JP4986695B2 - 検査デバイスの検出部の形成方法及びラテラルフロー免疫測定用検査デバイス - Google Patents

検査デバイスの検出部の形成方法及びラテラルフロー免疫測定用検査デバイス Download PDF

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Description

本発明は、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの検出部の形成方法及び該方法により形成された検出部を有するラテラルフロー免疫測定用検査デバイスに関する。
近年、ウイルスや細菌等の病原体感染の有無、妊娠の有無などの様々な検査を短時間のうちに行う簡易検査試薬やキットが開発されている。病原体構成成分、ヒト絨毛性ゴナドトロピン等が検出あるいは定量の対象である。簡易検査試薬の多くは、特別な設備を必要とせず操作も簡単で安価であるという特徴を有しており、例えば、妊娠診断のための簡易検査試薬は一般薬局で販売されている。また、病原体の感染を検査する簡易検査試薬は、他の検査試薬と異なり、大病院や医療検査センター以外にも一般の病院や診療所で広く使用されている。これらの施設は患者が最初に訪れる医療機関である場合が多く、患者から採取した検体についてその場で感染の有無が判明すれば、早い段階で治療措置を施すことができる。このような簡易検査試薬を用いる検査は、ポイント・オブ・ケア・テスティング(POCT)と呼ばれ、医療の質の向上に大きく役立つとして、その重要性は益々高まってきている。
現在、簡易検査方法として、抗原抗体反応を利用した免疫測定法、特に多孔性基材としてニトロセルロース等のメンブランを用いた測定法が一般に知られており、フロースルー方式とラテラルフロー方式に大別される。前者は、被検出物を含む検体試料を、メンブランに対して垂直方向に通過させるものであり、後者は水平方向に展開させるものである。いずれの場合も捕捉物質−被検出物−標識体の複合体をメンブラン上に形成させて、標識を検出/定量することで、被検出物の検出を行うという点で共通している。ラテラルフロー方式は、フロースルー方式に比べ測定装置が簡単で、またコストの点でも優れているため多種多様の抗原の検出に広く用いられつつある。
前記のようなメンブランを用いた測定系において、最近では、金粒子に代え着色ラテックス粒子、蛍光ラテックス粒子、磁性ラテックス粒子等を用いた測定系が確立され測定対象もより拡大されつつある。特に、ラテラルフロー免疫測定法は、抗体を調製することができれば、広範囲の対象病原微生物抗原が測定可能となるので、有力な簡易検査試薬として大いに期待されている。
一般的には、ラテラルフロー免疫測定法は、測定(反応)に要する時間が10〜15分間で、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、C反応性タンパク質、ミオグロビン、心筋トロポニン等のような検出と治療措置に急を要する項目の簡易検査としては、より短時間で、より高感度な測定方法が求められ、多くの改良研究が行われている。
前記のラテラルフロー免疫測定法の一つの形態においては、ニトロセルロース等のメンブランストリップ上に被検出物と特異的に結合する抗体を捕捉物質として固相化した検出部、及び被検出物と特異的に結合する標識体を含む標識体部を備えた検査デバイスに、被検出物を含む検体試料を滴下して、被検出物−標識体の複合体を形成させながら展開して検出部の捕捉物質でこの複合体を捕捉し標識を検出/定量することで、被検出物の検出(測定あるいは定量)を行う。
検出部は、捕捉物質として被検出物と抗原抗体反応する抗体がニトロセルロースメンブランに固相化された状態で用いられるが、この場合、検出感度は固相化された捕捉物質の量に比例することが知られている。
従って、固相化される捕捉物質の量を増大することができれば、検出感度の向上につながるが、捕捉物質を含む溶液をメンブランに直接塗布して固相化する従来の方法では、メンブランの単位面積当たりに固相化できる抗体量が限られ、検出感度、測定時間に関する大きな改善を果たすことが困難であった。
また、前記したラテラルフロー免疫測定法においては、検体試料を滴下して、被検出物−標識体の複合体を形成させながら展開して検出部でこの複合体を捕捉することで標識を検出/定量するが、この場合、被検出物−標識体の複合体の相当量が検出部で捕捉されないで素通りしてしまう現象も知られていて、このことも検出感度の向上を妨げる要因と推察される。
前記の(1)「塗布によって固相化できる単位面積当たりの抗体量」の問題、および(2)「被検出物−標識体の複合体の相当量が検出部を通過してしまう」問題のいずれをも解決する方法として、抗原抗体反応を高めるためにラテックス粒子等に捕捉物質を結合させ、これを固相化して検出部として用いることで検出感度を高める方法が開発され、例えば、「非特許文献1」には、メンブラン中を移動することができないような直径が大きな捕捉物質結合ラテックス粒子をメンブランのマトリックスに絡ませることにより固相化する方法が記載されている。
更に、捕捉物質を結合させた直径の大きいラテックス粒子やシリカ粒子等をガラス、ポリマー、セルロースアセテート等からなるマトリックスに絡ませることにより固相化する方法が、特許文献1に記載されている。
しかしながら、これらの方法によっても十分な感度向上を達成することが困難であり、それに伴なう測定時間の短縮についても、十分満足のいくものではなかった。
TechNote #301 Rev. #001 Active: 8/2/99, Immunological Applications, Bangs Laboratories,Inc. 米国特許出願公開第2006/0040408号明細書
本発明の目的は、前記の問題点を改善し、従来の測定方法よりも更に迅速且つ高感度に被検出物の存在を検出又は定量することを可能にするラテラルフロー免疫測定用検査デバイス並びにその検出部の形成方法を提供することである。
