図1は、本発明の実施の一形態であるトナーの製造装置1の構成を示す断面図である。トナーの製造装置1は、粉体流路2と、噴霧手段3と、回転撹拌手段4と、付着防止部5と、粉体投入部6と、粉体回収部7とを含んで構成される。以下の説明は、本発明のトナーの製造方法の説明をも含む。本発明のトナーの製造方法は、回転撹拌手段4の回転によって粉体流路2内でトナー母粒子を流動させ、流動状態にあるトナー母粒子に、被覆材料を含む液状体を噴霧手段3から噴霧して、トナー母粒子に被覆材料を被覆する方法であって、回転撹拌手段4の最外周4aにおける周速が70m/s以上120m/s以下であり、粉体流路2内壁の少なくとも一部に、粉体流路2内壁に対するトナー母粒子の付着を防止する付着防止部5が設けられることを特徴とする。
粉体流路2は、撹拌部8と、粉体流過部9とから構成される。撹拌部8は、内部空間を有する略円柱形状の容器状部材である。撹拌部8には、開口部10,11が形成される。開口部10は、撹拌部8の軸線方向一方側の面8aにおける略中央部において、撹拌部8の面8aを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される。また、開口部11は、撹拌部8の前記軸線方向一方側の面8aに垂直な側面8bにおいて、撹拌部8の側面8bを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される。粉体流過部9は、一端が開口部10と接続され、他端が開口部11と接続される。これによって撹拌部8の内部空間と粉体流過部9の内部空間とが連通され、粉体流路2が形成される。この粉体流路2を、トナー母粒子および気体が流過する。粉体流路2の粉体流過部9には、粉体投入部6と、粉体回収部7とが接続される。
図2は、粉体投入部6および粉体回収部7まわりの構成を示す正面図である。粉体投入部6には、トナー母粒子を供給する図示しないホッパと、ホッパと粉体流路2とを連通する供給管12と、供給管12に設けられる電磁弁13とを備える。ホッパから供給されるトナー母粒子は、電磁弁13によって供給管12内の流路が開放されている状態において、供給管12を介して粉体流路2に供給される。粉体流路2に供給されるトナー母粒子は、回転撹拌手段4による撹拌によって、一定の粉体流動方向、すなわち図1における矢符14方向に流過する。また電磁弁13によって供給管12内の流路が閉鎖されている状態においては、トナー母粒子が粉体流路2に供給されない。粉体回収部7には、回収タンク15と、回収タンク15と粉体流路2とを連通する回収管16と、回収管16に設けられる電磁弁17とを備える。電磁弁17によって回収管16内の流路が開放されている状態において、粉体流路2を流過するトナー母粒子は回収管16を介して回収タンク15に回収される。また電磁弁17によって回収管16内の流路が閉鎖されている状態において、粉体流路2を流過するトナー母粒子は回収されない。
回転撹拌手段4は、回転軸部材18と、円盤状の回転盤19と、複数の撹拌羽根20とを含む。回転軸部材18は、撹拌部8の軸線に一致する軸線を有しかつ撹拌部8の軸線方向他方側の面8cに、面8cを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される貫通孔21に挿通されるように設けられ、図示しないモータによって軸線回りに回転する円柱棒状部材である。回転盤19は、その軸線が回転軸部材18の軸線に一致するように回転軸部材18に支持され、回転軸部材18の回転に伴って回転する円盤状部材である。複数の撹拌羽根20は、回転盤19によって支持され、回転盤19の回転に伴って回転する。
回転撹拌手段4の回転速度は、最外周における周速が70m/s以上120m/s以下に設定される。回転撹拌手段4の最外周とは、回転撹拌手段4の回転軸部材18が延びる方向に垂直な方向において、回転軸部材18の軸線との距離がもっとも長い回転撹拌手段4の部分4aである。最外周における周速が70m/s以上120m/s以下であると、トナー母粒子を孤立流動させることと、トナー母粒子の流路内壁に対する衝突頻度を低減することとを同時に達成することができる。最外周における周速が70m/s未満であると、トナー母粒子を孤立流動させることができない。また最外周における周速が120m/sを超えると、トナー母粒子の流路内壁に対する衝突頻度が高くなり、流路内壁にトナー母粒子が付着しやすくなる。
噴霧手段3は、噴霧流路2の粉体流過部9において、トナー母粒子の流動方向における開口部11に最も近い側の屈曲部に設けられる。噴霧手段3は、被覆材料を含む液状体を貯留する液状体貯留部と、キャリアガスを貯留するキャリアガス貯留部と、液状体とキャリアガスとを混合し、得られる混合物を噴霧流路2内に存在するトナー母粒子に向けて噴射し、液状体の液滴をトナー母粒子に噴霧する2流体ノズルとを備える。キャリアガスとしては、圧縮エアなどを用いることができる。
本実施の形態では、噴霧手段3の2流体ノズルは、粉体流路2の外壁に形成される開口に挿通され、粉体流路2においてトナー母粒子が流動する方向である粉体流動方向に対して、粉体流路2内側に向けて若干傾斜して設けられる。これによって、噴霧手段3からの液状体噴霧方向が、粉体流動方向に対して若干傾斜する。液状体噴霧方向とは、2流体ノズルの軸線の方向である。噴霧手段3からの液状体噴霧方向と、粉体流動方向との成す角度θは、0°以上45°以下であることが好ましい。θがこのような範囲内であると、液状体の液滴が粉体流路2内壁で反跳することが防止され、被覆材料が被覆されたトナー母粒子の収率を一層向上することができる。噴霧手段3からの液状体噴霧方向と、粉体流動方向との成す角度θが45°を超えると、液状体の液滴が粉体流路2内壁で反跳しやすくなり、被覆材料が被覆されたトナー母粒子の収率が悪化する。
また2流体ノズルによる噴霧の拡がり角度φは、20°以上90°以下であることが好ましい。拡がり角度φがこの範囲から外れると、トナー母粒子に対する液状体の均一な噴霧が困難となるおそれがある。
噴霧手段3による液状体の噴霧速度は、毎分20g以下であることが好ましい。噴霧手段3による液状体の噴霧速度がこのような範囲であると、被覆材料とともに液状体に含まれ、被覆材料を分散または溶解させる溶媒の乾燥速度を、噴霧速度よりも充分に大きくすることができるので、未乾燥の溶媒が残存しているトナー母粒子が他のトナー母粒子に付着することを防止することができ、トナー母粒子の凝集を防止することができる。噴霧手段3による液状体の噴霧速度は、毎分0.1g以上20g以下であることがさらに好ましい。噴霧速度がこのような範囲であると、生産性を低下させることなく、トナー母粒子の凝集を防止することができる。
噴霧手段3によって噴霧される液状体の粘度は、50cP(0.050N・s/m2)以下であることが好ましい。液状体の粘度は、25℃において測定される。液状体の粘度は、たとえば、コーンプレート型回転式粘度計によって測定することができる。
液状体の粘度が50cP以下であると、噴霧手段3による噴霧液滴径が粗大化することなく、微細な噴霧が可能となる。これによって均一な液滴径の液状体の噴霧が可能となる。またトナー母粒子と液滴との衝突時に、さらに液滴の微細化を促進することができる。これによって、被覆材料の被覆量の均一性に優れたトナー母粒子を得ることができる。
付着防止部5は、粉体流路2内壁の少なくとも一部に設けられる。付着防止部5は、粉体流路2内壁に対するトナー母粒子の付着を防止する。付着防止部5は、粉体流路2内壁の、トナー母粒子が付着しやすい部分に設けられることが好ましい。
本実施の形態において付着防止部5は、粉体流路2における粉体流過方向に関して噴霧手段3よりも下流側の内壁22と、撹拌部8の軸線方向一方側の面8aに形成される開口部10周囲の内壁23に設けられる。内壁22では、噴霧手段3から噴霧された液状体中の溶媒の多くが乾燥せずに残存している状態にあり、粉体流路2内壁にトナー母粒子が接触すると、粉体流路2内壁にトナー母粒子が付着しやすい。またトナー母粒子の凝集が生じやすい。開口部10付近の内壁23では、粉体流過部9を流過して開口部10から撹拌部8に流入するトナー母粒子と、回転撹拌手段4による撹拌で撹拌部8内を流動するトナー母粒子とが衝突しやすい。これによって、衝突したトナー母粒子が開口部10付近に付着しやすい。したがってこのような部分に付着防止部5を設けられることによって、粉体流路2内壁に対するトナー母粒子の付着を一層確実に防止することができる。
付着防止部5は、温度制御可能な壁面部材である。これによって温度上昇を抑えて、トナー母粒子の付着を防止する。さらに壁面被覆材料として付着防止効果のある樹脂をコートすることでより一層効果を高めることができる。付着防止部5には、たとえば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などを含み、さらに前記以外の合成樹脂を含んでいてもよい。この中でも、フッ素樹脂から構成されることが好ましい。付着防止部5がフッ素樹脂によって構成されると、一層高い付着軽減効果を得ることができる。フッ素樹脂としては、公知のものを用いることができ、たとえば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンなどの単独重合体、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体などが挙げられる。
