JP4814732B2 - トラクタの走行変速構造 - Google Patents
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Description
(構成)
本発明の第1特徴は、トラクタの走行変速構造を次のように構成することにある。
エンジンの動力が伝達される複数段に変速自在なギア変速式の主変速装置を備え、油圧多板式の第1クラッチを前記主変速装置に直列的に接続して、前記主変速装置及び第1クラッチの伝動下手側に、複数段に変速自在なギア変速式の副変速装置を備え、前記副変速装置の伝動下手側に油圧多板式の第2クラッチを備えて、前記主変速装置を変速操作する主変速レバーを備え、前記副変速装置を変速操作する副変速レバーを、前記主変速レバーとは別に備え、前記副変速レバーの握り部にクラッチボタンを備えると共に、前記クラッチボタンの操作に基づいて前記第1クラッチ及び第2クラッチを切り操作する制御手段を備える。
本発明の第1特徴によると、副変速装置を変速操作する副変速レバーの握り部にクラッチボタンを備え、クラッチボタンの操作に基づいて第1クラッチ及び第2クラッチを切り操作する制御手段を備えることにより、副変速レバーを変速操作して副変速装置を変速する際にクラッチボタンを操作すると、第1クラッチと第2クラッチを切り操作することができ、エンジンと副変速装置との間の動力の伝達、及び、副変速装置の伝動下手側の動力の伝達を遮断することができる。そのため、エンジンの動力が副変速装置に伝達され難くなって、副変速装置の第1クラッチ側と第2クラッチ側の回転数差を抑えることができて、副変速装置を変速する際のショックを小さくすることができる。
本発明の第1特徴によると、副変速装置を変速する際のショックを小さくすることができるため、副変速装置の変速を無理なく行うことができて、トラクタの乗り心地を向上させることができるとともに、副変速装置を構成する機器(例えば、上述したシフト部材や伝動ギア等)の破損を防止することができる。
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴のトラクタの走行変速構造において、次のように構成することにある。
前記クラッチボタンの操作に基づいて前記第1クラッチ及び第2クラッチを切り操作すると共に前記主変速装置を中立位置に変速操作するように前記制御手段を構成する。
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によれば、クラッチボタンの操作に基づいて主変速装置が中立位置に操作されるように制御手段を構成することにより、副変速レバーを変速操作して副変速装置を変速する際にクラッチボタンを操作すると、エンジンと副変速装置との間に位置する主変速装置を中立位置に操作することができ、エンジンと副変速装置との間の動力の伝達を、第1クラッチと主変速装置の2箇所で遮断することができる。そのため、例えば、エンジンと副変速装置との間の動力の伝達を1箇所で遮断する場合に比べてエンジンの動力が副変速装置に伝達され難くなって、副変速装置を変速する際のショックを小さくすることができる。
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、副変速装置を変速する際のショックを小さくすることができるため、副変速装置の変速操作を無理なく行うことができて、トラクタの乗り心地を向上させることができる。
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1特徴又は第2特徴のトラクタの走行変速構造において、次のように構成することにある。
前記第1クラッチと前記副変速装置のシフト部材との間の伝動経路に位置する伝動軸に、この伝動軸の回転を抑制することが可能なブレーキ装置を備えて、前記クラッチボタンの操作に基づいて前記ブレーキ装置が作動するように前記制御手段を構成する。
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
例えば、第1クラッチを切り操作することによってエンジンと副変速装置との間の動力の伝達を遮断しても、第1クラッチと副変速装置のシフト部材との間の伝動経路に位置する伝動軸(例えば、図1の6,8,11等)や伝動軸に連結された副変速装置の伝動ギア(例えば、図1の45,46)等は、その伝動軸及び伝動ギア自体の慣性によって回転する。そのため、この伝動軸の慣性による回転を抑制することができれば、伝動軸に連結された副変速機構の伝動ギアの慣性による回転を抑制することができて、副変速装置のシフト部材と伝動ギアの回転数差を抑えることができる。そうすると、副変速装置のシフト部材と伝動ギアを噛み合わせる際のショックが小さくなって、副変速装置を変速する際のショックを小さくすることができる。
