JP4865588B2 - 検査デバイスの標識体部の形成方法及びラテラルフロー免疫測定用検査デバイス - Google Patents

検査デバイスの標識体部の形成方法及びラテラルフロー免疫測定用検査デバイス Download PDF

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Description

本発明は、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの標識体部の形成方法及び該方法により形成された標識体部を有するラテラルフロー免疫測定用検査デバイスに関する。
近年、ウイルスや細菌等の病原体感染の有無、妊娠の有無などの様々な検査を短時間のうちに行う簡易検査試薬やキットが開発されている。病原体構成成分、ヒト絨毛性ゴナドトロピン等が検出あるいは定量の対象である。簡易検査試薬の多くは、特別な設備を必要とせず操作も簡単で安価であるという特徴を有しており、例えば、妊娠診断のための簡易検査試薬は一般薬局で販売されている。また、病原体の感染を検査する簡易検査試薬は、他の検査試薬と異なり、大病院や医療検査センター以外にも一般の病院や診療所で広く使用されている。これらの施設は患者が最初に訪れる医療機関である場合が多く、患者から採取した検体についてその場で感染の有無が判明すれば、早い段階で治療措置を施すことができるため、簡易検査試薬の医療における重要性は益々高まってきている。
現在、簡易検査方法として、抗原抗体反応を利用した免疫測定法、特に、ニトロセルロース等のメンブランを用いた測定法が一般に知られており、フロースルー方式とラテラルフロー方式に大別される。前者は、被検出物を含む検体試料を、メンブランに対して垂直方向に通過させるものであり、後者は水平方向に展開させるものである。いずれの場合も被検出物に特異的に結合する捕捉体(捕捉物質)、および被検出物に特異的に結合する標識体の複合体をメンブラン上に形成させて、標識を検出/定量することで、被検出物の検出(測定あるいは定量)を行うという点で共通している。ラテラルフロー方式は、フロースルー方式に比べ測定装置が簡単で、またコストの点でも優れているため多種多様の抗原の検出に広く用いられつつある。
前記のようなメンブランを用いた測定系において、従来は標識体として被検出物に特異的に結合する抗体に金粒子を標識したものが広く用いられていたが、最近では、金粒子に代え着色ラテックス粒子、蛍光ラテックス粒子、磁性ラテックス粒子等を用いた測定系が確立され測定対象もより拡大されつつある。特に、ラテラルフロー免疫測定法は、抗体を調製することができれば、広範囲の対象病原微生物抗原が測定可能となるので、有力な簡易検査試薬として大いに期待されている。
一般的には、ラテラルフロー免疫測定法は、測定(反応)に要する時間が、10〜15分間であり、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、C反応性タンパク質、ミオグロビン、心筋トロポニン等のような検出と治療措置に急を要する項目の簡易検査としては、より短時間でより高感度な測定方法が求められており、多くの改良研究が行われている。
前記のラテラルフロー免疫測定法の一つの形態においては、ニトロセルロース等のメンブランストリップ上に被検出物に特異的に結合する抗体を捕捉物質として固相化した検出部、及び被検出物に特異的に結合する標識体を含む標識体部を備えた検査デバイスに、被検出物を含む検体試料を滴下して、被検出物−標識体の複合体を形成させながら展開して検出部でこの複合体を捕捉することで標識を検出あるいは定量する。
標識体は、被検出物と特異的に結合する抗体にマーカーとしてラテックス粒子を標識し、凍結乾燥、又は温風乾燥(自然乾燥も含む)させた状態で用いているが、特に温風乾燥の場合、乾燥行程中にラテックス粒子の自己凝集が起こり易く、又、糖をかなり含ませて乾燥するため、検出試験の際に標識体の復元に時間がかかると共に標識体が展開されず滞留したり、メンブランに目詰りを起こしバックグラウンドが高くなったり、時として検出部で目詰りして偽陽性を示す等、特異的に迅速で高感度検出を行うには問題である。
