図1は、本発明が適用された車両用自動変速機(以下、自動変速機という)10の構成を説明する骨子図である。図2は複数の変速段を成立させる際の摩擦係合要素すなわち摩擦係合装置の作動状態を説明する係合作動表である。この自動変速機10は、車両の左右方向(横置き)に搭載するFF車両に好適に用いられるものであって、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース26内において、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびシングルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体としてラビニヨ型に構成されている第2変速部20とを同軸線上(共通の軸心C上)に有し、入力軸22の回転を変速して出力回転部材24から出力する。この入力軸22は入力部材に相当するものであり、本実施例では走行用の動力源であるエンジン30によって回転駆動される流体式伝動装置としてのトルクコンバータ32のタービン軸である。また、出力回転部材24は自動変速機10の出力部材に相当するものであり、図3に示す差動歯車装置34に動力を伝達するためにそのデフドリブンギヤ(大径歯車)36と噛み合う出力歯車すなわちデフドライブギヤとして機能している。エンジン30の出力は、トルクコンバータ32、自動変速機10、差動歯車装置34、および一対の車軸38を介して一対の駆動輪40へ伝達されるようになっている。また、トルクコンバータ32は、エンジン30の出力を流体を介して入力軸22に伝達すると共に、エンジン30の出力を流体を介することなく入力軸22に直接伝達するためのロックアップクラッチ33を備えている。なお、この自動変速機10やトルクコンバータ32は中心線(軸心)Cに対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはその中心線Cの下半分が省略されている。
自動変速機10は、第1変速部14および第2変速部20の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)のうちのいずれかの連結状態の組み合わせに応じて第1変速段(第1速ギヤ段)「1st」〜第6変速段(第6速ギヤ段)「6th」の6つの前進変速段(前進ギヤ段、前進走行用ギヤ段)が成立させられるとともに、後進変速段(後進ギヤ段、後進走行用ギヤ段)「R」の1つの後進ギヤ段が成立させられる。図2に示すように、例えば前進ギヤ段では、クラッチC1とブレーキB2との係合により第1速ギヤ段が、クラッチC1とブレーキB1との係合により第2速ギヤ段が、クラッチC1とブレーキB3との係合により第3速ギヤ段が、クラッチC1とクラッチC2との係合により第4速ギヤ段が、クラッチC2とブレーキB3との係合により第5速ギヤ段が、クラッチC2とブレーキB1との係合により第6速ギヤ段が、それぞれ成立させられるようになっている。また、ブレーキB2とブレーキB3との係合により後進ギヤ段が成立させられ、クラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3のいずれも解放されることによりニュートラル状態となるように構成されている。
図2の係合作動表は、上記各変速段とクラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3の作動状態との関係をまとめたものであり、「○」は係合を表している。また、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
上記クラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される第1油圧式摩擦係合装置(クラッチC1)、第2油圧式摩擦係合装置(クラッチC2)、第3油圧式摩擦係合装置(ブレーキB1)、第4油圧式摩擦係合装置(ブレーキB2)、第5油圧式摩擦係合装置(ブレーキB3)であり、油圧制御装置としての油圧制御回路100(図3参照)内の電磁弁装置としてのリニアソレノイドバルブSLC1、SLC2、SLB1、SLB2、SLB3の励磁、非励磁や電流制御により、係合、解放状態が切り換えられるとともに係合、解放時の過渡油圧などが制御される。
図3は、図1の自動変速機10などを制御するために車両に設けられた電気的な制御系統の要部を説明するブロック線図である。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン30の出力制御や自動変速機10の変速制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用やリニアソレノイドバルブSLC1、SLC2、SLB1、SLB2、SLB3を制御する変速制御用等に分けて構成される。
図3において、所謂アクセル開度として知られるアクセルペダル50の操作量Accを検出するためのアクセル操作量センサ52、エンジン30の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン30の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TAを検出するための吸入空気温度センサ62、電子スロットル弁の開度θTHを検出するためのスロットル弁開度センサ64、車速V(出力回転部材24の回転速度NOUTに対応)を検出するための車速センサ66、エンジン30の冷却水温TWを検出するための冷却水温センサ68、常用ブレーキであるフットブレーキペダル69の操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフト操作部材としてのシフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NTすなわち入力軸22の回転速度NINを検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路100内の作動油の温度であるAT油温TOILを検出するためのAT油温センサ78などが設けられており、それらのセンサやスイッチなどから、アクセル操作量(アクセル開度)Acc、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA、スロットル弁開度θTH、車速V、出力回転速度NOUT、エンジン冷却水温TW、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT(=入力回転速度NIN)、AT油温TOILなどを表す信号が電子制御装置90へ供給されるようになっている。
また、電子制御装置90からは、エンジン30の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号SE、例えばアクセル操作量Accに応じて電子スロットル弁の開閉を制御するためのスロットルアクチュエータを駆動する信号や燃料噴射装置から噴射される燃料の量を制御するための噴射信号や点火装置によるエンジン30の点火時期を制御するための点火時期信号などが出力されている。また、自動変速機10の変速制御の為の変速制御指令信号SP、例えば自動変速機10の変速段を切り換えるために油圧制御回路100内のリニアソレノイドバルブSLC1、SLC2、SLB1、SLB2、SLB3を制御する信号やライン油圧PLを制御する電磁弁装置としてのリニアソレノイドバルブSLTを駆動するための信号などが出力されている。
上記変速制御についてより具体的には、電子制御装置90は、例えば図4に示すような車速Vおよびアクセル操作量Accを変数として予め記憶された関係(マップ、変速線図)から実際の車速Vおよびアクセル操作量Accに基づいて自動変速機10の変速を実行すべきか否かを判断し、例えば自動変速機10の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速機10の自動変速制御を実行する変速制御手段を機能的に備えている。このとき、電子制御装置90は、例えば図2に示す係合作動表に従って変速段が達成されるように、自動変速機10の変速に関与する油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力、油圧指令)すなわち油圧制御回路100内のリニアソレノイドバルブSLC1、SLC2、SLB1、SLB2、SLB3を各々励磁または非励磁して油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータへ供給する油圧を各々調圧制御させる指令を油圧制御回路100へ出力する。
シフトレバー72は、自動変速機10内の動力伝達状態を切り換えるためのシフト切換装置であって、例えば運転席の近傍に配設され、4つのレバーポジション「P(パーキング)」、「R(リバース)」、「N(ニュートラル)」、および「D(ドライブ)」(図5参照)のうちのいずれかへ手動操作されるようになっている。
「P」ポジション(レンジ)は自動変速機10内の動力伝達経路を解放しすなわち自動変速機10内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力回転部材24の回転を阻止(ロック)するための駐車ポジション(位置)であり、「R」ポジションは出力回転部材24の回転方向を逆回転とするための後進走行ポジション(位置)であり、「N」ポジションは自動変速機10内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態とするための中立ポジション(位置)であり、「D」ポジションは自動変速機10の第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段の変速を許容する変速範囲で自動変速モードを成立させて第1速ギヤ段「1st」〜第6速ギヤ段「6th」の総ての前進ギヤ段を用いて自動変速制御を実行させる前進走行ポジション(位置)である。
図5および図6は、油圧制御回路100のうち主に自動変速機10の変速を制御するためのクラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3の係合と解放とを制御する要部構成を説明する回路図である。
図5において、油圧制御回路100は、エンジン30によって回転駆動される機械式のオイルポンプ28から出力(発生)される作動油圧を元圧としてライン油圧(第1ライン油圧)PL1を調圧する第1調圧弁(プライマリレギュレータバルブ)102、第1調圧弁102によるライン油圧PL1の調圧のために第1調圧弁102から排出される油圧を元圧としてライン油圧(第2ライン油圧)PL2を調圧する第2調圧弁(セカンダリレギュレータバルブ)104、ライン油圧PL1を元圧として一定値のモジュレータ油圧PMを調圧するモジュレータバルブ106、エンジン負荷等に応じたライン油圧PL1、PL2に調圧されるために第1調圧弁102および第2調圧弁104へモジュレータ油圧PMを元圧として信号圧PSLTを供給するリニアソレノイドバルブSLT、および入力ポート108にライン油圧PL1が入力されると共にケーブルやリンクなどを介して機械的に連結されるシフトレバー72の操作に応じてすなわち連動して弁子が切り換えられることによりシフトレバー72の「D」ポジションへの操作に従ってライン油圧PL1を前進走行用油圧すなわちDレンジ圧PDとして出力ポート110から出力し或いは「R」ポジションへの操作に従ってライン油圧PL1を後進走行用油圧すなわちリバース圧PRとして出力ポート112から出力するマニュアル弁すなわちマニュアルバルブ114等を備えており、ライン油圧PL1、PL2、モジュレータ油圧PM、Dレンジ圧PD、およびリバース圧PRを油圧制御回路100内の各部例えば油圧制御回路100が備えるリニアソレノイドバルブSLC1、SLC2、SLB1、SLB2、SLB3などへ供給する。
