[本発明の実施形態]
図1〜図12に基づいて本発明に係る変速制御装置を作業車の一例である四輪駆動型のトラクタに適用した場合を例にとって説明する。図1は、トラクタのミッションケース8を示しており、エンジン1の動力が前進クラッチ5又は後進クラッチ6、円筒軸7、第1主変速装置10(走行用の変速装置に相当)、第2主変速装置11、副変速装置12及び後輪デフ装置13を介して後輪14に伝達される。後輪デフ装置13の直前から分岐した動力が伝動軸15、油圧クラッチ型式の前輪変速装置16、前輪伝動軸17及び前輪デフ装置18を介して前輪19に伝達される。エンジン1の動力が伝動軸2、油圧多板式のPTOクラッチ3及びPTO変速装置9を介してPTO軸4に伝達される。
図1に示すように、前進及び後進クラッチ5,6は、摩擦板(図示せず)とピストン(図示せず)とを組み合わせた油圧多板式で、遮断状態に付勢されており、作動油を供給することにより伝動状態に操作される。前進クラッチ5を伝動状態に操作すると、エンジン1の動力が前進クラッチ5から円筒軸7に直接に伝達されて機体は前進する。後進クラッチ6を伝動状態に操作すると、エンジン1の動力が後進クラッチ6及び伝動軸20を介して、逆転状態で円筒軸7に伝達されて機体は後進する。
第1主変速装置10は、4個の油圧多板式の1速クラッチ21、2速クラッチ22、3速クラッチ23及び4速クラッチ24を並列的に配置した油圧クラッチ型式に構成されて4段に変速可能であり、1速〜4速クラッチ21〜24のうちの一つを伝動状態に操作することにより、円筒軸7の動力が4段に変速されて伝動軸25に伝達される。1速〜4速クラッチ21〜24は遮断状態に付勢されており、作動油を供給することにより伝動状態に操作される。
第2主変速装置11は、2個の油圧多板式の低速クラッチ26(走行用の油圧クラッチに相当)、及び高速クラッチ27(走行用の油圧クラッチに相当)を並列的に配置した油圧クラッチ型式に構成されており、低速及び高速クラッチ26,27の一方を伝動状態に操作することにより、伝動軸25の動力が2段に変速されて副変速装置12に伝達される。低速及び高速クラッチ26,27は遮断状態に付勢されており、作動油を供給することにより伝動状態に操作される。副変速装置12は、シフト部材53をスライド操作するシンクロメッシュ型式に構成されて2段に変速可能であり、図2に示す変速レバー28によって機械的に操作される。
図3に示すように、ポンプ29からの油路30に、前進及び後進クラッチ5,6に対する電磁比例弁35及びパイロット操作式の切換弁36a,37a、1速〜4速クラッチ21〜24に対するパイロット操作式の切換弁31a,32a,33a,34a、低速及び高速クラッチ26,27に対する電磁比例弁38,39が接続されている。
油路30から分岐した油路40に、前輪デフ装置18におけるデフロック操作用の油圧クラッチ41に対するパイロット操作式の切換弁42a、後輪デフ装置13におけるデフロック操作用の油圧クラッチ43に対するパイロット操作式の切換弁44a、前輪変速装置16の標準クラッチ45及び増速クラッチ46に対するパイロット操作式の切換弁47a,48aが接続されている。切換弁31a〜34a,36a,37a,42a,44a,47a,48aは、バネにより排油位置(遮断状態)に付勢されており、パイロット圧が供給されることで供給位置(伝動状態)に操作される。
油路30から減圧弁49を介してパイロット油路50が分岐して、パイロット油路50が切換弁31a〜34a,36a,37a,42a,44a,47a,48aの操作部に接続されており、操作部に電磁操作弁31b,32b,33b,34b,36b,37b,42b,44b,47b,48bが接続されている。電磁操作弁31b〜34b,36b,37b,42b,44b,47b,48bは、バネにより排油位置(遮断状態)に付勢されており、電磁操作弁31b〜34b,36b,37b,42b,44b,47b,48bが供給位置に操作されると、パイロット圧が切換弁31a〜34a,36a,37a,42a,44a,47a,48aの操作部に供給されて、切換弁31a〜34a,36a,37a,42a,44a,47a,48aが供給位置(伝動状態)に操作される。
図2及び図3に記載のように、電磁比例弁35、電磁操作弁31b〜34b,36b,37b,42b,44b,47b,48b及び電磁比例弁38,39が、制御装置76の変速制御部82(変速制御手段に相当)によって操作される。
図3に示すように、切換弁36a,37aの操作部からパイロット圧を排油可能な開閉弁51が備えられて、開閉弁51がバネにより閉位置に付勢されており、開閉弁51を開位置に操作するクラッチペダル52が備えられている。図2に示すように、前輪19の操縦ハンドル58の基部に、前進位置F、後進位置R及び中立位置Nに操作自在な前後進レバー59が備えられており、前後進レバー59の操作位置が制御装置76に入力されている。
図2に示すように、機体の操縦部の横軸芯周りに変速レバー28が揺動操作自在に支持されて、副変速装置12のシフト部材53をスライド操作するシフト軸54と変速レバー28とが、連係機構55により機械的に連係されている。変速レバー28が中立位置N、低速位置L及び高速位置Hに操作されることにより、副変速装置12(シフト部材53)が中立位置、低速位置及び高速位置に操作されるように構成されており、変速レバー28の操作位置を検出する位置センサー70が備えられて、位置センサー70の検出値が制御装置76に入力されている。
変速レバー28の横側部に出退自在なロックピン56が備えられており、ロックピン56を出退操作する操作ボタン57が変速レバー28の上部に備えられて、操作ボタン57の操作位置が制御装置76に入力されている。ロックピン56はバネ(図示せず)により突出側(図2の紙面右方)に付勢されており(操作ボタン57も図2の紙面左方の突出側に付勢されている)、固定部のガイド板60にロックピン56を係合させることによって、変速レバー28が中立位置N、低速位置L及び高速位置Hに保持される。操作ボタン57を押し操作するとロックピン56が退入操作されて、変速レバー28を中立位置N、低速位置L及び高速位置Hに操作することができる。
変速レバー28の左横側面に、シフトアップボタン61及びシフトダウンボタン62(変速操作手段に相当)が上下に配置されて、シフトアップボタン61及びシフトダウンボタン62の操作信号が制御装置76に入力されており、シフトアップボタン61及びシフトダウンボタン62が押し操作されると、制御装置76の変速制御部82により第1及び第2主変速装置10,11が操作される。
第1及び第2主変速装置10,11の変速位置(1速〜8速)を表示する7セグメントの変速表示部64、前進及び後進クラッチ5,6のどちらが伝動状態に操作されているかを表示する前進ランプ65及び後進ランプ66、変速レバー28又は前後進レバー59が中立位置Nに操作されていることを示す中立ランプ67が、操縦部に備えられている。図2及び図3に示すように、ブザー71及び前進及び後進クラッチ5,6の作動圧を検出する圧力センサー74が備えられて、圧力センサー74の検出値が制御装置76に入力されている。これにより、制御装置76の変速制御部82により変速表示部64、前進及び後進クラッチ5,6、中立ランプ67、ブザー71が操作される。