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、副変速装置を変速する際のショックを小さくすることができるため、副変速装置の変速を無理なく行うことができて、トラクタの乗り心地を向上させることができる。
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第3特徴のトラクタの走行変速構造において次のように構成することにある。
前記クラッチボタンの操作に基づいて前記ブレーキ装置が間欠作動するように前記制御手段を構成する。
本発明の第4特徴によると、本発明の第3特徴と同様に前項[III]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
例えば、請求項3に係る発明のように、クラッチボタンの操作に基づいてブレーキ装置が作動するように制御手段を構成すると、ブレーキ装置によって回転が抑制された伝動軸の回転位置によっては、この伝動軸に連結された副変速装置の第1クラッチ側の伝動ギア(例えば、図1の45,46)と、第2クラッチ側のシフト部材(例えば、図1の47)とがうまく噛み合わないおそれがある。
本発明の第4特徴によると、本発明の第3特徴と同様に前項[III]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、副変速装置を変速する際のショックを小さくすることができるため、副変速装置の変速を無理なく行うことができて、トラクタの乗り心地を向上させることができる。
[V]
(構成)
本発明の第5特徴は、本発明の第1〜第4特徴のいずれか一つのトラクタの走行変速構造において次のように構成することにある。
前記副変速装置の伝動下手側に、前後進切換装置としての油圧多板式の前進クラッチ及び後進クラッチを備え、前記第2クラッチを前記前進クラッチ及び後進クラッチで構成する。
図1は四輪駆動型の農用トラクタの走行伝動系を示しており、まず、主変速装置に相当する第1〜第4主変速装置13,15,14,16について説明する。
次に、副変速装置44について説明する。
図1に示すように、伝動軸2,4と平行に伝動軸5が配置され、伝動軸5に円筒状の伝動軸6(伝動経路に位置する伝動軸に相当)が相対回転自在に外嵌されており、伝動軸6に固定された伝動ギア43が高速ギア28に咬合している。伝動軸5,6の間に、シンクロメッシュ型式の副変速装置44が備えられている。
シフトギア56を伝動ギア55から離間させて伝動ギア51に咬合させた状態で、シフト部材47を伝動ギア46に咬合させると、伝動軸4の動力が高速ギア28及び伝動ギア43,45,50、伝動軸48、伝動ギア52,46を介して伝動軸5に伝達される(副変速装置44の低速位置L)。
シフト部材47を伝動ギア46に咬合させ、シフトギア56を伝動ギア51から離間させて伝動ギア55に咬合させると、伝動軸4の動力が高速ギア28及び伝動ギア43,45,50,51、伝動ギア54,55及び伝動軸49、シフトギア56、伝動軸48、伝動ギア52,46を介して伝動軸5に伝達される(副変速装置44の超低速位置)。
次に、前進及び後進クラッチ75,76(第2クラッチに相当)を備えた前後進切換装置67、及び、この前後進切換装置67から前輪77及び後輪78までの伝動系について説明する。
図1に示すように、伝動軸5と同芯状に伝動軸66が配置されており、伝動軸5,66の間に油圧クラッチ型式の前後進切換装置67が備えられている。
次に、PTO軸3への伝動系について説明する。
図1に示すように、伝動軸2に伝動ギア88が固定されて、伝動軸2の動力が伝動ギア88及び中間ギア89を介して油圧ポンプ90に伝達されており、エンジン1が作動している状態では、油圧ポンプ90に常に動力が伝達されて、油圧ポンプ90が駆動されている。
次に、第1主変速装置13及び第3主変速装置14、第2主変速装置15及び第4主変速装置16の操作構造について説明する。
図1及び図2に示すように、第1主変速装置13において、シフト部材23をスライド操作する複動型で油圧シリンダ型式のアクチュエータ35、アクチュエータ35に作動油を給排操作する制御弁39が備えられ、第3主変速装置14において、シフト部材31をスライド操作する複動型で油圧シリンダ型式のアクチュエータ36、アクチュエータ36に作動油を給排操作する制御弁40が備えられている。アクチュエータ35はシフト部材23が低速ギア21に咬合する低速位置L、シフト部材23が高速ギア22に咬合する高速位置H及び中立位置Nに作動自在に構成されており、アクチュエータ36はシフト部材31が低速ギア29に咬合する低速位置L、及びシフト部材31が高速ギア30に咬合する高速位置Hに作動自在に構成されている。
