナー母粒子を篩う工程中、上記篩には皺が発生しており、その皺は動いていた。すなわち、ある場所に発生した皺は消滅したり、また別の場所に皺が発生したりしており、動的にうねる皺を形成していた。また、工程中、篩に与えられた振動によって、トナー母粒子の分散液は、篩の中心から外に向かって移動していた。
目開き24μm(M=24)、線径42μm(r=42)であるから、式(1)において、
右辺={1/(242+422+2×24×42)}×108×0.6
=13774(個/cm2)
であり、一方、式(1)における左辺(篩上に存在する篩の目開き以上の粒子個数をY(個/cm2))については、10回、時間と場所を変えて測定した結果、その10回の平均値が、1300(個/cm2)であった。
このとき、Yは以下の方法により求めた。すなわち、分散媒(パーティクルシース液、シスメックス社製)50mlに、篩に導入する前のトナー母粒子の分散液0.5mlを分散し、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製、FPIA2100)を用いて、以下の装置条件にて篩の目開き以上の粒子個数を測定した。
・モード :LPF
・LPF分析量 :0.35μL
・LPF検出個数:篩の目開き以上の粒子個数
上記結果より、篩に導入する前のトナー母粒子の分散液に含まれる篩の目開き以上の粒子個数濃度P(個/ml)を算出した。
次いで、篩へトナー母粒子の分散液を供給してから篩を通過することなく篩の外へ排出されるまでの時間を計測し、篩上のトナー母粒子の分散液の滞留量を求め、前記滞留量を篩の面積で除して単位面積あたりの原料滞留量Q(ml/cm2)を算出した。
そして、単位面積あたりの原料滞留量Q(ml/cm2)に篩の目開き以上の粒子個数濃度P(個/ml)を積して、篩上に存在する篩の目開き以上の粒子個数(Y)を算出した。そして、同一試料に対して同様の測定を3回行い、その平均値を採用した。
また、篩の最小開口単位の形状(目開きの開口部の形状)は、静止状態では一辺が24μmの略正方形であったが、篩い工程中、目視により観察したところ、3次元的に動的にうねる皺が観察されることから、その形状は篩い工程中の振動によって静止状態(略平面正方形)に対して、3次元的に変形していた。篩の物性と状態は表2にまとめた。
篩別後のトナー母粒子のコールターカウンターで測定した体積平均粒径は7.1μm(変動係数25%)、25μm以上のトナー母粒子の体積分率は0.03%、15μm以上のトナー母粒子の体積分率は0.08%、FPIA−2000で測定した50%円形度は0.95であった。
[洗浄工程]
容器内下部の分離式濾盤に濾布(ポリプロピレン製、通気量5cc/cm2・分)を取り付けたフィルタードライヤー(タナベウィルテック社製:TR−25F型、濾過面積0.24m2)に、トナー母粒子分散液Aを固形分として26.2部移送した。この時の分散液の導電度をラコムテスター(Eutech Inst. Pte. Ltd社製)で測定すると15.4m
S/cmであった。
次に容器内を密閉して、1.9kg/cm2に加圧後、濾盤下にある排水コックを開き加圧下で濾過を行った。この時、容器内の攪拌翼は液面より上に移動させておき、濾過の進捗に伴いケーキ面が現れて来たら、5rpmで回転させながら攪拌翼をケーキ面に押しつけて水を押し切った(以後、この操作を「スムージング」と略記する)。
次に、容器内へ脱イオン水(導電度0.5μS)30部と2wt%のクエン酸水溶液0.3部とを加えて、30rpmで攪拌しながらケーキを再分散し、1時間攪拌後、再び加圧濾過、スムージングを行った。この時の排水の導電度は、1.05mS/cmであった。再度クエン酸水溶液を含有する水洗浄を同条件で行うと、排水の導電度は480μS/cmに低下した。
更に、脱イオン水30部のみで攪拌洗浄(30rpm/15分)を行い、同条件で加圧濾過・スムージングを行った。水のみによる洗浄を8回繰り返した。8回の洗浄の際の排水の導電度は順に、70.5μS/cm、35.2μS/cm、18.0μS/cm、11.6μS/cm、8.0μS/cm、6.5μS/cm、4.2μS/cm、2.9μS/cmであった。この時の含水率は30%であった。
また、コールターカウンターで測定したトナー母粒子の体積平均粒径は7.1μm(変動係数25%)、25μm以上の体積分率は0.01%であった。また、形状はフロー式粒子像分析装置FPIA−2000で測定すると50%円形度が0.96であった。
