JP4990003B2 - 吸収性物品 - Google Patents

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Description

本発明は吸収性物品に関し、詳しくは、本発明はパンティライナー等の比較的少ない排泄体液を吸収するのに適した薄型の吸収性物品に関する。
おりものや汗、尿等の体液による下着の汚れを防止するために用いられるパンティライナーは、体液の排泄量が少ないときに日常的に使用される。そのため、高吸収性も重要であるが、特に長時間快適に使用できることが求められており、生理用ナプキンに比べて小型で薄く、しかも肌触りがよく、着用していても着用しないときと殆んど変わらない違和感のないものが好まれている。
その一方、高吸収性であることは必要とされないが、薄くても吸収能を有するものでなければならない。そのため、着用時に着用者の肌に当接する液透過性の表面シートと、着用時に下着に貼り付けられる液不透過性の裏面シートとの間に、液保持性の吸収体が配される。ここで、表面シートから吸収体への体液の移動は、両者が密に接触または近接することによって達成されるものであり、仮にこれらが分離した状態にある場合には体液の移動が充分に行われず、表面シートに体液が保持されて液漏れが生じてしまう。したがって、液吸収性を高めるためには表面シートと吸収体とを部分的に接合させて密着させる必要がある。
表面シートと吸収体とを接合させる方法として、ホットメルト型接着剤を用いる方法がある(例えば、特許文献1を参照。)。この方法は、凹部が形成された表面シート底面の凹部先端部のみにホットメルト型接着剤を塗工して吸収体に接着させる方法であり、凹部先端部のみに接着剤を塗工するので接着剤によって液移動が阻害されることがない。しかしながら、体液の移動に伴って接着剤が流れてしまい、表面シートが吸収体から剥がれてしまうことがあった。
また、接着剤を用いずに表面シートと吸収体とを接合または近接させる方法としては熱エンボス加工法が挙げられる。この方法は不織布を複合化する方法等多くの材料の接合に使用されており、不織布の接合の場合には、熱可塑性樹脂よりなる繊維よりなる複数のシートを(通常片側のロールに凸加工がなされている)一対の熱エンボスロール間に挿入し、部分的に熱融着や凹部を形成してシートを複合化するものである。特許文献2〜4では、この方法を熱融着性の材料よりなる表面シートと吸収体の接合または近接に適用しており、具体的には低密度の吸収体に表面シートを介して防漏溝やエンボス圧縮部のような凹部形成がなされており、凹部形成部分では表面シート成型と吸収体の高密度化による成型がおこなわれ、部分的に(主に底部において)比較的弱く接合される。
ところで、近年は、敏感肌の人が着用してもかぶれないように、着用時に着用者の肌に当接する表面シートが熱融着性を有しないコットン繊維のみからなるコットンシートで構成されたものが特に好まれている。このコットンシートは、コットンのようなセルロース系繊維が有する高い親水性に起因する優れた吸湿性を有するだけでなく、接着剤や熱融着性成分による結合点を繊維上に有しないシート製造方法(スパンレース法)のため、シートが柔軟かつ緻密に形成されているため着用者の皮膚への刺激が少ない。
しかしながら、コットンシートは非熱融着性であるため熱エンボス加工等の熱融着処理単独の加工を行いにくく、また、押し込み加工によっても成型されないため、従来と同様に熱エンボス加工では接合及び変形ができず、コットンシートを接合もしくは近接した状態とするには、粘着剤を使用するしかなかった。そこで、処理温度や処理圧力を上げて熱エンボス加工を行うと、表面シートや吸収体などの材料が破壊されて穴が開いたり切断されたりしていた。
また、熱融着性の繊維層と非熱融着性の繊維層とを重ね合わせてラミネート加工することで複合構造の不織布とすることは可能であるが、このように非熱融着性材料の繊維層と熱融着性材料の繊維層とを結合させるためには広い結合面積が必要であり、部分的に接合させた場合には、結合強度が弱く使用時に剥離が起こってしまうものであった。また、充分な強度を有して複合化した場合には、複合された材料は硬くなってしまうため、コットン独特の風合いを損ねてしまっていた。
