以下、本発明のトナー製造方法について説明する。
本発明は、着色樹脂粒子と温度が0℃以下である冷気とを同伴する工程を含むトナー製造方法である。
即ち本発明は、外添工程の冷却手段に影響を与えることなく、それ以降かつ篩分け工程の前までに瞬間的あるいは短時間で、蓄熱したトナーを冷却する方法として、既に0℃以下に制御された冷気に着色樹脂微粒子を接触させることにより、前述の課題を解決したものである。
以下に本発明の態様を詳細に説明する。
温度が0℃以下である冷気を同伴するには、冷却手段により0℃以下の低温空気の雰囲気を作り出し、その雰囲気に粉体を曝せばよく、例えばアンモニア、炭化水素系等の冷媒を用いる冷却により、あるいはやペルチェ素子などを利用して所望の冷気を作製可能だが、好適には、機構が単純なボルテックスチューブを用い、その低温吹き出し口から送出される低温空気をトナー粒子に対して放出するのがよい。
図1の模式図によりボルテックチューブの原理を説明する。ボルテックスチューブの構造としては、本体円筒部4と、この円筒部の一方の端部側に設けられた低温吹き出し口4aと、該低温吹き出し口の反対側の端部に設けられた高温吹き出し口4cと、円筒部の中央に圧縮空気Aを吹き込むための圧縮空気取り入れ口4bを備えるものである。圧縮空気取り入れ口4bから圧縮空気Aを送入すると、その圧縮空気Aは円筒部の内周面に沿って超高速の渦を生じる。このため、渦の中心部と外周部との間には大きな圧力差を生じて円筒部の中心部に向かって空気の移動が起こり、そのときの膨張によって温度が下がる。そして中心部に発生した冷たい空気(低温空気)Bは内周面に沿って移動する高速渦流とは逆方向に進行し、低温吹き出し口4aから放出され、外周部に発生した熱い空気(高温空気)Cは高温吹き出し口4cから放出される。そして、圧縮空気取り入れ口4bから供給される圧縮空気Aの圧力を制御することによって低温吹き出し口4aから送出される低温空気Bの温度を制御することができるというものである。
ボルテックスチューブとしては、例えばサンワエンタープライズ(株)より「コルダー190−75SV」、「同185−65SV」、「同160−55SV」、「同140−55SV」、「同195−65SV」、「同195−45WM」「同175−55WM」の商品名で、虹技(株)より「116E」、「218E」、「318E」、「358−50」、「328−75」、「328−100」の商品名で、それぞれ市販されているものを用いることができる。
ボルテックスチューブにより着色樹脂粒子を冷却する工程としては、例えば、トナーの粉砕工程や外添工程の粉体を扱う工程のライン中に導入して粒子を冷却することでもよく、例えば、トナーの粗粉砕工程や微粉砕工程でボルテックスチューブにより得られる冷気を導入することも可能であるが、最も効果的なのは、外添後のトナー粉体(着色樹脂粒子表面に外添剤が付着している粉体)を次工程の篩分け工程に配管を通して空気搬送する経路に導入することである。これにより、外添後のトナー粉体において短時間には除去し難かった微粉体の蓄熱を容易に除去できるので、配管輸送中や篩面上での粉体の流動性や凝集性の悪化に依る不具合点が抑制できる。特に、着色樹脂粒子の体積平均粒径が4〜9μmと小粒径である場合に外添後の蓄熱による流動性不良・搬送性不良が顕著になるが、本発明はこのような微粒子の粉体において好適である。
このようなトナー製造方法の好適な一例を図2により具体的に説明する。
図2は、トナー製造工程中、外添工程から篩分け工程でのボルテックスチューブの適用の一例である。外添装置1と篩分け装置8は配管等を介して接続されており、系の最も下流側から吸引ブロワ−10で吸引されて粉体が輸送される構成を有している。外添装置1は攪拌羽根1dが高速で回転する(約500〜4000rpm)ことによりトナー粒子にシリカ等の外添剤を付着させる構造を有する、いわゆる高速流動式の外添装置である。蓋1aを開放してトナー粉体及び外添剤を仕込んだ後、蓋1aを閉じ、所定回転数及び所定時間を設定し、駆動モーター1bに連結する攪拌羽根軸1cを回転させることにより、攪拌羽根軸1cに固定された攪拌羽根1dを回転させる。この際、外添装置内の温度を制御(冷却あるいは加温)するために、外添装置1の外側にジャケット(図示しない)に温度調節された水(約5〜55℃)を通すのが好ましい。外添終了後に外添剤が添加されたトナー粉体は排出口1eから払い出され、一旦クッションタンク2に送られる。クッションタンク2の下部には粉体の定量切り出しを行うための送り側ロータリーバルブ3を介して輸送配管5に接続されている。送り側ロータリーバルブ3は、粉体を1〜20kg/分の範囲内で一定量切り出して送り出す機能を持つ。輸送配管5は内径10〜100mm程度の円筒形状のものであり、清掃性等を考慮するとフレキシブルな材質(例えばゴム製、樹脂製、ステンレス鋼帯製など)のチューブで構成されるのが望ましい。
そして、輸送配管5の片側末端にはボルテックスチューブ4が接続され、低温吹き出し口4aは輸送配管末端から冷気を噴き出すために篩分け装置8に向かう方向に設置される。その逆側には高温吹き出し口4cがあり、発生した高温空気は系外に排出される。ボルテックスチューブ4の圧縮空気取り入れ口4bから、コンプレッサ及びエアドライヤー(図示しない)を通して圧縮された空気(約10〜20℃に調整)を0.1〜0.8MPaの圧力で吹き込むことにより、ボルテックスチューブの原理に従って、低温吹き出し口4aから0℃以下、好ましくは−5〜−40℃の冷気が0.05〜2m3/分、好ましくは0.2〜1.5m3/分の流量で輸送配管5内に供給される。ここで冷気の温度としては、トナーの蓄熱除去を効率的に行うため通常0℃以下、好ましくは−5℃以下であり、搬送配管の結露等への配慮の点から好ましくは−40℃以上である。送り側ロータリーバルブ3で切り出されたトナー粉体は輸送配管5内でこの冷気により瞬時に冷却され、かつ同伴された状態で吸引輸送されてサイクロン6に導かれる。サイクロン6では固体・気体分離が行われ、トナー粉体は下部の受け側ロータリーバルブ7により、篩分け装置8に導入される。一方、空気及び微粉トナーはサイクロン6上部の配管を経由してバグフィルター9で吸引され捕集される。篩分け装置8としては、ローヘッド形やハンマ形のバイブレーティングスクリーン型振動篩、レシプロ形やローテクス形のシフタ型振動篩、超音波形振動篩、遠心形篩等が使用可能であるが、精密な分離が可能である点、過剰な熱が発生しない点、タッピングボール等を使用しないので異物コンタミがない点等を考慮すると超音波振動形篩分け装置であるのが好適である。
超音波振動形篩分け装置を図面に基づいて説明する。図3(A)は本発明における超音波振動篩分け装置の一実施例の一部切欠正面図、図3(B)はその一部切欠斜視図である。
図3において、超音波発信器11から超音波振動と同じ周波数の電気信号で発信された超音波は、その電気信号を振動に変換する圧電振動子を内蔵し、篩枠14内側に固定された共振リング13に接して配置された超音波変換器12によって振動に変換され、その振動を篩枠14で支持された篩網15に伝達させて篩網15を振動させながら篩分けする方法であり、その際、篩網15に伝達される振動は、共振リング13によって複数点に分散されて伝達されることとなり、よって、篩面の前面に均一に振動を伝達させることを可能とし、これにより篩面の有効面積を広く採ることができ、また、トナーの通過効率を低下させることなく目詰まりを除去しうることとしたものである。
このようにトナー粉体の篩分けには有用な超音波振動篩分け装置であるが、長時間の連続運転時や外添工程での蓄熱したトナーの供給時に、特にトナーが低融点ワックスを含有する重合トナーである場合には、最終的に篩目詰まりによる通過効率の低下を回避できない。よって、本願の製造方法を採用することにより、このような状態を改善でき、良好な篩効率を長時間にわたって発揮させることが可能である。