これらリニアソレノイドバルブSLC1、SLC2、SLB1、SLB2、SLB3は、基本的には何れも同じ構成の電磁調圧弁であり、電子制御装置90により独立に励磁状態および非励磁状態が制御され、励磁状態(オン状態)においては開いた状態とされて連続的に変化する油圧を出力し、非励磁状態(オフ状態)においては閉じた状態とされて油圧を出力しない常閉型(ノーマルクローズ型、N/C型)のリニアソレノイドバルブ(電磁調圧弁)である。
また、油圧制御回路100は、Dレンジ圧PDを元圧とするリニアソレノイドバルブSLC1の出力油圧である制御圧PSLC1がクラッチC1へ直接的に供給可能なように、Dレンジ圧PDを元圧とするリニアソレノイドバルブSLC2の出力油圧である制御圧PSLC2がクラッチC2へ直接的に供給可能なように、Dレンジ圧PDを元圧とするリニアソレノイドバルブSLB1の出力油圧である制御圧PSLB1がブレーキB1へ第2の作動弁(以下、第2作動弁という)152(図6参照)を介して供給可能なように、ライン油圧PL1を元圧とするリニアソレノイドバルブSLB2の出力油圧である制御圧PSLB2がブレーキB2へ第2作動弁152を介して供給可能なように、およびDレンジ圧PDおよびリバース圧PRのうちシャトル弁126を介して供給された何れか一方の油圧を元圧とするリニアソレノイドバルブSLB3の出力油圧である制御圧PSLB3がブレーキB3へ第1の作動弁(以下、第1作動弁という)150(図6参照)を介して供給可能なようにそれぞれ油路が構成されており、リニアソレノイドバルブSLC1、SLC2、SLB1、SLB2、SLB3によりそれぞれ独立にクラッチCおよびブレーキBの係合と解放との作動が制御される。
また、油圧制御回路100には、制御圧PSLC1、制御圧PSLC2、および制御圧PSLB2がそれぞれクラッチC1、クラッチC2、およびブレーキB2の係合トルクを発生させるための所定圧以上となった場合に所定の信号例えばON信号SWONを電子制御装置90に出力する油圧スイッチ128、130、132がそれぞれ設けられている。
更に、油圧制御回路100は、ロックアップクラッチ33を解放側状態すなわちロックアップオフと係合側状態すなわち解放状態を含むスリップ状態乃至ロックアップオンとで切り換える為のロックアップリレー弁116と、このロックアップリレー弁116によりロックアップクラッチ33が係合側状態とされているときにロックアップクラッチ33の作動状態を解放状態を含むスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換える図示しないロックアップコントロール弁とを備えている。
ロックアップリレー弁116は、図示しないスプール弁子を解放(OFF)側位置へ向かう推力を付与する図示しないスプリングと、そのスプール弁子を係合(ON)側の位置へ付勢するためにモジュレータ油圧PMを元圧とするON−OFFソレノイドバルブSLの出力油圧である制御圧PSLを受け入れる油室118とを備えている。このON−OFFソレノイドバルブSLは、電子制御装置90により励磁、非励磁され、ロックアップクラッチ33の係合、解放状態を切り換える制御圧発生弁として機能するものである。
このように構成されたロックアップリレー弁116において、制御圧PSLが油室118へ供給されずスプリングの推力によってスプール弁子が解放(OFF)側位置へ付勢されると、図示しない油路によりロックアップクラッチ33がロックアップオフとされると共に、モジュレータ油圧PMを元圧とするリニアソレノイドバルブSLUの出力油圧である入力ポート120に供給された制御圧PSLUがロックアップクラッチ33の作動状態の制御に関与することがないロックアップオフ時の制御圧PSLU(L/U OFF時)として出力ポート122から出力可能な状態とされる。一方、制御圧PSLが油室118へ供給されてスプール弁子が係合(ON)側位置へ付勢されると、図示しない油路によりロックアップクラッチ33が係合側状態とされると共に、入力ポート120に供給された制御圧PSLUがロックアップクラッチ33のスリップ状態乃至ロックアップオンを制御するための制御圧PSLU(L/U ON時)として出力ポート124から供給可能な状態とされる。
図6において、油圧制御回路100は、ブレーキB3への制御圧PSLB3の供給を遮断することが可能な第1作動弁150と、ブレーキB1への制御圧PSLB1の供給およびブレーキB2への制御圧PSLB2の供給を共に遮断することが可能な第2作動弁152とを備えており、何らかの原因により例えば非励磁状態であっても油圧が出力されるリニアソレノイドバルブのオンフェールの発生により、第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段のうちの何れかの変速段を達成させる際に正常時であれば同時に供給されることがないリニアソレノイドバルブの制御圧が同時に供給されるような故障時に、所定の油圧式摩擦係合装置への制御圧の供給を遮断して自動変速機10のインタロックを回避するフェールセーフ機能を有している。以下、油圧制御回路100が備えるこのフェールセーフ機能について詳細に説明する。