[乾燥工程]
次いで、フィルタードライヤーの装置外周のジャケット部及び攪拌翼内に温水を流し、内部温度が43℃になるように調整し、30rpmで攪拌しながら系内を減圧(600〜1300Pa)してトナー母粒子を乾燥した。このとき、真空側にはバグフィルター(テトロン製、通気量300cc/(cm2・分))と窒素ガスの噴出弁を備えた経路を設け、乾燥トナーの真空側への飛散を防止し、一定時間毎にフィルターに窒素ガスをパルス噴射して容器内に飛散したトナー母粒子を戻すようにした。10時間加熱真空乾燥後、温度を下げて乾燥窒素で復圧してから缶体側部の排出口を開け、攪拌翼を回転させてトナー母粒子を排出口から押し出すように取り出した。この時の仕込み固形分に対する回収率は94%、トナー母粒子の含水率は0.5%であった。
[外添工程]
トナー母粒子の乾燥品に、疎水化処理したシリカ(Wacker−Chemie
HmbH社製、商品名「Wacker HDK H30TD」;平均粒子径0.008μm)0.1部(トナー母粒子に対し0.4部)を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより静電荷像現像用トナーを得た。
得られた静電荷像現像用トナーのコールターカウンターで測定した体積平均粒径は7.1μm(変動係数25%)、25μm以上の体積分率は0.03%、15μm以上の体積分率は0.08%、FPIA−2000で測定した50%円形度は0.95であり、洗浄処理前とほぼ同一の粒径、粒径分布、形状であった。
[実写試験]
得られた静電荷像現像用トナーについて、カシオ社製N4改造機(感光体が有機感光体である非磁性一成分方式の画像形成装置)を用い、印字率5%にて連続実写試験を行った。得られた定着画像の画像濃度(ID)はX−rite938(C光源)で測定し、トナーの帯電量はTREK社製q/mメーター(Model1210HS)で測定した。それぞれ、印刷初期及び5千枚印刷時において測定した。結果を表3にまとめた。
初期のIDは1.6、帯電量は−15.8μC/g、5千枚印刷後におけるIDは1.5、帯電量は−14.5μC/mであり、10千(1万)枚後も安定した特性、良好な画質が形成された。
また、定着画像において、トナーのボタ落ち(静電潜像の現像部位以外に斑点状等のトナー定着が見られる現象)を以下の基準で評価したところ、10千枚までボタ落ちが発生しなかった。
10千枚までボタ落ち発生なし :○
6千〜10千枚でボタ落ち発生 :△
6千枚未満でボタ落ち発生 :×
比 較 例 1
湿式の篩別工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして静電荷像現像用トナーを得た。
この静電荷像現像用トナーについて、コールターカウンターで測定した25μm以上の粒子の体積分率は、1.5%であった。また、実施例1と同様の方法で実写試験を行ったところ、粗粒群が原因と思われる黒芯、白芯、白スジ、トナー飛散等の不具合が見られた。結果を表3にまとめた。
比 較 例 2
湿式の篩別工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして外添工程まで行った。得られた外添粒子について、超音波式篩(ラッセル社製バイブラソニック モデルC600型)で、200メッシュの篩を用いて篩別を行い、静電荷像現像用トナーを得た。
この静電荷像現像用トナーについて、コールターカウンターで測定した25μm以上の粒子の体積分率は、0.9%であった。得られた静電荷像現像用トナーを用いて、実施例1と同様の方法で実写試験を行ったところ、粗粒群が原因と思われる黒芯、白芯、白スジ、トナー飛散等の不具合が見られた。結果を表3にまとめた。
また、200メッシュより目開きが細かい網を用いて篩別を試みたが、粒子同士の凝集により、目開きより小さく製品となるべきトナー粒子の大半が粗粒と共に篩上から系外へ排出されてしまい、歩留まりが実用的なレベルではなかった。
比 較 例 3
湿式の篩別工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして乾燥工程まで行った。得られたトナー母粒子について、外添前に気流式分級機(アルピネ社製325TSP)を用いて粗粉分級を行った。その後、実施例1と同様に外添工程を行い、静電荷像現像用トナーを得た。
