JP4585537B2 - トラクタの伝動構造 - Google Patents
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Description
この場合、特許文献1では変速装置の操作時において、伝動クラッチの作動圧を所定低圧に減圧する際に、エンジンに掛かる負荷等の条件に応じて、前述の所定低圧を高圧側及び低圧側に変更することによって、伝動クラッチや変速装置に大きな負荷が掛からないように、ショック少なく変速装置の操作が行われるように構成している。
本発明は、エンジンの下手側に摩擦式の伝動クラッチと変速装置とを直列に配置したトラクタの伝動構造において、変速装置が変速位置に保持された状態で、伝動クラッチや変速装置に大きな負荷が掛からないようにすることを目的としている。
(構成)
本発明の第1特徴は、トラクタの伝動構造において次のように構成することにある。
エンジンの下手側に、摩擦式の伝動クラッチと変速装置と副変速装置とを直列に配置して、副変速装置を超低速位置、低速位置及び高速位置に操作自在に構成する。伝動クラッチの結合力を強弱に変更して伝動クラッチのトルクを高低に変更する結合力変更手段を備える。副変速装置が超低速位置に操作されている状態において、伝動クラッチの半伝動状態よりも強い予め設定された一定値の結合力が得られるように結合力変更手段を操作し、且つ、副変速装置が高速位置に操作されている状態において、副変速装置の超低速位置での結合力よりも強い結合力で伝動クラッチが伝動状態となる予め設定された一定値の結合力が得られるように結合力変更手段を操作し、且つ、副変速装置が低速位置に操作されている状態において、副変速装置の超低速位置での結合力と副変速装置の高速位置での結合力との間で、変速装置の高速側での伝動クラッチの結合力よりも変速装置の低速側での伝動クラッチの結合力が変速装置の変速位置に応じて段階的に弱くなるように、変速装置の変速位置に対応させて変速装置の変速位置が低速側ほど段階的に弱くなる形態で変速装置の変速位置毎に予め設定された伝動クラッチの結合力が得られるように、結合力変更手段を操作する制御手段を備える。
一般に、変速装置が高速側に操作されると、伝動クラッチ及び変速装置から高回転低トルクの動力が伝達されようとするのであり、変速装置が低速側に操作されると、伝動クラッチ及び変速装置から低回転高トルクの動力が伝達されようとする。
これによって、変速装置が低速側の変速位置に保持された状態で、作業地や作業装置の状態の変化により、作業地や作業装置の抵抗が大きくなると、これに伴って伝動クラッチや変速装置に掛かる負荷が大きくなるのであり、この後にエンジンの回転数の低下やエンジンの停止に発展する。
本発明の第1特徴によると、エンジンの下手側に摩擦式の伝動クラッチと変速装置とを直列に配置したトラクタの伝動構造において、変速装置が低速側の変速位置に保持された状態で、伝動クラッチや変速装置に掛かる負荷が大きくなると、伝動クラッチが滑るように構成することにより、伝動クラッチや変速装置に大きな負荷が掛かる状態を回避することができるようになって、伝動クラッチや変速装置の破損の防止及び耐久性の向上を図ることができた。
これと同時に、エンジンに大きな負荷が掛かる状態も回避されて、エンジンの回転数の低下やエンジンの停止が回避されるようになり、作業の一時中断のような事態を回避することができて、作業性の向上を図ることができた。
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴のトラクタの伝動構造において次のように構成することにある。
伝動クラッチが、前後進切換装置の前進クラッチ及び後進クラッチである。
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1又は第2特徴のトラクタの伝動構造において次のように構成することにある。
伝動クラッチの上手側の回転数を検出する第1回転数センサーと、伝動クラッチの下手側の回転数を検出する第2回転数センサーとを備える。第1及び第2回転数センサーの検出値に基づいて、伝動クラッチに滑りが発生したことが検出されると、伝動クラッチの結合力が強められるように、結合力変更手段を操作する結合力上昇手段を備える。
本発明の第3特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
主に変速装置が低速側の変速位置に保持された状態において、前項[I]に記載のように、伝動クラッチに滑りが発生した場合(主に変速装置の高速側での伝動クラッチの結合力よりも、変速装置の低速側での伝動クラッチの結合力が弱いことによる)、伝動クラッチが滑る状態が長時間に亘ると、伝動クラッチの破損(例えば焼き付き等)、走行速度や作業装置の作動速度の低下に発展する。