図2〜図4に示すように、前後進レバー59が前進位置Fに操作されると(ステップS1)、電磁操作弁36bに操作電流が供給され切換弁36aが供給位置に操作されて、前進クラッチ5が伝動状態に操作され(ステップS2)、前進ランプ65が点灯する(ステップS3)。前後進レバー59が後進位置Rに操作されると(ステップS1)、電磁操作弁37bに操作電流が供給され切換弁37aが供給位置に操作されて、後進クラッチ6が伝動状態に操作され(ステップS4)、後進ランプ66が点灯し(ステップS5)、ブザー71が間欠的に作動する(ステップS6)。
前後進レバー59が中立位置Nに操作されると(ステップS1)、電磁操作弁36b,37bへの操作電流が遮断され切換弁36a,37aが排油位置に操作されて、前進及び後進クラッチ5,6が遮断状態に操作され(ステップS7)、中立ランプ67が点灯する(ステップS8)。クラッチペダル52が踏み操作されると、開閉弁51が開位置に操作され切換弁36a,37aが排油位置に操作されて、前進及び後進クラッチ5,6が遮断状態に操作され中立ランプ67が点灯する。このように前進及び後進クラッチ5,6の両方が遮断状態に操作されると、前進及び後進クラッチ5,6において動力が遮断されて機体が停止する。
図1に示すように、第1主変速装置10が4段に変速可能であり、第2主変速装置11が2段に変速可能なので、第1及び第2主変速装置10,11により8段に変速可能である。低速クラッチ26が伝動状態に操作されている状態で、1速〜4速クラッチ21〜24が1速〜4速の変速位置に対応し、高速クラッチ27が伝動状態に操作されている状態で、1速〜4速クラッチ21〜24が5速〜8速の変速位置に対応する。
図2及び図3に示すように、1速〜4速クラッチ21〜24、低速及び高速クラッチ26,27の各々に、作動圧を検出する圧力センサー63,74が備えられており、圧力センサー63,74の検出により、現在の第1及び第2主変速装置10,11の変速位置(1速〜8速)が検出されて、検出された変速位置が変速表示部64に表示される。
図2に示すように、変速レバー28が中立位置Nに操作されると、副変速装置12(シフト部材53)が中立位置に操作される。変速レバー28が低速位置Lに操作されると、副変速装置12(シフト部材53)が低速位置に操作され、変速レバー28が高速位置Hに操作されると、副変速装置12(シフト部材53)が高速位置に操作される。
例えば、前後進レバー59が前進位置Fに操作され(前進クラッチ5が伝動状態に操作され、後進クラッチ6が遮断状態に操作されている状態)、変速レバー28が低速位置L(高速位置H)に操作された状態において(操作ボタン57及びロックピン56により変速レバー28が低速位置L(高速位置H)に保持されている状態)、操作ボタン57を押し操作してロックピン56をガイド板60から退入操作すると、電磁操作弁36bにより切換弁36aが排油位置に操作されて、前進クラッチ5が遮断状態に操作される。
これにより、操作ボタン57を押し操作した状態で変速レバー28を低速位置L(高速位置H)から中立位置N、高速位置H(低速位置L)に操作して、操作ボタン57を戻し操作し、ロックピン56により変速レバー28を中立位置N、高速位置H(低速位置L)に保持する。
この場合、変速レバー28の中立位置Nにおいて操作ボタン57が戻し操作されると、電磁操作弁36bにより切換弁36aが供給位置に操作され、電磁比例弁35により前進クラッチ5が直ちに伝動状態に操作される。変速レバー28の高速位置H(低速位置L)において操作ボタン57が戻し操作されると、電磁操作弁36bにより切換弁36aが供給位置に操作され、電磁比例弁35により前進クラッチ5が漸次的に伝動状態に操作される。
前後進レバー59が後進位置Rに操作された状態において(後進クラッチ6が伝動状態に操作され、前進クラッチ5が遮断状態に操作されている状態)、前述のように変速レバー28の操作ボタン57を押し及び戻し操作すると、前述と同様に後進クラッチ6が遮断及び伝動状態に操作される。
図2に示すように、人為的に操作されるハンドアクセルレバー73(アクセル操作具に相当)、ハンドアクセルレバー73の操作位置を検出するポテンショメータ型式の開度センサー75、実際のエンジン回転数N2を検出する回転数センサー72(回転数検出手段,負荷検出手段に相当)が備えられており、開度センサー75及び回転数センサー72の検出値が制御装置76に入力されている。
エンジン1には、エンジン1に燃料を噴射する燃料噴射装置68と、燃料噴射装置68を制御する噴射量制御装置69(エンジン制御手段に相当)とが備えられており、噴射量制御装置69がCAN通信等により制御装置76に接続されている。なお、この実施形態では、燃料噴射装置68及び噴射量制御装置69として電子ガバナが採用されており、その制御方式(ガバナ特性)としてドループ制御方式(ドループ制御特性)が採用されている。噴射量制御装置69には、第1特性としての通常時用の第1マップM1(ドループ制御のガバナ特性図)と、第2特性としての変速時用の第2マップM2(ドループ制御のガバナ特性図)とが記憶されている。
図5の実線で示すように、噴射量制御装置69に記憶された第1マップM1には、トルクQの変動に対してエンジン回転数nが変動する複数のトルクカーブG1が設定されている。第1マップM1の複数のトルクカーブG1は、エンジン回転数nとトルクQ(燃料噴射装置68の噴射量)との関係として予め設定されており、ハンドアクセルレバー73の操作位置ごとにハンドアクセルレバー73の操作位置に対応した形態で設定されている。
図5の破線で示すように、噴射量制御装置69に記憶された第2マップM2には、トルクQの変動に対してエンジン回転数nが変動する複数のトルクカーブG2が設定されている。第2マップM2の複数のトルクカーブG2は、エンジン回転数nとトルクQ(燃料噴射装置68の噴射量)との関係として予め設定されており、ハンドアクセルレバー73の操作位置ごとにハンドアクセルレバー73の操作位置に対応した形態で設定されている。
図5に示すように、第2マップM2でのトルクカーブG2の傾きは、第1マップM1でのトルクカーブG1の傾きよりもトルクQの変動に対してエンジン回転数nの変動が大きい傾きに設定されている。
つまり、第1マップM1でのトルクカーブG1と第2マップM2でのトルクカーブG2とは、トルクQが基準トルクQAの状態では両者が一致するように交差し、トルクQが基準トルクQAよりも大の領域では、第2マップM2でのトルクカーブG2の傾きが第1マップM1でのトルクカーブG1の傾きよりもトルクQの変動に対してエンジン回転数nが低い側への変動が大きい傾きとなり、トルクQが基準トルクQAよりも小の領域では、第2マップM2でのトルクカーブG2の傾きが第1マップM1でのトルクカーブG1の傾きよりもトルクQの変動に対してエンジン回転数nが高い側への変動が大きい傾きとなるように設定されている。ここで、第1マップM1でのトルクカーブG1と第2マップM2でのトルクカーブG2とが交差する基準トルクQAは、無負荷状態でのエンジンに掛かるトルクを基準として設定されたものである。
図5の「Z」で示す領域、すなわち、第1マップM1の最もエンジン回転数nが高い側のトルクカーブG1´よりもエンジン回転数nが高い側で基準トルクQAよりもトルクが大きい側の領域は、排ガス規制の対象となる排ガス規制領域Zである。
