本発明のトナーは、不定形のコア粒子と、コア粒子表面に形成されているシェル層とを含む。
コア粒子は少なくとも非晶性ポリエステル樹脂と着色剤および離型剤を含む。シェル層は、コア粒子表面に膜化形成される。
このシェル層の厚みは、0.05μm以上、0.5μm以下となる部分が表面積の少なくとも80%を占め、かつシェル層の厚みが厚い箇所の平均値が、シェル層の厚みが薄い箇所の平均値の2倍よりも厚く形成されていることを特徴としている。
シェル層の厚みが厚い箇所の平均値および薄い箇所の平均値というのは、たとえば、透過型電子顕微鏡でトナー粒子の断面画像を撮影し、画像処理などにより画像解析を行い、複数箇所でのシェル層厚みを測定する。厚みが最も厚い箇所から順に所定数の測定値を選択してこれらの平均値を厚みが厚い箇所の平均値とする。薄い箇所についても同様に、最も薄い箇所から順に所定数の測定値を選択してこれらの平均値を厚みが薄い箇所の平均値とする。なお、膜厚が厚い箇所および薄い箇所は上記厚み0.05μm以上、0.5μm以下の範囲を外れた箇所であってもよい。所定数とは2点以上であり、この測定値の平均をシェル層厚みの平均値とする。
シェル層で被覆されている部分のコア粒子の表面積が、コア粒子の全体の表面積の80%未満であると、コア粒子表面が露出する面積が大きくなり、コア粒子に含まれるワックスや顔料などの低融点成分が軟化し、トナーが凝集するおそれがある。
したがってシェル層で被覆されている部分のコア粒子の面積は、コア粒子の表面積の80%以上100%以下であることが好ましい。コア粒子の表面積は、コア粒子を球体とみなし、コア粒子の体積平均粒径を測定することによって算出できる。またシェル層で被覆されている部分のコア粒子の面積は、電子顕微鏡による撮影画像から、画像解析装置などを用いて算出できる。コア粒子の表面の大部分(80%以上)にシェル層が形成されている場合、コア粒子の表面全面にシェル層が形成されている場合と同様の効果が得られるので、以下の記載ではシェル層がコア粒子の表面全面に形成されている場合を例に説明する。
本発明のトナーは、コア粒子表面に形成されているシェル層が存在するので、たとえば現像容器内での撹拌によるストレスが付加されてもトナー粒子の凝集を防止することができる。これによって長期使用によるトナーの性質の変化を防止できる。
また、コア粒子が不定形であるので、クリーニングブレードにトナーが引っ掛かり易く、適切なクリーニング性を維持できる。また、シェル層に膜厚差があるため定着時の熱と圧力によってシェル層が容易に変形し、紙面上にコア粒子成分が融け出すので、コア粒子の定着性を維持することが可能となる。
また、シェル層の厚みが厚い箇所の平均値が、シェル層の厚みが薄い箇所の平均値の2倍以下であると、定着時にシェル層が変形しにくくなり、コア粒子成分を紙面に定着させるために多くのエネルギーが必要となり、定着可能領域の確保が難しくなる。
本発明のトナーにおけるその他のトナー添加成分しては、たとえば帯電制御剤などが挙げられる。
以下では、本発明のトナーの製造方法について説明する。本発明のトナーは、たとえば、コア粒子と樹脂微粒子との付着力を増大させる付着補助剤を用いて、コア粒子に樹脂微粒子を付着させ融着させることによって製造される。
図1は、本発明の実施の一形態であるトナーの製造方法を示す工程図である。
本実施形態におけるトナーの製造方法は、ステップs1のコア粒子作製工程と、ステップs2のシェル層材料調製工程と、ステップs3のコーティング工程とを含む。ステップs1のコア粒子作製工程と、ステップs2のシェル層材料調製工程とは、時間的に順序が逆になってもよく、並行して行うようにしてもよい。
〈コア粒子作製工程〉
ステップs1のコア粒子作製工程では、結着樹脂、着色剤、離型剤を含むコア粒子を作製する。本発明のトナーに用いられるコア粒子は、結着樹脂、着色剤、離型剤を含有し、さらに帯電制御剤などを含有してもよい。
結着樹脂としては、非晶性ポリエステル樹脂が用いられる。非晶性ポリエステル樹脂は、通常、構成モノマーとして、2価のアルコール単量体および3価以上の多価アルコール単量体から選ばれる1種以上と、2価のカルボン酸単量体および3価以上の多価カルボン酸単量体から選ばれる1種以上とを用いて、縮重合によって得られるものが使用される。
2価のアルコール単量体としては、例えばポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのプロピレン付加物、ビスフェノールAのエチレン付加物、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
3価以上の多価アルコール単量体としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
本発明においては、これらの2価のアルコール単量体および3価以上の多価アルコール単量体から単独であるいは複数の単量体を用いることができる。
また、酸成分としては、2価のカルボン酸単量体として、例えばマレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、及びこれらの酸の無水物、もしくは低級アルキルエステル等が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸単量体としては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸およびこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
本発明においては、これらの2価のカルボン酸単量体および3価以上の多価カルボン酸単量体から単独であるいは複数の単量体を用いることができる。
本発明における非晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されることなく、上記の単量体を用いてエステル化、エステル交換反応により製造することができる。ここで、非晶性ポリエステル樹脂とは明確な融点を有さない樹脂である。
本発明では、結着樹脂として非晶性ポリエステル樹脂を用いるが、これ以外のポリエステル樹脂を含有していても良い。たとえば結晶性のポリエステル樹脂は、一般に抵抗が低く、かつガラス転移点が低いため軟化しやすい。そのためトナー表面に露出すると、保存性、帯電性などの経時安定性が悪化する。したがって、主樹脂として用いるのは好ましくないが、添加剤として用いるとトナーの溶融粘度を下げる効果があり、紙面への定着性の向上を図ることができる。このような場合の結晶性ポリエステル樹脂の融点は60〜120℃のものが好ましく、使用量は特に制限されないけれども、非晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して1〜20重量部が好ましい。
本発明においては、非晶性ポリエステル樹脂に加えて、トナー用に公知の結着樹脂を1種以上併用することができ、たとえば、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂などが挙げられる。併用する樹脂としては、これらの中でも、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂が好ましい。
アクリル樹脂としては特に制限されないけれども、酸性基含有アクリル樹脂を好ましく使用できる。酸性基含有アクリル樹脂は、たとえば、アクリル樹脂モノマーまたはアクリル樹脂モノマーとビニル系モノマーとを重合させるに際し、酸性基もしくは親水性基を含有するアクリル樹脂モノマーおよび/または酸性基もしくは親水性基を有するビニル系モノマーを併用することによって製造できる。アクリル樹脂モノマーとしては公知のものを使用でき、たとえば、置換基を有することのあるアクリル酸、置換基を有することのあるメタアクリル酸、置換基を有することのあるアクリル酸エステル、置換基を有することのあるメタアクリル酸エステルなどが挙げられる。アクリル樹脂モノマーの具体例としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシルなどのアクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基(水酸基)含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体などが挙げられる。アクリル樹脂モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。ビニル系モノマーとしても公知のものを使用でき、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、臭化ビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルなどが挙げられる。ビニル系モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。重合は、一般的なラジカル開始剤を用い、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などによって行われる。
