JP4991185B2 - ポリアリールスルホン系重合体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
更に、ポリアリールスルフィド系重合体を酸化することによってポリアリールスルホン系重合体を得る場合、含フッ素重合体の鎖が切れて分子量が下がる傾向があるが、反応条件を適切なものとした酸化反応工程に供することにより、分子量を維持したまま、分子内のスルフィド結合をスルホン結合に変換するとことが可能となることも見いだした。
これらの知見によって上記課題をみごと解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
上記ポリアリールスルホン系重合体は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアリールスルホン系重合体である。
上記Ar′が芳香環を有することにより、上記ポリアリールスルホン系重合体の耐熱性がより向上する。また、Ar′が3価以上である場合は、上記ポリアリールスルホン系重合体が分岐構造を有することによって、複雑な立体構造を形成し、重合体がゲル化することによって、重合体として望ましい物性を得ることができないおそれがある。
(スルホン化率)=(ポリアリールスルホン系重合体中のスルホン化された硫黄原子の数)/(ポリアリールスルホン系重合体中のスルホン化された硫黄原子の数、及び、ポリアリールスルホン系重合体中のスルホン化されていない硫黄原子の数の和)
上記スルホン化率の上限としては、95%以下であることが好ましく、より好ましくは90%以下、更に好ましくは85%以下である。上記スルホン化率の下限としては、10%以上が好ましく、より好ましくは30%以上、更に好ましくは、50%以上である。上記硫黄原子のスルホン化率が10%未満であると、スルホン化による耐熱性の向上が不充分となるおそれがある。また、上記硫黄原子のスルホン化率が95%を超えると、酸化反応時の副反応により分子鎖が切断され、分子量が低下してしまうおそれがある。尚、ポリアリールスルホン系重合体のスルホン化率を上記範囲とするための酸化工程における反応条件については、後述する製造方法において説明する。
すなわち、本発明のポリアリールスルホン系重合体は、例えば、ポリアリールスルフィド系重合体を酸化して得ることができる。ポリアリールスルフィド系重合体は、後述する一般式(5)で表される繰り返し単位を有するポリアリールスルフィド系重合体を用いることができる。
この製造方法においては、上記ポリアリールスルホン系重合体を製造することができる限り、酸化方法等の製造方法が限定されるものではないが、後述するような製造方法における製造条件とすることによって、上記ポリアリールスルホン系重合体を好適に製造することができることとなる。
上記製造方法は、上述した本発明のポリアリールスルホン系重合体を製造する方法として好適であるが、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基とともにスルホン結合をもつ繰り返し単位を有するポリアリールスルホン系重合体を製造する方法である限り、上述した本発明のポリアリールスルホン系重合体以外の含フッ素重合体の製造方法として用いてもよい。
nは自然数であり、繰り返しの数を表す。上記反応式(14)からわかるように、本発明の反応工程は、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基とともにスルフィド結合をもつ繰り返し単位を有するポリアリールスルフィド系重合体を酸化してポリアリールスルホン系重合体とする工程を含むことを特徴とするものである。
(1)NMRスペクトルは、Varian製 Unity500(商品名、測定条件 H−NMR 500MHz、F−NMR 470MHz)を用いて測定した。
(2)IRスペクトルは、日本分光製 FT/OR−350型フーリエ変換分光光度計を用い、KBr錠剤法で測定した。
