JP2006077892A - 異常判定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 変速中に変速に関与しないソレノイドバルブの異常を判定して、自動変速機のインターロックを防止する。
【解決手段】 ECUは、対応する油圧回路の異常の判定を禁止する異常判定禁止フラグがオフであって(S2000にてYES)、油圧スイッチがオンであると(S2100にてYES)、カウンタ(1)の値をカウントアップするステップと(S2200)、カウンタ(1)の値が所定値C(1)以上であると(S2400)、異常フラグをオンするステップ(S2500)とを含む、プログラムを実行する。
【選択図】 図8
【解決手段】 ECUは、対応する油圧回路の異常の判定を禁止する異常判定禁止フラグがオフであって(S2000にてYES)、油圧スイッチがオンであると(S2100にてYES)、カウンタ(1)の値をカウントアップするステップと(S2200)、カウンタ(1)の値が所定値C(1)以上であると(S2400)、異常フラグをオンするステップ(S2500)とを含む、プログラムを実行する。
【選択図】 図8
Description
本発明は、油圧制御装置の異常判定装置に関し、特に、自動変速機を制御する油圧制御装置の異常を判定する異常判定装置に関する。
従来、自動変速機に設けられる複数の摩擦係合要素に対応する複数のソレノイドバルブの各々の作動油圧を直接制御するようにした油圧制御装置がある。このような油圧制御装置においては、油圧制御装置が異常であるか否かを、油路内の油圧に応じて作動する油圧スイッチに基づいて判定するようにしたものが提案されている。油圧スイッチは、ソレノイドバルブと、対応する摩擦係合要素とを接続する油路内に設けられる。
たとえば、特開2001−116134号公報(特許文献1)は、変速過渡状態および定常状態からの所定時間内において生じる作動油圧の抜け遅れに伴なうフェ−ル状態の誤検知を防止する直動バルブ式自動変速機のフェ−ルセーフシステムを開示する。このフェ−ルセーフシステムは、複数の摩擦要素を選択的に締結させて変速を行なうに際し、摩擦要素の作動液圧を個々の直動バルブで直接制御するようにした直動バルブ式自動変速機に対して、作動液圧に応動する圧力スイッチを個々に設ける。フェ−ルセーフシステムは、圧力スイッチそれぞれの状態の組み合わせから自動変速機のフェ−ル状態を判定してフェ−ル対策を行なう。フェ−ルセーフシステムは、少なくとも変速中は、圧力スイッチによるフェ−ル状態の判定を停止する。
特許文献1により開示されるフェ−ルセーフシステムによると、変速中は、圧力スイッチによるフェ−ル状態の判定を停止する。そのため、圧力スイッチによるフェ−ル状態の誤検知を生じやすい状態、たとえば、締結実圧と開放実圧とが同時に切り換わる、いわゆる掛け換え変速時などでのフェ−ル状態の判定は行なわれない。したがって、作動圧の変動中に生じるフェ−ル状態の誤判定を防止できるとともに、変速品質を確保できる。
特開2001−116134号公報
しかしながら、特許文献1に開示されたフェ−ルセーフシステムにおいては、作動油圧の抜け遅れに伴なう誤判定を防止することができても、変速中においては、異常判定を禁止している。そのため、変速中において、変速に関与しない摩擦係合要素に対応したソレノイドバルブに異常が発生して摩擦係合要素が係合すると、フェ−ルセーフが実行されない可能性がある。その結果、自動変速機においてインターロックが生じてしまうという問題がある。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、変速中に変速に関与しないソレノイドバルブの異常を判定して、自動変速機のインターロックを防止する異常判定装置を提供することである。
第1の発明に係る異常判定装置は、複数の摩擦係合要素が選択的に係合されることによって変速比の異なる複数の変速段が成立する自動変速機を制御する油圧制御装置の異常判定装置である。自動変速機は、摩擦係合要素に対応して設けられる複数のソレノイドバルブを含む。油圧制御装置は、ソレノイドバルブに対して出力指令値を出力して、ソレノイドバルブに対応する摩擦係合要素の作動油圧を直接制御する。異常判定装置は、ソレノイドバルブと、対応する摩擦係合要素とを接続する油路内の油圧が予め定められた圧力になると信号を出力するための検知手段と、検知手段からの信号に基づいて、油圧制御装置が異常であるか否かを判定するための判定手段と、出力される出力指令値が予め定められた第1の値以上になると、判定手段による判定を禁止するための禁止手段と、判定が禁止された状態において、出力指令値が予め定められた第2の値以下になると、第2の値以下になってから予め定められた時間が経過した後に、判定手段による判定を許可するための許可手段とを含む。
