本発明のトナー(以下では単に「トナー」と呼ぶ場合がある。)は、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有し、その外形を平面に投影した投影像の輪郭に、屈曲点が1箇所以上3箇所以下あることを特徴とする。
これにより、トナーの外形が非球形であることから、クリーニングブレードへの引っ掛かりが良く、被転写体に対して点接触であるため、クリーニング性と転写性を両立できる。
本発明では、トナー粒子の外形を平面に投影した投影像の輪郭において、屈曲点同士を結ぶ直線(分割線)と輪郭とが囲む面積を、大きいものから順にS1、S2、S3としたときに、0.35≦(S2/S1)+(S3/S1)を満足することが好ましい。(S2/S1)+(S3/S1)が0.35未満であると、屈曲点を構成している粒子間の接触面積が小さく強度が保持できない。同時に、突起部が小さくなり、クリーニング不良を引き起こしやすい。また、屈曲点を構成しているそれぞれの粒子の曲率半径が大きく異なり、表面の帯電性、現像性および現像性が不均一である。
トナー粒子の投影像における分割線と輪郭とが囲む面積S1、S2、S3は以下のようにして算出できる。
図1は、屈曲点が2箇所あるトナー粒子の例を示す図であり、図2は、屈曲点が3箇所あるトナー粒子の例を示す図である。
図1(a)は、トナー粒子を撮影したSEM写真画像を示す図であり、図1(b)は、図1(a)の写真画像を輪郭抽出して得られた投影図上において、分割線で輪郭を2分割した図である。このとき、屈曲点同士を結ぶ分割線と輪郭とが囲む面積のうち大きい方をS1とし、小さい方をS2とする。ここで、S3は0である。
また、図2(a)は、トナー粒子を撮影したSEM写真画像を示す図であり、図2(b)は、図2(a)の写真画像を輪郭抽出して得られた投影図上において、分割線で粒子を4分割した図である。このとき、屈曲点同士を結ぶ分割線と輪郭とが囲む面積が大きいものから順にS1、S2、S3とする。
まず図1(a)および図2(a)に示すように、たとえば、走査型電子顕微鏡(
Scanning Electron Microscope、略称:SEM)などの電子顕微鏡などによりトナー粒子を撮影する。得られたトナー粒子の写真画像を、図1(b)および図2(b)に示すように、画像解析ソフトなどにより輪郭抽出し、その投影図上において屈曲点を結ぶ直線で輪郭を分割する。さらにこれを解析することによって各面積を算出する。
粒子の全面積を1としたとき、図1(b)のS1は0.636、S2は0.364である。したがってS2/S1は0.572と算出され、S3は0であるので、(S2/S1)+(S3/S1)=0.572(≧0.35)である。また、図2(b)のS1は0.250、S2は0.248、S3は0.201である。したがってS2/S1は0.992、S3/S1は0.804と算出され、(S2/S1)+(S3/S1)は1.796(≧0.35)である。
トナー粒子の外形を平面に投影した投影像の輪郭に、屈曲点が1箇所以上3箇所以下あるトナーの含有率としては、60個数%以上が好ましく、80個数%以上がより好ましく、90個数%以上がさらに好ましい。60個数%未満では、球形のトナーまたは屈曲点がさらに多い形状のトナーの混在量が多くなるため、クリーニング性と転写性の両立の効果を十分に発揮することができない。
このような投影像は、たとえば、走査型電子顕微鏡で撮影した画像(SEM画像)において、画像処理によって輪郭抽出を行うことで得られる。
抽出された輪郭の重心から任意の角度x(rad)に対して、前記輪郭の重心から輪郭までの距離f(x)(μm)をプロットした波形をフーリエ級数展開したとき、式(1)の係数a0とa2とb2が0.15≦a0 -1(a2 2+b2 2)1/2≦0.38を満足することを特徴とする。
このような条件を満足するような粒子形状は、凝集過程で2個の微粒子が接触することにより、2個の微粒子が対称に接合したような繭型形状のトナー粒子を形成したものと考えられる。したがって、輪郭に屈曲点が2箇所あり、クリーニングブレードへの引っ掛かりが良く、被転写体に対して点接触のため、クリーニング性と転写性を両立できる。また、トナー粒子の曲率が一定となることから、トナー表面の帯電も均一となる。a0 -1(a2 2+b2 2)1/2と規定することにより、重心から輪郭までの距離を任意の角度からプロットを開始しても、形状を規定することができる。
a0 -1(a2 2+b2 2)1/2が0.15未満では窪みが小さく、クリーニング性向上の効果を発揮することができない。0.38より大きい場合は窪みが大きいため、外力により崩壊しやすくなるため、転写性、帯電均一性の効果を発揮することができない。
抽出された輪郭の重心から輪郭までの距離が最大となる点の角度を0(rad)としたときの、任意の角度x(rad)における前記輪郭の重心から輪郭までの距離f(x)(μm)に対してプロットした波形をフーリエ級数展開したとき、式(1)の係数a0とa2とが0.15≦a2/a0≦0.35を満足することが好ましい。
a2/a0が0.15未満では窪みが小さく、クリーニング性向上の効果を発揮することができない。0.35より大きい場合は窪みが大きいため、外力により崩壊しやすくなるため、転写性、帯電均一性の効果を発揮することができない。
図3は、屈曲点が2箇所あるトナー粒子の投影画像の輪郭を示す模式図である。図3に示すように、フーリエ係数の比a2/a0を変化させると、屈曲点が2箇所あるトナー粒子の輪郭形状も変化する。フーリエ係数a2/a0が、0.15以上0.35以下である屈曲点を2箇所有する形状である場合、クリーニングブレードへの引っ掛かりが良好になり、また被転写体に対して点接触するため、クリーニング性と転写性とを両立できる。また、トナーの曲率が一定となることから、トナー表面の帯電量も均一になる。フーリエ係数a2/a0が0.15未満では窪みが小さいため、クリーニング性向上の効果を発揮することができない。また0.35より大きい場合は窪みが大きすぎるため、外力により崩壊しやすくなるため、転写性および帯電均一性などの効果を発揮することができない。
また、抽出された輪郭の重心から任意の角度x(rad)に対して、前記輪郭の重心から輪郭までの距離f(x)(μm)をプロットした波形をフーリエ級数展開したとき、式(1)の係数a0とa3とb3が0.08≦a0 -1(a3 2+b3 2)1/2≦0.22を満足することを特徴とする。
このような条件を満足するような粒子形状は、凝集過程で3個または4個の微粒子が接合し、略三角またはテトラポット型形状のトナー粒子を形成したものと考えられる。したがって、輪郭に屈曲点が3箇所あり、クリーニングブレードへの引っ掛かりが良く、被転写体に対して点接触のため、クリーニング性と転写性を両立できる。また、トナー粒子の曲率が一定となることから、トナー表面の帯電も均一となる。a0 -1(a3 2+b3 2)1/2と規定することにより、重心から輪郭までの距離を任意の角度からプロットを開始しても、形状を規定することができる。
a0 -1(a3 2+b3 2)1/2が0.08未満では窪みが小さく、クリーニング性向上の効果を発揮することができない。0.22より大きい場合は窪みが大きいため、外力により崩壊しやすくなるため、転写性、帯電均一性の効果を発揮することができない。
また、抽出された輪郭の重心から輪郭までの距離が最大となる点の角度を0(rad)としたときの、任意の角度x(rad)における前記輪郭の重心から輪郭までの距離f(x)(μm)に対してプロットした波形をフーリエ級数展開したとき、式(1)の係数a0とa3とが0.08≦a3/a0≦0.20を満足することが好ましい。
a3/a0が0.08未満では窪みが小さく、クリーニング性向上の効果を発揮することができない。0.20より大きい場合は窪みが大きいため、外力により崩壊しやすくなるため、転写性、帯電均一性の効果を発揮することができない。
図4は、屈曲点が3箇所あるトナー粒子の投影画像の輪郭を示す模式図である。図4に示すように、フーリエ係数の比a3/a0を変化させると、屈曲点が3箇所あるトナー粒子の輪郭形状も変化する。フーリエ係数の比a3/a0が、0.08以上0.20以下である屈曲点を3箇所有する形状である場合、クリーニングブレードへの引っ掛かりが良好になり、また被転写体に対して点接触するため、クリーニング性と転写性とを両立できる。また、トナーの曲率が一定となることから、トナー表面の帯電量も均一になる。フーリエ係数a3/a0が0.08未満では窪みが小さいため、クリーニング性向上の効果を発揮することができない。また0.20より大きい場合は窪みが大きすぎるため、外力により崩壊しやすくなり、転写性および帯電均一性などの効果を発揮することができない。
図5は、屈曲点が1箇所あるハート型トナー粒子の投影画像の輪郭を示す模式図であり、図6は、屈曲点が2箇所あるだるま型トナー粒子の投影画像の輪郭を示す模式図であり、図7は、屈曲点が2箇所あるピーナッツ型トナー粒子の投影画像の輪郭を示す模式図である。
図5に示すように、フーリエ係数のa0 -1(a2 2+b3 2)1/2を変化させるとトナー粒子の輪郭形状も変化する。0.10≦a0 -1(a2 2+b3 2)1/2≦0.38である場合、凝集過程で接合後の微粒子の2個の屈曲点の一方が平滑になり、中心に屈曲点が1個残存したトナー粒子を形成したものと考えられる。このような形状のトナーはクリーニングブレードへの引っ掛かりが良く、被転写体に対して点接触のため、クリーニング性と転写性を両立できる。a0 -1(a2 2+b3 2)1/2と規定することにより、長軸と短軸との交点から輪郭までの距離ではなく、重心から輪郭までの距離をプロットしても、形状を規定することができる。
図6に示すように、フーリエ係数のa0 -1(a2 2+a3 2)1/2を変化させるとトナー粒子の輪郭形状も変化する。0.10≦a0 -1(a2 2+a3 2)1/2≦0.38である場合、凝集過程で異なる粒径の微粒子が接触して接合し、だるま型形状のトナー粒子を形成したものと考えられる。したがって、繭型形状のトナーと同様に輪郭に屈曲点が2箇所あり、クリーニングブレードへの引っ掛かりが良く、被転写体に対して点接触のため、クリーニング性と転写性を両立できる。
図7に示すように、フーリエ係数のa0 -1(a2 2+b4 2)1/2を変化させるとトナー粒子の輪郭形状も変化する。0.09≦a0 -1(a2 2+b4 2)1/2≦0.38である場合、凝集過程で微粒子が非対称に接触して接合し、ピーナッツ型形状のトナー粒子を形成したものと考えられる。したがって、繭型形状のトナーと同様に輪郭に屈曲点が2箇所あり、クリーニングブレードへの引っ掛かりが良く、被転写体に対して点接触のため、クリーニング性と転写性を両立できる。
以上のように、図5〜図7に示したトナー粒子も繭型トナー粒子、テトラポット型トナー粒子と同様、フーリエ係数が規定値以下では窪みが小さいため、クリーニング性向上の効果を発揮することができない。また、規定値以上では窪みが大きすぎるため、外力により崩壊しやすくなり、転写性および帯電均一性などの効果を発揮することができない。
抽出された輪郭の長軸と短軸との交点から輪郭までの距離が最大となる点の角度を0(rad)としたときの、任意の角度x(rad)における前記輪郭の重心から輪郭までの距離f(x)(μm)に対してプロットした波形をフーリエ級数展開したとき、式(1)の係数a0とa2とb1とが0.05≦a2/a0≦0.15および0.25≦(a2/a0+b1/a0)≦0.50を満足することが好ましい。
フーリエ係数の比が、0.05≦a2/a0≦0.15および0.25≦(a2/a0+b1/a0)≦0.50である屈曲点を1箇所有する形状である場合、クリーニングブレードへの引っ掛かりが良好になり、また被転写体に対して点接触するため、クリーニング性と転写性とを両立できる。また、トナーの曲率が一定となることから、トナー表面の帯電量も均一になる。フーリエ係数の比a2/a0が0.05未満(0.25≦(a2/a0+b1/a0)≦0.50)では真球に近く、クリーニング性向上の効果を発揮することができない。また、フーリエ係数の比a2/a0が0.15以上(0.25≦(a2/a0+b1/a0)≦0.50)では直線部分が多く曲率が一定とならないため、転写性とトナー表面の帯電量が均一になる効果を発揮することができない。a2/a0+b1/a0が0.25未満(0.05≦a2/a0≦0.15)では、窪みが小さいため、クリーニング性向上の効果を発揮することができない。a2/a0+b1/a0が0.5以上(0.05≦a2/a0≦0.15)は、内側に楕円が存在する形状で、数学的に輪郭を示す限度である。
トナー粒子におけるフーリエ係数は、以下のようにして算出できる。
図8は、屈曲点が2箇所ある繭型形状のトナー粒子を撮影したSEM写真画像を示す図であり、図9は、図8の写真画像を輪郭抽出して得られる投影図であり、図10は、中心点から360度を均等に128等分した放射状線図であり、図11は、図10の放射状線図の中心に図9の投影図における輪郭の重心座標を重ねたときの図である。
まず図8に示すように、たとえば、SEMなどの電子顕微鏡などによりトナー粒子を撮影する。得られたトナー粒子の写真画像を、図9に示すように、画像解析ソフトなどにより輪郭抽出して投影図とし、さらにこれを解析することによって輪郭の重心にあたる座標を算出する。その後、図10に示すような中心から360度を均等に128等分した放射状線図の中心に、図11に示すように、投影図における輪郭の重心座標を重ね、輪郭の重心から輪郭までの長さを、128本それぞれの放射線について、画像ソフトにより算出する。このようにして算出した128個の重心から輪郭までの長さの中で、最長のものを始点(0度)とし、それぞれの角度に対する長さを順次プロットする。これを市販の分析ツールなどを用いてフーリエ解析し、実数部分から下記式(2)のcosのフーリエ係数a1〜a64を算出し、虚数部分から下記式(2)のsinのフーリエ係数b1〜b64を算出する。
f(x)=a0/2+Σ(ancos[nx]+bnsin[nx])
(n:1〜64) …(2)
このとき、上記の式のa0は体積平均粒子径に相当し、a0とanおよびbnとは比例関係にあるため、形状を表すフーリエ係数は、a0に対する割合であるan/a0、bn/a0で表される。無作為に抽出した100個のトナー粒子に対して、このようにフーリエ係数a2、a3、b2、b3およびb4を算出する。