スチレン−アクリル樹脂としては、たとえば、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。
結着樹脂は、ガラス転移温度Tgが30℃以上80℃以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移温度が30℃未満であると、画像形成装置内部においてトナーが熱凝集するブロッキングを発生しやすくなり、保存安定性が低下するおそれがある。結着樹脂のガラス転移温度が80℃を超えると、記録媒体へのトナーの定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。
着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などを使用できる。
黒色の着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる。
黄色の着色剤としては、たとえば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などが挙げられる。
橙色の着色剤としては、たとえば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
赤色の着色剤としては、たとえば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
紫色の着色剤としては、たとえば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
青色の着色剤としては、たとえば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
緑色の着色剤としては、たとえば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
白色の着色剤としては、たとえば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などの化合物が挙げられる。
着色剤は1種を単独で使用でき、または2種以上の異なる色のものを併用できる。また同色であっても、2種以上を併用できる。着色剤の使用量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.2〜10重量部である。
離型剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど)およびその誘導体、低分子量ポリプロピリンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)およびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。なお、誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。ワックスの使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部、特に好ましくは1.0〜8.0重量部である。
帯電制御剤としてはこの分野で常用される正電荷制御用および負電荷制御用のものを使用できる。正電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。負電荷制御用の帯電制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。帯電制御剤は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。帯電制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できる。
帯電制御剤は、コア粒子中に含有させてもよく、後述のコーティング工程において樹脂微粒子からなるシェル層に含有させてもよい。帯電制御剤を、コア粒子中に含有させる場合は、コア粒子100重量部に対して0.5〜3重量部含有させることが好ましい。
帯電制御剤を、シェル層に含有させる場合は、シェル層材料100重量部に対して0.5〜3重量部含有させることが好ましい。
コア粒子は、一般的なトナーの製造方法に従って製造できる。一般的なトナーの製造方法としては、たとえば、粉砕法などの乾式法、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法、溶融乳化法などの湿式法である。
本発明は、好適な特性を有するシェル層でコーティングすることにより、従来では不可能だったトナー表面の機能化が可能となり、平滑性、耐久性などが向上するという点で、混練粉砕法によって得られた不定形のコア粒子を用いた場合に顕著な効果がある。
ここでいう不定形のコア粒子とは、各々の粒子が均一な形状でなく、異なる形状であり、その表面が凹凸面を有している粒子である。不定形のコア粒子としては、粒子形状を現す形状係数SF−1が140〜160、SF−2が130〜150程度の範囲のものを使用することができる。
コア粒子表面にシェル層を形成することによって形状係数は変化し、シェル層でコーティングされたトナー粒子としては、SF-1が130〜150、SF−2が120〜140程度の範囲のものが得られる。
以下では、粉砕法によるコア粒子の作製方法を説明する。
粉砕法では、上記で示した結着樹脂、着色剤、離型剤およびその他のトナー添加成分を含むトナー組成物を、混合機で乾式混合した後、混練機によって溶融混練する。溶融混練によって得られる混練物を冷却固化し、固化物を粉砕機によって粉砕する。その後必要に応じて分級などの粒度調整を行い、コア粒子を得る。
混合機としては公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサー(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
混練機としても公知のものを使用でき、たとえば、二軸押出し機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。
着色剤などの合成樹脂用添加剤は、合成樹脂用添加剤を混練物中に均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。また合成樹脂用添加剤の2種以上を複合粒子化して用いてもよい。複合粒子は、たとえば、合成樹脂用添加剤の2種以上に適量の水、低級アルコールなどを添加し、ハイスピードミルなどの一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造できる。マスターバッチおよび複合粒子は、乾式混合の際に粉体混合物に混入される。
粉砕法で得られたコア粒子は、体積平均粒径が3μm以上10μm以下であることが好ましく、5μm以上8μm以下であることがさらに好ましい。コア粒子の体積平均粒径が3μm以上10μm以下であると、高精細な画像を長期にわたって安定して形成することができる。コア粒子の体積平均粒径が3μm未満であると、コア粒子の粒径が小さくなり過ぎ、高帯電化および低流動化が起こるおそれがある。この高帯電化および低流動化が発生すると、感光体にトナーを安定して供給することができなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生するおそれがある。コア粒子の体積平均粒径が10μmを超えると、コア粒子の粒径が大きいので、高精細な画像を得ることができない。またコア粒子の粒径が大きくなることによって比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなる。トナーの帯電量が小さくなると、トナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。