付着防止部5が温度制御可能な壁面部材から構成される場合、冷却装置または加熱装置からの媒体を壁面部材内部に循環させて温度調整する方法などが挙げられる。
付着防止部5の被覆材料がフッ素樹脂から構成される場合、付着防止部5は、公知のコーティング方法で粉体流路2内壁にフッ素樹脂をコーティングすることによって設けられる。フッ素樹脂のコーティング方法としては、たとえば、薄板状のフッ素樹脂成型部材を付粉体流路2内壁に両面テープなどによって貼付する方法、フッ素樹脂を適当な溶剤に溶解して内壁22,23に塗布する方法、溶融状態にある熱可塑性フッ素樹脂を粉体流路2内壁に直接塗布する方法などが挙げられる。
付着防止部5のコーティング厚みとしては、粉体流路2において、トナー母粒子の円滑な流過が妨げられなければ特に限定されない。たとえば粉体流路2においてトナー母粒子の流過が可能な領域の粉体流動方向に垂直な面積がどの断面においても一様である場合、粉体流路2内壁にコーティングされる付着防止部の厚みは、0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。本実施の形態では、付着防止部5として厚み2mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートが貼付される。
トナーの製造装置1によるトナーの製造は、次のようにして行う。まず回転撹拌手段4の回転軸部材18が回転する状態で、粉体投入部6からトナー母粒子を粉体流路2に供給する。回転撹拌手段4の最外周の周速は、70m/s以上120m/s以下に設定される。粉体流路2に供給されたトナー母粒子は、回転撹拌手段4によって撹拌され、粉体流路2の粉体流過部9を矢符14方向に流過する。粉体流路2におけるトナー母粒子の流過速度が安定すると、噴霧手段3からの液状体の噴霧を開始する。トナー母粒子は、粉体流路2の粉体流過部9を流過している状態で噴霧手段3から液状体が噴霧され、トナー母粒子表面に液状体がコーティングされる。また撹拌による熱的エネルギーが加えられることによって、液状体中の溶媒が蒸発し、乾燥する。これによって液状体に含まれる被覆材料または前もってトナー母粒子に付着させた被覆材料が膜化してトナー母粒子にコーティングされる。トナー母粒子に対する被覆材料の被覆量が所望の量となると、噴霧手段からの液状体の噴霧を終了し、回転撹拌手段4の回転を停止させて、粉体回収部7からトナーを回収する。
このようなトナーの製造装置1を用いる本発明のトナーの製造方法によれば、回転撹拌手段4の最外周における周速が70m/s以上120m/s以下と好適であるので、トナー母粒子を孤立流動させることと、トナー母粒子の流路内壁に対する衝突頻度を低減することとを同時に達成することができる。また付着防止部5を有するので、粉体流路2内壁にトナー母粒子が衝突しても、この付着防止部5が設けられる部分においては粉体流路2内壁にトナー母粒子が付着することが防止される。これによって、付着したトナー母粒子を核として他のトナー母粒子および液状体が凝集成長することを抑制することができ、トナー母粒子が流動するための流路が狭くなることを防止できる。また被覆材料が被覆されたトナー母粒子の収率を向上することができる。
このようなトナーの製造装置1としては、上記の構成に限定されることなく、種々の変更が可能である。たとえば、本実施の形態において、付着防止部5は粉体流路2の一部にのみ設けられる構成であるけれども、これに限定されることなく、粉体流路2の内壁全面に設けられてもよい。粉体流路2の内壁全面に付着防止部5が設けられると、トナー母粒子の粉体流路2内壁への付着を一層確実に防止することができる。また付着防止部5が設けられる部分は、トナー母粒子の流路2内に対する衝突が起こりやすい粉体流路2の屈曲部などであってもよい。
またこのようなトナーの製造装置は、市販品の撹拌装置と噴霧手段とを組合わせて得ることもできる。粉体流路および回転撹拌手段を備える市販の撹拌装置としては、たとえばハイブリダイゼーションシステム(いずれも商品名、株式会社奈良機械製作所製)などが挙げられる。このような撹拌装置内に液体噴霧ユニットを取付けることによって、この撹拌装置を本発明のトナーの製造方法に用いるトナーの製造装置として用いることができる。
図3は、本発明の他の実施の形態であるトナーの製造装置31の構成を示す図である。図3A(a)は、トナーの製造装置31のトナーの製造時における正面断面図である。図3A(b)は、トナーの製造装置31の粉体供給時または粉体回収時における正面断面図である。図3B(c)は、トナーの製造装置31の上面断面図である。トナーの製造装置31は、粉体流路を形成する処理容器32と、噴霧手段33と、回転撹拌手段34とを含む。
処理容器32は、内部に回転撹拌手段34を備える略球形状の容器であり、半球形状の容器本体35と半球形状の蓋体36とを含む。蓋体36は容器本体35から着脱可能に設けられ、処理容器32を、図3A(a)に示す閉鎖状態または図3A(b)に示す開放状態とする。図3A(a)に示す閉鎖状態において、トナー母粒子への液状体の噴霧が行われる。図3A(b)に示す開放状態において、処理容器32への被覆前のトナー母粒子の供給または処理容器32からの被覆されたトナー母粒子の回収が行われる。本実施の形態では、処理容器32の内壁全面がフッ素樹脂によってコーティングされ、付着防止部37が設けられる。
回転撹拌手段34は、処理容器32の底部に設けられる。回転撹拌手段34は、図示しないモータによって回転するロータ38と、ロータ38の鉛直方向側面から水平方向に延びるように設けられる複数(本実施の形態では2枚)の撹拌羽根39とを備える。本実施の形態では、回転撹拌手段34は、回転軸34aが鉛直方向に一致するように設けられる。回転撹拌手段34の回転速度は、前述の回転撹拌手段4と同様に、最外周における周速が70m/s以上120m/s以下に設定される。回転撹拌手段34の最外周とは、回転撹拌手段34の回転軸34aに垂直な方向(すなわち水平方向)において、回転軸34aとの距離がもっとも長い、回転軸34aとは反対側の撹拌羽根39の端部39aである。
噴霧手段33は、本実施の形態において、処理容器32側壁の撹拌羽根39上端よりも高い位置に設けられる。撹拌羽根39の上方には、撹拌羽根39によって撹拌されるトナー母粒子が多数存在する。したがって噴霧手段33を処理容器32側壁の撹拌羽根39上端よりも高い位置に設けることによって、トナー母粒子の密度の高い領域に液状体を噴霧することができ、一層効率よく被覆材料の被覆が行える。
噴霧手段33は、前述の噴霧手段3と同様の構成を有するので、説明を省略する。また噴霧手段33は、液状体噴霧方向が、回転撹拌手段34の回転軸34aに対して垂直である。液状体噴霧方向が回転撹拌手段34の回転軸34aに対して垂直であると、回転撹拌手段34の回転によって流動するトナー母粒子に、均一に液状体を噴霧することができ、被覆材料の被覆量が均一なトナー母粒子を得ることができる。
トナーの製造装置31によるトナーの製造は、次のようにして行う。まず処理容器32を開放状態としてトナー母粒子を処理容器32内に供給する。トナー母粒子が供給されると、処理容器32を閉鎖状態とし、回転撹拌手段34を回転させる。このとき、回転撹拌手段34の最外周の周速は、70m/s以上120m/s以下に設定される。回転撹拌手段34によって撹拌されるトナー母粒子は、処理容器32内を矢符35方向に流動する。トナー母粒子の流動状態が安定すると、噴霧手段33からの液状体の噴霧を開始する。トナー母粒子は、処理容器32内を旋回するように流動している状態で液状体が噴霧され、トナー母粒子表面に液状体がコーティングされる。また撹拌による熱的エネルギーが加えられることによって、液状体中の溶媒が蒸発し、乾燥する。これによって液状体に含まれる被覆材料がトナー母粒子にコーティングされる。トナー母粒子に対する被覆材料の被覆量が所望の量となると、噴霧手段からの液状体の噴霧を終了し、回転撹拌手段34の回転を停止させ、処理容器32を開放状態としてトナーを回収する。
このようなトナーの製造装置31を用いる本発明のトナーの製造方法によれば、付着防止部37が処理容器32の内壁全面に設けられるので、処理容器32の内壁にトナー母粒子が衝突しても、トナー母粒子が付着することが防止される。これによって、付着したトナー母粒子を核として他のトナー母粒子および液状体が凝集成長することを抑制することができ、被覆材料が被覆されたトナー母粒子の収率を向上することができる。
本実施の形態において、付着防止部37は処理容器32の内壁全面に設けられるけれども、この構成に限定されることなく、処理容器32の内壁の一部に設けられる構成であってもよい。処理容器32の内壁の一部に付着防止部37を設ける場合、付着防止部37は、トナー母粒子の衝突頻度の高い部分、たとえば処理容器32内壁の噴霧手段33よりも下の部分に設けられることが好ましい。
図4は、本発明の他の実施の形態であるトナーの製造装置41の構成を示す正面断面図である。トナーの製造装置41は、噴霧手段42の設けられる位置が異なること以外は、前述の図3に示すトナーの製造装置31と同一の構成である。図4では、図3のトナーの製造装置31と同一の構成である部分については同一の参照符号を付す。また同一の参照符号を付した部分の説明を省略する。
本実施の形態では、噴霧手段42は、処理容器32の上部に設けられる。また噴霧手段42は、液状体噴霧方向が、回転撹拌手段34の回転軸34aに平行である。液状体噴霧方向が回転撹拌手段34の回転軸34aに平行であると、回転撹拌手段34の回転によって流動するトナー母粒子に、均一に液状体を噴霧することができ、被覆材料の被覆量が均一なトナー母粒子を得ることができる。