第1の発明によると、検知手段(たとえば、油圧スイッチ)は、ソレノイドバルブと、対応する摩擦係合要素とを接続する油路内の油圧が予め定められた圧力以上になると信号を出力する。判定手段は、出力される信号に基づいて、油圧制御装置が異常であるか否かを判定する。禁止手段は、出力される出力指令値が予め定められた第1の値以上になると、判定手段による判定を禁止する。許可手段は、判定が禁止された状態において、出力指令値が予め定められた第2の値以下になると、第2の値以下になってから予め定められた時間が経過した後に、判定手段による判定を許可する。これにより、複数のソレノイドバルブのそれぞれにおいて、異常判定を禁止する期間と許可する期間とを設定することができる。すなわち、変速中に、出力指令値が出力されていないソレノイドバルブについて、油圧の異常を判定することができるため、変速に関与しないソレノイドバルブの異常を判定することができる。したがって、変速中に変速に関与しないソレノイドバルブの異常を判定して、自動変速機のインターロックを防止する異常判定装置を提供することができる。
第2の発明に係る異常判定装置においては、第1の発明の構成に加えて、異常判定装置は、出力指令値の変化に対する作動油圧の応答遅れに影響を与える物理量に基づいて、予め定められた時間を設定するための手段をさらに含む。
第2の発明によると、異常判定装置は、出力指令値の変化に対応する作用油圧の応答遅れに影響を与える物理量(たとえば、油温、車速およびスロットル開度のうちの少なくとも一つ)に基づいて、予め定められた時間を設定する。これにより、油圧回路の異常判定を禁止する期間をより適切に設定することができる。そのため、異常判定の精度を向上させることができる。
第3の発明に係る異常判定装置においては、第2の発明の構成に加えて、物理量は、油温、車両の速度およびスロットル開度のうちの少なくとも一つである。
第3の発明によると、油温、車両速度およびスロットル開度のうちの少なくとも一つの物理量に基づいて、予め定められた時間を設定することにより、異常判定を禁止する期間をより適切に設定することができる。そのため、異常判定の精度を向上させることができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る異常判定装置について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1を参照して、本実施の形態に係る異常判定装置を含む自動変速システムについて説明する。このシステムは、自動変速機10と、油圧制御回路98と、ECU(Electronic Control Unit)90とを含む。自動変速機10は、油圧制御回路98により所望の動力伝達状態になるように制御される。具体的には、油圧制御回路98に設けられるリニアソレノイドバルブSL(1)〜SL(6)は、自動変速機10に設けられる複数の摩擦係合要素の作動油圧を調圧する。リニアソレノイドバルブSL(1)〜SL(6)は、ECU90から出力される出力指令値に基づいて、その動作が制御される。また、ECU90は、プログラムを実行することにより、本実施の形態に係る異常判定装置を実現する。
図1に示すように、アクセルポジションセンサ52は、アクセルペダル50の操作量Accを検出する。アクセルポジションセンサ52は、アクセル操作量Accを表わす信号をECU90に出力する。運転者は、運転者の出力要求量に応じてアクセルペダル50の踏み込み量を操作する。アクセルペダル50は、アクセル操作部材に相当する。アクセル操作量Accは出力要求量に相当する。
エンジン回転速度センサ58は、検出されるエンジン(図示せず)の回転速度NEをECU90に出力する。吸入空気量センサ60は、検出される吸入空気量Qを表わす信号をECU90に出力する。吸入空気温度センサ62は、検出される吸入吸気の温度T(A)を表わす信号をECU90に出力する。
アイドルスイッチ付スロットルポジションセンサ64は、エンジンの電子スロットル弁の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θ(TH)を検出する。スロットルポジションセンサ64は、検出されるスロットル開度θ(TH)を表わす信号をECU90に出力する。
車速センサ66は、車速V(出力軸の回転速度N(OUT)に対応)を検出する。車速センサ66は、検出される車速Vを表わす信号をECU90に出力する。冷却水温センサ68は、検出されるエンジンの冷却水温T(W)を表わす信号をECU90に出力する。
ブレーキスイッチ70は、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出する。ブレーキスイッチ70は、フットブレーキの操作の有無を示す信号をECU90に出力する。
