JP4989360B2 - 作業車の走行変速構造 - Google Patents

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Description

本発明は、作業車の走行変速構造に関する。
作業車では例えば特許文献1に開示されているように、エンジン(特許文献1の図1の1)の下手側に、複数の変速位置(特許文献1の図1の21,22,23,24)を備えた走行用の変速装置(特許文献1の図1の10)と、走行用の油圧クラッチ(特許文献1の図1の26,27)とを直列に配置したものがある。
特許文献1では、変速装置のある変速位置が伝動状態に操作され(他の変速位置は遮断状態)、油圧クラッチが伝動状態に操作された走行状態において、変速指令が発せられると、伝動状態に操作されている変速装置の変速位置が遮断状態に操作され(特許文献1の図5のA3参照)、変速指令に対応する変速装置の変速位置が伝動状態に操作される(特許文献1の図5のA1参照)。これと同時に、油圧クラッチの作動圧が所定低圧(特許文献1の図5のP3)に減圧操作され、油圧クラッチの作動圧が昇圧操作される(特許文献1の図5のA2参照)。
前述のように、油圧クラッチの作動圧を所定低圧に減圧操作し、油圧クラッチを半伝動状態とすることにより、エンジンの動力が走行装置(車輪等)にある程度伝達されるようにして、走行負荷による変速時の機体の走行速度の低下を抑えているのであり、その後に油圧クラッチの作動圧が昇圧操作された際(特許文献1の図5のP2)の変速ショックを抑えている。
油圧クラッチの作動圧を昇圧操作する場合、油圧クラッチの作動圧を零ではなく所定低圧から昇圧操作するので、油圧クラッチの作動圧が伝動状態の作動圧に素早く昇圧操作される。
特開平8−244486号公報
特許文献1において変速を行う場合、例えば走行負荷が比較的小さい状態や比較的高速で走行している状態では、油圧クラッチの作動圧を所定低圧に減圧操作した際に、エンジンの動力が走行装置(車輪等)に伝達されすぎることになり、変速ショックが発生することがある。
この場合、油圧クラッチの作動圧を所定低圧に減圧操作した際に、所定低圧を十分に低いものに設定して、エンジンの動力が走行装置(車輪等)に伝達されすぎないように構成することが考えられるが、所定低圧を十分に低いものに設定して、油圧クラッチが殆どつながっていない状態で、エンジンの動力が走行装置(車輪等)に少しだげ伝達されるように制御することは、実際には困難である。
本発明は、複数の変速位置を備えた走行用の変速装置と走行用の油圧クラッチとを直列に配置した作業車の走行変速構造において、油圧クラッチの作動圧が所定低圧に減圧操作され、昇圧操作されるように構成した場合、変速ショックの発生が抑えられるように構成することを目的としている。
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は作業車の走行変速構造において次のように構成することにある。
エンジンの下手側に、複数の変速位置を備えた走行用の変速装置と走行用の油圧クラッチとを直列に配置する。変速指令に基づいて、伝動状態されている変速装置の変速位置を遮断状態し、変速指令に対応する変速装置の変速位置を伝動状態する第1制御手段を備える。変速指令に基づいて、油圧クラッチの作動圧を所定低圧に減圧し、油圧クラッチの作動圧を昇圧する第2制御手段を備える。第2制御手段の作動時にエンジンの回転数を低下し、復帰する回転数制御手段を備える。第1制御手段は、伝動状態とされている変速装置の変速位置に相当する変速指令前の変速クラッチについて、伝動状態の作動圧から遮断状態の作動圧に減圧することで、伝動状態とされている変速装置の変速位置を遮断状態とし、変速指令に対応する変速装置の変速位置に相当する変速指令後の変速クラッチについて、遮断状態の作動圧から伝動状態の作動圧に昇圧することで、変速指令に対応する変速装置の変速位置を伝動状態とし、変速指令前の変速クラッチについての減圧と変速指令後の変速クラッチについての昇圧とを重複して実行する重複時間を設ける形態で、変速指令前の変速クラッチにおける作動圧の減圧及び変速指令後の変速クラッチにおける作動圧の昇圧を行うように構成してある。第2制御手段は、重複時間中に油圧クラッチの作動圧を所定低圧に減圧し、且つ、重複時間における終了時点以降に油圧クラッチの作動圧を昇圧してある。回転数制御手段は、重複時間における開始時点以前にエンジンの回転数を低下し、且つ、重複時間における終了時点以降にエンジンの回転数を復帰してある
(作用)
本発明の第1特徴によると、変速指令に基づいて、伝動状態されている変速装置の変速位置が遮断状態されて、変速指令に対応する変速装置の変速位置が伝動状態され、油圧クラッチの作動圧が所定低圧に減圧された場合、エンジンの回転数が低下される。