トナーの製造装置41によるトナーの製造方法は、前述の図3に示すトナーの製造装置31によるトナーの製造方法と同様であるので説明を省略する。このようなトナーの製造装置41を用いるトナーの製造方法によっても、トナー母粒子を孤立流動させて被覆材料の被覆量を各粒子間で均一にすることができ、また処理容器32内壁にトナー母粒子が付着することを防止できる。
図3および図4に示すトナーの製造装置は、市販品の撹拌装置と噴霧手段とを組合わせて得ることもできる。市販品の撹拌装置としては、たとえば、Q型ミキサ(ホソカワミクロン株式会社製)などが挙げられる。このような撹拌装置内に液体噴霧ユニットを取付けることによって、この撹拌装置を本発明のトナーの製造方法に用いるトナーの製造装置として用いることができる。
本発明のトナーの製造方法は、たとえば、トナー母粒子の固結防止、変色防止、変質防止、分散性の向上、流動性の改善、触媒効果の向上、消化吸収の制御、磁気特性の向上、色調の改善、耐光性の向上、有用物質の省量化などを目的とした、トナー母粒子の被覆に用いることができる。このようなトナーの製造方法によって被覆されたトナー母粒子は、たとえば、キャリア、トナーなどの静電潜像現像用材料、電磁波吸収材および電磁波シールド用材料、ブレーキシューおよび研磨用材料、潤滑用材料、磁気分離用材料、磁石用材料、イオン交換樹脂用材料、固定化酵素担体、ディスプレー用表示材料、制振用材料、塗料用材料、ゴム・プラスチック用着色材料、充填材料、補強材料ならびにペンキ、絵具および接着剤用着色材料、艶消材料などの用途に用いられる。
本発明のトナーの製造方法の実施の一形態として、静電潜像現像用材料に用いられるトナーの製造方法を以下に説明する。本発明のトナーの製造方法では、トナー母粒子を作製する母粒子作製工程と、被覆材料を含む液状体を調製する液状体調製工程と、液状体を前述のトナーの製造装置で噴霧する噴霧工程とを含む。
〔母粒子作製工程〕
母粒子作製工程では、被覆材料が被覆されるべきトナー母粒子を作製する。トナー母粒子は、結着樹脂および着色剤を含む粒子であり、その作製方法は特に限定されることなく、公知の方法によって得ることができる。トナー母粒子の作製方法としては、たとえば、粉砕法などの乾式法、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法、溶融乳化法などの湿式法が挙げられる。以下粉砕法によるトナー母粒子の作製方法を説明する。
結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、黒トナーまたはカラートナー用の公知の結着樹脂を使用することができる。たとえば、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。また原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応を行って得られる樹脂を用いてもよい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
ポリエステルは透明性に優れ、凝集粒子に良好な粉体流動性、低温定着性および二次色再現性などを付与できるので、カラートナー用の結着樹脂に好適である。ポリエステルとしては公知のものを使用でき、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合物などが挙げられる。多塩基酸としては、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化物などが挙げられる。多塩基酸は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。多価アルコールとしても、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類などが挙げられる。多価アルコールは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応は常法に従って実施でき、たとえば、有機溶媒の存在下または非存在下および重縮合触媒の存在下に、多塩基酸と多価アルコールとを接触させることによって行われ、生成するポリエステルの酸価、軟化点などが所定の値になったところで終了する。これによって、ポリエステルが得られる。多塩基酸の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用いると、脱メタノール重縮合反応が行われる。この重縮合反応において、多塩基酸と多価アルコールとの配合比、反応率などを適宜変更することによって、たとえば、ポリエステルの末端のカルボキシル基含有量を調整でき、ひいては得られるポリエステルの特性を変性できる。また多塩基酸として無水トリメリット酸を用いると、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を容易に導入することによっても、変性ポリエステルが得られる。ポリエステルの主鎖および/または側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基などの親水性基を結合させ、水中での自己分散性ポリエステルも使用できる。またポリエステルとアクリル樹脂とをグラフト化して用いてもよい。
結着樹脂は、ガラス転移点が30℃以上80℃以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移点が30℃未満であると、画像形成装置内部においてトナーが熱凝集するブロッキングを発生しやすくなり、保存安定性が低下するおそれがある。結着樹脂のガラス転移点が80℃を超えると、記録媒体へのトナーの定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。
着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などを使用できる。
黒色の着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる。
黄色の着色剤としては、たとえば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
橙色の着色剤としては、たとえば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
赤色の着色剤としては、たとえば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
紫色の着色剤としては、たとえば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
青色の着色剤としては、たとえば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
緑色の着色剤としては、たとえば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
白色の着色剤としては、たとえば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などの化合物が挙げられる。
着色剤は1種を単独で使用でき、または2種以上の異なる色のものを併用できる。また同色であっても、2種以上を併用できる。着色剤の使用量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して5重量部〜20重量部、さらに好ましくは5重量部〜10重量部である。
トナー母粒子には、電荷制御剤が含まれてもよい。電荷制御剤としてはこの分野で常用される正電荷制御用および負電荷制御用のものを使用できる。正電荷制御用の電荷制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。負電荷制御用の電荷制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。電荷制御剤は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。電荷制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.5重量部〜3重量部である。
トナー母粒子には、離型剤が含まれてもよい。離型剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど)およびその誘導体、低分子量ポリプロピリンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)およびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。ワックスの使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.2重量部〜20重量部、さらに好ましくは0.5重量部〜10重量部、特に好ましくは1.0重量部〜8.0重量部である。
粉砕法を用いる母粒子作製工程では、結着樹脂、着色剤およびその他の添加剤を含むトナー組成物を、混合機で乾式混合した後、混練機によって溶融混練する。溶融混練によって得られる混練物を冷却固化し、固化物を粉砕機によって粉砕する。その後必要に応じて分級などの粒度調整を行い、トナー母粒子を得る。