なお、超音波発信器11による超音波の周波数は30〜40kHz程度とし、篩面の振動の振幅として3〜100μm程度を与えるものとする。また、篩網15としては、精密な篩分けを行うためにはその目開きが好ましくは75μm以下、より好ましくは65μm以下とし、線径を好ましくは50μm以下、下記式で表される空間率を好ましくは25〜40%程度とし、また素材としては篩網面上での粒子の帯電を少なくするためにSUS304、SUS316等のステンレス等の金網が好ましく、織成法としては細密な篩目の作製が可能な点であや織りであるのが好ましい。
空間率(%)=(目開き)2/(目開き+線径)2×100
前記の超音波振動篩分け装置としては、たとえば、(株)興和工業所より「KFS−800−1D」、「KFSR−800−1D」の商品名で、(株)徳寿工作所より「パルファイナーPF−2」の商品名で、(株)ダルトンより「バイブラソニック」の商品名で、晃栄産業(株)より「ウルトラソニックCB50U−1S」、「同CB70U−1S」、「同CB100U−1S」、「同440U−1S」、「同870U−1S」の商品名で、それぞれ市販されている装置を用いることができる。
本発明では、前記配管中の粉体の輸送が、吸引搬送により行われる場合に特に好適である。ボルテックスチューブからの冷気は加圧による吹込みであるが、配管搬送をスムーズに行えるほどの強さはなく、またその冷気を維持するためにも吸引力による搬送が必要である。加圧による搬送の場合には冷気の維持が困難であり好ましくない。加えて、粉体の流れが吸引搬送となることにより、経路中でトナー粉体としては不適当な超微粉体の捕集が容易に行え、しかもトナー製品への超微粉体の混入が少なくなるからである。なお、ボルテックスチューブへの空気の導入は加圧系により行われるが、全系として粉体輸送が吸引搬送となるようブロワ−での吸引圧力を高く設定する必要がある。そして、その出力数値はボルテックスチューブに圧縮空気を供給するコンプレッサより大きくするのがよい。
本発明は、以上のように、トナー粉体を0℃以下の冷気に曝して同伴させる輸送により、外添後のトナーの蓄熱による軟凝集状態が極めて短時間に除去できるので、トナー粉体の流動性や凝集性・付着性に関わる問題がなく、篩分け操作が極めて容易にかつ精密に可能になる。
着色樹脂粒子を得るには、樹脂中に着色剤やワックスを分散させて微粒子を形成するものであれば、粉砕法、重合法を問わず、あらゆる方法が採用可能であることは言うまでもないが、近年の低エネルギー定着の要求からは、容易にかつ多量に低融点ワックスを含有可能なことから水系媒体で製造されるトナー粒子を採用するのが好ましい。
水系媒体中でトナーを得る方法としては、懸濁重合法、乳化重合凝集法などの重合法による方法や化学粉砕法などが好適に利用されている。本発明のトナー製造方法としてはいずれの方法も使用することが出来るが、得られる粒子の形状の設定範囲が広いことや粒度分布のシャープさ等、及びそれにより長期に渡って帯電性の安定したトナー粒子が得られることから、乳化重合凝集法により製造することが最も好ましい。
以下、水系媒体中で製造される好ましい実施態様である乳化重合凝集法により製造されるトナーについて更に詳細に説明する。
乳化重合凝集法によりトナーを製造する場合、通常、重合工程、混合工程、凝集工程、熟成工程、洗浄・乾燥工程を有する。すなわち、一般的には乳化重合により得た重合体一次粒子を含む分散液に、着色剤、ワックス、帯電制御剤等の分散液を混合し、この分散液中の一次粒子を凝集させて粒子凝集体とし、必要に応じて微粒子等を付着した後に融着させて得られた粒子を洗浄、乾燥することにより母粒子が得られる。
乳化重合凝集法に用いられる重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂は乳化重合法により重合可能な1種または2種以上の重合性モノマーを適宜用いればよい。重合性モノマーとしては、ブレンステッド酸性基を有するモノマー(以下、単に酸性モノマーと称すことがある)またはブレンステッド塩基性基を有するモノマー(以下、単に塩基性モノマーと称することがある)と、ブレンステッド酸性基およびブレンステッド塩基性基のいずれをも有さないモノマー(以下、その他のモノマーと称することがある)とを原料モノマーとして使用することが好ましい。この際、各モノマーは別々に加えても、予め複数のモノマーを混合しておいて同時に添加しても良い。更に、モノマー添加途中でモノマー組成を変化させることも可能である。また、モノマーはそのまま添加しても良いし、予め水や乳化剤などと混合、調整した乳化液として添加することもできる。
酸性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有するモノマー、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー、ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有するモノマー等があげられる。また、塩基性モノマーとしては、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の窒素含有複素環含有モノマー、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
これら酸性モノマー及び塩基性モノマーは、単独で用いても複数を混合して用いてもよく、また、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。中でも、酸性モノマーを用いるのが好ましく、より好ましくはアクリル酸及び/又はメタクリル酸であるのがよい。重合体一次粒子としてのバインダー樹脂を構成する全モノマー100重量%中に占める酸性モノマーおよび塩基性モノマーの合計量は、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下であることが望ましい。
その他のモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、アクリル酸アミド等が挙げられ、モノマーは、単独で用いてもよく、また複数を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、上述したモノマー等を組み合わせて用いる中でも、好ましい実施態様として酸性モノマーとその他のモノマーを組み合わせて用いるのがよい。より好適には、酸性モノマーとしてアクリル酸及び/又はメタクリル酸を、その他のモノマーとしてスチレン類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類の中から選択されるモノマーを用いるのがよく、より好ましくは酸性モノマーとしてアクリル酸及び/又はメタクリル酸を、その他のモノマーとしてスチレンとアクリル酸エステル類及び/又はメタクリル酸エステル類との組み合わせであるのがよく、特に好適には酸性モノマーとしてアクリル酸及び/又はメタクリル酸を、その他のモノマーとしてスチレンとアクリル酸n−ブチルとの組み合わせであるのが好適である。
更に、重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂として架橋樹脂を用いる場合、上述のモノマーと共用される架橋剤としてはラジカル重合性を有する多官能性モノマーが用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、反応性基をペンダントグループに有するモノマー、例えばグリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、アクロレイン等を用いることも可能である。中でもラジカル重合性の二官能性モノマーが好ましく、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが特に好ましい。