得られたトナー粒子の体積平均粒子径としては、3μm以上10μm以下であることが好ましい。これにより、高精細かつ高解像の画像を形成することができる。体積平均粒子径が3μm未満であると、トナー粒子の粒径が小さくなり過ぎ高帯電化および流動性低下が起こるおそれがある。このような高帯電化および流動性低下が発生すると、感光体にトナーを安定して供給することができなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生するおそれがある。一方、体積平均粒子径が10μmを超えると、トナー粒子の粒子径が大きすぎ、高精細な画像を得ることができない。このように、トナー粒子の粒径が大きくなることによって比表面積が減少し、トナーの帯電量が低くなる。トナーの帯電量が低くなると、トナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。
図12は、本発明の一実施形態におけるトナーの製造方法の手順を示す工程図である。本発明の一実施形態におけるトナーの製造方法は、ステップS1の微粒子調製工程と、ステップS2の凝集工程と、ステップS3の洗浄工程と、ステップS4の分離工程と、ステップS5の乾燥工程とを含む。
〔微粒子調製工程〕
ステップS1の微粒子調製工程では、少なくとも樹脂微粒子および着色剤微粒子が水性媒体中に分散されて構成される分散液(A)、または、少なくとも結着樹脂および着色剤を含む着色樹脂微粒子が水性媒体中に分散されて構成される分散液(B)を調製する。
水性媒体としては特に制限されないけれども、工程管理の容易さ、全工程後の廃液処理、取扱い易さなどを考慮すると、水が好ましい。水としては、イオン交換水、蒸留水、純水などを用いることができる。
樹脂微粒子および着色剤微粒子が水性媒体中に分散されて構成される分散液(A)と、結着樹脂および着色剤を含む着色樹脂微粒子が水性媒体中に分散されて構成される分散液(B)の調製方法は異なるので、まず、樹脂微粒子および着色剤微粒子が水性媒体中に分散されて構成される分散液(A)の調製方法について説明する。
樹脂微粒子および着色剤微粒子が水性媒体中に分散されて構成される分散液(A)は、樹脂微粒子が水性媒体中に分散された樹脂微粒子分散液(A1)と着色剤微粒子が水性媒体中に分散された分散液(A2)を混合することによって得られる。
樹脂微粒子分散液(A1)の結着樹脂は、特に限定されるものではないが、たとえば、熱可塑性の重合体、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、エチレン、プロピレン、ブタジエン等のポリオレフィン類等の単量体等の重合体又はこれらを2種以上組み合わせて得られる共重合体又はこれらの混合物、さらにはエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等、非ビニル縮合系樹脂、或いはこれらと前記ビニル系樹脂との混合物及びこれらの共存下でビニル系単量体を重合する際に得られるグラフト重合体等をあげることができる。これらの結着樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
結着樹脂モノマーの場合は、界面活性剤等を用いて、乳化重合やシード重合により、樹脂微粒子の水分散液を作製することができ、その他の樹脂の場合は、樹脂を水に対する溶解度の比較的低い油性の溶剤に溶解し、水中に投入して、界面活性剤や高分子電解質とともにホモジナイザー等の分散機により水中に微粒子分散させ、その後加熱または減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂微粒子分散液(A1)を調整することができる。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)を考慮して選択されるが、特に限定されるものではなく、広い範囲から適宜選択できる。しかしながら、得られるトナーの保存安定性および定着性を考慮すると、50℃以上80℃以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移点(Tg)が50℃未満であると、画像形成装置内部においてトナーが熱凝集するブロッキングを発生しやすくなり、保存安定性が低下するおそれがある。結着樹脂のガラス転移点(Tg)が80℃を超えると、記録媒体へのトナーの定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。結着樹脂の軟化点(Tm)についても、特に限定されず広い範囲から適宜選択できるが、150℃以下であることが好ましく、さらには60℃以上120℃以下であることが好ましい。60℃未満であると、トナーの保存安定性が低下し、画像作製装置内部でトナーの熱凝集が起こりやすくなり、トナーを安定して像担持体に供給することができず、現像不良が発生するおそれがある。また画像作製装置の故障が誘発されるおそれもある。また、トナーを記録媒体に定着させる際に、トナーが溶融または軟化しにくくなるので、トナーの記録媒体への定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。結着樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、5000〜500000であることが好ましい。
樹脂微粒子の分子量を低下させる目的で、分子量調整剤を使用することができる。分子量調整剤としては、たとえば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オキチルメルカプタンなどのメルカプタン類、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類などを挙げることができる。これらの分子量調整剤は、重合開始前、あるいは、重合の途中で添加することができる。分子量調整剤は、結着樹脂モノマー100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
樹脂微粒子の分子量を増加させる目的で架橋性単量体を使用することができる。架橋性単量体としては、たとえば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能性単量体類を挙げることができる。これらの架橋性単量体は、重合開始前、あるいは、重合の途中で添加することができる。架橋性単量体は、結着樹脂モノマー100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の割合で用いられる。
樹脂微粒子の平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01〜1μmであるのが好ましい。前記平均粒径が1μmを越えると、最終的に得られるトナー粒子の粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、トナー性能や信頼性の低下を招いたりし易い。
樹脂微粒子分散液(A1)の調製に使用するは水性媒体には、無機または有機の分散剤を含有する水性媒体を用いることができ、分散剤を添加することが好ましい。分散剤は結着樹脂モノマーなどのトナー組成物を水性媒体に添加する前に、水性媒体に添加しておくことが好ましい。
着色剤微粒子分散液(A2)は、着色剤を水性媒体中に分散することによって得られる。着色剤微粒子の調製に使用する着色剤としては特に制限されず、たとえば、有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などを使用できる。
着色剤は、水性媒体100重量部に対して5重量部以上50重量部以下の割合で用いられることが好ましく、20重量部以上40重量部以下の割合で用いられることがさらに好ましい。着色剤の使用割合が5重量部未満であると、水性媒体に対する着色剤の量が少なすぎるので分散均一性が低下する。着色剤の使用割合が50重量部を超えると、水性媒体に対する着色剤の量が多すぎるので、水性媒体の粘度が高くなり過ぎ、これによっても分散性が低下する。
前記着色剤の平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01〜1μmであるのが好ましい。前記平均粒径が1μmを越えると、最終的に得られるトナー粒子の粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招き易くなったりする。
黒色着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライト、マグネタイトなどが挙げられ
る。
黄色着色剤としては、たとえば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などが挙げられる。
橙色着色剤としては、たとえば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
赤色着色剤としては、たとえば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
紫色着色剤としては、たとえば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
青色着色剤としては、たとえば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
緑色着色剤としては、たとえば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGおよびC.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
白色着色剤としては、たとえば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白および硫化亜鉛などの化合物が挙げられる。
着色剤は1種を単独で使用でき、または2種以上の異なる色のものを併用できる。また、同色のものであっても、2種以上を併用できる。
着色剤微粒子分散液(A2)の調製に使用する水性媒体には、無機または有機の分散剤を含有する水性媒体を用いることができ、分散剤を添加することが好ましい。分散剤は着色剤などのトナー組成物を水性媒体に添加する前に、水性媒体に添加しておくことが好ましい。
無機分散剤としては、親水性の無機分散剤であることが好ましい。親水性の無機分散剤を用いることによって、液状媒体中での着色剤の微粉の粒径を一層均一にすることができる。親水性の無機分散剤としては、たとえば、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、粘土、珪藻土、ベントナイトなどが挙げられる。これらの中でも、炭酸カルシウムが好ましい。
上記無機分散剤は、その1次粒子の個数平均粒径が1nm以上1000nm以下であることが好ましく、5nm以上500nm以下であることがより好ましく、10nm以上300nm以下であることがさらに好ましい。無機分散剤の1次粒子の個数平均粒径が1nm未満であると、無機分散剤を水性媒体中に分散させることが困難となる。無機分散剤の1次粒子の個数平均粒径が1000nmを超えると、着色剤の粗粉の粒径と無機分散剤の粒径との差が小さくなり、着色剤の粗粉を液体中に安定して分散維持させることが困難となる。
無機分散剤は、着色剤100重量部に対して1重量部以上300重量部以下の範囲で使用されることが好ましく、4重量部以上100重量部以下の範囲で使用されることがより好ましい。無機分散剤の使用量が1重量部未満であると、無機分散剤を水性媒体中に分散させることが困難となる。無機分散剤の使用量が300重量部を超えると、液状媒体の粘度が高くなり過ぎ、分散性が低下するおそれがある。
また水性媒体には、無機分散剤とともに高分子分散剤が添加されてもよい。高分子分散剤としては、たとえば、親水性のものを用いることが好ましく、カルボキシル基を有するものがより好ましく、ヒドロキシプロポキシル基、メトキシル基などの親油基を持たないものが特に好ましい。このような高分子分散剤としては、たとえば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースなどの水溶性セルロースエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、カルボキシメチルセルロースが特に好ましい。高分子分散剤は、着色剤100重量部に対して0.1重量部以上5.0重量部以下の割合で用いられることが好ましい。
有機分散剤としては、アニオン系分散剤であることが好ましい。アニオン系分散剤は、水中での着色剤粒子の分散性を向上させる能力に優れる。アニオン系分散剤としては、たとえば、スルホン酸型アニオン系分散剤、硫酸エステル型アニオン系分散剤、ポリオキシエチレンエーテル型アニオン系分散剤、リン酸エステル型アニオン系分散剤、ポリアクリル酸塩などが挙げられる。アニオン系分散剤の具体例としては、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンフェニルエーテルなどを好ましく使用できる。アニオン系分散剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
また有機分散剤としては、アニオン系分散剤に限定されることなく、カチオン系分散剤であってもよい。カチオン系分散剤としては、たとえば、アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン系分散剤、アルキルアミドアミン型カチオン系分散剤、アルキルジメチルベンジルアンモニウム型カチオン系分散剤、カチオン化多糖型カチオン系分散剤、アルキルベタイン型カチオン系分散剤、アルキルアミドベタイン型カチオン系分散剤、スルホベタイン型カチオン系分散剤、アミンオキサイド型カチオン系分散剤、金属塩などが好ましい。金属塩としては、たとえば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの塩化物、硫酸塩などが挙げられる。