第1作動弁150は、一方の軸端側付近から順に他方の軸端側へ向かう程径が大きくされているランド154a、b、cを備えるスプール弁子154と、スプール弁子154の他方の軸端側に設けられそのスプール弁子154に正常側位置へ向かう推力を付与するすなわちスプール弁子154を正常側位置へ付勢する付勢部材であるスプリング156と、そのスプリング156を収容し且つスプール弁子154を正常側位置へ付勢するために制御圧PSLU(L/U OFF時)を受け入れる油室158と、スプール弁子154の他方の軸端側に設けられそのスプール弁子154と当接するプランジャ160と、スプール弁子154の他方の軸端側に設けられプランジャ160と共にスプール弁子154を正常側位置へ付勢するためにDレンジ圧PDを受け入れる油室162と、スプール弁子154の一方の軸端側に設けられそのスプール弁子154を故障側位置へ付勢するために制御圧PSLB1を受け入れる油室164と、スプール弁子154の一方の軸端側付近に設けられそのスプール弁子154を故障側位置へ付勢するためにランド154aとそのランド154aよりも大きな径のランド154bとの間に作用させる制御圧PSLC2を受け入れる油室166と、スプール弁子154の軸方向中央付近に設けられそのスプール弁子154を故障側位置へ付勢するためにランド154bとそのランド154bよりも大きな径のランド154cとの間に作用させる制御圧PSLC1を受け入れる油室168と、スプール弁子154の一方の軸端側に設けられそのスプール弁子154と当接するプランジャ170と、スプール弁子154の一方の軸端側に設けられプランジャ170と共にスプール弁子154を故障側位置へ付勢するためにリバース圧PRおよび制御圧PSLB2のうちシャトル弁172を介して供給された何れか一方の油圧および制御圧PSLB3のうちシャトル弁174を介して供給された何れか一方の油圧を受け入れる油室176とを備えている。
このように構成された第1作動弁150において、シフトレバー72が「D」ポジションであって第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段のうちの何れかの変速段を達成させるためのリニアソレノイドバルブの制御圧のみが供給される正常時である場合には、油室164、166、168、176のうちのいずれか2つの油室に供給される制御圧による推力に抗して、油室162に供給されるDレンジ圧PDおよびスプリング156の推力によりプランジャ160と共にスプール弁子154が正常側位置へ切り換えられて、制御圧PSLB3が入力される入力ポート178とブレーキB3および第2作動弁152への油路に接続された供給ポート180とが連通させられ、且つリバース圧PRが入力される入力ポート182と第2作動弁152への油路に接続された供給ポート184とが連通させられる。
つまり、第1作動弁150は、Dレンジ圧PDの発生時である前進走行の際の正常時にはスプリング156の推力およびそのDレンジ圧PDに基づいて正常側位置が維持され、その正常側位置において制御圧PSLB3が供給ポート180からブレーキB3へ供給されることを許容する。これにより、シフトレバー72の「D」ポジションにおいてブレーキB3の係合が成立要件となる第3速ギヤ段および第5速ギヤ段の達成が許容される。
一方、シフトレバー72が「D」ポジションであって第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段のうちの何れかの変速段を達成させる際に正常時であれば同時に供給されることがない、制御圧PSLC1、制御圧PSLC2、制御圧PSLB1、および制御圧PSLB2或いは制御圧PSLB3のうち少なくとも3つのリニアソレノイドバルブの制御圧が同時に供給されるような故障時である場合には、油室162に供給されるDレンジ圧PDおよびスプリング156の推力に抗して、油室164、166、168、176のうちの少なくとも3つの油室に供給される制御圧による推力によりスプール弁子154が故障側位置へ切り換えられて、入力ポート178から供給ポート180への油路が遮断させられると共に入力ポート182と供給ポート180とが連通させられ、且つDレンジ圧PDが入力される入力ポート186と供給ポート184とが連通させられる。
つまり、第1作動弁150は、Dレンジ圧PDの発生時である前進走行の際の上記故障時には制御圧PSLC1、制御圧PSLC2、制御圧PSLB1、および制御圧PSLB2或いは制御圧PSLB3のうち少なくとも3つのリニアソレノイドバルブの制御圧の発生に基づいて故障側位置へ切り換えられ、その故障側位置においてブレーキB3への制御圧PSLB3の供給を遮断すると共に、故障時の所定油圧としてのDレンジ圧PDを第2作動弁152へ出力する。これにより、前進走行の際の故障時にブレーキB3の異常な係合に起因する自動変速機10のインタロックが回避させられ得る。
第2作動弁152は、一方の軸端側付近から順に他方の軸端側へ向かう程径が大きくされているランド188a、b、c、dを備えるスプール弁子188と、スプール弁子188の他方の軸端側に設けられそのスプール弁子188に正常側位置へ向かう推力を付与するすなわちスプール弁子188を正常側位置へ付勢する付勢部材であるスプリング190と、そのスプリング190を収容し且つスプール弁子188を正常側位置へ付勢するために制御圧PSLU(L/U