〈シェル層材料調製工程〉
ステップs2のシェル層材料調製工程では、少なくとも樹脂を含む樹脂微粒子を作製する。またコア粒子と樹脂微粒子との付着力を増大させる付着補助剤を調製する。
樹脂微粒子に用いることができる樹脂としては、特に限定されることなく、たとえば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、スチレン樹脂などを用いることができる。
樹脂微粒子としては、上記例示した樹脂の中でも、スチレン−アクリル共重合樹脂を含むことが好ましい。スチレン−アクリル共重合樹脂を含む樹脂微粒子をコア粒子表面付着させ、膜化してシェル層を形成することで、膜厚の制御性がより一層向上する。またスチレン−アクリル共重合樹脂を主成分として使用することで、全面被覆、膜厚の制御が可能になる。また、染色処理を施すことにより、シェル層を透過型電子顕微鏡で観察することが可能となり、シェル層の厚み測定を容易に行うことができる。
この他にも、スチレン−アクリル共重合樹脂は、ガラス転移温度や軟化温度の調整が容易で、合成方法によっては、粒度の調整も容易であり、軽量で高い強度を有し、さらに透明性も高く、安価であるなどシェル層を構成する樹脂材料として多くの利点を有する。
樹脂微粒子に含まれる樹脂としては、コア粒子の結着樹脂と同じ種類であってもよく、異なる種類の樹脂であってもよいけれども、トナーの表面改質を行う点において、異なる種類の樹脂が用いられることが好ましい。樹脂微粒子に含まれる樹脂として、異なる種類の樹脂が用いられる場合、樹脂微粒子に含まれる樹脂の軟化温度が、コア粒子の結着樹脂の軟化温度よりも高いものを用いることが好ましい。これによって、保存中にトナー同士が融着することが防止され、保存安定性を向上させることができる。
また樹脂微粒子に含まれる樹脂の軟化温度は、トナーが使用される画像形成装置によってその好適範囲は変化するが、80℃以上140℃以下が好ましい。
さらに、樹脂微粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度は、50〜80℃の範囲であることが好ましく、60〜80℃の範囲であることがより好ましい。
このような範囲の樹脂を用いることによって、樹脂微粒子が膜化しやすくなり、軟化による膜厚調整(厚み差を持たせる)がしやすくなる。ガラス転移温度が80℃を超えるものは、膜化は可能であるが膜厚を薄くすることが難しく、定着性が劣化する。ガラス転移温度が50℃未満のものも、膜化は可能であるがトナーの保存性、耐久性についてトナー同士の凝集など支障が生じる。
このような樹脂微粒子は、たとえば、モノマーの重合によって得ることができる。
コーティング前の樹脂微粒子の平均粒径は、コア粒子の平均粒径よりも十分に小さいことが必要である。さらにコーティング前の樹脂微粒子の平均粒径は、0.2μm以下であることが好ましい。コーティング前の樹脂微粒子の平均粒径が0.2μm以下であることによって、不定形であるコア粒子において、表面の凹部に樹脂微粒子が埋設しやすくなり、シェル層がコア粒子の表面全体を被覆しやすくなる。
平均粒径が0.2μmを超えると、コア粒子の凹部を被覆することができなかったり、全面被覆するために必要な微粒子の部数が増えたりする。また、シェル層が変形しにくくなりコア粒子成分を紙面に定着させるのに多くのエネルギーが必要になり、定着可能領域の確保が難しくなる。
また、ステップs2のシェル層材料調製工程では、コア粒子と樹脂微粒子との付着力を増大させる付着補助剤も調製する。付着補助剤とは、樹脂微粒子のコア粒子に対する濡れ性を向上させることができる液体である。付着補助剤は、コア粒子を溶解しない液体であることが好ましい。また付着補助剤は、樹脂微粒子のコーティング後に除去される必要があるので、蒸発し易い液体であることが好ましい。
付着補助剤としては、たとえば、水または低級アルコールを含むことが好ましく、複数を混合して用いてもよい。低級アルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。
〈コーティング工程〉
ステップs3のコーティング工程では、コア粒子と樹脂微粒子との付着力を増大させる付着補助剤を用いて、コア粒子に樹脂微粒子を付着させ融着させる。これによって、コア粒子に樹脂微粒子をコーティングし、シェル層を形成する。
樹脂微粒子のコーティングは、たとえば表面改質装置を用いて行われる。表面改質装置は、コア粒子および樹脂微粒子を内部に収容する容器と、容器内部に付着補助剤を噴霧する噴霧手段とを備える装置である。また本実施の形態において、表面改質装置は、容器内のコア粒子を撹拌する撹拌手段を備える。
コア粒子および樹脂微粒子を内部に収容する容器としては、閉鎖系の容器を用いることができる。噴霧手段は、付着補助剤を貯留する付着補助剤貯留部と、キャリアガスを貯留するキャリアガス貯留部と、付着補助剤とキャリアガスとを混合し、得られる混合物を容器内に収容されるコア粒子に向けて噴射し、付着補助剤の液滴をコア粒子に噴霧する液体噴霧ユニットとを備える。キャリアガスとしては、圧縮エアなどを用いることができる。液体噴霧ユニットとしては、市販品を用いることができ、たとえば、付着補助剤をチューブポンプ(商品名:MP−1000A、東京理化器械株式会社製)を通して二流体ノズル(商品名:HM−6型、扶桑精機株式会社製)に定量送液するように接続したものを使用することができる。撹拌手段としては、衝撃力を主体とする機械的および熱的エネルギーをコア粒子に付与することができる撹拌ロータなどが用いられる。
撹拌手段を備える容器としては、市販品を用いることができ、たとえば、ヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサー(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。このような混合機の容器内に液体噴霧ユニットを取付けることによって、この混合機を本実施の形態の表面改質装置として用いることができる。
コア粒子への樹脂微粒子のコーティングは、次のようにして行う。
まず、コア粒子と樹脂微粒子とを容器に投入し、撹拌手段によってコア粒子および樹脂微粒子が撹拌される状態で、容器内部に付着補助剤を噴霧する。コア粒子および樹脂微粒子は、付着補助剤が噴霧され、かつ撹拌による熱的エネルギーが加えられることによって、その表面が膨潤軟化する。これに、撹拌手段による機械的衝撃力が付加されて、コア粒子表面に樹脂微粒子が固着するとともに、樹脂微粒子の一部が、コア粒子および隣合う樹脂微粒子の少なくともいずれか一方と扁平化しながら融着する。
温度条件としては、コア粒子のガラス転移温度Tg未満、(Tg−20)℃以上に加温制御しながら攪拌してコーティングすることにより、コア粒子表面の略全面にわたって膜化したシェル層を被覆形成することができる。
表面改質装置の容器内の温度がコア粒子のガラス転移温度Tg以上であると、トナー製造時に容器内でコア粒子が溶融し過ぎて、コア粒子の凝集が発生するおそれがある。また、ガラス転移温度Tg(℃)よりも20℃低い温度未満であると、コア粒子表面が十分に膨潤軟化されず、コア粒子表面の略全面にわたってシェル層を形成できない。
コア粒子の凝集を防止するためには、表面改質装置の容器内は必要に応じて冷却されることが好ましい。
さらに付着補助剤は、コア粒子と樹脂微粒子、または樹脂微粒子が付着したコア粒子が容器内において浮遊する状態で噴霧されることが好ましい。コア粒子が容器内で浮遊する状態で、樹脂微粒子と付着補助剤との混合物が噴霧されると、付着補助剤が噴霧されたコア粒子同士が接触する時間を短縮することができる。これによってトナー製造時におけるトナーの凝集を防止することができ、粗大粒子の発生が防止されるので、粒径の整ったトナーを得ることができる。コア粒子が容器内において浮遊する状態は、たとえば、撹拌手段による撹拌、エアの供給などによって実現できる。
