以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、車両用自動変速機10の骨子図で、図2は、その車両用自動変速機10において複数のギヤ段を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。この自動変速機10は、車両の前後方向(縦置き)に搭載するFR車両に好適に用いられるもので、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを同軸線上に有し、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は入力部材に相当するもので、本実施例では走行用の動力源であるエンジン30によって回転駆動されるトルクコンバータ32のタービン軸であり、出力軸24は出力部材に相当するもので、プロペラシャフトや差動歯車装置を介して左右の駆動輪を回転駆動する。トルクコンバータ32は流体式伝動装置で、エンジン30の動力を流体を介することなく入力軸22に直接伝達するロックアップクラッチL/Uを備えている。なお、この自動変速機10やトルクコンバータ32は中心線に対して略対称的に構成されており、図1では中心線の下半分が省略されている。
上記第1変速部14を構成している第1遊星歯車装置12は、サンギヤS1、キャリアCA1、およびリングギヤR1の3つの回転要素を備えていて、サンギヤS1はトランスミッションケース(以下、単にケースという)26に回転不能に固定されており、キャリアCA1が入力軸22に一体的に連結されて回転駆動されることにより、減速出力部材として機能するリングギヤR1が入力軸22に対して減速回転させられる。また、第2変速部20を構成している第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18は、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成されており、具体的には、第2遊星歯車装置16のサンギヤS2によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置16のキャリアCA2および第3遊星歯車装置18のキャリアCA3が互いに連結されて第2回転要素RM2が構成され、第2遊星歯車装置16のリングギヤR2および第3遊星歯車装置18のリングギヤR3が互いに連結されて第3回転要素RM3が構成され、第3遊星歯車装置18のサンギヤS3によって第4回転要素RM4が構成されている。上記第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18は、キャリアCA2およびCA3が共通の部材にて構成されているとともに、リングギヤR2およびR3が共通の部材にて構成されており、且つ第2遊星歯車装置16のピニオンギヤが第3遊星歯車装置18の第2ピニオンギヤを兼ねているラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
上記第1回転要素RM1(サンギヤS2)は第1ブレーキB1によって選択的にケース26に連結されて回転停止させられ、第2回転要素RM2(キャリアCA2、CA3)は第2ブレーキB2によって選択的にケース26に連結されて回転停止させられ、第4回転要素RM4(サンギヤS3)は第1クラッチC1を介して選択的に減速出力部材である前記第1遊星歯車装置12のリングギヤR1に連結され、第2回転要素RM2(キャリアCA2、CA3)は第2クラッチC2を介して選択的に入力軸22に連結され、第1回転要素RM1(サンギヤS2)は第3クラッチC3を介して選択的に減速出力部材であるリングギヤR1に連結されるとともに、第4クラッチC4を介して選択的に第1遊星歯車装置12のキャリアCA1すなわち入力軸22に連結され、第3回転要素RM3(リングギヤR2、R3)は前記出力軸24に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。
図3は、上記第1変速部14および第2変速部20の各回転要素の回転速度の関係を直線で表すことができる共線図であり、下の横線が回転速度「0」で、上の横線が回転速度「1.0」すなわち入力軸22と同じ回転速度である。また、第1変速部14の各縦線は、左側から順番にサンギヤS1、リングギヤR1、キャリアCA1を表しており、それ等の間隔は第1遊星歯車装置12のギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1に応じて定められる。第2変速部20の4本の縦線は、左端から右端へ向かって順番に第1回転要素RM1(サンギヤS2)、第2回転要素RM2(キャリアCA2、CA3)、第3回転要素RM3(リングギヤR2、R3)、第4回転要素RM4(サンギヤS3)を表しており、それ等の間隔は第2遊星歯車装置16のギヤ比ρ2および第3遊星歯車装置18のギヤ比ρ3に応じて定められる。
そして、上記共線図(図3)から明らかなように、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合させられて、第4回転要素RM4が減速出力部材であるリングギヤR1と一体的に減速回転させられるとともに第2回転要素RM2が回転停止させられると、出力軸24に連結された第3回転要素RM3は「1st」で示す回転速度で回転させられ、最も大きい変速比(=入力軸22の回転速度NIN/出力軸24の回転速度NOUT )の第1速前進ギヤ段「1st」が成立させられる。第1クラッチC1および第1ブレーキB1が係合させられて、第4回転要素RM4がリングギヤR1と一体的に減速回転させられるとともに第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「2nd」で示す回転速度で回転させられ、第1速前進ギヤ段「1st」よりも変速比が小さい第2速前進ギヤ段「2nd」が成立させられる。第1クラッチC1および第3クラッチC3が係合させられると、第2変速部20はリングギヤR1と一体的に減速回転させられ、第3回転要素RM3は「3rd」で示す回転速度すなわちリングギヤR1と同じ回転速度で回転させられ、第2速前進ギヤ段「2nd」よりも変速比が小さい第3速前進ギヤ段「3rd」が成立させられる。第1クラッチC1および第4クラッチC4が係合させられて、第4回転要素RM4がリングギヤR1と一体的に減速回転させられるとともに第1回転要素RM1が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「4th」で示す回転速度で回転させられ、第3速前進ギヤ段「3rd」よりも変速比が小さい第4速前進ギヤ段「4th」が成立させられる。第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合させられて、第4回転要素RM4がリングギヤR1と一体的に減速回転させられるとともに第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「5th」で示す回転速度で回転させられ、第4速前進ギヤ段「4th」よりも変速比が小さい第5速前進ギヤ段「5th」が成立させられる。