図2に示すように、制御装置76には、エンジン1の噴射量制御装置69を制御するエンジン制御部81(エンジン制御手段に相当)が備えられており、エンジン制御部81のマップ変更指令部81aから噴射量制御装置69にマップ変更指令を出力することで、噴射量制御装置69のマップ変更部69aによって燃料噴射装置68を制御するマップが、第1及び第2マップM1,M2のうちのマップ変更指令に対応したマップに変更され、この変更されたマップに基づいて燃料噴射装置68が制御されるように構成されている。
エンジン制御部81のマップ変更指令部81aから噴射量制御装置69に第1マップM1から第2マップM2へのマップ変更指令が出力されると、噴射量制御装置69のマップ変更部69aによって燃料噴射装置68を制御するマップが第1マップM1から第2マップM2に変更され、第2マップM2に基づいて燃料噴射装置68が制御される。そして、制御装置76においてハンドアクセルレバー73がある操作位置に変更されたことが開度センサー75からの検出に基づいて検出されると、エンジン制御部81から噴射量制御装置69に操作位置変更指令が出力され、噴射量制御装置69においてハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したトルクカーブG1が設定される。
後述するシフトアップ変速制御及びシフトダウン変速制御において、エンジン制御部81の回転数変更指令部81bから噴射量制御装置69に回転数指示値変更指令が出力された場合には、噴射量制御装置69の回転数変更部69bにおいてハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したトルクカーブG1から回転数指示値変更指令に対応したトルクカーブG1に設定変更される。
ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したトルクカーブG1が設定された状態や回転数指示値変更指令に対応したトルクカーブG1に設定変更された状態では、回転数センサー72の検出値(実際のエンジン回転数)に基づいて、トルクカーブG1のトルクに対応した噴射量が算出され、算出された噴射量にエンジン1の燃料噴射装置68が操作される。
逆に、エンジン制御部81のマップ変更指令部81aから噴射量制御装置69に第2マップM2から第1マップM1へのマップ変更指令が出力されると、噴射量制御装置69のマップ変更部69aによって燃料噴射装置68を制御するマップが第2マップM2から第1マップM1に変更され、第1マップM1に基づいて燃料噴射装置68が制御される。そして、制御装置76においてハンドアクセルレバー73がある操作位置に変更されたことが開度センサー75からの検出に基づいて検出されると、エンジン制御部81から噴射量制御装置69に操作位置変更指令が出力され、噴射量制御装置69においてハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したトルクカーブG2が設定される。
後述するシフトアップ変速制御及びシフトダウン変速制御において、エンジン制御部81の回転数変更指令部81bから噴射量制御装置69に回転数指示値変更指令が出力された場合には、噴射量制御装置69の回転数変更部69bにおいてハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したトルクカーブG2から回転数指示値変更指令に対応したトルクカーブG2に設定変更される。
ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したトルクカーブG2が設定された状態や回転数指示値変更指令に対応したトルクカーブG2に設定変更された状態では、回転数センサー72の検出値(実際のエンジン回転数)に基づいて、そのトルクカーブG2のトルクに対応した噴射量が算出され、算出された噴射量にエンジン1の燃料噴射装置68が操作される。
[シフトアップ変速制御]
図6〜図9に基づいてシフトアップ変速制御の内容について説明する。図6に示すように、シフトアップボタン61が押し操作されると(ステップS11)、シフトアップ変速制御に移行し(ステップS12)、以下のようにシフトアップ変速制御が自動的に実行される。
図7及び図8に示すように、シフトアップボタン61が押し操作されると、図8(a)の実線A1(時点B1)に示すように、現在の変速位置よりも1段高速側の1〜4速クラッチ21〜24が、電磁操作弁31b〜34bにより伝動状態に操作され始める(遮断状態の作動圧から昇圧操作され始める:ステップS21)。
この場合、変速レバー28が低速位置L又は高速位置Hに操作された状態で(ステップS22)、以下の操作により所定低圧P3が設定される(ステップS23〜S26)。
無負荷状態(前進及び後進クラッチ5,6が遮断状態に操作され、且つPTOクラッチ3が遮断状態に操作されて、エンジン1に負荷が掛からない状態)でのエンジン回転数と、ハンドアクセルレバー73の操作位置(開度センサー75の検出値)との関係が事前に求められており、ハンドアクセルレバー73の操作位置(開度センサー75の検出値)に基づいて、無負荷状態でのエンジン回転数N1が求められる。
これにより、ハンドアクセルレバー73の操作位置(開度センサー75の検出値)に基づいて、無負荷状態でのエンジン回転数N1が求められ(ステップS23)、回転数センサー72により実際のエンジン回転数N2が検出されて(ステップS24)、無負荷状態でのエンジン回転数N1と回転数センサー72の検出値(実際のエンジン回転数N2)との差(回転数差N3)が検出され(ステップS25)、回転数差N3に基づいて所定低圧P3が設定される(ステップS26)。この場合、例えば回転数差N3が大きいほど、エンジン1に掛かる負荷が大きいと判断されて、所定低圧P3が高圧側に設定される。回転数差N3が小さいほど、エンジン1に掛かる負荷が小さいと判断されて、所定低圧P3が低圧側に設定される(図8(b)の実線A2参照)。
所定低圧P3が設定されると(ステップS26)、図8(b)の実線A2(時点B1)に示すように、伝動状態に操作されている低速又は高速クラッチ26,27の作動圧が、電磁比例弁38,39により伝動状態の作動圧P2から所定低圧P3に減圧操作される(ステップS27)。この場合、4速の変速位置から5速の変速位置への操作時には、低速クラッチ26の作動圧が零に減圧操作されて、高速クラッチ27の作動圧が零から所定低圧P3に昇圧操作される。
低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の作動圧P2から所定低圧P3への減圧操作が開始されると、図8(c)に示すように、エンジン制御部81から噴射量制御装置69に第1マップM1から第2マップM2へのマップ変更指令が出力される(ステップS28)。これにより、噴射量制御装置69によって燃料噴射装置68を制御するマップが第1マップM1から第2マップM2に変更される。