樹脂微粒子の使用割合は、特に限定されないけれども、コア粒子の表面全面を被覆することができる使用割合であることが必要である。樹脂微粒子は、コア粒子100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下の使用割合で用いられることが好ましい。樹脂微粒子が1重量部未満であると、コア粒子の表面全面をシェル層で被覆することができないおそれがある。樹脂微粒子が30重量部を超えると、シェル層の厚みが大きくなり過ぎ、樹脂微粒子の構成材料によっては、トナーの定着性が低下するおそれがある。
また付着補助剤の使用量は、特に限定されないけれども、コア粒子の表面全面を濡らす程度の量であることが好ましい。付着補助剤の使用量は、コア粒子の使用量によって決定される。また付着補助剤は、噴霧手段による噴霧時間、噴霧回数などによってその量を調整することができる。したがってコア粒子の平均粒径、コア粒子と樹脂微粒子との使用割合、コア粒子の材料および樹脂微粒子の材料などに応じて噴霧手段による単位時間当りの噴霧量を設定し、たとえば容器内の樹脂微粒子のうちほとんどがコア粒子に付着した時点で、噴霧手段による付着補助剤の噴霧を終了すればよい。
コア粒子への樹脂微粒子のコーティングは、コア粒子を内部に収容する容器と、容器内部に樹脂微粒子と付着補助剤との混合物を噴霧する噴霧手段とを備える表面改質装置によって行われてもよい。このような表面改質装置としては、付着補助剤貯留部に付着補助剤と樹脂微粒子との混合物が貯留されること以外は、前述の装置と同様のものを用いることができる。
このような表面改質装置によるコア粒子への樹脂微粒子のコーティングは、次のようにして行う。まずコア粒子を容器に投入し、撹拌手段によってコア粒子が撹拌される状態で、容器内部に付着補助剤と樹脂微粒子との混合物を噴霧する。コア粒子は、付着補助剤が噴霧され、かつ撹拌による熱的エネルギーが加えられることによって、その表面が膨潤軟化する。また樹脂微粒子は、付着補助剤とともに混合されており、容器内部に噴霧された後、撹拌されて熱的エネルギーが加えられ、コア粒子と同様にその表面が膨潤軟化した状態となる。これに、撹拌手段による機械的衝撃力が付加されて、コア粒子表面に樹脂微粒子が固着するとともに、樹脂微粒子の一部が、コア粒子および隣合う樹脂微粒子の少なくともいずれか一方と扁平化しながら融着する。
温度条件としては、前述の装置条件と同様に、コア粒子のガラス転移温度Tg未満、(Tg−20)℃以上に加温制御しながら攪拌してコーティングすることにより、コア粒子表面の略全面にわたって膜化したシェル層を被覆形成することができる。
付着補助剤と樹脂微粒子との混合物を噴霧する場合、付着補助剤は、樹脂微粒子1重量部に対して1重量部以上99重量部以下の割合で用いられることが好ましい。付着補助剤と樹脂微粒子との混合物であるコーティング液は、ステップs2のシェル層材料調製工程において、予め調製しておく。
樹脂微粒子と付着補助剤との混合物を同一の噴霧手段から噴霧する場合に、上記割合で樹脂微粒子と付着補助剤とが混合される混合物が用いられることによって、樹脂微粒子のコア粒子に対する濡れ性を十分に高めることができるとともに、付着補助剤を除去するための時間を短縮することができる。また混合物の粘度が好適であり、噴霧手段による混合物の噴霧が容易である。付着補助剤が1重量部未満であると、混合物の粘度が高くなり過ぎ、噴霧ユニットのノズル孔が詰まるおそれがある。付着補助剤が99重量部を超えると、付着補助剤の含有率が高くなり過ぎ、付着補助剤を除去するための時間が長くなり過ぎる。
樹脂微粒子と付着補助剤との混合物の使用量は、特に限定されないけれども、コア粒子の表面全面を被覆することができる量の樹脂微粒子を含む量であることが必要である。コア粒子の表面全面を被覆することができる樹脂微粒子の好ましい量は、前述と同様にコア粒子100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下であるので、混合物の使用量は、混合物中における樹脂微粒子の含有率に応じて決定される。
コア粒子の表面全面に対する樹脂微粒子のコーティングが終了すると、付着補助剤の除去を行う。付着補助剤の除去は、たとえば乾燥機で付着補助剤を気化させることによって行われる。付着補助剤の除去には、たとえば、熱風受熱式乾燥機、伝導伝熱式乾燥機、凍結乾燥機などの通常用いられる乾燥機が用いられる。
以上のようにして、不定形コア粒子の表面積の80%以上を占める部分に、厚み差を有する平滑なシェル層が膜化形成された本発明のトナーが得られる。シェル層自体の表面は平滑化されるので、その結果、コア粒子表面の凹凸がシェル層の厚みに反映され、適度な厚み差を有するシェル層を形成することができる。すなわち、シェル層自体の表面は平滑化されるので、シェル層の厚みとしては、コア粒子表面の凹部を被覆した部分が比較的厚くなり、コア粒子表面の凸部を被覆した部分が比較的薄くなる。
このようなトナーは、厚み差のあるシェル層で被覆されているため、定着時にシェル層が変形しやすく、コア成分を紙面に接着(定着)しやすくすることができる。またコア粒子と融着する樹脂微粒子によって、シェル層とコア粒子との付着力が強固となるので、たとえば現像容器内での撹拌によるシェル層のコア粒子からの脱離を防止することができ、トナーの性質が長期使用によって変化することを防止できる。さらに不定形のコア粒子表面に平滑なシェル層が形成されるため、クリーニング時にトナーがクリーニングブレードに引っ掛かり易く、クリーニング性が維持される。
このようなシェル層が形成されることにより、耐久性を保持しつつ定着性に優れたトナーが実現可能となる。均一な膜厚で形成されたシェル層に比べると、厚み差があることで、定着時外力が加わると厚みが薄い部分に力が集中し、シェル層が変形しやすくなりコア粒子成分が紙面に接着(定着)しやすくなる。また厚い部分も有することでシェル層全体としては、適度な強度を有し、現像槽内での保存時や撹拌時に、シェル層が脱離することなく保持されるのでトナーの凝集を防止し、長期使用によるトナー特性の変化を防止できる。さらに不定形のコア粒子表面に平滑なシェル層が形成されるため、クリーニング時にトナーがクリーニングブレードに引っ掛かり易く、クリーニング性は維持される。
本発明のトナーには、外添剤が添加されてもよい。外添剤としては公知のものを使用でき、たとえば、シリカ、酸化チタンなどが挙げられる。またこれらは、シリコーン樹脂、シランカップリング剤などによって表面処理されていることが好ましい。外添剤の使用量は、トナー100重量部に対して1〜10重量部であることが好ましい。
また本発明のトナーは、一成分現像剤としても二成分現像剤しても使用することができる。一成分現像剤として使用する場合、キャリアを用いることなくトナー単体で使用する。また一成分現像剤として使用する場合、ブレードおよびファーブラシを用い、現像スリーブで摩擦帯電させてスリーブ上にトナーを付着させることによってトナーを搬送し、画像形成を行う。二成分現像剤として使用する場合、本発明のトナーをキャリアとともに用いる。
キャリアとしては、公知のものを使用でき、たとえば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライトおよびキャリアコア粒子を被覆物質で表面被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどが挙げられる。被覆物質としては公知のものを使用でき、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられる。また樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としても特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。いずれも、トナー成分に応じて選択するのが好ましく、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。またキャリアの粒径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜50μmである。さらにキャリアの抵抗率は、好ましくは108Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。キャリアの抵抗率は、キャリアを0.50cm2の断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cm2の荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読み取って得られる値である。抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10〜60emu/g、さらに好ましくは15〜40emu/gである。磁化強さは現像ローラの磁束密度にもよるけれども、現像ローラの一般的な磁束密度の条件下においては、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また磁化強さが60emu/gを超えると、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎるので、非接触現像では、像担持体と非接触状態を保つことが困難になる。また接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの使用割合は特に制限されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できるけれども、樹脂被覆キャリア(密度5〜8g/cm2)を例にとれば、現像剤中に、トナーが現像剤全量の2〜30重量%、好ましくは2〜20重量%含まれるように、トナーを用いればよい。また二成分現像剤において、トナーによるキャリアの被覆率は、40〜80%であることが好ましい。
図2は、本発明の実施の一形態である画像形成装置1の構成を模式的に示す断面図である。画像形成装置1は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置1においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびファクシミリモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、転写手段3と、定着手段4と、記録媒体供給手段5と、排出手段6とを含む。トナー像形成手段2を構成する各部材および中間転写手段3に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
トナー像形成手段2は、感光体ドラム11と、帯電手段12と、露光ユニット13と、現像装置14と、クリーニングユニット15とを含む。帯電手段12、現像装置14およびクリーニングユニット15は、感光体ドラム11まわりに、この順序で配置される。帯電手段12は、現像装置14およびクリーニングユニット15よりも鉛直方向下方に配置される。
感光体ドラム11は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、導電性粒子および/または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。その際、導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止する、低温および/または低湿環境下における感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光体表面保護層を設けた耐久性の大きい三層構造の積層感光体であっても良い。
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環および/またはフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部である。電荷発生層用の結着樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.1〜2.5μmである。
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送物質中の結着樹脂100重量部に対して10〜300重量部、さらに好ましくは30〜150重量部である。電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。
帯電手段12は、感光体ドラム11を臨み、感光体ドラム11の長手方向に沿って感光体ドラム11表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム11表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電手段12には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電手段12は感光体ドラム11表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。たとえば、帯電手段12として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラムとが圧接するように帯電ローラを配置しても良く、帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いても良い。
露光ユニット13は、露光ユニット13から出射される各色情報の光が、帯電手段12と現像装置14との間を通過して感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13は、画像情報を該ユニット内でb、c、m、yの各色情報の光に分岐し、帯電手段12によって一様な電位に帯電された感光体ドラム11表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット13には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLEDアレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
図3は、本発明の実施の一形態である現像装置14の構成を模式的に示す断面図である。現像装置14は、現像槽20とトナーホッパ21とを含む。現像槽20は感光体ドラム11表面を臨むように配置され、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽20は、その内部空間にトナーを収容しかつ現像ローラ20a、供給ローラ20b、撹拌ローラ20cなどのローラ部材またはスクリュー部材を収容して回転自在に支持する。現像槽20の感光体ドラム11を臨む側面には開口部が形成され、この開口部を介して感光体ドラム11に対向する位置に現像ローラ20aが回転駆動可能に設けられる。現像ローラ20aは、感光体ドラム11との圧接部または最近接部において感光体11表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ20a表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下単に「現像バイアス」とする)として印加される。これによって、現像ローラ20a表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御できる。供給ローラ20bは現像ローラ20aを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ20a周辺にトナーを供給する。攪拌ローラ20cは供給ローラ20bを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ21から現像槽20内に新たに供給されるトナーを供給ローラ20b周辺に送給する。トナーホッパ21は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口(図示せず)と、現像槽20の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口(図示せず)とが連通するように設けられ、現像槽20のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ21を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成しても構わない。