レバーポジションセンサ74は、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)P(SH)を検出する。レバーポジションセンサ74は、検出されるレバーポジションP(SH)を表わす信号をECU90に出力する。
タービン回転速度センサ76は、タービン回転速度NT(=入力軸の回転速度N(IN))を検出する。タービン回転速度センサ76は、検出されるタービン回転速度NTを表わす信号をECU90に出力する。
AT油温センサ78は、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温T(OIL)を検出する。AT油温センサ78は、検出されるAT油温T(OIL)を表わす信号をECU90に出力する。
アップシフトスイッチ80は、アップシフトスイッチ80に変速レンジアップの指令が入力されると、指令R(UP)を表わす信号をECU90に出力する。ダウンシフトスイッチ82は、変速レンジダウンの指令が入力されると、指令R(DN)を表わす信号をECU90に出力する。
図2に示すように、この自動変速機10は、車両の前後方向(縦置き)に搭載するFR車両に好適に用いられる。自動変速機10には、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成される第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成される第2変速部20とが同軸線上に設けられる。入力軸22の回転は、変速して出力軸24から出力される。入力軸22は、入力部材に相当するもので、本実施の形態において、走行用の動力源であるエンジン30によって回転駆動されるトルクコンバータ32のタービン軸である。出力軸24は、出力部材に相当するもので、本実施の形態において、プロペラシャフトや差動歯車装置を介して左右の駆動輪を回転駆動させる。
第1変速部14を構成する第1遊星歯車装置12は、サンギヤS1、キャリアCA1、およびリングギヤR1の3つの回転要素を含む。サンギヤS1は、トランスミッションケース(以下、単にケースと記載する。)26に回転不能に固定されている。サンギヤS1は、キャリアCA1が入力軸22に一体的に連結されて回転駆動されることにより、減速出力部材として機能するリングギヤR1が入力軸22に対して減速回転させられて出力する。
第2変速部20を構成する第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18の一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成される。具体的には、第1回転要素RM1は、第2遊星歯車装置16のサンギヤS2によって構成される。第2回転要素RM2は、第2遊星歯車装置16のキャリアCA2および第3遊星歯車装置18のキャリアCA3が互いに連結されて構成される。第3回転要素RM3は、第2遊星歯車装置16のリングギヤR2および第3遊星歯車装置18のリングギヤR3が互いに連結されて構成される。第4回転要素RM4は、第3遊星歯車装置18のサンギヤS3によって構成される。
第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18において、キャリアCA2およびキャリアCA3が共通の部材にて構成される。さらに、第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18において、リングギヤR2およびリングギヤR3が共通の部材にて構成される。そして、第2遊星歯車装置16のピニオンギヤは、第3遊星歯車装置18の第2ピニオンギヤを兼ねているラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、第1ブレーキB1によって選択的にケース26に連結されて回転停止させられる。第2回転要素RM2(キャリアCA2,CA3)は、第2ブレーキB2によって選択的にケース26に連結されて回転停止させられる。第4回転要素RM4(サンギヤS3)は、第1クラッチC1を介して選択的に減速出力部材である第1遊星歯車装置12のリングギヤR1に連結される。第2回転要素RM2(キャリアCA2,CA3)は、第2クラッチC2を介して選択的に入力軸22に連結される。第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、第3クラッチC3を介して選択的に減速出力部材であるリングギヤR1に連結される。さらに、第1回転要素RM1は、第4クラッチC4を介して選択的に第1遊星歯車装置12のキャリアCA1すなわち入力軸22に連結される。第3回転要素RM3(リングギヤR2,R3)は、出力軸24に一体的に連結されて回転する。なお、第2回転要素RM2(キャリアCA2,CA3)とケース26との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸22と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチF1が第2ブレーキB2と並列に設けられている。