(3)溶剤溶解性は、25℃で各種溶媒3mLに合成したポリマー0.1gを加え、10分間攪拌し溶解性を評価した。
(4)熱的特性評価は、島津示差熱熱重量同時測定装置(島津製作所社製)を用いて、ガラス転移温度(Tg)、重量減少温度(5質量%減少、10%質量減少)を測定した。加熱速度は、窒素雰囲気下20℃/分とした。炭化収率は、窒素雰囲気下600℃においての量を測定した。
(5)固有粘度は、Ostwald−Fenske粘度計を用いて、NMP中0.5g/dLの濃度でかつ25℃測定した。
(6)接触角は、自動接触角計DCA−VZ型(協和界面科学社製)を用いて測定した。
ポリアリールスルフィド系重合体8F−PSO(BST)の合成
マグネチックスターラーと滴下漏斗を取り付け、窒素気流下、50mLの三口フラスコに10F−oxadiazole(0.2g、0.50mmol)、炭酸カリウム(0.079g、0.58mmol)及びDMF(4.0mL)を仕込んだ。25℃でDMF(2.6mL)に溶かしたBST(0.13g、0.5mmol)をゆっくり滴下し、15分攪拌した。重合終了後、ブレンダーで激しく攪拌している1%酢酸水溶液へ重合溶液を注いだ。析出したポリマーを濾別し、蒸留水、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。得られたポリマーをNMPに溶解し、メタノール中に投入し再沈殿を行い、ポリアリールスルフィド系重合体8F−PSO(BST)を得た。
8F−PSO(BST)を上記の測定方法で測定したところ、H−NMRスペクトルは図1、F−NMRスペクトルは図2、IRスペクトルは図3のようであった。更に、溶剤溶解性試験の結果を表1に示し、固有粘度、ガラス転移温度(Tg)、重量減少温度、炭化収率、接触角の測定結果を表2に示す。
ポリアリールスルホン系重合体8F−PSnO(BST)の合成
実施例1で合成された8F−PSO(BST)(0.20g、0.33mmol)と、30%過酸化水素水溶液(1.5mL)、50%の酢酸水溶液(2.2ml)をフラスコに仕込み、100℃で3時間還流した。反応溶液を水中に投入し、沈殿物をろ過後、メタノールで洗浄して減圧乾燥した。得られたポリマーをNMPに溶解しメタノール中に投入し再沈殿をおこない8F−PSnO(BST)を収率86.8%で得た。
8F−PSnO(BST)を上記の測定方法で測定したところ、H−NMRスペクトルは図4、IRスペクトルは図5のようであった。更に、溶剤溶解性試験の結果を表1に示し、固有粘度、ガラス転移温度(Tg)、重量減少温度、炭化収率、接触角の測定結果を表2に示す。
なお、実施例1で得たポリアリールスルフィド系重合体8F−PSO(BST)を下記化学式(15)、及び、実施例2で得たポリアリールスルホン系重合体8F−PSnO(BST)を下記化学式(16)で示し、それらとともに、実施例2の酸化工程の概略を示す。下記式中、nは繰り返し単位の数を表す。
ポリアリールスルフィド系重合体8F−PEKS(BST)の合成
10F−oxadiazoleの代わりにBPDEを用いた以外はすべて実施例1と同様にして、ポリアリールスルフィド系重合体8F−PEKS(BST)を得た。
8F−PEKS(BST)を上記の測定方法で測定したところ、H−NMRスペクトルは図6、F−NMRスペクトルは図7、IRスペクトルは図8のようであった。更に、溶剤溶解性試験の結果を表3に示し、固有粘度、ガラス転移温度(Tg)、重量減少温度、炭化収率、接触角の測定結果を表4に示す。
ポリアリールスルホン系重合体8F−PEKSn(BST)の合成
実施例3で合成されたF−PEKS(BST)を実施例2と同様にして、ポリアリールスルホン系重合体8F−PEKSn(BST)を収率80.1%で得た。
8F−PEKSn(BST)を上記の測定方法で測定したところ、H−NMRスペクトルは図6、F−NMRスペクトルは図7、IRスペクトルは図9のようであった。更に、溶剤溶解性試験の結果を表3に示し、固有粘度、ガラス転移温度(Tg)、重量減少温度、炭化収率、接触角の測定結果を表4に示す。
