JP4979367B2 - 複合成形体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、天井や壁パネル、キッチンカウンター、洗面ボウル、防水パン(洗い場パン)などの住宅設備資材分野に有用な複合成形体に関する。
天井や壁パネル、キッチンカウンター、洗面ボウル、防水パン(洗い場パン)などの住宅設備資材分野においては、意匠性及び剛性に優れた複合成形体が求められている。このような複合成形体として、ノルボルネン系樹脂成形体及び人工大理石からなる複合成形体が知られている。
従来、ノルボルネン系樹脂成形体及び人工大理石からなる複合成形体は、人工大理石を金型内に配置し、反応射出成形(RIM)法によりノルボルネン系モノマー及びメタセシス触媒を含む反応液を金型内に注入し、塊状開環重合させることにより製造されている。
しかしながら、従来のノルボルネン系樹脂成形体及び人工大理石からなる複合成形体は、反りが発生しやすく、人工大理石とノルボルネン系樹脂成形体の接着性が悪いという問題があった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、意匠性と剛性を兼ね備え、反りの発生が無く、人工大理石とノルボルネン系樹脂成形体の接着性に優れた複合成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のアスペクト比を有する2種以上の充填材を含有するノルボルネン系樹脂成形体を用い、かつ該ノルボルネン系樹脂成形体を金型内に配置した後に液状の人工大理石を注入することにより、上記目的とする複合成形体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ノルボルネン系モノマーを型内で塊状重合させて得られるノルボルネン系樹脂成形体、及び人工大理石からなる複合成形体であって、該ノルボルネン系樹脂成形体が、アスペクト比が5〜100である繊維状充填材、及びアスペクト比が1〜2である粒子状充填材を含有していることを特徴とする複合成形体、
(2)前記繊維状充填材及び粒子状充填材を、繊維状充填材100重量部に対して、粒子状充填材を5〜80重量部の割合で含有することを特徴とする(1)に記載の複合成形体、及び、
(3)前記ノルボルネン系樹脂成形体を金型内に配置し、該金型内に液状の人工大理石を注入することを特徴とする(1)または(2)に記載の複合成形体の製造方法、
を提供するものである。
本発明の複合成形体は、意匠性と剛性を兼ね備え、反りの発生が無く、人工大理石とノルボルネン系樹脂成形体の接着性に優れているので、天井や壁パネル、キッチンカウンター、洗面ボウル、防水パン(洗い場パン)などの住宅設備資材分野に有用である。
本発明の複合成形体は、ノルボルネン系モノマーを型内で塊状重合させて得られるノルボルネン系樹脂成形体、及び人工大理石からなる複合成形体であって、該ノルボルネン系樹脂成形体が、アスペクト比5〜100の繊維状充填材及びアスペクト比1〜2の粒子状充填材を含有していることを特徴とする。
(ノルボルネン系樹脂成形体)
本発明に用いるノルボルネン系樹脂成形体は、ノルボルネン系モノマーを型内で塊状重合させて得られるものである。
ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環構造を有する化合物であり、そのような化合物であればいずれでもよい。なかでも、耐熱性に優れる成形体が得られることから、三環体以上の多環ノルボルネン系モノマーを用いることが好ましい。
ノルボルネン系モノマーの具体例としては、ノルボルネン及びノルボルナジエンなどの二環体;ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエン二量体)及びジヒドロジシクロペンタジエンなどの三環体;テトラシクロドデセンなどの四環体;シクロペンタジエン三量体などの五環体;シクロペンタジエン四量体などの七環体;及びこれらの置換体;などが挙げられる。
塊状重合の方法は特に限定されないが、例えば、ノルボルネン系モノマー、メタセシス触媒、充填材及び任意成分を、2以上の液に分けて調製した反応原液を型内で混合する方法が挙げられる。
反応原液は1液のみでは塊状重合しないが、全ての液を混合すると、各成分を所定の割合で含む反応液となり、ノルボルネン系モノマーの塊状重合反応が開始する。
上記塊状重合に用いるメタセシス触媒は、反応射出成形法(RIM法)でノルボルネン系モノマーを開環重合できるものであれば特に限定されず、公知のもので良い。例えば、周期表第5族または第6族の遷移金属のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、酸化物、有機アンモニウム塩、酸素酸塩及びヘテロポリ酸塩などが挙げられる。これら周期表第5族または第6族の遷移金属の化合物としては、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物及び有機アンモニウム塩が好ましく、有機アンモニウム塩がより好ましい。