本願発明者は、鋭意研究の結果、多孔性基材としてニトロセルロースメンブランを採用すると共に、捕捉物質を結合する前の状態において前記ニトロセルロースメンブラン中をラテラル方向に自由に流通できる粒子径を有するラテックス粒子上に捕捉物質を結合したラテックス粒子を、常態で白色粉末状である界面活性剤の存在下でラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの検出部を構成するニトロセルロースメンブランに施し乾燥させることにより、従来の測定方法よりも更に迅速且つ高感度に被検出物の存在を検出又は定量することを可能にするラテラルフロー免疫測定用検査デバイスが作製できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、緩衝剤を含む液体媒体中に浮遊された状態にある、被検出物と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を捕捉物質として結合したラテックス粒子と、常態で白色粉末状である界面活性剤を、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの検出部を構成するニトロセルロースメンブランに施し乾燥させることを含む、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの検出部の形成方法であって、前記ラテックス粒子は、前記捕捉物質を結合する前の状態において前記ニトロセルロースメンブラン中をラテラル方向に自由に流通できる粒子径を有する、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの検出部の形成方法を提供する。また、本発明は、上記本発明の方法により形成された検出部を有するラテラルフロー免疫測定用検査デバイスを提供する。
本発明の方法を用いて形成された検出部を有する検査デバイスを用いることにより、検出試験の際に検体試料/標識体が検出部の捕捉物質結合ラテックス粒子の間に速やかに浸透でき、
1)捕捉物質と被検出物−標識体の複合体との抗原抗体反応が速く進む、
2)捕捉物質結合ラテックス粒子により検出部領域のニトロセルロースメンブランの流路が狭まるため(検出部流路の実質上の抗体量を向上させる)、捕捉物質と被検出物−標識体の複合体との接触頻度が増してより多くの抗原抗体反応が起る、
により被検出物−標識体の複合体を検出部の捕捉物質結合ラテックス粒子によって効率よく捕捉することができ、特に、医療現場で検体中の被検出物を迅速且つ高感度に測定することができる。
本発明のデバイスは、前記のようにラテラルフロー免疫測定用検査デバイスであり、メンブランとしてはニトロセルロースメンブランを用いるものである。ニトロセルロースメンブランは、ラテラルフロー免疫測定に求められる、
大きなタンパク質結合量、
適度な孔径、
膜厚等の均一性、
に優れた特徴を有することから、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイス用のメンブランとして、広く用いられているものである。
さらに、後で詳しく述べるように、本発明の方法に用いるラテックス粒子は、ニトロセルロースメンブランをラテラル方向に自由に流通できる粒子径(直径)を有するが、捕捉物質を結合した後では、検出部から流出しないことが必要である。ニトロセルロースは、タンパク質をよく吸着するので、ラテックス粒子の粒子径が十分に小さくても、捕捉物質結合ラテックス粒子は、検出部に保持されるようになる。この点からも、ニトロセルロースメンブランを用いることが必要である。
ニトロセルロースメンブランの厚さは特に限定されないが、好ましくは50μm以上、200μm未満、より好ましくは100μm以上、150μm未満である。ニトロセルロースメンブランがこの範囲の厚さを有する場合には、必要な強度が得られると共に、ラテックス粒子浮遊液の塗布により検出部を形成した際にラテックス粒子や界面活性剤が均一に分布した検出部を容易に得ることができる。
本発明の方法に用いるラテックス粒子は、従来から免疫測定に用いられているラテックス粒子と同じであってよく、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体などを用いることができ、種々のものが市販されている。捕捉物質結合ラテックス粒子は、ニトロセルロースメンブランに固相化して検出部として用いるため、検出に際して影響を及ぼさないようニトロセルロースメンブラン(白色)と同じ色調の白色ラテックス粒子が特に好ましい。
ラテックス粒子は、捕捉物質を結合する前の状態において前記ニトロセルロースメンブラン中をラテラル方向に自由に流通できる粒子径を有するものである。ここで、「ラテラル方向に自由に流通できる」とは、ラテックス粒子を含まない界面活性剤水溶液のラテラル方向の移動速度の1/2以上の速度、好ましくは88%以上、さらに好ましくは93%以上、最も好ましくは100%(すなわち、界面活性剤水溶液と同じ移動速度)の速度でラテラル方向に移動できることを意味する。ここで、界面活性剤水溶液としては、免疫測定における検体の浮遊/抽出に通常用いられている界面活性剤、例えば、アルキルフェノキシポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤(商品名Triton X-100)を、通常用いられている濃度、例えば1w/v%程度の濃度に含む界面活性剤水溶液を用いる。「ラテラル方向に自由に流通できる」か否かは、例えば、下記実施例に具体的に説明する方法により判定することができる。すなわち、メンブランの端から5mmの位置にラテックス粒子浮遊液を点着した後、メンブランの長手方向が鉛直方向になるように、かつ、ラテックス粒子を点着した部位に近い辺が下側に来るようにメンブランを保持し、この状態で、メンブランの下端部の辺を界面活性剤水溶液に浸漬し、毛管現象により界面活性剤水溶液を吸い上げる。吸い上げられた水溶液は、ラテックス粒子の点着部位に到達し、さらに吸い上げられて上方向に移動する。この際、ラテックス粒子が水溶液と共に吸い上げられて上方向に容易に移動するかどうかで判定される。上方向に容易に移動するか否かは、点着部位から20mm上の位置まで移動するのに要する時間を測定することにより判定することができる。なお、下記実施例で採用した、上記「20mm」の移動距離は、単なる一例であり、他の距離を移動するのに要する時間を測定しても構わない。また、「ラテラル方向」とは、デバイスの使用時に液が展開される方向を意味し、通常、ニトロセルロースメンブランストリップの長手方向を意味する。