この農用トラクタでは第1変速モード及び第2変速モードが制御装置64に備えられており、運転者が操作スイッチ65により第1変速モード及び第2変速モードを選択する。操作スイッチ65を押し操作せずに主変速レバー63を操作すると、第1変速モードが選択され、操作スイッチ65を押し操作して主変速レバー63を操作すると、第2変速モードが選択される。
主変速レバー63及び操作スイッチ65を操作する前の状態において、現在の第1及び第3主変速装置13,14、第2及び第4主変速装置15,16の変速位置(1速位置〜8速位置)が、表示部53に表示されている(ステップS1)。この状態において、操作スイッチ65を押し操作せずに(ステップS2)、主変速レバー63を操作すると(ステップS3)、第1変速モードが設定される。
以上のようにして、1速位置から2速位置への操作が終了するのであり、操作後の第1及び第3主変速装置13,14、第2及び第4主変速装置15,16の変速位置(2速位置)が表示部53に表示される(ステップS18)。
次に、第1変速モードの後半について、図6に基づいて説明する。
前項[6]に記載のような1速位置から2速位置への操作が終了すると、ステップS22,S4からステップS12に移行し、シフト部材26,34が2速位置の状態で、シフト部材23,31が3速位置の状態に操作される(ステップS12)。この場合、シフト部材31は高速位置Hに操作されずに低速位置Lに残される(ステップS13を通過)(図8参照)。前進クラッチ75(後進クラッチ76)が作動圧P2(作動圧P0,P1の間の中間)に速やかに減圧されて、半伝動状態に操作され(ステップS14)、これと略同時に第1伝動クラッチ9が作動圧P0から比較的速やかに昇圧されて伝動状態に操作されながら、第2伝動クラッチ12が作動圧P1から比較的速やかに減圧されて遮断状態に操作される(ステップS15)。
以上のようにして、2速位置から3速位置への操作が終了するのであり、操作後の第1及び第3主変速装置13,14、第2及び第4主変速装置15,16の変速位置(3速位置)が表示部53に表示される(ステップS18)。
以上のようにして、1段ずつの操作及び操作後の第1及び第3主変速装置13,14、第2及び第4主変速装置15,16の変速位置の表示が繰り返されて、主変速レバー63が停止した目標変速位置(5速位置)に達すると(ステップS22)、操作が終了する。
次に、第2変速モードについて、図4,5,7に基づいて説明する。
主変速レバー63及び操作スイッチ65を操作する前の状態において、現在の第1及び第3主変速装置13,14、第2及び第4主変速装置15,16の変速位置(1速位置〜8速位置)が、表示部53に表示されている(ステップS1)。この状態において、操作スイッチ65を押し操作すると(ステップS2)、第2変速モードが設定される。
次に前進クラッチ75(後進クラッチ76)が作動圧P0から漸次的に昇圧されて作動圧P1に達し(実線A3参照)、前進クラッチ75(後進クラッチ76)が伝動状態に操作される(ステップS37)(時点T24)(実線A3参照)。以上のようにして、操作を終了する。
次に、ブレーキ装置110の構造について、図9及び図10に基づいて説明する。
図9及び図10に伝動軸6の回転を抑制することが可能なブレーキ装置110の構造を示す。図9及び図10に示すように、この農用トラクタのブレーキ装置110は、ブレーキドラム111、ブレーキアーム112、ブレーキシリンダ113、ブレーキライニング116等によって、伝動軸6の回転を抑制することが可能に構成されている。
次に、クラッチ切り制御の前半について、図2及び図11に基づいて説明する。
図2に示すように、この農用トラクタの制御装置64には、ブレーキシリンダ113に作動油を給排操作する電磁比例減圧弁型式の電磁弁105を備え、制御装置64から電磁弁105に電流を供給することでブレーキシリンダ113を短縮することができ、制御装置64から電磁弁105への電流の供給を止めることでブレーキシリンダ113が伸長することができるように構成されている。
次に、ブレーキ装置間欠作動制御について、図12及び図13に基づいて説明する。
図12にブレーキ装置間欠作動制御の制御フローを示す。図12に示すように、クラッチボタン107が押されて(ステップS41〜44)、ブレーキシリンダ間欠作動制御に移行すると(ステップS45)、ブレーキシリンダ113に作動油を供給する電磁弁105へ電流を供給し、ブレーキシリンダ113を短縮させてブレーキ装置110を作動させる(ステップS51)。ブレーキ装置110を作動させる時間はタイマー1において設定されており(第1設定時間t1)、このタイマー1において設定した第1設定時間t1の間ブレーキ装置110を作動させる(ステップS52・NO,S53・YES)。