これらの中でも、アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン系分散剤がさらに好ましい。アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン系分散剤の具体例としては、たとえば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。カチオン系分散剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
有機分散剤の添加量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは着色剤100重量部に対して0.1重量部以上5重量部以下である。添加量が0.1重量部未満では、分散剤による着色剤の分散効果が不充分になり、凝集が起こるおそれがある。有機の分散剤が5重量部を超えて添加されても、分散効果はそれ以上向上せず、着色剤スラリーの粘性が高くなることによって、却って着色剤の分散性が低下する。その結果凝集が起こるおそれがある。
分散剤としては、市販のものを用いることもできる。市販の分散剤としては、たとえば、BYK−182、BYK−161、BYK−116、BYK−111、BYK−2000(以上ビックケミー・ジャパン株式会社製)、Solsperse−2000、Solsperse−38500(以上アビシア株式会社製)、EFKA−4046、EFKA−4047(以上エフカーケミカルズ社製)、サーフィノールGA(エアープロダクツ社製)などが挙げられる。これらの市販の分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
このような市販の分散剤は、着色剤100重量部に対して10重量部以上100重量部以下の割合で使用されることが好ましく、20重量部以上50重量部以下の割合で使用されることがより好ましい。市販の分散剤の使用割合が10重量部未満であると、分散剤による着色剤の分散効果が不充分になり、凝集が起こるおそれがある。市販の分散剤の使用割合が100重量部を超えると、着色剤スラリーの粘性が高くなることによって、着色剤の分散性が低下する。その結果凝集が起こるおそれがある。
水性媒体と分散剤との混合は、特に限定されることなく公知の方法によって行うことができる。無機の分散剤と水性媒体とを混合する場合、ボールミル、サンドミルなどのメディア入り分散機、高圧分散機、超音波分散機などを用いて、無機分散剤を水性媒体に水中に分散させることができる。有機の分散剤と水性媒体とを混合する場合、水中に分散剤を均一に溶解させることができる方法であれば、どのような方法によって添加、分散が行われてもよい。水性媒体と分散剤とを混合して得られた液状媒体と着色剤とは、たとえば高圧ホモジナイザーで処理される。これによって着色剤が細粒化され、着色剤が液状媒体中に分散した着色剤スラリー、すなわち着色剤微粒子分散液(A2)を得ることができる。
また、少なくとも樹脂微粒子および着色剤微粒子が水性媒体中に分散されて構成される分散液(A)には、トナーの定着性の改善の目的で水性媒体中に離型剤を分散させた離形剤微粒子分散液を入れることもできる。
離型剤としては、特に限定されるものではないが、たとえば、ポリエステル系ワックスとその誘導体、パラフィンワックスとその誘導体、マイクロクリスタリンワックスとその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスとその誘導体、ポリオレフィンワックスとその誘導体、低分子量ポリプロピレンワックスとその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)とその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスとその誘導体、ライスワックスとその誘導体、キャンデリラワックスとその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸とその誘導体、長鎖アルコールとその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーと上記ワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーと上記ワックスとのグラフト変性物などが含まれる。
離型剤の融点は、60℃以上130℃以下であることが好ましい。離型剤の融点が60℃未満であると、画像形成装置内でトナー粒子同士が凝集し、保存安定性が低下するおそれがある。離型剤の融点が130℃を超えると、トナーを加熱して定着させるときに離型剤が充分に溶融せず、高温オフセットを発生するおそれがある。したがって、離型剤の融点が上記好適な範囲であると、保存安定性に優れるとともに、高温オフセットを防止することができるトナーを得ることができる。離型剤の含有量としては特に限定されるものではなく広い範囲から適宜選択できるが、好ましくはトナー組成物全量の0.2重量%〜20重量%である。
さらに、少なくとも樹脂微粒子および着色剤微粒子が水性媒体中に分散されて構成される分散液(A)には、トナー物性の改善の目的でその他の添加剤を水性媒体中に分散させた分散液を入れることもできる。
つぎに結着樹脂および着色剤を含む着色樹脂微粒子が水性媒体中に分散されて構成される分散液(B)の調製方法について説明する。着色樹脂微粒子は少なくとも結着樹脂、及び、着色剤からなるトナー組成物を溶融混練した溶融混練物を水性媒体中に分散することによって得られる。
着色樹脂微粒子の調製に用いる結着樹脂は、特に限定されるものではなくトナー用結着樹脂として常用されるものであればよいが、たとえば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂が好ましい。これらの樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。また、同一種の樹脂であっても、分子量、単量体組成などのいずれか1つまたは複数が異なる樹脂を複数種併用することができる。
ポリエステル樹脂は透明性に優れ、低温定着性および二次色再現性に優れるので、カラートナー用の結着樹脂に好適である。ポリエステル樹脂としては公知のものを使用でき、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合物などが挙げられる。多塩基酸としては、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化物などが挙げられる。多塩基酸は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。多価アルコールとしてもポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類などが挙げられる。多価アルコールは1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応は常法に従って実施でき、たとえば、有機溶媒の存在下または非存在下および重縮合触媒の存在下に、多塩基酸と多価アルコールとを接触させることによって行われ、生成するポリエステル樹脂の酸価、軟化点などが所定の値になったところで終了する。これによって、ポリエステル樹脂が得られる。多塩基酸の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用いると、脱メタノール重縮合反応が行われる。この重縮合反応において、多塩基酸と多価アルコールとの配合比、反応率などを適宜変更することによって、たとえば、ポリエステル樹脂の末端のカルボキシル基含有量を調整でき、ひいては得られるポリエステル樹脂の特性を変性できる。また多塩基酸として無水トリメリット酸を用いて、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を導入することによっても、変性ポリエステルが得られる。なお、ポリエステル樹脂の少なくとも主鎖または側鎖のうちいずれか一方にカルボキシル基、スルホン酸基などの親水性基を結合させた、水中における自己分散性ポリエステルも使用できる。またポリエステル樹脂とアクリル樹脂とをグラフト化して用いてもよい。
アクリル樹脂としては、特に限定されるものではないが、酸性基含有アクリル樹脂を好ましく使用できる。酸性基含有アクリル樹脂は、たとえば、アクリル樹脂モノマーまたはアクリル樹脂モノマーとビニル系モノマーとを重合させるに際し、少なくとも、酸性基または親水性基を含有するアクリル樹脂モノマーを単独で、またはこれに酸性基または親水性基を有するビニル系モノマーを併用して重合することによって製造できる。アクリル樹脂モノマーとしては、特に限定されるものではなく公知のものを使用でき、たとえば、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルなどが挙げられる。アクリル樹脂モノマーは置換基を有していてもよい。これらのアクリル樹脂モノマーの具体例としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシルなどのアクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有アクリル酸エステル系単量体や水酸基含有メタアクリル酸エステル系単量体などが挙げられる。アクリル樹脂モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。ビニル系モノマーとしては、特に限定されるものではなく公知のものを使用でき、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、臭化ビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルなどが挙げられる。ビニル系モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。重合は、一般的なラジカル開始剤を用い、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などによって行われる。
スチレン−アクリル樹脂としては、特に限定されるものではないが、たとえば、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、特に限定されるものではなく広い範囲から適宜選択できるが、得られるトナーの保存安定性および定着性を考慮すると、50℃以上80℃以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移点(Tg)が50℃未満であると、画像形成装置内部においてトナーが熱凝集するブロッキングを発生しやすくなり、保存安定性が低下するおそれがある。結着樹脂のガラス転移点(Tg)が80℃を超えると、記録媒体へのトナーの定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。結着樹脂の軟化店(Tm)は、特に限定されず広い範囲から適宜選択できるが、150℃以下であることが好ましく、さらには60℃以上120℃以下であることが好ましい。60℃未満であると、トナーの保存安定性が低下し、画像作製装置内部でトナーの熱凝集が起こりやすくなり、トナーを安定して像担持体に供給することができず、現像不良が発生するおそれがある。また画像作製装置の故障が誘発されるおそれもある。120℃を超えると、微粒子調製工程において溶融混練する際に、結着樹脂が軟化しにくくなるため溶融混練が困難になり、結着樹脂中における着色剤、離型剤および帯電制御剤などの分散性が低下するおそれがある。またトナーを記録媒体に定着させる際に、トナーが溶融または軟化しにくくなるので、トナーの記録媒体への定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。結着樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、5000〜500000であることが好ましい。
着色剤としては、特に限定されるものではなく、着色剤微粒子分散液(A2)の調製と同様のものを使用することができる。
離型剤としては、特に限定されるものではなく、着色剤微粒子分散液(A2)の調製と同様のものを使用することができる。
帯電制御剤としては、特に限定されるものではないが、正電荷制御用および負電荷制御用のものを使用できる。正電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。負電荷制御用の帯電制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。帯電制御剤は1種を単独で使用でき、または必要に応じて2種以上を併用できる。帯電制御剤の含有量としては特に限定されるものではなく広い範囲から適宜選択できるが、好ましくはトナー組成物全量の0.5重量%〜3重量%である。
上述のような結着樹脂および着色剤、ならびにその他のトナー添加成分を含むトナー組成物を、混合機で乾式混合した後、結着樹脂の軟化点以上熱分解温度未満の温度、たとえば80℃以上200℃以下、好ましくは100℃以上150℃以下程度に加熱して溶融混練し、結着樹脂を軟化させて結着樹脂中に着色剤およびトナー添加成分を分散させる。トナー組成物は、予備混合されることなくそのまま溶融混練されてもよいが、予備混合した後に溶融混練を行う方が、着色剤、離型剤などの結着樹脂以外の添加成分の結着樹脂中での分散性を向上させ、得られるトナーの帯電性能などの特性をより均一に発現させることができるので好ましい。
混合機としては公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサー(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
混練機としては公知のものを使用でき、たとえば、二軸押出機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。さらに具体的には、たとえば、PCM−30、PCM−65/87(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)などの一軸または二軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機などが挙げられる。これらの中でも、オープンロール方式の混練機が好ましい。
