JP2009139590A - トナー、トナー製造方法、二成分現像剤、現像装置、および画像形成装置 - Google Patents

トナー、トナー製造方法、二成分現像剤、現像装置、および画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】低融点の離型剤が直接トナー表面に出現せず、低温にて定着できる性質を有しつつ、流動性、帯電安定性および耐久性が優れたトナーを提供する。
【解決手段】本発明のトナー100は、主樹脂と着色剤と互いに融点の異なる2種以上の離型剤とを含んでおり、上記2種以上の離型剤のうち少なくとも最も低融点の離型剤は、樹脂でカプセル化され、該カプセル中に発泡剤を含有している。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子写真方式または静電印刷方式などを用いた画像形成において、潜像の現像に用いられるトナー、トナー製造方法、現像剤、現像装置、および画像形成装置に関するものである。
従来から潜像を顕像化するトナーは、種々の画像形成プロセスに用いられており、その一例として電子写真方式の画像形成プロセスに用いられることが知られている。
電子写真方式を利用する画像形成装置では、画像形成プロセスとして、一般に、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程および定着工程が行われる。帯電工程では、潜像担持体である感光体表面の感光層を均一に帯電させる。露光工程では、帯電された感光体表面に原稿像の信号光を投射して静電潜像を形成する。現像工程では、感光体表面の静電潜像に電子写真用トナー(以後特に断らない限り単に「トナー」と称す)を供給してトナー像(可視像)を形成する。転写工程では、感光体表面のトナー像を紙、OHPシートなどの記録媒体に転写する。定着工程では、トナー像に定着ローラ等によって加熱、加圧等を行い記録媒体上に定着させる。クリーニング工程では、トナー像転写後の感光体表面に残留するトナーなどをクリーニングブレードにより除去して清浄化する。電子写真方式を利用する画像形成装置は、以上の工程を経て記録媒体上に所望の画像を形成する。なお、記録媒体へのトナー像の転写は、中間転写媒体を介して行われることもある。
上記のような電子写真方式の画像形成プロセスにおいて、定着工程では消費電力が大きく、近年の省エネルギー化の動向に対して、熱伝達効率や低熱容量化を向上させることによる予熱エネルギーの浪費を防ぐための工夫がなされている。そこで、例えば、トナーにおいては、低エネルギーで定着可能な低温定着化トナーが求められている。
さらに、画像形成装置の高速化により、記録媒体が定着ローラを通過する時間が短縮され、トナーに伝達される熱エネルギーが減少するため、トナーは低エネルギーで瞬時に記録媒体に浸透する低温定着化トナーが求められている。
これらのトナーへの要望に対して、トナー中に離型性材料を含有させることによって、トナーの低温定着化を実現する試みがなされている。しかしながら、トナー表面に存在する離型性材料(離型剤)が、感光体上へのフィルミング、キャリア表面への融着、トナー同士の凝集などの不具合を引き起こし、保存安定性が損なわれる。そこで、特許文献1に開示された技術では、離型性材料を樹脂で被覆してトナー中に含有する方法が提案されている。離型性材料を用いることにより、低温定着化を促進させることができるが、離型性材料の融点を低くすることは、前述の不具合も促進することとなる。そのため、融点の低い離型性材料の外殻を樹脂で完全に被覆することが求められる。さらに、被覆状態が十分でないと、現像剤の帯電安定性、流動性を著しく低下させることになる。
特許文献1には、樹脂、着色剤と共に、樹脂で被覆した離型性材料の微粒子を溶融、混練し、粉砕する方法でトナーを製造する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載されている製造方法では、被覆した樹脂が破損し、離型性材料がトナー表面にしみ出るなどして、感光体上へのフィルミング、キャリア表面への融着、トナー同士の凝集などの不具合は十分解決されていない。そのため、現像剤の帯電安定性、流動性についても著しく低下してしまう。
そこで、特許文献2では、トナー材料の各微粒子と、樹脂で被覆した離型性材料の微粒子を水中で会合させることによって、トナーを製造する方法が開示されている。
特開平10−268551号公報(平成10年10月9日公開) 特開2006−308877号公報(平成18年11月9日公開)
しかしながら、特許文献2に開示されたトナーでは、離型性の材料を被覆する樹脂の強度が不足しており、現像槽内での撹拌などのストレスによって、被覆した樹脂が破損し、離型性材料がトナー表面にしみ出るなどして、耐久性が低いという課題を有している。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低融点の離型剤が直接トナー表面に出現せず、低温にて定着できる性質を有しつつ、流動性、帯電安定性および耐久性が優れたトナー、及びそれを用いた二成分現像剤、現像装置、および画像形成装置、並びにトナー製造方法を提供することである。
本発明に係るトナーは、上記課題と解決するために、少なくとも主樹脂と着色剤と互いに融点の異なる2種以上の離型剤とを含むトナーであって、上記2種以上の離型剤のうち少なくとも最も低融点の離型剤は、樹脂でカプセル化され、該カプセル中に発泡剤を含有することを特徴としている。
上記構成によると、少なくとも最も低融点の離型剤がカプセル化されていることで、この低融点の離型剤が直接トナー表面に出現することがない。さらにカプセル中に発泡剤が含有されていることにより、定着時の熱と圧力の他に、発泡剤による内部からの圧力により、カプセルが効果的に破壊され、少なくとも最も低融点の離型剤の放出性が向上する。そのため、本発明に係るトナーは、良好な保存安定性を維持したまま低温定着性と広い定着域を確保することができる。
よって、上記構成により、低融点の離型剤が直接トナー表面に出現せず、低温定着性でありながら、流動性、帯電安定性および耐久性に優れたトナーを提供することができる。
本発明に係るトナーでは、上記構成に加え、上記発泡剤の沸点は、150℃以下であるのが好ましい。発泡剤の沸点が150℃を超えると、定着によりカプセルの崩壊が促進されず、内包された低融点の離型剤による剥離効果が抑制されるため、低温定着性が不良となる。よって、発泡剤が、150℃以下の範囲内の沸点を有していると、カプセルの性能をより効果的なものとすることができる。なお、上記発泡剤の沸点は、150℃以下が好ましく、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
本発明に係るトナーでは、上記構成に加え、上記発泡剤は、カプセル化される離型剤100重量部に対して、20〜200重量部含有されることが好ましい。この範囲の発泡剤が含有されることにより、カプセル化された離型剤が、より効果的に放出される。この範囲より少ないと発泡性が少なくなり、定着オフセットが発生する。また、この範囲より多いとカプセルの耐久性が悪くなり、長期ランニング時にトナーの流動性が悪化する。なお、発泡剤の添加量は離型剤100重量部に対して、20〜200が好ましいが、より好ましくは50〜150重量部、さらに好ましくは70〜100重量部である。
本発明に係るトナーでは、上記構成に加え、上記カプセルを成す樹脂は、ポリウレアまたはポリウレタンを含んでいてもよい。カプセルを、ポリウレアまたはポリウレタン樹脂薄膜とすると、水性媒体中および現像槽内での攪拌では破裂しない程度の機械的強度を持つ。さらに、トナーの定着時においては、100℃〜150℃程度の熱を加えることにより、カプセルが内包している離型剤を容易に放出することができる。よって、上記構成によると、トナーをより性能よくすることができる。
本発明に係るトナーでは、上記構成に加え、上記カプセル化される離型剤の融点は、30℃以上60℃未満であってもよい。カプセル化される離型剤の融点が30℃未満では室温で液体であるため、カプセル化された離型剤の強度が不足し、トナー造粒の際、強度やトナーの保存安定性が低下してしまう。他方、カプセル化される離型剤の融点が60℃以上では、一般的にトナー中に含有されるワックスの融点と相違がなく、低温定着の効果を十分に発揮できない。よって、カプセル化される離型剤の融点が、30℃以上60℃未満であると、トナーをより性能よくすることができる。
なお、上記一般ワックスとは、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス、カルナバワックス、木蝋、ライスワックス、キャンデリラワックスなどの植物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライトなどの鉱物系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックス、油脂系合成ワックス(エステル、ケトン類、アミド)、水素化ワックスなどの合成ワックスなどが挙げられる。
本発明に係るトナーでは、上記構成に加え、上記2種以上の離型剤のうち最も高融点の離型剤の融点は、60℃以上150℃未満であってもよい。最も高融点の離型剤の融点が60℃未満ではトナー表面に存在した場合、感光体上へのフィルミング、キャリア表面への融着、トナー同士の凝集を引き起こし、保存安定性が低下する。110℃以上では、一般的にトナー中に含有される主樹脂の融点と相違がなく、離型剤の効果を十分に発揮できない。そこで、最も高融点の離型剤の融点が、60℃以上1500℃未満であると、トナーをより性能よくすることができる。
本発明に係るトナーでは、上記構成に加え、上記カプセル化された離型剤の体積平均粒径は、0.5μm以上3μm未満であってもよい。カプセル化された離型剤の体積平均粒径が0.5μm未満では、離型剤のドメインが小さく離型剤としての効果を十分に発揮できないばかりでなく、粒径が小さくなることに伴ってシェル剤の厚みが薄くなり、耐久性を保持できない。3μm以上では、トナー中に均一に含有させることが困難になり、低温定着の効果を十分に発揮できないばかりでなく、小粒径で粒度分布のシャープなトナーが得られず、高画質な画像を得ることができなくなる。よって、カプセル化された離型剤の体積平均粒径が0.5μm以上3μm未満であると、トナーをより性能よくすることができる。
本発明に係るトナーでは、上記構成に加え、上記主樹脂が、ポリエステルを含んでいてもよい。ポリエステルは透明性に優れるため、主樹脂がポリエステルを含んでいると、二次色再現性がよい。また、ポリエステルは、溶融粘度が低いことから画像の平滑性が要求されるカラートナーに適している。さらに、ポリエステルは、シャープメルトな樹脂特性から、低温定着性に非常に優れる。
本発明に係るトナーの製造方法は、少なくとも主樹脂と着色剤と互いに融点の異なる2種以上の離型剤とを含むトナーを、水性媒体中で造粒させて製造するトナー製造方法であって、上記2種以上の離型剤のうち少なくとも最も低融点の離型剤を、発泡剤を含有させて、樹脂でカプセル化するステップを含むことを特徴としている。
上記方法によると、上記いずれかの本願発明に係るトナーを製造することができる。なお、低融点の離型剤のカプセルを破壊することなくトナー中に含有させるためには、湿式法により製造することが効果的である。
本発明に係る二成分現像剤は、上記いずれか1つに記載のトナーと、キャリアとからなることを特徴としている。二成分現像剤が、低温定着性と耐久性とを両立した上記いずれか1つのトナーを含んでいることで、このような二成分現像剤により、現像槽内での撹拌などのストレスによる低温定着材料のキャリア汚染がなく、低温定着性の高い現像剤を実現することができる。
本発明に係る現像装置は、上記いずれか1つの本発明に係るトナー、または上記本発明に係る二成分現像剤を用いて現像を行うことを特徴としている。本発明に係るトナー、または本発明に係る二成分現像剤を用いて現像することにより、低温定着性、耐久性に優れ、安定して高画質なトナー像を形成することができる。
本発明に係る画像形成装置は、上記本発明に係る現像装置を備えることを特徴としている。よって、低温定着性、耐久性に優れ、安定して高画質な画像を形成することができる。
本発明のトナーは、以上のように、上記2種以上の離型剤のうち少なくとも最も低融点の離型剤は、樹脂でカプセル化され、該カプセル中に発泡剤を含有している。
上記構成によると、少なくとも最も低融点の離型剤がカプセル化されていることで、この低融点の離型剤が直接トナー表面に出現することがない。さらにカプセル中に発泡剤が含有されていることにより、定着時の熱と圧力の他に、発泡剤による内部からの圧力により、カプセルが効果的に破壊され、少なくとも最も低融点の離型剤の放出性が向上する。そのため、本発明に係るトナーは、良好な保存安定性を維持したまま低温定着性と広い定着域を確保することができる。
よって、上記構成により、低融点の離型剤が直接トナー表面に出現せず、低温定着性でありながら、流動性、帯電安定性および耐久性に優れたトナーを提供することができる。
本発明の一実施形態について図1から図3に基づいて説明すると以下の通りである。
初めに本実施形態のトナーについて説明する。本実施形態のトナー100は、主樹脂と、着色剤と、互いに融点の異なる2種以上の離型剤とを含んでいる。そして、2種以上の離型剤のうち少なくとも最も低融点の離型剤は、樹脂でカプセル化されており、また、このカプセル中に発泡剤を含有している。さらに、トナー100には、外添剤100aが添加されていてもよい。
本実施形態のトナー100に用いられる主樹脂(結着樹脂、結着用樹脂)としては、特に限定されるものではなく、ブラックトナーまたはカラートナー用の主樹脂を使用することができ、たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレンおよびスチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられ、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂は、透明性に優れるため二次色再現性がよく、溶融粘度が低いことから、画像の平滑性が要求されるカラートナーに適している。また、シャープメルトな樹脂特性から、低温定着性に非常に優れる。
着色剤としては、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤、およびブラックトナー用着色剤などが挙げられる。
イエロートナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー185などのアゾ系顔料、黄色酸化鉄および黄土などの無機系顔料、C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19、およびC.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料などが挙げられる。
マゼンタトナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、およびC.I.ディスパーズレッド15などが挙げられる。
シアントナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー25、およびC.I.ダイレクトブルー86などが挙げられる。
また、ブラックトナー用着色剤としては、たとえば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、およびアセチレンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。
これらの顔料以外にも、紅色顔料、緑色顔料などを使用できる。着色剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。また、同色系のものを2種以上用いることができ、異色系のものをそれぞれ1種または2種以上用いることもできる。
離型剤として用いることができるワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス、カルナバワックス、木蝋、ライスワックス、キャンデリラワックスなどの植物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライトなどの鉱物系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、油脂系合成ワックス(エステル、ケトン類、アミド)、水素化ワックスなどの合成ワックスが挙げられる。離型剤は、これらの中から、融点の異なる2種以上のものを用いればよい。
本実施形態では、高融点の離型剤と低融点の離型剤との融点の異なる2種の離型剤を用いる。また、低融点の離型剤は、樹脂でカプセル化されており、該カプセル中には発泡剤が含有されている。
高融点の離型剤としては、融点が60℃以上150℃未満のものであれば、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。融点が60℃未満では保存性が悪く、150℃以上では主樹脂の軟化点に近く、離型剤としての効果を十分に発揮できない。このような高融点の離型剤として、たとえば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス、カルナバワックス、木蝋、ライスワックス、キャンデリラワックスなどの植物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライトなどの鉱物系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックス、油脂系合成ワックス(エステル、ケトン類、アミド)、水素化ワックスなどの合成ワックスが挙げられる。
高融点の離型剤の好ましい使用量は、主樹脂100重量部に対して0.2重量部以上15重量部以下である。高融点の離型剤が15重量部よりも多く含まれると、感光体上へのフィルミング、キャリアへのスペントが起こりやすい問題がある。高融点の離型剤の含有量が0.2重量部未満であると、離型剤の機能を十分発揮できない問題がある。2重量部以上10重量部以下であることが好ましく、3重量部以上7重量部以下であることがさらに好ましい。
低融点の離型剤としては、融点が30℃以上60℃未満のものであれば、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。融点が30℃未満では保存性が悪く、60℃以上では主樹脂の軟化点に近く、低温定着の効果を十分に発揮できない。このような低融点の離型剤として、たとえば、融点の調整が比較的容易であるパラフィンワックスなどの石油系ワックス、フィッシャートロプッシュワックスなどの合成ワックスなどが挙げられる。
これらの低融点の離型剤をカプセル化する材料(シェル剤)としては、ポリウレアあるいはポリウレタンが挙げられる。ポリウレアおよびポリウレタンは、薄膜形成が可能であるためカプセルを小粒径化でき、機械的圧力衝撃に対して強靭であるためトナー製造中の凝集過程で破損することがなく、低温定着温度付近(100℃−150℃)で熱応答性があるため好ましい。
低融点の離型剤をカプセル化する方法としては、シェル剤にポリウレアおよびポリウレタンを選択するため、反応速度が大きく、加熱の必要がない界面重合法が好ましい。
本実施形態のトナー100を、通常のプリンタや複写機等に使用する場合は、マイクロカプセル内に内包されている発泡剤は、少なくとも加熱定着温度よりも低い温度で気化する低沸点物質であることが必要である。よって、具体的には150℃以下、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下で気化する物質を発泡剤として用いるのがよい。但し、マイクロカプセル型発泡剤の熱応答性は、芯材である低沸点物質(発泡剤)の沸点のみならず、シェル剤の軟化点に依存するので、低沸点物質の好ましい沸点範囲は前記範囲には限定されない。ここでは、発泡剤として用いられる低沸点物質は、例えば、ネオペンタン、ネオヘキサン、イソペンタン、イソブチレン、イソブタン等が挙げられる。中でも、マイクロカプセルの壁材に対して安定で、比較的高温でも熱膨張率の高いイソヘプタンが好ましい。
発泡剤の添加量は離型剤100重量部に対して、20〜200重量部、好ましくは50〜150重量部、より好ましくは70〜100重量部である。これより少ないと発泡性が少なくなり、定着オフセットが発生する。また、これより多いとカプセルの耐久性が悪くなり、長期ランニング時にトナーの流動性が悪化する。
カプセル化された低融点の離型剤の体積平均粒子径は0.5μm以上3μm未満であることが好ましい。0.5μm未満では、低融点化合物のドメインが小さいため、低温定着の効果を十分に発揮できない。3μm以上では、小粒径で粒度分布のシャープなトナーが得られず、高画質化の妨げになる。トナー100の粒度分布をよりシャープにするためには、体積平均粒子径は0.5μm以上1.0μm未満であることがより好ましい。
低融点の離型剤の好ましい使用量は、主樹脂100重量部に対して0.2重量部以上15重量部以下である。離型剤が15重量部よりも多く含まれると、保存性が悪化するという問題がある。離型剤の含有量が0.2重量部未満であると、離型剤の機能を十分発揮できない問題がある。2重量部以上10重量部以下であることが好ましく、3重量部以上7重量部以下であることがさらに好ましい。
本実施形態のトナー100には、主樹脂、着色剤、高融点の離型剤、カプセル化された低融点の離型剤の他に、帯電制御剤などのその他のトナー添加成分が含有されてもよい。
帯電制御剤としては、正電荷制御用または負電荷制御用の帯電制御剤を使用できる。たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、およびアミジン塩などの正電荷制御用の帯電制御剤と、たとえば、オイルブラックおよびスピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、ならびに樹脂酸石鹸などの負電荷制御用の帯電制御剤が挙げられる。
(トナー製造方法)
次に、トナー100を製造する方法について述べる。カプセル化された低融点の離型剤を破損することなく、トナー100中に含有させるには、湿式法でトナー100を製造する必要がある。湿式法としては、(イ)懸濁安定剤によって水中に分散させた主樹脂のモノマーを着色剤の存在下に重合させ、生成する主樹脂粒子中に着色剤を包含させてトナーを得る懸濁重合法、(ロ)トナー原料(主樹脂粒子、着色剤など)の水分散液、もしくはトナー原料の溶融混練物などの水分散液を混合して凝集粒子を形成し、この凝集粒子を加熱融合してトナーを得る凝集法、(ハ)水分散性樹脂および着色剤を有機溶媒に溶解または分散させ、これに撹拌下に該水分散性樹脂の解離基を中和する中和剤および水を加え、着色剤などを内包する樹脂滴を生成させ、これを転相乳化させてトナーを得る転相乳化法、(ニ)主樹脂および着色剤を含むトナー材料を主樹脂が溶解可能な有機溶媒中に溶解または分散させ、得られた溶液または分散液と、無機分散剤たとえばリン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの難水溶性アルカリ土類金属塩などの水分散液とを混合して造粒を行った後、有機溶媒を除去してトナーを得る溶解懸濁法、(ホ)主樹脂および着色剤などを主樹脂が溶解可能な非水溶性有機溶媒に溶解または分散させ、得られた溶液または分散液を水性分散液中に乳化分散させた後、有機溶媒を除去してトナーを得る乳化分散法、などが提案されている。
これらのうち、(ハ)の転相乳化法、(ニ)の溶解懸濁法および(ホ)の乳化分散法には、主樹脂を溶解または分散させるために有機溶媒を用いるので、環境問題への対応から溶媒回収装置が必要となり、製造設備が大掛かりなものになるという問題がある。そのため、(イ)の懸濁重合法もしくは(ロ)の凝集法が好ましい。ただし、(イ)の懸濁重合法で得られるトナーは球形で、クリーニング不良の原因となるため、トナーの形状を制御できる(ロ)の凝集法がより好ましい。
(ロ)の凝集法には2通りある。(1)主樹脂微粒子、着色剤微粒子、高融点の離型剤微粒子を調製し、カプセル化された低融点の離型剤微粒子と凝集させる方法と、(2)少なくとも主樹脂、着色剤および高融点の離型剤を含む溶融混練物を微粒化した着色樹脂微粒子と、カプセル化された低融点の離型剤を凝集させる方法である。(2)は顔料分散性がよく、さらに好ましい。
次に上記(1)を用いたトナー製造方法での、主樹脂微粒子の水分散液の調製方法について説明する。
主樹脂がモノマーの場合は、界面活性剤等を用いて、乳化重合やシード重合により、主樹脂微粒子の水分散液を作製することができる。
主樹脂微粒子の分子量を低下させる目的で、分子量調整剤を使用することができる。分子量調整剤としては、たとえば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オキチルメルカプタンなどのメルカプタン類、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類などを挙げることができる。これらの分子量調整剤は、重合開始前、あるいは、重合の途中で添加することができる。分子量調整剤は、主樹脂モノマー100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
主樹脂微粒子の分子量を増加させる目的で架橋性単量体を使用することができる。架橋性単量体としては、たとえば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能性単量体類を挙げることができる。これらの架橋性単量体は、重合開始前、あるいは、重合の途中で添加することができる。架橋性単量体は、主樹脂モノマー100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の割合で用いられる。
また、その他の樹脂の場合は、樹脂を水に対する溶解度の比較的低い油性の溶剤に溶解し、水中に投入して、界面活性剤や高分子電解質とともにホモジナイザー等の分散機により水中に微粒子分散させ、その後加熱または減圧して溶剤を蒸散することにより、主樹脂微粒子の分散液を調製することができる。
主樹脂微粒子の平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01〜1μmであるのが好ましい。平均粒径が1μmを越えると、最終的に得られるトナー粒子の粒径分布が広くなり、遊離粒子の発生が生じ、トナー100の性能や信頼性の低下を招き易い。
主樹脂微粒子分散液の調製に使用する水性媒体には、無機または有機の分散剤を含有する水性媒体を用いることができ、分散剤を添加することが好ましい。分散剤は主樹脂モノマーなどのトナー組成物を水性媒体に添加する前に、水性媒体に添加しておくことが好ましい。
次に上記(1)を用いたトナー製造方法での、着色剤微粒子の水分散液の調製方法について説明する。
着色剤微粒子分散液は、着色剤を水性媒体中に分散することによって得られる。着色剤は、水性媒体100重量部に対して5重量部以上50重量部以下の割合で用いられることが好ましく、20重量部以上40重量部以下の割合で用いられることがさらに好ましい。着色剤の使用割合が5重量部未満であると、水性媒体に対する着色剤の量が少なすぎるので分散均一性が低下する。着色剤の使用割合が50重量部を超えると、水性媒体に対する着色剤の量が多すぎるので、水性媒体の粘度が高くなり過ぎ、これによっても分散性が低下する。
着色剤微粒子の平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01〜1μmであるのが好ましい。前記平均粒径が1μmを越えると、最終的に得られるトナー粒子の粒径分布が広くなり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招き易い。
着色剤微粒子分散液の調製に使用する水性媒体には、無機または有機の分散剤を含有する水性媒体を用いることができ、分散剤を添加することが好ましい。分散剤は着色剤などのトナー組成物を水性媒体に添加する前に、水性媒体に添加しておくことが好ましい。
無機分散剤としては、親水性の無機分散剤であることが好ましい。親水性の無機分散剤を用いることによって、液状媒体中での着色剤の微粉の粒径を一層均一にすることができる。親水性の無機分散剤としては、たとえば、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、粘土、珪藻土、ベントナイトなどが挙げられる。これらの中でも、炭酸カルシウムが好ましい。
このような無機分散剤は、その1次粒子の個数平均粒径が1nm以上1000nm以下であることが好ましく、5nm以上500nm以下であることがより好ましく、10nm以上300nm以下であることがさらに好ましい。無機分散剤の1次粒子の個数平均粒径が1nm未満であると、無機分散剤を水性媒体中に分散させることが困難となる。無機分散剤の1次粒子の個数平均粒径が1000nmを超えると、着色剤の粗粉の粒径と無機分散剤の粒径との差が小さくなり、着色剤の粗粉を液体中に安定して分散維持させることが困難となる。
また、上記無機分散剤は、着色剤100重量部に対して1重量部以上300重量部以下の範囲で使用されることが好ましく、4重量部以上100重量部以下の範囲で使用されることがより好ましい。無機分散剤の使用量が1重量部未満であると、無機分散剤を水性媒体中に分散させることが困難となる。無機分散剤の使用量が300重量部を超えると、液状媒体の粘度が高くなり過ぎ、分散性が低下するおそれがある。
また水性媒体には、無機分散剤とともに高分子分散剤が添加されてもよい。高分子分散剤としては、たとえば、親水性のものを用いることが好ましく、カルボキシル基を有するものがより好ましく、ヒドロキシプロポキシル基、メトキシル基などの親油基を持たないものが特に好ましい。このような高分子分散剤としては、たとえば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースなどの水溶性セルロースエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、カルボキシメチルセルロースが特に好ましい。高分子分散剤は、着色剤100重量部に対して0.1重量部以上5.0重量部以下の割合で用いられることが好ましい。