特開平5−137752号公報 特開2001−178768号公報 特開2004−446号公報 特開2006−280683号公報
本発明は、接着剤を用いることなく非熱融着性の表面シートと熱融着性の吸収体とを部分的に接合させた吸収性物品を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、非熱融着性の表面シートと、一の線状熱可塑性ポリマー材料の周りが該熱可塑性ポリマー材料よりも融点の低い他の熱可塑性ポリマー材料で覆われた芯鞘構造の複合繊維で作られた吸収体とを重ね合わせて、前記の芯部を構成する熱可塑性ポリマー材料の融点よりも低くかつ前記の鞘部を構成する熱可塑性ポリマー材料の融点よりも高い温度にて前記吸収体側から加熱しながら前記表面シート側からエンボス加工を行ったところ、型押しされた部分に相当する領域における前記の鞘部を構成する熱可塑性ポリマー材料のみが溶融し加圧されフィルム化してフィルム状熱融着部が形成され、それと同時に、該フィルム状熱融着部が前記表面シートに対してその非熱融着性繊維の凹凸に密着してラミネート層を形成し、該フィルム状熱融着部により前記表面シートと前記吸収体とが低温加熱で接合されることを見出した。本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
すなわち、本発明は、
(1)非熱融着性繊維で形成された表面シートと、裏面シートと、それら両シートの間に配置された吸収体とを有する吸収性物品であって、
前記吸収体における前記表面シート側の表面が熱融着性材料で形成されているか、又は前記吸収体における前記表面シート側の表面に熱融着性を有するシートからなる熱融着性層を有しており、
前記表面シートと前記吸収体とが、その間に部分的にフィルム状熱融着部を形成して接合している
ことを特徴とする吸収性物品、および
(2)非熱融着性繊維で形成された表面シートと、裏面シートと、それら両シートの間に配置された吸収体とを有する吸収性物品の製造方法であって、
前記吸収体として、少なくとも一面が熱融着性材料で形成されている吸収体、又は熱融着性を有するシートを接合させて熱融着性層を設けた吸収体を用い、
前記表面シートと前記吸収体とを、前記吸収体における熱融着性材料で形成されている面または前記吸収体に設けられた熱融着性層が前記表面シートと対向するように重ね合わせ、
押圧手段で押圧することによって、前記表面シートと前記吸収体との間に部分的にフィルム状熱融着部を形成して、前記表面シートと前記吸収体とを接合させ、
前記表面シートに接合された前記吸収体を、前記裏面シートに接合させる
ことを特徴とする吸収性物品の製造方法
を提供することにより前記目的を達成したものである。
本発明における「フィルム状熱融着部」とは、樹脂が溶融固化してフィルム状に熱融着して、接合作用を奏する部分をいう。
本発明の吸収性物品は、着用時に着用者の肌に当接する表面シートとしてコットン等の親水性の高い材料を用いているため吸湿性に優れ、かつ、コットン特有のソフトな肌触りを有するため着用者の皮膚を刺激することが少なく、敏感肌の人が着用してもかぶれにくい。
本発明の吸収性物品は、吸収体における表面シート側表面が熱融着性材料で形成されているか、又は吸収体における表面シート側表面に熱融着性を有するシートからなる熱融着性層を有しており、前記表面シートと前記吸収体との間に部分的に溶融され加圧されてフィルム化したフィルム状熱融着部を有する。このフィルム状熱融着部が非熱融着性の表面シートに対してその非熱融着性繊維の凹凸に密着してラミネート効果を有しているため、該フィルム状熱融着部により前記表面シートと前記吸収体とが、接着剤を用いることなく接合している。また、このような接合により、コットンのような非熱融着性繊維によるシートであっても、凹状に成型(形状維持)されている。そのため、本発明の吸収性物品は、コットン等の非熱融着性材料を表面シートに用いながらも、表面シートと吸収体とが密着しているので体液を表面シートから吸収体へ素早く移動させることができ、表面シートからの液漏れを防止することができる。また、本発明の吸収性物品は、表面シートと吸収体とを部分的に接合させているため、吸収性物品本体の剛性を上げることなく高い柔軟性を有し、接合部が凹部の底面に形成されているため、表面シートのふんわりとした風合いを損ねることがない。