トナー組成物の混練物は溶融混練後室温まで冷却された後、所定の粒子径に粉砕される。粉砕には、カッターミル、フェザーミル、ジェットミルなどの粉体粉砕機が用いられる。これによってトナー組成物の混練物の粉砕物が得られる。以下、本明細書において、トナー組成物が溶融混練後粉砕されて得られる粉砕物を、溶融混練物という。溶融混練物の体積平均粒子径は特に限定されるものではないが、好ましくは50μm〜1000μmであり、さらに好ましくは150μm〜400μmである。
以上のようにして得られる溶融混練物は、界面活性剤を含む水性媒体と混合される。水性媒体としては、結着樹脂を含む溶融混練物を溶解せず、かつ均一に分散させ得る液体であれば特に限定されるものではないが、工程管理の容易さ、全工程後の廃液処理、取扱い易さなどを考慮すると、水であることが好ましい。水性媒体として用いる水は、導電率が20μS/cm以下の水であることが好ましい。このような洗浄水は、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法、逆浸透法などによって調製することができる。またこれらの方法のうち、2種以上を組合わせて水を調製してもよい。
界面活性剤は溶融混練物の水性媒体に対する分散性を一層向上させる。界面活性剤は水性媒体に溶解するが、添加することによって溶融混練物を溶解することなく、かつ均一に分散させ得るものが選択される。界面活性剤は、溶融混練物を水性媒体に添加する前に、水性媒体に添加しておくことが好ましい。界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤であることが好ましい。アニオン系界面活性剤は、樹脂微粒子の水中での分散性を向上させる能力に優れる。アニオン系界面活性剤としては、たとえば、スルホン酸型アニオン系分散剤、硫酸エステル型アニオン系分散剤、ポリオキシエチレンエーテル型アニオン系分散剤、リン酸エステル型アニオン系分散剤、ポリアクリル酸塩などが挙げられる。アニオン系界面活性剤の具体例としては、たとえば、ポリアクリル酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンフェニルエーテルなどを好ましく使用できる。アニオン系界面活性剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。また界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤に限定されることなく、後述の凝集剤として用いられるカチオン系分散剤であってもよい。
界面活性剤の添加量は特に限定されるものではないが、好ましくは溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物の総重量の0.1重量%〜5重量%である。0.1重量%未満では界面活性剤による水性媒体中への樹脂微粒子の分散効果が不充分になり、過凝集が起こるおそれがある。5重量%を超えて添加しても分散効果はそれ以上向上せず、それどころか界面活性剤を含む水性媒体中に樹脂微粒子を分散した際の粘性が高くなることによって樹脂微粒子の分散性が低下し、その結果、過凝集が起こるおそれがある。
水性媒体には、分散安定剤、増粘剤などを添加してもよい。分散安定剤は、水性媒体中における溶融混練物の分散を安定にすることができる。増粘剤は溶融混練物の一層の微粒化に有効である。
分散安定剤としては、この分野で常用されるものを使用できる。その中でも水溶性高分子分散安定剤が好ましい。水溶性高分子分散安定剤としては、たとえば、アクリル酸、メタアクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのアクリル系単量体、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有アクリル系単量体、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステルなどのエステル系単量体、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのビニルアルコール系単量体、ビニルアルコールとのエーテル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなどのビニルアルキルエーテル系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルアルキルエステル系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、これらのメチロール化合物などのアミド系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド系単量体、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどのビニル窒素含有複素環系単量体、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、メタクリル酸アリル、ジビニルベンゼンなどの架橋性単量体などから選ばれる1種または2種の親水性単量体を含むアクリル系ポリマー、メタアクリル系ポリマー、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系ポリマー、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸カリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル硫酸アンモニウムなどのポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウムなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩などが挙げられる。分散安定剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。分散安定剤の添加量としては特に限定されるものではないが、好ましくは、溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物の総重量の0.05重量%〜10重量%であり、さらに好ましくは0.1重量%〜3重量%である。
増粘剤としては、合成高分子多糖類および天然高分子多糖類から選ばれる多糖類系増粘剤が好ましい。合成高分子多糖類としては公知のものを使用でき、たとえば、カチオン化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、イオン化デンプン誘導体、デンプンと合成高分子のブロック重合体などが挙げられる。天然高分子多糖類としては、たとえば、ヒアルロン酸、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グァーガム、ジェランガムなどが挙げられる。増粘剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。増粘剤の添加量としては特に限定されるものではないが、好ましくは溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物の総重量の0.01重量%〜2重量%である。
少なくとも結着樹脂および着色剤を含む溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合は、一般的な混合機を用いて行われ、それによって溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体とを含む混合物が得られる。ここで、水性媒体に対する溶融混練物の添加量としては特に限定されるものではないが、好ましくは、溶融混練物と、界面活性剤を含む水性媒体との混合物の総重量の3重量%〜45重量%、さらに好ましくは5重量%〜30重量%である。
溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合は、加熱下または冷却下で実施してもよいが、通常は室温下で行われる。
こうして得られた溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物を粗粉砕して、溶融混練物の粗粉を含む水性スラリー(以下「粗粉スラリー」という)を得る。本実施の形態では、高圧ホモジナイザー法による粗粉砕を行う。高圧ホモジナイザー法とは、加圧条件下に粒子を粉砕する装置を用い、粉砕段階、減圧段階、冷却段階からなる微粒化方法であり、溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物を15MPa以上120MPa以下の加圧条件下であり、かつ10℃以上結着樹脂のガラス転移温度(Tg)未満の温度条件下にて、粉砕用ノズルを通過させ、気泡が発生しない圧力条件まで徐々に減圧し、冷却することによって行う。
粉砕段階では、高圧ホモジナイザーにおける粉砕用ノズルが用いられる。粉砕用ノズル内に導入する際に溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物中もしくは溶融混練物表面に気泡が存在すると、粉砕用ノズルでの粉砕効率が低下するため、除去する必要がある。そのため、溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物を加圧加熱しつつ、粉砕を行う。加圧加熱条件としては特に限定されるものではないが、溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物を粉砕用ノズル内に導入する際には、高圧ホモジナイザーにおける加圧ユニットによって、50MPa以上120MPa以下に加圧される。このような範囲の圧力下において、粉砕用ノズルに通過させると、溶融混練物およびその表面に付着する気泡に大きな衝撃力を付与することができ、溶融混練物表面に付着する気泡を一層効率よく除去することができる。圧力が15MPa未満であると、溶融混練物表面に付着する気泡に付与される衝突力が小さく、気泡を溶融混練物表面から除去することができない。また圧力が120MPaを超えると、ノズルサイズと混合物の流量との整合性を取ることができず、処理することができない。また、溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物を粉砕用ノズル内に導入する際には、混合物の温度は、10℃以上結着樹脂のガラス転移温度(Tg)未満の温度とされる。混合物の温度がこのような範囲であることによって、気泡を一層確実に除去することができる。また、混合物の温度が結着樹脂のガラス転移温度(Tg)以上になると、混合物中の溶融混練物が凝集し、処理することができない。
減圧段階では、粉砕段階で得られる加熱加圧状態にある粗粉スラリーを、気泡が発生しない状態に保持しながら、大気圧またはそれに近い圧力まで減圧する。減圧には高圧ホモジナイザーにおける減圧モジュールが用いられる。減圧段階終了後の粗粉スラリーは、液温が10℃以上結着樹脂のガラス転移温度(Tg)未満の温度であることが好ましい。
冷却段階では、減圧段階において減圧された粗粉スラリーを20℃〜40℃程度まで冷却する。冷却には、高圧ホモジナイザーの冷却機が用いられる。
高圧ホモジナイザー法には、後述のような、高圧ホモジナイザーが用いられる。高圧ホモジナイザーとは加圧下に粒子を粉砕する装置である。高圧ホモジナイザーとしては、市販品や特許文献に記載のものなどが挙げられる。高圧ホモジナイザーの市販品としては、たとえば、高圧ホモジナイザー(商品名:NANO3000、株式会社美粒製)マイクロフルイダイザー(商品名、マイクロフルディクス(Microfluidics)社製)、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー社製)、アルティマイザー(商品名、株式会社スギノマシン製)などのチャンバ式高圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(商品名、ラニー(Rannie)社製)、高圧ホモジナイザー(商品名、三丸機械工業株式会社製)、高圧ホモジナイザー(商品名、株式会社イズミフードマシナリ製)などが挙げられる。また特許文献に記載の高圧ホモジナイザーとしては、たとえば、国際公開第03/059497号パンフレットに記載のものが挙げられる。これらの中でも、国際公開第03/059497号パンフレットに記載の高圧ホモジナイザーが好ましい。その具体例としては、たとえば、高圧ホモジナイザー(商品名:NANO3000、株式会社美粒製)などが挙げられる。本装置によれば、粉砕段階では、タンク内に貯留される溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物を加熱加圧状態で粉砕用ノズル内に導入して、混合物中の溶融混練物を樹脂微粒子に粉砕し、減圧段階では、粉砕用ノズルから排出され加圧状態にある混合物を減圧モジュール内に導入して、気泡が発生しないように減圧し、冷却段階では、減圧モジュールから排出される混合物を冷却機に導入して、冷却し、粗粉スラリーを得る。粗粉スラリーは取出し口から排出されるか、または再度タンク内に循環され、混合物中の溶融混練物が所望の粒子径となるまで、同様の粉砕処理が施される。
このような粗粉砕によって、溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物から、粗粉スラリーを得ることができ、また溶融混練物の粗粉の体積平均粒子径を、好ましくは300μm前後、さらに好ましくは5μm以上300μm以下とすることができる。このような粒子径に溶融混練物が粉砕されることによって、さらなる微粒化を一層効率よく行うことができる。またこれと同時に、粗粉砕によって、溶融混練物に付着する気泡を除去することができ、次のさらなる微粒化において、溶融混練物の粗粉表面における界面活性剤の作用点を充分に確保することができ、安定的かつ効率的に粒径制御された樹脂微粒子を製造することができる。