有機分散剤としては、アニオン系分散剤であることが好ましい。アニオン系分散剤は、水中での着色剤粒子の分散性を向上させる能力に優れる。アニオン系分散剤としては、たとえば、スルホン酸型アニオン系分散剤、硫酸エステル型アニオン系分散剤、ポリオキシエチレンエーテル型アニオン系分散剤、リン酸エステル型アニオン系分散剤、ポリアクリル酸塩などが挙げられる。アニオン系分散剤の具体例としては、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンフェニルエーテルなどを好ましく使用できる。アニオン系分散剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
また、有機分散剤としては、アニオン系分散剤に限定されることなく、カチオン系分散剤であってもよい。カチオン系分散剤としては、たとえば、アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン系分散剤、アルキルアミドアミン型カチオン系分散剤、アルキルジメチルベンジルアンモニウム型カチオン系分散剤、カチオン化多糖型カチオン系分散剤、アルキルベタイン型カチオン系分散剤、アルキルアミドベタイン型カチオン系分散剤、スルホベタイン型カチオン系分散剤、アミンオキサイド型カチオン系分散剤、金属塩などが好ましい。金属塩としては、たとえば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの塩化物、硫酸塩などが挙げられる。
これらの中でも、アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン系分散剤がさらに好ましい。アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン系分散剤の具体例としては、たとえば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。カチオン系分散剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
有機分散剤の添加量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、好ましくは着色剤100重量部に対して0.1重量部以上5重量部以下である。添加量が0.1重量部未満では、分散剤による着色剤の分散効果が不充分になり、凝集が起こるおそれがある。有機の分散剤が5重量部を超えて添加されても、分散効果はそれ以上向上せず、着色剤分散液の粘性が高くなることによって、却って着色剤の分散性が低下する。その結果凝集が起こる恐れがある。
水性媒体と分散剤との混合は、特に限定されることなく公知の方法によって行うことができる。無機の分散剤と水性媒体とを混合する場合、ボールミル、サンドミルなどのメディア入り分散機、高圧分散機、超音波分散機などを用いて、無機分散剤を水性媒体に水中に分散させることができる。有機の分散剤と水性媒体とを混合する場合、水中に分散剤を均一に溶解させることができる方法であれば、どのような方法によって添加、分散が行われてもよい。水性媒体と分散剤とを混合して得られた液状媒体と着色剤とは、たとえば高圧ホモジナイザーで処理される。これによって着色剤が細粒化され、着色剤が液状媒体中に分散した着色剤分散液、すなわち着色剤微粒子分散液を得ることができる。
次に、上記(1)を用いたトナー製造法での、高融点の離型剤微粒子の水分散液の調製方法について説明する。
高融点の離型剤微粒子分散液は、高融点の離型剤を水性媒体中に分散することによって得られる。高融点の離型剤は、水性媒体100重量部に対して5重量部以上50重量部以下の割合で用いられることが好ましく、20重量部以上40重量部以下の割合で用いられることがさらに好ましい。高融点の離型剤の使用割合が5重量部未満であると、水性媒体に対する着色剤の量が少なすぎるので分散均一性が低下する。着色剤の使用割合が50重量部を超えると、水性媒体に対する高融点の離型剤の量が多すぎるので、水性媒体の粘度が高くなり過ぎ、これによっても分散性が低下する。
高融点の離型剤微粒子の平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01〜1μmであるのが好ましい。前記平均粒径が1μmを越えると、最終的に得られるトナー粒子の粒径分布が広くなり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招き易い。
高融点の離型剤微粒子分散液の調製に使用する水性媒体には、無機または有機の分散剤を含有する水性媒体を用いることができ、分散剤を添加することが好ましい。分散剤は高融点の離型剤などのトナー組成物を水性媒体に添加する前に、水性媒体に添加しておくことが好ましい。
次に、(2)を用いたトナー製造法での、主樹脂と着色剤と高融点の離型剤とからなる着色樹脂微粒子の水分散液の調製方法について説明する。
主樹脂および着色剤、ならびにその他のトナー添加成分を含むトナー組成物を、混合機で乾式混合した後、主樹脂の軟化点以上熱分解温度未満の温度、たとえば80℃以上200℃以下、好ましくは100℃以上150℃以下程度に加熱して溶融混練し、主樹脂を軟化させて主樹脂中に着色剤およびトナー添加成分を分散させる。トナー組成物は、予備混合されることなくそのまま溶融混練されてもよいが、予備混合した後に溶融混練を行う方が、着色剤、帯電制御剤などの主樹脂以外の添加成分の主樹脂中での分散性を向上させ、得られるトナーの帯電性能などの特性をより均一に発現させることができるので好ましい。
混合機としては公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサー(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
混練機としては公知のものを使用でき、たとえば、二軸押出機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。さらに具体的には、たとえば、PCM−30、PCM−65/87(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)などの一軸または二軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機などが挙げられる。これらの中でも、オープンロール方式の混練機が好ましい。
トナー組成物の混練物は溶融混練後室温まで冷却された後、所定の粒子径に粉砕される。粉砕には、カッターミル、フェザーミル、ジェットミルなどの粉体粉砕機が用いられる。これによってトナー組成物の混練物の粉砕物が得られる。以下、本明細書において、トナー組成物が溶融混練後粉砕されて得られる粉砕物を、溶融混練物という。溶融混練物の体積平均粒子径は特に限定されるものではないが、好ましくは50μm〜1000μmであり、さらに好ましくは150μm〜400μmである。
以上のようにして得られる溶融混練物は、界面活性剤を含む水性媒体と混合される。水性媒体としては、主樹脂を含む溶融混練物を溶解せず、かつ均一に分散させ得る液体であれば特に限定されるものではないが、工程管理の容易さ、全工程後の廃液処理、取扱い易さなどを考慮すると、水であることが好ましい。水性媒体として用いる水は、導電率が20μS/cm以下の水であることが好ましい。このような洗浄水は、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法、逆浸透法などによって調製することができる。またこれらの方法のうち、2種以上を組み合わせて水を調製してもよい。
界面活性剤は溶融混練物の水性媒体に対する分散性を一層向上させる。界面活性剤は水性媒体に溶解するが、添加することによって溶融混練物を溶解することなく、かつ均一に分散させ得るものが選択される。界面活性剤は、溶融混練物を水性媒体に添加する前に、水性媒体に添加しておくことが好ましい。界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤であることが好ましい。アニオン系界面活性剤は、樹脂微粒子の水中での分散性を向上させる能力に優れる。アニオン系界面活性剤としては、たとえば、スルホン酸型アニオン系分散剤、硫酸エステル型アニオン系分散剤、ポリオキシエチレンエーテル型アニオン系分散剤、リン酸エステル型アニオン系分散剤、ポリアクリル酸塩などが挙げられる。アニオン系界面活性剤の具体例としては、たとえば、ポリアクリル酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンフェニルエーテルなどを好ましく使用できる。アニオン系界面活性剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。また界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤に限定されることなく、後述の凝集剤として用いられるカチオン系分散剤であってもよい。
界面活性剤の添加量は特に限定されるものではないが、好ましくは溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物の総重量の0.1重量%〜5重量%である。0.1重量%未満では界面活性剤による水性媒体中への樹脂微粒子の分散効果が不充分になり、過凝集が起こるおそれがある。5重量%を超えて添加しても分散効果はそれ以上向上せず、それどころか界面活性剤を含む水性媒体中に樹脂微粒子を分散した際の粘性が高くなることによって樹脂微粒子の分散性が低下し、その結果、過凝集が起こるおそれがある。
水性媒体には、分散安定剤、増粘剤などを添加してもよい。分散安定剤は、水性媒体中における溶融混練物の分散を安定にすることができる。増粘剤は溶融混練物の一層の微粒化に有効である。
分散安定剤としては、この分野で常用されるものを使用できる。その中でも水溶性高分子分散安定剤が好ましい。水溶性高分子分散安定剤としては、たとえば、アクリル酸、メタアクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのアクリル系単量体、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有アクリル系単量体、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステルなどのエステル系単量体、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのビニルアルコール系単量体、ビニルアルコールとのエーテル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなどのビニルアルキルエーテル系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルアルキルエステル系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、これらのメチロール化合物などのアミド系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド系単量体、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどのビニル窒素含有複素環系単量体、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、メタクリル酸アリル、ジビニルベンゼンなどの架橋性単量体などから選ばれる1種または2種の親水性単量体を含むアクリル系ポリマー、メタアクリル系ポリマー、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系ポリマー、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸カリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル硫酸アンモニウムなどのポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウムなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩などが挙げられる。分散安定剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。分散安定剤の添加量としては特に限定されるものではないが、好ましくは、溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物の総重量の0.05重量%〜10重量%であり、さらに好ましくは0.1重量%〜3重量%である。
増粘剤としては、合成高分子多糖類および天然高分子多糖類から選ばれる多糖類系増粘剤が好ましい。合成高分子多糖類としては公知のものを使用でき、たとえば、カチオン化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、イオン化デンプン誘導体、デンプンと合成高分子のブロック重合体などが挙げられる。天然高分子多糖類としては、たとえば、ヒアルロン酸、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グァーガム、ジェランガムなどが挙げられる。増粘剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。増粘剤の添加量としては特に限定されるものではないが、好ましくは溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物の総重量の0.01重量%〜2重量%である。
少なくとも主樹脂および着色剤を含む溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合は、一般的な混合機を用いて行われ、それによって溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体とを含む混合物が得られる。ここで、水性媒体に対する溶融混練物の添加量としては特に限定されるものではないが、好ましくは、溶融混練物と、界面活性剤を含む水性媒体との混合物の総重量の3重量%〜45重量%、さらに好ましくは5重量%〜30重量%である。
溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合は、加熱下または冷却下で実施してもよいが、通常は室温下で行われる。
以上のようにして得られた溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物を粗粉砕して、溶融混練物の粗粉を含む水性分散液(以下「粗粉分散液」という)を得る。本実施の形態では、高圧ホモジナイザー法による粗粉砕を行う。高圧ホモジナイザー法とは、加圧条件下に粒子を粉砕する装置を用い、粉砕段階、減圧段階、冷却段階からなる微粒化方法であり、溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物を15MPa以上120MPa以下の加圧条件下であり、かつ10℃以上主樹脂のガラス転移温度(Tg)未満の温度条件下にて、粉砕用ノズルを通過させ、気泡が発生しない圧力条件まで徐々に減圧し、冷却することによって行う。