これら多官能性モノマーは、単独で用いても複数を混合して用いてもよい。重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂として架橋樹脂を用いる場合は、樹脂を構成する全モノマー中に占める多官能性モノマーの配合率は、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、更に好ましくは0.3重量%以上であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下であることが望ましい。
乳化重合に用いる乳化剤としては公知のものが使用できるが、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を併用して用いることができる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
乳化剤の使用量は、通常、重合性単量体100重量部に対して1〜10重量部とされ、また、これらの乳化剤に、例えば、部分或いは完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等の一種或いは二種以上を保護コロイドとして併用することができる。
重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の有機過酸化物類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物類;及びレドックス系開始剤等の一種或いは二種以上が、通常、重合性単量体100重量部に対して0.1〜3重量部程度の量で用いられる。中でも、開始剤としては少なくとも一部あるいは全部が過酸化水素あるいは有機過酸化物類であるのが好ましい。
また、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の一種或いは二種以上の懸濁安定剤を、重合性単量体100重量部に対して通常1〜10重量部の量で用いてもよい。
前記重合開始剤および懸濁安定剤は、何れも、モノマー添加前、添加と同時、添加後のいずれの時期に重合系に添加しても良く、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせても良い。
乳化重合に際しては、必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用することもできるが、その様な連鎖移動剤の具体的な例としては、t―ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等が挙げられる。連鎖移動剤は単独または2種類以上の併用でもよく、全モノマーに対して通常5重量%以下の範囲で用いられる。また、反応系には、さらに、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤等を適宜添加することができる。
乳化重合は、上記のモノマー類を重合開始剤の存在下で重合するが、重合温度は、通常50〜120℃、好ましくは60〜100℃、更に好ましくは70〜90℃である。
乳化重合により得られた重合体一次粒子の体積平均粒径は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上であり、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下であることが望ましい。粒径が前記範囲未満では、凝集速度の制御が困難となる場合があり、前記範囲超過では、凝集して得られるトナーの粒径が大きくなり易く、目的とする粒径のトナーを得ることが困難となる場合がある。
重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂のDSC(示差走査熱量計)法によるTgは、好ましくは40〜80℃である。ここで、バインダー樹脂のTgが他の成分に基づく熱量変化、例えばワックスの融解ピークと重なるために明確に判断出来ない場合には、このような他の成分を除いた状態でトナーを作成した際のTgを意味するものとする。
重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂の酸価は、JISK−0070の方法によって測定した値として、好ましくは3〜50mgKOH/g、より好ましくは5〜30mgKOH/gであるのがよい。
着色剤としては、通常用いられる着色剤であればよく、特に限定はされない。例えば、ファーネスブラックやランプブラック等のカーボンブラック、磁性着色剤等が挙げられる。前記着色剤の含有割合は、得られるトナーが現像により可視像を形成するのに十分な量であればよく、例えば、トナー中に1〜25重量部の範囲が好ましく、更に好ましくは1〜15重量部、特に好ましくは3〜12重量部である。
前記着色剤は磁性を有していてもよく、磁性着色剤としては、プリンター、複写機等の使用環境温度である0〜60℃付近においてフェリ磁性或いはフェロ磁性を示す強磁性物質、具体的には、例えば、マグネタイト(Fe3O4 )、マグヘマタイト(γ−Fe2O3 )、マグネタイトとマグヘマタイトの中間物や混合物、Mx Fe3-x O4 ;式中、Mは、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd等のスピネルフェライト、BaO・6Fe2 O3 、SrO・6Fe2 O3 等の6方晶フェライト、Y3 Fe5 O12、Sm3 Fe5 O12等のガーネット型酸化物、CrO2 等のルチル型酸化物、及び、Cr、Mn、Fe、Co、Ni等の金属或いはそれらの強磁性合金等のうち0〜60℃付近において磁性を示すものが挙げられ、中でも、マグネタイト、マグヘマタイト、またはマグネタイトとマグヘマタイトの中間体が好ましい。非磁性トナーとしての特性を持たせつつ、飛散防止や帯電制御等の観点で含有する場合は、トナー中の前記磁性粉の含有量は、0.2〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%、より好ましくは1〜5重量%である。また、磁性トナーとして使用する場合は、トナー中の前記磁性粉の含有量は、通常15重量%以上、好ましくは20重量%以上であり、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下であることが望ましい。磁性粉の含有量が前記範囲未満であると、磁性トナーとして必要な磁力が得られない場合があり、前記範囲超過では、定着性不良の原因となる場合がある。
乳化重合凝集法における着色剤の配合方法としては、通常、重合体一次粒子分散液と着色剤分散液とを混合して混合分散液とした後、これを凝集させて粒子凝集体とする。着色剤は、乳化剤の存在下で水中にサンドミル、ビーズミル等の機械的手段により乳化させた状態で用いるのが好ましい。この際、着色剤分散液は、水100重量部に対して、着色剤を10〜30重量部、乳化剤を1〜15重量部加えるのがよい。なお、分散液中の着色剤の粒径を分散途中でモニターしながら行い、最終的にその体積平均粒径を0.01〜3μmとするのがよく、より好適には0.05〜0.5μmの範囲に制御するのがよい。乳化凝集時における着色剤分散液の添加は、凝集後の出来上がりの母粒子中に2〜10重量%となるように計算して用いられる。