これにより、油圧クラッチの作動圧を所定低圧に減圧して油圧クラッチを半伝動状態するのに加えて、エンジンの回転数を低下してエンジンの動力を抑えることにより、エンジンの動力が走行装置(車輪等)に伝達されすぎないようにすることができる。この後、油圧クラッチの作動圧が昇圧されて、エンジンの回転数が復帰される。
本発明の第1特徴によると、油圧クラッチの作動圧を所定低圧に減圧した際に、所定低圧を十分に低いものに設定しなくても、エンジンの動力が走行装置(車輪等)に伝達されすぎないようにすることができる。これにより、油圧クラッチの作動圧を所定低圧に減圧した際に、エンジンの動力が走行装置(車輪等)に少しだげ伝達されるように制御することが容易に行える。所定低圧を高低に制御したり、エンジンの回転数を高低に制御することにより、作業車の走行状態や作業地の状態に応じて、走行装置(車輪等)に伝達される動力を適切に変更及び設定することができる。
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、複数の変速位置を備えた走行用の変速装置と走行用の油圧クラッチとを直列に配置した作業車の走行変速構造において、変速時に油圧クラッチの作動圧を所定低圧に減圧し圧するのに加えて、エンジンの回転数を低下し帰することにより、油圧クラッチの作動圧を所定低圧に減圧した際に、エンジンの動力が走行装置(車輪等)に伝達されすぎないようにすることができ、変速ショックを抑えることができるようになって、作業車の変速性能を向上させることができた。
本発明の第1特徴によると、油圧クラッチの作動圧を所定低圧に減圧した際に、エンジンの動力が走行装置(車輪等)に少しだけ伝達されるように制御することが容易に行え、走行装置(車輪等)に伝達される動力を適切に変更及び設定することができるようになって、作業車の変速性能を向上させることができた。
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の作業車の走行変速構造において次のように構成することにある。
無負荷状態でのエンジンの回転数と実際のエンジンの回転数との回転数差を検出する検出手段を備える。検出手段で検出される回転数差が大きくなるほど、所定低圧を高圧側に設定する第3制御手段を備える。
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、無負荷状態でのエンジンの回転数と実際のエンジンの回転数との回転数差を検出し、回転数差をエンジンに掛かる負荷と見なして、回転数差が大きくなるほど、エンジンに掛かる負荷が大きいと判断し、所定低圧が高圧側に変更されるように構成している。
これにより、エンジンに掛かる負荷が大きくても、所定低圧を高圧側に変更することによって、油圧クラッチの作動圧を所定低圧に減圧操作した際に、エンジンの動力が走行装置(車輪等)に少し多く伝達されるようにして、機体の走行速度の低下を抑えることができる(変速ショックを抑えることができる)。
この場合、油圧クラッチの作動圧を所定低圧に減圧操作した際に、エンジンの回転数を高低に制御することにより、作業車の走行状態や作業地の状態に応じて、走行装置(車輪等)に伝達される動力を適切に変更及び設定することができ、さらに機体の走行速度の低下を抑えることができる(さらに変速ショックを抑えることができる)。
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、無負荷状態でのエンジンの回転数と実際のエンジンの回転数との回転数差が大きくなるほど、所定低圧を高圧側に設定するように構成することにより、変速ショックを抑えることができるようになって、作業車の変速性能を向上させることができた。
[1]
図1は作業車の一例である四輪駆動型の農用トラクタのミッションケース8を示しており、エンジン1の動力が前進クラッチ5又は後進クラッチ6、円筒軸7、第1主変速装置10(走行用の変速装置に相当)、第2主変速装置11、副変速装置12及び後輪デフ装置13を介して後輪14に伝達される。後輪デフ装置13の直前から分岐した動力が伝動軸15、油圧クラッチ型式の前輪変速装置16、前輪伝動軸17及び前輪デフ装置18を介して前輪19に伝達される。エンジン1の動力が伝動軸2、油圧多板式のPTOクラッチ3及びPTO変速装置9を介してPTO軸4に伝達される。
図1に示すように、前進及び後進クラッチ5,6は、摩擦板(図示せず)とピストン(図示せず)とを組み合わせた油圧多板式で、遮断状態に付勢されており、作動油を供給することにより伝動状態に操作される。前進クラッチ5を伝動状態に操作すると、エンジン1の動力が前進クラッチ5から円筒軸7に直接に流れて機体は前進する。後進クラッチ6を伝動状態に操作すると、エンジン1の動力が後進クラッチ6及び伝動軸20を介して、逆転状態で円筒軸7に伝達されて機体は後進する。