上述のようにして得られた溶融混練物の粗粉を含む粗粉スラリーを、さらに高圧ホモジナイザー法によって処理し、溶融混練物の粗粉を微粒化することにより、樹脂微粒子を含む水性スラリー(以下では「樹脂微粒子スラリー」という)を得る。本実施の形態では、溶融混練物の粗粉を含む粗粉スラリーを120MPa以上250MPa以下、かつ結着樹脂のガラス転移温度(Tg)以上200℃以下にて粉砕用ノズルを通過させ、気泡が発生しない圧力まで徐々に減圧し、冷却することによって行う。
粉砕段階では、粗粉砕によって前処理され、溶融混練物の粗粉表面から気泡が除去された粗粉スラリーを加熱加圧下においてさらに粉砕して、樹脂微粒子スラリーを得る。粗粉スラリーは高圧ホモジナイザーにおける加圧ユニットおよび加熱ユニットによって、加熱加圧される。粗粉スラリーの加圧加熱条件は特に限定されるものではないが、好ましくは、120MPa以上250MPa以下に加圧され、かつ溶融混練物の粗粉中に含まれる結着樹脂のガラス転移温度(Tg)以上200℃以下に加熱される。また、120MPa以上250MPa以下に加圧され、かつ粗粉中に含まれる結着樹脂の軟化温度Tm(本明細書において、Tmは、フローテスターにおける結着樹脂の1/2軟化温度である)以上に加熱されるのがさらに好ましく、120MPa以上250MPa以下に加圧され、かつ溶融混練物の粗粉中に含まれる結着樹脂の軟化温度Tm〜Tm+25℃に加熱されるのが特に好ましい。溶融混練物の粗粉が2種以上の結着樹脂を含む場合、ここでいう軟化温度Tmは、2種以上の結着樹脂の軟化温度の中で、最も高い軟化温度を有する結着樹脂の値である。圧力が120MPa未満では、せん断エネルギーが小さくなり、粉砕が充分に進まないおそれがある。250MPaを超えると、実際の生産ラインにおいて危険性が大きくなり過ぎ、現実的ではない。
減圧段階では、粉砕段階で得られる加熱加圧状態にある樹脂微粒子スラリーを、気泡が発生しない状態に保持しながら大気圧またはそれに近い圧力まで減圧する。減圧には高圧ホモジナイザーにおける減圧モジュールが用いられる。減圧段階終了後の樹脂微粒子スラリーは、液温が結着樹脂のガラス転移温度(Tg)以上200℃以下であることが好ましく、60℃以上Tm+60℃以下であることがさらに好ましい。
冷却段階では、減圧段階において減圧され、液温60℃以上Tm+60℃以下程度の樹脂微粒子スラリーを冷却し、20℃〜40℃程度の樹脂微粒子スラリーにする。冷却には、高圧ホモジナイザーの冷却機が用いられる。
以上のような工程を経て、樹脂微粒子が水性媒体中に微分散された樹脂微粒子スラリーが作製される。得られた樹脂微粒子の体積平均粒子径としては、0.2μm〜3.0μmであることが好ましい。0.2μ未満の場合は、着色剤や離型剤の分散粒径より小さくなり、含有することができない。3.0μmより大きい場合は、粒度分布の小さい体積平均粒子径5μm〜6μmのトナーを得ることが困難である。
〔凝集工程〕
ステップS2の凝集工程では、少なくとも樹脂微粒子および着色剤微粒子が水性媒体中に分散されて構成される分散液(A)、または、少なくとも結着樹脂および着色剤を含む着色樹脂微粒子が水性媒体中に分散されて構成される分散液(B)に凝集剤を添加し、収容する撹拌容器と、撹拌容器内に設けられ、樹脂微粒子スラリーを撹拌する撹拌手段とを含む造粒装置により、樹脂微粒子を凝集させ、界面活性剤を含む水性媒体中に樹脂微粒子の凝集物(凝集粒子)が分散したスラリー(以下では「凝集粒子スラリー」という)を得る。
凝集剤としては、たとえば、カチオン系分散剤、多価金属塩などを用いることができる。カチオン系分散剤としては、たとえば、アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン系分散剤、アルキルアミドアミン型カチオン系分散剤、アルキルジメチルベンジルアンモニウム型カチオン系分散剤、カチオン化多糖型カチオン系分散剤、アルキルベタイン型カチオン系分散剤、アルキルアミドベタイン型カチオン系分散剤、スルホベタイン型カチオン系分散剤、アミンオキサイド型カチオン系分散剤、金属塩などが好ましい。金属塩としては、たとえば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの塩化物、硫酸塩などが挙げられる。
また、凝集剤として用いられる多価金属塩は、2価以上の金属の塩である。2価以上の金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムなどの周期律表第13族元素などが好ましく、マグネシウム、アルミニウムなどが特に好ましい。2価以上の金属塩の具体例としては、たとえば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
上記凝集剤の中でも、水に対する溶解度が比較的大きく、凝集速度が緩やかなことから塩化ナトリウムが好ましい。凝集剤の使用量は、樹脂微粒子スラリー100重量部に対して、好ましくは0.5重量部〜20重量部であり、さらに好ましくは0.5重量部〜18重量部であり、特に好ましくは1.0重量部〜18重量部である。0.5重量部未満では凝集効果が不充分になるおそれがあり、20重量部を超えると過凝集により、凝集粒子が大きくなりすぎるおそれがある。
収容する撹拌容器と、撹拌容器内に設けられ、樹脂微粒子スラリーを撹拌する撹拌手段とを含む造粒装置としては、機械的な一方向からの剪断力を付与し得る乳化機や分散機を用いるのが好ましい。これにより、形成される凝集粒子の粒子径および形状を一層均一化できる。乳化機および分散機の具体例としては、たとえば、ウルトラタラックス(商品名、IKAジャパン株式会社製)、ポリトロンホモジナイザー(商品名、キネマティカ社製)、TKオートホモミクサー(商品名、プライミクス株式会社製)、マックスブレンド(住友重機株式会社製)などのバッチ式乳化機、エバラマイルダー(商品名、株式会社荏原製作所製)、TKパイプラインホモミクサー(商品名、プライミクス株式会社製)、TKホモミックラインフロー(商品名、プライミクス株式会社製)、フィルミックス(商品名、プライミクス株式会社製)、コロイドミル(商品名、神鋼パンテック株式会社製)、スラッシャー(商品名、三井三池化工機株式会社製)、トリゴナル湿式微粉砕機(商品名、三井三池化工機株式会社製)、キャビトロン(商品名、株式会社ユーロテック製)、ファインフローミル(商品名、太平洋機工株式会社製)などの連続式乳化機、クレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)、フィルミックス(商品名、プライミクス株式会社製)などが挙げられる。
樹脂微粒子スラリーと凝集剤との混合において、造粒装置の撹拌速度および撹拌温度は、所望の粒子径、粒度分布および形状を有するトナー粒子が得られる値を適宜選択すればよい。撹拌時間については、結着樹脂、着色剤、その他トナー添加成分、凝集剤および分散剤の種類、ならびに濃度などの各種条件に応じて、適宜選択することができる。
〔洗浄工程〕
ステップS3の洗浄工程では、凝集粒子スラリーを冷却した後に、凝集粒子スラリー中に含まれる凝集粒子を洗浄する。凝集粒子の洗浄は、界面活性剤、分散剤、増粘剤など、および、これらに由来する不純物などを除去するために実施される。界面活性剤、分散剤、増粘剤および前記不純物が凝集粒子に残留すると、得られるトナー粒子の帯電性能が不安定になるおそれがある。また空気中の水分の影響によって帯電量が低下するおそれがある。
凝集粒子の洗浄は、たとえば、凝集粒子スラリーに水を加えて撹拌し、遠心分離などによって分離される上澄み液を除去することによって行うことができる。凝集粒子の洗浄は、導電率計などを用いて測定した上澄み液の導電率が100μS/cm以下、好ましくは10μS/cm以下になるまで繰返し行うことが好ましい。これにより、界面活性剤、分散剤、増粘剤など、およびこれらに由来する不純物類の残留を一層確実に防ぎ、トナー粒子の帯電性能をさらに均一に安定化することができる。
洗浄に用いる水は、導電率が20μS/cm以下の水であることが好ましい。このような洗浄水は、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法、逆浸透法などによって調製することができる。またこれらの方法のうち、2種以上を組合わせて水を調製してもよい。凝集粒子の水洗は、バッチ式および連続式のいずれで実施してもよい。また洗浄水の温度は特に制限されるものではないが、10℃以上ガラス転移温度(Tg)以下であることが好ましい。溶融混練物が2種以上の結着樹脂を含む場合、ここでいうガラス転移温度(Tg)以下とは、2種以上の結着樹脂のガラス転移温度(Tg)の中で、最も低いガラス転移温度(Tg)の値以下を示す。
〔分離工程〕
ステップS4の分離工程では、洗浄後の凝集粒子を含有する水性媒体の混合物から、凝集粒子を分離し回収する。水性媒体からの凝集粒子の分離は、特に限定されるものではないが、たとえば、濾過、吸引濾過、遠心分離などによって行うことができる。
〔乾燥工程〕
ステップS5の乾燥工程では、洗浄、分離後の凝集粒子を乾燥させる。凝集粒子の乾燥は、特に限定されるものではないが、凍結乾燥法、気流式乾燥法などによって実施できる。ステップS5において凝集粒子が乾燥されると、トナー粒子の製造は終了する。
得られたトナー粒子には、必要に応じて外添剤を外添することができる。外添剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末およびアルミナ微粉末などの無機微粉末が挙げられる。これらの無機微粉末は、疎水化、帯電性コントロールなどの目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物などの処理剤で処理されていることが好ましく、処理剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。このような外添剤は、1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。外添剤の添加量としては、トナーに必要な帯電量、外添剤を添加することによる感光体の摩耗に対する影響およびトナーの環境特性などを考慮して、トナー粒子100重量部に対して5重量部以下であることが好ましい。
外添剤は、一次粒子の個数平均粒子径が10nm〜500nmであることが好ましい。このような粒径の外添剤を用いることによって、トナーの流動性向上効果が一層発揮され易くなる。
このようにトナー粒子に外添剤が外添されるトナーは、そのまま一成分現像剤として使用することができ、またキャリアと混合して二成分現像剤として使用することもできる。二成分現像剤として使用する場合、キャリアとしては、たとえば磁性を有する粒子を使用することができる。磁性を有する粒子の具体例としては、たとえば、鉄、フェライトおよびマグネタイトなどの金属、これらの金属とアルミニウムまたは鉛などの金属との合金などが挙げられる。これらの中でも、フェライトが好ましい。
また磁性を有する粒子に樹脂を被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどをキャリアとして用いてもよい。磁性を有する粒子を被覆する樹脂としては特に限定されるものではないが、たとえば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂、およびフッ素含有重合体系樹脂などが挙げられる。また樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としても特に限定されるものではないが、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。
キャリアの形状としては、球形または扁平形状であることが好ましい。またキャリアの粒径は特に限定されるものではないが、高画質化を考慮すると、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜60μmである。さらにキャリアの抵抗率は、好ましくは108Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。キャリアの抵抗率は、キャリアを0.50cm2の断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cm2の荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読取ることにより得られる値である。抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10emu/g〜60emu/g、さらに好ましくは15emu/g〜40emu/gである。磁化強さは現像ローラの磁束密度にもよるけれども、現像ローラの一般的な磁束密度の条件下においては、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また磁化強さが60emu/gを超えると、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎる非接触現像では、像担持体と非接触状態とを保つことが困難になる。また接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの使用割合は特に限定されるものではないが、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できるが、たとえば樹脂被覆キャリア(密度5g/cm2〜8g/cm2)においては、現像剤中に、トナーが現像剤全量の2重量%〜30重量%、好ましくは2重量%〜20重量%含まれるように、トナーを用いればよい。また二成分現像剤において、トナーによるキャリアの被覆率は、40%〜80%であることが好ましい。
図13は、本発明の実施の第1形態である画像形成装置1の構成を模式的に示す断面図である。画像形成装置は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびファクシミリモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、転写手段3と、定着手段4と、記録媒体供給手段5と、排出手段6とを含む。トナー像形成手段2を構成する各部材および中間転写手段3に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