トナーには、離形成付与のためワックスを添加することが好ましい。ワックスとしては、離形成を有するものであればいかなるものも使用可能であり、特に限定はされない。具体的には、具体的には低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;水添ひまし油カルナバワックス等の植物系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン;アルキル基を有するシリコーン;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸により得られる多価アルコールのカルボン酸エステル、または部分エステル;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステル等が例示される。
これらのワックスの中で定着性を改善するためには、低融点ワックスであるのが好ましく、具体的にはDSCで測定されるワックスの融点は30℃以上が好ましく、40℃以上が更に好ましく、50℃以上が特に好ましい。また、100℃以下が好ましく、90℃以下が更に好ましく、80℃以下が特に好ましい。融点が低すぎると定着後にワックスが表面に露出しべたつきを生じやすく、融点が高すぎると低温での定着性が劣る。また更に、ワックスの化合物種としては、パラフィンワックスや脂肪族カルボン酸と一価もしくは多価アルコールとから得られるエステル系ワックスが好ましく、エステル系ワックス場合には炭素数が20〜100のものが好ましく、更には炭素数20〜100のものが特に好ましい。
上記ワックスは単独で用いても良く混合して用いても良い。また、トナーを定着する定着温度により、ワックス化合物の融点を適宜選択することができる。ワックスの使用量は、通常、1〜40%、より好ましくは2〜35%、さらに好ましくは5〜30%、特に好ましくは5〜15%である。
乳化重合凝集法におけるワックスの配合方法としては、予め水中に体積平均径0.01〜2.0μm、より好ましくは0.01〜0.5μmに乳化分散したワックス分散液を乳化重合時に添加するか、あるいは凝集工程で添加することが好ましい。トナー中に好適な分散粒径でワックスを分散させるためには、乳化重合時にワックスをシードとして添加することが好ましい。シードとして添加することにより、ワックスが内包された重合体一次粒子が得られるので、ワックスがトナー表面に多量に存在することがなく、トナーの帯電性や耐熱性の悪化を抑制することができる。重合体一次粒子中のワックスの存在量は、好ましくは4〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%、特に好ましくは7〜15重量%となるよう計算して用いられる。
本発明に用いられるトナーには、帯電量、帯電安定性付与のため、帯電制御剤を添加しても良い。帯電制御剤としては、従来公知の化合物が使用される。例えば、ヒドロキシカルボン酸の金属錯体、アゾ化合物の金属錯体、ナフトール系化合物、ナフトール系化合物の金属化合物、ニグロシン系染料、第4級アンモニウム塩及びこれらの混合物が挙げられる。帯電制御剤の添加量は樹脂100重量部に対し、0.1〜5重量部の範囲が好ましい。
乳化重合凝集法においてトナー中に帯電制御剤を含有させる場合は、乳化重合時にモノマー等とともに帯電制御剤を添加するか、重合体一次粒子及び着色剤等とともに凝集工程で添加するか、重合体一次粒子及び着色剤等を凝集させてほぼトナーとして適当な粒径となった後に添加する等の方法によって配合することができる。これらのうち、帯電制御剤を乳化剤を用いて水中で乳化分散させ、体積平均粒径0.01〜3μmの乳液として使用することが好ましい。乳化凝集時における帯電制御剤分散液の添加は、凝集後の出来上がりの母粒子中に0.1〜5重量%となるように計算して用いられる。
なお、以上の分散液中の重合体一次粒子、着色剤分散粒子、ワックス分散粒子、帯電制御剤分散粒子等の体積平均粒径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−500(ホリバ社製)を用いて測定することができる。
乳化重合凝集法における凝集工程においては、上述の、重合体一次粒子、着色剤粒子、ワックス、帯電制御剤などの配合成分は、同時にあるいは逐次に混合するが、予めそれぞれの成分の分散液、即ち、重合体一次粒子分散液、着色剤粒子分散液、ワックス微粒子分散液、帯電制御剤分散液を作製しておき、これらを混合して混合分散液を得ることが、組成の均一性および粒径の均一性の観点で好ましい。
前記の凝集処理は通常、攪拌槽内で、加熱する方法、電解質を加える方法、これらを組み合わせる方法等がある。一次粒子を攪拌下に凝集してほぼトナーの大きさに近い粒子凝集体を得ようとする場合、粒子同士の凝集力と攪拌による剪断力とのバランスから粒子凝集体の粒径が制御されるが、加熱するか、或いは電解質を加えることによって凝集力を大きくすることができる。
電解質を添加して凝集を行う場合の電解質としては、有機塩、無機塩のいずれでも良いが、具体的には、NaCl、KCl、LiCl、Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、MgCl2、CaCl2、MgSO4、CaSO4、ZnSO4、Al2(SO4)3、Fe2(S
O4)3、CH3COONa、C6H5SO3Na等が挙げられる。これらのうち、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩が好ましい。
前記電解質の添加量は、電解質の種類、目的とする粒径等によって異なるが、混合分散液の固形成分100重量部に対して、通常0.05〜25重量部、好ましくは0.1〜15重量部、更に好ましくは0.1〜10重量部である。添加量が前記範囲未満の場合は、凝集反応の進行が遅くなり凝集反応後も1μm以下の微粉が残ったり、得られた粒子凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しないなどの問題を生じる場合があり、前記範囲超過の場合は、急速な凝集となりやすく粒径の制御が困難となり、得られた凝集粒子中に粗粉や不定形のものが含まれるなどの問題を生じる場合がある。電解質を加えて凝集を行う場合の凝集温度は、20〜70℃が好ましく、30〜60℃が更に好ましい。
電解質を用いずに加熱のみによって凝集を行う場合の凝集温度は、通常、重合体一次粒子のTg−20℃〜Tgの温度範囲であり、Tg−10℃〜Tg−5℃の範囲であることが好ましい。
凝集に要する時間は装置形状や処理スケールにより最適化されるが、トナー粒子の粒径を目的とする粒径に到達するためには、前記した所定の温度で通常、少なくとも30分以上保持することが望ましい。所定の温度へ到達するまでの昇温は、一定速度で昇温しても良いし、段階的に昇温することもできる。
本発明においては、上述の凝集処理後の粒子凝集体表面に、必要に応じて樹脂微粒子を被覆(付着又は固着)してトナー粒子を形成することができる。本発明においてワックスの配合量を多くした場合、低温定着性は向上するもののワックスがトナー表面に露出しやすくなるため、帯電性や耐熱性が悪化する場合があるが、粒子凝集体表面を樹脂微粒子で被覆することにより性能の悪化を防止できる場合がある。前記樹脂微粒子の体積平均粒径は、好ましくは0.02〜3μm、より好ましくは0.05〜1.5μmである。
樹脂微粒子としては、前述の重合体一次粒子に用いられるモノマーと同様なモノマーを重合して得られたもの等を用いることができるが、中でも多官能性モノマーを原料に含む架橋樹脂が好ましい。また、前記樹脂微粒子は、ワックスを含んでいてもよい。
この樹脂微粒子は、通常、乳化剤により水または水を主体とする液中に分散した分散液として用いるが、前記の帯電制御剤を凝集処理後に加える場合には、粒子凝集体を含む分散液に帯電制御剤を加えた後に樹脂微粒子を加えることが好ましい。