本発明の吸収性物品の製造方法によれば、接着剤を用いることなく、低温加熱で、非熱融着性繊維で形成された表面シートと吸収体とを密着させることができる。
以下、本発明の好ましい一実施態様について、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図の説明において同一の要素には同一の符号を付す。
図1は、本発明の吸収性物品の好ましい一実施態様としてのパンティライナーを示す斜視図である。図2は、図1のII−II線矢視拡大断面図である。本発明の吸収性物品(パンティライナー)1は、非熱融着性繊維で形成された表面シート2と、裏面シート3と、それら両シートの間に配置された吸収体4とを有する。表面シート2、裏面シート3及び吸収体4の三者はいずれも同形であり、それらの周縁部5においてヒートシールおよび接着剤によって接合されている。
パンティライナー1は、下着のクロッチ部に適合するような幅狭で小型の形状である。裏面シート3の外面(着衣当接面)には、本発明の吸収性物品1を下着に固定し、着用中のズレを防止するための粘着剤が貼付されており(図示せず)、この粘着剤は、使用前においては剥離シート6によって覆われている。
パンティライナー1は、その厚みが好ましくは0.5〜2mm、特に好ましくは0.5〜1mmという薄型になっている。ここでいう厚みとは、パンティライナー1における最も厚い部分での厚みをいう。パンティライナー1の厚みは、例えばピーコック製卓上厚みゲージ(品番)によって、適当な大きさの測定用プレートを載せて2.5g/cm2荷重下で測定される。
表面シート2は、着用時に着用者の肌に当接する液透過性のシートであり、柔らかい感触の非熱融着性繊維からなる不織布で形成されている。ここで「非熱融着性繊維」とは、加熱しても溶融せず融着しない繊維をいう。非熱融着性であることにより、本発明の吸収性物品の製造中に加熱されても繊維同士が融着することなく柔らかい感触の風合いを保持することができる。本発明における表面シートに用いられる非熱融着性繊維は、非熱融着性の繊維を好ましくは90質量%以上100質量%以下、より好ましくは95質量%以上100質量%以下、特に好ましくは100質量%含有する。本発明における表面シートに用いられる非熱融着性繊維中に熱融着性繊維を含有してもよいが、30質量%以上含有すると非熱融着性繊維により得られる吸湿性能が低下し、10質量%を超えて含有すると表面シートがスパンレース法による緻密な構造が得られにくく、風合いやパターニングの鮮明性を損ない、シートの光沢感が異なるようになるため好ましくない。
本発明における表面シートに用いられる非熱融着性繊維は天然繊維でも合成繊維でもよく、具体例としては、例えばコットン繊維、絹繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維等の天然繊維や再生繊維、アセテートレーヨンのような半合成繊維などが挙げられる。
本発明では、表面シート2は、天然コットン100質量%からなる非熱融着性繊維で形成されていることが特に好ましい。コットンは親水性が非常に高く、粘性の高いおりものもしっかりと吸収することができる優れた吸収性を有する。また、コットン特有のソフトな肌触りを有しており、着用者の皮膚を刺激することがなく、敏感肌の人が身に着けてもかぶれにくいという優れた特性を有する。
また、表面シートに用いられる非熱融着性繊維の繊度は、良好な風合い及び柔軟性の観点から1〜6dtexが好ましく、2〜4dtexがより好ましい。天然繊維においては、繊維を選り分けて使用することが困難であるため、繊度を示すことはできないが、通常の入手可能な繊維をそのまま使用することができる。
本発明における表面シート2に用いられる非熱融着性繊維からなる不織布は、任意の方法により製造することができる。ただし、非熱融着性繊維を用いるため、繊維同士を熱融着させるサーマルボンド法やスパンボンド法を採用することはできない。本発明では、高圧水流により繊維同士を交絡させるスパンレース法(水流絡合法)により表面シート2に用いられる不織布を製造している。