図1に示すように、第1主変速装置10は、4個の油圧多板式の1速クラッチ21、2速クラッチ22、3速クラッチ23及び4速クラッチ24を並列的に配置した油圧クラッチ型式に構成されて4段に変速可能であり、1速〜4速クラッチ21〜24のうちの一つを伝動状態に操作することにより、円筒軸7の動力が4段に変速されて伝動軸25に伝達される。1速〜4速クラッチ21〜24は遮断状態に付勢されており、作動油を供給することにより伝動状態に操作される。
図1に示すように、第2主変速装置11は、2個の油圧多板式の低速クラッチ26(走行用の油圧クラッチに相当)、及び高速クラッチ27(走行用の油圧クラッチに相当)を並列的に配置した油圧クラッチ型式に構成されており、低速及び高速クラッチ26,27の一方を伝動状態に操作することにより、伝動軸25の動力が2段に変速されて副変速装置12に伝達される。低速及び高速クラッチ26,27は遮断状態に付勢されており、作動油を供給することにより伝動状態に操作される。
副変速装置12は、シフト部材53をスライド操作するシンクロメッシュ型式に構成されて2段に変速可能であり、図2に示す変速レバー28によって機械的に操作される。
[2]
次に、前進及び後進クラッチ5,6、第1及び第2主変速装置10,11に対する油圧回路について説明する。
図3に示すように、ポンプ29からの油路30に、前進及び後進クラッチ5,6に対する電磁比例弁35及びパイロット操作式の切換弁36a,37a、1速〜4速クラッチ21〜24に対するパイロット操作式の切換弁31a,32a,33a,34a、低速及び高速クラッチ26,27に対する電磁比例弁38,39が接続されている。
図3に示すように、油路30から分岐した油路40に、前輪デフ装置18におけるデフロック操作用の油圧クラッチ41に対するパイロット操作式の切換弁42a、後輪デフ装置13におけるデフロック操作用の油圧クラッチ43に対するパイロット操作式の切換弁44a、前輪変速装置16の標準クラッチ45及び増速クラッチ46に対するパイロット操作式の切換弁47a,48aが接続されている。切換弁31a〜34a,36a,37a,42a,44a,47a,48aは、バネで排油側(遮断状態)に付勢されており、パイロット圧が供給されることで供給側(伝動状態)に操作される。
図3に示すように、油路30から減圧弁49を介してパイロット油路50が分岐して、パイロット油路50が切換弁31a〜34a,36a,37a,42a,44a,47a,48aの操作部に接続されており、操作部に電磁操作弁31b,32b,33b,34b,36b,37b,42b,44b,47b,48bが接続されている。電磁操作弁31b〜34b,36b,37b,42b,44b,47b,48bはバネで排油側(遮断状態)に付勢されており、電磁操作弁31b〜34b,36b,37b,42b,44b,47b,48bを供給側に操作すると、パイロット圧が切換弁31a〜34a,36a,37a,42a,44a,47a,48aの操作部に供給されて、切換弁31a〜34a,36a,37a,42a,44a,47a,48aが供給側(伝動状態)に操作される。
[3]
次に、前進及び後進クラッチ5,6、第1及び第2主変速装置10,11の操作部の構造について説明する。
図3に示すように、切換弁36a,37aの操作部からパイロット圧を排油可能な開閉弁51が備えられ、開閉弁51がバネで閉側に付勢されており、開閉弁51を開側に操作するクラッチペダル52が備えられている。図2に示すように、前輪19の操縦ハンドル58の基部に、前進位置F、後進位置R及び中立位置Nに操作自在な前後進レバー59が備えられている。
図2に示すように、機体の操縦部の横軸芯周りに変速レバー28が揺動操作自在に支持されて、副変速装置12のシフト部材53をスライド操作するシフト軸54と変速レバー28とが、連係機構55により機械的に連係されている。変速レバー28を中立位置N、低速位置L及び高速位置Hに操作することにより、副変速装置12(シフト部材53)を中立位置、低速位置及び高速位置に操作することができるように構成されており、変速レバー28の操作位置を検出する位置センサー70が備えられている。
図2に示すように、変速レバー28の横側部に出退自在なロックピン56が備えられており、ロックピン56を出退操作する操作ボタン57が変速レバー28の上部に備えられている。ロックピン56はバネ(図示せず)により突出側(図2の紙面右方)に付勢されており(操作ボタン57も図2の紙面左方の突出側に付勢されている)、固定部のガイド板60にロックピン56を係合させることにより、変速レバー28を中立位置N、低速位置L及び高速位置Hに保持することができる。操作ボタン57を押し操作するとロックピン56が退入操作されて、変速レバー28を中立位置N、低速位置L及び高速位置Hに操作することができる。