また、第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合させられて、第2変速部20が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「6th」で示す回転速度すなわち入力軸22と同じ回転速度で回転させられ、第5速前進ギヤ段「5th」よりも変速比が小さい第6速前進ギヤ段「6th」が成立させられる。この第6速前進ギヤ段「6th」の変速比は1である。第2クラッチC2および第3クラッチC3が係合させられて、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられるとともに第1回転要素RM1がリングギヤR1と一体的に減速回転させられると、第3回転要素RM3は「7th」で示す回転速度で回転させられ、第6速前進ギヤ段「6th」よりも変速比が小さい第7速前進ギヤ段「7th」が成立させられる。第2クラッチC2および第1ブレーキB1が係合させられて、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられるとともに第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「8th」で示す回転速度で回転させられ、第7速前進ギヤ段「7th」よりも変速比が小さい第8速前進ギヤ段「8th」が成立させられる。
一方、第2ブレーキB2および第4クラッチC4が係合させられると、第2回転要素RM2が回転停止させられるとともに第1回転要素RM1が入力軸22と一体回転させられることにより、第3回転要素RM3は「Rev」で示す回転速度で逆回転させられ、後進ギヤ段「Rev」が成立させられる。
図2の作動表は、上記各ギヤ段とクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)の作動状態との関係をまとめたもので、併せてそれ等のクラッチCおよびブレーキBの係合、解放(非係合)状態を切り換えたり係合力を制御したりするソレノイドバルブSL1〜SL5、SR、SLUの作動状態を示したものである。すなわち、クラッチCおよびブレーキBは、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置で、図4に示す油圧制御回路98のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5、SLUの励磁、非励磁や電流制御、ON−OFFソレノイドバルブSRの励磁、非励磁、或いはシフトレバー72の移動操作で図示しないマニュアルバルブにより油路が機械的に切り換えられることにより、係合、解放状態が切り換えられるとともに係合、解放時の過渡油圧などが制御される。なお、図2および図4に示されているON−OFFソレノイドバルブSLは、ロックアップクラッチL/Uの係合、解放状態を切り換えるためのものである。
シフトレバー72は運転席の横のセンターコンソール部分に配設され、例えば図7に示すシフトパターン84に従って駐車用の「P(パーキング)」、後進走行用の「R(リバース)」、動力伝達を遮断する「N(ニュートラル)」、自動変速による前進走行用の「D(ドライブ)」、および手動変速が可能な前進走行用の「S(シーケンシャル)」の5つの操作ポジションへ移動操作されるようになっている。これ等の操作ポジション「P」〜「S」のうち「P」、「R」、「N」、および「D」ポジションは、「D」ポジションが車両の後方側となるように、車両の前後方向に沿って設けられているとともに、「S」ポジションは「D」ポジションから車両の幅方向であって運転席に近い側に設けられており、シフトレバー72が「P」ポジションと「D」ポジションとの間を移動操作されるのに伴ってマニュアルバルブのスプール弁子が機械的に直線移動させられることにより油圧制御回路98の油路を切り換える。具体的には、シフトレバー72が「R」ポジションへ操作されると、マニュアルバルブからライン油圧PLが後進油圧PRとして出力されるとともに前進油圧PDがドレーンされ、シフトレバー72が「D」ポジション(「S」ポジションも同じ)へ操作されると、マニュアルバルブからライン油圧PLが前進油圧PDとして出力されるとともに後進油圧PRがドレーンされる。また、シフトレバー72が「P」ポジションまたは「N」ポジションへ操作されると、マニュアルバルブは前進油圧PDおよび後進油圧PRを何れもドレーンする。なお、ライン油圧PLは、前記エンジン30によって回転駆動される機械式のオイルポンプ48(図1参照)から出力される油圧をレギュレータバルブ等によりエンジン負荷等に応じて調圧したものである。
前記リニアソレノイドバルブSL1〜SL5、SLUは、それぞれクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2に対応して設けられ、それ等のクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の係合圧を直接制御するものであるが、そのうちの第1速前進ギヤ段「1st」を成立させる際に係合させられる第2ブレーキB2に対応して設けられたリニアソレノイドバルブSLU、および第5速前進ギヤ段「5th」を成立させる際に係合させられる第2クラッチC2に対応して設けられたリニアソレノイドバルブSL2は、ロックアップクラッチL/Uの係合、解放制御にも用いられる。すなわち、図6に示すように、第1速前進ギヤ段「1st」および後進ギヤ段「Rev」では、第2クラッチC2を係合させる必要がないため、リニアソレノイドバルブSL2を用いて必要に応じてロックアップクラッチL/Uのトルク容量を制御して係合、解放するとともに、リニアソレノイドバルブSLUによって第2ブレーキB2の係合圧PB2を制御して係合させることにより、第1速前進ギヤ段「1st」または後進ギヤ段「Rev」を成立させる。また、それ以外すなわち第2速前進ギヤ段「2nd」以上の各前進ギヤ段では、第2ブレーキB2を係合させる必要がないため、リニアソレノイドバルブSLUを用いて必要に応じてロックアップクラッチL/Uのトルク容量を制御して係合、解放するとともに、リニアソレノイドバルブSL2は、第5速前進ギヤ段「5th」以上の各前進ギヤ段を成立させる際に係合させられる第2クラッチC2の係合圧PC2を制御する。図2では、後進ギヤ段「Rev」においてロックアップクラッチL/Uの係合制御を行なわないようになっているが、ON−OFFソレノイドバルブSLおよびリニアソレノイドバルブSL2に通電してロックアップクラッチL/Uを係合させることもできる。