表面シート2に用いる非熱融着性繊維は、熱に対する耐性が高く、本発明の実施範囲では溶融や容易に変形を起こすような軟化状態とならない。このため、熱融着性材料より形成されたシートでは、樹脂の溶断や軟化による断面形状の変化が起こらず、ラミネート層の接着材料として好ましい。
特に、コットンシートは平面的断面形状を有するコットン繊維が重なった形状であることおよびシートの上面から下面に連通する隙間を殆ど有しない構造である点から断熱性および熱融着性材料との接着性に優れ、熱エンボスロールの凸部では圧力下の接触によって熱が伝わるが、他の部位ではコットンシートに接触しても熱が伝わり難いという理由により後述のフィルム状熱融着部42の形成を安定化することができる。
表面シート2の坪量は、18〜60g/m2であることが好ましく、20〜40g/m2程度であることがより好ましい。
表面シート2の厚さは、0.1〜0.5mmであることが好ましく、0.2〜0.3mmであることがより好ましい。
裏面シート3としては、液不透過性又は液難透過性のシートであれば、吸収性物品において常用されているシートを特に制限なく用いることができる。また、吸収性物品が体温で温められることによって生じる水蒸気を外部に放出してムレを防止するために、透湿性(水蒸気透過性)であることが好ましい。
裏面シート3は、単独のシートであってもよく、複合シートであっても良い。好ましい形態としては、フィルム単独や、フィルムと不織布とを貼り合わせたもの(着衣側に不織布が存在)、撥水性の複数の不織布を組み合わせたもの(例えば、スパンボンド不織布(S)/メルトブローン不織布(M)/スパンボンド不織布(S)が積層されて互いに接合されたSMS不織布など)等が挙げられる。液不透過性のフィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、或いはエチレン−酢酸ビニル共重合体やポリエチレン−ポリ酢酸ビニル複合フィルム等のポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。
また、透湿性とするために、熱可塑性樹脂と、これと相溶性のない無機フィラー(炭酸カルシウム等)を溶融混練して押し出したフィルムを所定の寸法に延伸して微細孔を開けた多孔質フィルムを用いることもできる。
裏面シート3の坪量は、15〜60g/m2であることが好ましく、20〜45g/m2程度であることがより好ましい。多孔質フィルムを用いる場合、多孔質フィルムが十分な強度を有するために坪量は30〜45g/m2であることが好ましい。また、無機フィラー配合量は、フィルム全体の質量に対するフィラーの質量%として、好ましくは30〜65質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
裏面シート3の厚さは、10〜90μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。
本発明の吸収性物品は、薄型で、パンティライナー等の比較的少ない排泄体液を吸収するために日常的に使用されるのに適したものである。そのため、吸収体4は、少ない排泄体液を吸収するのに十分な吸収性を有していればよく、むしろ日常的に着用する際に着用違和感のないように薄手の吸液性素材から構成されていることが好ましい。
本発明における吸収体4は、表面シート2側の表面が熱融着性材料で形成されているか、又は表面シート2側の表面に熱融着性を有するシートからなる熱融着性層41が設けられている。すなわち、本発明における吸収体4は、表面シート2側の表面に、表面シート2と接合させるためのフィルム状熱融着部42を形成しうる熱融着性材料が用いられている。図2は、吸収体4における表面シート2側の表面に熱融着性を有するシートからなる熱融着性層41が設けられた好ましい一実施態様を示している。
本発明における吸収体4は、少なくとも表面シート2側の表面に熱融着性材料が用いられていればよく、その他の部分は特に限定されず熱融着性材料でなくともよい。また、熱融着性材料からなる熱融着性を有するシートを配して熱融着性層41を設ける場合には、熱融着性層41以外の部分は特に限定されず熱融着性材料でなくともよい。例えば、吸収体4の表面シート2側の面を芯鞘構造複合繊維(熱融着性繊維)の層とし、裏面シート3側の面を、熱融着性のない繊維(非熱融着性繊維)や、前記熱融着性繊維よりも熱融着温度の高い熱可塑性樹脂を多量に含む繊維の層として積層させた複合構造の不織布を用いることもできる。また、吸収体4に熱融着性層41を固定する方法は特に限定されず、例えば接着剤を用いてもよい。