図3に、第1変速部14および第2変速部20の各回転要素の回転速度を直線で表わすことができる共線図を示す。図3において、下の横線は、回転速度「0」を示す。上の横線は、回転速度「1.0」すなわち入力軸22と同じ回転速度であることを示す。第1変速部14の各縦線は、左側から順番にサンギヤS1、リングギヤR1、キャリアCA1を表わす。それらの間隔は、第1遊星歯車装置12のギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1に応じて定められる。第2変速部20の4本の縦線は、左端から右端に向かって順番に第1回転要素RM1(サンギヤS2)、第2回転要素RM2(キャリアCA2,CA3)、第3回転要素RM3(リングギヤR2,R3)、第4回転要素RM4(サンギヤS3)を表わす。それらの間隔は、第2遊星歯車装置16のギヤ比ρ2および第3遊星歯車装置18のギヤ比ρ3に応じて定められる。
図3に示す共線図から明らかなように、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合させられると、第4回転要素RM4が減速出力部材であるリングギヤR1と一体的に減速回転させられる。さらに、第2回転要素RM2が回転停止させられ、出力軸24に連結された第3回転要素RM3は、「1st」で示す回転速度で回転させられる。すなわち、最も大きい変速比(=入力軸22の回転速度N(IN)/出力軸24の回転速度N(OUT))の第1変速段「1st」が成立させられる。
第1クラッチC1および第1ブレーキB1が係合させられると、第4回転要素RM4がリングギヤR1と一体的に減速回転させられる。さらに、第1回転要素RM1が回転停止させられ、第3回転要素RM3は、「2nd」で示す回転速度で回転させられる。すなわち、第1変速段「1st」よりも変速比が小さい第2変速段「2nd」が成立させられる。
第1クラッチC1および第3クラッチC3が係合させられると、第2変速部20は、リングギヤR1と一体的に減速回転させられ、第3回転要素RM3は、「3rd」で示す回転速度(リングギヤR1と同じ回転速度)で回転させられる。すなわち、第2変速段「2nd」よりも変速比が小さい第3変速段「3rd」が成立させられる。
第1クラッチC1および第4クラッチC4が係合させられると、第4回転要素RM4がリングギヤR1と一体的に減速回転させられる。さらに、第1回転要素RM1が入力軸22と一体的に回転させられ、第3回転要素RM3は、「4th」で示す回転速度で回転させられる。すなわち、第3変速段「3rd」よりも変速比が小さい第4変速段「4th」が成立させられる。
第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合させられると、第4回転要素RM4がリングギヤR1と一体的に減速回転させられる。さらに、第2回転要素RM2が入力軸22と一体的に回転させられ、第3回転要素RM3は、「5th」で示す回転速度で回転させられる。すなわち、第4変速段「4th」よりも変速比が小さい第5変速段「5th」が成立させられる。
第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合させられると、第2変速部20が入力軸22と一体的に回転させられ、第3回転要素RM3は、「6th」で示す回転速度(入力軸22と同じ回転速度)で回転させられる。すなわち、第5変速段「5th」よりも変速比が小さい第6変速段「6th」が成立させられる。この第6変速段「6th」の変速比は1である。
第2クラッチC2および第3クラッチC3が係合させられると、第2回転要素RM2が入力軸22と一体的に回転させられる。さらに、第1回転要素RM1がリングギヤR1と一体的に減速回転させられ、第3回転要素RM3は、「7th」で示す回転速度で回転させられる。すなわち、第6変速段「6th」よりも変速比が小さい第7変速段「7th」が成立させられる。
第2クラッチC2および第1ブレーキB1が係合させられると、第2回転要素RM2が入力軸22と一体的に回転させられる。さらに、第1回転要素RM1が回転停止させられ、第3回転要素RM3は、「8th」で示す回転速度で回転させられる。すなわち、第7変速段「7th」よりも変速比が小さい第8変速段「8th」が成立させられる。