混合機としては公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
混練機としても公知のものを使用でき、たとえば、二軸押出し機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。これらの中でも、オープンロール方式の混練機が好ましい。
着色剤は、合成樹脂用添加剤を混練物中に均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。また合成樹脂用添加剤の2種以上を複合粒子化して用いてもよい。複合粒子は、たとえば、合成樹脂用添加剤の2種以上に適量の水、低級アルコールなどを添加し、ハイスピードミルなどの一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造できる。マスターバッチおよび複合粒子は、乾式混合の際にトナー組成物に混入される。
得られるトナー母粒子は、体積平均粒径が4μm以上8μm以下であることが好ましい。トナー母粒子の体積平均粒径が4μm以上8μm以下であると、高精細な画像を長期にわたって安定して形成することができる。またこの範囲まで小粒径化することによって、少ない付着量でも高い画像濃度が得られ、トナー消費量を削減できる効果も生じる。トナー母粒子の体積平均粒径が4μm未満であると、トナー母粒子の粒径が小さくなり過ぎ、高帯電化および低流動化が起こるおそれがある。この高帯電化および低流動化が発生すると、感光体にトナーを安定して供給することができなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生するおそれがある。トナー母粒子の体積平均粒径が8μmを超えると、トナー母粒子の粒径が大きく、形成画像の層厚が高くなり著しく粒状性を感じる画像となり、高精細な画像を得ることができないので望ましくない。またトナー母粒子の粒径が大きくなることによって比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなる。トナーの帯電量が小さくなると、トナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。
〔液状体調製工程〕
液状体調製工程では、被覆材料を含む液状体を調製する。被覆材料としては、たとえば、樹脂、無機微粒子などを用いることができる。被覆材料として樹脂を用いることによって、たとえば保存中にトナー母粒子に含まれる離型剤などの低融点成分の溶融による凝集の発生を防止することができる。また被覆材料として無機微粒子を用いることによって、スペーサ効果を長期にわたって維持することができる。スペーサ効果とは、トナー同士の付着力、トナーとキャリアとの付着力、およびトナーと各種部材との付着力を低減させることによる現像性、転写性およびクリーニング性の向上、小粒径外添剤の埋没の抑制によるトナー性能の維持などである。
被覆材料として用いられる樹脂としては、たとえば、ポリエステル、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体などを用いることができる。微小樹脂粒子としては、上記例示した樹脂の中でも、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体またはポリエステルを含むことが好ましい。アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体またはポリエステルは、軽量で高い強度を有し、さらに透明性も高く、安価であるなど多くの利点を有する。
被覆材料として用いられる樹脂としては、トナー母粒子の結着樹脂と同じ種類であってもよく、違う種類の樹脂であってもよいけれども、トナーの表面改質を行う点において、違う種類の樹脂が用いられることが好ましい。被覆材料として用いられる樹脂として、違う種類の樹脂が用いられる場合、被覆材料として用いられる樹脂の軟化点が、トナー母粒子の結着樹脂の軟化点よりも高いものを用いることが好ましい。これによって、保存中にトナー同士が融着することが防止され、保存安定性を向上させることができる。また被覆材料として用いられる樹脂の軟化点は、トナーが使用される画像形成装置にもよるけれども、80℃以上140℃以下であることが好ましい。このような温度範囲の樹脂を用いることによって、保存安定性と定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。
被覆材料として用いられる樹脂は、微小樹脂粒子であることが好ましい。樹脂として微小樹脂粒子を用いることによって、たとえば微小樹脂粒子を分散させた液状体によってトナー母粒子に液状体を噴霧し、被覆したとき、微小樹脂粒子の形状がトナー母粒子表面に残り、平滑な表面を有するトナーに比べて、クリーニング性に優れるトナーを得ることができる。このような微小樹脂粒子は、たとえば、微小樹脂粒子原料をホモジナイザーなどで乳化分散させて細粒化することによって得ることができる。またモノマーの重合によって得ることもできる。
微小樹脂粒子の体積平均粒径は、トナー母粒子の平均粒径よりも充分に小さいことが必要であり、さらに微小樹脂粒子の体積平均粒径は、0.05μm以上1μm以下であることが好ましい。また微小樹脂粒子の体積平均粒径は、0.1μm以上0.5μm以下であることがさらに好ましい。微小樹脂粒子の体積平均粒径が0.05μm以上1μm以下であることによって、好適な大きさの突起部が被覆層表面に形成される。これによってクリーニング時にトナーがクリーニングブレードに引っ掛かり易くなり、クリーニング性が向上する。
無機粒子としては、従来公知のものを使用することができる。無機粒子としては、たとえば、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウムなどの無機微粉体、またポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロース、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、メラミン樹脂、ナイロン、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、フッ化ビニリデンなどの樹脂微粉体が挙げられる。無機微粉体は、シリコーンオイル、シランカップリング剤、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などの疎水化処理剤で表面処理されてもよい。これらの中でも、流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性、長期保存性改善、クリーニング特性改善および感光体表面磨耗特性制御の点において優れる二酸化ケイ素および酸化チタンが特に好ましい。二酸化ケイ素および酸化チタンは、表面が疎水化処理されることがさらに好ましい。
無機粒子は、1次粒子の個数平均粒径が40nm以上300nm以下であることが好ましい。このような大粒径の無機粒子が外添され、かつこの無機粒子の離脱が防止されることによって、スペーサ効果を長期にわたって維持することができる。スペーサ効果とは、トナー同士の付着力、トナーとキャリアとの付着力、およびトナーと各種部材との付着力を低減させることによる現像性、転写性およびクリーニング性の向上、小粒径外添剤の埋没の抑制によるトナー性能の維持などである。1次粒子の個数平均粒径が40nm未満であると、上記スペーサ効果を発揮することができないおそれがある。また1次粒子の個数平均粒径が300nmを超えると、トナーの流動性を向上させることができないおそれがある。
被覆材料を分散または溶解させる溶媒としては、特に限定されないけれども、液状体の噴霧後に除去される必要があるので、蒸発し易い液体であることが好ましい。被覆材料を分散または溶解させる溶媒としては、低級アルコールを含むことが好ましい。低級アルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。溶媒がこのような低級アルコールを含むと、粒子状の被覆材料を溶媒中に分散させることができ、粒子状の被覆材料のトナー母粒子に対する濡れ性を高めることができ、トナー母粒子の表面全面または大部分に粒子状の被覆材料を付着させることが容易となる。また溶媒を除去するときの乾燥時間を一層短縮することができ、トナー母粒子同士の凝集を抑制することができる。
また被覆材料を分散または溶解させる溶媒としては、上記例示のものに限定されることなく、たとえば、水、ブタノール、オクタノール、デシルアルコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、フェノール、ベンジルアルコール、メチルベンジルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、オクチルフェニルエーテルなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、オレイン酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、コハク酸ジブチル、フタル酸ジエチル、酒石酸ジエチル、パルミチン酸エチル、ジオクチルフタレートなどのエステル類などであってもよい。