本発明の第3特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によれば、主に変速装置が低速側の変速位置に保持された状態において、伝動クラッチに滑りが発生しても、伝動クラッチの結合力を強めて、伝動クラッチの長時間に亘る滑りを抑えることにより、伝動クラッチの破損(例えば焼き付き等)に発展する状態を回避することができるようになって、伝動クラッチの耐久性の向上を図ることができた。
これと同時に、走行速度や作業装置の作動速度の低下が回避されて、作業性の向上を図ることができた。
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第1〜3特徴のうちのいずれか一つのトラクタの伝動構造において次のように構成することにある。
エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサーを備える。エンジン回転数センサーの検出値が低下すると、伝動クラッチの結合力が弱められるように、結合力変更手段を操作する結合力低下手段を備える。
本発明の第4特徴によると、本発明の第1〜3特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
主に変速装置が高速側の変速位置に保持された状態においては、前項[I]に記載のように、伝動クラッチに滑りは発生し難い(主に変速装置の低速側での伝動クラッチの結合力よりも、変速装置の高速側での伝動クラッチの結合力が強いことによる)。この状態において、作業地や作業装置の抵抗が大きくなると、エンジンに掛かる負荷が大きくなり、エンジンの回転数の低下に発展する。
本発明の第4特徴によると、本発明の第1〜3特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第4特徴によれば、主に変速装置が高速側の変速位置に保持された状態において、エンジンの回転数が低下すると、伝動クラッチの結合力を弱めて、エンジンの回転数を回復させることにより、走行速度や作業装置の作動速度の低下が回避されて、作業性の向上を図ることができた。
図1は四輪駆動型のトラクタの走行伝動系を示しており、先ず第1主変速装置13(変速装置に相当)、第2主変速装置15(変速装置に相当)、第1副変速装置14(変速装置に相当)、第2副変速装置16(変速装置に相当)について説明する。
次に、副変速装置44について説明する。
図1に示すように、伝動軸2,4と平行に伝動軸5が配置され、伝動軸5に円筒状の伝動軸6が相対回転自在に外嵌されており、伝動軸6に固定された伝動ギヤ43が高速ギヤ28に咬合している。伝動軸5,6の間に、シンクロメッシュ型式の副変速装置44が備えられている。
シフト部材47を伝動ギヤ46に咬合させ、シフトギヤ56を伝動ギヤ55から離間させて伝動ギヤ51に咬合させると、伝動軸4の動力が高速ギヤ28及び伝動ギヤ43,45,50、伝動軸48、伝動ギヤ52,46を介して伝動軸5に伝達される(副変速装置44の低速位置)。
シフト部材47を伝動ギヤ46に咬合させ、シフトギヤ56を伝動ギヤ51から離間させて伝動ギヤ55に咬合させると、伝動軸4の動力が高速ギヤ28及び伝動ギヤ43,45,50,51、伝動ギヤ54,55及び伝動軸49、シフトギヤ56、伝動軸48、伝動ギヤ52,46を介して伝動軸5に伝達される(副変速装置44の超低速位置)。
次に、前後進切換装置67、前後進切換装置67(前進クラッチ75(伝動クラッチに相当)及び後進クラッチ76(伝動クラッチに相当))から前輪77及び後輪78までの伝動系について説明する。
図1に示すように、伝動軸5と同芯状に伝動軸66が配置されており、伝動軸5,66の間に油圧クラッチ型式の前後進切換装置67が備えられている。
次に、PTO軸3への伝動系について説明する。
図1に示すように、伝動軸2に伝動ギヤ88が固定されて、伝動軸2の動力が伝動ギヤ88及び中間ギヤ89を介して油圧ポンプ90に伝達されており、エンジン1が作動している状態では、油圧ポンプ90に常に動力が伝達されて、油圧ポンプ90が駆動されている。
次に、第1主変速装置13及び第1副変速装置14、第2主変速装置15及び第2副変速装置16の操作構造について説明する。