OFF時)を受け入れる油室192と、スプール弁子188の他方の軸端側に設けられそのスプール弁子188と当接するプランジャ194と、スプール弁子188の他方の軸端側に設けられプランジャ194と共にスプール弁子188を正常側位置へ付勢するためにライン油圧PL1を受け入れる油室196と、スプール弁子188の一方の軸端側に設けられそのスプール弁子188を故障側位置へ付勢するために供給ポート184からの油圧(Dレンジ圧PD或いはリバース圧PR)を受け入れる油室198と、スプール弁子188の一方の軸端側付近に設けられそのスプール弁子188を故障側位置へ付勢するためにランド188aとそのランド188aよりも大きな径のランド188bとの間に作用させるリバース圧PRおよび制御圧PSLB2のうちシャトル弁172を介して供給された何れか一方の油圧を受け入れる油室200と、スプール弁子188の軸方向中央付近に設けられそのスプール弁子188を故障側位置へ付勢するためにランド188cとそのランド188cよりも大きな径のランド188dとの間に作用させる制御圧PSLB1を受け入れる油室202と、スプール弁子188の一方の軸端側に設けられそのスプール弁子188と当接するプランジャ204と、スプール弁子188の一方の軸端側に設けられプランジャ204と共にスプール弁子188を故障側位置へ付勢するために供給ポート180からの油圧(制御圧PSLB3或いはリバース圧PR)を受け入れる油室206とを備えている。
このように構成された第2作動弁152において、シフトレバー72が「D」ポジションであって第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段のうちの何れかの変速段を達成させるためのリニアソレノイドバルブの制御圧のみが供給される正常時である場合には、油室198、200、202、206のうちの多くとも1つの油室に供給される制御圧による推力に抗して、油室196に供給されるライン油圧PL1およびスプリング190の推力によりプランジャ194と共にスプール弁子188が正常側位置へ切り換えられて、制御圧PSLB1が入力される入力ポート208とブレーキB1への油路に接続された供給ポート210とが連通させられ、且つ制御圧PSLB2が入力される入力ポート212とブレーキB2への油路に接続された供給ポート214とが連通させられる。
つまり、第2作動弁152は、Dレンジ圧PDの発生時である前進走行の際の正常時にはスプリング190の推力およびライン油圧PL1に基づいて正常側位置が維持され、その正常側位置において制御圧PSLB1および制御圧PSLB2がそれぞれブレーキB1およびブレーキB2へ供給されることを許容する。これにより、シフトレバー72の「D」ポジションにおいてブレーキB1或いはブレーキB2の係合が成立要件となる第1速ギヤ段、第2速ギヤ段、および第6速ギヤ段の達成が許容される。
一方、シフトレバー72が「D」ポジションであって第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段のうちの何れかの変速段を達成させる際に正常時であれば同時に供給されることがない、制御圧PSLB1、制御圧PSLB2、制御圧PSLB3、および故障時の所定油圧として第1作動弁150から出力されるDレンジ圧PDのうち少なくとも2つの油圧が同時に供給されるような故障時である場合には、油室196に供給されるライン油圧PL1およびスプリング190の推力に抗して、油室198、200、202、206のうちの少なくとも2つの油室に供給される油圧による推力によりスプール弁子188が故障側位置へ切り換えられて、入力ポート208から供給ポート210への油路が遮断させられると共にオリフィスを経由して制御圧PSLU(L/U OFF時)が入力される入力ポート216と供給ポート210とが連通させられ、入力ポート212から供給ポート214への油路が遮断させられると共にリバース圧PRが入力される入力ポート218と供給ポート214とが連通させられる。
つまり、第2作動弁152は、Dレンジ圧PDの発生時である前進走行の際の上記故障時には制御圧PSLB1、制御圧PSLB2、制御圧PSLB3、および故障時の所定油圧として第1作動弁150から出力されるDレンジ圧PDのうち少なくとも2つの油圧の発生に基づいて故障側位置へ切り換えられ、その故障側位置においてブレーキB1への制御圧PSLB1の供給およびブレーキB2への制御圧PSLB2の供給を遮断する。これにより、前進走行の際の故障時にブレーキB1またはブレーキB2の異常な係合に起因する自動変速機10のインタロックが回避させられ得る。
そして、油圧制御回路100は、前記機能を有する第1作動弁150および第2作動弁152を備えることにより、第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段のうちの何れかの変速段を達成させる際に正常時であれば同時に供給されることがない制御圧PSLC1、制御圧PSLC2、制御圧PSLB1、制御圧PSLB2、および制御圧PSLB3(以下、制御圧PSLC1乃至制御圧PSLB3という)のうち少なくとも3つの制御圧が同時に供給された故障時には、クラッチCおよびブレーキBのうち3つ以上の油圧式摩擦係合装置が同時に係合されず、且つブレーキB1とブレーキB2とが共に係合されないように構成されている。
例えば、制御圧PSLC1および制御圧PSLC2の供給により第4速ギヤ段を達成させる際にリニアソレノイドバルブSLB3のオンフェールにより制御圧PSLB3が同時に供給されるような故障時には、第1作動弁150が制御圧PSLC1、制御圧PSLC2、および制御圧PSLB3の発生に基づいて故障側位置へ切り換えられることによりブレーキB3への制御圧PSLB3の供給が遮断されるので、クラッチC1、クラッチC2、およびブレーキB3が係合させられることによる自動変速機10のインタロックが回避されると共に、制御圧PSLC1および制御圧PSLC2によりクラッチC1およびクラッチC2のみが係合させられて第4速ギヤ段が達成される。