次に、クラッチ切り制御の後半について、図11に基づいて説明する。
図11に示すように、クラッチボタン107の押し操作が解除されてブレーキ装置間欠作動制御が終了すると、第2クラッチに相当する前進及び後進クラッチ75,76に作動油を給排操作する制御弁59,60に制御装置64から第2クラッチ入り指令を発し(ステップS46)、前進及び後進クラッチ75,76を伝動状態に入り操作する。次に、第1クラッチに相当する第1及び第2伝動クラッチ9,12に作動油を給排操作する制御弁61,62に制御装置64から第1クラッチ入り指令を発し(ステップS47)、第1及び第2伝動クラッチ9,12を伝動状態に入り操作する。さらに、主変速装置に相当する第1及び第2主変速装置13,15を操作するアクチュエータ35,37に作動油を給排操作する制御弁39,41に制御装置64から主変速装置復帰指令を発し(ステップS48)、第1及び第2主変速装置13,15を中立位置Nに操作する前の変速位置(L又はH)に操作する。
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、主変速装置に相当する第1及び第3主変速装置13,14と、第2及び第4主変速装置15,16の2系統を設けて、8速に変速可能に主変速装置を構成した例を示したが、複数段に変速自在なギア変速式の主変速装置であれば、変速段数や、第1〜第4主変速装置13〜16の組み合わせ等は異なるものであってもよい。例えば、第1及び第3主変速装置13,14、又は、第2及び第4主変速装置15,16のいずれか1系統のみによって主変速装置を構成してもよく、第1主変速装置13と第2主変速装置15との組み合わせによって主変速装置を構成してもよい。
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、伝動軸6にブレーキ装置110を備えて、伝動軸6の回転を抑制可能に構成した例を示したが、第1クラッチに相当する第1及び第2伝動クラッチ9,12と副変速装置44のシフト部材47との間の伝動経路に位置する伝動軸であれば、他の伝動軸にブレーキ装置110を備える構成を採用してもよく、例えば、伝動軸4、第3及び第4主伝動軸8,11、伝動軸48等にブレーキ装置110を備える構成を採用してもよい。
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]において、農用トラクタの走行変速構造を例に示したが、前輪77及び後輪78に代えて右及び左のクローラ走行装置(図示せず)を備えたトラクタにも適用できる。
6 伝動軸
9,12 伝動クラッチ(第1クラッチ)
13,14,15,16 主変速装置
44 副変速装置
47 シフト部材
63 主変速レバー
64 制御装置(制御手段)
67 前後進切換装置
75,76 前進及び後進クラッチ(第2クラッチ)
106 副変速レバー
106a 握り部
107 クラッチボタン
110 ブレーキ装置
Claims (5)
- エンジンの動力が伝達される複数段に変速自在なギア変速式の主変速装置を備え、油圧多板式の第1クラッチを前記主変速装置に直列的に接続して、前記主変速装置及び第1クラッチの伝動下手側に、複数段に変速自在なギア変速式の副変速装置を備え、前記副変速装置の伝動下手側に油圧多板式の第2クラッチを備えて、
前記主変速装置を変速操作する主変速レバーを備え、前記副変速装置を変速操作する副変速レバーを、前記主変速レバーとは別に備え、
前記副変速レバーの握り部にクラッチボタンを備えると共に、前記クラッチボタンの操作に基づいて前記第1クラッチ及び第2クラッチを切り操作する制御手段を備えてあるトラクタの走行変速構造。 - 前記クラッチボタンの操作に基づいて前記第1クラッチ及び第2クラッチを切り操作すると共に前記主変速装置を中立位置に変速操作するように前記制御手段を構成してある請求項1記載のトラクタの走行変速構造。
- 前記第1クラッチと前記副変速装置のシフト部材との間の伝動経路に位置する伝動軸に、この伝動軸の回転を抑制することが可能なブレーキ装置を備えて、前記クラッチボタンの操作に基づいて前記ブレーキ装置が作動するように前記制御手段を構成してある請求項1又は2記載のトラクタの走行変速構造。
- 前記クラッチボタンの操作に基づいて前記ブレーキ装置が間欠作動するように前記制御手段を構成してある請求項3記載のトラクタの走行変速構造。
- 前記副変速装置の伝動下手側に、前後進切換装置としての油圧多板式の前進クラッチ及び後進クラッチを備え、前記第2クラッチを前記前進クラッチ及び後進クラッチで構成してある請求項1〜4のいずれか一項に記載のトラクタの走行変速構造。
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