本発明における吸収体4に用いられる熱融着性材料(シート)としては、高融点成分と低融点成分よりなる分割型繊維や高融点繊維と低融点繊維が配合されたウェブ等高融点成分と低融点成分が配合されたシートを用いることができ、好ましくは、繊維断面における繊維中央部分が熱可塑性ポリマー材料であり、その周りが該熱可塑性ポリマー材料よりも融点の低い他の熱可塑性ポリマー材料で覆われた芯鞘構造の複合繊維からなる熱融着性の不織布が用いられる。具体的には、例えば、芯部がポリエチレンテレフタレート(融点250〜270℃)で鞘部がポリエチレン(融点120〜140℃)の芯鞘構造複合繊維を用い、サーマルボンド法などの熱処理によって繊維の交点において鞘部の低融点繊維を熱融着させて得られた不織布を用いることが好ましい。芯鞘構造の複合繊維に用いることができる材料は、芯部としては例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられ、鞘部に用いられる材料としては例えば、ポリエチレン(融点120〜140℃)、低融点型ポリエチレンテレフタレート(融点130℃程度)、ポリプロピレン(融点160℃程度)等が挙げられる。
吸収体4の表面シート側を構成する繊維の繊度は、吸収性物品にクッション感を与える観点から1.0〜8.0dtexが好ましく、2.0〜5.0dtexがより好ましい。高融点成分と低融点成分の容積比は、フィルム状融着部の接着性及び強度の観点から2:1〜2:5であり、芯鞘構造の複合繊維の場合、鞘部と芯部の容積比は、同様の観点から2:1〜1:2が好ましく、4:3〜3:4がより好ましい。芯鞘構造繊維では、高融点成分と低融点成分とが1本の繊維中に配合されているため、接着性及び強度の両立を達し易い。
吸収体4の坪量は、好ましくは15〜70g/m2、より好ましくは25〜50g/m2、特に好ましくは30〜35g/m2程度である。パンティライナーという用途においては、通常、吸収体4は一枚の不織布からなることが好ましいが、風合いを損なわない範囲であれば複数枚の不織布を用いることも可能である。この場合には、不織布の合計の坪量が前記の範囲内であることが好ましい。
吸収体4の厚さは、0.3〜1.0mmであることが好ましく、0.4〜0.7mmであることがより好ましい。このほか吸収性のあるシート体を吸収体4とは別に用いることができる。
表面シート2と吸収体4との接合につき、図3及び4を参照しながら説明する。図3は、図2の部分拡大断面図である。図4は、別の好ましい一実施態様における部分拡大断面図である。
表面シート2と吸収体4とは、部分的に複数設けられたフィルム状熱融着部42を形成して接合している。フィルム状熱融着部42は、吸収体4の表面シート側表面または前記熱融着性層41の熱融着性樹脂の低融点成分が、エンボス加工時の熱と圧力によって表面シート側の面に軟化・移動し、低融点成分による樹脂層が形成され、該樹脂層が溶融固化してフィルム状に熱融着して、接合作用を奏する部分である。スパンレース法で作成された表面シートが非熱融着性材料で緻密に形成されているため、熱による風合い等の変化が少なく、前記低融点成分の軟化・移動に対し堤防のように樹脂の移動を押し留め、表面シートの裏面形状に適合させ易い。この傾向は、コットン繊維のような平面的断面形状を有する繊維を使用すると、より顕著に効果が発現される。そのため、このフィルム状熱融着部42が、表面シート2の非熱融着性繊維の凹凸に密着してラミネート層となり、該フィルム状熱融着部42により表面シート2と吸収体4とが低温加熱で接合される。ここで、低温加熱とは低融点成分が軟化・移動が可能な程度の条件であることを意味し、該条件下では、熱融着性樹脂の高融点成分の(主に断面形状の)変形がある場合はあるものの、吸収体4の表面シート側表面または前記熱融着性層41の強度等の物理的特性はあまり影響を受けないため、接合部分が切断したり、接合部分ごと表面シートないしは吸収体の一方から引き剥がされる等の現象が起こらず、表面シートと吸収体の接合が安定化される。