図1及び図2に示すように、第1主変速装置13において、シフト部材23をスライド操作する複動型で油圧シリンダ型式のアクチュエータ35、アクチュエータ35に作動油を給排操作する制御弁39が備えられ、第1副変速装置14において、シフト部材31をスライド操作する複動型で油圧シリンダ型式のアクチュエータ36、アクチュエータ36に作動油を給排操作する制御弁40が備えられている。アクチュエータ35はシフト部材23が低速ギヤ21に咬合する低速位置L、シフト部材23が高速ギヤ22に咬合する高速位置H及び中立位置Nに作動自在に構成されており、アクチュエータ36はシフト部材31が低速ギヤ29に咬合する低速位置L、及びシフト部材31が高速ギヤ30に咬合する高速位置Hに作動自在に構成されている。
この農用トラクタでは第1変速モード及び第2変速モードが制御装置64に備えられており、運転者が操作スイッチ65により第1変速モード及び第2変速モードを選択する。操作スイッチ65を押し操作せずに変速レバー63を操作すると、第1変速モードが選択され、操作スイッチ65を押し操作して変速レバー63を操作すると、第2変速モードが選択される。
変速レバー63及び操作スイッチ65を操作する前の状態において、現在の第1主及び副変速装置13,14、第2主及び副変速装置15,16の変速位置(1速位置〜8速位置)が、表示部53に表示されている(ステップS1)。この状態において、操作スイッチ65を押し操作せずに(ステップS2)、変速レバー63を操作すると(ステップS3)、第1変速モードが設定される。
以上のようにして、1速位置から2速位置への操作が終了するのであり、操作後の第1主及び副変速装置13,14、第2主及び副変速装置15,16の変速位置(2速位置)が表示部53に表示される(ステップS18)。
次に、第1変速モードの後半について、図6に基づいて説明する。
前項[6]に記載のような1速位置から2速位置への操作が終了すると、ステップS22,S4からステップS12に移行し、シフト部材26,34が2速位置の状態で、シフト部材23,31が3速位置の状態に操作される(ステップS12)。この場合、シフト部材31は高速位置Hに操作されずに低速位置Lに残される(ステップS13を通過)(図8参照)。前進クラッチ75(後進クラッチ76)が作動圧P2(作動圧P0,P1の間の中間)に速やかに減圧されて、半伝動状態に操作され(ステップS14)、これと略同時に第1油圧クラッチ9が作動圧P0から比較的速やかに昇圧されて伝動状態に操作されながら、第2油圧クラッチ12が作動圧P1から比較的速やかに減圧されて遮断状態に操作される(ステップS15)。
以上のようにして、2速位置から3速位置への操作が終了するのであり、操作後の第1主及び副変速装置13,14、第2主及び副変速装置15,16の変速位置(3速位置)が表示部53に表示される(ステップS18)。
以上のようにして、1段ずつの操作及び操作後の第1主及び副変速装置13,14、第2主及び副変速装置15,16の変速位置の表示が繰り返されて、変速レバー63が停止した目標変速位置(5速位置)に達すると(ステップS22)、操作が終了する。
次に、第2変速モードについて、図4,5,7に基づいて説明する。
変速レバー63及び操作スイッチ65を操作する前の状態において、現在の第1主及び副変速装置13,14、第2主及び副変速装置15,16の変速位置(1速位置〜8速位置)が、表示部53に表示されている(ステップS1)。この状態において、操作スイッチ65を押し操作すると(ステップS2)、第2変速モードが設定される。
次に前進クラッチ75(後進クラッチ76)が作動圧P0から漸次的に昇圧されて作動圧P1に達し(実線A3参照)、前進クラッチ75(後進クラッチ76)が伝動状態に操作される(ステップS37)(時点T24)(実線A3参照)。以上のようにして、操作を終了する。
次に、前項[6][7][8]に記載の第1及び第2変速モードにおいて、前進クラッチ75(後進クラッチ76)の作動圧P1(伝動状態)について説明する。
図2,3,4に示すように、制御弁59,60により前進クラッチ75(後進クラッチ76)の作動圧P1(伝動状態)を高低に変更することにより、前進クラッチ75(後進クラッチ76)の結合力を強弱に変更することができるのであり、前進クラッチ75(後進クラッチ76)のトルクを高低に変更することができる(作動圧P1(伝動状態)が高くなると結合力が強くなり、トルクが高くなる。作動圧P1(伝動状態)が低くなると結合力が弱くなり、トルクが低くなる)。
図9に示すように、副変速装置44が高速位置に操作されていると、第1主及び副変速装置13,14、第2主及び副変速装置15,16の1速位置〜8速位置に関係なく、前進クラッチ75(後進クラッチ76)の作動圧P1(伝動状態)が、最大の作動圧P11に設定されて、前項[6][7][8]に記載の第1及び第2変速モードの操作が行われる。