前記の自己凝集は、検出感度に大きく影響し、測定に必要なS(シグナル)/N(ノイズ)比を低下させる。試薬を評価する際、S/N比が大きいことが常に必要とされ、又測定試薬化の技術もいかにS/N比を大きくし、しかも一定にするかが課題とされている。これらの課題を解決するために、乾燥時に、特許文献1には、水酸基及びアルデヒド基またはケトン基を含む化合物を含む方法、特許文献2には、糖類の濃度と緩衝液のモル濃度を選択する方法の効果が記載されている。しかしながら、これらの方法によっても、前記の検出感度、測定時間に関する改善効果は十分なものでなかった。また、特許文献3にはデキストリン又はトレハロース、界面活性剤を含む、凍結乾燥混合物を用いた方法が記載されているが、凍結乾燥を行うためには高価な特別な装置を必要とし、又連続して検査デバイスを大量に、しかも安価に製造するには問題であった。
再公表特許公報 WO2002/040999 特開2003−215127号公報 特許第2823353号公報
従って、本発明の目的は、前記の問題点を改善し、従来の測定方法よりも更に迅速且つ高感度に被検出物の存在を検出又は定量することを可能にするラテラルフロー免疫測定用検査デバイス並びにその標識体部の形成方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究の結果、ニトロセルロースメンブラン等の多孔性基材を用いるラテラルフロー免疫測定法において、被検出物と特異的に結合する抗体及び/又はその抗原結合性断片にラテックス粒子を標識した標識体の自己凝集を防止し、且つ復元性を改良した乾燥した標識体を備えた検査デバイスを用いることにより、迅速且つ高感度に測定が可能になることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、液体媒体中に浮遊又は溶解された状態にある、被検出物と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を結合したラテックス粒子、常態で白色粉末状である界面活性剤及び糖類を、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの標識体部を構成する多孔性基材に施し乾燥させることを含む、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの標識体部の形成方法を提供する。また、本発明は、上記本発明の方法により形成された標識体部を含むラテラルフロー免疫測定用検査デバイスを提供する。
本発明の方法を用いて形成された安定化乾燥標識体を備えた検査デバイスを用いることにより、検出試験の際に標識体の自己凝集がなく短時間で復元し、標識体と被検出物が抗原抗体反応しながらスムーズに展開されるためバックグラウンドが低く、偽陽性がなく、
特に、医療現場で検体中の被検出物を迅速で高感度に測定することができる。
本発明の方法に用いるラテックス粒子は、従来から免疫測定に用いられているラテックス粒子と同じであってよく、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体などを用いることができ、種々のものが市販されている。抗体にマ−カとしてラテックス粒子を標識(結合)して標識体として用いる場合、着色ラテックス粒子、蛍光ラテックス粒子、磁性ラテックス粒子等を使用できるが、ニトロセルロースメンブラン(白色)と対比して標識を視認し易い色調の着色ラテックス粒子が特に好ましい。
また、後述する抗体又はその抗原結合性断片は、ラテックス粒子に物理吸着によって物理的に結合させてもよいが、より安定に又は大量に結合させるためには共有結合でラテックス粒子に結合させることが好ましい。このような目的のためには、ラテックス粒子上にカルボキシル基等の官能基を有するものを好ましく用いることができる。カルボキシル基等の官能基を有する着色ラテックス粒子も市販されており、市販品を好ましく用いることができる。なお、ラテックス粒子の直径は、被検出物の種類、必要とする検出感度、ニトロセルロースメンブランの口径等を勘案して適宜選択するのが好ましく、通常、0.1μm〜0.8μm程度、好ましくは、0.2μm〜0.6μm程度であるが、これらに限定されない。