クリーニングユニット15は、記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体ドラム11の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット15には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。なお、本発明の画像形成装置1においては、感光体ドラム11として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット15よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット15を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
トナー像形成手段2によれば、帯電手段12によって均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像装置14からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト25に転写した後に、感光体ドラム11表面に残留するトナーをクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
転写手段3は、感光体ドラム11の上方に配置され、中間転写ベルト25と、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、中間転写ローラ28(b、c、m、y)と、転写ベルトクリーニングユニット29、転写ローラ30とを含む。中間転写ベルト25は、駆動ローラ26と従動ローラ27とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転駆動する。
中間転写ベルト25が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に対向配置される中間転写ローラ28から、感光体ドラム11表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト25上へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム11で形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト25上に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。駆動ローラ26は、図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト25を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ27は駆動ローラ26の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト25が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト25に付与する。中間転写ローラ28は、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ28は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム11表面のトナー像を中間転写ベルト25に転写する機能を有する。転写ベルトクリーニングユニット29は、中間転写ベルト25を介して従動ローラ27に対向し、中間転写ベルト25の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト25に付着するトナーは、記録媒体の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット29が中間転写ベルト25表面のトナーを除去し回収する。転写ローラ30は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ26に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ30と駆動ローラ26との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト25に担持されて搬送されて来るトナー像が、後述する記録媒体供給手段5から送給される記録媒体に転写される。トナー像を担持する記録媒体は、定着手段4に送給される。転写手段3によれば、感光体ドラム11と中間転写ローラ28との圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト25に転写されるトナー像が、中間転写ベルト25の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
定着手段4は、転写手段3よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ31と加圧ローラ32とを含む。定着ローラ31は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録媒体に定着させる。定着ローラ31の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ31表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ31を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着条件制御手段による加熱温度の制御については、後に詳述する。定着ローラ31表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ31の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。加圧ローラ32は定着ローラ31に圧接するように設けられ、加圧ローラ32の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ32は、定着ローラ31によってトナーが溶融して記録媒体に定着する際に、トナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ31と加圧ローラ32との圧接部が定着ニップ部である。定着手段4によれば、転写手段3においてトナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ31と加圧ローラ32とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録媒体に押圧されることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像が形成される。
記録媒体供給手段5は、自動給紙トレイ35と、ピックアップローラ36と、搬送ローラ37と、レジストローラ38、手差給紙トレイ39を含む。自動給紙トレイ35は画像形成装置1の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。ピックアップローラ36は、自動給紙トレイ35に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。搬送ローラ37は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録媒体をレジストローラ38に向けて搬送する。レジストローラ38は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ37から送給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。手差給紙トレイ39は、手動動作によって記録媒体を画像形成装置1内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ39から取り込まれる記録媒体は、搬送ローラ37によって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ38に送給される。記録媒体供給手段5によれば、自動給紙トレイ35または手差給紙トレイ39から1枚ずつ供給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