乳化重合凝集法においては、凝集で得られた粒子凝集体の安定性を増すために、凝集した粒子間の融着を起こす熟成工程を加えることが好ましい。熟成工程の温度は、好ましくは一次粒子を構成するバインダー樹脂のTg以上、より好ましくは前記Tgより5℃高い温度以上であり、また、好ましくは前記Tgより80℃高い温度以下、より好ましくは前記Tgより50℃高い温度以下である。また、熟成工程に要する時間は、目的とするトナーの形状により異なるが、一次粒子を構成する重合体のガラス転移温度以上に到達した後、通常0.1〜10時間、好ましくは1〜6時間保持することが望ましい。
なお、乳化重合凝集法においては、上記凝集工程以降、好ましくは熟成工程以前又は熟成工程中の段階で、乳化剤を添加するか、凝集液のpH値を上げることが好ましい。ここで用いられる乳化剤としては、前記の重合体一次粒子を製造する際に用いることのできる乳化剤から1種以上を選択して用いることができるが、特に重合体一次粒子を製造した際に用いた乳化剤と同じものを用いることが好ましい。乳化剤を添加する場合の添加量は限定されないが、混合分散液の固形成分100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは3重量部以上であり、また、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下、更に好ましくは10重量部以下である。凝集工程以降、熟成工程の完了前の間に乳化剤を添加するか、凝集液のpH値を上げることにより、凝集工程で凝集した粒子凝集体同士の凝集等を抑制することができ、熟成工程後のトナー中に粗大粒子が生じることを抑制できる場合がある。
このような加熱処理により、凝集体における一次粒子同士の融着一体化がなされ、凝集体としてのトナー粒子形状も球形に近いものとなる。熟成工程前の粒子凝集体は、一次粒子の静電的あるいは物理的凝集による集合体であると考えられるが、熟成工程後は、粒子凝集体を構成する重合体一次粒子は互いに融着しており、トナー粒子の形状も球状に近いものとすることが可能となる。この様な熟成工程によれば、熟成工程の温度及び時間等を制御することにより、一次粒子が凝集した形状である葡萄型、融着が進んだジャガイモ型、更に融着が進んだ球状等、目的に応じて様々な形状のトナーを製造することができる。
上記の各工程を経ることにより得た粒子凝集体は、公知の方法(例えば遠心分離法やフィルタープレス法等)に従って固/液分離し、粒子凝集体を回収し、次いで、これを必要に応じて洗浄した後、乾燥することにより目的とする母粒子を得ることができる。
また、前記の乳化重合/凝集法により得られた粒子の表面に、例えば、スプレードライ法、in−situ法、或いは液中粒子被覆法等の方法によって、更に、重合体を主成分とする外層を、好ましくは0.01〜0.5μmの厚みで形成させることによって、カプセル化された母粒子とすることもできる。
乳化重合凝集法トナーは、体積平均粒径(Dv)が3〜9μmであることが好ましく、4〜8μmがより好ましく、5〜7μmが更に好ましい。また、体積粒径5.04μm以下の微粉粒子含有割合の下限は好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.5%以上であり、特に好ましくは1%以上であるのがよく、上限は好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、特に好ましくは5%以下であるのがよい。個数粒径5.04μm以下の微粒子含有割合の下限は好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上であり、特に好ましくは3%以上であるのがよく、上限は好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下であるのがよい。さらに、体積粒径12.7μm以上の粗粉粒子含有割合は好ましくは2%以下であり、より好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0.5%以下であるのがよい。体積粒径5.04μm以下および体積粒径12.7μm以上の粒子、特に体積粒径12.7μm以上の粗粉粒子は、本来は全く存在しないのが最も好ましいが、実際の製造上は困難であり、除去工程に設備も要することから、前記範囲に制御することが望ましい。体積平均粒径や粒子含有割合が前記範囲を逸脱する場合は高解像度の画像形成に適さない場合があり、前記範囲未満では粉体としての取り扱いが困難な傾向にある。さらに、Dvを個数平均粒径(Dn)で除した値(Dv/Dn)が、好ましくは1.0〜1.25、より好ましくは1.0〜1.20、更に好ましくは1.0〜1.15であり、1.0に近い方が望ましい。静電荷像現像用トナーの粒度分布がシャープなものの方が粒子固体間の帯電性が均一になる傾向にあるので、高画質及び高速化を達成するための静電荷像現像用トナーのDv/Dnは前記範囲であるのが好ましい。
なお、トナーの粒子径の測定装置としては、コールターカウンターのマルチサイザーII型(ベックマン・コールター社製)を用い、個数分布・体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及び一般的なパーソナルコンピューターを接続し、電解液は特級又は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。測定法としては前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記コールターカウンターのマルチサイザーII型により、100μmアパーチャーを用いて測定する。トナーの体積・個数を測定して、体積分布と個数分布とを算出し、それぞれ、体積平均径Dv、個数平均径Dnを求める。
上記のように体積平均径が小さいと、外添工程での蓄熱が大きくしかもその除熱も困難な場合が多いから、トナーの流動性や凝集性が悪化しやすい。従って、外添工程以降の粒子配管輸送での壁内粒子付着や篩工程での網目の目詰まりを生じやすいが、本願の製造によれば、そのような場合にも好適な製造が可能となる。
また、乳化重合凝集法で製造されるトナーの形状は出来るだけ球形に近いものが好ましく、平均円形度が、好ましくは0.900以上、より好ましくは0.920以上、更に好ましくは0.950以上である。球形に近いほど粒子内での帯電量の局在化が起こりにくく、現像性が均一になる傾向にあるが、完全な球状トナーを作ることは製造上困難であるので、前記平均円形度は、好ましくは0.995以下、より好ましくは0.990以下である。
本発明における円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明ではシスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2100を用いて測定を行い、測定された粒子の円形度を下式(1)により求める。
円形度a=L0/L (1)
〔式中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは512×512の画
像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子像の周囲長を示す。〕
本発明に用いている円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
さらに本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、従来よりトナーの形状を算出するために用いられていた「FPIA1000」と比較して、シースフローの薄層化(7μm→4μmに)及び処理粒子画像の倍率の向上、さらに取り込んだ画像の処理解像度を向上(256×256→512×512)によりトナーの形状測定の精度が上がっており、それにより微粒子のより確実な補足を達成している装置である。従って、本発明のように、より正確に形状を測定する必要がある場合には、より正確に形状に関する情報が得られるFPIA2100の方が有用である。