図2に示すように、変速レバー28の左横側面に、シフトアップボタン61及びシフトダウンボタン62が上下に配置されており、シフトアップボタン61及びシフトダウンボタン62を押し操作すると、後述する[5][6]に記載のように、第1及び第2主変速装置10,11が操作される。
図2に示すように、第1及び第2主変速装置10,11の変速位置(1速〜8速)を表示する7セグメントの変速表示部64、前進及び後進クラッチ5,6のどちらが伝動状態に操作されているかを表示する前進ランプ65及び後進ランプ66、変速レバー28又は前後進レバー59が中立位置Nに操作されていることを示す中立ランプ67が、操縦部に備えられている。図3に示すように、前進及び後進クラッチ5,6の作動圧を検出する圧力センサー74が備えられており、圧力センサー74の検出により前進及び後進ランプ65,66を点灯させる。
[4]
次に、前後進レバー59の操作について、図4に基づいて説明する。
前後進レバー59を前進位置Fに操作すると(ステップS1)、電磁操作弁36bにより切換弁36aが供給側に操作されて、前進クラッチ5が伝動状態に操作され(ステップS2)、前進ランプ65が点灯する(ステップS3)。前後進レバー59を後進位置Rに操作すると(ステップS1)、電磁操作弁37bにより切換弁37aが供給側に操作されて、後進クラッチ6が伝動状態に操作され(ステップS4)、後進ランプ66が点灯し(ステップS5)、図2に示すブザー71が間欠的に作動する(ステップS6)。
前後進レバー59を中立位置Nに操作すると(ステップS1)、電磁操作弁36b,37bにより切換弁36a,37aが排油側に操作されて、前進及び後進クラッチ5,6が遮断状態に操作され(ステップS7)、中立ランプ67が点灯する(ステップS8)。クラッチペダル52を踏み操作すると、開閉弁51が開側に操作され切換弁36a,37aが排油側に操作されて、前進及び後進クラッチ5,6が遮断状態に操作され中立ランプ67が点灯する。このように、前進及び後進クラッチ5,6の両方が遮断状態に操作されると、前進及び後進クラッチ5,6において動力が遮断されて機体が停止する。
[5]
次に、シフトアップボタン61又はシフトダウンボタン62の押し操作による第1及び第2主変速装置10,11の操作の前半について、図5に基づいて説明する。
図1に示すように、第1主変速装置10が4段に変速可能であり、第2主変速装置11が2段に変速可能なので、第1及び第2主変速装置10,11により8段に変速可能である。低速クラッチ26が伝動状態に操作されている状態で、1速〜4速クラッチ21〜24が1速〜4速の変速位置に対応し、高速クラッチ27が伝動状態に操作されている状態で、1速〜4速クラッチ21〜24が5速〜8速の変速位置に対応する。
図2及び図3に示すように、1速〜4速クラッチ21〜24、低速及び高速クラッチ26,27の各々に、作動圧を検出する圧力センサー63,74が備えられており、圧力センサー63,74の検出により、現在の第1及び第2主変速装置10,11の変速位置(1速〜8速)が検出されて、検出された変速位置が変速表示部64に表示される。図1及び図2に示すように、後輪デフ装置13に伝達される動力(軸)の回転数を検出して機体の走行速度を検出する走行速度センサー68が備えられている。
図1及び図2に示すように、エンジン1のアクセル開度(燃料噴射量)を人為的に任意の位置に設定可能なハンドアクセルレバー73が備えられて、ハンドアクセルレバー73の操作位置を検出するポテンショメータ型式の開度センサー75が備えられており、ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応するアクセル開度(燃料噴射量)となるように、エンジン1の電子ガバナ(図示せず)が操作される。実際のエンジン1の回転数N2を検出する回転数センサー72が備えられている。
無負荷状態(前進及び後進クラッチ5,6が遮断状態に操作され、且つPTOクラッチ3が遮断状態に操作されて、エンジン1に負荷が掛からない状態)でのエンジン1の回転数N1と、開度センサー75の検出値(ハンドアクセルレバー73の操作位置)との関係が事前に求められており、開度センサー75の検出値(ハンドアクセルレバー73の操作位置)に基づいて、無負荷状態でのエンジン1の回転数N1が求められる。