ラテックス粒子の粒子径は、上記した、「ラテラル方向に自由に流通できる」という要件を満たすものであれば特に限定されないが、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスに常用されているニトロセルロースメンブランを用いる場合には、粒子径(直径)が0.6μm以下のものが好ましく、0.3μm以下のものがさらに好ましい。好ましい粒子径の範囲の下限は特にないが、市販のラテックス粒子の粒子径は、ほとんどの場合0.02μm以上であるので、市販品が容易に入手できる粒子径0.02μm以上のものが好都合である。ラテックス粒子の粒子径は、通常、0.05μm〜0.6μmが好ましく、0.08μm〜0.3μmがさらに好ましい。なお、市販のラテックス粒子の粒子径はほぼ均一であり、粒子径は、市販品に明記されている。市販品に明記されている粒子径を、本発明における粒子径とすることができる。
なお、上記したラテックス粒子の好ましい粒子径範囲は、一般的にラテラルフロー免疫測定用検査デバイスに用いられているニトロセルロースメンブランを用いた場合に「ラテラル方向に自由に流通できる」という要件を満足し易いという観点に基づくものであり、ニトロセルロースメンブランの孔径(ラテラル方向の孔径)により好ましい粒子径の範囲は変化する。すなわち、ニトロセルロースメンブランのラテラル方向の孔径がより大きい場合には、ラテックス粒子の粒子径の範囲の上限値も大きくなり、ニトロセルロースメンブランのラテラル方向の孔径がより小さい場合には、ラテックス粒子の粒子径の範囲の上限値も小さくなる。いずれにせよ、上記した、「ラテラル方向に自由に流通できる」という要件が満足されればよく、この要件が満足されるラテックス粒子の粒子径は、種々の粒子径のラテックス粒子について上記判定方法を行なうことにより容易に設定することができる(下記実施例参照)。
また、後述する抗体又はその抗原結合性断片は、ラテックス粒子に物理吸着によって物理的に結合させてもよいが、より安定に、又は大量に結合させるためには共有結合でラテックス粒子に結合させることが好ましい。このような目的のためには、ラテックス粒子上にカルボキシル基等の官能基を有するものを好ましく用いることができる。カルボキシル基等の官能基を有するラテックス粒子も市販されており、市販品を好ましく用いることができる。
本発明において、前記ラテックス粒子には抗体が結合している。抗体は、免疫測定しようとする被検出物と抗原抗体反応する抗体であり、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。ここで、被検出物としては、何ら限定されるものではなく、各種病原体、各種臨床マーカー等、抗体と抗原抗体反応することが可能ないかなる物質であってもよい。具体例として、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、HAV、HBs、HIV等のウイルス抗原、MRSA、A群溶連菌、B群溶連菌、レジオネラ属菌等の細菌抗原、細菌等が産生する毒素、マイコプラズマ、クラミジア・トラコマティス、ヒト絨毛性ゴナドトロピン等のホルモン、C反応性タンパク質、ミオグロビン、心筋トロポニン、各種腫瘍マーカー、農薬、環境ホルモン等を例示することができるがもちろんこれらに限定されるものではないが、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、C反応性タンパク質、ミオグロビン、心筋トロポニンのような検出と治療措置に急を要する項目の場合にはその有用性が特に大きい。なお、被検出物は、単独で免疫反応を誘起できる抗原であってもよいし、単独では免疫反応を誘起できないが抗体と抗原抗体反応により結合することが可能なハプテンであってもよい。
抗体に代え、又は抗体と共に、該抗体の抗原結合性断片をラテックス粒子に結合させてもよい。抗原結合性断片は、例えば、抗体のFabやF(ab')2断片等のように、対応抗原と抗原抗体反応可能な断片である。これらの抗原結合性断片は、周知の通り、抗体をパパインやペプシンのようなタンパク質分解酵素で処理することにより得られる。また、遺伝子工学的に生産した抗体やその抗原結合性断片を用いることもできる。
抗体又はその抗原結合性断片のラテックス粒子への結合は、周知の方法により行うことができ、物理吸着によっても共有結合によっても結合することができる。前記の通り、例えばカルボキシル基を表面に有するラテックス粒子が市販されているので、このカルボキシル基を抗体又はその抗原結合性断片のアミノ基と結合させることにより、抗体又はその抗原結合性断片を共有結合によりラテックス粒子に結合することができる。ラテックス粒子に結合する抗体又はその抗原結合性断片の量は、特に限定されず従来と同様でよく、粒子の径によって異なるが、通常、粒子1mg当たり10〜200μg程度でよい場合が多い。
なお、抗体又はその抗原結合性断片を結合したラテックス粒子は、1種類のものであってもよいし、異なる抗体又はその抗原結合性断片を結合した2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