この場合、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の作動圧P2から所定低圧P3への減圧操作が開始された後に第1マップM1から第2マップM2へのマップ変更指令を出力するように構成した例を示したが(ステップS27,S28)、マップ変更指令を出力するタイミングは異なるタイミングであってもよく、例えば、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の作動圧P2から所定低圧P3への減圧操作が開始されるのと同時に第1マップM1から第2マップM2へのマップ変更指令を出力するように構成してもよく、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の作動圧P2から所定低圧P3への減圧操作が開示される前、例えば所定低圧P3の演算終了直後(ステップS26の直後)や、所定低圧P3の演算のための回転数N1,N2の検出直後(ステップS24又はS25の直後)等に、第1マップM1から第2マップM2へのマップ変更指令を出力するように構成してもよい。これにより、所定低圧P3の演算に影響を及ぼさないタイミングで第1マップM1から第2マップM2へのマップ変更指令を出力することができる。
次に、図8(a)の実線A1(時点B2から時点B3)に示すように、1段高速側の1速〜4速クラッチ21〜24の作動圧が、電磁操作弁31b〜34bにより伝動状態の作動圧P1に昇圧操作され始める(ステップS21が続行されていることによる)。これと同時に図8(a)の一点鎖線A3(時点B2から時点B3)に示すように、シフトアップボタン61の押し操作前の1速〜4速クラッチ21〜24(シフトアップボタン61の押し操作前に伝動状態に操作されていた1速〜4速クラッチ21〜24)の作動圧が、電磁操作弁31b〜34bにより伝動状態の作動圧P1から零に減圧操作され始める(ステップS29)。
変速レバー28が低速位置L又は高速位置Hに操作された状態で(ステップS30)、図8(b)の実線A2(時点B3から時点B4)に示すように、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧が、電磁比例弁38,39により所定低圧P3から漸次的に昇圧操作される(ステップS31)。これにより、前述の1段高速側の1速〜4速クラッチ21〜24の動力が、低速又は高速クラッチ26,27を介して伝達され始める。
低速又は高速クラッチ26,27の作動圧が伝動状態の作動圧P2に達したことが(図8(b)の実線A2の時点B4)、圧力センサー63によって検出されると(ステップS32)、図8(c)及び図8(d)に示すように、エンジン制御部81から噴射量制御装置69に第2マップM2から第1マップM1へのマップ変更指令が出力され、これと同時に、ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したエンジン回転数NAからハンドアクセルレバー73の操作位置よりも低い側のエンジン回転数NBに回転数指示値を変更する回転数指示値変更指令がエンジン制御部81から噴射量制御装置69に出力される(ステップS33)。これにより、噴射量制御装置69において燃料噴射装置68を制御するマップが第2マップM2から第1マップM1に変更され、噴射量制御装置69においてハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したエンジン回転数NAでのトルクカーブG1から回転数指示値変更指令に対応したエンジン回転数NBでのトルクカーブG1に設定変更される。
そして、予め設定された設定時間が経過すると、ハンドアクセルレバー73の操作位置よりも低い側のエンジン回転数NBからハンドアクセルレバー73の操作位置に対応した元のエンジン回転数NAに回転数指示値を変更する回転数指示値変更指令がエンジン制御部81から噴射量制御装置69に出力される(ステップS34)。これにより、噴射量制御装置69においてエンジン回転数NBでのトルクカーブG1がハンドアクセルレバー73の操作位置に対応した元のエンジン回転数NAでのトルクカーブG1に変更される。
なお、第2マップM2から第1マップM1へのマップ変更指令を出力するタイミングや、エンジン回転数NAからエンジン回転数NBへの回転数指示値変更指令を出力するタイミングや、エンジン回転数NBからエンジン回転数NAへの回転数指示値変更指令を出力するタイミングは異なるタイミングであってもよく、例えば、変速終了直前の低速又は高速クラッチ26,27の作動圧が伝動状態の作動圧P2に達したことが圧力センサー63によって検出される前(ステップS31の後)に、これらのいずれか又は全ての処理を実行するように構成してもよい。また、回転数指示値をエンジン回転数NAから低い側のエンジン回転数NBに変更した後に、第2マップM2を第1マップM1に変更するのと同時に回転数指示値をエンジン回転数NBから元のエンジン回転数NAに変更するように構成してもよい。
図6に示すように、これらの制御が完了すると、シフトアップボタン61の押し操作による変速操作が終了したと判断され、変速操作後の変速位置が変速表示部64に表示され(ステップS15)、ブザー71が1回だけ作動して変速操作の終了が操縦者に報知される(ステップS16)。これにより、ステップS11に移行して、シフトアップボタン61又はシフトダウンボタン62の次の押し操作による変速操作が可能になる。
図9に示すように、例えばハンドアクセルレバー73の操作位置に対応して回転数指示値が最も高い側のエンジン回転数NAに設定され、エンジン1にトルクQ1が作用している状態で、シフトアップボタン61が押し操作されると、先ず、第1マップM1が第2マップM2に変更される(図9のa1→a2)。そして、変速終了直後に第2マップM2が第1マップM1に変更され且つ回転数指示値がエンジン回転数NAから低い側の隣のエンジン回転数NBに変更され(図9のa2→a3)、その後に回転数指示値がエンジン回転数NBから元のエンジン回転数NAに変更される(図9のa3→a1)。このように、変速終了直後に第2マップM2を第1マップM1に変更するだけでなく回転数指示値NA,NBの変更を行って段階的に燃料噴射装置68からの燃料の噴射量を制御することで、変速操作前半において第1マップM1から第2マップM2への変更により変速ショックを効果的に緩和できるように第2マップM2をトルクQの変動に対してエンジン回転数の変動が大きい傾きに設定しながらも、変速操作後半において燃料噴射装置68からの燃料の噴射量の急激な変動を抑えてエンジン回転数の変動を安定させることができる。この場合、トルクQが大きいほど同じ回転数指示値での第1及び第2マップM1,M2におけるトルク差が大きくなるため、トルクQが大きい場合に特に変速ショックを効果的に緩和できる。なお、図9では、回転数指示値が最も高い側のエンジン回転数NAに設定されている場合を例に説明したが、ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応した他の回転数指示値(NB,NC,ND・・・)にエンジン回転数が設定されている場合においても、同様のシフトアップ変速制御が実行される。