本実施例では、第1速前進ギヤ段「1st」が第1のギヤ段で、第2速前進ギヤ段「2nd」〜第8速前進ギヤ段「8th」が第2のギヤ段であり、第2ブレーキB2、リニアソレノイドバルブSLUはそれぞれ請求項1に記載の所定の係合装置、ソレノイドバルブである。
なお、本実施例では第1速前進ギヤ段「1st」と第2速前進ギヤ段「2nd」との間でロックアップクラッチ制御用のリニアソレノイドバルブを変更するようになっているが、第2速前進ギヤ段「2nd」〜第4速前進ギヤ段「4th」では第2クラッチC2および第2ブレーキB2が何れも解放で、それ等のギヤ段の成立にリニアソレノイドバルブSLUおよびSL2が何れも関与していないため、少なくとも第1速前進ギヤ段「1st」から第5速前進ギヤ段「5th」までの間でロックアップクラッチ制御用のリニアソレノイドバルブをSL2からSLUに変更すれば良い。第2速前進ギヤ段「2nd」と第3速前進ギヤ段「3rd」との間で変更する場合には、リニアソレノイドバルブSL2およびSLUが何れもその変速に関与しないため、その第2速前進ギヤ段「2nd」と第3速前進ギヤ段「3rd」との間の変速時には、変速制御と関係なく変更することができる。但し、これ等の場合でも、リニアソレノイドバルブSLUをロックアップクラッチL/Uのトルク容量制御に用いる前進ギヤ段から第1速前進ギヤ段「1st」へ直接ダウンシフトする時には、本発明の問題が生じる。
図5は、油圧制御回路98のうち上記リニアソレノイドバルブSLUおよびSL2が関与する第2ブレーキB2、第2クラッチC2、およびロックアップクラッチL/Uの係合、解放制御に関係する部分の回路図である。また、図10〜図14は、図5の油圧制御回路の種々の作動状態を説明する図で、実線で示す油路は「油圧あり」、破線で示す油路は「油圧なし」を表しており、切換バルブ(リレーバルブ100、110、112、114、カットオフバルブ102)の中の実線は「接続側」、破線は「遮断側」である。図10は、第2速前進ギヤ段「2nd」以上の前進ギヤ段、具体的には第2クラッチC2が係合させられる第5速前進ギヤ段「5th」で、且つロックアップクラッチL/Uが係合させられたロックアップON時の回路図である。図11は、図10において断線などでON−OFFソレノイドバルブSRがOFFフェールした場合の回路図である。図12は、第1速前進ギヤ段「1st」で且つロックアップON時の回路図である。図13は、後進ギヤ段「Rev」時(ロックアップクラッチL/UはOFF)の回路図である。図14は、コネクタ外れなどで電源がOFFフェールした場合に、シフトレバー72が後進走行用の「R」ポジションへ操作された時の回路図である。
この油圧制御回路において、リニアソレノイドバルブSLU、SL2は、何れも電子制御装置90(図4参照)による励磁電流の制御に従ってライン油圧PL、前進油圧PDを調圧して第1制御油圧PSLU、第2制御油圧PSL2を出力する。リニアソレノイドバルブSLU、SL2は、それぞれスプール弁子の一端側に制御油圧PSLU、PSL2が導かれるフィードバック油室を備えているとともにスプリングが設けられ、他端側に設けられたソレノイドによる電磁力とのバランスで、その制御油圧PSLU、PSL2を調圧するようになっている。そして、第1制御油圧PSLUは、第1リレーバルブ100、カットオフバルブ102、および第1チェックバルブ104を経て第2ブレーキB2に供給されるとともに、第1リレーバルブ100から第2チェックバルブ106を経てL/Uコントロールバルブ108に供給され、第2制御油圧PSL2は、第2リレーバルブ110を経て第2クラッチC2に供給されるとともに、第2リレーバルブ110から第2チェックバルブ106を経てL/Uコントロールバルブ108に供給される。
上記第1リレーバルブ100は、第1制御油圧PSLUの出力先をカットオフバルブ102と第2チェックバルブ106との間で切り換えるもので、常には図10に示すようにスプリングの付勢力に従って第2チェックバルブ106側、すなわちロックアップクラッチL/Uのトルク容量を制御する側へ出力する状態に保持されるが、ON−OFFソレノイドバルブSRから出力される信号油圧PSRが第3リレーバルブ112を経て信号圧として入力されるか、或いは後進油圧PRが信号圧として入力されると、図12、図13に示すように上記スプリングの付勢力に抗してスプール等の弁体が移動させられることによりカットオフバルブ102側へ出力するように油路を切り換える。
ON−OFFソレノイドバルブSRはノーマルオープンタイプで、非通電でライン油圧PLを信号油圧PSRとして出力するものであり、図2から明らかなように第1速前進ギヤ段「1st」で非通電とされて信号油圧PSRを出力し、第3リレーバルブ112から第1リレーバルブ100に入力されることにより、第1制御油圧PSLUがカットオフバルブ102側へ出力されるようになる。
一方、第1速前進ギヤ段「1st」以外は、ON−OFFソレノイドバルブSRは図2から明らかなように基本的に通電状態とされ、信号油圧PSRの出力が停止されるため、後進油圧PRが供給されない前進ギヤ段「2nd」〜「8th」では、第1リレーバルブ100は、図10に示すようにスプリングの付勢力に従って第1制御油圧PSLUをロックアップクラッチL/Uのトルク容量を制御する側へ出力する状態に保持される。このため、ロックアップON時にON−OFFソレノイドバルブSLに通電されて信号油圧PSLが出力され、L/Uリレーバルブ114が油圧出力側へ切り換えられると、リニアソレノイドバルブSLUの制御でL/Uコントロールバルブ108を介してロックアップクラッチL/Uのトルク容量を制御することができる。