本発明の方法では、常態で白色粉末状である界面活性剤を施すことが必要である。界面活性剤を含有させることの効果は、乾燥工程中の捕捉物質結合ラテックス粒子の凝集を防止し、更に水分子の蒸発にともない界面活性剤が微細な固体状態となり捕捉物質結合ラテックス粒子間に存在することとなり、検出試験の際に、滴下した検体試料が標識体と共に展開され、検出部の捕捉物質結合ラテックス粒子の間に速やかに浸透し、捕捉物質結合ラテックス粒子が被検出物−標識体の複合体を特異的に効率よく捕捉するため、高感度に被検出物を測定することができるためと考えられる。また、界面活性剤は、常態で粉末状であるので乾燥状態で保持することができ、保存安定性が良く、取扱いも容易である。さらに、白色であるので、目視による検査結果の判定の妨げにならない。
界面活性剤は、常態で白色粉末状であり、非イオン性、陰イオン性又は両性界面活性剤が好ましい。なお、「常態で白色粉末状」とは、その界面活性剤が、常温、常圧下に単独で存在した場合に白色粉末状という意味である。これ以外の界面活性剤として、液状、ペースト状、又はワックス状である界面活性剤を用いた場合は、上記記載のような乾燥が不十分であったり、検出部の安定性に問題があったり、前記のような検体試料/標識体が展開されてきたときの迅速な浸透効果が十分でなく、本発明には適さない。また、白色粉末状の界面活性剤の中でも、分子量200〜900の界面活性剤は、水溶解性、安定性に優れ、本発明の効果が得られる点で好ましい。
このような、常態において白色粉末状であり、水溶解性に優れた界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いることもできるし2種以上を組み合わせて用いることもできる。
コール酸ナトリウム、
デオキシコール酸ナトリウム、
ラウリル硫酸ナトリウム、
スクロースモノコレート、
β-D-フラクトピラノシル-α-D-グルコピラノシドモノドデカノエート、
β-D-フラクトピラノシル-α-D-グルコピラノシドモノデカノエート、
n-オクタノイル-N-メチルグルカミド、
n-ノナノイル-N -メチルグルカミド、
n-デカノイル-N-メチルグルカミド、
n-オクチル-β-D-チオグルコピラノシド、
n-オクチル-β-D-マルトピラノシド、
n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、
n-ノニル-β-D-チオマルトピラノシド、
n-ドデシル-β-D-マルトピラノシド、
n-デシル-β-D-マルトピラノシド、
3-オキサトリデシル-α-D-マンノピラノシド、
N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)コラミド、
N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル) デオキシコラミド、
3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホン酸、
3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、
ツビッタージェント (ZWITTERGENT )3-10デタージェント (商品名) カルビオケム製、
ツビッタージェント 3-12デタージェント (商品名) カルビオケム製、
ツビッタージェント 3-14デタージェント (商品名) カルビオケム製。
これらの界面活性剤の中でも、親水部に糖を有する非イオン性界面活性剤である
β-D-フラクトピラノシル-α-D-グルコピラノシドモノドデカノエート、
β-D-フラクトピラノシル-α-D-グルコピラノシドモノデカノエート、
n-オクチル-β-D-チオグルコピラノシド、
n-オクチル-β-D-マルトピラノシド、
n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、
n-ノニル-β-D-チオマルトピラノシド、
n-ドデシル-β-D-マルトピラノシド、
n-デシル-β-D-マルトピラノシド、
3-オキサトリデシル-α-D-マンノピラノシド
は、乾燥工程中に抗体を変質させる恐れが少なく、捕捉物質結合ラテックス粒子の凝集を防止し、より好ましい。
本発明の方法では、緩衝剤を含む液体媒体中に浮遊された状態にある、上記した捕捉物質結合ラテックス粒子と、常態で白色粉末状である界面活性剤とを、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの検出部を構成するニトロセルロースメンブランに施し、乾燥させる。ニトロセルロースメンブランに施す具体的方法としては、前記浮遊液を塗布する方法、スプレーする方法があるが、前記の塗布する方法が、簡便でありかつ検出部形成の精度が優れている点で好ましい。
ここで、捕捉物質結合ラテックス粒子、及び界面活性剤は、それぞれ別個の液体媒体に含まれ、順次、ニトロセルロースメンブランの上記領域に施してもよいが、2成分が均一に混じり合うことを確保するために、これら2成分を同一の液体媒体中に浮遊又は溶解させ、この液体組成物をニトロセルロースメンブランに施し、乾燥させることが好ましい。以下、この液体組成物についてさらに説明する。
該液体組成物を構成する液体媒体としては、水系緩衝液が好ましく、特に緩衝剤を2〜8mMに含む緩衝液が好ましく、より好ましくは4〜6mMである。2mM未満では濃度が下がるにつてラテックス粒子の凝集が強くなる場合があり、8mMを超えると濃度が上がるにつれてラテックス粒子の凝集が強くなる場合がある。このような凝集は、免疫測定に悪影響を与え、検出感度を低下させる要因となり問題である。緩衝剤の濃度が上記の範囲内にあると、液体組成物を長期間保存でき、又、緩衝剤の濃度が低いため、乾燥中のラテックス粒子の凝集も防止することができる。
また、該液体組成物のpHは9.0〜9.8であることが好ましく、より好ましくは9.2〜9.6である。pH がこの範囲内にあると液体組成物を長期間保存できる。pH が9.0未満ではラテックス粒子の凝集が起こりやすくなることがあり、一方、pHが9.8を超えると抗体が変質するため凝集が起こりやすくなる場合がある。