本発明において、前記ラテックス粒子上には抗体及び/又はその抗原結合性断片が結合している。抗体は、免疫測定しようとする被検出物と抗原抗体反応する抗体であり、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。ここで、被検出物としては、何ら限定されるものではなく、各種病原体、各種臨床マーカー等、抗体と抗原抗体反応することが可能ないかなる物質であってもよい。具体例として、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、HAV、HBs、HIV、ノロウイルス等のウイルス抗原、MRSA、A群溶連菌、B群溶連菌、レジオネラ属菌等の細菌抗原、細菌等が産生する毒素、マイコプラズマ、クラミジア・トラコマティス、ヒト絨毛性ゴナドトロピン等のホルモン、C反応性タンパク質、ミオグロビン、心筋トロポニン、各種腫瘍マーカー、農薬、環境ホルモン等を例示することができるがもちろんこれらに限定されるものではないが、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、C反応性タンパク質、ミオグロビン、心筋トロポニンのような検出と治療措置に急を要する項目の場合にはその有用性が特に大きい。なお、被検出物は、単独で免疫反応を誘起できる抗原であってもよいし、単独では免疫反応を誘起できないが抗体と抗原抗体反応により結合することが可能なハプテンであってもよい。
抗体に代え、又は抗体と共に、該抗体の抗原結合性断片をラテックス粒子に結合させてもよい。抗原結合性断片は、例えば、抗体のFabやF(ab')2断片等のように、対応抗原と抗原抗体反応可能な断片である。これらの抗原結合性断片は、周知の通り、抗体をパパインやペプシンのようなタンパク質分解酵素で処理することにより得られる。また、遺伝子工学的に生産した抗体やその抗原結合性断片を用いることもできる。
抗体又はその抗原結合性断片のラテックス粒子への結合は、周知の方法により行うことができ、物理吸着によっても共有結合によっても結合することができる。前記の通り、例えばカルボキシル基を表面に有するラテックス粒子が市販されているので、このカルボキシル基を抗体又はその抗原結合性断片のアミノ基と結合させることにより、抗体又はその抗原結合性断片を共有結合によりラテックス粒子に結合することができる。ラテックス粒子に結合する抗体又はその抗原結合性断片の量は、特に限定されず、従来と同様でよく、粒子の径によって異なるが、通常、粒子1mg当たり10〜100μg程度でよい場合が多い。
なお、抗体又はその抗原結合性断片を結合したラテックス粒子は、1種類のものであってもよいし、異なる抗体又はその抗原結合性断片を結合した2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
本発明の方法では、常態で白色粉末状である界面活性剤を施すことが必要である。本発明者等は、鋭意検討を行った結果、このことによって、検出試験の際に、前記標識体が速やかに検体試料中に復元し展開され、高感度に被検出物を検出することができることを見出し、本発明に至った。なお、「常態で白色粉末状」とは、その界面活性剤が、常温、常圧下に単独で存在した場合に白色粉末状という意味である。界面活性剤は、通常、水系媒体に溶解して多孔性基材に施されるので、水溶解性に優れたものが好ましい。
このような常態において白色粉末状であり、水溶解性に優れた界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いることもできるし2種以上を組み合わせて用いることもできる。
コール酸ナトリウム、
デオキシコール酸ナトリウム、
ラウリル硫酸ナトリウム、
スクロースモノコレート、
β-D-フラクトピラノシル-α-D-グルコピラノシドモノドデカノエート、
β-D-フラクトピラノシル-α-D-グルコピラノシドモノデカノエート、
n-オクタノイル-N-メチルグルカミド、
n-ノナノイル-N -メチルグルカミド、
n-デカノイル-N-メチルグルカミド、
n-オクチル-β-D-チオグルコピラノシド、
n-オクチル-β-D-マルトピラノシド、
n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、
n-ノニル-β-D-チオマルトピラノシド、
n-ドデシル-β-D-マルトピラノシド、
n-デシル-β-D-マルトピラノシド、
N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)コラミド、