粉砕段階では、高圧ホモジナイザーにおける粉砕用ノズルが用いられる。粉砕用ノズル内に導入する際に溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物中もしくは溶融混練物表面に気泡が存在すると、粉砕用ノズルでの粉砕効率が低下するため、除去する必要がある。そのため、溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物を加圧加熱しつつ、粉砕を行う。加圧加熱条件としては特に限定されるものではないが、溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物を粉砕用ノズル内に導入する際には、高圧ホモジナイザーにおける加圧ユニットによって、50MPa以上120MPa以下に加圧される。このような範囲の圧力下において、粉砕用ノズルに通過させると、溶融混練物およびその表面に付着する気泡に大きな衝撃力を付与することができ、溶融混練物表面に付着する気泡を一層効率よく除去することができる。圧力が15MPa未満であると、溶融混練物表面に付着する気泡に付与される衝突力が小さく、気泡を溶融混練物表面から除去することができない。また圧力が120MPaを超えると、ノズルサイズと混合物の流量との整合性を取ることができず、処理することができない。また、溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物を粉砕用ノズル内に導入する際には、混合物の温度は、10℃以上主樹脂のガラス転移温度(Tg)未満の温度とされる。混合物の温度がこのような範囲であることによって、気泡を一層確実に除去することができる。また、混合物の温度が主樹脂のガラス転移温度(Tg)以上になると、混合物中の溶融混練物が凝集し、処理することができない。
減圧段階では、粉砕段階で得られる加熱加圧状態にある粗粉分散液を、気泡が発生しない状態に保持しながら、大気圧またはそれに近い圧力まで減圧する。減圧には高圧ホモジナイザーにおける減圧モジュールが用いられる。減圧段階終了後の粗粉分散液は、液温が10℃以上主樹脂のガラス転移温度(Tg)未満の温度であることが好ましい。
冷却段階では、減圧段階において減圧された粗粉分散液を20℃〜40℃程度まで冷却する。冷却には、高圧ホモジナイザーの冷却機が用いられる。
高圧ホモジナイザー法には、後述のような、高圧ホモジナイザーが用いられる。高圧ホモジナイザーとは加圧下に粒子を粉砕する装置である。高圧ホモジナイザーとしては、市販品や特許文献に記載のものなどが挙げられる。高圧ホモジナイザーの市販品としては、たとえば、高圧ホモジナイザー(商品名:NANO3000、株式会社美粒製)マイクロフルイダイザー(商品名、マイクロフルディクス(Microfluidics)社製)、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー社製)、アルティマイザー(商品名、株式会社スギノマシン製)などのチャンバ式高圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(商品名、ラニー(Rannie)社製)、高圧ホモジナイザー(商品名、三丸機械工業株式会社製)、高圧ホモジナイザー(商品名、株式会社イズミフードマシナリ製)などが挙げられる。また特許文献に記載の高圧ホモジナイザーとしては、たとえば、国際公開第03/059497号パンフレットに記載のものが挙げられる。これらの中でも、国際公開第03/059497号パンフレットに記載の高圧ホモジナイザーが好ましい。その具体例としては、たとえば、高圧ホモジナイザー(商品名:NANO3000、株式会社美粒製)などが挙げられる。本装置によれば、粉砕段階では、タンク内に貯留される溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物を加熱加圧状態で粉砕用ノズル内に導入して、混合物中の溶融混練物を樹脂微粒子に粉砕し、減圧段階では、粉砕用ノズルから排出され加圧状態にある混合物を減圧モジュール内に導入して、気泡が発生しないように減圧し、冷却段階では、減圧モジュールから排出される混合物を冷却機に導入して、冷却し、粗粉分散液を得る。粗粉分散液は取出し口から排出されるか、または再度タンク内に循環され、混合物中の溶融混練物が所望の粒子径となるまで、同様の粉砕処理が施される。
以上のような粗粉砕によって、溶融混練物と界面活性剤を含む水性媒体との混合物から、粗粉分散液を得ることができ、また溶融混練物の粗粉の体積平均粒子径を、好ましくは300μm前後、さらに好ましくは5μm以上300μm以下とすることができる。このような粒子径に溶融混練物が粉砕されることによって、さらなる微粒化を一層効率よく行うことができる。またこれと同時に、粗粉砕によって、溶融混練物に付着する気泡を除去することができ、次のさらなる微粒化において、溶融混練物の粗粉表面における界面活性剤の作用点を充分に確保することができ、安定的かつ効率的に粒径制御された樹脂微粒子(着色樹脂微粒子)を製造することができる。
上述のようにして得られた溶融混練物の粗粉を含む粗粉分散液を、さらに高圧ホモジナイザー法によって処理し、溶融混練物の粗粉を微粒化することにより、着色樹脂微粒子を含む水性分散液(以下では「着色樹脂微粒子分散液」という)を得る。本実施の形態では、溶融混練物の粗粉を含む粗粉分散液を120MPa以上250MPa以下、かつ主樹脂のガラス転移温度(Tg)以上200℃以下にて粉砕用ノズルを通過させ、気泡が発生しない圧力まで徐々に減圧し、冷却することによって行う。
粉砕段階では、粗粉砕によって前処理され、溶融混練物の粗粉表面から気泡が除去された粗粉分散液を加熱加圧下においてさらに粉砕して、着色樹脂微粒子分散液を得る。粗粉分散液は高圧ホモジナイザーにおける加圧ユニットおよび加熱ユニットによって、加熱加圧される。粗粉分散液の加圧加熱条件は特に限定されるものではないが、好ましくは、120MPa以上250MPa以下に加圧され、かつ溶融混練物の粗粉中に含まれる主樹脂のガラス転移温度(Tg)以上200℃以下に加熱される。また、120MPa以上250MPa以下に加圧され、かつ粗粉中に含まれる主樹脂の軟化温度Tm(本明細書において、Tmは、フローテスターにおける主樹脂の1/2軟化温度である)以上に加熱されるのがさらに好ましく、120MPa以上250MPa以下に加圧され、かつ溶融混練物の粗粉中に含まれる主樹脂の軟化温度Tm〜Tm+25℃に加熱されるのが特に好ましい。溶融混練物の粗粉が2種以上の主樹脂を含む場合、ここでいう軟化温度Tmは、2種以上の主樹脂の軟化温度の中で、最も高い軟化温度を有する主樹脂の値である。圧力が120MPa未満では、せん断エネルギーが小さくなり、粉砕が充分に進まないおそれがある。250MPaを超えると、実際の生産ラインにおいて危険性が大きくなり過ぎ、現実的ではない。
減圧段階では、粉砕段階で得られる加熱加圧状態にある着色樹脂微粒子分散液を、気泡が発生しない状態に保持しながら大気圧またはそれに近い圧力まで減圧する。減圧には高圧ホモジナイザーにおける減圧モジュールが用いられる。減圧段階終了後の樹脂微粒子分散液は、液温が主樹脂のガラス転移温度(Tg)以上200℃以下であることが好ましく、60℃以上Tm+60℃以下であることがさらに好ましい。
冷却段階では、減圧段階において減圧され、液温60℃以上Tm+60℃以下程度の着色樹脂微粒子分散液を冷却し、20℃〜40℃程度の着色樹脂微粒子分散液にする。冷却には、高圧ホモジナイザーの冷却機が用いられる。
以上のような工程を経て、着色樹脂微粒子が水性媒体中に微分散された着色樹脂微粒子分散液が作製される。得られた着色樹脂微粒子の体積平均粒子径としては、0.2μm〜3.0μmであることが好ましい。0.2μ未満の場合は、着色剤や離型剤の分散粒径より小さくなり、含有することができない。3.0μmより大きい場合は、粒度分布の小さい体積平均粒子径5μm〜6μmのトナーを得ることが困難である。
次に、得られた主樹脂微粒子および着色微粒子、または着色樹脂微粒子を、カプセル化された低融点化合物とともに凝集する工程を説明する。
凝集工程は、主樹脂微粒子水分散液および着色剤微粒子水分散液とカプセル化された低融点化合物分散液の混合液中に凝集剤を添加し、撹拌手段を含む造粒装置により凝集させ、凝集粒子の水分散液を調製する工程である。または、着色樹脂微粒子分散液とカプセル化された低融点化合物分散液の混合液中に凝集剤を添加し、撹拌手段を含む造粒装置により凝集させ、凝集粒子の水分散液を調製する工程である。
凝集剤としては、たとえば、カチオン系分散剤、多価金属塩などを用いることができる。カチオン系分散剤としては、たとえば、アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン系分散剤、アルキルアミドアミン型カチオン系分散剤、アルキルジメチルベンジルアンモニウム型カチオン系分散剤、カチオン化多糖型カチオン系分散剤、アルキルベタイン型カチオン系分散剤、アルキルアミドベタイン型カチオン系分散剤、スルホベタイン型カチオン系分散剤、アミンオキサイド型カチオン系分散剤、金属塩などが好ましい。金属塩としては、たとえば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの塩化物、硫酸塩などが挙げられる。
また、凝集剤として用いられる多価金属塩は、2価以上の金属の塩である。2価以上の金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムなどの周期律表第13族元素などが好ましく、マグネシウム、アルミニウムなどが特に好ましい。2価以上の金属塩の具体例としては、たとえば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
上記凝集剤の中でも、水に対する溶解度が比較的大きく、凝集速度が緩やかなことから塩化ナトリウムが好ましい。凝集剤の使用量は、樹脂微粒子分散液100重量部に対して、好ましくは0.5重量部〜20重量部であり、さらに好ましくは0.5重量部〜18重量部であり、特に好ましくは1.0重量部〜18重量部である。0.5重量部未満では凝集効果が不充分になるおそれがあり、20重量部を超えると過凝集により、凝集粒子が大きくなりすぎるおそれがある。
撹拌手段を含む造粒装置としては、機械的な一方向からの剪断力を付与し得る乳化機や分散機を用いるのが好ましい。これにより、形成される凝集粒子の粒子径および形状を一層均一化できる。乳化機および分散機の具体例としては、たとえば、ウルトラタラックス(商品名、IKAジャパン株式会社製)、ポリトロンホモジナイザー(商品名、キネマティカ社製)、TKオートホモミクサー(商品名、プライミクス株式会社製)、マックスブレンド(住友重機株式会社製)などのバッチ式乳化機、エバラマイルダー(商品名、株式会社荏原製作所製)、TKパイプラインホモミクサー(商品名、プライミクス株式会社製)、TKホモミックラインフロー(商品名、プライミクス株式会社製)、フィルミックス(商品名、プライミクス株式会社製)、コロイドミル(商品名、神鋼パンテック株式会社製)、スラッシャー(商品名、三井三池化工機株式会社製)、トリゴナル湿式微粉砕機(商品名、三井三池化工機株式会社製)、キャビトロン(商品名、株式会社ユーロテック製)、ファインフローミル(商品名、太平洋機工株式会社製)などの連続式乳化機、クレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)、フィルミックス(商品名、プライミクス株式会社製)などが挙げられる。
分散液と凝集剤との混合において、造粒装置の撹拌速度および撹拌温度は、所望の粒子径、粒度分布および形状を有するトナー粒子が得られる値を適宜選択すればよい。撹拌時間については、主樹脂、着色剤、その他トナー添加成分、凝集剤および分散剤の種類、ならびに濃度などの各種条件に応じて、適宜選択することができる。
次に洗浄工程について説明する。洗浄工程では、凝集粒子分散液を冷却した後に、凝集粒子分散液中に含まれる凝集粒子を洗浄する。凝集粒子の洗浄は、界面活性剤、分散剤、増粘剤など、および、これらに由来する不純物などを除去するために実施される。界面活性剤、分散剤、増粘剤および前記不純物が凝集粒子に残留すると、得られるトナー粒子の帯電性能が不安定になるおそれがある。また空気中の水分の影響によって帯電量が低下するおそれがある。
凝集粒子の洗浄は、たとえば、凝集粒子分散液に水を加えて撹拌し、遠心分離などによって分離される上澄み液を除去することによって行うことができる。凝集粒子の洗浄は、導電率計などを用いて測定した上澄み液の導電率が100μS/cm以下、好ましくは10μS/cm以下になるまで繰返し行うことが好ましい。これにより、界面活性剤、分散剤、増粘剤など、およびこれらに由来する不純物類の残留を一層確実に防ぎ、トナー粒子の帯電性能をさらに均一に安定化することができる。
洗浄に用いる水は、導電率が20μS/cm以下の水であることが好ましい。このような洗浄水は、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法、逆浸透法などによって調製することができる。またこれらの方法のうち、2種以上を組合わせて水を調製してもよい。凝集粒子の水洗は、バッチ式および連続式のいずれで実施してもよい。また洗浄水の温度は特に制限されるものではないが、10℃以上ガラス転移温度(Tg)以下であることが好ましい。溶融混練物が2種以上の主樹脂を含む場合、ここでいうガラス転移温度(Tg)以下とは、2種以上の主樹脂のガラス転移温度(Tg)の中で、最も低いガラス転移温度(Tg)の値以下を示す。
次に洗浄後の凝集粒子を含有する水性媒体の混合物から、凝集粒子を分離し回収する。水性媒体からの凝集粒子の分離は、特に限定されるものではないが、たとえば、濾過、吸引濾過、遠心分離などによって行うことができる。
さらに、洗浄、分離後の凝集粒子を乾燥させる。凝集粒子の乾燥は、特に限定されるものではないが、凍結乾燥法、気流式乾燥法などによって実施できる。凝集粒子が乾燥されると、トナー(トナー粒子)100の製造は終了する。
以上のようにして製造されたトナー100には、たとえば、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性、長期保存性改善、クリーニング特性改善および感光体表面磨耗特性制御などの機能を担う外添剤100aを混合してもよい。外添剤100aとしては、たとえば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末およびアルミナ微粉末などが挙げられる。外添剤100aは、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。外添剤100aの添加量としては、トナー100に必要な帯電量、外添剤100aを添加することによる感光体の摩耗に対する影響、トナー100の環境特性などを考慮して、トナー粒子100重量部に対し5重量部以下が好適である。