そして、図8(d)に示すように、シフトアップ変速制御においては、回転数指示値がエンジン回転数NAから低い側のエンジン回転数NBに変更されるように構成されており、回転数指示値がエンジン回転数NAから高い側のエンジン回転数に変更されることがないので、図9に示すように、例えばハンドアクセルレバー73の操作位置に対応して回転数指示値が最も高い側のエンジン回転数NAに設定されている場合であっても、アクセルアップ変速制御において排ガス規制領域Z側にトルクカーブG1が変更されることを防止できる。
図8(e)は、シフトアップ変速制御を実行した場合の実際のエンジン回転数の挙動を例示したものであり、図8(e)の実線で示すように、図8(e)の破線で示す第1及び第2マップM1,M2の変更並びに回転数指示値NA,NBの変更をしないものに比べて変速操作時におけるエンジン回転数の挙動が安定し変速ショックが緩和されていることが理解できる。
図7に示すように、変速レバー28が中立位置Nに操作されていると、副変速装置12(シフト部材53)が中立位置に操作されているので、機体は停止している。変速レバー28が中立位置Nに操作された状態において、シフトアップボタン61が押し操作されると(ステップS11)、前述と同様に第1及び第2主変速装置10,11(1速〜4速クラッチ21〜24、低速及び高速クラッチ26,27)が、1段高速側に操作され(ステップS21,S29)、変速操作後の変速位置が変速表示部64に表示されて(ステップS15)、ブザー71が1回だけ作動する(ステップS16)。この場合、機体は停止しているのでステップS23〜S28,S31〜S34のような、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の所定低圧P3への減圧操作、伝動状態の作動圧P2への昇圧操作、第1及び第2マップM1,M2の変更操作、及びエンジン回転数NA,NBの回転数指示値変更操作は行われない(ステップS22,S30)。
[シフトダウン変速制御]
図6、図10〜図12に基づいてシフトダウン変速制御の内容について説明する。図6に示すように、シフトダウンボタン62が押し操作されると(ステップS13)、シフトダウン変速制御に移行し(ステップS14)、以下のようにシフトダウン変速制御が自動的に実行される。
図10及び図11に示すように、シフトダウンボタン62が押し操作されると、図11(a)の実線A1(時点B1)に示すように、現在の変速位置よりも1段低速側の1〜4速クラッチ21〜24が、電磁操作弁31b〜34bにより伝動状態に操作され始める(遮断状態の作動圧から昇圧操作され始める:ステップS41)。
この場合、変速レバー28が低速位置L又は高速位置Hに操作された状態で(ステップS42)、以下の操作により所定低圧P3が設定される(ステップS43〜S46)。
無負荷状態(前進及び後進クラッチ5,6が遮断状態に操作され、且つPTOクラッチ3が遮断状態に操作されて、エンジン1に負荷が掛からない状態)でのエンジン回転数と、ハンドアクセルレバー73の操作位置(開度センサー75の検出値)との関係が事前に求められており、ハンドアクセルレバー73の操作位置(開度センサー75の検出値)に基づいて、無負荷状態でのエンジン回転数N1が求められる。
これにより、ハンドアクセルレバー73の操作位置(開度センサー75の検出値)に基づいて、無負荷状態でのエンジン回転数N1が求められ(ステップS43)、回転数センサー72により実際のエンジン回転数N2が検出されて(ステップS44)、無負荷状態でのエンジン回転数N1と回転数センサー72の検出値(実際のエンジン回転数N2)との差(回転数差N3)が検出され(ステップS45)、回転数差N3に基づいて所定低圧P3が設定される(ステップS46)。この場合、例えば回転数差N3が大きいほど、エンジン1に掛かる負荷が大きいと判断されて、所定低圧P3が高圧側に設定される。回転数差N3が小さいほど、エンジン1に掛かる負荷が小さいと判断されて、所定低圧P3が低圧側に設定される(図11(b)の実線A2参照)。
所定低圧P3が設定されると(ステップS46)、図11(b)の実線A2(時点B1)に示すように、伝動状態に操作されている低速又は高速クラッチ26,27の作動圧が、電磁比例弁38,39により伝動状態の作動圧P2から所定低圧P3に減圧操作される(ステップS47)。この場合、5速の変速位置から4速の変速位置への操作時には、高速クラッチ27の作動圧が零に減圧操作されて、低速クラッチ26の作動圧が零から所定低圧P3に昇圧操作される。
低速又は高速クラッチ26,27の作動圧が作動圧P2から所定低圧P3に減圧操作されると、図11(c)に示すように、エンジン制御部81から噴射量制御装置69に第1マップM1から第2マップM2へのマップ変更指令が出力される(ステップS48)。これにより、噴射量制御装置69によって燃料噴射装置68を制御するマップが第1マップM1から第2マップM2に変更される。
この場合、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の作動圧P2から所定低圧P3への減圧操作が開始された後に第1マップM1から第2マップM2へのマップ変更指令を出力するように構成した例を示したが(ステップS47,S48)、マップ変更指令を出力するタイミングは異なるタイミングであってもよく、例えば、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の作動圧P2から所定低圧P3への減圧操作が開始されるのと同時に第1マップM1から第2マップM2へのマップ変更指令を出力するように構成してもよく、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の作動圧P2から所定低圧P3への減圧操作が開示される前、例えば所定低圧P3の演算終了直後(ステップS46の直後)や、所定低圧P3の演算のための回転数N1,N2の検出直後(ステップS44又はS45の直後)等に、第1マップM1から第2マップM2へのマップ変更指令を出力するように構成してもよい。これにより、所定低圧P3の演算に影響を及ぼさないタイミングで第1マップM1から第2マップM2へのマップ変更指令を出力することができる。
次に、図11(a)の実線A1(時点B2から時点B3)に示すように、1段低速側の1速〜4速クラッチ21〜24の作動圧が、電磁操作弁31b〜34bにより伝動状態の作動圧P1に昇圧操作され始める(ステップS41が続行されていることによる)。これと同時に図11(a)の一点鎖線A3(時点B2から時点B3)に示すように、シフトアップボタン61の押し操作前の1速〜4速クラッチ21〜24(シフトアップボタン61の押し操作前に伝動状態に操作されていた1速〜4速クラッチ21〜24)の作動圧が、電磁操作弁31b〜34bにより伝動状態の作動圧P1から零に減圧操作され始める(ステップS49)。
変速レバー28が低速位置L又は高速位置Hに操作された状態で(ステップS50)、図11(b)の実線A2(時点B3から時点B4)に示すように、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧が、電磁比例弁38,39により所定低圧P3から漸次的に昇圧操作される(ステップS51)。これにより、前述の1段低速側の1速〜4速クラッチ21〜24の動力が、低速又は高速クラッチ26,27を介して伝達され始める。