前記のような高いpHの組成物を得るために、緩衝剤としてアルカリ性の緩衝剤を用いることが好ましく、特にトリス塩基、アルギニン及びグリシンアミドから選択した化合物であることが好ましい。なお、ここで、「緩衝剤」とは水に溶解すると緩衝液を与える化合物を意味し、緩衝液には緩衝剤が含まれる。また、「アルカリ性の緩衝剤」とは、水に溶かすとアルカリ性の緩衝液を与える緩衝剤を意味する。緩衝液のpHを設定値に調整するには、水酸化ナトリウム、又は塩酸で行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。
液体組成物中の捕捉物質結合ラテックス粒子の濃度は、被検出物の種類、必要とする検出感度等を勘案して適宜選択するのが好ましく、特に限定されないが、高い検出感度を得るのには、通常、0.5w/v%〜1.5w/v%、好ましくは、0.8w/v%〜1.0w/v%である。また、このような液体組成物中に溶液状の抗体又はその抗原結合性断片を捕捉物質として
併用して含ませてもよい。
本発明の方法に用いられる界面活性剤の濃度は、0.05w/v%〜1.0w/v%が好ましく、さらに好ましくは0.2w/v%〜0.7w/v%である。この範囲において、乾燥工程中の捕捉物質結合ラテックス粒子の凝集を防止し、更に水分子の蒸発にともない界面活性剤が微細な固体状態となり捕捉物質結合ラテックス粒子間に存在することとなり、検出試験の際に、滴下した検体試料が標識体と共に展開され、検出部の捕捉物質結合ラテックス粒子の間に速やかに浸透することができる。0.05w/v%未満では、ラテックス粒子の凝集が強くなる場合があり、1.0w/v%を超えると濃度が上がるにつれて浸透が遅れる場合がある。
上記液体組成物はさらに、タンパク質を含んでいてもよい。タンパク質を含有することにより、捕捉物質結合ラテックス粒子浮遊液を長期間保存したときにでも、ラテックス粒子の凝集が起こりにくくなる。タンパク質としては、従来から一般的な免疫測定用試薬中に安定剤、非特異的反応防止剤、ブロッキング剤等として添加されているものであって、被検出物と結合しないタンパク質であれば特に限定されるものではないが、アルブミン(ウシ血清アルブミン、卵由来アルブミン等)、カゼイン、ゼラチン、正常免疫グロブリン等が好ましく使用できる。これらのタンパク質は、単独でも2種以上を組み合わせても用いることができる。
上記液体組成物中のタンパク質の濃度は、0.02w/v%以上で0.1w/v%未満であることが好ましい。この範囲において、ラテックス粒子浮遊液を長期間保存したときにでも凝集の防止効果が大きく、又捕捉物質結合ラテックス粒子のニトロセルロースメンブランへの固相化を抑制する恐れが少ない。
さらに、上記液体組成物には、必要に応じて、防腐剤を含ませてもよい。防腐剤としては、例えばアジ化ナトリウム、イソチアゾリン類のプロクリン(商品名)等が挙げられるが、これらに限定されない。防腐剤の濃度は、通常、0.02w/v%〜0.05w/v%程度である。
上記液体組成物は、塗布、スプレー等によりニトロセルロースメンブランに点状又はライン状に施すことができる。ニトロセルロースメンブランに施す液体組成物の量は、特に限定されないが、通常、ニトロセルロースメンブラン1cm(長手方向に直交する方向に1cm)当たり0.5μL〜2μL程度、好ましくは1μL程度である。
液体組成物をニトロセルロースメンブランに施した後、組成物を乾燥させる。乾燥は、温風を吹きつける温風乾燥でもよいし空気中での自然乾燥でもよい。乾燥すると、白色の固形状になる。
本発明の方法により形成された検出部の捕捉物質結合ラテックス粒子は、ニトロセルロースメンブランに物理結合により結合しており、検出試験の際に検体試料によって捕捉物質結合ラテックス粒子が検出部から流出する現象は認められない。
本発明は、上記のようにして形成される検出部を有するラテラルフロー免疫測定用検査デバイスをも提供する。検出部として、上記方法により形成されたものを有することを除き、検査デバイスの構成自体は周知のものであってよい。本発明のラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの具体例の模式図を図1に示すが、本発明の検査デバイスはこれに限定されるものではない。
図1の上が上面図、下が切断断面図である。図示の具体例では、プラスチック板(ヘ)上に、2個の検出部(ハ)が形成されたニトロセルロースメンブラン(イ)、濾紙で形成された吸収パッド部(ホ)、標識体部(ロ)、及びガラス繊維フィルターで形成された検体試料滴下部(ニ)がそれぞれ積層されている。そして、図示のように、吸収パッド部(ホ)の一方の端部領域と、ニトロセルロースメンブラン(イ)の一方の端部領域、ニトロセルロースメンブラン(イ)の他方の端部領域と標識体部(ロ)の一方の端部領域、標識体部(ロ)の他方の端部領域と検体試料滴下部(ニ)の一方の端部領域がそれぞれ重ね合わされており、これにより、連続したラテラルフローの流路が形成されている。
次にこの検査デバイスを用いた免疫測定法について説明する。先ず、検体を検体浮遊/抽出用緩衝液に浮遊/抽出させた検体試料を調製する。プラスチック板(ヘ)上に積層されたニトロセルロースメンブラン(イ)上に、被検出物と抗原抗体反応する抗体に着色ラテックス粒子を標識した標識体を含む標識体部(ロ)を備え、更に本発明法により形成されたライン状の検出部(ハ)を備えた検査デバイスの検体試料滴下部(ニ)に前記検体試料を滴下する。被検出物を含む検体試料は、メンブラン上を水平方向に移動しながら標識体を展開するので、被検出物が存在すれば、被検出物−標識体の複合体を形成し、更に検出部(ハ)に到達するとそのライン上に、捕捉物質−被検出物−標識体の複合体が形成され、この複合体中の着色ラテックス粒子により、複合体の存在を検出することで検体中の被検出物の有無を判定する。なお、検出部(ハ)は、被検出物質と抗原抗体反応し、且つ、標識体上の抗体と同時に被検出物に結合することが可能な、抗体又はその抗原結合性断片を捕捉物質として結合したラテックス粒子をライン状に固相化した領域である。反応に関与しなかった他の成分等は、吸収パッド部(ホ)に吸収される。なお、図1に示す例では、検出部(ハ)が2個存在するが、これは、例えば下記実施例に記載するように、A型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスのような2種類の被検出物をそれぞれ捕捉するためのものである。このような検出部(ハ)を複数設けることにより、複数種類の被検出物を同時に免疫測定することが可能である。