なお、上記のように湿式法で得られた本実施形態のトナー100は、乾式法で得られたトナーと比較して、トナー粒子の輪郭および表面の凹凸が少なく、球形から略球形である。トナー粒子の形状は、たとえば、電子顕微鏡(商品名:VE−9500、株式会社キーエンス製)によって1,000倍以上の倍率でトナー粒子を写真撮影することで確認できる。また湿式法で得られたトナー100は、フロー式粒子像分析装置(商品名:FPIA−3000)によって円形度を測定すると、0.94以上である。
(現像剤)
次に、上記のように得られるトナー100と、キャリア300とからなる二成分現像剤(静電潜像現像剤)200について述べる。
キャリア300としては、磁性を有する粒子を使用することができる。磁性を有する粒子の具体例としては、たとえば、鉄、フェライトおよびマグネタイトなどの金属、これらの金属とアルミニウムまたは鉛などの金属との合金などが挙げられる。これらの中でも、フェライトが好ましい。
また磁性を有する粒子に樹脂を被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどをキャリアとして用いてもよい。磁性を有する粒子を被覆する樹脂としては特に制限はないけれども、たとえば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、エステル系樹脂、およびフッ素含有重合体系樹脂などが挙げられる。また樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としても特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。
キャリア300の形状は、球形または扁平形状が好ましい。またキャリア300の粒径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜50μmである。さらにキャリア300の抵抗率は、好ましくは10Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。キャリア300の抵抗率は、キャリア300を0.50cmの断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cmの荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読取ることから得られる値である。抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
キャリア300の磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10〜60emu/g、さらに好ましくは15〜40emu/gである。磁化強さは現像ローラの磁束密度にもよるけれども、現像ローラの一般的な磁束密度の条件下においては、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また磁化強さが60emu/gを超えると、キャリア300の穂立ちが高くなり過ぎる非接触現像では、像担持体と非接触状態を保つことが困難になる。また接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
二成分現像剤200におけるトナー100とキャリア300との使用割合は特に制限されず、トナー100およびキャリア300の種類に応じて適宜選択できる。樹脂被覆キャリア(密度5〜8g/cm)に例をとれば、現像剤中に、トナーが現像剤全量の2〜30重量%、好ましくは2〜20重量%含まれるように、トナーを用いればよい。また現像剤200において、トナーによるキャリアの被覆率は、40〜80%であることが好ましい。
(画像形成装置および現像装置)
図2は、本発明の一実施形態である画像形成装置1の構成を模式的に示す断面図である。画像形成装置1は、本実施形態では、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にフルカラーまたはモノクロの画像を形成するとする。すなわち、画像形成装置1においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびFAXモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。
画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、転写手段3と、定着手段4と、記録媒体供給手段5と、排出手段6とを含んでいる。トナー像形成手段2を構成する各部材および中間転写手段3に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
トナー像形成手段2は、感光体11と、帯電手段12と、露光ユニット13と、現像装置14と、クリーニングユニット15とを含む。帯電手段12、現像装置14およびクリーニングユニット15は、感光体ドラム11まわりに、この順序で配置される。帯電手段12は、現像装置14およびクリーニングユニット15よりも鉛直方向下方に配置される。
感光体11は、本実施形態ではドラム状であり、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、導電性粒子および/または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。その際、導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止する、低温および/または低湿環境下における感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光体表面保護層を設けた耐久性の大きい三層構造の積層感光体であっても良い。
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の主樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環および/またはフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の主樹脂100重量部に対して好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部である。電荷発生層用の主樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。主樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
電荷発生層は、電荷発生物質および主樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.1〜2.5μmである。
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の主樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送物質中の主樹脂100重量部に対して10〜300重量部、さらに好ましくは30〜150重量部である。電荷輸送層用の主樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。主樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の主樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。電荷輸送層は、電荷輸送物質および主樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、主樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
本実施形態では、感光体11として、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。
帯電手段12は、感光体11を臨み、感光体11の長手方向に沿って感光体11表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体11表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電手段12には、帯電ブラシ型帯電器、非接触型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電手段12は感光体11表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。たとえば、帯電手段12として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラムとが圧接するように帯電ローラを配置しても良く、帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いてもよい。
露光ユニット13は、露光ユニット13から出射される各色情報の光が、帯電手段12と現像装置14との間を通過して感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13は、画像情報を該ユニット内でb、c、m、yの各色情報の光に分岐し、帯電手段12によって一様な電位に帯電された感光体ドラム11表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット13には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLEDアレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
図3に拡大図を示す現像装置14は、現像槽20とトナーホッパ21とを含む。現像槽20は感光体11表面を臨むように配置され、感光体11の表面に形成された静電潜像にトナー100を供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽20は、その内部空間にトナー100を収容し、かつ現像ローラ140a、供給ローラ140b、撹拌ローラ140cなどのローラ部材またはスクリュー部材を収容して回転自在に支持する。現像槽20の感光体ドラム11を臨む側面には開口部が形成され、この開口部を介して感光体11に対向する位置に現像ローラ140aが回転駆動可能に設けられる。現像ローラ140aは、感光体11との圧接部または最近接部において感光体11表面の静電潜像にトナー100を供給するローラ状部材である。
トナー100の供給に際しては、現像ローラ140a表面にトナー100の帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下単に「現像バイアス」とする)として印加される。これによって、現像ローラ140a表面のトナー100が静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御できる。供給ローラ140bは現像ローラを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ140a周辺にトナー100を供給する。攪拌ローラ140cは供給ローラ140bを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ21から現像槽20内に新たに供給されるトナー100を供給ローラ周辺に送給する。トナーホッパ21は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口(図示せず)と、現像槽20の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口(図示せず)とが連通するように設けられ、現像槽20のトナー100消費状況に応じてトナー100を補給する。またトナーホッパ21を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナー100を補給するよう構成しても構わない。
クリーニングユニット15は、記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体11の表面に残留するトナー100を除去し、感光体11の表面を清浄化する。クリーニングユニット15には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。なお、本発明の画像形成装置においては、感光体11として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット15よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット15を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
トナー像形成手段2によれば、帯電手段12によって均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像装置14からトナー100を供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト25に転写した後に、感光体11表面に残留するトナー100をクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
転写手段3は、感光体11の上方に配置され、中間転写ベルト25と、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、中間転写ローラ28(b、c、m、y)と、転写ベルトクリーニングユニット29、転写ローラ30とを含む。中間転写ベルト25は、駆動ローラ26と従動ローラ27とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転駆動する。中間転写ベルト25が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に対向配置される中間転写ローラ28から、感光体11表面のトナー100の帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体11の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト25上へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体11で形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト25上に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。