これにより、開度センサー75の検出値(ハンドアクセルレバー73の操作位置)に基づいて、無負荷状態でのエンジン1の回転数N1が求められ(ステップS11)、回転数センサー72により、実際のエンジン1の回転数N2が検出されて(ステップS12)、無負荷状態でのエンジン1の回転数N1と実際のエンジン1の回転数N2との回転数差N3が検出される(検出手段に相当)(ステップS13)。走行速度センサー68により機体の走行速度が検出され(ステップS14)、圧力センサー63,74の検出により、現在の第1及び第2主変速装置10,11の変速位置(1速〜8速)が検出される(ステップS15)。
[6]
次に、シフトアップボタン61又はシフトダウンボタン62の押し操作による第1及び第2主変速装置10,11の操作の後半について、図5,6,7に基づいて説明する。
前項[5]に記載の状態において、シフトアップボタン61又はシフトダウンボタン62を押し操作したとする(ステップS16,S17)。
この場合、図7の実線A1及び時点B1に示すように、シフトアップボタン61を押し操作した場合には(ステップS16)、現在の変速位置よりも1段高速側の1〜4速クラッチ21〜24が、電磁操作弁31b〜34bにより伝動状態に操作され始める(遮断状態の作動圧から昇圧操作され始める)(第1制御手段に相当)(ステップS18)。シフトダウンボタン62を押し操作した場合には(ステップS17)、現在の変速位置よりも1段低速側の1〜4速クラッチ21〜24が、電磁操作弁31b〜34bにより伝動状態に操作され始める(遮断状態の作動圧から昇圧操作され始める)(第1制御手段に相当)(ステップS19)。
変速レバー28を低速位置L又は高速位置Hに操作していると(ステップS20)、回転数差N3に基づいて所定低圧P3が設定され(ステップS21)、機体の走行速度及び現在の変速位置に基づいて、所定低回転数N4が設定される(ステップS22)。
この場合、図7の実線A2に示すように、回転数差N3が大きいほど、所定低圧P3が高圧側に設定されて、回転数差N3が小さいほど、所定低圧P3が低圧側に設定される(第3制御手段に相当)(ステップS21)。
図7に示すように、回転数差N3が大きいほど、機体の走行速度が低速であるほど、現在の変速位置が低速側であるほど、所定低回転数N4が高回転側に設定されて、回転数差N3が小さいほど、機体の走行速度が高速であるほど、現在の変速位置が高速側であるほど、所定低回転数N4が低回転側に設定される(ステップS22)。
図7の実線A2及び時点B1に示すように、ステップS18,S19と略同時に、伝動状態に操作されている低速又は高速クラッチ26,27の作動圧が、電磁比例弁38,39により伝動状態の作動圧P2から所定低圧P3に減圧操作される(第2制御手段に相当)(ステップS23)。エンジン1の電子ガバナ(図示せず)が操作されて、エンジン1の回転数(実際のエンジン1の回転数N2)が所定低回転数N4に低下操作される(回転数制御手段に相当)(ステップS24)。
この場合、4速の変速位置から5速の変速位置への操作時には、低速クラッチ26の作動圧が零に減圧操作されて、高速クラッチ27の作動圧が零から所定低圧P3に昇圧操作される。逆に5速の変速位置から4速の変速位置への操作時には、高速クラッチ27の作動圧が零に減圧操作されて、低速クラッチ26の作動圧が零から所定低圧P3に昇圧操作される。
図7の実線A1及び時点B2から時点B3に示すように、1段高速側又は1段低速側の1速〜4速クラッチ21〜24の作動圧が、電磁操作弁31b〜34bにより伝動状態の作動圧P1に昇圧操作され始める。これと同時に図7の一点鎖線A3及び時点B2から時点B3に示すように、シフトアップボタン61又はシフトダウンボタン62の押し操作前の1速〜4速クラッチ21〜24(シフトアップボタン61又はシフトダウンボタン62の押し操作前に伝動状態に操作されていた1速〜4速クラッチ21〜24)の作動圧が、電磁操作弁31b〜34bにより伝動状態の作動圧P1から零に減圧操作され始める(第1制御手段に相当)(ステップS25)。
図7の実線A2及び時点B3から時点B4に示すように、変速レバー28を低速位置L又は高速位置Hに操作していると(ステップS26)、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧が、電磁比例弁38,39により所定低圧P3から漸次的に昇圧操作される(第2制御手段に相当)(ステップS27)。エンジン1の電子ガバナ(図示せず)が操作されて、エンジン1の回転数(実際のエンジン1の回転数N2)が復帰操作される(ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応するアクセル開度(燃料噴射量)となるように、エンジン1の電子ガバナ(図示せず)が操作される)(回転数制御手段に相当)(ステップS28)。これにより、前述の1段高速側又は1段低速側の1速〜4速クラッチ21〜24の動力が、低速又は高速クラッチ26,27を介して伝達され始める。