具体的な測定方法としては、予め容器中の不純物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波(50kHz,120W)を1〜3分間照射し、分散液濃度を1.2〜2.0万個/μlとして、上記フロー式粒子像測定装置を用い、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の円形度分布を測定する。
測定の概略は、以下の通りである。
試料分散液は、フラットで扁平なフローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するように、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。それぞれの粒子の2次元画像の投影面積及び投影像の周囲長から上記の円形度算出式を用いて各粒子の円形度を算出する。
上記のように円形度が球形に近づけば、粒子の帯電性が高くなる傾向を示すので、トナー同士の凝集も発生しやすく、一般にはトナーの流動性や搬送性が悪化しやすい。従って、外添工程以降の粒子配管輸送での壁内粒子付着や篩工程での網目の目詰まりを生じやすいが、本願の製造によれば、そのような場合にも好適な製造が可能となる。
また、トナーのTHF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す場合がある)におけるピーク分子量のうち少なくとも1つが、好ましくは1万以上、より好ましくは2万以上、さらに好ましくは3万以上であり、好ましくは15万以下、より好ましくは10万以下、さらに好ましくは7万以下であることが望ましい。ピーク分子量が何れも前記範囲より低い場合は、非磁性一成分現像方式における機械的耐久性が悪化する場合があり、ピーク分子量が何れも前記範囲より高い場合は、低温定着性や定着強度が悪化する場合がある。なお、トナーのTHF不溶分は後述するセライト濾過による重量法で測定した場合、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、また、好ましくは60%以下であり、より好ましくは50%以下であるのがよい。前記範囲にない場合は、機械的耐久性と低温定着性の両立が困難となる場合がある。
トナーのピーク分子量は、測定装置:HLC−8120GPC(東ソー株式会社製)を用いて次の条件で測定される。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流す。
トナーをTHFに溶解後0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。
試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102,2.1×103,4×103,1.75×104,5.1×104,1.1×105,3.9×105,8.6×105,2×106,4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組合せるのが良く、例えば、Waters社製のμ−styragel 500,103,104,105の組合せや、昭和電工社製のshodex KA
801,802,803,804,805,806,807の組合せが好ましい。
乳化重合凝集法トナーは、流動性や現像性を制御する為に、母粒子表面に公知の外添剤が添加される。外添剤としては、アルミナ、シリカ、チタニア、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、タルク、ハイドロタルサイト等の金属酸化物や水酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸金属塩、窒化チタン、窒化珪素等の窒化物、炭化チタン、炭化珪素等の炭化物、アクリル系樹脂やメラミン樹脂等の有機粒子などが挙げられ、複数組み合わせることが可能である。中でも、シリカ、チタニア、アルミナを単独であるいは複数併用するのが好ましく、また、例えばシランカップリング剤やシリコーン化合物等で疎水化表面処理されたものがより好ましい。特に、帯電量の維持性の観点からシリコーン化合物で表面処理されたものが好ましい。その電子顕微鏡法による個数平均一次粒子径は1〜500nmの範囲が好ましく、より好ましくは5〜100nmの範囲がよい。また、前記粒径範囲において小粒径のもの(個数平均一次粒子径が1〜30nm未満の範囲のもの)と大粒径のもの(個数平均一次粒子径が30〜500nmの範囲のもの)とをその粒子径差が10nm以上となるよう、より好ましくは30nm以上となるようにして併用することも好ましい。外添剤の添加量の総量は、トナー粒子100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜5重量部である。
乳化凝集トナーなどの水系媒体トナーにおいては、前述したように、形状が球形に近く、しかも粒子表面が滑らかであるから、これらの外添剤を強固に付着させることは困難である。従って、外添装置としては、高速で攪拌羽根が回転する高速流動式混合機を用いるとともに、その周囲にジャケットに温度調整された媒体、好ましくは水を通して装置自体を30〜55℃で制御できるようにするのが好適である。これにより、外添装置内において粒子表面が軟化し、外添剤の付着が促進され、強化される。
高速流動式混合機としては、例えば三井鉱山(株)製のヘンシェルミキサFM−300、FM−500、(株)カワタ製のスーパーミキサSMB−500、SMG−500等が挙げられる。
乳化重合凝集法トナーの帯電性は、正帯電であっても負帯電であってもよいが、負帯電性トナーとして用いることが好ましい。トナーの帯電性の制御は、樹脂モノマーや帯電制御剤の選択および含有量、外添剤の選択および添加量等によって調整することができる。
本発明の製造方法が、特に低融点ワックスを含む水系媒体トナーの外添、搬送、篩分けの各工程を含む製造プロセスにおいて最適であることは以上に詳述した通りである。そのメカニズムは以下のように推定される。すなわち、水系媒体トナーに外添剤を強固に付着させるには外添装置の温度制御が効果的であるが、そのことは外添温度雰囲気が低融点ワックスの吸熱ピーク温度(PP)までは到達しないものの、吸熱ピーク立ち上がり温度(LP)あるいは吸熱オンセット温度(OP)程度には近づくから、本質的にトナーの軟凝集状態を招きやすいものである(ここで、吸熱ピーク立ち上がり温度とは、DSC吸熱曲線において、ベースラインより明らかにピーク曲線が離れたと認められる温度であってピーク曲線の微分値が正で、微分値の増加が大きくなりはじめる温度あるいは微分値が負から正になる温度をいう。また、吸熱オンセット温度とはピーク曲線の微分値が最大となる点において曲線の接線を引き接線とベースラインとの交点の温度をいう。通常、LP<OP<PPの関係がある)。粒子の凝集についてSEM(走査型電子顕微鏡)で観察したところ、水系媒体トナーを外添した直後においては、粒子の軟凝集状態が発生していた。そして、その軟凝集状態の一部にはトナー粒子とトナー粒子の間に熱で変形したと思われるワックス状物質が介在しており、ワックスがいわゆる接着剤として存在するために軟凝集を惹起していることが推定された。しかし、その軟凝集粒子を0℃以下の冷気に曝して配管輸送したところ、その凝集物のほとんどが消失した。これは、急冷却された凝集物が輸送中の衝撃で解凝集あるいは解砕されたものと推定される。しかし、0℃以下の冷気に曝さずに輸送した場合には、粉体の軟凝集状態は改善されなかった。これは、雰囲気温度が変化しないか徐冷であったために、軟凝集物が解凝集されずにそのまま残存した結果と思われる。このように、本発明では、特に低融点ワックスを用いるトナーの外添以降の工程において、雰囲気温度を瞬時に下げることに可能であり、それによりトナーの流動性・付着性の悪化がないものと考えられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