N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル) デオキシコラミド、
3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホン酸、
3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、
ツビッタージェント (ZWITTERGENT )3-10デタージェント (商品名) カルビオケム製、
ツビッタージェント 3-12デタージェント (商品名) カルビオケム製、
ツビッタージェント 3-14デタージェント (商品名) カルビオケム製。
これらの界面活性剤の中でも、陰イオン性であるコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウムは、水溶解性が良く、安価であるのでより好ましい。
界面活性剤を含有させることの効果は、前記の浮遊液を多孔性基材に施し乾燥する際に、水分子の蒸発にともない界面活性剤が微細な結晶状態となり標識体間に存在することにより、又、標識体どうしの自己凝集が著しく防止されることにより、検出試験の際に検体試料による標識体の復元が速やかに進み、そのために標識体がスムーズに展開されるためと考えられる。標識体が速やかに復元して展開され、しかも自己凝集によるバックグラウンド並びに偽陽性もなく、S/N比を大幅に上げることができたのである。また、界面活性剤は、常態で粉末状であるので乾燥状態で保持することができ、保存安定性が良く、取扱いも容易である。さらに、白色であるので、目視による検査結果の判定の妨げにならない。
本発明の方法に用いられる糖類としては、単糖及びオリゴ糖(単糖数が2〜6)並びにそれらの糖アルコールが好ましく、特に、単糖及び二糖類並びにそれらの糖アルコールが好ましい。好ましい具体例として、フルクトース、サッカロース、トレハロース、マルトース、ラクトース、ソルビト−ル及びD−マンニトールを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。糖類を含有すると、乾燥工程中のラテックス粒子の自己凝集を抑制する効果がある。糖類は、1種類でもよいし2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
本発明の方法では、それぞれ液体媒体中に浮遊又は溶解された状態にある、上記したラテックス粒子、界面活性剤及び糖類を、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの標識体部を構成する多孔性基材に施し、乾燥させる。この多孔性基材に施す具体的方法としては、前記浮遊液を塗布する方法、スプレーする方法及び該浮遊液に多孔性基材を浸漬し含浸させる方法等があるが、前記の塗布する方法が、簡便でありかつ標識体部形成の精度が優れている点で好ましい。
ここで、ラテックス粒子、界面活性剤及び糖類は、それぞれ別個の液体媒体に含まれ、順次、多孔性基材の上記領域に施してもよく、又はこれら3成分のうち2成分を同一の液体媒体中に含むものと、残りの1成分を液体媒体中に含むものを順次、多孔性基材の上記領域に施してもよいが、3成分が均一に混じり合うことを確保するために、これら3成分を同一の液体媒体中に浮遊又は溶解させ、この液体組成物を多孔性基材に施し、乾燥させることが好ましい。以下、この液体組成物についてさらに説明する。
該液体組成物を構成する液体媒体としては、水系緩衝液が好ましく、特に2〜8mMのトリス緩衝液が好ましい。また、水系緩衝液のpHは、9.0〜9.8が好ましく、さらに好ましくは9.2〜9.6である。組成物のpHがこの範囲内にあると、液体組成物中のラテックス粒子の自然凝集が抑制される。
液体組成物中のラテックス粒子(抗体又はその抗原結合性断片を結合したラテックス粒子)の濃度は、被検出物の種類、必要とする検出感度等を勘案して適宜選択するのが好ましく、特に限定されないが、高い測定感度を得るのには、通常、0.005w/v%〜0.2w/v%、好ましくは、0.01w/v%〜0.1w/v%である。また、界面活性剤の濃度は、0.1w/v%〜2.0w/v%が好ましく、さらに好ましくは0.2w/v%〜1.0w/v%である。この範囲において、免疫測定の際に標識体の復元性が特に優れている。糖類の濃度は、3w/v%〜20w/v%が好ましく、さらに好ましくは5w/v%〜10w/v%である。この範囲において、良好な自己凝集防止効果が得られ、また、免疫測定の感度に悪影響を与えない。