一方、第2ブレーキB2および第3クラッチC3が係合させられると、第2回転要素RM2が回転停止させられる。さらに、第1回転要素RM1がリングギヤR1と一体的に減速回転させられ、第3回転要素RM3は、「Rev1」で示す回転速度で逆回転させられる。すなわち、第1後進変速段「Rev1」が成立させられる。
第2ブレーキB2および第4クラッチC4が係合させられると、第2回転要素RM2が回転停止させられる。さらに、第1回転要素RM1が入力軸22と一体的に回転させられ、第3回転要素RM3は、「Rev2」で示す回転速度で逆回転させられる。すなわち、第2後進変速段「Rev2」が成立させられる。
図4に示す作動表は、上述の各変速段とクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の作動状態との関係をまとめたものである。作動表において、「○」は係合、「(○)」はエンジンブレーキ時のみ係合を表わしている。第1変速段「1st」を成立させる第2ブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)には必ずしも第2ブレーキB2を係合させる必要は無い。また、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
上述のクラッチC1〜C4、およびブレーキB1,B2(以下、特に区別しない場合は単にクラッチCおよびブレーキBと記載する。)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式の摩擦係合要素である。クラッチCおよびブレーキBは、油圧制御回路98のリニアソレノイドバルブSL1〜SL6の励磁、非励磁や電流制御により、係合、解放状態が切り換えられる。さらに、クラッチCおよびブレーキBにおいては、係合、解放時の過渡油圧などが制御される。
図5に示すように、クラッチCおよびブレーキBの各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)34,36,38,40,42,44には、油圧供給装置46から出力されたライン油圧PLがそれぞれリニアソレノイドバルブSL(1)〜SL(6)により調圧されて供給されるようになっている。
油圧供給装置46は、エンジン30によって回転駆動される機械式のオイルポンプ48や、ライン油圧PLを調圧するレギュレータバルブ等を含む。油圧供給装置46は、エンジン負荷等に応じてライン油圧PLを制御する。
また、リニアソレノイドバルブSL(1)〜SL(6)とクラッチCおよびブレーキBとを接続する各油圧回路においては、油圧スイッチ120〜130が設けられる。油圧スイッチ120〜130は、各油圧回路において、油圧が予め定められた圧力以上になると、オン信号をECU90に出力する。
リニアソレノイドバルブSL(1)〜SL(6)は、基本的にはいずれも同じ構成で、本実施の形態では、ノーマリクローズ型のものが用いられる。リニアソレノイドバルブSL(1)〜SL(6)は、図6に示すように、励磁電流に応じて電磁力を発生するソレノイド100、スプール弁子102、スプリング104、ライン油圧PLが供給される入力ポート106、調圧した油圧を出力する出力ポート108、ドレーンポート110、出力油圧が供給されるフィードバック室112とから構成される。
フィードバック室112に供給されるフィードバック油圧、その受圧面積、スプリング104の荷重、ソレノイド100による電磁力に応じて出力油圧(フィードバック油圧)が調圧制御されて油圧アクチュエータ34〜44に供給される。リニアソレノイドバルブSL(1)〜SL(6)の各ソレノイド100は、ECU90により独立に励磁され、各油圧アクチュエータ34〜44の油圧が独立に調圧制御されるようになっている。
また、リニアソレノイドバルブSL(1)〜SL(6)は、ECU90から励磁電流が供給されることにより、出力油圧を調圧する。ECU90からの励磁電流の供給が停止してソレノイド100の励磁がオフになると、スプール弁子102は、スプリング104の荷重によりソレノイド100側の移動端に保持される。そのため、入力ポート106が略完全に遮断されて出力油圧が0になる。
これに対し、調圧状態においては、調圧制御を行なう励磁電流の範囲内で、その励磁電流を最小値にして出力油圧を最低にする最低調圧状態においても、スプール弁子102が釣り合う所定のフィードバック油圧が発生するように、予め定められた流量の作動油が入力ポート106から入力されるとともにドレーンポート110から流出させられる。
また、ECU90は、油圧スイッチ120〜130から出力される信号に応じて、油圧回路に異常があるか否かを判定する。具体的には、ECU90は、油圧スイッチ120〜130のいずれかから出力されるオン信号に応じて、オン信号が出力された油圧スイッチが設けられる油圧回路に異常が発生したと判定する。ここで、リニアソレノイドバルブSL(1)〜SL(6)のいずれかが制御されて出力油圧が立ち上がる場合、制御されるリニアソレノイドバルブに対応する油圧スイッチがオンになるため、異常を誤判定する可能性がある。