なお、ON−OFFソレノイドバルブSR以外は、何れも通電されることによって油圧を出力するノーマルクローズタイプである。
前記カットオフバルブ102は、第2速前進ギヤ段「2nd」以上の前進ギヤ段の成立時に第2ブレーキB2が係合して自動変速機10がタイアップ(ロック)することを阻止するためのもので、常には図12、図13に示すようにスプリングの付勢力に従って第1制御油圧PSLUを第1チェックバルブ104へ出力する状態に保持され、その第1制御油圧PSLUに応じて第2ブレーキB2を係合させることができるが、第2クラッチC2の係合圧PC2、および第1ブレーキB1、第3クラッチC3、または第4クラッチC4が係合させられた場合に出力される前進油圧PDが、それぞれ信号圧として入力されるようになっており、その係合圧PC2および前進油圧PDの少なくとも一方が入力されると、上記スプリングの付勢力に抗してスプール等の弁体が移動させられることにより、図11に示すように第1リレーバルブ100から第1チェックバルブ104への油圧供給を遮断するように油路を切り換える。図11は、第5速前進ギヤ段「5th」時に断線などでON−OFFソレノイドバルブSRがOFFフェールし、その信号油圧PSRにより第1リレーバルブ100が切り換えられて第1制御油圧PSLUがカットオフバルブ102に供給されるようになった場合で、カットオフバルブ102によってその第1制御油圧PSLUが第1チェックバルブ104へ出力されることが阻止されることにより、クラッチC1、C2に加えて第2ブレーキB2が係合させられることによるタイアップが防止される。
第1チェックバルブ104には、上記カットオフバルブ102から第1制御油圧PSLUが供給される他に、第3リレーバルブ112から後進油圧PRが供給されるようになっており、その何れか一方が供給されると、それ等の油圧を第2ブレーキB2に供給して係合させる。通常は、第1速前進ギヤ段「1st」では図12に示すように信号油圧PSRによって第1リレーバルブ100が切り換えられることにより、後進ギヤ段「Rev」では図13に示すように後進油圧PRによって第1リレーバルブ100が切り換えられることにより、何れもその第1リレーバルブ100からカットオフバルブ102を経て第1制御油圧PSLUが供給され、その第1制御油圧PSLUに応じて第2ブレーキB2が係合させられるとともに、その係合圧PB2が制御される。
しかし、コネクタ外れなどで電源がOFFフェールした場合には、図14に示すようにリニアソレノイドバルブSLUが非通電となって第1制御油圧PSLUが供給されなくなるため、その第1制御油圧PSLUによる第2ブレーキB2の係合が不可となる。その場合に、第3リレーバルブ112は、電源のOFFフェールでON−OFFソレノイドバルブSRから信号油圧PSRが入力される一方、シフトレバー72が「R」ポジションへ操作されると、後進油圧PRが出力されるとともに前進油圧PDがドレーンされるため、その信号油圧PSRによってスプリングの付勢力に抗してスプール等の弁体が移動させられ、後進油圧PRを第1チェックバルブ104へ出力するように油路を切り換える。したがって、電源がOFFフェールした場合に、シフトレバー72が「R」ポジションへ操作されると、第3リレーバルブ112から第1チェックバルブ104を経て第2ブレーキB2に後進油圧PRが供給され、その第2ブレーキB2が係合させられる。このため、第4クラッチC4についても同様にチェックバルブ等を介して後進油圧PRが供給されるようにすれば、後進ギヤ段「Rev」を成立させて後進走行を行なうことができる。
上記第3リレーバルブ112は、図10〜図13に示すように通常はスプリングの付勢力に基づいて後進油圧PRの出力を停止する状態に保持され、前進油圧PDが供給される前進走行時には、その前進油圧PDがスプリングの付勢力と同じ方向へ作用することにより、信号油圧PSRが信号圧として反対向きに作用してもスプール等の弁体が移動することはなく、図11、図12に示すように信号油圧PSRが第1リレーバルブ100へ出力される。
前記第2リレーバルブ110は、第2制御油圧PSL2の出力先を第2クラッチC2と第2チェックバルブ106との間で切り換えるもので、常には図10に示すようにスプリングの付勢力に従って第2クラッチC2へ出力する状態に保持されるが、ON−OFFソレノイドバルブSLから出力される信号油圧PSLおよび前記第1制御油圧PSLUが共に信号圧として入力されると、図12に示すように上記スプリングの付勢力に抗してスプール等の弁体が移動させられることにより第2チェックバルブ106側へ出力するように油路を切り換える。ON−OFFソレノイドバルブSLはノーマルクローズタイプで、図2から明らかなようにロックアップクラッチL/Uの係合時に通電され、ライン油圧PLを信号油圧PSLとして出力するが、第2リレーバルブ110は、信号油圧PSLが供給されるだけでは油路を切り換えることはなく、第1制御油圧PSLUが予め定められた所定圧、例えば第2ブレーキB2を略完全に係合させることができる油圧に達した場合に、スプリングの付勢力に抗して油路を切り換えるようになっている。したがって、第1制御油圧PSLUに基づいて第2ブレーキB2の係合が開始しても、その係合圧PB2が所定圧以上になるまでは、第2制御油圧PSL2に基づいて第2クラッチC2を係合状態に保持することができる。なお、本実施例の第2リレーバルブ110は、信号油圧PSLの入力を前提として第1制御油圧PSLUが所定圧以上になった時に切り換えられるが、信号油圧PSLを導入することなく、第1制御油圧PSLUのみに基づいて切り換えられるようにスプリングのばね力等を設定することもできる。
前記第1リレーバルブ100から第1制御油圧PSLUが供給されるとともに、前記第2リレーバルブ110から第2制御油圧PSL2が供給される第2チェックバルブ106は、図10、図12に示すようにそれ等の制御油圧PSLU、PSL2を択一的にL/Uコントロールバルブ108に供給する。L/Uコントロールバルブ108は、それらの制御油圧PSLU、PSL2を信号圧としてセカンダリー油圧PL2を調圧制御することにより、ロックアップ油圧PLUをL/Uリレーバルブ114へ出力する。L/Uリレーバルブ114は、前記ON−OFFソレノイドバルブSLの信号油圧PSLを信号圧として開閉されるもので、信号油圧PSLが供給されることによりロックアップ油圧PLUを前記ロックアップクラッチL/Uに供給し、そのロックアップ油圧PLUに応じたトルク容量でロックアップクラッチL/Uを係合させる。なお、上記セカンダリー油圧PL2は、ライン油圧PLをセカンダリレギュレータバルブによって調圧したもので、ライン油圧PLと同様にエンジン30のトルクに応じて変化する油圧である。