また、前記遷移金属としては、モリブデン、タングステン及びタンタルが好ましく、モリブデン及びタングステンがより好ましい。メタセシス触媒の特に好ましい具体例としては、トリドデシルアンモニウムモリブデン酸塩及びタングステン酸塩、メチルトリカプリルアンモニウムモリブデン酸塩及びタングステン酸塩、トリ(トリデシル)アンモニウムモリブデン酸塩及びタングステン酸塩、並びにトリオクチルアンモニウムモリブデン酸塩及びタングステン酸塩などが挙げられる。
なお、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリドなどの活性剤や、アルコール類、ハロアルコール類、エステル類、エーテル類、ニトリル類などの活性調節剤を併用しても良い。
前記任意成分としては、活性剤、活性調節剤、エラストマー、及び酸化防止剤などが挙げられる。
本発明に用いるノルボルネン系樹脂成形体は、アスペクト比が5〜100である繊維状充填材、及びアスペクト比が1〜2である粒子状充填材を含有する。
繊維状充填材は、ノルボルネン系モノマーに不溶な固体の材料であり、そのアスペクト比が5〜100、好ましくは10〜50、より好ましくは15〜35のものである。アスペクト比が過度に小さいと成形体の強度や寸法安定性が不十分となる場合があり、過度に大きいと型内に注入する時に注入ノズルが詰まるおそれがある。
なお、本発明において充填材のアスペクト比とは、充填材の平均長軸径と50%体積累積径との比である。ここで、平均長軸径は光学顕微鏡写真で無作為に選んだ100個の充填材の長軸径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均長軸径である。また、50%体積累積径は、X線透過法で粒度分布を測定することにより求められる値である。
繊維状充填材の50%体積累積径は、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは1〜30μmである。50%体積累積径が過度に小さいと、成形体の強度や寸法安定性が不十分(成形体の寸法安定性が不十分とは、成形体に反りが生じたり、所望の寸法の成形体が得られにくいことを意味する。)となる場合があり、過度に大きいと、反応液を型内に注入する時にタンクや配管内で沈降したり、注入ノズルが詰まったりする場合がある。
繊維状充填材の具体例としては、ガラス繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノライト、塩基性硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、テトラポット型酸化亜鉛、石膏繊維、ホスフェート繊維、アルミナ繊維、針状炭酸カルシウム、針状ベーマイトなどが挙げられる。
粒子状充填材は、ノルボルネン系モノマーに不溶な固体の材料であり、そのアスペクト比が1〜2、好ましくは1〜1.5のものである。
また、粒子状充填材の50%体積累積径は、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは1〜30μmである。50%体積累積径が過度に小さいと成形体の強度や寸法安定性が不十分となる場合があり、過度に大きいと、反応液を型内に注入する時にタンクや配管内で沈降したり、注入ノズルが詰まったりする場合がある。
粒子状充填材の具体例としては、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、グラファイト、酸化アンチモン、赤燐、各種金属粉、クレー、各種フェライト、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。
繊維状充填材及び粒子状充填材は、表面を疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理された充填材を用いることで、得られる成形体中に充填材を均一に分散させることができ、強度や寸法安定性が均一で、異方性が小さい成形体とできる。
疎水化処理に用いられる処理剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、脂肪酸、油脂、界面活性剤、ワックス、その他の高分子などが挙げられる。
ノルボルネン系樹脂成形体中の充填材の含有量は、上記繊維状充填材と粒子状充填材との合計で、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。