本発明に係る異常判定装置であるECU90は、リニアソレノイドバルブSL(1)〜SL(6)の各々に対して出力される出力指令値が予め定められた第1の値以上になると、対応する油圧回路における異常判定を禁止する。その一方で、ECU90は、油圧回路における異常判定が禁止された状態で、リニアソレノイドSL(1)〜SL(6)に対して出力される出力指令値が予め定められた第2の値以下になると、出力指令値が第2の値以下になってから予め定められた時間が経過した後に、対応する油圧回路の異常の判定を許可することを特徴とする。
具体的には、ECU90は、リニアソレノイドバルブへの出力指令値が予め定められた第1の値以上になると、異常判定禁止フラグをオンにする。異常判定禁止フラグがオンである間は、ECU90は、異常判定を行なわないものとする。一方、異常判定禁止フラグがオンの状態でリニアソレノイドバルブへの出力指令値が予め定められた第2の値以下になると、ECU90は、出力指令値が第2の値以下になってから予め定められた時間が経過した後に、対応する油圧回路における異常判定禁止フラグをオフにする。ECU90は、異常判定禁止フラグがオフになると、対応する油圧回路の異常判定を行なう。
以下、図7を参照して、本実施の形態に係る異常判定装置であるECU90で実行される、異常判定禁止フラグをオンするプログラムの制御構造について説明する。以下、ソレノイドバルブSL(1)に対してECU90が実行する制御プログラムについて説明するが、ECU90は、ソレノイドバルブSL(1)〜SL(6)の各々に対して独立して同様の制御プログラムを実行する。したがって、ソレノイドバルブSL(2)〜SL(6)に対してECU90が実行する制御プログラムについての詳細な説明は繰り返さない。
ステップ(以下、ステップをSと記載する。)1000にて、ECU90は、リニアソレノイドバルブSL(1)に対する出力指令値が予め定められた第1の値A(1)以上であるか否かを判定する。出力指令値が第1の値A(1)以上であると(S1000にてYES)、処理はS1100に移される。もしそうでないと(S1000にてNO)、処理は終了する。S1100にて、ECU90は、異常判定禁止フラグをオンにする。
次に、図8を参照して、本実施の形態に係る異常判定装置であるECU90で実行される、異常判定を実行するプログラムの制御構造について説明する。
S2000にて、ECU90は、異常判定禁止フラグがオフであるか否かを判定する。異常判定禁止フラグがオフであると(S2000にてYES)、処理はS2100に移される。もしそうでないと(S2000にてNO)、処理はS2300に移される。
S2100にて、ECU90は、油圧スイッチ120がオンであるか否かを判定する。すなわち、ECU90は、油圧スイッチ120から出力されるオン信号に基づいて、油圧スイッチ120がオンであるか否かを判定する。油圧スイッチがオンであると(S2100にてYES)、処理はS2200に移される。もしそうでないと(S2100にてNO)、処理はS2300に移される。
S2200にて、ECU90は、カウンタ(1)の値をカウントアップする。カウンタ(1)は、ECU90により実現され、油圧スイッチ120がオンとなってからの経過時間を計時する。S2300にて、ECU90は、カウンタ(1)の値を初期値にリセットする。
S2400にて、ECU90は、カウンタ(1)の値が所定値C(1)以上であるか否かを判定する。カウンタ(1)の値が所定値C(1)以上であると(S2400にてYES)、処理はS2500に移される。もしそうでないと(S2400にてNO)、処理は終了する。
S2500にて、ECU90は、異常フラグをオンにする。ECU90は、異常フラグがオンになると、油圧回路に異常が発生したと判定する。このとき、ECU90は、フェ−ルセーフ処理を行なう。すなわち、フェ−ルしたリニアソレノイドバルブSL(1)の異常状態(係合状態)によるインターロックが発生しないように、予め定められた組み合わせで、他のリニアソレノイドバルブSL(2)〜SL(6)が係合および解放のいずれかの状態となる。また、ECU90は、油圧回路に異常が発生したと判定すると、リニアソレノイドバルブSL(1)がフェ−ルしていることを警報により通知したり、警告を表示したりするようにしてもよい。
続いて、図9を参照して、本実施の形態に係る異常判定装置であるECU90で実行される、異常判定禁止フラグをオフするプログラムの制御構造について説明する。