ここで、図10〜図14の油圧制御回路について、まとめて説明すると、図10は、第2速前進ギヤ段「2nd」以上の前進ギヤ段の場合で、第2リレーバルブ110は、リニアソレノイドバルブSL2から出力される第2制御油圧PSL2を第2クラッチC2へ供給する状態に保持されるとともに、第1リレーバルブ100は、リニアソレノイドバルブSLUから出力される第1制御油圧PSLUをL/Uコントロールバルブ108へ出力する状態に保持される。そして、図では第2制御油圧PSL2が出力されることにより第2クラッチC2が係合させられ、図示しない第1クラッチC1がリニアソレノイドバルブSL1の調圧制御で係合させられることにより、第5速前進ギヤ段「5th」が成立させられるとともに、第1制御油圧PSLUが出力されることにより、その第1制御油圧PSLUに応じたトルク容量でロックアップクラッチL/Uが係合させられた状態である。
図11は、図10のように第2速前進ギヤ段「2nd」以上の前進ギヤ段で、且つ第1制御油圧PSLUに基づいてロックアップクラッチL/Uが係合されている時に、断線などでON−OFFソレノイドバルブSRがOFFフェールし、信号油圧PSRが第3リレーバルブ112を経て第1リレーバルブ100に供給されることにより、その第1リレーバルブ100がスプリングの付勢力に抗して切り換えられ、第1制御油圧PSLUがカットオフバルブ102へ供給されるようになった場合である。この時、カットオフバルブ102は、第2速前進ギヤ段「2nd」以上では係合圧PC2または前進油圧PDによって遮断状態とされるため、その第1制御油圧PSLUにより第2ブレーキB2が係合させられることが阻止され、第2速前進ギヤ段「2nd」以上の各前進ギヤ段を成立させる2つの摩擦係合装置(クラッチC、ブレーキB)に加えて第2ブレーキB2が係合させられることによる自動変速機10のタイアップが防止される。図は、第5速前進ギヤ段「5th」の場合で、カットオフバルブ102は第2クラッチC2の係合圧PC2によって遮断状態とされ、第5速前進ギヤ段「5th」を成立させるクラッチC1、C2に加えて第2ブレーキB2が係合させられることによるタイアップが防止される。
図12は、第1速前進ギヤ段「1st」でロックアップクラッチL/Uが係合させられた場合の回路図で、ON−OFFソレノイドバルブSRが非通電とされて信号油圧PSRが出力されることにより第1リレーバルブ100がスプリングの付勢力に抗して切り換えられ、リニアソレノイドバルブSLUから出力された第1制御油圧PSLUは、第1リレーバルブ100からカットオフバルブ102、第1チェックバルブ104を経て第2ブレーキB2に供給される。これにより、その第2ブレーキB2が第1制御油圧PSLUに応じた係合圧PB2で係合させられ、図示しない第1クラッチC1がリニアソレノイドバルブSL1の調圧制御で係合させられることにより、第1速前進ギヤ段「1st」が成立させられる。また、第2リレーバルブ110は、ON−OFFソレノイドバルブSLから出力される信号油圧PSLおよび上記第1制御油圧PSLUが共に信号圧として入力されることによりスプリングの付勢力に抗して切り換えられ、リニアソレノイドバルブSL2から出力された第2制御油圧PSL2は、第2リレーバルブ110から第2チェックバルブ106を経てL/Uコントロールバルブ108に供給され、その第2制御油圧PSL2に応じたトルク容量でロックアップクラッチL/Uが係合させられる。
図13は、後進ギヤ段「Rev」時の回路図で、マニュアルバルブから出力される後進油圧PRによって第1リレーバルブ100がスプリングの付勢力に抗して切り換えられることにより、リニアソレノイドバルブSLUから出力された第1制御油圧PSLUは、第1リレーバルブ100からカットオフバルブ102、第1チェックバルブ104を経て第2ブレーキB2に供給される。これにより、第2ブレーキB2は、第1制御油圧PSLUに応じた係合圧PB2で係合させられ、図示しない第4クラッチC4がリニアソレノイドバルブSL4の調圧制御で係合させられることにより、後進ギヤ段「Rev」が成立させられる。
図14は、コネクタ外れなどで電源がOFFフェールした場合で、リニアソレノイドバルブSLUが非通電となって第1制御油圧PSLUが供給されなくなるが、ON−OFFソレノイドバルブSRから信号油圧PSRが出力されるため、シフトレバー72が「R」ポジションへ操作されて、後進油圧PRが出力されるとともに前進油圧PDがドレーンされると、第3リレーバルブ112は信号油圧PSRによりスプリングの付勢力に抗して切り換えられ、後進油圧PRが第1チェックバルブ104を経て第2ブレーキB2に供給される。これにより第2ブレーキB2が係合させられ、第4クラッチC4についても同様に後進油圧PRによって係合させられることにより、後進ギヤ段「Rev」が成立させられ、電源のOFFフェール時にも退避走行を行なうことができる。
前記図4は、図1の自動変速機10などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図で、アクセルペダル50の操作量Accがアクセル操作量センサ52により検出されるとともに、そのアクセル操作量Accを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるもので、アクセル操作部材に相当し、アクセル操作量Accは出力要求量に相当する。