上記液体組成物はさらに、タンパク質を含んでいてもよい。タンパク質を含有することにより、ラテックス浮遊液を長時間保存したときにでも、自己凝集が起こりにくくなる。タンパク質としては、従来から一般的な免疫測定用試薬中に安定剤、非特異的反応防止剤、ブロッキング剤等として添加されているものであって、被検出物と結合しないタンパク質であれば特に限定されるものではないが、アルブミン(ウシ血清アルブミン、卵由来アルブミン等)、カゼイン、ゼラチン、正常免疫グロブリン等が好ましく使用できる。これらのタンパク質は、単独でも2種以上を組み合わせても用いることができる。
上記液体組成物中のタンパク質の濃度は、0.02w/v%〜0.1w/v%であることが好ましい。この範囲において、自己凝集の防止効果が大きい。
さらに、上記液体組成物には、必要に応じて、防腐剤を含ませてもよい。防腐剤としては、例えばアジ化ナトリウム、イソチアゾリン類のプロクリン(商品名)等が挙げられるが、これらに限定されない。防腐剤の濃度は、通常、0.02w/v%〜0.05w/v%程度である。
ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの標識体部を構成する多孔性基材は、特別な物でなく、従来からラテラルフロー免疫測定用検査デバイスに一般的に用いられているガラス繊維フィルターや不織布等を用いることができる。好ましくは、標識体部を構成する多孔性基材は、ガラス繊維や不織布等から成るパッド状(通常、厚さが0.3mm〜0.6mm程度)であり、このようなパッド状とすることにより多量の標識体を含浸させることができる。標識体パッドは、好ましくは、後述のように、その一端を、検体試料滴下部を構成する多孔性基材(通常、ガラス繊維フィルターや不織布等)と積層し、他端を、検出部が形成される多孔性基材(通常、ニトロセルロースメンブラン等)と積層する。これにより、連続したラテラルフローの流路が形成され、ラテラルフロー免疫測定に用いることができる。これらの多孔性基材は、プラスチック板上に積層される。あるいは、標識体パッドは、デバイス本体を構成するニトロセルロースメンブラン等の多孔性基材上に載置することも可能である。また、標識体部をパッド状とせず、デバイス本体を構成するニトロセルロースメンブラン等の多孔性基材の一部領域に上記液体組成物を施し、乾燥して標識体部とすることも可能である。いずれの場合も、標識体部は、検体試料滴下部と検出部の間に配置される。
上記液体組成物は、塗布、スプレー、浸漬等により多孔性基材に施すことができる。多孔性基材に施す液体組成物の量は、特に限定されないが、通常、多孔性基材1cm2当り20〜100μL程度である。
液体組成物を多孔性基材に施した後、組成物を乾燥させる。乾燥は、温風を吹きつける温風乾燥でもよいし空気中での自然乾燥でもよい。乾燥すると、上記界面活性剤は、白色の粉末状になる。
本発明は、上記のようにして形成される標識体部を含むラテラルフロー免疫測定用検査デバイスをも提供する。標識体部として、上記した界面活性剤及び糖類を含むものを用いる点を除き、検査デバイスの構成自体は周知のものであってよい。本発明のラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの具体例の模式図を図1に示すが、本発明の検査デバイスはこれに限定されるものではない。
図1の上が上面図、下が切断断面図である。図示の具体例では、プラスチック板(ヘ)上に、2個の検出部(ハ)が形成されたニトロセルロースメンブラン(イ)、濾紙で形成された吸収パッド部(ホ)、上記方法により形成された標識体部(ロ)、及びガラス繊維フィルターで形成された検体試料滴下部(ニ)がそれぞれ積層されている。そして、図示のように、吸収パッド部(ホ)の一方の端部領域と、ニトロセルロースメンブラン(イ)の一方の端部領域、ニトロセルロースメンブラン(イ)の他方の端部領域と標識体部(ロ)の一方の端部領域、標識体部(ロ)の他方の端部領域と検体試料滴下部(ニ)の一方の端部領域がそれぞれ重ね合わされており、これにより、連続したラテラルフローの流路が形成されている。