フィルム状熱融着部42は、接合箇所が部分的であるため、吸収性物品1の剛性を上げることがない。また、表面シート2と吸収体4とが密着した状態で固定されているため、体液を表面シート2から吸収体4へ素早く移動させることができ、表面シート2からの液漏れを防止することができる。
押圧手段によって形成されるフィルム状熱融着部42のパターンは特に限定されず、ドット状パターンや長手方向に連続する線状パターンであってもよく、模様であってもよい。すなわち、表面シートに、図1に示したような複数の凹部20(ドット状パターン)を設けなくてもよい。
図3に示すように、表面シート2には、複数の凹部20が吸収体4側が底部となるように形成されていることが好ましい。この凹部20の下部もしくは下面(該凹部の底部)21は、吸収体4におけるフィルム状熱融着部42と一体化して接合する。このため、表面シート2と吸収体4との接触面積が増加して体液の吸収体4への移行が凹部の側壁部23を通じて速やかに行われやすくなる。さらに、凹部20によって、体液が凹部に集まり易いこと、及び吸収体4の表面シート側表面または前記熱融着性層41の繊維密度に差が設けられ、繊維密度が疎である肌当接部分から繊維密度が密である吸収体側部分へと体液が速やかに移動しやすく、肌当接面におけるベタつきを防止できるという作用を有する。
また、図4に示すように、凹部の底部21が開孔し、この開孔した凹部20から吸収体4が直接表面に露出していてもよい。この態様では、凹部20の下部における開孔端部縁22が吸収体4におけるフィルム状熱融着部42と一体化して接合する。凹部20に入り込んだ体液は、凹部の側壁部23を通じて吸収体4へ移行し、かつ、開孔した凹部20の底部に露出した吸収体4へ移行する。吸収した体液の遮蔽性を高める観点からは、凹部の底部に開孔は形成されていないほうが良いが、粘性の高い体液成分を肌接触面から遠ざける観点からは、開孔部が形成されていることが好ましい。
また、表面シート2と吸収体4とは、フィルム状熱融着部42以外の部位で接着剤によって補助的に固定されていてもよい。ただし、この場合、補助的に固定される部位の総面積がフィルム状熱融着部42の総面積の1/10以下であることが好ましい。また、接着剤が表面シートに入り込んで表面に析出するような風合いを損ねることがないように、接着剤、接着剤塗工量やエンボス加工条件を設定することが好ましい。この補助的な固定によって、剥がれる起点を除去することができる。
裏面シート3と吸収体4とは、ヒートシールや超音波、接着剤等の任意の方法によって、周囲や全体を接着される。例えば、接着剤の場合は、スロットスプレー法、スパイラルスプレー法、薄膜塗工等により、オレフィン系ホットメルト型接着剤、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体系接着剤、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)共重合体系接着剤などが用いられる。また、裏面シート3及び吸収体4が両方とも不織布で構成されている場合には、裏面シート3と吸収体4との間に熱風を通過させて熱融着させることもできる。
裏面シート3の外面(着衣当接面)に塗布される着用中のズレを防止するための粘着剤としては、吸収性物品において常用されているズレ止め用粘着剤を用いることができる。該粘着剤は、裏面シート3の外面(着衣当接面)の全面に、又は帯状等部分的に塗布される。該粘着剤としては、水添スチレン・ブタジエンゴム、水添石油系樹脂、パラフィン系オイル等を配合したゴム系粘着剤が好ましく使用される。
次に、本発明の吸収性物品の製造方法について説明する。
本発明の吸収性物品の製造方法は、吸収体4として、少なくとも一面が熱融着性材料で形成されている吸収体4、又は熱融着性を有するシートを接合させて熱融着性層41を設けた吸収体4を用い、非熱融着性繊維で形成された表面シート2と吸収体4とを、前記吸収体4における熱融着性材料で形成されている面または前記吸収体に設けられた熱融着性層41が前記表面シート2と対向するように重ね合わせ、吸収体4側から加熱しながら前記表面シート2側から押圧することによって、前記表面シート2と前記吸収体4との間に部分的にフィルム状熱融着部42を形成して、前記表面シート2と前記吸収体4とを接合させた後、前記表面シート2に接合された前記吸収体4を、前記裏面シート3に接合させることを特徴とする。