また、エンジン30の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン30の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TA を検出するための吸入空気温度センサ62、エンジン30の電子スロットル弁の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ64、車速V(出力軸24の回転速度NOUT に対応)を検出するための車速センサ66、エンジン30の冷却水温TW を検出するための冷却水温センサ68、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72の操作ポジションPSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、シフトレバー72が「S」ポジションへ操作されたことを検出するためのSポジションセンサ75、タービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度NIN)を検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOIL を検出するためのAT油温センサ78、アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82などが設けられており、それらのセンサやスイッチから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA 、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW 、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72の操作ポジションPSH、「S」ポジションへの操作の有無、タービン回転速度NT、AT油温TOIL 、変速レンジのアップ指令RUP、ダウン指令RDN、などを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。
電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン30の出力制御や自動変速機10の変速制御、ロックアップクラッチL/Uの係合、解放制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。
上記電子制御装置90による自動変速機10の変速制御は、レバーポジションセンサ74によって検出されるシフトレバー72の操作ポジションPSH、およびSポジションセンサ75によって検出される「S」ポジションへのシフトレバー操作の有無に応じて行なわれ、例えばシフトレバー72が「D」ポジションへ操作されると、電子制御装置90は総ての前進ギヤ段を自動的に切り換えて走行するフルレンジ自動変速モードを成立させる。すなわち、前記リニアソレノイドバルブSL1〜SL5、SLUやON−OFFソレノイドバルブSRを制御することにより、図2に示すように総てのクラッチCおよびブレーキBの作動状態を変化させて、第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」の何れかの前進ギヤ段を成立させるのである。この変速制御は、例えば図8に示すように車速Vおよびアクセル操作量Accをパラメータとして予め記憶された変速マップ等の変速条件に従って行われ、車速Vが低くなったりアクセル操作量Accが大きくなったりするに従って変速比が大きい低速側の前進ギヤ段を成立させる。
また、シフトレバー72が「S」ポジションへ操作されて、前記Sポジションセンサ75からSポジション信号が供給されると、「D」ポジションで変速可能な変速範囲内すなわち第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」の中で定められた複数の変速レンジを任意に選択できるシーケンシャルモードを電気的に成立させる。「S」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「(+)」、およびダウンシフト位置「(−)」が設けられており、シフトレバー72がそれ等のアップシフト位置「(+)」またはダウンシフト位置「(−)」へ操作されると、そのことが前記アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82によって検出され、アップ指令RUPやダウン指令RDNに従って図9に示すように最高速段すなわち変速比が小さい高速側の変速範囲が異なる8つの変速レンジ「D」、「7」、「6」、「5」、「4」、「3」、「2」、「L」の何れかを電気的に成立させるとともに、各変速範囲内において例えば図8の変速マップに従って自動的に変速制御を行う。したがって、例えば下り坂などでシフトレバー72をダウンシフト位置「(−)」へ繰り返し操作すると、変速レンジが例えば「4」レンジから、「3」レンジ、「2」レンジ、「L」レンジへ切り換えられ、第4速前進ギヤ段「4th」から第3速前進ギヤ段「3rd」、第2速前進ギヤ段「2nd」、第1速前進ギヤ段「1st」へ順次ダウンシフトされて、エンジンブレーキが段階的に増大させられる。
上記アップシフト位置「(+)」およびダウンシフト位置「(−)」は何れも不安定で、シフトレバー72はスプリング等の付勢手段により自動的に「S」ポジションへ戻されるとともに、アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82は何れも自動復帰型のスイッチで、それぞれスプリング等の付勢手段により自動的にOFF状態に復帰するようになっており、アップシフト位置「(+)」またはダウンシフト位置「(−)」への操作回数或いは保持時間などに応じて変速レンジが変更される。
また、ロックアップクラッチL/Uの係合、解放制御は、上記自動変速機10の変速制御と併せて行なわれ、総ての前進ギヤ段において、ロックアップON時にON−OFFソレノイドバルブSLに通電して信号油圧PSLを出力することにより、L/Uリレーバルブ114が切り換えられてロックアップ油圧PLUがロックアップクラッチL/Uへ供給されるようになる。そして、第1速前進ギヤ段「1st」では、上記ON−OFFソレノイドバルブSLが励磁されて信号油圧PSLが出力されることにより、第2リレーバルブ110がスプリングの付勢力に抗して切り換えられ、リニアソレノイドバルブSL2の第2制御油圧PSL2がL/Uコントロールバルブ108へ出力されるようになり、そのリニアソレノイドバルブSL2によりL/Uコントロールバルブ108を介してロックアップ油圧PLUが制御され、そのロックアップ油圧PLUに応じてロックアップクラッチL/Uのトルク容量が制御される。