液状体の調製は、たとえば前記例示した溶媒に被覆材料を添加し、スターラ、超音波式ホモジナイザーなどを用いて、被覆材料を溶媒中に溶解または分散させることによって行われる。
液状体には、被覆材料を溶解または分散させる溶媒100重量部に対して、被覆材料が5重量部以上30重量部以下含まれることが好ましい。このような割合で溶媒と被覆材料とが含まれると、液状体の粘度が好適となり、噴霧手段による液状体の噴霧が容易である。また溶媒と被覆材料との割合が好適であるので、液状体の噴霧によるトナー母粒子表面の軟化状態を好適に保持することができる。被覆材料を溶解または分散させる溶媒100重量部に対する被覆材料の割合が5重量部未満であると、液状体中の溶媒の割合が多くなり過ぎ、トナー母粒子表面が軟化し過ぎるおそれがある。また液状体中の溶媒の割合が多くなり過ぎ、溶媒を除去するための時間が長くなり過ぎる。液状体中の溶媒100重量部に対する被覆材料の割合が30重量部を超えると、液状体の粘度が高くなり、噴霧手段3のノズルが目詰まりするなど、液状体の噴霧が困難となるおそれがある。
〔噴霧工程〕
噴霧工程では、たとえば図1のトナーの製造装置1を用い、被覆材料を含む液状体を噴霧手段3によって噴霧し、トナー母粒子に被覆材料を被覆する。噴霧工程では、図1のトナーの製造装置1を用いることに限定されず、図3Aまたは図4のトナーの製造装置、およびこれらに類似するトナーの製造装置を用いてもよい。
噴霧工程における液状体の噴霧は前記トナーの製造装置1によるトナーの製造方法と同様である。ただしトナー母粒子に被覆材料を被覆してトナー粒子を得る場合、粉体流路2内の温度は、トナー母粒子のガラス転移温度以下に設定される。また粉体流路2内の温度は、30℃以上トナー母粒子のガラス転移温度以下であることがさらに好ましい。粉体流路2内の温度は、トナー母粒子の流過によって、粉体流路2内のどの部分においてもほぼ均一となる。粉体流路2内の温度がトナー母粒子のガラス転移温度以上を超えると、外添剤分散液の噴霧時に粉体流路2内でトナー母粒子が軟化し過ぎ、トナー母粒子の凝集が発生するおそれがある。また粉体流路2内の温度が30℃未満であると、分散液の乾燥速度が遅くなり生産性が低下するおそれがある。したがってトナー母粒子の凝集を防止するために、粉体流路2内の温度をトナー母粒子のガラス転移温度以下に維持すべく、粉体流路2には必要に応じて温度測定手段および冷却手段を設けることが必要である。
本発明のトナーの製造方法を用いてトナーを製造すると、トナー母粒子を孤立流動させた状態で被覆材料の被覆を行うことができるので、トナー母粒子の凝集の発生を防止することができる。またトナーの製造装置の内壁にトナー母粒子が付着し、この付着したトナー母粒子を核として他のトナー母粒子、液状体に含まれる被覆材料などが凝集成長することが防止される。これによって、トナーの収率を向上させることができる。
また本発明のトナーの製造方法によって得られたトナーは、被覆材料の被覆量が均一であるので、個々のトナー粒子間における帯電特性などのトナー特性が均一となる。したがってこのようなトナー用いて画像を形成すると、高精細であり、濃度むらのない良好な画質の画像を得ることができる。
以上のようにして製造されたトナー粒子には、たとえば、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性、長期保存性改善、クリーニング特性改善および感光体表面磨耗特性制御などの機能を担う外添剤を混合してもよい。外添剤としては、たとえば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末およびアルミナ微粉末などが挙げられる。外添剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。外添剤の添加量としては、トナーに必要な帯電量、外添剤を添加することによる感光体の摩耗に対する影響およびトナーの環境特性などを考慮して、トナー粒子100重量部に対し0.1重量部以上10重量部以下が好適である。
このようにして製造された本発明のトナーは、電子写真法もしくは静電記録法によって画像形成するときの静電荷像の現像、または磁気記録法によって画像形成するときの磁気潜像の現像などに使用することができる。また、一成分現像剤または二成分現像剤として使用することができる。
本発明の二成分現像剤は、前述したトナーとキャリアとを含む。そのため、トナーの耐久性を低下させることなく、環境汚染を抑制した二成分現像剤を得ることができる。さらに、二成分現像剤が、カラートナーにも適用することができる透明性の高いトナーである前記トナーを含むので、透明性の高い高画質画像を形成することが可能な二成分現像剤を得ることができる。
キャリアとしては、磁性を有する粒子を使用することができる。磁性を有する粒子の具体例としては、たとえば、鉄、フェライトおよびマグネタイトなどの金属、これらの金属とアルミニウムまたは鉛などの金属との合金などが挙げられる。これらの中でも、フェライトが好ましい。また磁性を有する粒子に樹脂を被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどをキャリアとして用いてもよい。磁性を有する粒子を被覆する樹脂としては特に制限はないけれども、たとえば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂、およびフッ素含有重合体系樹脂などが挙げられる。また樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としても特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。またキャリアの体積平均粒径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、好ましくは10μm以上100μm以下、さらに好ましくは20μm以上50μm以下である。さらにキャリアの抵抗率は、好ましくは108Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。キャリアの抵抗率は、キャリアを0.50cm2の断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cm2の荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読取ることから得られる値である。抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10emu/g以上60emu/g以下、さらに好ましくは15emu/g以上40emu/g以下である。磁化強さは現像ローラの磁束密度にもよるけれども、現像ローラの一般的な磁束密度の条件下においては、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また磁化強さが60emu/gを超えると、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎる非接触現像では、像担持体と非接触状態を保つことが困難になる。また接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの使用割合は特に制限されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できるけれども、フェライトキャリアに例をとれば、現像剤中に、トナーが現像剤全量の2重量%以上30重量%以下、好ましくは2重量%以上20重量%以下含まれるように、トナーを用いればよい。また二成分現像剤において、トナーによるキャリアの被覆率は、40重量%以上80重量%以下であることが好ましい。
本発明の製造方法により得られたトナーを含む二成分現像剤を用いることにより、個々のトナー粒子間における帯電特性などのトナー特性が均一であるため、高精細で、濃度むらのない良好な画質の画像を得ることができる。
図5は、本発明の実施形態である画像形成装置100の構成を模式的に示す断面図である。画像形成装置は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびファクシミリモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。画像形成装置は、トナー像形成手段102と、転写手段103と、定着手段104と、記録媒体供給手段105と、排出手段106とを含む。トナー像形成手段102を構成する各部材および中間転写手段103に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
トナー像形成手段102は、感光体ドラム111と、帯電手段112と、露光ユニット113と、現像手段114と、クリーニングユニット115とを含む。帯電手段112、現像手段114およびクリーニングユニット115は、感光体ドラム111まわりに、この順序で配置される。帯電手段112は、現像手段114およびクリーニングユニット115よりも鉛直方向下方に配置される。