低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の所定低圧P3からの漸次的な昇圧操作が開始されると、図11(c)及び図11(d)に示すように、ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したエンジン回転数NAからハンドアクセルレバー73の操作位置よりも低い側のエンジン回転数NBに回転数指示値を変更する回転数指示値変更指令がエンジン制御部81から噴射量制御装置69に出力される(ステップS52)。これにより、噴射量制御装置69においてハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したエンジン回転数NAでのトルクカーブG1から回転数指示値変更指令に対応したエンジン回転数NBでのトルクカーブG1に設定変更される。
そして、予め設定された設定時間が経過すると、エンジン制御部81から噴射量制御装置69に第2マップM2から第1マップM1へのマップ変更指令を出力され、これと同時に、ハンドアクセルレバー73の操作位置よりも低い側のエンジン回転数NBからハンドアクセルレバー73の操作位置に対応した元のエンジン回転数NAに回転数指示値を変更する回転数指示値変更指令がエンジン制御部81から噴射量制御装置69に出力される(ステップS53)。これにより、噴射量制御装置69において燃料噴射装置68を制御するマップが第2マップM2から第1マップM1に変更され、噴射量制御装置69においてエンジン回転数NBでのトルクカーブG1がハンドアクセルレバー73の操作位置に対応した元のエンジン回転数NAでのトルクカーブG1に変更される。
この場合、エンジン回転数NAからエンジン回転数NBへの回転数指示値変更指令を出力するタイミングや、第2マップM2から第1マップM1へのマップ変更指令を出力するタイミングや、エンジン回転数NBからエンジン回転数NAへの回転数指示値変更指令を出力するタイミングは異なるタイミングであってもよく、例えば、変速終了直後の低速又は高速クラッチ26,27の作動圧が伝動状態の作動圧P2に達したことが圧力センサー63によって検出された後(ステップS54の後)に、これらのいずれか又はすべての処理を実行するように構成してもよい。また、第2マップM2を第1マップM1に変更するのと同時に回転数指示値をエンジン回転数NAから低い側のエンジン回転数NBに変更し、その後に回転数指示値をエンジン回転数NBから元のエンジン回転数NAに変更するように構成してもよい。
低速又は高速クラッチ26,27の作動圧が伝動状態の作動圧P2に達したことが(図11(b)の実線A2の時点B4)、圧力センサー63によって検出されると(ステップS54)、図6に示すように、シフトダウンボタン62の押し操作による変速操作が終了したと判断され、変速操作後の変速位置が変速表示部64に表示され(ステップS15)、ブザー71が1回だけ作動して変速操作の終了が操縦者に報知される(ステップS16)。これにより、ステップS11に移行して、シフトアップボタン61又はシフトダウンボタン62の次の押し操作による変速操作が可能になる。
図12に示すように、例えば、ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応して回転数指示値が最も高い側のエンジン回転数NAに設定され、エンジン1にトルクQ2が作用している状態でシフトダウンボタン62が押し操作されると、先ず、第1マップM1が第2マップM2に変更される(図12のb1→b2)。そして、変速終了直前に回転数指示値がエンジン回転数NAから低い側の隣のエンジン回転数NBに変更され(図12のb2→b3)、その後に第2マップM2が第1マップM1に変更され且つ回転数指示値がエンジン回転数NBから元のエンジン回転数NAに変更される(図12のb3→b1)。このように、変速終了直前に第2マップM2を第1マップM1に変更するだけでなく回転数指示値NA,NBの変更を行って段階的に燃料噴射装置68からの燃料の噴射量を制御することで、変速操作前半において第1マップM1から第2マップM2への変更により変速ショックを効果的に緩和できるように第2マップM2をトルクQの変動に対してエンジン回転数の変動が大きい傾きに設定しながらも、変速操作後半において燃料噴射装置68からの燃料の噴射量の急激な変動を抑えてエンジン回転数の変動を安定させることができる。この場合、トルクQが小さいほど同じ回転数指示値での第1及び第2マップM1,M2におけるトルク差が大きくなるため、トルクQが小さい場合に特に変速ショックを効果的に緩和できる。なお、図12では、回転数指示値が最も高い側のエンジン回転数NAに設定されている場合を例に説明したが、ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応した他の回転数指示値(NB,NC,ND・・・)にエンジン回転数が設定されている場合においても、同様のシフトダウン変速制御が実行される。
そして、図12に示すように、ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応して回転数指示値が最も高い側のエンジン回転数NAに設定されている場合においても、基準トルクQAよりもトルクの小さい領域でシフトダウン変速制御が実行されるので、シフトダウン変速制御において排ガス規制領域Z側にトルクカーブG1が変更されることはない。
図11(e)は、シフトダウン変速制御を実行した場合の実際のエンジン回転数の挙動を例示したものであり、図11(e)の実線で示すように、図11(e)の破線で示す第1及び第2マップM1,M2の変更並びに回転数指示値NA,NBの変更をしないものに比べて変速操作時におけるエンジン回転数の挙動が安定し変速ショックが緩和されていることが理解できる。ここで、図11(e)の斜線で示す網掛け部分は、回転数指示値NA,NBの変更による効果が特に生じる部分を示す。
図10に示すように、変速レバー28が中立位置Nに操作されていると、副変速装置12(シフト部材53)が中立位置に操作されているので、機体は停止している。変速レバー28が中立位置Nに操作された状態において、シフトダウンボタン62が押し操作されると(ステップS13)、前述と同様に第1及び第2主変速装置10,11(1速〜4速クラッチ21〜24、低速及び高速クラッチ26,27)が、1段低速側に操作され(ステップS41,S49)、変速操作後の変速位置が変速表示部64に表示されて(ステップS15)、ブザー71が1回だけ作動する(ステップS16)。この場合、機体は停止しているのでステップS43〜S48,S51〜S54のような、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の所定低圧P3への減圧操作、伝動状態の作動圧P2への昇圧操作、第1及び第2マップM1,M2の変更操作、及びエンジン回転数NA,NBの回転数指示値変更操作は行われない(ステップS42,S50)。
[比較形態]
図13及び図14に基づいて比較形態を説明する。なお、比較形態では[本発明の実施形態]とは異なる点についてのみ説明し、後述する以外の他の構成は、前述の[本発明の実施形態]と同様である。