なお、標識としてラテックス粒子、通常、着色ラテックス粒子を用いたラテラルフロー免疫測定用検査デバイスも広く知られている。下記実施例に記載するように、本発明においても、標識体としてラテックス粒子を採用することができる。この場合、標識体として用いられるラテックス粒子も、ニトロセルロースメンブランをラテラル方向に自由に流通できるものを用いる。標識体として用いるラテックス粒子の粒子径も、上記した、検出部に適用するラテックス粒子の粒子径と同様にして設定することができる。
被検出物と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を捕捉物質として結合させたラテックス粒子をニトロセルロースメンブランに施し、乾燥させ、検出部に用いる本発明の検査デバイスを用いることにより、迅速且つ高感度で被検出物を測定できる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。但し、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1、比較例1
ラテラルフロー免疫測定法によるインフルエンザウイルスの検出
1. ラテックス粒子の選定
上記の通り、本発明の方法では、ラテックス粒子が、前記捕捉物質を結合する前の状態において前記ニトロセルロースメンブラン中をラテラル方向に自由に流通できる粒子径を有する必要がある。そこで、先ず、ラテックス粒子の粒子径を設定した。
ニトロセルロースメンブランとしては、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの多孔性基材として用いられているミリポア社製のHiflow Plus HF120(商品名)を用いた。このニトロセルロースメンブラン中をラテラル方向に自由に流通できるラテックス粒子の粒子径を次のようにして調べた。
それぞれ粒子径が表示されている、種々の粒子径の市販の青色ラテックス粒子を、1(w/v)% のアルキルフェノキシポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤(商品名Triton X-100)水溶液で、ラテックス粒子濃度が1(w/v)%になるように希釈してラテックス粒子浮遊液を調製した。ニトロセルロースメンブランのストリップ(5mm x 30mm)の一端から5mmの位置に、上記ラテックス粒子浮遊液2μLを点着した。また、ストリップの別の一端に濾紙を積層した。一方、1(w/v)% の上記界面活性剤水溶液30μLを平底マイクロプレ−トウエルに入れた。上記ラテックス粒子点着点から5mmの位置にあるニトロセルロースメンブランストリップの一辺を下側にして、ストリップの長手方向が鉛直方向になるようにストリップを保持し、その下端を上記マイクロプレートウェル中の界面活性剤水溶液中に浸漬した。ストリップの下端をマイクロプレートウェルの底面に接触させて保持した。
界面活性剤水溶液は、毛管現象により吸い上げられてニトロセルロースメンブランストリップ内を上昇し、やがてラテックス粒子点着点に到達し、点着されたラテックス粒子を伴ってさらに毛管現象により上昇する。ラテックス粒子が、点着点から20mm上の位置に到達するまでの時間を測定した。また、点着点から20mm上の位置にまでラテックス粒子が62秒以内に到着しなかった場合には、その状態を記録した。さらに、ラテックス粒子を点着しないストリップを用いて、界面活性剤水溶液が、下端部から5mmの位置に到達してから、さらに20mm上の位置に到達するまでの時間を測定した。
結果を下記表1に示す。
Figure 0004986695
表1に示すように、粒子径が0.818μm以上のラテックス粒子の場合には、62秒(界面活性剤水溶液の移動に要した時間の2倍)以内に点着点から20mm上の位置まで到達することができず、ニトロセルロースメンブラン中をラテラル方向に自由に流通できる粒子径を有するものではない。一方、粒子径が0.590μm以下のラテックス粒子は、62秒以内に点着点から20mm上の位置まで到達できるので(すなわち、ラテックスを含まない界面活性剤水溶液の移動速度の1/2以上の速度で移動)、本発明における「ラテラル方向に自由に流通できる粒子径を有する」ものである。特に、粒子径が0.30μm以下の場合には、点着点から20mm上の位置まで到達するのに要する所要時間が、ラテックス粒子を含まない界面活性剤水溶液と全く同じ(すなわち、移動速度が界面活性剤水溶液の移動速度の100%)であるから、ニトロセルロースメンブラン内をラテラル方向に全く自由に流通することがわかる。
上記実験により、粒子径が0.30μm以下の場合にニトロセルロースメンブラン内をラテラル方向に全く自由に流通することが明らかになったので、抗体を結合するラテックス粒子としては、0.082μmの白色ラテックス粒子(カルボキシルタイプ JSR製)を選定した。
2.抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体の作製
(1)抗A型インフルエンザウイルスNP抗体
A型インフルエンザウイルス抗原をBALB/cマウスに免疫し、一定期間飼育したマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。得られた融合細胞(ハイブリドーマ)を、37℃インキュベーター中で維持し、A型インフルエンザウイルスNP抗原を固相したプレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。取得した該細胞2株をそれぞれプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。得られた腹水からプロティンAカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、それぞれIgGを精製し、2種類の精製抗A型インフルエンザウイルスNP抗体を得た。