粒子状充填材は、繊維状充填材100重量部に対して、通常、5〜80重量部、好ましくは10〜50重量部である。また、繊維状充填材と粒子状充填材との量比がこの範囲であると、得られる成形体の強度や寸法安定性が均一で、異方性が小さい。
(人工大理石)
本発明に用いる人工大理石は、アクリル樹脂に充填材を含有させることにより天然石調の外観を呈するものである。
アクリル樹脂は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びエチレングリコールジメタクリレートなどのアクリレート類の一種類もしくは二種類以上の混合物を主成分とし、ラジカル重合することにより得られたものが挙げられる。これらの中でも、耐候性、耐薬品性及び透明性の観点からメチルメタクリレートを主成分として得られたものが好ましい。
充填材としては、かんらん石、霞石、閃長石、珪灰石、燐灰石、方解石、菱苦土石、及び重晶石などの砕石;マイカ、ガラス、水酸化アルミニウム、アルミナ、カオリンなどが好ましく、砕石が特に好ましい。
人工大理石の具体例としては、デュポンコーリアン(三菱レイヨン社製)、グラスピュア(大日本インキ社製)、ネオポール(日本ユピカ社製)などが挙げられる。
(複合成形体の製造方法)
本発明の複合成形体の製造方法は、ノルボルネン系樹脂成形体を金型内に配置し、該金型内に液状の人工大理石を注入することを特徴とする。
本発明の複合成形体の製造方法においては、ノルボルネン系樹脂成形体を配置すると、該ノルボルネン系樹脂成形体表面と内面との間に隙間を生じる、内面形状を有する金型を使用する。該金型内にノルボルネン系樹脂成形体を配置し、次いで、液状の人工大理石シラップを前記隙間に注入することにより、本発明の複合成形体を得ることができる。
注入時の金型温度は、通常、30〜100℃である。また、注入圧力は、通常、絶対圧力で0.05〜0.5MPaである。
また、人工大理石シラップの温度は、10〜30℃が好ましい。
本発明の製造方法によれば、人工大理石を金型内に配置した後に反応射出成形(RIM)法によりノルボルネン系樹脂成形体を形成する場合と比較して、人工大理石とノルボルネン系樹脂成形体の接着性が向上した複合成形体を得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。また、各特性は下記に示す方法により測定した。
(1)充填材の50%体積累積径
充填材の50%体積累積径は、粒度分布測定装置(セディグラフ、マイクロメリティクス社製)を用い、X線透過法で粒度分布を測定して求めた。
(2)充填材のアスペクト比
充填材のアスペクト比は、光学顕微鏡写真で無作為に選んだ100個の充填材の長軸径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均長軸径と、上記の50%体積累積径との比として求めた。
(3)線膨張率
ノルボルネン系樹脂成形体の線膨張率は、JIS K 7197に準じて測定した。ただし、試験片としては、長さ10mm、幅5mm、厚さ4mmのものを用いた。
(4)接着性
アクリル人工大理石とノルボルネン系樹脂成形体との界面をマイナスドライバーでこじ開け、「剥がれる」場合を×、「剥がれない」場合を○で接着性を評価した。
(実施例1)
ジシクロペンタジエン90部及びトリシクロペンタジエン10部からなる混合モノマーに、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(クインタック3421、日本ゼオン社製)を3部溶解させた。次いで、活性剤としてジエチルアルミニウムクロライド、及び活性調節剤として1,3−ジクロロ−2−プロパノールをそれぞれ100ミリモル/kg濃度となるように添加した後、さらに四塩化珪素を0.1部添加して均一に混合分散し、反応原液(A液)を得た。A液の比重は0.98であった。
これとは別に、ジシクロペンタジエン90部及びトリシクロペンタジエン10部からなる混合モノマーに、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(クインタック3421、日本ゼオン社製)を3部溶解させた。次いで、フェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、チバスペシャリティーケミカルズ製)を2部、及び重合触媒としてトリ(トリデシル)アンモニウムモリブデートを25ミリモル/kg濃度となるように添加して均一に混合分散し、反応原液(B液)を得た。