次にこの検査デバイスを用いた免疫測定法について説明する。先ず、検体を検体浮遊/抽出用緩衝液に浮遊/抽出させた検体試料を調製する。プラスチック板(ヘ)上に積層されたニトロセルロースメンブラン(イ)上に、被検出物と抗原抗体反応する抗体を着色ラテックス粒子で標識した、上記方法により形成される安定化乾燥標識体パッドを含む標識体部(ロ)を備え、更に被検出物と抗原抗体反応する抗体を捕捉物質としてライン状に固相化された検出部(ハ)を備えた検査デバイスの検体試料滴下部(ニ)に前記検体試料を滴下する。被検出物を含む検体試料は、メンブラン上を水平方向に移動しながら標識体を展開するので、被検出物が存在すれば、被検出物−標識体の複合体を形成し、更に検出部(ハ)に到達するとそのライン上に、捕捉抗体−被検出物−標識体の複合体が形成され、この複合体中の着色ラテックス粒子により、複合体の存在を検出することで検体中の被検出物の有無を判定する。なお、検出部(ハ)は、被検出物質と抗原抗体反応し、且つ、着色ラテックス粒子上の抗体又はその抗原結合性断片と同時に被検出物に結合することが可能な、抗体又はその抗原結合性断片をライン状に固相化した領域である。反応に関与しなかった他の成分等は、吸収パッド部(ホ)に吸収される。なお、図1に示す例では、検出部(ハ)が2個存在するが、これは、例えば下記実施例に記載するように、A型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスのような2種類の被検出物をそれぞれ捕捉するためのものである。このような検出部(ハ)を複数設けることにより、複数種類の被検出物を同時に免疫測定することが可能である。
被検出物と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を結合させたラテックス粒子を安定化乾燥標識体として用いる本発明の検査デバイスを用いることにより、迅速且つ簡便に被検出物を測定できる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。但し、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1、比較例1
ラテラルフロー免疫測定法によるインフルエンザウイルス抗原の検出
1.抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体の作製
(1)抗A型インフルエンザウイルスNP抗体
A型インフルエンザウイルス抗原をBALB/cマウスに免疫し、一定期間飼育したマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。得られた融合細胞(ハイブリドーマ)を、37℃インキュベーター中で維持し、A型インフルエンザウイルスNP抗原を固相したプレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。取得した該細胞2株をそれぞれプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。得られた腹水からプロティンAカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、それぞれIgGを精製し、2種類の精製抗A型インフルエンザウイルスNP抗体を得た。
(2)抗B型インフルエンザウイルスNP抗体
B型インフルエンザウイルス抗原を用い、(1)と同様の方法で、2種類の精製抗B型インフルエンザウイルスNP抗体を得た。
2.ラテックス粒子を標識した標識体を含む標識体パッドの作製
精製抗A型インフルエンザウイルスNP抗体及び精製抗B型インフルエンザウイルスNP抗体のうちそれぞれ1種類ずつを使用した。粒径0.394μmの青色ラテックス粒子(CM/BL セラダイン製)に抗A型インフルエンザウイルス抗体を共有結合させ、デオキシコール酸ナトリウム0.5w/v%、ウシ血清アルブミン0.04w/v%及びマルトース7.5w/v%を含む5mMトリス緩衝液、pH9.4にラテックス粒子の濃度が0.025w/v%になるように懸濁し、ソニケーションを行って充分に分散浮遊させた抗A型ラテックス浮遊液を調製した。また、同様に抗B型インフルエンザウイルス抗体を共有結合させた抗B型ラテックス浮遊液を調製した。抗A型ラテックス浮遊液と抗B型ラテックス浮遊液とを混合し、大きさが20cm×1cmのガラス繊維(33GLASS NO.10539766 Schleicher & Schuell製)に1平方センチメートルあたり50μLになる量を塗布し、温風下で良く乾燥させて、乾燥混合物を形成した標識体パッドを作製した。