ステップS3000にて、ECU90は、リニアソレノイドバルブSL(1)に対する出力指令値が予め定められた第2の値A(2)以下であるか否かを判定する。出力指令値が第2の値A(2)以下であると(S3000にてYES)、処理はS3100に移される。もしそうでないと(S3000にてNO)、処理はS3200に移される。なお、A(1)およびA(2)は、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよいものとする。
S3100にて、ECU90は、カウンタ(2)の値をカウントアップする。カウンタ(2)は、ECU90により実現され、出力指令値が第2の値以下となってからの経過時間を計時する。S3200にて、ECU90は、カウンタ(2)の値を初期値にリセットする。
S3300にて、ECU90は、カウンタ(2)の値が所定値C(2)以上であるか否かを判定する。カウンタ(2)の値が所定値C(2)以上であると(S3300にてYES)、処理はS3400に移される。もしそうでないと(S3300にてNO)、処理はS3500に移される。
S3400にて、ECU90は、異常判定禁止フラグをオフにする。S3500にて、ECU90は、油圧スイッチ120がオフであるか否かを判定する。油圧スイッチがオフであると(S3500にてYES)、処理はS3400に移される。もしそうでないと(S3500にてNO)、処理は終了する。
なお、異常判定禁止フラグをオンするプログラムは、たとえば、異常判定禁止フラグがオフのときに実行させるようにしてもよい。また、異常判定禁止フラグをオフするプログラムは、たとえば、異常判定禁止フラグがオンのときに実行させるようにしてもよい。あるいは、出力指令値の変化量の符号に応じて、異常判定禁止フラグをオンするプログラムおよび異常判定フラグをオフするプログラムのいずれかを実行させるようにしてもよい。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る異常判定装置であるECU90の動作について図10および図11を用いて説明する。以下、ソレノイドバルブSL(1)に対するECU90の動作について説明するが、ECU90は、ソレノイドバルブSL(2)〜SL(6)の各々に対しても同様に動作する。したがって、その詳細な説明は繰り返さない。
まず、図10を用いて、油圧回路が正常である場合について説明する。図10に示すように、時間T(1)に、ECU90からリニアソレノイドバルブSL(1)に対して出力指令が出力される。時間T(2)において、出力された出力指令値が予め定められた値A(1)以上になると(S1000にてYES)、異常判定禁止フラグがオンにされる(S1100)。ECU90からの出力指令に応じて、リニアソレノイドバルブSL(1)から出力される油圧が上昇する。時間T(3)において、油圧が予め定められた圧力P(1)になると、油圧スイッチ120がオンになる。ここで、異常判定禁止フラグがオンになっているため、ECU90は、対応する油圧回路の異常判定を禁止する。
時間T(4)において、リニアソレノイドバルブSL(1)に出力される出力指令値が予め定められた値A(2)以下になると(S3000にてYES)、カウンタ(2)による時間計測が開始される(S3100)。このとき油圧も出力指令値の低下に応じて減少する。出力指令値が予め定められた値A(2)以下になってからカウントアップされたカウント(2)の値が所定値C(2)以上になるまでの時間T(5)において(S3300にてNO)、油圧回路内の油圧が予め定められた圧力P(1)以下になると、油圧スイッチ120がオフになる。油圧スイッチ120がオフになると(S3500にてYES)、異常判定禁止フラグがオフとなる(S3400)。
一方、図11を用いて、油圧回路がフェ−ルした場合について説明する。図11に示すように、時間T(1)に、ECU90からリニアソレノイドバルブSL(1)に対して出力指令が出力される。時間T(2)において、出力された出力指令値が予め定められた値A(1)以上になると(S1000にてYES)、異常判定禁止フラグがオンにされる(S1100)。ECU90からの出力指令に応じて、リニアソレノイドバルブSL(1)から出力される油圧が上昇する。時間T(3)において、油圧が予め定められた圧力P(1)になると、油圧スイッチ120がオンになる。ここで、異常判定禁止フラグがオンなっているため、ECU90は、対応する油圧回路の異常判定を禁止する。
時間T(4)において、リニアソレノイドバルブSL(1)に出力される出力指令値が予め定められた値A(2)以下になっても(S3300にてYES)、油圧回路がフェ−ルしていると、油圧が減少しない。そのため、出力指令値が予め定められた値A(2)以下になってから時間T(6)において、所定値C(2)に対応する予め定められた時間(2)が経過しても(S3300にてNO)、油圧スイッチ120は、オンのままである。時間T(6)において、出力指令値が予め定められた値A(2)以下になってから予め定められた時間(2)が経過すると(S3300にてYES)、異常判定禁止フラグがオフとなる(S3400)。