(2)抗B型インフルエンザウイルスNP抗体
B型インフルエンザウイルス抗原を用い、(1)と同様の方法で、2種類の精製抗B型インフルエンザウイルスNP抗体を得た。
3.捕捉物質として抗体を結合させたラテックス粒子の調製
精製抗A型インフルエンザウイルスNP抗体及び精製抗B型インフルエンザウイルスNP抗体のうち夫々1種類ずつを使用した。粒子径0.082μmの白色ラテックス粒子(カルボキシルタイプ JSR製)に抗A型インフルエンザウイルス抗体を共有結合させ、n-ドデシル-β-D-マルトピラノシド0.5w/v%を含む5mMトリス緩衝液(pH9.4)に、ラテックス粒子の濃度が1w/v%になるように懸濁し、ソニケーションを行って充分に分散浮遊させた抗A型ラテックス浮遊液を調製した。また、同様に抗B型インフルエンザウイルス抗体を共有結合させた抗B型ラテックス浮遊液を調製した。なお、ラテックス粒子への抗インフルエンザウイルス抗体の共有結合は、セラダイン社発行のParticle Technology RECOMMENDED ADSORPTION and COVALENT COUPLING PROCEDURES 5/13/96に記載されている水溶性カルボジイミド(EDAC)を用いる1-ステップ法により行った。
4.抗体に着色ラテックス粒子を標識した標識体を含む標識体パッドの作製
精製抗A型インフルエンザウイルスNP抗体(上記と別の抗体)及び精製抗B型インフルエンザウイルスNP抗体(上記と別の抗体)を使用した。抗A型インフルエンザウイルス抗体に粒子径0.394μmの青色ラテックス粒子(CM/BL セラダイン製)を共有結合で標識し、糖、界面活性剤及びタンパク質を含むトリス緩衝液にラテックス粒子の濃度が0.025w/v%になるように懸濁し、ソニケーションを行って充分に分散浮遊させた抗A型標識体を調製した。また、同様に抗B型インフルエンザウイルス抗体に青色ラテックス粒子を標識した抗B型標識体を調製した。
抗A型標識体と抗B型標識体とを混合し、大きさが20cm×1cmのガラス繊維(33GLASS NO.10539766 Schleicher & Schuell製)に1平方センチメートルあたり50μLになる量を塗布し、温風下で良く乾燥させ、標識体パッドを作製した。
5.免疫測定用検査デバイスの作製
免疫測定用検査デバイスは、図1に示すものと同様の構成のものを用いた。ニトロセルロースメンブラン(Hiflow Plus HF120 ミリポア製)を2cm×20cmの大きさに裁断し接着剤がついたプラスチック板でバッキングした。下端から 0.6cmと1.0cmの位置に約1mm幅になる量の抗A型ラテックス浮遊液、並びに抗B型ラテックス浮遊液を各々20cm塗布し(塗布量は各20μL)、温風下で良く乾燥させ、捕捉物質(抗体)結合ラテックス粒子を固相化した(検出部)。次に、3cm×20cmの大きさの濾紙(WF1.5 ワットマン製)をニトロセルロースメンブランの上端に5mm重ねて吸収パッド部を設けた。更に、標識体パッドをニトロセルロースメンブランの下端に2mm重ねて標識体部を設け、更に、大きさが2.0cm×20cmのガラス繊維(F075-14、ワットマン製)を標識体パッドの上端から7mm離れた位置に合わせて重ね、検体試料滴下部を設けた。次いで、カッターで幅5mmの短冊に裁断して一体化された免疫測定用検査デバイスを作製した。
6.試験
検体として、ふ化鶏卵内で培養した、
A型インフルエンザウイルス A/Beijing/32/92(H3N2)、
B型インフルエンザウイルス B/Shangdong/7/97
を用いた。
検体は、検体浮遊/抽出用緩衝液(50mMトリス緩衝液、pH8.0に、
Triton X-100(商品名) 1(w/v)%、
ウシ血清アルブミン 1(w/v)%、
正常マウス免疫グロブリン 0.1(w/v)%、
アジ化ナトリウム 0.09(w/v)%に加)
を用いて以下のような希釈系列を調製し検体試料とした。なお、陰性対照試料は、検体浮遊/抽出用緩衝液を用いた。
A/Beijing/32/92(H3N2)
1:1×104
1:2×104
1:4×104
1:6×104
1:8×104
B/Shangdong/7/97
1:1×103
1:2×103
1:4×103
1:6×103
1:8×103
次に、免疫測定用検査デバイスを水平に置き、検体試料並びに陰性対照試料を検体試料滴下部に100μL滴下し、標識体を展開させた。判定は、5分間後に検出部(A型インフルエンザウイルス検出部並びにB型インフルエンザウイルス検出部)の着色ラインの有無を目視により観察して行った。
着色ライン有 :陽性(+)
着色ライン無 :陰性(−)
比較例1として、検出部の形成において、従来の溶液状の抗体を固相化した以外は、上記したと同様の方法で作成した免疫測定用検査デバイスを用い検出感度を試験した。判定は、実施例1と同様にして行った。
7.結果
得られた結果を下記表2に示す。表2に示すように、
A/Beijing/32/92(H3N2)は、1:4×104希釈までA型検出部が陽性を示し、B型検出部は陰性で特異的にA型インフルエンザウイルスを検出しており、比較例の1:1×104と比べ4倍検出感度が高かった。
B/Shangdong/7/97は、1:6×103希釈までB型検出部が陽性を示し、A型検出部は陰性で特異的にB型インフルエンザウイルスを検出しており、比較例の1:2×103と比べ3倍検出感度が高かった。
なお、陰性対照試料は、全てにおいて陰性を示した。
本発明のデバイスを用いた場合の成績は、A型並びにB型ウイルスとも比較例1よりも少ないウイルス量を検出している。このことから、本発明の検出部を有するラテラルフロー免疫測定用検査デバイスを用いることにより、A型/B型インフルエンザウイルスを特異的に迅速且つ高感度に検出並びに鑑別できることがわかる。