感光体ドラム111は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、導電性粒子および/または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。その際、導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止する、低温および/または低湿環境下における感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光体表面保護層を設けた耐久性の大きい三層構造の積層感光体であっても良い。
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環および/またはフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部である。電荷発生層用の結着樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.1〜2.5μmである。
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送物質中の結着樹脂100重量部に対して10〜300重量部、さらに好ましくは30〜150重量部である。電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。
帯電手段112は、感光体ドラム111を臨み、感光体ドラム111の長手方向に沿って感光体ドラム111表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム111表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電手段112には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電手段112は感光体ドラム111表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。たとえば、帯電手段112として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラムとが圧接するように帯電ローラを配置しても良く、帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いても良い。
露光ユニット113は、露光ユニット113から出射される各色情報の光が、帯電手段112と現像手段114との間を通過して感光体ドラム111の表面に照射されるように配置される。露光ユニット113は、画像情報を該ユニット内でb、c、m、yの各色情報の光に分岐し、帯電手段112によって一様な電位に帯電された感光体ドラム111表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット113には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLEDアレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
図6は、本発明の実施形態である現像手段114の構成を模式的に示す断面図である。現像手段114は、現像槽120とトナーホッパ121とを含む。現像槽120は感光体ドラム111表面を臨むように配置され、感光体ドラム111の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽120は、その内部空間にトナーを収容しかつ現像ローラ、供給ローラ、撹拌ローラなどのローラ部材またはスクリュー部材を収容して回転自在に支持する。現像槽120の感光体ドラム111を臨む側面には開口部が形成され、この開口部を介して感光体ドラム111に対向する位置に現像ローラが回転駆動可能に設けられる。現像ローラは、感光体ドラム111との圧接部または最近接部において感光体111表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下単に「現像バイアス」とする)として印加される。これによって、現像ローラ表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御できる。供給ローラは現像ローラを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ周辺にトナーを供給する。攪拌ローラは供給ローラを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ121から現像槽120内に新たに供給されるトナーを供給ローラ周辺に送給する。トナーホッパ121は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口(図示せず)と、現像槽120の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口(図示せず)とが連通するように設けられ、現像槽120のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ121を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成しても構わない。
本発明の二成分現像剤を用いて現像することにより、感光体上に高精細で、濃度むらのない良好なトナー像を形成することができる。
クリーニングユニット115は、記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体ドラム111の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット115には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。なお、本発明の画像形成装置においては、感光体ドラム111として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット115よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット115を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
トナー像形成手段102によれば、帯電手段112によって均一な帯電状態にある感光体ドラム111の表面に、露光ユニット113から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像手段114からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト125に転写した後に、感光体ドラム111表面に残留するトナーをクリーニングユニット115で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
転写手段103は、感光体ドラム111の上方に配置され、中間転写ベルト125と、駆動ローラ126と、従動ローラ127と、中間転写ローラ128(b、c、m、y)と、転写ベルトクリーニングユニット129、転写ローラ130とを含む。中間転写ベルト125は、駆動ローラ126と従動ローラ127とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転駆動する。中間転写ベルト125が、感光体ドラム111に接しながら感光体ドラム111を通過する際、中間転写ベルト125を介して感光体ドラム111に対向配置される中間転写ローラ128から、感光体ドラム111表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム111の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト125上へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム111で形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト125上に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。駆動ローラ126は図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト125を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ127は駆動ローラ126の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベル1ト25が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト125に付与する。中間転写ローラ128は、中間転写ベルト125を介して感光体ドラム111に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ128は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム111表面のトナー像を中間転写ベルト125に転写する機能を有する。転写ベルトクリーニングユニット129は、中間転写ベルト125を介して従動ローラ127に対向し、中間転写ベルト125の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム111との接触によって中間転写ベルト125に付着するトナーは、記録媒体の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット129が中間転写ベルト125表面のトナーを除去し回収する。転写ローラ130は、中間転写ベルト125を介して駆動ロー1ラ26に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ130と駆動ローラ126との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト125に担持されて搬送されて来るトナー像が、後述する記録媒体供給手段105から送給される記録媒体に転写される。トナー像を担持する記録媒体は、定着手段104に送給される。転写手段103によれば、感光体ドラム111と中間転写ローラ128との圧接部において感光体ドラム111から中間転写ベルト125に転写されるトナー像が、中間転写ベルト125の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