排出手段6は、搬送ローラ37と、排出ローラ40と、排出トレイ41とを含む。搬送ローラ37は、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録媒体を排出ローラ40に向けて搬送する。排出ローラ40は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置1の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ41に排出する。排出トレイ41は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
画像形成装置1は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置1の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置1の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置1内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録媒体判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置1に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビジョン受像機器、ビデオレコーダ、DVD(Digital Versatile Disc)レコーダ、HDDVD(High-Definition Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置1内部における各装置にも電力を供給する。
本発明のトナー、二成分現像剤、現像装置14、画像形成装置1を用いて画像形成することにより、長期に亘って定着性の良好な高画質画像を形成することができる。
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
実施例および比較例における各物性は、次のようにして測定した。
〔トナーの体積平均粒径および変動係数CV〕
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、実施例および比較例で得られた試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(商品名:UH−50、STM社製)により超音波周波数20kzで3分間分散処理して測定用試料を調製した。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径:100μm、測定粒子数:50000カウントの条件下に測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒子径および体積粒度分布における標準偏差を求めた。変動係数(CV値、%)は、下記式に基づいて算出した。
CV値(%)=(体積粒度分布における標準偏差/体積平均粒子径)×100
〔樹脂微粒子の平均粒径〕
シェル層材料の樹脂微粒子の平均粒径は、リアルサーフェスビュー顕微鏡(商品名:VE−9800、キーエンス製)によって20000倍に拡大して平均粒子径を算出して得た。
〔結着樹脂のガラス転移温度(Tg)〕
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
〔結着樹脂の軟化温度(Tm)〕
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)において、荷重10kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えて試料1gがダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化温度とした。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、試料1gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で200℃まで昇温させ、次いで200℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度を離型剤の融点として求めた。
(実施例1)
[コア粒子作製工程]
結着樹脂として非晶性ポリエステル樹脂(商品名:ダイヤクロン、三菱レイヨン株式会社製、ガラス転移温度55℃、軟化温度130℃)85部、着色剤としてC.I.Pigment Red57:1を5部、離型剤(カルナウバワックス、融点82℃)8部、帯電制御剤(ボントロンE84、オリエント化学工業株式会社)1部を混合分散機(商品名:ヘンシェルミキサー、三井鉱山株式会社製)にて3分間混合分散し、原料を得た。得られた原料を、二軸押出機(商品名:PCM−30、株式会社池貝製)を用いて溶融混練した。
この溶融混練物をカッティングミル(商品名:VM−16、オリエント株式会社製)で粗粉砕した後、ジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)にて微粉砕し、さらに風力分級機(ホソカワミクロン株式会社製)で分級し、平均粒径が6.9μm、変動係数CV値が22%である不定形のコア粒子を得た。
[シェル層材料調製工程]
樹脂微粒子として、体積平均粒径が0.1μmであるスチレン−ブチルアクリレート共重合体微粒子A(ガラス転移温度72℃、軟化温度126℃)を用意した。樹脂微粒子は、スチレンとアクリル酸ブチルとを重合したものを凍結乾燥して得た。また付着補助剤としてエタノールを用意した。
[コーティング工程]
容器内に液体を噴霧できる二流体ノズルを取付けた表面改質装置(商品名:ハイブリダイゼーションシステムNHS−1型、株式会社奈良機械製作所製)に、コア粒子100部と樹脂微粒子10部とを投入し、回転数8000rpmで10分間滞留させた後、二流体ノズルに圧縮エアを送り、付着補助剤としてエタノールを0.5g/分で噴霧するように調整し、40分間噴霧して、コア粒子の表面全面にシェル粒子のコーティングを行った。コーティング中の装置内温度を40℃〜65℃(コア粒子のガラス転移温度未満)に加温制御しながら、コーティングを行った。
コア粒子の表面全面に樹脂微粒子がコーティングされることによってシェル層が形成されたコア粒子を凍結乾燥させ、実施例1のトナーを得た。実施例1のトナーは、体積平均粒径が7.0μm、変動係数が26%であった。
(実施例2)
樹脂微粒子をスチレン−ブチルアクリレート共重合体微粒子B(ガラス転移温度64℃、軟化温度129℃)に変更した以外は実施例1と同様にして実施例2のトナーを得た。実施例2のトナーは、体積平均粒径が7.1μm、変動係数が27%であった。
(実施例3)
樹脂微粒子をスチレン−ブチルアクリレート共重合体微粒子C(ガラス転移温度65℃、軟化温度127℃)に変更した以外は実施例1と同様にして実施例3のトナーを得た。実施例3のトナーは、体積平均粒径が7.1μm、変動係数が27%であった。
(実施例4)
樹脂微粒子をスチレン−ブチルアクリレート共重合体微粒子D(ガラス転移温度52℃、軟化温度128℃)に変更した以外は実施例1と同様にして実施例4のトナーを得た。実施例4のトナーは、体積平均粒径が7.2μm、変動係数が33%であった。
(比較例1)
樹脂微粒子をスチレン−ブチルアクリレート共重合体微粒子E(ガラス転移温度64℃、軟化温度130℃)に変更した以外は実施例1と同様にして比較例1のトナーを得た。比較例1のトナーは、体積平均粒径が7.4μm、変動係数が30%であった。
(比較例2)
樹脂微粒子をスチレン−ブチルアクリレート共重合体微粒子F(ガラス転移温度82℃、軟化温度145℃)に変更した以外は実施例1と同様にして比較例2のトナーを得た。比較例2のトナーは、体積平均粒径が7.1μm、変動係数が30%であった。
(比較例3)
樹脂微粒子をスチレン−ブチルアクリレート共重合体微粒子G(ガラス転移温度81℃、軟化温度126℃、平均粒子径0.35μm)に変更した以外は実施例1と同様にして比較例3のトナーを得た。比較例3のトナーは、体積平均粒径が7.1μm、変動係数が40%であったが、シェル層の厚みは、0.05μm以上、0.5μm以下となる部分が表面積の80%未満であった。
(比較例4)
コーティング処理を施さず、実施例1のコア粒子作製工程で得られたコア粒子を比較例4のトナーとした。比較例4のトナーは、体積平均粒径が6.9μm、変動係数が22%であった。