まず、非熱融着性繊維で形成された表面シート2と吸収体4とを接合する。吸収体4としては、少なくとも一面が熱融着性材料で形成されている吸収体4、又は熱融着性を有するシートを接合させて熱融着性層41を設けた吸収体4を用いる。
表面シート2と吸収体4とを、前記吸収体における熱融着性材料で形成されている面または前記吸収体に設けられた熱融着性層が前記表面シートと対向するように重ね合わせ、表面シート2側からもしくは表面シート2側および吸収体4側から加熱しながら表面シート2側から接合部にあたる部分を押圧する。
加熱は表面シート2側からの加熱が吸収体4側よりも高いことが好ましい。これは、本発明における非熱融着性繊維で形成された表面シート2は高い断熱性を示すため、表面シート2側から加熱しても、熱融着性繊維で形成されたシートの付着が起こりにくいためであり、仮に表面シート側の加熱温度が吸収体4の低融点成分の融点を超えていたとしても、吸収体4に伝わる熱は断熱層である表面シート2によって低下するためである。また、表面シート2が断熱性を示すことによって、接合部とする部位以外に大きな圧力が加わらないため、表面シート2及び吸収体4の接合部以外の部分には、熱による影響を与えにくいという特徴も有する。一方、圧力の加わる接合部では、効果的に加熱の影響を与えることができるため、比較的低温でフィルム状熱融着部42を安定して形成することができる。
加熱温度は、圧力下であるため吸収体4に用いられる熱融着性材料の低融点成分の軟化点以上融点以下の温度が加われば良いが、表面シートが耐熱性である点および生産性を考慮すると、好ましくは熱融着性材料の融点の−20〜30℃程度の(装置の)表面温度である。低融点成分の融点以上の温度が加わると、表面シートを通して低融点成分が表面に析出しやすくなり、製造トラブルの要因となり易い。
押圧する手段は特に限定されないが、1対以上のロールを有するエンボス加工を用いることが好ましい。エンボスのパターンは特に限定されず、ドット状パターンや線状パターンもしくは模様、またはこれらの組み合わせ等、様々なパターンであってよい。用いるロールは、表面シート2側は凸部を有していることが好ましいが、吸収体4側のロールでは、表面シートの凸形状に併せた位置で凸部や凹部を形成してもよいが、金属製やロール表面がゴム・綿シートなどのフラットロールが好ましい。また、表面シート側の凸部の高さは、ロール表面の温度制御の容易さ、得られる表面シート2と吸収体4へのダメージのなさの観点から、表面シートと吸収体とを重ねた厚みの0.5以上が好ましく、より好ましくは0.8〜2、さらに好ましくは1〜1.5である。
吸収体4に用いられる熱融着性材料の軟化点以上に部分的に加熱・加圧することで、加熱・加圧された部分の熱融着性材料の低融点成分は樹脂移動が可能な程度に軟化(場合によっては一部溶融)され、表面シート2の非熱融着性繊維の凹凸に密着させる。そのまま前記熱融着性材料の軟化点以下とすることにより熱融着性材料の薄膜(フィルム状熱融着部42)が部分的に形成される。このフィルム状熱融着部42は、表面シート2の非熱融着性繊維の凹凸に密着してラミネート層を形成して、表面シート2と吸収体4とを接合する。
フィルム状熱融着部42は部分的に形成されているので、体液の吸収体4への吸収を阻害せず、また、吸収性物品本体の剛性を上げることなく高い柔軟性を付与する。
表面シート2と吸収体4とを接合させた後、前記表面シート2に接合された吸収体4に、ずれ止め用粘着剤、剥離シート6がつけられた裏面シート3が貼り合わされる。また、接合後の吸収体4に、裏面シートの張り合わせ前に異なる吸収材料(例えば高吸収性粒子を含んだ吸収シート)を吸収体4と裏面シートの間の位置に配しても良い。以後、プレスロール、カッター等を経て、最終製品である吸収性物品が得られる。
本発明の吸収性物品は、上記の実施態様に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。例えば、本発明の吸収性物品は、脇パッド、母乳パッド、軽失禁パッド等にも適用することができる。