第2速前進ギヤ段「2nd」以上の各前進ギヤ段では、図2に示すようにON−OFFソレノイドバルブSRに通電して信号油圧PSRの出力を停止することにより、第1リレーバルブ100は、スプリングの付勢力に従って第1制御油圧PSLUをL/Uコントロールバルブ108へ出力する側へ切り換えられる。そして、その状態でロックアップON時にON−OFFソレノイドバルブSLに通電すると、その信号油圧PSLによってL/Uリレーバルブ114が油圧出力側へ切り換えられ、リニアソレノイドバルブSLUによりL/Uコントロールバルブ108を介してロックアップ油圧PLUを制御すれば、そのロックアップ油圧PLUに応じてロックアップクラッチL/Uのトルク容量が制御される。
一方、本実施例では予め定められたロックアップ禁止条件を満たす時には、ロックアップ禁止手段によりロックアップクラッチL/Uの係合が禁止されるとともに、ロックアップクラッチL/Uの係合が禁止された時には、切換制限手段により、第2速前進ギヤ段「2nd」以上の各前進ギヤ段においても、第1リレーバルブ100が第1制御油圧PSLUを第2ブレーキB2側へ出力する状態に保持されるようになっている。ロックアップ禁止手段および切換制限手段による制御は、何れも前記電子制御装置90によって実行され、ロックアップ禁止手段は図15のフローチャートに従って信号処理を行なう一方、切換制限手段は図16のフローチャートに従って信号処理を行なう。
図15のステップR1では、ロックアップ禁止条件を満足するか否かを判定する。ロックアップ禁止条件は、車両環境や運転状態等に基づいて予め設定されており、本実施例ではAT油温TOIL が予め定められた温度よりも低い場合にはロックアップクラッチL/Uの係合を禁止するように定められている。すなわち、AT油温TOIL が低いと作動油の粘性が高くなるため、ロックアップクラッチL/Uのトルク容量制御を高い応答性で適切に行なうことが困難になる一方、トルクコンバータ32による作動油の攪拌でAT油温TOIL を速やかに高めることが望ましいことなどから、ロックアップクラッチL/Uの係合を禁止するのである。
ステップR2では、上記ステップR1でロックアップクラッチL/Uの係合を禁止すべき旨の判定が為されたか否かを判断し、係合禁止の判定が為された場合はステップR3でロックアップクラッチL/Uの係合を禁止し、係合が可能であればステップR4でロックアップクラッチL/Uの係合を許可する。ステップR3でロックアップクラッチL/Uの係合が禁止されると、前記ON−OFFソレノイドバルブSLは非通電の状態に維持され、ロックアップクラッチL/Uは解放状態に保持されるとともに、ロックアップクラッチL/Uのトルク容量を制御するための前記リニアソレノイドバルブSL2またはSLUの電流制御が行なわれなくなる。
また、切換制限手段によって実行される図16のステップS1では、ロックアップクラッチL/Uの係合が不可か否かを判断する。ステップS1の可否判断は、前記ステップR3でロックアップクラッチL/Uの係合が禁止されたか否かの判断を含み、その係合禁止を表すフラグ等によって判断できる。前記ステップR1と同様にロックアップ禁止条件を満足するか否かを直接判断するようにしても良い。また、断線等の何らかの異常でロックアップクラッチL/Uを係合させることができない場合も、ダイアグノーシス等により判断する。そして、ロックアップクラッチL/Uの係合が不可であれば、ステップS2でON−OFFソレノイドバルブSRの通電を禁止する。これにより、第2速前進ギヤ段「2nd」以上の各前進ギヤ段においても、ON−OFFソレノイドバルブSRの信号油圧PSRが出力されるため、第1リレーバルブ100は、その信号油圧PSRに基づいて第1制御油圧PSLUを第2ブレーキB2側へ出力する状態に保持されるようになる。図11の油圧制御回路は、第5速前進ギヤ段「5th」のロックアップON時においてON−OFFソレノイドバルブSRがOFFフェールした場合であるが、ロックアップクラッチL/Uの係合が禁止されて、上記ステップS2でON−OFFソレノイドバルブSRが非通電とされた場合も、実質的に図11と同じ状態になる。但し、ロックアップOFFであるため、リニアソレノイドバルブSLUの制御油圧PSLUはOFF(油圧なしの破線)になる。
ロックアップクラッチL/Uの係合が不可の場合は、ロックアップクラッチL/Uのトルク容量制御が不要であるため、第2速前進ギヤ段「2nd」以上の各前進ギヤ段においてトルク容量制御を行なうリニアソレノイドバルブSLUの第1制御油圧PSLUを第2ブレーキB2側へ出力するように第1リレーバルブ100を保持しても、ロックアップクラッチL/Uの制御には何等差し支えない一方、このように第1リレーバルブ100を保持すれば、第2速前進ギヤ段「2nd」以上の各前進ギヤ段から第1速前進ギヤ段「1st」へダウンシフトする際には、ON−OFFソレノイドバルブSRへの通電を遮断して第1リレーバルブ100を切り換え制御する必要がないため、リニアソレノイドバルブSLUの制御で直ちに第2ブレーキB2の係合圧PB2を制御して変速を行なうことができる。
このように本実施例では、リニアソレノイドバルブSLUをロックアップクラッチL/Uのトルク容量制御に使用する第2速前進ギヤ段「2nd」〜第8速前進ギヤ段「8th」では、基本的に図2に示すようにON−OFFソレノイドバルブSRに通電してその信号油圧PSRの出力を停止させ、ロックアップクラッチL/Uを係合させるか否かに拘らずリニアソレノイドバルブSLUの制御油圧PSLUがロックアップクラッチL/Uのトルク容量を制御するための油路へ出力されるように第1リレーバルブ100が切り換え制御されるため、ロックアップON時にその第1リレーバルブ100を切り換え制御する必要がなく、リニアソレノイドバルブSLUによりトルク容量制御を行なってロックアップクラッチL/Uを速やかに係合させることができ、制御が容易で優れた制御性、応答性が得られる。
また、低油温時でロックアップクラッチL/Uの係合が禁止された場合などロックアップクラッチL/Uの係合が不可の時には、図16のステップS2でON−OFFソレノイドバルブSRの通電が禁止され、第2速前進ギヤ段「2nd」〜第8速前進ギヤ段「8th」においても、リニアソレノイドバルブSLUの第1制御油圧PSLUを第2ブレーキB2側へ出力するように第1リレーバルブ100が保持されるため、それ等の第2速前進ギヤ段「2nd」〜第8速前進ギヤ段「8th」から第1速前進ギヤ段「1st」へダウンシフトする際には、ON−OFFソレノイドバルブSRへの通電を遮断して第1リレーバルブ100を切り換え制御する必要がなく、リニアソレノイドバルブSLUの制御で直ちに第2ブレーキB2の係合圧PB2を制御して速やかに変速を行なうことができ、変速時の制御が容易になって制御性や応答性が向上する。