なお、実施例3で得たポリアリールスルフィド系重合体8F−PEKS(BST)を下記化学式(17)、及び、実施例4で得たポリアリールスルホン系重合体8F−PEKSn(BST)を下記化学式(18)で示し、それらとともに、実施例4の酸化工程の概略を示す。下記式中、nは繰り返し単位の数を表す。
ポリアリールスルフィド系重合体8F−PEKS(BET)の合成
BSTの代わりにBETを用いた以外はすべて実施例3と同様にして、ポリアリールスルフィド系重合体8F−PEKS(BET)を得た。
8F−PEKS(BET)を上記の測定方法で測定したところ、H−NMRスペクトルは図10、F−NMRスペクトルは図11のようであった。更に、溶剤溶解性試験の結果を表3に示し、固有粘度、ガラス転移温度(Tg)、重量減少温度、炭化収率、接触角の測定結果を表4に示す。
ポリアリールスルホン系重合体8F−PEKSn(BET)の合成
実施例5で合成された8F−PEKS(BET)を実施例3と同様にして、ポリアリールスルホン系重合体8F−PEKSn(BET)を収率80.5%で得た。
8F−PEKSn(BET)を上記の測定方法で測定し、溶剤溶解性試験の結果を表3に示し、固有粘度、ガラス転移温度(Tg)、重量減少温度、炭化収率、接触角の測定結果を表4に示す。
なお、実施例5で得たポリアリールスルフィド系重合体8F−PEKS(BET)を下記化学式(19)、及び、実施例6で得たポリアリールスルホン系重合体8F−PEKSn(BET)を下記化学式(20)で示し、それらとともに、実施例6の酸化工程の概略を示す。下記式中、nは繰り返し単位の数を表す。
実施例1で合成された8F−PSO(BST)(0.20g、0.33mmol)と30%過酸化水素水溶液(1.5mL)、50%の酢酸水溶液(2.2mL)をフラスコに仕込み、100℃で5時間還流した。反応溶液を水中に投入し、沈殿物をろ過後、メタノールで洗浄して減圧乾燥した。得られたポリマーをNMPに溶解しメタノール中に投入し再沈殿を行い、8F−PSnO(BST)を収率46.8%で得た。
得られた8F−PSnO(BST)はスルホン化時間を長くしたことにより、固有粘度が測定限界以下までに低下し、収率も著しく低下してしまった。
反応条件を調製し、スルホン化率を95%以下とすることで、ポリアリールスルホン系重合体の固有粘度の低下、すなわち分子量の低下を抑制することができ、70%以上という高収率でポリアリールスルホン系重合体を得ることができる。
ポリアリールスルフィド系重合体のスルフィド結合を酸化してスルホン結合にすることで耐熱性が9℃〜97℃と著しく上昇し、175℃〜227℃という非常に高いガラス転移温度を示すことが分かった。また、いずれのポリアリールスルフィド系重合体及びポリアリールスルホン系重合体は、優れた溶剤溶解性と高い熱分解温度を有し、フッ素を含有していることに起因して、高い撥水性を示した。
Claims (4)
- 前記一般式(1)中のAr′は、1個のスルフィド結合又はエーテル結合を介して2個の芳香環が結合した構造を有する炭素数12〜20の2価の有機基である
ことを特徴とする請求項1に記載のポリアリールスルホン系重合体。 - 請求項1又は2に記載のポリアリールスルホン系重合体の製造方法であって、
該製造方法は、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基とともにスルフィド結合をもつ繰り返し単位を有するポリアリールスルフィド系重合体を酸化してポリアリールスルホン系重合体とする工程を含み、
該酸化工程は、ポリアリールスルフィド系重合体の硫黄原子に対して1当量以上、100当量以下の酸化剤を用い、30〜200℃の反応温度、0.5〜48時間の反応時間でポリアリールスルフィド系重合体を酸化して、
ポリアリールスルホン系重合体の繰り返し単位中の硫黄原子のスルホン化率を10%以上、95%以下とする工程である
ことを特徴とするポリアリールスルホン系重合体の製造方法。
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