比較形態においてエンジン1の噴射量制御装置69には、図5の実線で示す通常時用の第1マップM1のみが備えられており、前述の[本発明の実施形態]とは異なり図5の破線で示す変速時用の第2マップM2は備えられていない。
図13及び図14に示すように、シフトアップボタン61が押し操作されると(ステップS61)、図14の実線A1(時点B1)に示すように、現在の変速位置よりも1段高速側の1〜4速クラッチ21〜24が、電磁操作弁31b〜34bにより伝動状態に操作され始める(遮断状態の作動圧から昇圧操作され始める:ステップS62)。シフトダウンボタン62が押し操作されると(ステップS63)、現在の変速位置よりも1段低速側の1〜4速クラッチ21〜24が、電磁操作弁31b〜34bにより伝動状態に操作され始める(遮断状態の作動圧から昇圧操作され始める:ステップS64)。
この場合、変速レバー28が低速位置L又は高速位置Hに操作された状態で(ステップS65)、前述の[本発明の実施形態]と同様に、所定低圧P3が設定され(ステップS66〜S69)、図14(b)の実線A2(時点B1)に示すように、伝動状態に操作されている低速又は高速クラッチ26,27の作動圧が、電磁比例弁38,39により伝動状態の作動圧P2から所定低圧P3に減圧操作される(ステップS70)。
低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の作動圧P2から所定低圧P3への減圧操作が開始されると、シフトアップボタン61が押し操作された場合には、図14(c)の実線に示すように、ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したエンジン回転数NAからハンドアクセルレバー73の操作位置よりも低い側の予め設定されたエンジン回転数NLに回転数指示値を変更する回転数指示値変更指令がエンジン制御部81から噴射量制御装置69に出力され、シフトダウンボタン62が押し操作された場合には、図14(c)の破線に示すように、ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したエンジン回転数NAからハンドアクセルレバー73の操作位置よりも高い側の予め設定されたエンジン回転数NHに回転数指示値を変更する回転数指示値変更指令がエンジン制御部81から噴射量制御装置69に出力される(ステップS71)。これにより、噴射量制御装置69においてハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したエンジン回転数NAでのトルクカーブG1から回転数指示値変更指令に対応したエンジン回転数NL又はエンジン回転数NHでのトルクカーブG1に一時的に設定変更される。
この場合、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の作動圧P2から所定低圧P3への減圧操作が開始された後にエンジン回転数NAからエンジン回転数NL又はエンジン回転数NHへの回転数指示値変更指令を出力するように構成した例を示したが(ステップS70,S71)、回転数指示値変更指令を出力するタイミングは異なるタイミングであってもよく、例えば、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の作動圧P2から所定低圧P3への減圧操作が開始されるのと同時に回転数指示値変更指令を出力するように構成してもよく、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の作動圧P2から所定低圧P3への減圧操作が開示される前、例えば所定低圧P3の演算終了直後(ステップS69の直後)や、所定低圧P3の演算のための回転数N1,N2の検出直後(ステップS67又はS68の直後)等に、回転数指示値変更指令を出力するように構成してもよい。これにより、所定低圧P3の演算に影響を及ぼさないタイミングで回転数指示値変更指令を出力することができる。
図14(c)に示すように、回転数指示値変更指令による回転数指示値(NL,NH)は、ステップ状(矩形状)の波形を呈しており、制御装置76のエンジン制御部81から噴射量制御装置69に出力する回転数指示値変更指令が単純化されている。
ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したエンジン回転数NAからの変更量(NA−NL,NH−NA)は、第1及び第2主変速装置10,11の変速比に応じて、すなわち、シフトアップボタン61及びシフトダウンボタン62による変速前後の第1及び第2主変速装置10,11の変速比に応じて、シフトアップボタン61及びシフトダウンボタン62によって変速する変速位置毎に予め設定されている。
回転数指示値変更指令は、予め設定された所定時間Tの間、エンジン制御部81から噴射量制御装置69に出力されるように構成されており、所定時間Tについても、第1及び第2主変速装置10,11の変速比に応じて、すなわち、シフトアップボタン61及びシフトダウンボタン62による変速前後の第1及び第2主変速装置10,11の変速比に応じて、シフトアップボタン61及びシフトダウンボタン62によって変速する変速位置毎に予め設定されている。
図14(d)は、比較形態で変速制御を実行した場合(例えばシフトアップボタン61が押し操作された場合)の実際のエンジン回転数の挙動を例示したものであり、図14(d)の実線で示すように図14(d)の破線で示す回転数指示値NAの変更をしないものに比べて変速操作時におけるエンジン回転数の挙動が安定し変速ショックが緩和されていることが理解できる。
図14(a)の実線A1(時点B2から時点B3)に示すように、1段高速側又は1段低速側の1速〜4速クラッチ21〜24の作動圧が、電磁操作弁31b〜34bにより伝動状態の作動圧P1に昇圧操作され始める(ステップS62,S64が続行されていることによる)。これと同時に図14(a)の一点鎖線A3(時点B2から時点B3)に示すように、シフトアップボタン61又はシフトダウンボタン62の押し操作前の1速〜4速クラッチ21〜24(シフトアップボタン61又はシフトダウンボタン62の押し操作前に伝動状態に操作されていた1速〜4速クラッチ21〜24)の作動圧が、電磁操作弁31b〜34bにより伝動状態の作動圧P1から零に減圧操作され始める(ステップS72)。
変速レバー28が低速位置L又は高速位置Hに操作された状態で(ステップS73)、図14(b)の実線A2(時点B3から時点B4)に示すように、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧が、電磁比例弁38,39により所定低圧P3から漸次的に昇圧操作される(ステップS74)。これにより、前述の1段高速側又は1段低速側の1速〜4速クラッチ21〜24の動力が、低速又は高速クラッチ26,27を介して伝達され始める。
図14(b)の実線A2の時点B4に示すように、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧が伝動状態の作動圧P2に達したことが、圧力センサー63によって検出されると(ステップS75)、シフトアップボタン61又はシフトダウンボタン62の押し操作による変速操作が終了したと判断されて、変速操作後の変速位置が変速表示部64に表示され(ステップS76)、ブザー71が1回だけ作動して変速操作の終了が操縦者に報知される(ステップS77)。これにより、ステップS61に移行して、シフトアップボタン61又はシフトダウンボタン62の次の押し操作による変速操作が可能になる。