まず、水系媒体中で生成されるトナーとして、乳化重合凝集法でのトナー粒子を得る。
なお、平均粒径、粒度分布、テトラヒドロフラン(THF)不溶分、分子量分布、熱的特性、円形度、および実写評価は、それぞれ以下の方法により測定した。
[分散液中粒子及びトナーの体積平均粒径、個数平均粒径、粒度分布]
分散液中の重合体一次粒子、ワックス粒子、着色剤粒子はレーザー回折粒度分布測定機であるホリバ社製LA−500を用いてフローセル方式により試料量数100mg程度で行った。トナー粒子は前述のベックマンコールター社製マルチサイザーII型(以下、マルチサイザーと略す。)を用いた。
[トナーのテトラヒドロフラン(THF)不溶分]
試料1gをTHF100gに加え25℃で24時間静置溶解し、セライト10gを用いて濾過し、濾液の溶媒を留去してTHF可溶分を定量し、1gから差し引いてTHF不溶分を算出し、重量%表示する。
[トナーのTHF可溶分のピーク分子量、ワックス類の数平均分子量]
上記THF不溶分測定における濾液を用い、前述の通り、ーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した(装置:東ソー社製GPC装置 HLC−8120)。
[トナーのガラス転移温度(Tg)]
パーキンエルマー社製DSC7により測定した。30℃から100℃までを7分間で昇温し、100℃から−20℃まで急冷し、−20℃から100℃までを12分間で昇温して、2回目の昇温時に観察されたTgの値を用いた。
[トナーの軟化点(Sp)]
フローテスター(CFT−500、島津製作所製)を用いて約1gの試料を試料3を昇温速度3℃/min.で加熱しながら、面積1cm2のプランジャーにより30kg/c
m2の荷重を与え、孔径1mm、長さ10mmのダイから押し出し、これによりプランジ
ャーストローク−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするとき、h/2に対応する温度を軟化点とした。
[ワックスの吸熱ピーク]
セイコー電子社DSC120を用い、測定温度30〜150℃、昇温速度2℃/分、サンプル量10mgの条件で測定した。
[ワックスの分散粒子径]
ワックス分散径は透過電子顕微鏡法(TEM)により測定されるが、その測定は以下のように行われる。すなわち、トナー粒子にショ糖水溶液を加えて練り合わせ、サンプルキャリアヘッドにその少量を着けて液体窒素で冷却して凍結試料とする。次に、切削ユニット部が液体窒素で冷却可能なウルトラミクロトームを用い、上記凍結試料をガラスカッターで面削した後、ダイヤモンドカッターで70nmの厚みにカットしてサンプルを作成する。さらに、この切削サンプルをコロジオン膜張りメッシュ上に乗せ、四酸化ルテニウムにて染色処理を行う。この染色処理サンプルを用いて、TEM(日立H−7500システム)にて倍率1万倍で10視野以上の写真画像を撮影する。得られる画像からワックス粒子を任意に300個以上抽出して、その水平方向Feret径を計測して平均値を取り個数平均径とする。なお、計測・集計は、画像解析法もしくはノギス等による実測法のいずれでもよい。樹脂中のワックス分散粒子径は個数平均径で0.05〜1μmであるのが好ましく、より好ましくは個数平均径で0.1〜0.5μmであるのが耐久性がさらに向上する等の面から好適である。
[帯電量]
トナーを非磁性1成分の現像槽(カシオ社製ColorPagePrestoN4現像槽)に投入し、駆動装置にて現像槽の現像ローラを約150rpmで約1分間回転させて現像ロール上のトナーを均一化させた後、q/mメーター(トレックジャパン社、モデル210HS)を用いてローラ上のトナーを濾紙(ワットマン・グレード1)上に吸引し、表示される静電容量と吸引した濾紙上のトナー重量からトナー単位重量あたりの帯電量を求めた。
[実写評価]
非磁性一成分現像方式のフルカラープリンター(カシオ社製ColorPage PrestoN4)を用い、単色画像評価及びフルカラー画像評価を行った。
[実施例1]
まず、トナー母粒子を以下により製造する。
<ワックス分散液の調製>
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC)0.3部を脱塩水70部に加え、さらに表面張力約28N/m、DSC吸熱ピークが70℃のパラフィンワックス(日本精鑞社製、HNP−11)を添加した後、全体を90℃に加熱してディスパーザーで10分攪拌した。次いでこの分散液を100℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて約15MPaの加圧条件で乳化を開始し、LA−500粒度分布計で測定しながら体積平均粒径を約0.2μmまで分散してワックス分散液Aを作製した。
<着色剤分散液の調製>
カーボンブラック(三菱化学社製の三菱カーボンブラックMA−100S)20部、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC)1部、非イオン界面活性剤(第一工業製薬社製、ノイゲンEA80)5部、水80部をサンドグラインダーミルで分散して黒色の着色剤分散液を得た。製造直後のLA−500にて計測した粒子の体積平均径は約0.15μmであった。
<重合体一次粒子分散液の製造>
攪拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・添加剤仕込み装置を備えた反応器に、前記のワックス分散液、及び脱塩水を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温した。
ワックス分散液 30部
脱塩水 365部
次いで、反応器の温度を90℃に保持したまま、以下のモノマー類、乳化剤水溶液、及び重合開始剤等からなる混合物を5時間かけて加え、前記ワックス粒子をシードとして乳化共重合させた。
[モノマー類]
スチレン 78部
アクリル酸ブチル 20部
アクリル酸 2部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 1部
トリクロロブロモメタン(連鎖移動剤) 1.3部
[乳化剤水溶液]
10%乳化剤(ネオゲンSC)水溶液 12部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 43部
8%アスコルビン酸水溶液 43部
その後、冷却することにより、スチレン−アクリル酸ブチル−アクリル酸系共重合体の一次粒子分散液を得た。LA−500にて計測される粒子の体積平均粒径は、0.26μmであった。
<母粒子の製造>
前記重合体一次粒子分散液100部に前記着色剤分散液6部を加え、ディスパーザーで分散攪拌しながら、硫酸アルミニウム水溶液(一次粒子分散液100部に対して固形分として0.5部)を滴下し、攪拌下に30分かけて50℃に昇温して1時間保持し、更に、攪拌下に52℃に昇温することにより凝集工程を行った。一次粒子凝集体としての体積平均粒径が約7μmとなった時点で、ネオゲンSC水溶液(一次粒子分散液100部に対して固形分として3部)を添加して凝集工程を終了し、引き続き攪拌下に50分かけて97℃に昇温して1.5時間保持して熟成工程を行った。その後、冷却、濾過、水洗、乾燥することにより、一次粒子凝集・熟成体として黒色のトナー母粒子を得た。
この母粒子トナーを用いて計測された諸物性は以下の通りである。測定は前述した方法で行った。
・母粒子の粒度分布特性
体積平均径Dv :6.5μm