3.検査デバイスの作製
検査デバイスは、図1に示すものと同様の構成のものを用いた。ニトロセルロースメンブラン(Hiflow Plus HF120 ミリポア製)を2cm×20cmの大きさに裁断し接着剤がついたプラスチック板でバッキングした、下端から 0.6cmと1.0cmの位置に約1mm幅になる量の抗A型インフルエンザウイルス抗体(上記と別の抗体)液、並びに抗B型インフルエンザウイルス抗体(上記と別の抗体)液を各々20cm塗布し、温風下で良く乾燥させて抗体を固相化した(検出部)。次に、3cm×20cmの大きさの濾紙(WF1.5 ワットマン製)をニトロセルロースメンブランの上端に5mm重ねて吸収パッド部を設けた。更に、標識体パッドをニトロセルロースメンブランの下端に2mm重ねて標識体部を設け、更に、大きさが2.0cm×20cmのガラス繊維(F075-14、ワットマン製)を標識体パッドの上端から7mm離れた位置に合わせて重ね、検体試料滴下部を設けた。次いで、カッターで幅5mmの短冊に裁断して一体化された検査デバイスを作製した。
4.試験
検体として、ふ化鶏卵内で培養したA型インフルエンザウイルス A/Beijing/32/92(H3N2)及びB型インフルエンザウイルス B/Shangdong/7/97を用いた。検体は、検体浮遊/抽出用緩衝液(50mMトリス緩衝液、pH8.0にTriton X-100(商品名) 1(w/v)%、ウシ血清アルブミン 4(w/v)%、正常マウス免疫グロブリン 0.1(w/v)%、アジ化ナトリウム 0.09(w/v)%に加)を用いて以下のような2倍階段希釈を行い検体試料とした。
1: 200
1: 400
1: 800
1: 1,600
1: 3,200
1: 6,400
なお、陰性対照試料は、検体浮遊/抽出用緩衝液を用いた。
次に、検査デバイスを水平に置き、検体試料並びに陰性対照試料を検体試料滴下部に100μL滴下し、標識体を展開させた。判定は、5分間、10分間に検出部(A型インフルエンザウイルス検出部並びにB型インフルエンザウイルス検出部)の着色ラインの有無を目視により観察して行った。
着色ライン有 :陽性(+)
着色ライン無 :陰性(−)
比較例1として、デオキシコール酸ナトリウムを含まない標識体パッドを用いた以外は、上記したと同様の方法で作製した検査デバイスを用い検出感度を試験した。
判定は、実施例1と同様にして行った。
5.結果
得られた結果を下記表1に示す。表1に示すように、A/Beijing/32/92(H3N2)は、5分間の判定では1:1,600までA型検出部が陽性を示し、10分間の判定では1:3,200までA型検出部が陽性を示し、同じ反応時間の比較例1のA型の値と比べ検出感度が高かった。なお、B型検出部は全て陰性を示した。B/Shangdong/7/97は、5分間の判定では,1:800までB型検出部が陽性を示し、10分間の判定では,1:1,600までB型検出部が陽性を示し、同じ反応時間の比較例1のB型の値と比べ検出感度が高かった。なお、A型検出部は全て陰性を示した。なお、陰性対照試料は、全てにおいて陰性を示した。
実施例1の成績は、A型並びにB型ウイルスとも比較例1よりも短時間で少ないウイルス量を検出している。本発明のラテックス粒子を標識した標識体の乾燥混合物を用いた検査デバイスを用いることにより非特異がなく、A型/B型インフルエンザウイルスを迅速且つ高感度に検出並びに鑑別できることがわかる。
Figure 0004865588
実施例2〜6
実施例1に記載のデオキシコール酸ナトリウムに代え、コール酸ナトリウム(実施例2)、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド(実施例3)、n-ドデシル-β-D-マルトピラノシド(実施例4)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホン酸(実施例5)、又はツビッタージェント 3-10デタージェント(商品名)(実施例6)をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様に検査デバイスを作製し試験した。その結果、実施例1と同様の成績が得られた。