駆動ローラ26は図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト25を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ27は駆動ローラ26の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト25が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト25に付与する。中間転写ローラ28は、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ28は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体11表面のトナー像を中間転写ベルト25に転写する機能を有する。転写ベルトクリーニングユニット29は、中間転写ベルト25を介して従動ローラ27に対向し、中間転写ベルト25の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト25に付着するトナー100は、記録媒体の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット29が中間転写ベルト25表面のトナー100を除去し回収する。
転写ローラ30は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ26に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ30と駆動ローラ26との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト25に担持されて搬送されて来るトナー像が、後述する記録媒体供給手段5から送給される記録媒体に転写される。トナー像を担持する記録媒体は、定着手段4に送給される。転写手段3によれば、感光体11と中間転写ローラ28との圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト25に転写されるトナー像が、中間転写ベルト25の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
定着手段4は、転写手段3よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ31と加圧ローラ32とを含む。定着ローラ31は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナー100を加熱して溶融させ、記録媒体に定着させる。定着ローラ31の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ31表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ31を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着条件制御手段による加熱温度の制御については、後に詳述する。
定着ローラ31表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ31の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。加圧ローラ32は定着ローラ31に圧接するように設けられ、加圧ローラ32の回転駆動に従動回転可能に支持される。
加圧ローラ32は、定着ローラ31によってトナー100が溶融して記録媒体に定着する際に、トナー100と記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ31と加圧ローラ32との圧接部が定着ニップ部である。定着手段4によれば、転写手段3においてトナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ31と加圧ローラ32とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録媒体に押圧されることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像が形成される。
記録媒体供給手段5は、自動給紙トレイ35と、ピックアップローラ36と、搬送ローラ37と、レジストローラ38、手差給紙トレイ39を含む。自動給紙トレイ35は画像形成装置の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。
ピックアップローラ36は、自動給紙トレイ35に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。搬送ローラ37は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録媒体をレジストローラ38に向けて搬送する。レジストローラ38は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ37から送給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。手差給紙トレイ39は、手動動作によって記録媒体を画像形成装置内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ39から取り込まれる記録媒体は、搬送ローラ37によって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ38に送給される。記録媒体供給手段5によれば、自動給紙トレイ35または手差給紙トレイ39から1枚ずつ供給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
排出手段6は、搬送ローラ37と、排出ローラ40と、排出トレイ41とを含む。搬送ローラ37は、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録媒体を排出ローラ40に向けて搬送する。排出ローラ40は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ41に排出する。排出トレイ41は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
画像形成装置1は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置1の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置1の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置1内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録媒体判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置1に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビ、ビデオレコーダ、DVDレコーダ、HDVD、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置1内部における各装置にも電力を供給する。
本実施形態の画像形成装置1および現像装置14は、本実施形態のトナー100を用いて画像を形成することにより、低温定着性、耐久性に優れ、安定して高画質な画像を得ることができる。
〔実施例〕
以下に本発明に係る実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。なお本発明はその要旨を超えない限り、本実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で用いたトナーに関する各物性値は、以下に示すようにして測定した。
[主樹脂のガラス転移温度(Tg)]
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K 7121−1987に準じて、試料(カルボキシル基含有樹脂または水溶性樹脂)10mgを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
[主樹脂および溶融混練物の軟化点(Tm)]
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)において、荷重10kgf/cm(9.8×10Pa)を与えて試料1gがダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化点とした。
[低融点化合物の融点]
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、試料10mgを温度0℃から昇温速度毎分10℃で200℃まで昇温させ、次いで200℃から0℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度を融点として求めた。
[トナーの軟化点(T1/2)]
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。流動特性評価装置(フローテスターCFT−100C)において、荷重10kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えて試料(樹脂微粒子)1gがダイ(ノズル口径1mm、ノズル長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化点とした。
[着色樹脂微粒子、カプセル化されたワックス微粒子、樹脂微粒子、着色剤微粒子の体積平均粒子径D(レーザ回折法)]
レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(商品名:LA−920、(株)堀場製作所製)を用い、バッチ式セルにて測定を行った。試料としては、体積平均粒子径RC(コールター法)で調製されたのと同じ試料を用い、これをバッチ式セルに入れ、マグネチックスターラで十分に攪拌しながら、データ取り込み回数:15回、屈折率:1.16−0.00i(HeNe)および1.19−0.00i(W)で測定を行い、樹脂微粒子の体積平均粒子径DL(単位μm)を求めた。
[トナーの体積平均粒子径D(コールター法)]
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(分散剤、キシダ化学社製)1mlを添加し、超音波分散器(商品名:UH−50、STM社製)にて超音波周波数20kHzで3分間超音波分散処理したものを測定用試料とした。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径20μm、測定粒子数50000カウントの条件下に試料粒子の体積粒度分布を測定し、測定結果から累積体積分布における大粒径側からの累積体積が50%になる粒径DCをトナーの体積平均粒径(μm)として算出した。また、体積粒度分布における標準偏差(μm)を求めて、下記式(3)に基づいて変動係数(CV値、%)を算出した。変動係数は、その値が小さいほど、粒度分布幅が狭いことを意味する。
CV値(%)={体積粒度分布における標準偏差(μm)/体積平均粒径(μm)}×100
[トナーの表面ワックス量]
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、トナー10mgを温度0℃から昇温速度毎分10℃で200℃まで昇温させ、次いで200℃から0℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの面積からワックスの融解熱ΔH(J/g)を求めた。
一方で、トナー1gをヘキサン12g中で10分間攪拌し乾燥させる操作を3回繰り返すことによって、トナー表面のワックスをヘキサンで溶解させ、トナー表面のワックスを除去した。この表面ワックス除去後のトナーを前記と同様に示差走査熱量計を用いてDSC曲線を得て、吸熱ピークの面積からワックスの融解熱ΔH(J/g)を求めた。
次に、表面ワックス除去後の融解熱/トナーの融解熱(ΔH/ΔH)を求めた。ΔH/ΔHが小さいほど、トナー表面上にワックスが存在しないことを示す。
[トナーの見掛け密度]
JIS K5101−12−1に基づいてトナーの見掛け密度を測定した。
(実施例1)
実施例1のトナーを以下のように作成した。実施例1では、トナーに含有する離型剤は、低融点の離型剤と高融点の離型剤との計2種を用いた。
・着色樹脂微粒子分散液の調製
主樹脂としてポリエステル樹脂(ガラス転移温度(Tg):60℃、軟化点(Tm):110℃)87.5重量部と、着色剤としてフタロシアニンブルー(商品名:銅フタロシアニン 15:3、クラリアント社製)8重量部と、高融点の離型剤としてカルナバワックス(融点83℃)5重量部、帯電制御剤(商品名:TRH、保土ヶ谷化学工業株式会社製)1.5重量部とを含むトナー組成物を混合機(商品名:ヘンシェルミキサ、三井鉱山株式会社製)で混合し、得られた混合物を二軸押出機(商品名:PCM−30、株式会社池貝製)にてシリンダ温度145℃、バレル回転数300rpmで溶融混練し、トナー組成物の混練物を調製した。この混練物を室温まで冷却した後、カッターミル(商品名:VM−16、株式会社セイシン企業製)で粗粉砕し、体積平均粒子径200μmの溶融混練物を作製した。この溶融混練物は、軟化点(Tm)が110℃であった。
この溶融混練物20重量部と、アニオン系界面活性剤としてポリアクリル酸ナトリウム(商品名:D−H14−N L−7403KN、日本乳化剤株式会社製)1.0重量部と、水(温度20℃、導電率0.5μS/cm)79重量部とを混合し、得られた混合物を高圧ホモジナイザー(商品名:NANO3000、株式会社美粒製)のタンクに投入し、25℃、100MPaの条件下で、高圧ホモジナイザー法により粗粉砕を行い、粗粉分散液を作製した。
次いで、得られた粗粉分散液を、さらに高圧ホモジナイザー(商品名:NANO3000、株式会社美粒製)のタンクに投入し、120℃、160MPaの条件下で、高圧ホモジナイザー法により微粒化を行い、着色樹脂微粒子分散液を作製した。得られた着色樹脂微粒子の体積平均粒子径(DL)は0.8μm(変動係数CV値:24%)であった。
・低融点の離型剤分散液の調製
低融点の離型剤としてパラフィン系ワックス(融点32℃)45重量部を発泡剤であるイソヘプタン(商品名:Isoheptanes、東京化成工業株式会社製)35重量部に溶解し、シングルモーション方式の乳化機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック株式会社製)にて、温度60℃、ローター回転速度10000rpmで10分間撹拌処理し、ポリウレタン分散液(商品名:タケラックW−605、三井化学ポリウレタン株式会社製)30重量部と混合した。この混合液を乳化温度40℃、ローター回転速度8000rpmで30分間撹拌処理し、ジエチルトリアミン2.0重量部を添加し、更に30分間攪拌処理した。得られたカプセル化されたワックス微粒子の体積平均粒子径(DL)は0.8μm(変動係数CV値:26%)であった。