定着手段104は、転写手段103よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ131と加圧ローラ132とを含む。定着ローラ131は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録媒体に定着させる。定着ローラ131の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ131表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ131を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着条件制御手段による加熱温度の制御については、後に詳述する。定着ローラ131表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ131の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。加圧ローラ132は定着ローラ131に圧接するように設けられ、加圧ローラ132の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ132は、定着ローラ131によってトナーが溶融して記録媒体に定着する際に、トナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ131と加圧ローラ132との圧接部が定着ニップ部である。定着手段104によれば、転写手段103においてトナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ131と加圧ローラ132とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録媒体に押圧されることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像が形成される。
記録媒体供給手段105は、自動給紙トレイ135と、ピックアップローラ136と、搬送ローラ137と、レジストローラ138、手差給紙トレイ139を含む。自動給紙トレイ135は画像形成装置の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。ピックアップローラ136は、自動給紙トレイ135に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。搬送ローラ137は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録媒体をレジストローラ138に向けて搬送する。レジストローラ138は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ137から送給される記録媒体を、中間転写ベルト125に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。手差給紙トレイ139は、手動動作によって記録媒体を画像形成装置内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ139から取り込まれる記録媒体は、搬送ローラ37によって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ138に送給される。記録媒体供給手段105によれば、自動給紙トレイ135または手差給紙トレイ139から1枚ずつ供給される記録媒体を、中間転写ベルト125に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
排出手段106は、搬送ローラ137と、排出ローラ140と、排出トレイ141とを含む。搬送ローラ137は、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段104によって画像が定着された記録媒体を排出ローラ140に向けて搬送する。排出ローラ140は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ141に排出する。排出トレイ141は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
画像形成装置100は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録媒体判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビ、ビデオレコーダ、DVDレコーダ、HDVD、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(CPU、
Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置内部における各装置にも電力を供給する。
本発明の現像装置を備える画像形成装置を用いて画像形成することにより、高精細で、濃度むらのない良好な画質の画像を得ることができる。
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。以下において、「部」および「%」は特に断らない限りそれぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。実施例および比較例における液状体の粘度、結着樹脂およびトナー母粒子のガラス転移温度、結着樹脂の軟化温度、離型剤の融点、トナー母粒子の体積平均粒径は、以下のようにして測定した。
[液状体の粘度]
コーンプレートタイプ粘度計RE105L型(東機産業株式会社製)を用い、25℃、100rpmで液状体を撹拌し、測定データが安定する5分後に得られる値を液状体の粘度とした。
[結着樹脂およびトナー母粒子のガラス転移温度]
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
[結着樹脂の軟化温度]
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)において、荷重20kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えて試料1gがダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化温度(Tm)とした。
[離型剤の融点]
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、試料1gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で150℃まで昇温させ、次いで150℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度を離型剤の融点として求めた。
[体積平均粒径]
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(商品名:UH−50、STM社製)によって超音波周波数20kHzで3分間分散処理して測定用試料を調製した。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径:20μm、測定粒子数:50000カウントの条件下に測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒径を求めた。
(実施例1)
〔トナー母粒子の作製〕
・ポリエステル樹脂
(商品名:タフトン、花王株式会社製、ガラス転移温度70℃、軟化温度130℃)
87.5%(100部)
・C.I.Pigment Red 122 5.0%(5.7部)
・パラフィンワックス(商品名:HNP−10、日本精鑞株式会社製、融点70℃)
6.0%(6.9部)
・帯電制御剤(商品名:N4P、クラリアント製)
1.5%(1.7部)
以上の各構成成分を、ヘンシェルミキサ(商品名:FM20C、三井鉱山株式会社製)にて前混合した後、二軸押出混練機(商品名:PCM65、株式会社池貝製)にて溶融混練した。この溶融混練物をカッティングミル(商品名:VM−16、オリエント株式会社製)で粗粉砕した後、ジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)にて微粉砕し、さらに風力分級機(ホソカワミクロン株式会社製)で分級し、体積平均粒径6.5μmであり、ガラス転移温度が67℃のトナー母粒子を作製した。