実施例7〜9、比較例2
糖類がラテックス粒子の自己凝集を防止する効果を確かめるために以下のような実験を行った。粒径0.394μmの青色ラテックス粒子(CM/BL セラダイン製)に抗A型インフルエンザウイルス抗体(実施例1と同じ)を共有結合させ、下記の組成の溶液をそれぞれ調製し、ラテックス粒子の濃度が0.025w/v%になるようにそれぞれの溶液に分散浮遊させたA型ラテックス浮遊液を調製した。また、同様にしてB型インフルエンザウイルス抗体(実施例1と同じ)を共有結合させ、ラテックス粒子の濃度が0.025w/v%になるようにそれぞれの溶液に分散浮遊させたB型ラテックス浮遊液を調製した。それぞれの溶液のA型ラテックス浮遊液とB型ラテックス浮遊液とを混合し、実施例1に記載したと同様に乾燥させ、一体化された検査デバイスを作製した。実施例1同様に試験した。ただし判定は、5分間で行った。
溶液の組成:
比較例2:トリス塩基 5mM pH9.4、ウシ血清アルブミン0.04w/v%、n-オクチル-β-D-マルトピラノシド0.3w/v%

実施例7:トリス塩基 5mM pH9.4、ウシ血清アルブミン0.04w/v%、n-オクチル-β-D-マルトピラノシド 0.3w/v%、マルトース10w/v%

実施例8:トリス塩基 5mM pH9.4、ウシ血清アルブミン0.04w/v%、n-オクチル-β-D-マルトピラノシド0.3w/v%、サッカロース10w/v%

実施例9:トリス塩基 5mM pH9.4、ウシ血清アルブミン0.04w/v%、n-オクチル-β-D-マルトピラノシド0.3w/v%、トレハロース10w/v%
得られた結果を下記表2に示す。比較例2は、A型、B型ウイルス並びに陰性対照試料ともA型検出部、B型検出部が全て陽性を示し、偽陽性と判定された。これは、温風乾燥工程中にラテックス粒子が自己凝集を起こし、試験の際にラテックス粒子が乾燥する前の状態に復元できないため、検出ラインに非特異的に捕捉されたためと考えられる。しかしながら、実施例7〜9は、A型ウイルスがA型検出部で1: 1,600まで陽性、B型検出部で陰性、B型ウイルスがB型検出部で1: 800まで陽性、A型検出部で陰性、陰性対照試料がA型検出部、B型検出部とも陰性でA型ウイルス、B型ウイルスを特異的に検出している。以上の結果から、糖類の自己凝集防止効果は明らかである。
Figure 0004865588
本発明の一実施態様である検査デバイスの上面図並びに切断断面図である。
符号の説明
イ ニトロセルロースメンブラン
ロ 標識体部
ハ 検出部
ニ 検体試料滴下部
ホ 吸収パッド部
ヘ プラスチック板

Claims (7)

  1. 液体媒体中に浮遊又は溶解された状態にある、被検出物と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を結合したラテックス粒子、常態で白色粉末状である界面活性剤及び糖類を、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの標識体部を構成する多孔性基材に施し乾燥させることを含む、ラテラルフロー免疫測定用検査デバイスの標識体部の形成方法。
  2. 前記ラテックス粒子、界面活性剤及び糖類を同一の液体媒体中に含む組成物を前記多孔性基材に施す請求項1記載の方法。
  3. 前記界面活性剤が、分子量200〜900の陰イオン性、非イオン性又は両性界面活性剤である請求項1記載の方法。
  4. 前記糖類が、単糖及びオリゴ糖並びにそれらの糖アルコールから成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記糖類が、フルクトース、サッカロース、トレハロース、マルトース、ラクトース、ソルビト−ル及びD−マンニトールから成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項4記載の方法。
  6. 前記ラテックス粒子が着色ラテックス粒子である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法により形成された標識体部を含むラテラルフロー免疫測定用検査デバイス。
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