また、制御圧PSLC1および制御圧PSLB2の供給により第1速ギヤ段を達成させる際にリニアソレノイドバルブSLB1のオンフェールにより制御圧PSLB1が同時に供給されるような故障時には、第2作動弁152が制御圧PSLB1および制御圧PSLB2の発生に基づいて故障側位置へ切り換えられることによりブレーキB1への制御圧PSLB1の供給およびブレーキB2への制御圧PSLB2の供給が遮断されるので、クラッチC1、ブレーキB1、およびブレーキB2が係合させられることによる自動変速機10のインタロックが回避されると共に、制御圧PSLC1によりクラッチC1のみが係合させられて自動変速機10がニュートラル状態とされる。
また、制御圧PSLC1および制御圧PSLB2の供給により第1速ギヤ段を達成させる際にリニアソレノイドバルブSLC2のオンフェールにより制御圧PSLC2が同時に供給されるような故障時には、第1作動弁150が制御圧PSLC1、制御圧PSLC2、および制御圧PSLB2の発生に基づいて故障側位置へ切り換えられることによりDレンジ圧PDが第2作動弁152へ出力されると共に、第2作動弁152が制御圧PSLB2および第1作動弁150から出力されるDレンジ圧PDの発生に基づいて故障側位置へ切り換えられることによりブレーキB2への制御圧PSLB2の供給が遮断されるので、クラッチC1、クラッチC2、およびブレーキB2が係合させられることによる自動変速機10のインタロックが回避されると共に、制御圧PSLC1および制御圧PSLC2によりクラッチC1およびクラッチC2のみが係合させられて第4速ギヤ段が達成される。
また、制御圧PSLC1および制御圧PSLB2の供給により第1速ギヤ段を達成させる際にリニアソレノイドバルブSLB3のオンフェールにより制御圧PSLB3が同時に供給されるような故障時には、第1作動弁150においては制御圧PSLC1と制御圧PSLB2或いは制御圧PSLB3とが入力されるだけであるため正常側位置がそのまま維持されるが、第2作動弁152が制御圧PSLB2および制御圧PSLB3の発生に基づいて故障側位置へ切り換えられることによりブレーキB2への制御圧PSLB2の供給が遮断されるので、クラッチC1、ブレーキB2、およびブレーキB3が係合させられることによる自動変速機10のインタロックが回避されると共に、制御圧PSLC1および制御圧PSLB3によりクラッチC1およびブレーキB3のみが係合させられて第3速ギヤ段が達成される。
以下、故障となるような制御圧が同時供給される上記の他の異常な組合せはいちいち例示しないが、第1作動弁150および第2作動弁152により、第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段のうちの何れかの変速段を達成させる際に正常時であれば同時に供給されることがない制御圧が同時に供給された故障時には、自動変速機10がインタロックする全ての組合せが回避される。
また、第1作動弁150および第2作動弁152は、シフトレバー72が「D」ポジションである前進走行の際には、故障時のみ故障側へ作動する構成とされているので、正常時すなわち通常時の変速には影響を及ぼさない。
ここで、シフトレバー72が「R」ポジションへ操作された場合には、第1作動弁150においてスプリング156の推力に抗して油室176に供給されるリバース圧PRによる推力のみによりスプール弁子154が故障側位置へ切り換えられて入力ポート182と供給ポート180とが連通させられると共に、第2作動弁152において油室196に供給されるライン油圧PL1およびスプリング190の推力に抗して油室200に供給されるリバース圧PRおよび供給ポート180から油室206に供給されるリバース圧PRによる推力のみによりスプール弁子188が故障側位置へ切り換えられて入力ポート218と供給ポート214とが連通させられる。
つまり、リバース圧PRの発生時である後進走行の際には、第1作動弁150は専らリバース圧PRの発生に基づいて故障側位置へ切り換えられると共に、その故障側位置においてリバース圧PRがブレーキB3へ供給されることを許容し、第2作動弁152は専らリバース圧PRの発生に基づいて故障側位置へ切り換えられると共に、その故障側位置においてリバース圧PRがブレーキB2へ供給されることを許容する。これにより、シフトレバー72の「R」ポジションにおいてブレーキB2およびブレーキB3の係合が成立要件となる後進ギヤ段が達成させられ得る。
また、このシフトレバー72の「R」ポジションへの操作時には、第1作動弁150および第2作動弁152は、作動油に混入した微小異物を排出することができてその蓄積が抑制されるように、専らそれぞれのスプール弁子を故障側位置へ切り換えるための部品例えばスプリング等を各弁に設けることなしに、リバース圧PRによって故障時でなくとも故障側位置へそれぞれ切り換えられる。これにより、第1作動弁150および第2作動弁152のバルブスティックの可能性を低くすることができ、実際の故障時に第1作動弁150や第2作動弁152の作動不良が生じることを抑制することができる。また、通常の使用であれば当然行われる後進走行の際に発生させられるリバース圧PRを用いてプランジャ160、170、194、204と共にスプール弁子154、188が移動させられて弁全体が故障側位置へ切り換えられるので、作動不良が抑制される信頼度の高いフェールセーフ機能を保持しつつ部品点数が削減される。
また、リニアソレノイドバルブSLB2、SLB3が他のリニアソレノイドバルブSLC1、SLC2、SLB1と同様に前進走行時に必要な係合トルク容量に合わせて小型化され得るように、前進走行時に必要な係合トルク容量に比較して大きな係合トルク容量が必要な後進走行時には、制御圧PSLB2や制御圧PSLB3に比較して大きな油圧となるリバース圧PRによりブレーキB2およびブレーキB3が係合される。