そして、対応する油圧回路の異常の判定が許可された状態において(S2000にてYES)、油圧スイッチ120がオンのままであると(S2100にてYES)、時間計測が開始される(S2200)。そして、所定値C(1)に対応する予め定められた時間(1)が経過した後(S2400にてYES)、ECU90は、異常フラグをオンにする(S2500)。異常フラグがオンになると、ECU90は、前述のフェ−ルセーフ処理を行なう。
なお、予め定められた時間(2)は、オイルの抜けを考慮した時間である。そして、予め定められた時間(2)は、たとえば、油温、車速、スロットル開度のうちの少なくとも一つに応じて変更される時間である。ECU90は、たとえば、予め定められた時間(2)を、オイルの抜けを考慮した時間と、図12(A)に示すように油温T(OIL)に対応する時間ΔT(1)と、図12(B)に示すように車速Vに対応する時間ΔT(2)と、図12(C)に示すようにスロットル開度θに対応する時間ΔT(3)との和により設定する。このようにすると、異常判定を禁止する期間をより適切に設定することができる。そのため、異常判定の精度を向上させることができる。
ただし、予め定められた時間(2)の設定方法は、上述の方法に特に限定されるものではない。たとえば、油温と車速とスロットル開度とに基づく一つあるいは複数のマップを参照することにより予め定められた時間(2)を設定する方法を用いてもよい。
以上のようにして、本実施の形態に係る異常判定装置によると、複数のソレノイドバルブのそれぞれにおいて、異常判定を禁止する期間と許可する期間とを設定することができる。すなわち、変速中に、出力指令値が出力されていないソレノイドバルブについて、油圧の異常を判定することができるため、変速に関与しないソレノイドバルブの異常を判定することができる。したがって、変速中に変速に関与しないソレノイドバルブの異常を判定して、自動変速機のインターロックを防止する異常判定装置を提供することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 自動変速機、12 第1遊星歯車装置、14 第1変速部、16 第2遊星歯車装置、18 第3遊星歯車装置、20 第2変速部、22 入力軸、24 出力軸、26 トランスミッションケース、30 エンジン、32 トルクコンバータ、34,36,38,40,42,44 油圧アクチュエータ、46 油圧供給装置、48 オイルポンプ、50 アクセルペダル、52 アクセルポジションセンサ、58 エンジン回転速度センサ、60 吸入空気量センサ、62 吸入空気温度センサ、64 スロットルポジションセンサ、66 車速センサ、68 冷却水温センサ、70 ブレーキスイッチ、72 シフトレバー、74 レバーポジションセンサ、76 タービン回転速度センサ、78 AT油温センサ、80 アップシフトスイッチ、82 ダウンシフトスイッチ、90 ECU、98 油圧制御回路、100 ソレノイド、102 スプール弁子、104 スプリング、106 入力ポート、108 出力ポート、110 ドレーンポート、112 フィードバック室、120〜130 油圧スイッチ。
Claims (3)
- 複数の摩擦係合要素が選択的に係合されることによって変速比の異なる複数の変速段が成立する自動変速機を制御する油圧制御装置の異常判定装置であって、前記自動変速機は、前記摩擦係合要素に対応して設けられる複数のソレノイドバルブを含み、前記油圧制御装置は、前記ソレノイドバルブに対して出力指令値を出力して、前記ソレノイドバルブに対応する摩擦係合要素の作動油圧を直接制御し、
前記ソレノイドバルブと、対応する前記摩擦係合要素とを接続する油路内の油圧が予め定められた圧力になると信号を出力するための検知手段と、
前記検知手段からの信号に基づいて、前記油圧制御装置が異常であるか否かを判定するための判定手段と、
前記出力される出力指令値が予め定められた第1の値以上になると、前記判定手段による前記判定を禁止するための禁止手段と、
前記判定が禁止された状態において、前記出力指令値が予め定められた第2の値以下になると、前記第2の値以下になってから予め定められた時間が経過した後に、前記判定手段による前記判定を許可するための許可手段とを含む、異常判定装置。 - 前記異常判定装置は、前記出力指令値の変化に対する前記作動油圧の応答遅れに影響を与える物理量に基づいて、前記予め定められた時間を設定するための手段をさらに含む、請求項1に記載の異常判定装置。
- 前記物理量は、油温、車両の速度およびスロットル開度のうちの少なくとも一つである、請求項2に記載の異常判定装置。
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