さらに上記とは別に、ジシクロペンタジエン90部及びトリシクロペンタジエン10部からなる混合モノマーに、繊維状充填材として、ウォラストナイト(50%体積累積径が20μm、アスペクト比が18、SH−400:キンセイマテック社製、ビニルシランで表面処理されているもの)135部、粒子状充填材として重質炭酸カルシウム(50%体積累積径が1.4μm、アスペクト比が1、SCP−E♯2300、三共精粉社製、ステアリン酸で表面処理されているもの)45部、及びアルミネート系の分散剤(プレンアクトKR TTS、味の素ファインテクノ社製)1.8部を加えて攪拌混合し、反応原液(C液)を得た。C液の比重は1.6であった。
内部に縦500mm×横500mm×厚さ4mmの空間(キャビティ)を有する反応射出成形用金型の一方を90℃、もう一方を60℃に加温した。A液26.8部、B液26.8部、及びC液46.4部をミキシングヘッド内に送液し、次いで前記反応射出成形用金型内に注入圧力5MPa以下で注入し塊状重合を開始して3分間反応を行った。このときのA液、B液、及びC液の混合比は体積比で1:1:1であり、注入される繊維状充填材の量は22.5部、粒子状充填材の量は7.5部であった。その後、金型より成形体を取り出し、この成形体からA4サイズ(長さ347mm、幅210mm)の板を切り出した。
メチルメタクリレートモノマー340g、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(クインタック3421:日本ゼオン社製)30gを2リットルのセパラブルフラスコに入れ、60℃で混合溶解した。そこへ、ポリメチルメタクリレート(平均分子量:500,000)27g、及びトリメチロールプロパントリメタクリレート3gを添加して混合溶解させた後、室温で一昼夜放置してアクリルシラップを得た。
次に、上記アクリルシラップに、シランカップリング剤処理マイカ(東新化成社製)50g、及びシランカップリング剤処理水酸化アルミニウム(日本軽金属社製)550gを均一に添加混合して、充填剤入りアクリルシラップを調製した。次いで、ステアリン酸3g、及びラジカル重合開始剤としてビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(パーカドックス16、化薬アクゾ社製)6gを加え、全容を約30分間攪拌混合させた後、減圧脱泡して目的のアクリル人工大理石シラップを得た。
300mm×210mm×厚さ3mmの2枚のステンレス板の間に、前述したノルボルネン系樹脂成形体と軟質ゴムガスケットを介在させて、縦260mm×横160mm×厚さ5mmの空間(キャビティ)を作り、該空間中にアクリル人工大理石シラップを注入し、50℃の温水中で40分間、次いで90℃の温水中で1時間硬化させて、ノルボルネン系樹脂成形体とアクリル人工大理石からなる複合成形体1を得た。得られた複合成形体1の反りの有無を評価した。
(比較例1)
繊維状充填材と粒子状充填材を添加しなかった他は、実施例1と同様にしてノルボルネン系樹脂成形体とアクリル人工大理石からなる複合成形体2を得た。得られた複合成形体2の反りの有無を評価した。
実施例1で用いた繊維状充填材及び粒子状充填材の、アスペクト比及び成形体中の量、実施例1及び比較例1で用いたノルボルネン系樹脂成形体の線膨張率、並びに、実施例1及び比較例1で得られた複合成形体の、反りの有無及び接着性の評価結果を第1表にまとめて示す。
Figure 0004979367
第1表から、アスペクト比が5〜100である繊維状充填材、及びアスペクト比が1〜2である粒子状充填材を含有したノルボルネン系樹脂成形体を用いた実施例1の複合成形体1は、反りの発生が無く、ノルボルネン系樹脂成形体とアクリル人工大理石の接着性も良好であった。一方、充填材を含有しないノルボルネン系樹脂成形体を用いた比較例1の複合成形体2には、反りの発生が見られた。

Claims (3)

  1. ノルボルネン系モノマーを型内で塊状重合させて得られるノルボルネン系樹脂成形体、および人工大理石からなる複合成形体であって、該ノルボルネン系樹脂成形体が、アスペクト比が5〜100である繊維状充填材、およびアスペクト比が1〜2である粒子状充填材を含有してなり、前記人工大理石がアクリル樹脂に充填材を含有させてなるものであることを特徴とする複合成形体。
  2. 前記繊維状充填材および粒子状充填材を、繊維状充填材100重量部に対して、粒子状充填材を5〜80重量部の割合で含有することを特徴とする請求項1に記載の複合成形体。
  3. 前記ノルボルネン系樹脂成形体を金型内に配置し、該金型内に、液状の、アクリル樹脂に充填材を含有させてなる人工大理石を注入することを特徴とする請求項1または2に記載の複合成形体の製造方法。
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