トナー像形成手段2は、感光体ドラム11と、帯電手段12と、露光ユニット13と、現像装置14と、クリーニングユニット15とを含む。帯電手段12、現像装置14およびクリーニングユニット15は、感光体ドラム11まわりに、この順序で配置される。帯電手段12は、現像装置14およびクリーニングユニット15よりも鉛直方向下方に配置される。
感光体ドラム11は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、導電性粒子および/または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。その際、導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止する、低温および/または低湿環境下における感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光体表面保護層を設けた耐久性の大きい三層構造の積層感光体であっても良い。
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環および/またはフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部である。電荷発生層用の結着樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.1〜2.5μmである。
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送物質中の結着樹脂100重量部に対して10〜300重量部、さらに好ましくは30〜150重量部である。電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。
帯電手段12は、感光体ドラム11を臨み、感光体ドラム11の長手方向に沿って感光体ドラム11表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム11表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電手段12には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電手段12は感光体ドラム11表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。たとえば、帯電手段12として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラムとが圧接するように帯電ローラを配置しても良く、帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いても良い。
露光ユニット13は、露光ユニット13から出射される各色情報の光が、帯電手段12と現像装置14との間を通過して感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13は、画像情報を該ユニット内でb、c、m、yの各色情報の光に分岐し、帯電手段12によって一様な電位に帯電された感光体ドラム11表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット13には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLEDアレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
図14は、本発明の実施の一形態である現像装置14の構成を模式的に示す断面図である。
現像装置14は、現像槽20とトナーホッパ21とを含む。現像槽20は感光体ドラム11表面を臨むように配置され、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽20は、その内部空間にトナーを収容しかつ現像ローラ、供給ローラ、撹拌ローラなどのローラ部材またはスクリュー部材を収容して回転自在に支持する。現像槽20の感光体ドラム11を臨む側面には開口部が形成され、この開口部を介して感光体ドラム11に対向する位置に現像ローラが回転駆動可能に設けられる。現像ローラは、感光体ドラム11との圧接部または最近接部において感光体11表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下単に「現像バイアス」とする)として印加される。これによって、現像ローラ表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御できる。供給ローラは現像ローラを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ周辺にトナーを供給する。攪拌ローラは供給ローラを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ21から現像槽20内に新たに供給されるトナーを供給ローラ周辺に送給する。トナーホッパ21は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口(図示せず)と、現像槽20の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口(図示せず)とが連通するように設けられ、現像槽20のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ21を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成しても構わない。
クリーニングユニット15は、記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体ドラム11の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット15には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。なお、本発明の画像形成装置においては、感光体ドラム11として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット15よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット15を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
トナー像形成手段2によれば、帯電手段12によって均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像装置14からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト25に転写した後に、感光体ドラム11表面に残留するトナーをクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
転写手段3は、感光体ドラム11の上方に配置され、中間転写ベルト25と、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、中間転写ローラ28(b、c、m、y)と、転写ベルトクリーニングユニット29、転写ローラ30とを含む。中間転写ベルト25は、駆動ローラ26と従動ローラ27とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転駆動する。中間転写ベルト25が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に対向配置される中間転写ローラ28から、感光体ドラム11表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト25上へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム11で形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト25上に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。駆動ローラ26は図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト25を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ27は駆動ローラ26の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト25が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト25に付与する。中間転写ローラ28は、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ28は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム11表面のトナー像を中間転写ベルト25に転写する機能を有する。転写ベルトクリーニングユニット29は、中間転写ベルト25を介して従動ローラ27に対向し、中間転写ベルト25の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト25に付着するトナーは、記録媒体の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット29が中間転写ベルト25表面のトナーを除去し回収する。転写ローラ30は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ26に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ30と駆動ローラ26との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト25に担持されて搬送されて来るトナー像が、後述する記録媒体供給手段5から送給される記録媒体に転写される。トナー像を担持する記録媒体は、定着手段4に送給される。転写手段3によれば、感光体ドラム11と中間転写ローラ28との圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト25に転写されるトナー像が、中間転写ベルト25の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
定着手段4は、転写手段3よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ31と加圧ローラ32とを含む。定着ローラ31は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録媒体に定着させる。定着ローラ31の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ31表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ31を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着条件制御手段による加熱温度の制御については、後に詳述する。定着ローラ31表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ31の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。加圧ローラ32は定着ローラ31に圧接するように設けられ、加圧ローラ32の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ32は、定着ローラ31によってトナーが溶融して記録媒体に定着する際に、トナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ31と加圧ローラ32との圧接部が定着ニップ部である。定着手段4によれば、転写手段3においてトナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ31と加圧ローラ32とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録媒体に押圧されることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像が形成される。
記録媒体供給手段5は、自動給紙トレイ35と、ピックアップローラ36と、搬送ローラ37と、レジストローラ38、手差給紙トレイ39を含む。自動給紙トレイ35は画像形成装置の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。ピックアップローラ36は、自動給紙トレイ35に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。搬送ローラ37は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録媒体をレジストローラ38に向けて搬送する。レジストローラ38は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ37から送給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。手差給紙トレイ39は、手動動作によって記録媒体を画像形成装置内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ39から取り込まれる記録媒体は、搬送ローラ37によって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ38に送給される。記録媒体供給手段5によれば、自動給紙トレイ35または手差給紙トレイ39から1枚ずつ供給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