また、本実施例では、作動油の粘度が高い低油温時にロックアップクラッチL/Uの係合が禁止された場合も、リニアソレノイドバルブSLUの第1制御油圧PSLUを第2ブレーキB2側へ出力するように第1リレーバルブ100が保持され、第1速前進ギヤ段「1st」へダウンシフトする際に一々第1リレーバルブ100を切り換え制御する必要がないため、作動油の高粘度に起因する第1リレーバルブ100の切り換え遅れ、更には変速遅れが防止される。
また、本実施例では、第1速前進ギヤ段「1st」では、その第1速前進ギヤ段「1st」では係合させられることがないとともに第5速前進ギヤ段「5th」以上の前進ギヤ段で係合させられる第2クラッチC2の係合圧PC2を制御するリニアソレノイドバルブSL2を用いてロックアップクラッチL/Uのトルク容量を制御する一方、第2速前進ギヤ段「2nd」以上の前進ギヤ段では、それ等の前進ギヤ段で係合させられることがないとともに第1速前進ギヤ段「1st」で係合させられる第2ブレーキB2の係合圧PB2を制御するリニアソレノイドバルブSLUを用いてロックアップクラッチL/Uのトルク容量を制御するため、総ての前進ギヤ段でロックアップクラッチL/Uの係合制御が行なわれるようになり、燃費が向上するとともに、ロックアップクラッチL/Uのトルク容量制御のために専用のソレノイドバルブを設ける必要がないため、油圧制御装置を簡単且つ安価に構成できる。
また、上記リニアソレノイドバルブSL2およびSLUによって係合させられる第2クラッチC2および第2ブレーキB2の一方を係合するとともに他方を解放する第1速前進ギヤ段「1st」と第5速前進ギヤ段「5th」との間の変速以外は、従来と同様にしてクラッチツークラッチ変速を行なうことが可能であるため、トルク抜け等の変速ショックを生じることなく優れた応答性で適切に変速制御を行なうことができる。
第1速前進ギヤ段「1st」と第5速前進ギヤ段「5th」との間で直接変速する場合には、リニアソレノイドバルブSL2およびSLUの何れか一方を、自動変速機10の変速制御からロックアップクラッチL/Uのトルク容量制御へ移行するとともに、他方をロックアップクラッチL/Uのトルク容量制御から自動変速機10の変速制御へ移行する必要があるが、本実施例では第1速前進ギヤ段「1st」を成立させるために第2ブレーキB2を係合させる際に、第2リレーバルブ110は第2ブレーキB2の係合圧PB2に対応する第1制御油圧PSLUが予め定められた所定圧以上になるまで第2制御油圧PSL2を第2クラッチC2側へ供給する状態に保持されるため、急減速時や急加速時、或いはマニュアル変速などで第5速前進ギヤ段「5th」から第1速前進ギヤ段「1st」へ飛越しダウンシフトする場合には、第2ブレーキB2の係合圧PB2が所定圧以上になるまで第2クラッチC2を係合状態に保持することが可能で、トルク抜けによる変速ショックを防止しつつ変速を行なうことができる。第1速前進ギヤ段「1st」から第5速前進ギヤ段「5th」へアップシフトする場合も、同様に第2ブレーキB2および第2クラッチC2を共に所定の係合状態に保持することができるため、必要に応じてそれ等をオーバーラップさせることにより変速ショックを抑制しつつ変速を行なうことができる。
一方、上記実施例ではリニアソレノイドバルブSLUの第1制御油圧PSLUがそのまま第2ブレーキB2の油圧アクチュエタに供給されて第2ブレーキB2を係合させるようになっていたが、図17に示すように第1リレーバルブ100とカットオフバルブ102との間にB2コントロールバルブ120を設けて、そのB2コントロールバルブ120により第1制御油圧PSLUに応じてライン油圧PLを調圧して第2ブレーキB2の油圧アクチュエータに供給するようにしても良い。カットオフバルブ102と第1チェックバルブ104との間にB2コントロールバルブ120を設けることもできる。また、他の摩擦係合装置C1〜C4、B1についても、同様にリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の制御油圧を信号圧としてコントロールバルブによりライン油圧PL等を調圧して、それ等の油圧アクチュエータに供給するようにしても良い。
なお、前記実施例では第2クラッチC2の係合圧PC2を制御するリニアソレノイドバルブSL2も、ロックアップクラッチL/Uのトルク容量制御に用いられるため、その第2クラッチC2を係合させる第5速前進ギヤ段「5th」〜第8速前進ギヤ段「8th」が第1のギヤ段で、第1速前進ギヤ段「1st」が第2のギヤ段で、第2クラッチC2、リニアソレノイドバルブSL2がそれぞれ請求項1に記載の所定の係合装置、ソレノイドバルブであると見做すことができるが、第2リレーバルブ110は、ON−OFFソレノイドバルブSLによってロックアップクラッチL/Uを係合させる時だけ、リニアソレノイドバルブSL2の制御油圧PSL2をロックアップクラッチL/Uのトルク容量制御側の油路へ出力するように切り換えられるため、本発明とは前提となるロックアップ制御が相違する。
但し、ON−OFFソレノイドバルブSLとは別個に設けられたON−OFFソレノイドバルブなどを用いて、第1速前進ギヤ段「1st」では、ロックアップクラッチL/Uを係合させるか否かに拘らずリニアソレノイドバルブSL2の制御油圧PSL2がロックアップクラッチL/Uのトルク容量を制御するための油路へ出力されるように第2リレーバルブ110を切り換え制御する一方、低油温時でロックアップクラッチL/Uの係合が禁止された場合などロックアップクラッチL/Uの係合が不可の時には、第2リレーバルブ110の切換を制限して、第1速前進ギヤ段「1st」時にもリニアソレノイドバルブSL2の第2制御油圧PSL2が第2クラッチC2側へ出力されるように第2リレーバルブ110を保持するようにすれば、本発明の一実施態様となる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両用自動変速機 32:トルクコンバータ(流体式伝動装置) 78:AT油温センサ 90:電子制御装置 98:油圧制御回路 100:第1リレーバルブ(リレーバルブ) SLU:リニアソレノイドバルブ(ソレノイドバルブ) L/U:ロックアップクラッチ B2:第2ブレーキ(所定の係合装置) PSLU:第1制御油圧(制御油圧) PB2:B2の係合圧 PLU:ロックアップ油圧(L/Uのトルク容量) 1st:第1速前進ギヤ段(第1のギヤ段) 2nd〜8th:第2速〜第8速前進ギヤ段(第2のギヤ段) ステップS1、S2:切換制限手段