次に、前項[6][7][8]に記載の第1及び第2変速モードにおいて、第1主及び副変速装置13,14、第2主及び副変速装置15,16が1速位置〜8速位置に操作(保持)され、副変速装置44の高速位置、低速位置及び超低速位置に操作(保持)された状態において、前進クラッチ75及び後進クラッチ76に滑りが発生した場合について説明する。
後進クラッチ76を伝動状態(前進クラッチ75を遮断状態)に操作した状態においても同様に、第1及び第2回転数センサー105,106の検出値が、前述の所定の逆転関係から外れると、後進クラッチ76に滑りが発生したと判断されて、前述と同様な操作が後進クラッチ76に対して行われる。
次に、前項[6][7][8]に記載の第1及び第2変速モードにおいて、第1主及び副変速装置13,14、第2主及び副変速装置15,16が1速位置〜8速位置に操作(保持)されて、副変速装置44の高速位置、低速位置及び超低速位置に操作(保持)された状態において、エンジン1の回転数が低下した場合について説明する。
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、前進クラッチ75及び後進クラッチ76を伝動軸5,72の間ではなく、エンジン1と第4ギヤ20との間の伝動軸2の部分に備えてもよい。
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、副変速装置44が低速位置に操作されている状態で、作動圧P1を8段階に設定するのではなく、6段階に設定したり、4段階に設定したりしてもよい。
本発明は、PTOクラッチ92及びPTO変速装置93に対しても適用できる。本発明は、特許文献1のように油圧クラッチ型式の走行用の変速装置を備えた作業車に適用することもでき、前輪77及び後輪78に代えて右及び左のクローラ走行装置(図示せず)を備えた作業車にも適用できる。
13,14,15,16 変速装置
44 副変速装置
59,60 結合力変更手段
64 制御手段
67 前後進切換装置
75,76 伝動クラッチ(前進クラッチ)(後進クラッチ)
105 第1回転数センサー
106 第2回転数センサー
108 エンジン回転数センサー
Claims (4)
- エンジンの下手側に、摩擦式の伝動クラッチと変速装置と副変速装置とを直列に配置して、前記副変速装置を超低速位置、低速位置及び高速位置に操作自在に構成し、
前記伝動クラッチの結合力を強弱に変更して伝動クラッチのトルクを高低に変更する結合力変更手段を備え、
前記副変速装置が超低速位置に操作されている状態において、前記伝動クラッチの半伝動状態よりも強い予め設定された一定値の結合力が得られるように前記結合力変更手段を操作し、且つ、前記副変速装置が高速位置に操作されている状態において、前記副変速装置の超低速位置での結合力よりも強い結合力で前記伝動クラッチが伝動状態となる予め設定された一定値の結合力が得られるように前記結合力変更手段を操作し、且つ、前記副変速装置が低速位置に操作されている状態において、前記副変速装置の超低速位置での結合力と前記副変速装置の高速位置での結合力との間で、前記変速装置の高速側での伝動クラッチの結合力よりも前記変速装置の低速側での伝動クラッチの結合力が前記変速装置の変速位置に応じて段階的に弱くなるように、前記変速装置の変速位置に対応させて前記変速装置の変速位置が低速側ほど段階的に弱くなる形態で前記変速装置の変速位置毎に予め設定された伝動クラッチの結合力が得られるように、前記結合力変更手段を操作する制御手段を備えてあるトラクタの伝動構造。 - 前記伝動クラッチが、前後進切換装置の前進クラッチ及び後進クラッチである請求項1に記載のトラクタの伝動構造。
- 前記伝動クラッチの上手側の回転数を検出する第1回転数センサーと、前記伝動クラッチの下手側の回転数を検出する第2回転数センサーとを備えて、
前記第1及び第2回転数センサーの検出値に基づいて、前記伝動クラッチに滑りが発生したことが検出されると、前記伝動クラッチの結合力が強められるように、前記結合力変更手段を操作する結合力上昇手段を備えてある請求項1又は2に記載のトラクタの伝動構造。 - 前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサーを備えて、
前記エンジン回転数センサーの検出値が低下すると、前記伝動クラッチの結合力が弱められるように、前記結合力変更手段を操作する結合力低下手段を備えてある請求項1〜3のうちのいずれか一つに記載のトラクタの伝動構造。
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