体積<5.04μm :1.7%
個数<5.04μm :8.0%
体積平均径(Dv)/個数平均径(Dn) :1.10
・母粒子の平均円形度 :0.965
・母粒子のTHF可溶分分子量ピーク :51,000
・母粒子のTHF不溶分量 :36重量%
・母粒子のガラス転移温度 :58℃
・母粒子の軟化点 :120℃
・母粒子中のワックス分散粒子径 :0.2μm
次に、上記のトナー母粒子に外添剤を外添し、外添後のトナーを輸送配管を通して篩装置に搬送する工程によりトナーを製造する本発明の製造方法につき説明する。
製造は、気温25℃の部屋に図2に示す装置構成を設置して実施した。なお、この図2の装置構成は全系として粉体輸送が吸引搬送となるよう吸引ブロワ−10で吸引される。外添装置1としてヘンシェルミキサFM−300型を用い、ヘンシェルミキサのジャケットに温度調節装置により温度調整された水を通水してヘンシェルミキサの内部を約45℃に制御した。ミキサー内に、前記母粒子50kgと、外添剤として個数平均一次粒子径約10nmのジメチルシリコーンオイル処理のシリカ0.5kg、個数平均一次粒子径約50nmのジメチルシリコーンオイル処理のシリカ1kg、個数平均一次粒子径約10nmのイソブチルトリメトキシシラン処理されたチタニア0.1kgを加えて、羽根1dの回転数1400rpmで約30分間混合した。その後に排出口1eからクッションタンク2に全量を払い出した。クッションタンク2で外添直後のトナーの温度を測定したところ、約55℃であった。
続いて、クッションタンク2からロータリバルブ3によりトナーを定量的に切り出し、50mmφのゴム製のフレキシブルチューブからなる輸送配管5に供給した。配管5の片側末端にボルテックスチューブ4を接続し、エアコンプレッサおよびアフタードライヤーから温度約10℃、圧力約0.5MPa、流量約1.5m3/minで圧縮空気を圧縮空
気取り入れ口4bに供給した。この際、低温吹き出し口4aから排出される冷気の温度は約−20℃であった。トナーは配管5を約200kg/hrの搬送速度で搬送された。そしてサイクロン6で捕集され、さらにその下部に設置されたロータリーバルブ7で切り出されて、さらに下部にある篩分け装置8(超音波振動篩分け機)に導入される。超音波振動篩分け機の超音波周波数は36kHzであり、使用する篩は、篩直径800mm、目開き62μm、線径約40μm、空間率約36%のSUS304製の綾織金網を用いた。篩面上に導入された直後のトナーの温度を測定したところ約20℃と低下していた。その時のトナーの凝集状態を目視したが、軟凝集状態などは観察されず、篩面上の挙動に異常は見られなかった。その後、超音波振動篩分け機の連続稼動により篩分けを実施したが、トナー全量の篩面の目詰まりも少なく篩通過効率の低下はほとんど無かった。また、搬送配管5を分解して、トナーの付着状態を観察したが、付着量は微量であった。
篩工程後のトナーをOPC感光体を有する接触型非磁性一成分現像方式のタンデム型フルカラープリンター(カシオ社製ColorPagePresto N4)の黒現像機に約200g投入し、5%の印字パターンにより約6000枚の単色画像による実写評価を行ったが、終了時点まで良好な画像濃度、カブリ、解像度等の画質であり、鮮明な黒色を呈した。その間、感光体フィルミングによる画像汚染やトナーの帯電低下による装置内汚染がなく、また非磁性一成分現像機の現像ローラやブレードにトナー融着もなく、機械的耐久性も良好であった。なお、その時の帯電量は投入初期時に−20μC/gであり、約6000枚後でも−18μC/gとほとんど変化が無かった。
[比較例1]
実施例1の図2の装置構成において、ボルテックスチューブ4を組み込まず、従って冷
気の送出を行わない以外は、実施例1と全く同一の処方の粒子を用い、かつ装置の稼動条件も全く同一としてトナーの製造を行った。
その結果、外添直後のクッションタンク2内でトナーの温度を測定したところ、約55℃であった。
引き続き配管5の吸引搬送後の篩分け装置8篩面上へ導入直後のトナーの温度は約40℃であり、その時のトナーの凝集状態を目視したが、篩面上に数mm〜数cmのトナー軟凝集物が多数観察され、篩面上での凝集物の踊り状態が発生していた。引き続き、超音波振動篩分け機を連続稼動させたが、時間と共に篩面の目詰まりが激しくなり篩通過効率は実施例1の約5割以下まで低下した。また、搬送配管5を分解して、トナーの付着状態を観察したが、配管内壁に厚く堆積した状態であり、付着量は大であった。
以下、篩工程後に得られたトナーを実施例1と全く同様にして実写評価したが、約1000枚程度で画像のカブリが激しくなり、現像機の周囲にトナーが飛散して実用上支障をきたす状態になった。また、消費量も増大して約3000枚でトナー切れとなり実写が継続できなくなった。なお、トナー帯電量は投入初期時に−15μC/gと低く、約4000枚時点では−9μC/gと大幅に低下していた。
[比較例2]
実施例1の図2の装置構成において、ボルテックスチューブ4を組み込まず、その代わ
りにエアコンプレッサおよびアフタードライヤーから温度約10℃、圧力約0.5MPa、流量約1.5m3/minの流量の圧縮空気を直接搬送配管5の末端から供給する以外は、実施例1と全く同一の処方の粒子を用い、かつ装置の稼動条件も全く同一としてトナーの製造を行った。
その結果、外添直後のクッションタンク2内でトナーの温度を測定したところ、約55℃であった。
引き続き配管5の吸引搬送後の篩分け装置8篩面上へ導入直後のトナーの温度は約32℃であり、その時のトナーの凝集状態を目視したところ、比較例1よりは改善されていたもののやはり篩面上で数mm程度のトナー軟凝集物の踊り状態が観察された。そして、超音波振動篩分け機を連続稼動させたが、時間と共に篩面の目詰まりが発生するようになり篩通過効率は実施例1の約8割程度に留まった。また、搬送配管5を分解してトナーの付着状態を観察したが、配管内壁にやや粉体が堆積しており、付着量はやや大であった。
以下、篩工程後に得られたトナーを実施例1と全く同様にして実写評価したが、約3000枚程度で画像のカブリが激しくなり、実用上支障をきたす状態になった。また、消費量も増大して約5000枚でトナー切れとなり実写が継続できなくなった。なお、トナー帯電量は投入初期時に−19μC/gであったが、約5000枚時点では−13μC/gと低下していた。
[実施例2]
実施例1の図2の装置構成において、篩分け装置8で振動方式を超音波振動方式からレ
シプロシフタ方式の振動篩に変更した以外は、実施例1と全く同一の処方の粒子を用い、かつ装置の稼動条件も全く同一としてトナーの製造を行った。篩網としては実施例1と同一のものを用いた。
その結果、外添直後のクッションタンク2内でトナーの温度を測定したところ、約55℃であった。
引き続き配管5の吸引搬送後の篩分け装置8篩面上へ導入直後のトナーの温度は約20℃であり、その時のトナーの凝集状態を目視したが、篩面上にトナー軟凝集物は観察されなかった。その後、超音波振動篩分け機を連続稼動させたが、実施例1に比べると時間と共に篩面の目詰まりがわずかに発生するようになり、篩の空間率が若干減少する傾向が見られたために、篩通過効率は実施例1の約9割程度となった。ただし、実用上支障をきたすものではなかった。また、搬送配管5を分解して、トナーの付着状態を観察したが、配管内壁への付着は軽微であった。
以下、実施例1と全く同様にして実写評価を行ったが、約6000枚の終了時点まで良好な画像濃度を示したが、わずかにカブリの上昇傾向が見られた。しかし、実用上支障のあるものではなかった。その間、感光体フィルミングによる画像汚染やトナーの帯電低下による装置内汚染がなく、また非磁性一成分現像機の現像ローラやブレードにトナー融着もなく、機械的耐久性も良好であった。なお、その時の帯電量は投入初期時に−19μC/gであり、約6000枚後でも−16μC/gと安定していた。