なお、変速レバー28が中立位置Nに操作されている場合には、機体は停止しているので、前述の[本発明の実施形態]と同様にステップS66〜S71,S74,S75のような、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の所定低圧P3への減圧操作、伝動状態の作動圧P2への昇圧操作、及びエンジン回転数NA,NL,NHの回転数指示値変更操作は行われない(ステップS65,S73)。
[別実施形態]
(1)前述の[本発明の実施形態]では、シフトアップ変速制御及びシフトダウン変速制御において、第1及び第2マップM1,M2の変更に加えてエンジン回転数の回転数指示値を変更するように構成した例を示したが、エンジン回転数の回転数指示値を変更せずに第1及び第2マップM1,M2のみを変更するように構成してもよい。
(2)前述の[本発明の実施形態]では、第1及び第2マップM1,M2の2つのマップを変更するように構成した例を示したが、3つ以上のマップを変更するように構成してもよく、例えば図15に記載されているように、通常時用の第1マップM1と変速時用の第2及び第3マップM2,M3の3つのマップを変更するように構成してもよい。
図15に示すように、第3マップM3でのトルクカーブG3の傾きは、第1マップM1でのトルクカーブG1の傾きよりもトルクQの変動に対してエンジン回転数nの変動が大きい傾きに設定され、且つ、第2マップM2でのトルクカーブG2の傾きよりもトルクQの変動に対してエンジン回転数nの変動が小さい傾きに設定されている。
そして、ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したエンジン回転数NAに設定され、エンジン1にトルクQ3が作用している状態で、シフトアップボタン61が押し操作されると、先ず、第1マップM1が第2マップM2に変更される(図15のa1→a2)。そして、変速終了直前又は直後に第2マップM2が第3マップM3に変更され(図15a2→a3)、その後、予め設定された設定時間の経過後に第3マップM3が第1マップM1に変更される(図15のa3→a1)。また、ハンドアクセルレバー73の操作位置に対応したエンジン回転数NAに設定され、エンジン1にトルクQ4が作用している状態で、シフトダウンボタン62が押し操作されると、先ず、第1マップM1が第2マップM2に変更される(図15のb1→b2)。そして、変速終了直前又は直後に第2マップM2が第3マップM3に変更され(図15のb2→b3)、その後、予め設定された設定時間の経過後に第3マップM3が第1マップM1に変更される(図15のb3→b1)。
このように、変速終了直前又は直後に第2マップM2から第3マップM3を経由して段階的に第1マップM1に変更して燃料噴射装置68からの燃料の噴射量を制御することで、変速操作前半において第1マップM1から第2マップM2への変更により変速ショックを効果的に抑制できるように第2マップM2をトルクQの変動に対してエンジン回転数の変動が大きい傾きに設定しながらも、変速操作後半においてエンジン回転数の回転数指示値を変更せずにマップの変更のみによって燃料噴射装置68からの燃料の噴射量の急激な変動を抑えてエンジン回転数の変動を安定させることができる。
(3)前述の[本発明の実施形態]のシフトアップ変速制御において、第2マップM2から第1マップM1へのマップ変更指令を出力するタイミングとして、回転数センサー72からの検出に基づいてエンジン回転数が所定回転数まで上昇回復した場合に第2マップM2から第1マップM1へのマップ変更指令を出力するように構成してもよく、前述の[本発明の実施形態]のシフトダウン変速制御において、第2マップM2から第1マップM1へのマップ変更指令を出力するタイミングとして、回転数センサー72からの検出に基づいてエンジン回転数が所定回転数まで下降安定した場合に第2マップM2から第1マップM1へのマップ変更指令を出力するように構成してもよい。
(4)前述の[本発明の実施形態]では、第1及び第2マップM1,M2のマップ変更指令を出力するタイミングや、エンジン回転数NA,NBの回転数指示値変更指令を出力するタイミングを、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の操作に同期させた例を示したが、低速又は高速クラッチ26,27の作動圧の操作とは無関係に、例えばシフトアップボタン61及びシフトダウンボタン62の変速指令に基づくタイマー設定等により第1及び第2マップM1,M2のマップ変更指令やエンジン回転数NA,NBの回転数指示値変更指令を出力するように構成してもよい。
(5)前述の[本発明の実施形態]では、シフトアップ変速制御及びシフトダウン変速制御において、回転数指示値をエンジン回転数NAから低い側のエンジン回転数NBに変更するように構成した例を示したが、シフトアップ変速制御及びシフトダウン変速制御の少なくともいずれか一方において、回転数指示値をエンジン回転数NAから高い側のエンジン回転数に変更するように構成してもよい。
(6)前述の[本発明の実施形態]では、シフトアップ変速制御とシフトダウン変速制御とで、第1及び第2マップM1,M2のマップ変更指令を出力するタイミングと、エンジン回転数NA,NBの回転数指示値変更指令を出力するタイミングとを異なるタイミングに設定した例を示したが、シフトアップ変速制御とシフトダウン変速制御とで、第1及び第2マップM1,M2のマップ変更指令を出力するタイミングと、エンジン回転数NA,NBの回転数指示値変更指令を出力するタイミングとを、いずれか一方のタイミングに統一してもよい。
(7)変速操作手段としてシフトアップボタン61及びシフトダウンボタン62に限らず例えば変速レバーや変速ペダル等の異なる変速操作具を採用してもよい。また、変速操作手段として人為的に手動で変速操作する人為操作具に限らず、例えば牽引負荷や作業負荷等に応じて制御装置76からの出力により第1及び第2主変速装置10,11を自動変速する場合においては制御装置76自体が変速操作手段として機能するように構成し自動変速による変速操作に対して前述のシフトアップ変速制御及びシフトダウン変速制御を実行するように構成してもよい。
(8)エンジン制御手段としての噴射量制御装置69の機能をトラクタ本機側の制御装置76に備え、エンジン制御手段としての制御装置76を燃料噴射装置68に直接的に接続するように構成してもよい。
(9)アクセル操作具としてハンドアクセルレバー73に限らず、アクセルペダル等の異なるアクセル操作具を採用してもよい
(10)第1及び第2主変速装置10,11としてシフト部材(図示せず)をスライド操作するギヤ変速型式のものや、シフト部材を油圧シリンダ(図示せず)によりスライド操作して操作するものを採用してもよい。
(11)第1及び第2主変速装置10,11として10段や6段等の異なる変速段に変速可能なものを採用してもよく、副変速装置12として高速位置、中速位置及び低速位置の3段に変速可能に構成されたものを採用してもよい。