・凝集粒子分散液の調製
微粒子調製工程にて得られた着色樹脂微粒子分散液310重量部(固形分30%)と、カプセル化されたワックス微粒子分散液18重量部(固形分30%)に、凝集剤として塩化ナトリウム(商品名:特級塩化ナトリウム、キシダ化学株式会社製)10重量部を加え、シングルモーション方式の乳化機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック株式会社製)にて、凝集温度85℃、ローター回転速度8000rpmで10分間撹拌処理することにより、着色樹脂微粒子とカプセル化した低融点化合物微粒子を凝集させた凝集粒子分散液を作製した。
凝集工程にて得られた凝集粒子分散液に水(温度20℃、導電率0.5μS/cm)を加えて固形分量が10重量%になるように調製し、タービン型撹拌翼(商品名:H−701FR、株式会社コクサン製)にて撹拌翼回転速度300rpmで30分間撹拌した。この操作を、撹拌後の混合物から遠心分離によって分離される上澄み液の導電率が10μS/cm以下になるまで繰返し行うことにより、凝集粒子分散液中の凝集粒子を洗浄した。洗浄工程後の凝集粒子含有水性媒体の混合物から遠心分離器(商品名:H−122、株式会社コクサン製)にて遠心分離を行い、凝集粒子を含む固形分を分取した。分離工程にて分取した固形分を凍結乾燥させ、トナー粒子(凝集粒子)を得た。トナー粒子(凝集粒子)の体積平均粒子径(DC)は5.5μmであり、CV25%であった。
得られたトナー粒子(凝集粒子)100重量部に、1次粒子の個数平均粒子径が12nmであるシリカ(日本アエロジル株式会社製)2重量部と、1次粒子の個数平均粒子径が80nmであるシリカ(テイカ株式会社製)0.6重量部とを外添し、実施例1のトナーを製造した。
(実施例2)
低融点の離型剤としてパラフィン系ワックス(融点43℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のトナーを得た。
(実施例3)
低融点の離型剤としてパラフィン系ワックス(融点59℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のトナーを得た。
(実施例4)
低融点の離型剤分散液を下記の通り変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のトナーを得た。
・低融点の離型剤分散液の調製
低融点の離型剤としてパラフィン系ワックス(融点43℃)45重量部を発泡剤であるイソヘプタン(商品名:Isoheptanes、東京化成工業株式会社製)35重量部に溶解し、シングルモーション方式の乳化機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック株式会社製)にて、温度60℃、ローター回転速度12000rpmで10分間撹拌処理し、ポリウレタン分散液(商品名:タケラックW−605、三井化学ポリウレタン株式会社製)30重量部と混合した。この混合液を乳化温度40℃、ローター回転速度8000rpmで30分間撹拌処理し、ジエチルトリアミン2.0重量部を添加し、更に30分間攪拌処理した。得られたカプセル化されたワックス微粒子の体積平均粒子径(DL)は0.5μm(変動係数CV値:28%)であった。
(実施例5)
低融点の離型剤分散液を下記の通り変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例5のトナーを得た。
・低融点の離型剤分散液の調製
低融点の離型剤としてパラフィン系ワックス(融点43℃)45重量部を発泡剤であるイソヘプタン(商品名:Isoheptanes、東京化成工業株式会社製)35重量部に溶解し、シングルモーション方式の乳化機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック株式会社製)にて、温度60℃、ローター回転速度8000rpmで10分間撹拌処理し、ポリウレタン分散液(商品名:タケラックW−605、三井化学ポリウレタン株式会社製)30重量部と混合した。この混合液を乳化温度40℃、ローター回転速度8000rpmで30分間撹拌処理し、ジエチルトリアミン2.0重量部を添加し、更に30分間攪拌処理した。得られたカプセル化されたワックス微粒子の体積平均粒子径(DL)は2.8μm(変動係数CV値:23%)であった。
(実施例6)
以下の各トナー原料分散液と実施例2の低融点の離型剤分散液とを、実施例2と同様に凝集させて、実施例6のトナーを得た。
・樹脂粒子分散液の調製
イオン交換水1Lに、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)2.5重量%と、主樹脂としてポリエステル樹脂(ガラス転移温度(Tg):60℃、軟化点(Tm):110℃)25重量%を混合し、NANO3000(美粒株式会社製)を用いて分散処理した。得られた樹脂微粒子の体積平均粒子径(DL)は0.15μm(変動係数(CV値):24(%))であった。
・着色剤分散液の調製
イオン交換水1Lに、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)2.5重量%と、着色剤としてフタロシアニンブルー(商品名:銅フタロシアニン 15:3、クラリアント社製)25重量%を混合し、NANO3000(美粒株式会社製)を用いて分散処理した。得られた着色剤微粒子の体積平均粒子径(DL)は0.15μm(変動係数(CV値):24(%))であった。
・高融点の離型剤分散液の調製
イオン交換水1Lに、界面活性剤としてサニゾールB50(花王株式会社製)2.5重量%と、高融点の離型剤としてカルナバワックス(融点83℃)25重量%を混合し、95℃に加熱して、T.K.ホモミクサーMARKII(プライミクス株式会社製)を用いて分散処理した。得られた離型剤微粒子の体積平均粒子径(DL)は0.2μm(変動係数(CV値):25(%))であった。
・混合微粒子分散液の調製
イオン交換水1Lに、界面活性剤としてサニゾールB50(花王株式会社製)0.25重量%及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)0.8重量%と、樹脂粒子分散液33重量%と、着色剤分散液5重量%と、離型剤分散液7重量%を混合した。
(実施例7)
低融点の離型剤としてパラフィン系ワックス(融点28℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7のトナーを得た。
(実施例8)
低融点の離型剤としてパラフィン系ワックス(融点62℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例8のトナーを得た。
(実施例9)
低融点の離型剤分散液を下記の通り変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例9のトナーを得た。
・低融点の離型剤分散液の調製
低融点の離型剤としてパラフィン系ワックス(融点43℃)40重量部を発泡剤であるイソヘプタン(商品名:Isoheptanes、東京化成工業株式会社製)40重量部に溶解し、シングルモーション方式の乳化機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック株式会社製)にて、温度60℃、ローター回転速度15000rpmで10分間撹拌処理し、ポリウレタン分散液(商品名:タケラックW−605、三井化学ポリウレタン株式会社製)30重量部と混合した。この混合液を乳化温度40℃、ローター回転速度8000rpmで30分間撹拌処理し、ジエチルトリアミン2.0重量部を添加し、更に30分間攪拌処理した。得られたカプセル化されたワックス微粒子の体積平均粒子径(DL)は0.4μm(変動係数CV値:27%)であった。
(実施例10)
低融点の離型剤分散液を下記の通り変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例10のトナーを得た。
・低融点の離型剤分散液の調製
低融点の離型剤としてパラフィン系ワックス(融点43℃)40重量部を発泡剤であるイソヘプタン(商品名:Isoheptanes、東京化成工業株式会社製)40重量部に溶解し、シングルモーション方式の乳化機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック株式会社製)にて、温度60℃、ローター回転速度7000rpmで10分間撹拌処理し、ポリウレタン分散液(商品名:タケラックW−605、三井化学ポリウレタン株式会社製)30重量部と混合した。この混合液を乳化温度40℃、ローター回転速度8000rpmで30分間撹拌処理し、ジエチルトリアミン2.0重量部を添加し、更に30分間攪拌処理した。得られたカプセル化されたワックス微粒子の体積平均粒子径(DL)は3.2μm(変動係数CV値:22%)であった。
(実施例11)
樹脂粒子分散液を下記の通り変更したこと以外は実施例7と同様にして、実施例11のトナーを得た。
・樹脂粒子分散液調製
イオン交換水1Lに、界面活性剤としてノニポール400(三洋化成株式会社製)1.2重量%及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)2重量%を溶解した水溶液中に、スチレン80重量%と、nブチルアクリレート15重量%と、アクリル酸2重量%と、ドデカンチオール2重量%と、四臭化炭素1重量%の混合液840gを乳化した後に、過硫酸アンモニウム7.5重量%を溶解したイオン交換水100mLを投入し、窒素置換を行いつつ、攪拌しながら内容物が70℃になるまで加熱し、7時間継続した。得られた樹脂微粒子の体積平均粒子径(DL)は0.2μm(変動係数(CV値):25(%))であった。
(実施例12)
高融点の離型剤としてパラフィン系ワックス(融点60℃)5重量部を用いたこと以外は実施例2と同様にして、実施例12のトナーを得た。
(実施例13)
高融点の離型剤としてポリエチレン系ワックス(融点108℃)5重量部を用いたこと以外は実施例2と同様にして、実施例13のトナーを得た。
(実施例14)
高融点の離型剤としてパラフィン系ワックス(融点58℃)5重量部を用いたこと以外は実施例2と同様にして、実施例14のトナーを得た。
(実施例15)
高融点の離型剤としてポリプロピレン系ワックス(融点111℃)5重量部を用いたこと以外は実施例2と同様にして、実施例15のトナーを得た。
(実施例16)
高融点の離型剤としてカルナバワックス(融点83℃)2重量部とパラフィン系ワックス(融点110℃)2重量部とを用いたこと以外は実施例2と同様にして、実施例17のトナーを得た。つまり、実施例16では、離型剤は、カプセル化された低融点の離型剤1種、および高融点の離型剤2種の計3種類用いた。
(実施例17)
実施例1および3で調製したカプセル化された低融点離型剤微粒子分散液をそれぞれ9重量部(固形分30%)ずつ混合することに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例18のトナーを得た。つまり、実施例17では、離型剤は、カプセル化された低融点の離型剤2種、および高融点の離型剤1種の計3種類用いた。
(実施例18)
実施例18のトナーを以下のように作成した。低融点の離型剤としてパラフィン系ワックス(融点43℃)50重量部を発泡剤であるイソヘプタン(商品名:Isoheptanes、東京化成工業株式会社製)25重量部に溶解し、シングルモーション方式の乳化機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック株式会社製)にて、温度60℃、ローター回転速度10000rpmで10分間撹拌処理し、ポリウレタン分散液(商品名:タケラックW−605、三井化学ポリウレタン株式会社製)30重量部と混合した。この混合液を乳化温度40℃、ローター回転速度8000rpmで30分間撹拌処理し、ジエチルトリアミン2.0重量部を添加し、更に30分間攪拌処理した。これらの混合液をろ過し、分取した固形分を凍結乾燥させ、カプセル化されたワックス微粒子を得た。得られた微粒子の体積平均粒子径(DL)は0.8μm(変動係数CV値:26%)であった。
イオン交換水580重量部に0.1M−NaPO水溶液365部を添加し、60℃に加熱後、TKホモミクサー(商品名、プライミクス株式会社製)にて、ローター回転速度12000rpmで撹拌した。これに1.0M−CaCl水溶液55重量部を徐々に添加し、Ca(PO分散媒液を得た。
スチレンモノマー170重量部とフタロシアニンブルー(商品名:銅フタロシアニン 15:3、クラリアント社製)10重量部をプレミクスした後、10℃に保持しながら、ビーズミルで5時間分散し、顔料分散ペーストを調製した。
得られた顔料分散ペースト150重量部、2−エチルヘキシルアクリレート25重量部、高融点の離型剤としてパラフィン系ワックス(融点83℃)25重量部、前記カプセル化された低融点の離型剤25重量部、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体4重量部、di−tert−ブチルサリチル酸金属化合物2.5重量部を60℃に加熱、溶解、分散した。得られた単量体混合物を60℃に保持しながら、開始剤2,2´−アゾビスイソブチロニトリル8重量部を添加、溶解した。
得られた単量体組成物を前記Ca(PO分散媒液に添加し、窒素雰囲気下で、60℃に保持しながら、ローター回転速度12000rpmで10分間撹拌処理した。その後70℃に保持しながら、2時間バドル撹拌翼で撹拌し、続いて80℃に保持しながら、7時間重合反応させ冷却した。得られた重合粒子分散液に、塩酸を添加し、濾過後、実施例1と同様に、洗浄、分離、乾燥、外添することによって、実施例18のトナーを得た。
(実施例19)
実施例19のトナーを以下のように作成した。主樹脂としてポリエステル樹脂(ガラス転移温度(Tg):60℃、軟化点(Tm):110℃)170重量部に、メチルエチルケトン180重量部を加え、よく溶解した後に、着色剤としてフタロシアニンブルー(商品名:銅フタロシアニン 15:3、クラリアント社製)20重量部を添加し、フィルミックス5 6 型(プライミクス株式会社製)に投入し、40m/sで5分間分散させて、分散終了後、メチルエチルケトンにより、固形分を50% に調整し、樹脂溶液(A)を得た。
次に、フタロシアニンブルー20重量部の代わりに、高融点の離型剤としてカルナバワックス(融点83℃)10重量部を添加し、フィルミックス56型での分散を、30m/sで3分間行う以外は上記(A)と同様の操作を行い、樹脂溶液(B)を得た。
この樹脂溶液(A)100重量部と、樹脂溶液(B)100重量部と、実施例2と同様の低融点の離型剤分散液100重量部と、を混合した樹脂溶液混合物300重量部に、1規定アンモニア水3重量部を加え、ホモジナイザーの回転数を5000rpmに設定し、脱イオン水180重量部を滴下して、転相乳化を行った。次いで、減圧蒸留により、メチルエチルケトンを除去した着色剤内包粒子の水分散液に、カチオン交換樹脂35重量部を混合し、30℃で2時間、50rpmで撹拌した後に濾過水洗を行った後、乾燥して、実施例19のトナーを得た。