図7の実線A2及び時点B4に示すように、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧が伝動状態の作動圧P2に達したことが、圧力センサー63によって検出されると(ステップS29)、シフトアップボタン61又はシフトダウンボタン62の押し操作による操作が終了したと判断されて、操作後の変速位置が変速表示部64に表示され(ステップS30)、ブザー71が1回だけ作動して操作の終了が操縦者に報知される(ステップS31)。これにより、ステップS11に移行して、シフトアップボタン61又はシフトダウンボタン62の次の押し操作による操作が可能になる。
変速レバー28を中立位置Nに操作していると、副変速装置12(シフト部材53)が中立位置に操作されているので、機体は停止している。変速レバー28を中立位置Nに操作した状態において、シフトアップボタン61又はシフトダウンボタン62を押し操作すると(ステップS16,S17)、前述と同様に第1及び第2主変速装置10,11(1速〜4速クラッチ21〜24、低速及び高速クラッチ26,27)が、1段高速側又は1段低速側に操作され(ステップS18,S19,S25)、操作後の変速位置が変速表示部64に表示されて(ステップS30)、ブザー71が1回だけ作動する(ステップS31)。
この場合に、機体は停止しているのでステップS23,S24,S27,S28のような、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の所定低圧P3への減圧操作、及び伝動状態の作動圧P2への昇圧操作、エンジン1の回転数(実際のエンジン1の回転数N2)の所定低回転数N4への低下操作、及び復帰操作は行われない。
[7]
次に、変速レバー28による副変速装置12の操作について説明する。
図2に示すように、変速レバー28を中立位置Nに操作すると、副変速装置12(シフト部材53)が中立位置に操作され、変速レバー28を低速位置Lに操作すると、副変速装置12(シフト部材53)が低速位置に操作され、変速レバー28を高速位置Hに操作すると、副変速装置12(シフト部材53)が高速位置に操作される。
例えば、前後進レバー59を前進位置Fに操作し(前進クラッチ5が伝動状態に操作され、後進クラッチ6が遮断状態に操作されている状態)、変速レバー28を低速位置L(高速位置H)に操作している状態において(操作ボタン57及びロックピン56により変速レバー28を低速位置L(高速位置H)に保持している状態)、操作ボタン57を押し操作してロックピン56をガイド板60から退入操作すると、電磁操作弁36bにより切換弁36aが排油側に操作されて、前進クラッチ5が遮断状態に操作される。
これにより、操作ボタン57を押し操作した状態で変速レバー28を低速位置L(高速位置H)から中立位置N、高速位置H(低速位置L)に操作して、操作ボタン57を戻し操作し、ロックピン56により変速レバー28を中立位置N、高速位置H(低速位置L)に保持する。
この場合、変速レバー28の中立位置Nにおいて操作ボタン57を戻し操作すると、電磁操作弁36bにより切換弁36aが供給側に操作され、電磁比例弁35により前進クラッチ5が直ちに伝動状態に操作される。変速レバー28の高速位置H(低速位置L)において操作ボタン57を戻し操作すると、電磁操作弁36bにより切換弁36aが供給側に操作され、電磁比例弁35により前進クラッチ5が漸次的に伝動状態に操作される。
前後進レバー59を後進位置Rに操作した状態において(後進クラッチ6が伝動状態に操作され、前進クラッチ5が遮断状態に操作されている状態)、前述のように変速レバー28の操作ボタン57を押し及び戻し操作すると、前述と同様に後進クラッチ6が遮断及び伝動状態に操作される。
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]は、無負荷状態でのエンジン1の回転数N1と実際のエンジン1の回転数N2とに基づいて、第1及び第2主変速装置10,11が自動的に変速される作業車にも適用できる。
この場合、図8に示すような表示装置が、操縦部の操縦パネル(図示せず)に備えられている。表示装置は、シフト維持ランプ76、シフトアップランプ77、シフトダウンランプ78、及び4個の表示ランプ79a,79b,79c,79dによって構成されている。表示装置では第1表示モード及び第2表示モードの2種類の表示が行われるように構成されており、第1及び第2表示モードの選択は運転者が人為的に選択する。
第1表示モードについて説明する。