実施例1〜4および比較例1〜4のトナーの製造条件を表1にまとめて示す。
実施例1〜4および比較例1〜4のトナー物性値を表2に示す。
以上のような実施例1〜4および比較例1〜4のトナーに対して、次のような評価を行った。
〈トナーの外添〉
実施例1〜4および比較例1〜4のトナー100部に、シランカップリング剤で疎水化処理された平均一次粒径20nmのシリカ粒子1.0部を混合して外添した。
〈二成分現像剤の作製〉
シリカ粒子が外添されたトナーと、体積平均粒径60μmのフェライトコアキャリアとを、トナー濃度が6%になるように調整して混合し、トナー濃度6%の二成分現像剤を作製した。
(評価)
実施例1〜4および比較例1〜4のトナーまたは実施例1〜4および比較例1〜4のトナーを含む二成分現像剤を用いて、以下の評価を行った。
[被覆状態]
シェル層の被覆状態は、トナーを常温硬化性のエポキシ樹脂に包埋して得られた硬化物を、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い、複数箇所切断して約100nmに超薄切片化し、ルテニウム染色したものを、透過型電子顕微鏡(TEM、商品名:H−8100、株式会社日立製作所製)によって20000倍に拡大してトナーの断面を撮影した。
シェル層は染色されて膜状態がはっきり分かり、コア粒子と区別が可能であるので画像解析ソフトを用いて撮影画像を解析し、トナーの周囲長及び、コア粒子を被覆しているシェル層の膜厚と被覆できている部分の長さを計測した。
まずシェル層の厚みが0.05μm以上0.5μm以下の部分が表面積の少なくとも80%を占めているか否か算出した。
次にトナー粒子の中心部から角度10度ごとに36本の直線を放射状に描き、シェル層と交わった部分からシェル層に垂直にその膜厚を計測した。計測値のうち厚みの最も薄いものから順に5つの計測値を選択して平均値Aを算出し、最も厚いものから順に5つの計測値を選択して平均値Bを算出した。
厚み範囲の評価基準は以下の通りである。
○:良好。厚みが0.05μm以上0.5μm以下の部分が表面積の80%以上。
×:不良。厚みが0.05μm以上0.5μm以下の部分が表面積の80%未満。
厚み差の評価基準は以下の通りである。
○:良好。A×2<B
×:不良。A×2≧B
[保存性]
外添したトナー100gをポリ容器に密閉し、50℃で48時間放置した後、トナーを取り出した。JIS K5101−12−1(見掛け密度)の方法で、目開き0.5mmのふるいに掛けて容器内にトナーを落とし、放置前と放置後のトナーの重量を測定し、見掛け密度を求めた。見掛け密度の放置前後での変化量を算出し、以下の評価基準で評価した。
放置前後の変化量が少ないほど、トナーがブロッキングを起こさず、保存性が良好であることを示す。
○:良好。密度変化量が10%未満。
×:不良。密度変化量が10%以上。
[現像剤の耐久性]
二成分現像剤を市販の二成分現像装置を有する複写機(商品名:MX-2300G、シャープ株式会社製)の現像ユニットにセットし、感光体上に現像されないように調整した状態で35℃の恒温中で現像装置のみを5時間連続駆動して凝集物の発生の有無を目視で確認した。評価基準は以下の通りである。
○:良好。凝集物発生なし
×:不良。凝集物発生あり
[評価用画像の形成]
二成分現像剤を、市販の複写機(商品名:MX-2300G、シャープ株式会社製)から定着装置を取除いて得た試験用複写機の現像装置に投入し、日本工業規格(JIS)P0138に規定されるA4判の記録用紙上に、トナー付着量が0.5mg/cm2になるように調整して、縦20mm、横50mmの長方形状のべた画像部を未定着の状態で形成した。外部定着機を用い、記録用紙の通紙速度を毎秒120mm(120mm/sec)として、形成された未定着トナー画像の定着を行い、評価用画像を形成した。外部定着機には、市販のフルカラー複写機(商品名:LIBRE AR−C260、シャープ株式会社製)から取出したオイルレス方式の定着装置を、加熱ローラの表面温度を任意の値に設定できるように改造したものを用いた。評価時の加熱ローラ表面温度は170℃に設定した。オイルレス方式の定着装置とは、加熱ローラにシリコーンオイルなどの離型剤を塗布することなく定着を行う定着装置のことである。
[耐高温オフセット性評価]
形成された評価用画像において、記録用紙の白地となるべき白地部に加熱ローラからトナー像が再転写されたか否かを目視によって観察することによって、高温オフセット現象が発生しているか否かを判断した。
この操作を、加熱ローラの表面温度を130℃から220℃まで5℃ずつ順次上昇させて繰り返し行い、高温オフセット現象が発生しない加熱ローラの表面温度の最高温度(以後、最高定着温度と呼ぶ)を求めた。
定着強度の評価方法としては、用紙の印字面を内側にして軽く折り曲げた後、折り曲げ部に所定の荷重を加え、定着画像の折り目をウエスで、軽くこすり、折り目部分に生じるトナーの脱落部分の幅(折り目に垂直方向の幅)の大小で評価した。
評価基準は以下の通り官能評価で実施した。折り目がつくが、像の欠落状態は、ないか、又は低いとした温度領域を求めた。耐高温オフセット性の評価を、以下のような基準で行った。
○:良好。最高定着温度が200℃以上。
×:不良。最高定着温度が200℃未満。
[非オフセット域評価]
耐高温オフセット性の評価と同様にして加熱ローラの表面温度を130℃から220℃まで5℃ずつ順次上昇させて画像を形成し、記録用紙にトナー像が定着されない低温オフセット現象と、記録用紙の白地となるべき白地部に加熱ローラからトナー像が再転写される高温オフセット現象とがいずれも発生しない非オフセット域を調べ、耐オフセット性について評価した。
非オフセット域とは、低温オフセット現象が発生しない加熱ローラの最低温度である最低定着温度(℃)と、高温オフセット現象が発生しない加熱ローラの表面温度の最高温度である最高定着温度(℃)との温度差から求められる。
定着強度の評価方法としては、用紙の印字面を内側にして軽く折り曲げた後、折り曲げ部に所定の荷重を加え、定着画像の折り目をウエスで、軽くこすり、折り目部分に生じるトナーの脱落部分の幅(折り目に垂直方向の幅)の大小で評価した。評価基準は以下の通り、官能評価で実施した。折り目がつくが、像の欠落状態は、ないか、又は低いとした温度領域を求めた。非オフセット域の評価を、以下のような基準で行った。
○:良好。非オフセット域が25℃以上。
×:不良。非オフセット域が25℃未満。
[画像濃度]
加熱ローラの表面温度が170℃のときに形成された画像について、反射濃度計(商品名:RD918、マクベス社製)を用いて、べた画像部の光学反射濃度を測定し、これを画像濃度とした。画像濃度の評価基準は以下の通りである。
○:良好。画像濃度が1.40以上。
×:不良。画像濃度が1.40未満。
[細線再現性(文字抜け)]
印字率5%の文字画像を印刷して、文字の欠けおよび抜けを目視により観察した。細線再現性の評価基準は以下の通りである。
○:良好。良好な細線再現性の画像が得られた。
×:不良。細線再現性が悪く、中抜けがある画像が得られた。
[クリーニング性]
印字率が5%のチャートを1000枚連続印字した後、感光体表面にフィルミングが発生しているか否かを目視によってクリーニング性を確認した。クリーニング性の評価基準は以下の通りである。
○:良好。フィルミングが発生していない。
×:不良。フィルミングが発生している。
[総合評価]
以上の保存性、定着性、耐久性、画像濃度評価、細線再現性およびクリーニング性の結果を合わせて、以下のような基準で総合評価を行った。
○:良好。評価結果に×がない。
×:不良。評価結果に×がある。
実施例1〜4および比較例1〜4の評価結果を表3に示す。
実施例1〜4のトナーは、全ての評価項目において良好であった。
比較例1および2のトナーは、コア粒子に樹脂微粒子が膜化してシェル層が得られているものの、厚み差が不十分であったため、定着性の評価項目において不良となった。
比較例3のトナーは、コア粒子に樹脂微粒子が膜化して得られるシェル層が不完全で、所々膜化していない部分が存在しており、膜厚0.05μm以上0.5μm以下となる部分が表面積の80%に達していなかった。そのため、保存性と耐久性、細線再現性の評価項目において不良となった。
また比較例4のトナーは、シェル層を形成していないため、保存性と耐久性、細線再現性の評価項目において不良となった。