図1は、本発明の吸収性物品の好ましい一実施態様としてのパンティライナーを示す斜視図である。 図2は、図1のII−II線矢視拡大断面図である。 図3は、図2の部分拡大断面図であり、表面シートに設けられた凹部の底部が吸収体におけるフィルム状熱融着部と接合している状態を示す。 図4は、別の好ましい一実施態様における部分拡大断面図であり、表面シートに設けられた凹部の底部が開孔しており、該凹部の開孔端部縁が吸収体におけるフィルム状熱融着部と接合している状態を示す。
符号の説明
1 吸収性物品(パンティライナー)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5 周縁部
6 剥離シート
20 凹部
21 凹部の底部
22 凹部の開孔端部縁
23 凹部の側壁部
41 熱融着性層
42 フィルム状熱融着部

Claims (7)

  1. 非熱融着性繊維で形成されたスパンレース不織布からなる表面シートと、裏面シートと、それら両シートの間に配置された吸収体とを有する吸収性物品であって、
    前記吸収体おける表面シート側の表面が、高融点成分と低融点成分よりなる熱融着性材料で形成されているか、又は前記吸収体における前記表面シート側の表面に高融点成分と低融点成分よりなる熱融着性を有するシートからなる熱融着性層を有しており、
    該熱融着材料の表面を、前記熱融着性材料の低融点成分に、その軟化点以上融点以下の温度が加わる温度で吸収体側から加温しながら、表面シート側からエンボス加工を行い、
    前記表面シートと前記吸収体とが、その間に部分的にフィルム状熱融着部を形成して接合していることを特徴とする吸収性物品。
  2. 前記非熱融着性繊維がコットン繊維のみからなることを特徴とする請求項1記載の吸収性物品。
  3. 前記表面シートに複数の凹部が前記吸収体側が底部となるように形成されており、該凹部の下部もしくは下面が前記フィルム状熱融着部と一体化して接合していることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収性物品。
  4. 前記表面シートに複数の凹部が前記吸収体側が底部となるように形成されており、該凹部の底部が開孔しており、該凹部の下部における開孔端部縁が前記フィルム状熱融着部と一体化して接合し、前記吸収体が前記の表面シートの開孔から直接表面に露出していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  5. 前記の表面シートと吸収体とが、前記フィルム状熱融着部以外の部分で接着剤によって補助的に固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  6. 前記の接着剤によって補助的に固定される部分の総面積が、前記フィルム状熱融着部で接合している部分の総面積の1/10以下であることを特徴とする請求項5記載の吸収性物品。
  7. 非熱融着性繊維で形成されたスパンレース不織布からなる表面シートと、裏面シートと、それら両シートの間に配置された吸収体とを有する吸収性物品の製造方法であって、
    前記吸収体として、少なくとも一面が高融点成分と低融点成分よりなる熱融着性材料で形成されている吸収体、又は高融点成分と低融点成分よりなる熱融着性を有するシートを接合させて熱融着性層を設けた吸収体を用い、
    前記表面シートと前記吸収体とを、前記吸収体における熱融着性材料で形成されている面または前記吸収体に設けられた熱融着性層が前記表面シートと対向するように重ね合わせ、
    該熱融着材料の表面を、前記熱融着性材料の低融点成分に、その軟化点以上融点以下の温度が加わる温度で吸収体側から加温しながら、表面シート側からエンボス加工を行い、前記表面シートと前記吸収体との間に部分的にフィルム状熱融着部を形成して、前記表面シートと前記吸収体とを接合させ、
    前記表面シートに接合された前記吸収体を、前記裏面シートに接合させる
    ことを特徴とする吸収性物品の製造方法。
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