また、リバース圧PRのみによりブレーキB2およびブレーキB3が係合されることから、第1作動弁150および第2作動弁152は、励磁状態であってもリニアソレノイドバルブSLB2、SLB3から制御圧PSLB2、PSLB3が出力されないオフフェール時に後進ギヤ段を達成させるためのフェールセーフ機能を有している。
ところで、シフトレバー72が「R」ポジションへ操作されて第1作動弁150および第2作動弁152がリバース圧PRに基づいてそれぞれ故障側位置へ切り換えられる際に、すなわちN→R操作の際に、ブレーキB2およびブレーキB3へ比較的大きなリバース圧PRが直接的に供給されると係合ショックが発生する可能性がある。
そこで、このN→R操作の際には、リバース圧PRに基づいて故障側位置へ切り換えられてそのリバース圧PRによりブレーキB2およびブレーキB3がそれぞれ係合される前に、一時的に第1作動弁150および第2作動弁152のそれぞれの正常側位置が維持され、その正常側位置においてN→R操作時の係合ショックが抑制されるように予め定められた制御圧PSLB2および制御圧PSLB3がそれぞれブレーキB2およびブレーキB3へ供給される。例えば、N→R操作の際にはロックアップクラッチ33がロックアップオフとされることから、ロックアップオフ時の制御圧PSLU(L/U OFF時)を用いて第1作動弁150および第2作動弁152が一時的に正常側位置へ固定(ロック)され、その正常側位置において制御圧PSLB2および制御圧PSLB3によりブレーキB2およびブレーキB3の係合過渡油圧がそれぞれ制御される。
より具体的には、N→R操作の際に制御圧PSLB3よりも大きなリバース圧PRが直接的に供給されてブレーキB3が係合されることに比較して係合ショックが抑制されるように、第1作動弁150は電子制御装置90の励磁制御指令によって一時的に発生させられて油室158に入力される制御圧PSLU(L/U OFF時)に基づいて正常側位置が維持されると共に、この正常側位置に維持されている間、電子制御装置90の調圧制御指令による制御圧PSLB3が入力ポート178から供給ポート180を経てブレーキB3へ供給されてそのブレーキB3が所定の係合速度で滑らかに係合させられる。第1作動弁150において、正常側位置は制御圧PSLB3がブレーキB3へ供給されるN→R制御圧側位置でもあり、故障側位置はリバース圧PRがブレーキB3へ供給される直接圧側位置でもある。
また、N→R操作の際に制御圧PSLB2よりも大きなリバース圧PRが直接的に供給されてブレーキB2が係合されることに比較して係合ショックが抑制されるように、第2作動弁152は電子制御装置90の励磁制御指令によって一時的に発生させられて油室192に入力される制御圧PSLU(L/U OFF時)に基づいて正常側位置が維持されると共に、この正常側位置に維持されている間、電子制御装置90の調圧制御指令による制御圧PSLB2が入力ポート212から供給ポート214を経てブレーキB2へ供給されてそのブレーキB2が所定の係合速度で滑らかに係合させられる。第2作動弁152において、正常側位置は制御圧PSLB2がブレーキB2へ供給されるN→R制御圧側位置でもあり、故障側位置はリバース圧PRがブレーキB2へ供給される直接圧側位置でもある。
また、上記一時的な制御圧PSLU(L/U OFF時)の発生は、ブレーキB2およびブレーキB3へそれぞれ供給される制御圧PSLB2および制御圧PSLB3からリバース圧PRへの切換えの際の切換えショックが抑制されるように、予め定められた所定時間が経過するか、或いは制御圧PSLB2および制御圧PSLB3がぞれぞれ予め定められた所定の係合圧以上に増加するまで継続される。
このように、第1作動弁150は、後進ギヤ段達成時における制御圧PSLB3とリバース圧PRとを切り換えるための切換えバルブの機能を有している。また、第2作動弁152は、後進ギヤ段達成時における制御圧PSLB2とリバース圧PRとを切り換えるための切換えバルブの機能を有している。これにより、このような切換えバルブが第1作動弁150および第2作動弁152とは別に設けられることに比較して、油圧制御回路100の構成部品の削減により小型化および重量やコスト低減が可能になる。
また、ブレーキB2およびブレーキB3において後進走行時に必要な係合トルク容量が前進走行時に必要な係合トルク容量に比較して大きな場合であっても、後進走行時は最終的にはリバース圧PRによってブレーキB2およびブレーキB3が係合させられることから、そのブレーキB2およびブレーキB3を制御圧PSLB2および制御圧PSLB3により係合させる場合に、リニアソレノイドバルブSLC1、SLC2、SLB1と同様に、前進走行時に必要な係合トルク容量に合わせた比較的出力油圧が小さな小型のリニアソレノイドバルブSLB2、SLB3とすることができる。よって、第1作動弁150および第2作動弁152が後進ギヤ段達成時における制御圧PSLB2および制御圧PSLB3とリバース圧PRとを切り換えるための切換えバルブの機能を有することが一層効果的となる。
また、N→R操作の際には、専ら第1作動弁150および第2作動弁152をそれぞれ正常側位置へ付勢するための制御圧を発生する制御圧発生装置を設けることなしに、ロックアップクラッチ33のスリップ状態乃至ロックアップオンを制御するためのリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUによって正常側位置へ切り換えられる。これにより、このような制御圧発生装置がリニアソレノイドバルブSLUとは別に設けられることに比較して、油圧制御回路100の構成部品の削減により小型化および重量やコスト低減が可能になる。