(実施例20)
以下の点を除き、実施例2と同様にして、実施例20のトナーを得た。凝集粒子分散液の調製において、微粒子調製工程にて得られた実施例2と同様の着色樹脂微粒子分散液300重量部(固形分30%)と、実施例2と同様のカプセル化されたワックス微粒子分散液30重量部(固形分30%)とに、凝集剤として塩化ナトリウム(商品名:特級塩化ナトリウム、キシダ化学株式会社製)10重量部を加え、シングルモーション方式の乳化機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック株式会社製)にて、凝集温度85℃、ローター回転速度8000rpmで10分間撹拌処理することにより、着色樹脂微粒子とカプセル化した低融点化合物微粒子を凝集させた凝集粒子分散液を作製した。これ以後、実施例2と同様にして、実施例20のトナーを得た。
(実施例21)
以下の点を除き、実施例2と同様にして、実施例21のトナーを得た。着色樹脂微粒子分散液の調製において、主樹脂としてポリエステル樹脂(ガラス転移温度(Tg):60℃、軟化点(Tm):110℃)87.5重量部と、着色剤としてカーボンブラック(商品名:NIPex 60、デグザジャパン株式会社製)8重量部と、高融点の離型剤としてカルナバワックス(融点83℃)5重量部、帯電制御剤(商品名:TRH、保土ヶ谷化学工業株式会社製)1.5重量部とを含むトナー組成物を混合機(商品名:ヘンシェルミキサ、三井鉱山株式会社製)で混合し、得られた混合物を二軸押出機(商品名:PCM−30、株式会社池貝製)にてシリンダ温度145℃、バレル回転数300rpmで溶融混練し、トナー組成物の混練物を調製した。この混練物を室温まで冷却した後、カッターミル(商品名:VM−16、株式会社セイシン企業製)で粗粉砕し、体積平均粒子径200μmの溶融混練物を作製した。この溶融混練物は、軟化点(Tm)が110℃であった。これ以外は実施例2と同様にして、実施例21のトナーを得た。
(比較例1)
比較例1のトナーを次のように作成した。低融点の離型剤としてカルナバワックス(融点43℃)18重量部をn−ヘキサン40重量部に溶解し、シングルモーション方式の乳化機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック株式会社製)にて、温度60℃、ローター回転速度10000rpmで10分間撹拌処理し、ポリウレタン分散液(商品名:タケラックW−605、三井化学ポリウレタン株式会社製)30重量部と混合した。この混合液を乳化温度40℃、ローター回転速度8000rpmで30分間撹拌処理し、ジエチルトリアミン2.0重量部を添加し、更に30分間攪拌処理した。これらの混合液をろ過し、分取した固形分を凍結乾燥させ、カプセル化されたワックス微粒子を得た。得られた微粒子の体積平均粒子径(DL)は0.8μm(変動係数CV値:26%)であった。
このカプセル化されたワックス微粒子と、主樹脂としてポリエステル樹脂(ガラス転移温度(Tg):60℃、軟化点(Tm):110℃)87.5重量%と、着色剤としてフタロシアニンブルー(商品名:銅フタロシアニン 15:3、クラリアント社製)8重量%と、高融点の離型剤としてパラフィン系ワックス(融点83℃)3重量%と、帯電制御剤(商品名:TRH、保土ヶ谷化学工業株式会社製)1.5重量%とを含むトナー組成物を混合機(商品名:ヘンシェルミキサ、三井鉱山株式会社製)で混合し、得られた混合物を二軸押出機(商品名:PCM−30、株式会社池貝製)にてシリンダ温度145℃、バレル回転数300rpmで溶融混練し、トナー組成物の混練物を調製した。この混練物を室温まで冷却した後、カッターミル(商品名:VM−16、株式会社セイシン企業製)で粗粉砕した後、ロータリー式分級機にて過粉砕トナーを分級除去し体積平均粒径5.5μm、変動係数CVが28のトナーを得た。得られたトナー粒子(粉砕粒子)100重量部に、1次粒子の個数平均粒子径が12nmであるシリカ(日本アエロジル株式会社製)2重量部と、1次粒子の個数平均粒子径が80nmであるシリカ(テイカ株式会社製)0.6重量部とを外添し、比較例1のトナーを得た。
(比較例2)
低融点の離型剤のカプセル化を行わず、他のトナー材料と共に溶融混練したこと以外は実施例2と同様にして、比較例2のトナーを得た。
(比較例3)
低融点の離型剤分散液を下記の通り変更したこと以外は実施例6と同様にして、比較例3のトナーを得た。
・低融点の離型剤分散液の調製
イオン交換水1Lに、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)2.5重量部と、低融点の離型剤としてカルナバワックス(融点43℃)25重量部を混合し、シングルモーション方式の乳化機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック株式会社製)にて、温度60℃、ローター回転速度10000rpmで10分間撹拌処理した。得られた分散液95.6重量部(固形分2.4重量部)に、スチレン3.0重量部と、nブチルアクリレート1.0重量部と、メタクリル酸0.3重量部と、n-オクチルメルカプタン0.1重量部を温度80℃下で滴下、8時間攪拌処理した。得られたカプセル化されたワックス微粒子の体積平均粒子径(DL)は0.5μm(変動係数CV値:23%)であった。
実施例1〜21および比較例1〜3で得られたトナーの物性を表1にまとめた。
Figure 2009139590
(二成分現像剤を用いた測定および評価)
次に、実施例1〜21および比較例1〜3で作成したトナーに、それぞれ、体積平均粒径45μmのフェライトコアキャリアを、キャリアに対するトナーの被覆率が60%となるようにV型混合器混合機(商品名:V−5、株式会社特寿工作所製)にて20分間混合して、二成分現像剤を作製した。これら二成分現像剤を用いて、下記の測定および評価を行った。
[定着性]
カラー複合機(商品名:MX−4500FN、シャープ株式会社製)を改造したものを用いて、記録媒体である記録用紙(商品名:PPC用紙SF−4AM3、シャープ株式会社製)に、縦20mm、横50mmの長方形状のべた画像部を含むサンプル画像を、べた画像部における未定着状態でのトナーの記録用紙への付着量が0.5mg/cmになるように調整して未定着画像を形成し、カラー複合機の定着部を用いて作成した外部定着器を用いて定着画像を作成した。定着プロセス速度は124mm/秒とし、定着ローラの温度を130℃から5℃刻みで温度を上げ、低温オフセットも高温オフセットも起こらない温度域を定着非オフセット域とした。
また、高温および低温オフセットの定義は、定着時にトナーが記録用紙に定着せずに定着ローラに付着したままローラが一周した後に記録用紙に付着することをオフセット発生とした。
ここでは、定着非オフセット域が60℃以上であるものを「◎」、定着非オフセット域が45℃以上60℃未満のものを「○」、定着非オフセット域が35℃以上45℃未満のものを「△」、定着非オフセット域が35℃未満のものを「×」として、評価した。
[現像剤流動性]
JISK5101−12−1に基づいて、現像剤の見掛け密度を測定した。また、現像剤を前記複写機に充填し、A4判の記録用紙上に、印字率が5%のチャートを1万枚連続印字後、同様に現像剤の見掛け密度を測定した。ここでは、初期と1万枚連続印字後の現像剤の見掛け密度の差が0.1未満のものを「◎」、初期と1万枚連続印字後の現像剤の見掛け密度の差が0.1以上0.2未満のものを「○」、初期と1万枚連続印字後の現像剤の見掛け密度の差が0.2以上0.3未満のものを「△」、初期と1万枚連続印字後の現像剤の見掛け密度の差が0.3以上のものを「×」として評価した。
[帯電安定性]
トナー帯電量は、現像剤0.2gを秤量し、795メッシュ上からトナーを吸引分取し、Q/m Meter(商品名:Model210HS−2A、トレック社製)を用いて測定した。また、トナーおよび現像剤を前記複写機に充填し、A4判の記録用紙上に、印字率が5%のチャートを1万枚連続印字後、同様にトナー帯電量を測定した。ここでは、初期と1万枚連続印字後のトナー帯電量の差が0.1未満のものを「◎」、初期と1万枚連続印字後のトナー帯電量の差が0.1以上0.2未満のものを「○」、初期と1万枚連続印字後のトナー帯電量の差が0.2以上0.3未満のものを「△」、初期と1万枚連続印字後のトナー帯電量の差が0.3以上のものを「×」として評価した。
[感光体フィルミング]
現像ローラへのトナー付着量を0.6mg/cm〜0.7mg/cmとして記録用紙上に形成される未定着トナー画像の単色ソリッド部におけるトナー付着量を0.5mg/cmに調整して、各トナー単色で、画像ソリッド部および文字部を含む原稿濃度5%の評価チャートを記録用紙1万枚に形成する連続実写テストを行なった。1万枚の連続実写テスト後、現像ローラおよび感光体部材の長手方向の実使用する長さに相当するソリッド画像を出力させ、得られたソリッド画像を目視によって観察し、ソリッド画像への筋またはフィルミング痕の発生の有無を判断した。ここでは、画像上および感光体表面とも問題がないものを「○」、画像上には問題がないが、感光体表面にフィルミングが確認されるものを「△」、画像上および感光体表面ともに問題が確認されるものを「×」として評価した。
[透明性]
現像剤を前記複写機に充填し、OHPシート上にトナー付着量1.7mg/cmとなるように、画像サンプルを作製した。この画像サンプルについて、濁度計(日本電色工業株式会社製)を用いて、HAZE値を測定し、透明性の指標とした。HAZE値は小さい程、透過性がよいことを示している。ここでは、HAZE値15未満のものを「○」、HAZE値15以上25未満のものを「△」、HAZE値25以上のものを「×」として評価した。
[画像再現性]
前記複合機によって画像濃度が0.3であり、直径5mmのハーフトーン画像を、画像濃度0.3以上0.5以下で複写できる条件において、線幅が正確に100μmである細線のオリジナル画像が形成される原稿を複写し、得られたコピー画像を測定用サンプルとした。この測定サンプルを、粒子アナライザ(商品名ルーゼックス450、株式会社ニレコ製)を用いて100倍に拡大したモニタ画像から、インジケータによって測定サンプルに形成される細線の線幅を測定した。画像濃度は、反射濃度計(商品名:RD−918、マクベス社製)によって測定された光学反射濃度である。細線には凹凸があり、線幅は測定位置によって異なるので、複数の測定位置において線幅を測定して平均値をとり、この線幅を測定用サンプルの線幅とした。測定用サンプルの線幅を、原稿の線幅である100μmで除し、得られた値を100倍したものを細線再現性の値として得た。この細線再現性の値が100に近いほど、細線の再現性がよく、解像性に優れることを示す。
ここでは、細線再現性の値が100以上105未満のものを「◎」、細線再現性の値が105以上115未満のものを「○」、細線再現性の値が115以上125未満のものを「△」、細線再現性の値が125以上のものを「×」として評価した。
上記評価の結果を表2に示す。
Figure 2009139590
なお、表2において、「実施例1」とは、実施例1のトナーを用いた二成分現像剤を用いた測定、を示している。
以上の評価結果から、本実施例のトナーおよびそれを用いた二成分現像剤は、低融点の離型剤が発泡剤とともに樹脂でカプセル化されているため、低融点の離型剤の放出性が向上し、低温定着性でありながら、流動性、帯電安定性および耐久性が優れていることが明らかである。
本発明は、トナー、現像剤、現像装置、画像形成装置、およびトナー製造方法の分野に利用でき、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファックスなどの画像形成装置において好適に用いることができる。
本発明の実施形態を示すものであり、トナーおよびキャリアを含む現像剤を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る画像形成装置を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る現像装置を示す概略図である。
符号の説明
1 画像形成装置
14 現像装置
100 トナー
200 現像剤
300 キャリア

Claims (12)

  1. 少なくとも主樹脂と着色剤と互いに融点の異なる2種以上の離型剤とを含むトナーであって、
    上記2種以上の離型剤のうち少なくとも最も低融点の離型剤は、樹脂でカプセル化され、該カプセル中に発泡剤を含有することを特徴とするトナー。
  2. 上記発泡剤の沸点は、150℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
  3. 上記発泡剤は、上記カプセル化される離型剤100重量部に対して、20〜200重量部含有されることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
  4. 上記カプセルを成す樹脂は、ポリウレアまたはポリウレタンを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のトナー。
  5. 上記カプセル化される離型剤の融点は、30℃以上60℃未満であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のトナー。
  6. 上記2種以上の離型剤のうち最も高融点の離型剤の融点は、60℃以上150℃未満であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のトナー。
  7. 上記カプセル化された離型剤の体積平均粒径は、0.5μm以上3μm未満であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載のトナー。
  8. 上記主樹脂が、ポリエステルを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載のトナー。
  9. 少なくとも主樹脂と着色剤と互いに融点の異なる2種以上の離型剤とを含むトナーを、水性媒体中で造粒させて製造するトナー製造方法であって、
    上記2種以上の離型剤のうち低融点の離型剤を、発泡剤を含有させて、樹脂でカプセル化するステップを含むことを特徴とする、トナー製造方法。
  10. 請求項1から8のいずれか1つに記載のトナーと、キャリアとからなることを特徴とする二成分現像剤。
  11. 請求項1から8のいずれか1つに記載のトナー、または請求項10に記載の二成分現像剤を用いて現像を行うことを特徴とする現像装置。
  12. 請求項11に記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
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US20210382406A1 (en) * 2020-06-08 2021-12-09 Canon Kabushiki Kaisha Method for producing a toner

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