Figure 0004986695
実施例2〜6
実施例1に記載のn-ドデシル-β-D-マルトピラノシドに代え、
デオキシコール酸ナトリウム(実施例2)、
ツビッタージェント 3-12デタージェント(商品名)(実施例3)
n-ノナノイル-N -メチルグルカミド(実施例4)
β-D-フラクトピラノシル-α-D-グルコピラノシドモノドデカノエート(実施例5)、
β-D-フラクトピラノシル-α-D-グルコピラノシドモノデカノエート(実施例6)
をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様に検査デバイスを作製し試験した。その結果、実施例1と同様の成績が得られた。
実施例7、比較例2
ラテラルフロー免疫測定法によるMRSA PBP2'の検出
1.抗体
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のペニシリン結合蛋白2'(PBP2')に対するモノクローナル抗体2種類(デンカ生研製)を酵素処理してF(ab')2精製画分(抗PBP2'精製画分)を得た。
2.捕捉物質としてF(ab')2精製画分を結合させたラテックス粒子の調製
抗PBP2'精製画分の1種類を、実施例1と同様にして粒子径0.302μmの白色ラテックス粒子(カルボキシルタイプ JSR製)に共有結合させ、N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)コラミド0.3w/v%及びウシ血清アルブミン0.03w/v%を含む5mMトリス緩衝液、pH9.4にラテックス粒子の濃度が0.75w/v%になるように懸濁し、ソニケーションを行って充分に分散浮遊させた抗PBP2'ラテックス浮遊液を調製した。
3.F(ab')2精製画分に着色ラテックス粒子を標識した標識体を含む標識体パッドの作製
実施例1と同様に0.394μmの青色ラテックス粒子(CM/BL セラダイン製)に抗PBP2'精製画分(上記と別の抗体)を共有結合させ標識体パッドを作製した。
4.免疫測定用検査デバイスの作製
抗PBP2'ラテックス浮遊液を実施例1のA型に相当する位置のニトロセルロースメンブランに実施例1と同様の方法で塗布して固相化し(検出部)、さらに実施例1と同様の方法により一体化された免疫測定用検査デバイスを作製した。
5.試験
黄色ブドウ球菌のPBP2'産生菌(菌株a〜e)5株を培養して、スライドラテックス凝集反応によるPBP2'検出用キット「MRSA-LA「生研」」(デンカ生研製)の添付文書に記載されているアルカリ抽出法によりスライドラテックス凝集反応用試料を調製した。
検体浮遊/抽出用緩衝液(実施例1と同組成)を用いて凝集反応用試料の2倍系列希釈を行って検体試料を調製し、その100μLを免疫測定用検査デバイスの検体試料滴下部に滴下した。なお、陰性対照試料は、検体浮遊/抽出用緩衝液を用いた。
判定は、5分間後に検出部の着色ラインの有無を目視により観察して行った。陽性と判定された終末希釈倍数を検出感度として表示した。
比較例2
検出部の形成において、従来の溶液状のF(ab')2精製画分を固相化した以外は、実施例7と同様の方法で作成した免疫測定用検査デバイスを用い検出感度を試験した。
判定は、5分間後に上記と同様にして行った。
6.結果
得られた結果を下記表3に示す。実施例7の成績は、比較例2と比べMRSAのPBP2'を特異的に高感度に検出している。このことから、本発明の検出部を有するラテラルフロー免疫測定用検査デバイスを用いることにより、MRSAのPBP2'を特異的に迅速且つ高感度に検出できることがわかる。
Figure 0004986695
本発明の一実施態様である免疫測定用検査デバイスの上面図並びに切断断面図である。
符号の説明
イ ニトロセルロースメンブラン
ロ 標識体部
ハ 検出部
ニ 検体試料滴下部
ホ 吸収パッド部
ヘ プラスチック板

Claims (7)

  1. 緩衝剤を含む液体媒体中に浮遊された状態にある、被検出物と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を捕捉物質として結合したラテックス粒子と、常態で白色粉末状である界面活性剤を、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの検出部を構成するニトロセルロースメンブランに施し乾燥させることを含む、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの検出部の形成方法であって、前記ラテックス粒子は、前記捕捉物質を結合する前の状態において前記ニトロセルロースメンブラン中をラテラル方向に自由に流通できる粒子径を有する、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの検出部の形成方法。
  2. 前記ラテックス粒子及び前記界面活性剤を同一の液体媒体中に含む組成物を前記ニトロセルロースメンブランに施す請求項1記載の方法。
  3. 前記界面活性剤が、分子量200〜900の非イオン性、陰イオン性又は両性界面活性剤である請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記界面活性剤が、親水部に糖を有する非イオン性界面活性剤である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記ラテックス粒子の粒子径は0.6μm以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記組成物が、タンパク質をさらに含む請求項2ないし5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法により形成された検出部を有するラテラルフロー免疫測定用検査デバイス。
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