〔液状体の調製〕
アクリル樹脂(商品名:JDX―C3000 ジョンソンポリマー社製)5.0部と、エタノール(商品名:特級エタノール99.5、キシダ化学株式会社製)90部と樹脂微粒子(商品名:MP−5000、綜研化学株式会社製)5.0部とをホモジナイザー(商品名:ポリトロンPT−MR3100、キネマティカ社製)を用いて8000rpmで20分間撹拌混合し、エタノール中にアクリル樹脂が溶解し且つ樹脂微粒子が分散した液状体を調製した。得られた液状体の粘度は10cPであった。
〔噴霧工程〕
図1に示す装置に準ずるハイブリダイゼーションシステム(商品名:NHS−1型、株式会社奈良機械製作所製)に、2流体ノズルが取付けられ、PTFEからなる付着防止部が設けられた装置によって、トナー母粒子に液状体を噴霧した。付着防止部は、図1に示す装置と同様に、粉体流路内壁の粉体流過方向に関する噴霧手段の下流側の部分と、撹拌部の軸線方向一方側の面に形成される開口部付近の部分に設けた。この装置において、ハイブリダイゼーションシステムの回転撹拌手段の最外周における周速を72m/sとした。また液状体の噴霧速度を毎分5gとした。また液状体噴霧方向と、粉体流動方向とが平行になるように、2流体ノズルの取付け角度を設定した。このような装置によって、作製したトナー母粒子100重量部に対して、アクリル樹脂が9重量部被覆されるまで液状体を噴霧し、実施例1のトナーを得た。
(実施例2)
噴霧工程において、液状体の噴霧速度を毎分10gとし、液状体噴霧方向と、粉体流動方向とのなす角度(以下「噴霧角度」という)が25°となるように2流体ノズルの取付け角度を設定したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のトナーを得た。
(実施例3)
液状体調製工程において、アクリル樹脂とエタノールとの配合割合を変更して粘度が47cPの液状体を得るとともに、噴霧工程において、回転撹拌手段の最外周における周速を118m/sとし、液状体の噴霧速度を毎分21gとし、噴霧角度が43°となるように2流体ノズルの取付け角度を設定したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のトナーを得た。
(実施例4)
液状体調製工程において、アクリル樹脂とエタノールとの配合割合を変更して粘度が23cPの液状体を得るとともに、噴霧工程において、回転撹拌手段の最外周における周速を100m/sとし、液状体の噴霧速度を毎分18gとし、噴霧角度が48°となるように2流体ノズルの取付け角度を設定したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のトナーを得た。
(実施例5)
液状体調製工程において、アクリル樹脂とエタノールとの配合割合を変更して粘度が37cPの液状体を得るとともに、噴霧工程において、回転撹拌手段の最外周における周速を100m/sとし、液状体の噴霧速度を毎分25gとし、噴霧角度が48°となるように2流体ノズルの取付け角度を設定したこと以外は実施例1と同様にして、実施例5のトナーを得た。
(実施例6)
液状体調製工程において、アクリル樹脂とエタノールとの配合割合を変更して粘度が51cPの液状体を得るとともに、噴霧工程において、回転撹拌手段の最外周における周速を100m/sとし、液状体の噴霧速度を毎分25gとし、噴霧角度が25°となるように2流体ノズルの取付け角度を設定したこと以外は実施例1と同様にして、実施例6のトナーを得た。
(実施例7)
液状体調製工程において、アクリル樹脂とエタノールとの配合割合を変更して粘度が51cPの液状体を得るとともに、噴霧工程において、回転撹拌手段の最外周における周速を101m/sとし、液状体の噴霧速度を毎分10gとし、噴霧角度が48°となるように2流体ノズルの取付け角度を設定したこと以外は実施例1と同様にして、実施例7のトナーを得た。
(実施例8)
液状体調製工程において、アクリル樹脂とエタノールとの配合割合を変更して粘度が51cPの液状体を得るとともに、噴霧工程において、回転撹拌手段の最外周における周速を100m/sとし、液状体の噴霧速度を毎分25gとし、噴霧角度が48°となるように2流体ノズルの取付け角度を設定したこと以外は実施例1と同様にして、実施例8のトナーを得た。
(実施例9)
噴霧工程において、ハイブリダイゼーションシステムの代わりにQ型ミキサ(ホソカワミクロン株式会社製)を用い、次のような条件で噴霧工程を行ったこと以外は実施例1と同様にして、実施例9のトナーを得た。
〔噴霧工程〕
図3Aに示す装置に準ずるQ型ミキサに、2流体ノズルが取付けられ、PTFEからなる付着防止部が設けられた装置によって、トナー母粒子に液状体を噴霧した。付着防止部は、図2に示す装置と同様に、処理容器内壁の全面に設けた。この装置において、回転撹拌手段の最外周における周速を75m/sとした。また液状体の噴霧速度を毎分18gとした。また液状体噴霧方向が、回転撹拌手段の回転軸に対して垂直になるように2流体ノズルの取付け角度を設定した。このような装置によって、作製したトナー母粒子100重量部に対して、アクリル樹脂が9重量部被覆されるように液状体を噴霧し、実施例9のトナーを得た。
(比較例1)
噴霧工程において、回転撹拌手段の最外周における周速を69m/sとし、液状体の噴霧速度を毎分18gとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のトナーを得た。
(比較例2)
噴霧工程において、付着防止部が設けられない装置を用いるとともに、液状体の噴霧速度を毎分18gとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のトナーを得た。
(比較例3)
噴霧工程において、付着防止部が設けられない装置を用いるとともに、回転撹拌手段の最外周における周速を50m/sとし、液状体の噴霧速度を毎分18gとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例3のトナーを得た。
(比較例4)
噴霧工程において、回転撹拌手段の最外周における周速を123m/sとし、液状体の噴霧速度を毎分18gとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例4のトナーを得た。
(比較例5)
噴霧工程において、ハイブリダイゼーションシステムの代わりにQ型ミキサ(ホソカワミクロン株式会社製)を用い、次のような条件で噴霧工程を行ったこと以外は実施例1と同様にして、比較例5のトナーを得た。
〔噴霧工程〕
Q型ミキサに2流体ノズルを取付けた装置によって、トナー母粒子に液状体を噴霧した。2流体ノズルは、図3Aに示す装置と同様に、液状体噴霧方向が、回転撹拌手段の回転軸に対して垂直となるように取付けた。この装置において、回転撹拌手段の最外周における周速を50m/sとした。また液状体の噴霧速度を毎分18gとした。また液状体噴霧方向が、回転撹拌手段の回転軸に対して垂直になるように2流体ノズルの取付け角度を設定した。このような装置によって、作製したトナー母粒子100重量部に対して、アクリル樹脂が9重量部被覆されるように液状体を噴霧し、比較例5のトナーを得た。
得られた実施例および比較例のトナーについて、次のようにして収率および被覆均一性の評価を行った。
〈収率〉
下記式によって、トナーの収率を算出した。
トナーの収率=回収されたトナー粒子の重量
/(トナー母粒子投入量+被覆材料固形分重量)×100
算出されたトナーの収率が95%である場合を◎(非常に良好)、90%以上95%未満を○(良好)、80%以上90%未満を△(実用上問題なし)、80%未満を×(不良)として評価した。
〈被覆均一性〉
処理前後のトナー母粒子について、個数平均粒径分布を求め、この分布における変動係数の変化量によって評価した。変動係数は、標準偏差σ/数平均粒子径D×100(%)によって得られる値であり、変動係数の変化量として、(処理後の変動係数−処理前の変動係数)を算出した。トナー母粒子の表面が完全に均一被覆された場合、変動係数の変化量は0となり、変動係数の変化量が大きくなるほど被覆が不均一であることを意味する。変動係数の変化量が5未満である場合を◎(被覆均一性に非常に優れる)、5以上10未満である場合を○(被覆均一性が良好である)、10以上15未満である場合を△(実用上、被覆均一性に問題がない)、15以上である場合を×(被覆均一性が悪い)として評価した。
個数平均粒径分布は、電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(商品名:UH−50、STM社製)によって超音波周波数20kHzで3分間分散処理して測定用試料を調製した。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径:20μm、測定粒子数:50000カウントの条件下に測定を行うことによって求めた。標準偏差の変化率が5%未満である場合を◎(非常に良好)、5%以上10%未満を○(良好)、10%以上30%未満を△(実用上問題なし)、30%以上を×(不良)として評価した。
評価結果を表1に示す。
表1に示すように、本発明のトナーの製造方法は、収率および被覆均一性に優れることが判る。