前述のように第1及び第2主変速装置10,11が自動的に変速される場合、現在の変速位置(現在の変速位置は変速表示部64に表示されている)での走行状態が今から設定時間に亘って維持されれば、シフトアップ操作を行う必要があると判断されると、シフトアップランプ77が点滅し、何段だけシフトアップ操作を行うべきかが、表示ランプ79a〜79dの点灯する個数で表示される(例えば2段だけシフトアップ操作を行うべきと判断されると、2個の表示ランプ79a,79bが点灯する)。
現在の変速位置での走行状態が今から設定時間に亘って維持されれば、シフトダウン操作を行う必要があると判断されると、シフトダウンランプ78が点滅し、何段だけシフトダウン操作を行うべきかが、表示ランプ79a〜79dの点灯する個数で表示される(例えば3段だけシフトダウン操作を行うべきと判断されると、3個の表示ランプ79a,79b,79cが点灯する)。
現在の変速位置での走行状態が今から設定時間に亘って維持されても、シフトアップ操作及びシフトダウン操作を行う必要がないと判断されると、シフト維持ランプ76が点灯し、表示ランプ79a〜79dが消灯する。
これにより、運転者にシフトアップ操作及びシフトダウン操作が事前に知らせられるのであり、この後にシフトアップ操作及びシフトダウン操作が行われると、操作後の変速位置が変速表示部64に表示される。
次に、第2表示モードについて説明する。
ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応するアクセル開度(燃料噴射量)(エンジン1の出力)となるように、エンジン1の電子ガバナ(図示せず)が操作される状態において、ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応するアクセル開度(燃料噴射量)(エンジン1の出力)に対して、エンジン1に掛かる負荷がどの程度のものかが、表示ランプ79a〜79dの点灯する個数で表示される。
例えば、ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応するアクセル開度(燃料噴射量)(エンジン1の出力)に対して、エンジン1に掛かる負荷が50%であれば、2個の表示ランプ79a,79bが点灯し、ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応するアクセル開度(燃料噴射量)(エンジン1の出力)に対して、エンジン1に掛かる負荷が100%近くであれば、4個の表示ランプ79a〜79dが点灯する。
これにより、運転者にエンジン1に掛かる負荷の大小を知らせることができる。特にアイソクロナス制御(エンジン1に掛かる負荷に関係なく、エンジン1の回転数が設定回転数に維持される制御)において、運転者にエンジン1に掛かる負荷の大小を知らせることができる。
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明の実施の第1別形態]において、第1及び第2表示モードが以下のように自動的に選択されるように構成してもよい。
現在の変速位置での走行状態が今から設定時間に亘って維持されても、シフトアップ操作及びシフトダウン操作を行う必要がないと判断されると、第1表示モードに対応してシフト維持ランプ76が点灯し、第2表示モードに対応して表示ランプ79a〜79dが点灯する。
現在の変速位置での走行状態が今から設定時間に亘って維持されれば、シフトアップ操作及びシフトダウン操作を行う必要があると判断されると、第1表示モードに対応して、シフトアップランプ77及びシフトダウンランプ78、表示ランプ79a〜79dが点滅及び点灯する。
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]の図6のステップS24,S28において以下のように構成してもよい。
(1)
図7において、時点B1よりも少し前の時点又は時点B1よりも少し後の時点から、エンジン1の回転数(実際のエンジン1の回転数N2)が所定低回転数N4に低下操作されるように構成する(回転数制御手段に相当)。
(2)
図7において、時点B3よりも少し後の時点から、エンジン1の回転数(実際のエンジン1の回転数N2)が復帰操作され始め、時点B4よりも少し後の時点で復帰操作が終了するように構成する(回転数制御手段に相当)。
(3)
図7において、時点B3よりも少し後の時点から、エンジン1の回転数(実際のエンジン1の回転数N2)が復帰操作され始め、時点B4よりも少し前の時点で復帰操作が終了するように構成する(回転数制御手段に相当)。
(4)
前項(1)〜(5)において、エンジン1の回転数(実際のエンジン1の回転数N2)が所定低回転数N4に維持される時間を、回転数差N3や変速位置、機体の走行速度に応じて長短に変更されるように構成する(回転数制御手段に相当)。