排出手段6は、搬送ローラ37と、排出ローラ40と、排出トレイ41とを含む。搬送ローラ37は、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録媒体を排出ローラ40に向けて搬送する。排出ローラ40は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ41に排出する。排出トレイ41は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
画像形成装置1は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置1の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置1の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置1内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録媒体判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置1に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビ、ビデオレコーダ、DVDレコーダ、HDVD、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(
Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置内部における各装置にも電力を供給する。
本発明のトナーを用いて画像形成することにより、クリーニング性と転写性を両立した、高画質画像を形成することができる。
以下に本発明を実施例および比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り特に本実施例に限定されるものではない。以下「部」および「%」は特に断りのない限りそれぞれ「重量部」および「重量%」を示す。
[物性値測定方法]
実施例および比較例における各物性値は、以下に示すようにして測定した。
〔ガラス転移温度(Tg)〕
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K 7121−1987に準じて、試料(カルボキシル基含有樹脂または水溶性樹脂)1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
〔軟化点(Tm)〕
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。流動特性評価装置(フローテスターCFT−100C)において、荷重10kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えて試料(樹脂微粒子)1gがダイ(ノズル口径1mm、ノズル長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化点とした。
〔融点〕
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、試料1gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で150℃まで昇温させ、次いで150℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度を融点として求めた。
〔体積平均粒子径DL(レーザ回折法)〕
レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(商品名:LA−920、(株)堀場製作所製)を用い、バッチ式セルにて測定を行った。試料としては、体積平均粒子径RC(コールター法)で調製されたのと同じ試料を用い、これをバッチ式セルに入れ、マグネチックスターラで十分に攪拌しながら、データ取り込み回数:15回、屈折率:1.16−0.00i(HeNe)および1.19−0.00i(W)で測定を行い、樹脂微粒子の体積平均粒子径DL(単位μm)を求めた。
〔体積平均粒子径DC(コールター法)〕
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(分散剤、キシダ化学社製)1mlを添加し、超音波分散器(商品名:UH−50、STM社製)にて超音波周波数20kHzで3分間超音波分散処理したものを測定用試料とした。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径30μm、測定粒子数50000カウントの条件下に試料粒子の体積粒度分布を測定し、測定結果から累積体積分布における大粒径側からの累積体積が50%になる粒径DCをトナーの体積平均粒径(μm)として算出した。また、体積粒度分布における標準偏差(μm)を求めて、下記式(3)に基づいて変動係数(CV値、%)を算出した。変動係数は、その値が小さいほど、粒度分布幅が狭いことを意味する。
CV値(%)={体積粒度分布における標準偏差(μm)/体積平均粒径(μm)}
×100 …(3)
〔個数平均粒子径〕
外添剤から無作為に取り出したそれぞれ100個の粒子を透過型電子顕微鏡観察によって20000倍に拡大して観察し、画像解析によって一次粒子の粒径を測定した。得られた測定値から個数平均粒子径を算出した。
〔フーリエ係数の算出〕
電子顕微鏡(商品名:VE−9500、株式会社キーエンス製)によって8,000倍の倍率でトナー粒子を写真撮影する(図8)。次いでトナー粒子の撮影写真において、画像解析ソフト(商品名:A像くん、旭化成エンジニアリング株式会社製)によって、トナー粒子の輪郭を抽出し、解析することによって輪郭の重心(座標)を算出する(図9)。一方で、中心点から360度を均等に128等分した放射状線図(図10)を用意する。この放射状線図の中心に、輪郭の重心を重ね(図11)、重心から輪郭までの長さを、128本それぞれの放射線について、A像くんによって算出する。このようにして算出した重心から輪郭までの長さ(計128本)の中で、最大であるものを始点(0度)にして、それぞれの角度に対して順次長さをプロットする。表計算ソフト(商品名:Excel、MicroSoft社製)の分析ツールを用いてフーリエ解析し、実数部分から下記式のcosのフーリエ係数a1−a64を算出し、虚数部分から前述の式(2)のsinのフーリエ係数b1−b64を算出する。
無作為に抽出した100個のトナー粒子に対してフーリエ係数を算出すると、a2/a0、a3/a0は形状の違いによる特徴的な値を示した。
〔水の調製〕
以下の実施例および比較例において、水性媒体用および洗浄用の水には、導電率0.5μS/cmの水を用いた。この洗浄水は、超純水製造装置(商品名:ミニピュア TW−300RU、野村マイクロ・サイエンス株式会社製)を用いて水道水から調製した。水の導電率はラコムテスター EC−PHCON10(商品名、アズワン株式会社製)を用いて測定した。
(実施例1)
[微粒子調製工程]
結着樹脂としてポリエステル樹脂(ガラス転移温度(Tg):60℃、軟化点(Tm):110℃)87.5重量%と、着色剤としてフタロシアニンブルー(商品名:銅フタロシアニン 15:3、クラリアント社製)8重量%と、離型剤としてポリエステル系ワックス(融点85℃)3重量%と、帯電制御剤(商品名:TRH、保土ヶ谷化学工業株式会社製)1.5重量%とを含むトナー組成物を混合機(商品名:ヘンシェルミキサ、三井鉱山株式会社製)で混合し、得られた混合物を二軸押出機(商品名:PCM−30、株式会社池貝製)にてシリンダ温度145℃、バレル回転数300rpmで溶融混練し、トナー組成物の混練物を調製した。この混練物を室温まで冷却した後、カッターミル(商品名:VM−16、株式会社セイシン企業製)で粗粉砕し、体積平均粒子径200μmの溶融混練物を作製した。この溶融混練物は、軟化点(Tm)が110℃であった。
この溶融混練物30g(5重量%)と、アニオン系界面活性剤としてポリアクリル酸ナトリウム(商品名:D−H14−N L−7403KN、日本乳化剤株式会社製)3g(0.5重量%)と、水(温度20℃、導電率0.5μS/cm)567g(94.5重量%)とを混合し、得られた混合物を高圧ホモジナイザー(商品名:NANO3000、株式会社美粒製)のタンクに投入し、25℃、100MPaの条件下で、高圧ホモジナイザー法により粗粉砕を行い、粗粉スラリーを作製した。
次いで、得られた粗粉スラリーを、さらに高圧ホモジナイザー(商品名:NANO3000、株式会社美粒製)のタンクに投入し、120℃、160MPaの条件下で、高圧ホモジナイザー法により微粒化を行い、樹脂微粒子スラリーを作製した。得られた樹脂微粒子の体積平均粒子径(DL)は0.9μm(変動係数(CV値):25(%))であった。
[凝集工程]
微粒子調製工程にて得られた樹脂微粒子スラリー100重量部に、凝集剤として塩化ナトリウム(商品名:特級塩化ナトリウム、キシダ化学株式会社製)2重量部を加え、シングルモーション方式の乳化機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック株式会社製)にて、凝集温度85℃、ローター回転速度8000rpmで10分間撹拌処理することにより、樹脂微粒子を凝集させた凝集粒子スラリーを作製した。
[洗浄工程]
凝集工程にて得られた凝集粒子スラリーに水(温度20℃、導電率0.5μS/cm)を加えて固形分量が10重量%になるように調製し、タービン型撹拌翼(商品名:H−701FR、株式会社コクサン製)にて撹拌翼回転速度300rpmで30分間撹拌した。この操作を、撹拌後の混合物から遠心分離によって分離される上澄み液の導電率が10μS/cm以下になるまで繰返し行うことにより、凝集粒子スラリー中の凝集粒子を洗浄した。
[分離工程]
洗浄工程後の凝集粒子含有水性媒体の混合物から遠心分離器(商品名:H−122、株式会社コクサン製)にて遠心分離を行い、凝集粒子を含む固形分を分取した。
[乾燥工程]
分離工程にて分取した固形分を凍結乾燥させ、トナー粒子(凝集粒子)を得た。トナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径(DC)は5.9μmであり、フーリエ係数a2/a0は0.15であり、a0 -1(a2 2+b2 2)1/2は0.15であった。
得られたトナー粒子(凝集粒子)100重量部に、1次粒子の個数平均粒子径が12nmであるシリカ(日本アエロジル株式会社製)2重量部と、1次粒子の個数平均粒子径が80nmであるシリカ(テイカ株式会社製)0.6重量部とを外添し、トナーを製造した。
(実施例2)
凝集工程における凝集温度を80℃にした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.6μmであり、フーリエ係数a2/a0は0.24であり、a0 -1(a2 2+b2 2)1/2は0.24であった。
(実施例3)
凝集工程における凝集温度を75℃にした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.3μmであり、フーリエ係数a2/a0は0.35であり、a0 -1(a2 2+b2 2)1/2は0.35であった。
(実施例4)
凝集工程における凝集剤の添加量を3重量部にした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は6.1μmであり、フーリエ係数a3/a0は0.08であり、a0 -1(a3 2+b3 2)1/2は0.08であった。
(実施例5)
凝集工程における凝集剤の添加量を3重量部にし、凝集温度を80℃にした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.8μmであり、フーリエ係数a3/a0は0.11であり、a0 -1(a3 2+b3 2)1/2は0.11であった。
(実施例6)
凝集工程における凝集剤の添加量を3重量部にし、凝集温度を75℃にした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.5μmであり、フーリエ係数a3/a0は0.20であり、a0 -1(a3 2+b3 2)1/2は0.20であった。
(実施例7)
[微粒子調製工程]
・樹脂粒子分散液調製
イオン交換水1Lに、界面活性剤としてノニポール400(三洋化成株式会社製)1.2重量%及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)2重量%を溶解した水溶液中に、スチレン80重量%と、nブチルアクリレート15重量%と、アクリル酸2重量%と、ドデカンチオール2重量%と、四臭化炭素1重量%の混合液840gを乳化した後に、過硫酸アンモニウム7.5重量%を溶解したイオン交換水100mLを投入し、窒素置換を行いつつ、攪拌しながら内容物が70℃になるまで加熱し、7時間継続した。得られた樹脂微粒子の体積平均粒子径(DL)は0.2μm(変動係数(CV値):25(%))であった。
・着色剤分散液調製
イオン交換水1Lに、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)2.5重量%と、着色剤としてフタロシアニンブルー(商品名:銅フタロシアニン 15:3、クラリアント社製)25重量%を混合し、NANO3000(美粒株式会社製)を用いて分散処理した。得られた着色剤微粒子の体積平均粒子径(DL)は0.15μm(変動係数(CV値):24(%))であった。
・離型剤分散液調製
イオン交換水1Lに、界面活性剤としてサニゾールB50(花王株式会社製)2.5重量%と、離型剤としてHNP10(日本精蝋株式会社製)を混合し、95℃に加熱して、T.K.ホモミクサーMARKII(プライミクス株式会社製)を用いて分散処理した。得られた離型剤微粒子の体積平均粒子径(DL)は0.2μm(変動係数(CV値):25(%))であった。
・混合微粒子分散液調製
イオン交換水1Lに、界面活性剤としてサニゾールB50(花王株式会社製)0.25重量%及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)0.8重量%と、樹脂粒子分散液33重量%と、着色剤分散液5重量%と、離型剤分散液7重量%を混合した。