この静電荷像現像用トナーについて、コールターカウンターで測定した25μm以上の粒子の体積分率は、0.6%であった。得られた静電荷像現像用トナーを用いて、実施例1と同様の方法で実写試験を行ったところ、粗粒群が原因と思われる黒芯、白芯、白スジ、トナー飛散等の不具合が見られた。結果を表3にまとめた。
比 較 例 4
粗粉分級を外添前ではなく、外添後に行った以外は比較例3と同様にして静電荷像現像用トナーを得た。
この静電荷像現像用トナーについて、コールターカウンターで測定した25μm以上の粒子の体積分率は、0.3%であった。
得られた静電荷像現像用トナーを用いて、実施例1と同様の方法で実写試験を行ったところ、粗粒群が原因と思われる黒芯、白芯、白スジ、トナー飛散等は、比較例3より若干改善されたが、実施例1には遠く及ばなかった。また、気流分級中に起こったと考えられる外添剤の剥離に起因する画像濃度不足・カブリ等の画像欠陥が見られた。結果を表3にまとめた。
比 較 例 5
粗粉分級を実施例1と同様に湿式ではあるが、篩をポリエステル製の目開き24μm、線径42μmの格子網目状のものに代えて、目開き25μm、線径23μmの金属(SUS304)製のものにし、中央部に20N/cmテンションをかけて張った以外は実施例1と同様に粗粒分級を行ったところ、篩上の粗粒粒子数は運転時間と共に上昇を続け、運転開始10分後26500個/cm2を超えたところで篩全面が目詰まりし、分散液が粗粒排出口からオーバーフローし連続運転が不可能であった。また、オーバーフロー発生後、一旦運転を止め、篩上の粗粒を水洗により除去した後、再運転を繰り返したところ、累積運転時間で4時間目にて篩が疲労で切れ、運転継続不能となった。
目開き25μm(M=25)、線径23μm(r=23)であるから、式(1)において、
右辺={1/(252+232+2×25×23)}×108×0.6
=26041(個/cm2)
であり、一方、式(1)における左辺(篩上に存在する篩の目開き以上の粒子個数をY(個/cm2))については、上記のように26500個/cm2を超えてしまったので、26041個/cm2より大きい値となった。
上記金属製の篩の固定部内に存在する部分を平面に展開したときの面積(S2)は0.38485m2であり、固定部内の篩別用開口部の面積(S1)0.38485m2と等しかった。また、上記篩を構成する金属(SUS304)のヤング率は197GPaであり、格子網目を形成する線状物の線径は、23μmであった。この篩を静止状態で張力をかけることなく引き上げたところ、実質的に撓まなかったので、該篩の固定部水平方向と引き上げた篩の為す角度は0.0度であった。篩の物性と状態は表2にまとめた。
トナー母粒子を篩う工程中、上記篩には皺が発生しておらず、また、篩の最小開口単位の形状(目開きの開口部の形状)は、篩い工程中、静止状態に対して変化していなかった。
比 較 例 6
粗粉分級を実施例1と同様に湿式であり、同質のポリエステル製の篩ではあるが、篩の中央部に20N/cmのテンションを掛けて張った以外は実施例1と同様に粗粒分級を行ったところ、篩上の粗粒粒子数は運転時間と共に上昇を続け、運転開始14分後14000個/cm2を超えたところで篩全面が目詰まりし、分散液が粗粒排出口からオーバーフローし連続運転不能であった。篩の物性と状態は表2にまとめた。
比 較 例 7
粗粉分級を実施例1と同様に湿式ではあるが、ポリエステル製の篩ではなく、比較例5と同じ金属(SUS304)製の篩を使用し、中央部にテンションを掛けず、中心部で網を通常張る面から20mmたるませて張った以外は実施例1と同様に粗粒分級を行ったところ、篩上の粗粒粒子数は運転時間と共に上昇を続け、運転開始3分後265000個/cm2を超えたところで篩全面が目詰まりし、分散液が粗粒排出口からオーバーフローし連続運転不能であった。篩の物性と状態は表2にまとめた。
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法における篩い工程を行うと、篩の目詰まりがなく、篩が破損することもなく連続運転が可能であり、それによって得られた静電荷像現像用トナーは、粗粒が極めて少なく、トナーのボタ落ち、黒芯、白斑、白スジ、トナー飛散がなく画質が良好であった。また、画像濃度、カブリについても良好で画像特性に優れるものであった。更に、トナー消費量も少なく、現像装置の耐傷付き性にも優れていた。