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第3別形態]において、図1に示す副変速装置12を第2主変速装置11と同様に、油圧多板式の低速クラッチ(図示せず)及び高速クラッチ(図示せず)を並列的に配置して構成し、副変速装置12の低速及び高速クラッチの各々に対して、電磁比例弁(図示せず)を備えるように構成してもよい。このように構成すると、第1及び第2主変速装置10,11、副変速装置12によって1速〜16速の変速位置が設定されることになり、シフトアップボタン61及びシフトダウンボタン62を押し操作することにより、第1及び第2主変速装置10,11、副変速装置12を、1速〜16速の変速位置に操作することができるように構成する。
[発明の実施の第5別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第4別形態]において、図1に示す第1及び第2主変速装置10,11は油圧クラッチ型式に構成されているが、第1及び第2主変速装置10,11を副変速装置12と同様にシフト部材(図示せず)をスライド操作するギヤ変速型式に構成し、シフト部材を油圧シリンダ(図示せず)によりスライド操作して操作するように構成してもよい。
第1及び第2主変速装置10,11が10段や6段に変速可能に構成された作業車、副変速装置12が高速位置、中速位置及び低速位置の3段に変速可能に構成された作業車にも本発明は適用できる。
ミッションケースの伝動系を示す概略図 変速レバー、シフトアップボタン及びシフトダウンボタンと各部との連係状態を示す図 前進及び後進クラッチ、第1及び第2主変速装置等の油圧回路図 前後進レバーを操作した際の制御の流れを示す図 シフトアップボタン及びシフトダウンボタンを押し操作した際の制御の前半の流れを示す図 シフトアップボタン及びシフトダウンボタンを押し操作した際の制御の後半の流れを示す図 シフトアップボタン及びシフトダウンボタンを押し操作した際の1速〜4速クラッチ、低速及び高速クラッチ、エンジンの回転数の状態を示す図 発明の実施の第1別形態におけるシフト維持ランプ、シフトアップランプ、シフトダウンランプ及び表示ランプを示す図
1 エンジン
10 走行用の変速装置
26,27 油圧クラッチ
N1 無負荷状態でのエンジンの回転数
N2 実際のエンジンの回転数
N3 回転数差
P3 所定低圧

Claims (2)

  1. エンジンの下手側に、複数の変速位置を備えた走行用の変速装置と走行用の油圧クラッチとを直列に配置して、
    変速指令に基づいて、伝動状態されている前記変速装置の変速位置を遮断状態し、変速指令に対応する前記変速装置の変速位置を伝動状態する第1制御手段と、
    変速指令に基づいて、前記油圧クラッチの作動圧を所定低圧に減圧し、前記油圧クラッチの作動圧を昇圧する第2制御手段とを備えると共に、
    前記第2制御手段の作動時にエンジンの回転数を低下し、復帰する回転数制御手段を備え
    前記第1制御手段は、
    伝動状態とされている前記変速装置の変速位置に相当する変速指令前の変速クラッチについて、伝動状態の作動圧から遮断状態の作動圧に減圧することで、伝動状態とされている前記変速装置の変速位置を遮断状態とし、
    変速指令に対応する前記変速装置の変速位置に相当する変速指令後の変速クラッチについて、遮断状態の作動圧から伝動状態の作動圧に昇圧することで、変速指令に対応する前記変速装置の変速位置を伝動状態とし、
    前記変速指令前の変速クラッチについての減圧と前記変速指令後の変速クラッチについての昇圧とを重複して実行する重複時間を設ける形態で、前記変速指令前の変速クラッチにおける作動圧の減圧及び前記変速指令後の変速クラッチにおける作動圧の昇圧を行うように構成してあり、
    前記第2制御手段は、前記重複時間中に前記油圧クラッチの作動圧を前記所定低圧に減圧し、且つ、前記重複時間における終了時点以降に前記油圧クラッチの作動圧を昇圧してあり、
    前記回転数制御手段は、前記重複時間における開始時点以前に前記エンジンの回転数を低下し、且つ、前記重複時間における終了時点以降に前記エンジンの回転数を復帰してある作業車の走行変速構造。
  2. 無負荷状態でのエンジンの回転数と実際のエンジンの回転数との回転数差を検出する検出手段を備えて、
    前記検出手段で検出される回転数差が大きくなるほど、前記所定低圧を高圧側に設定する第3制御手段を備えてある請求項1に記載の作業車の走行変速構造。
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