混合微粒子分散液に添加する凝集剤を3重量部にし、凝集温度を90℃にした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.1μmであり、フーリエ係数a0 -1(a3 2+b3 2)1/2は0.10であった。
(実施例8)
凝集工程における凝集温度を88℃にし、ローター回転速度を14000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.0μmであり、フーリエ係数a0 -1(a2 2+b3 2)1/2は0.12であった。
(実施例9)
凝集工程における凝集温度を88℃にし、ローター回転速度を13000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.2μmであり、フーリエ係数a0 -1(a2 2+b3 2)1/2は0.21であった。
(実施例10)
凝集工程における凝集温度を88℃にし、ローター回転速度を12000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.5μmであり、フーリエ係数a0 -1(a2 2+b3 2)1/2は0.35であった。
(実施例11)
凝集工程における凝集温度を85℃にし、ローター回転速度を13000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は4.7μmであり、フーリエ係数a0 -1(a2 2+a3 2)1/2は0.10であった。
(実施例12)
凝集工程における凝集温度を85℃にし、ローター回転速度を12000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.1μmであり、フーリエ係数a0 -1(a2 2+a3 2)1/2は0.19であった。
(実施例13)
凝集工程における凝集温度を85℃にし、ローター回転速度を11000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.2μmであり、フーリエ係数a0 -1(a2 2+a3 2)1/2は0.35であった。
(実施例14)
凝集工程における凝集温度を83℃にし、ローター回転速度を13000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は4.7μmであり、フーリエ係数a0 -1(a2 2+b4 2)1/2は0.09であった。
(実施例15)
凝集工程における凝集温度を83℃にし、ローター回転速度を12000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.0μmであり、フーリエ係数a0 -1(a2 2+b4 2)1/2は0.23であった。
(実施例16)
凝集工程における凝集温度を83℃にし、ローター回転速度を10000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.1μmであり、フーリエ係数a0 -1(a2 2+b4 2)1/2は0.33であった。
(実施例17)
凝集工程におけるローター回転速度を9000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.6μmであり、フーリエ係数a2/a0は0.11であった。
(実施例18)
凝集工程における凝集温度を80℃にし、ローター回転速度を7000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.8μmであり、フーリエ係数a2/a0は0.39であった。
(実施例19)
凝集工程における凝集剤の添加量を3重量部にし、ローター回転速度を9000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.8μmであり、フーリエ係数a3/a0は0.06であった。
(実施例20)
凝集工程における凝集剤の添加量を3重量部にし、凝集温度を80℃にし、ローター回転速度を7000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は6.0μmであり、フーリエ係数a3/a0は0.22であった。
(実施例21)
微粒子調製工程にて得られた樹脂微粒子の体積平均粒子径が0.12μm(変動係数(CV値):27(%))であり、凝集工程における凝集温度を80℃にした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は2.8μmであり、フーリエ係数a3/a0は0.05であった。
(実施例22)
微粒子調製工程にて得られた樹脂微粒子の体積平均粒子径が3.5μm(変動係数(CV値):37(%))であり、凝集工程における凝集温度を80℃にした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は12μm(変動係数(CV値):49(%))であり、均一な形状のトナーを得ることができなかった。
(実施例23)
微粒子調製工程において、高圧ホモジナイザー法を用いず、溶解懸濁法で樹脂微粒子の調製を行った。具体的には、ポリアクリル酸ナトリウム水溶液中に、トナー組成物の混練物をメチルエチルケトンに溶解分散した樹脂溶液混合物を添加し、ローターステーター式撹拌機(T.K.ホモミクサーMARKII、プライミクス株式会社製)に投入し、20℃、撹拌機の回転数を5000rpmで20分間撹拌を行った後、メチルエチルケトンを除去し、樹脂微粒子を得た。
得られた樹脂微粒子の体積平均粒子径(DL)は2.4μm(変動係数(CV値):48(%))であった。溶解懸濁法で樹脂微粒子の調製を行った以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は9μm(変動係数(CV値):45(%))であり、均一な形状のトナーを得ることができなかった。
(実施例24)
凝集工程における凝集温度を88℃にし、ローター回転速度を15000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は4.5μmであり、フーリエ係数a0 -1(a2 2+b2 2)1/2は0.08であった。
(実施例25)
凝集工程における凝集温度を88℃にし、ローター回転速度を8000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.7μmであり、フーリエ係数a0 -1(a2 2+b2 2)1/2は0.39であった。
(実施例26)
凝集工程における凝集温度を85℃にし、ローター回転速度を15000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は4.6μmであり、フーリエ係数a0 -1(a2 2+a3 2)1/2は0.09であった。
(実施例27)
凝集工程における凝集温度を85℃にし、ローター回転速度を8000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.8μmであり、フーリエ係数a0 -1(a2 2+a3 2)1/2は0.40であった。
(実施例28)
凝集工程における凝集温度を83℃にし、ローター回転速度を15000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は4.5μmであり、フーリエ係数a0 -1(a2 2+b4 2)1/2は0.06であった。
(実施例29)
凝集工程における凝集温度を83℃にし、ローター回転速度を8000rpmにした以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.7μmであり、フーリエ係数a0 -1(a2 2+b4 2)1/2は0.39であった。
(実施例30)
実施例1と比較例6の微粒子調製工程にて得られた樹脂微粒子を凝集工程において用いたこと以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。乾燥工程後に得られるトナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径は5.4μmであり、(S2/S1)+(S3/S1)=0.33であった。
(比較例1)
主樹脂としてポリエステル樹脂(ガラス転移温度(Tg):60℃、軟化点(Tm):110℃)170重量部に、メチルエチルケトン180重量部を加え、よく溶解した後に、着色剤としてフタロシアニンブルー(商品名:銅フタロシアニン 15:3、クラリアント社製)20重量部を添加し、フィルミックス5 6 型(プライミクス株式会社製)に投入し、40m/sで5分間分散させて、分散終了後、メチルエチルケトンにより、固形分を50% に調整し、樹脂溶液(A)を得た。
次に、フタロシアニンブルー20重量部の代わりに、離型剤としてカルナバワックス(融点83℃)10重量部を添加し、フィルミックス56型での分散を、30m/sで3分間行う以外は上記(A)と同様の操作を行い、樹脂溶液(B)を得た。
この樹脂溶液(A)100重量部と樹脂溶液(B)100重量部を混合した樹脂溶液混合物300重量部に、1規定アンモニア水3重量部を加え、ホモジナイザーの回転数を5000rpmに設定し、脱イオン水180重量部を滴下して、転相乳化を行った。次いで、減圧蒸留により、メチルエチルケトンを除去した着色剤内包粒子の水分散液に、カチオン交換樹脂35重量部を混合し、30℃で2時間、50rpmで撹拌した後に濾過水洗を行った後、乾燥して、体積平均粒径5.6μm、変動係数CVが28のトナーを得た。得られたトナー粒子100重量部に、1次粒子の個数平均粒子径が12nmであるシリカ(日本アエロジル株式会社製)2重量部と、1次粒子の個数平均粒子径が80nmであるシリカ(テイカ株式会社製)0.6重量部とを外添し、比較例1のトナーを得た。
(比較例2)
主樹脂としてポリエステル樹脂(ガラス転移温度(Tg):60℃、軟化点(Tm):110℃)87.5重量%と、着色剤としてフタロシアニンブルー(商品名:銅フタロシアニン 15:3、クラリアント社製)8重量%と、離型剤としてパラフィン系ワックス(融点83℃)5重量%と、帯電制御剤(商品名:TRH、保土ヶ谷化学工業株式会社製)1.5重量%とを含むトナー組成物を混合機(商品名:ヘンシェルミキサ、三井鉱山株式会社製)で混合し、得られた混合物を二軸押出機(商品名:PCM−30、株式会社池貝製)にてシリンダ温度145℃、バレル回転数300rpmで溶融混練し、トナー組成物の混練物を調製した。この混練物を室温まで冷却した後、カッターミル(商品名:VM−16、株式会社セイシン企業製)で粗粉砕した後、ロータリー式分級機にて過粉砕トナーを分級除去し体積平均粒径6.7μm、変動係数CVが24のトナーを得た。得られたトナー粒子(粉砕粒子)100重量部に、1次粒子の個数平均粒子径が12nmであるシリカ(日本アエロジル株式会社製)2重量部と、1次粒子の個数平均粒子径が80nmであるシリカ(テイカ株式会社製)0.6重量部とを外添し、比較例2のトナーを得た。
下記表1に、実施例1〜30および比較例1、2のトナーの製造工程における条件(凝集剤添加量、凝集温度、ローター回転速度)および樹脂微粒子とトナー粒子(凝集粒子)の各物性値(体積平均粒子径(DL,DC)、フーリエ係数)についてまとめた。
図15は、実施例5のトナー粒子を撮影したSEM写真画像を示す。図16は、図15の写真画像を輪郭抽出して得られる投影図であり、図17は、図10の放射状線図の中心に図16の投影図における輪郭の重心座標を重ねたときの図である。
[評価]
上記実施例1〜16および比較例1〜13の製造方法により得られたトナーを使用して、複写機(商品名:MX−4500FN、シャープ株式会社製)を用いて原稿の印刷を行い、以下のようにしてクリーニング性、転写効率および帯電量分布について評価した。その結果を表1に示す。なお、評価項目の説明に記載されている「○」、「△」および「×」の記号は、表1で用いる評価結果を示す記号である。「○」は優れていることを示し、「△」は実用可能であることを示し、「×」は実用が困難であることを示す。
〔クリーニング性〕
A4判の白紙用紙上に印字率5%の原稿を2万枚連続印刷した後に、感光体表面にフィルミングが発生しているか否かを目視によって確認し、下記の基準に基づいてクリーニング性を評価した。
◎:フィルミングが発生していない。
○:2万枚連続印刷した後、フィルミングが発生した。
△:1万枚連続印刷した後、フィルミングが発生した。
×:5000枚連続印刷した後、フィルミングが発生した。
〔転写効率〕
A4判の白紙用紙上にベタ黒画像を転写した後に、感光体表面上の転写残トナーをマイラーテープによりテーピングしてはぎ取り、紙上に貼ったもののマクベス濃度の値をC、転写後定着前のトナーの載った紙上にマイラーテープを貼ったもののマクベス濃度をE、未使用の紙上に貼ったマイラーテープのマクベス濃度をDとした時、近似的に下記式で計算し、以下のようなランク付けを行った。マクベス反射濃度計(Macbeth社製、商品名:RD−914)によって測定した。
転写効率(%)=(E−C)×100/(E−D)
◎:転写効率が90%を超える。
○:転写効率が90%以下80%以上である。
△:転写効率が80%以下70%以上である。
×:転写効率が70%以下である。
〔帯電量分布〕
ホソカワミクロン製粒子帯電分布測定装置(E−SPART Analyzer model EST−1)を用いて、直流電界中音波振動場内での粒子の移動速度レーザードップラー法による計測に基づく、粒子径と粒子帯電量の同時測定を行った。測定用フイーダーにスタート現像剤をセットし、マグネット電圧をかけテーブルを回転させる測定上部より、N2ガスでトナーが飛び測定内部へ吸い込まれる。設定条件として、pulse duration:3〜5、interval:4〜6sec、rotation speed:150〜250/1500rpm、N2ガス:0.3kg/cm2G〜0.4kg/cm2Gで、3000カウントまで測定する。これを演算計算にて、各チャンネルのd(μm)粒径ごとに、負極性と正極性のカウントし、横軸にQ/dを取り、縦軸にN(a.u.)個数をとり、標準偏差を算出し、以下のようなランク付けを行った。
◎:標準偏差が0.05(μm)未満の場合。
○:標準偏差が0.05〜0.10(μm)の場合。
△:標準偏差が0.10〜0.20(μm)の場合。
×:標準偏差が0.20(μm)を超える場合。