上述のように、本実施例によれば、シフトレバー72が「D」ポジションであって第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段のうちの何れかの変速段を達成させる際に正常時であれば同時に供給されることがない、制御圧PSLC1、制御圧PSLC2、制御圧PSLB1、および制御圧PSLB2或いは制御圧PSLB3のうち少なくとも3つのリニアソレノイドバルブの制御圧が同時に供給された故障時に、第1作動弁150によりブレーキB3への制御圧PSLB3の供給が遮断されると共に故障時の所定油圧としてのDレンジ圧PDが第2作動弁152へ出力され、制御圧PSLB1、制御圧PSLB2、制御圧PSLB3、および故障時の所定油圧として第1作動弁150から出力されるDレンジ圧PDのうち少なくとも2つの油圧が同時に供給された故障時に、第2作動弁152によりブレーキB1への制御圧PSLB1の供給とブレーキB2への制御圧PSLB2の供給とが遮断されるので、第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段のうちの何れかの変速段を達成させる際に正常時であれば同時に供給されることがない制御圧PSLC1乃至制御圧PSLB3のうち少なくとも3つの制御圧が同時に供給された故障時には、クラッチCおよびブレーキBのうち3つ以上の油圧式摩擦係合装置が同時に係合されないと共に、ブレーキB1とブレーキB2とが共に係合されない。よって、クラッチCおよびブレーキBのうち3つ以上の油圧式摩擦係合装置が係合されるような、或いはブレーキBのうち2つのブレーキが係合されるような自動変速機10がインタロックする組合せが回避される。
すなわち、図2に示す係合作動表における第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段のうちの何れかの変速段を達成させる際に正常時であれば同時に供給されることがない制御圧が同時に供給された故障時には、第1作動弁150および第2作動弁152の2本のバルブにより自動変速機10がインタロックする全ての組合せが回避される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例の第1作動弁150および第2作動弁152は、正常時であれば同時に供給されることがない作動油圧が電磁弁装置により同時に供給された故障時に、正常側位置から故障側位置へ弁子が切り換えられるものであって、リバース圧PRの発生に基づいて故障側位置へ切り換えられるように構成される範囲で、実施例に示されるもの以外に種々のものが好適に用いられる。
例えば、第1作動弁150が備えるスプール弁子154とプランジャ160とは、スプール弁子Sとして一体的に形成されるものであっても良い。このようにしても、スプリング156やDレンジ圧PDによりこのスプール弁子Sが正常側位置へ切り換えられ、故障時や「R」ポジションに操作されたときにはこのスプール弁子Sが故障側位置へ切り換えられる。
また、第1作動弁150が備えるスプール弁子154とプランジャ170とは、スプール弁子S’として一体的に形成されるものであっても良い。このようにしても、スプリング156やDレンジ圧PDによりこのスプール弁子S’が正常側位置へ切り換えられ、故障時や「R」ポジションに操作されたときにはこのスプール弁子S’が故障側位置へ切り換えられる。但し、この場合には、油室164に相当する径差部がスプール弁子S’に設けられる。
また、第1作動弁150が備えるスプール弁子154とプランジャ170とは、中空円筒状のプランジャ170にスプール弁子154の一方の軸端側が挿入されて当接しているが、このプランジャ170が円柱状とされてスプール弁子154の一方の軸端側が挿入されることなく当接するように構成されても良い。
また、前述の実施例では、「R」ポジション時に第1作動弁150および第2作動弁152をそれぞれ正常側位置へ付勢するための制御圧を発生する制御圧発生装置は、リニアソレノイドバルブSLUであったが、「R」ポジション時に制御圧が出力可能なように構成される範囲で、実施例に示されるもの以外に種々のものが好適に用いられても良い。例えば、制御圧発生装置は、部品点数が多くなるがリニアソレノイドバルブSLUとは別の、リニアソレノイドバルブであっても良いし、ON−OFFソレノイドバルブであっても良いし、リバース圧PRを元圧として制御圧を発生するソレノイドバルブであっても良い。
また、前述の実施例では、N→R操作の際にブレーキB2へ供給される制御圧PSLB2およびブレーキB3へ供給される制御圧PSLB3を共に調圧したが、R→N操作の際にも、第1作動弁150および第2作動弁152を一時的に正常側位置へ固定(ロック)し、その正常側位置において制御圧PSLB2および制御圧PSLB3によりブレーキB2およびブレーキB3の解放過渡油圧をそれぞれ制御するようにしても良い。
また、前述の実施例では、N→R操作の際にはブレーキB2へ供給される制御圧PSLB2およびブレーキB3へ供給される制御圧PSLB3が共に調圧されたが、シフトレバー72が「N」ポジションにあるときに予めブレーキB2を係合しておき、このN→R操作の際にはブレーキB3へ供給される制御圧PSLB3のみを調圧するようにしても良い。このようにすれば、N→R操作時の制御が容易となる。また、同様にシフトレバー72が「N」ポジションにあるときに予めブレーキB2を係合することにより、N→D操作時においてもクラッチC1へ供給される制御圧PSLC1が調圧されるだけで第1速ギヤ段が達成させられるので、そのN→D操作時の制御が容易となる。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。