JP2006153211A - 車両用自動変速機の油圧制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 シフトレバーの操作ポジションを識別できなくなった場合でも、シフトレバーの操作ポジションに応じて所定の摩擦係合装置を係合させることにより、所定のギヤ段を成立させて退避走行できるようにする。
【解決手段】 シフトレバーの操作ポジションを識別できないときには、ステップS6を実行し、リニアソレノイドバルブSL1およびSL4を油圧出力状態にするとともに、他のリニアソレノイドバルブSL2、SL3、SL5、およびSL6をドレーン状態にする。これにより、シフトレバーが「D」ポジションへ操作されると第1クラッチC1および第4クラッチC4が係合させられて第4速前進ギヤ段「4th」が成立させられ、シフトレバーが「R」ポジションへ操作されると、第4クラッチC4および第2ブレーキB2が係合させられて後進ギヤ段「Rev」が成立させられる。
【選択図】 図10
【解決手段】 シフトレバーの操作ポジションを識別できないときには、ステップS6を実行し、リニアソレノイドバルブSL1およびSL4を油圧出力状態にするとともに、他のリニアソレノイドバルブSL2、SL3、SL5、およびSL6をドレーン状態にする。これにより、シフトレバーが「D」ポジションへ操作されると第1クラッチC1および第4クラッチC4が係合させられて第4速前進ギヤ段「4th」が成立させられ、シフトレバーが「R」ポジションへ操作されると、第4クラッチC4および第2ブレーキB2が係合させられて後進ギヤ段「Rev」が成立させられる。
【選択図】 図10
Description
本発明は車両用自動変速機の油圧制御装置に係り、特に、シフトレバーの操作ポジションを識別できなくなった時でも走行可能とするフェールセーフ技術に関するものである。
(a) 前進ギヤ段を成立させる際に係合させられる油圧式の第1摩擦係合装置と、(b) 前記前進ギヤおよび後進ギヤ段を成立させる際に係合させられる油圧式の第2摩擦係合装置と、(c) シフトレバーが前進走行ポジションへ移動操作されると前進油圧を機械的に出力し、後進走行ポジションへ移動操作されると後進油圧を機械的に出力するマニュアルバルブと、(d) 前記前進油圧を調圧して前記第1摩擦係合装置に出力する第1係合圧出力手段と、(e) 前記前進油圧および前記後進油圧がシャトルバルブを介して選択的に供給されるとともに、それ等の油圧を調圧して前記第2摩擦係合装置に出力する第2係合圧出力手段と、を含む油圧制御回路を備えている車両用自動変速機が、例えば特許文献1に記載されている。
このような車両用自動変速機においては、前進ギヤ段と後進ギヤ段とで係合、解放する摩擦係合装置が異なるため、前記シフトレバーの操作ポジションを識別手段により識別し、係合すべき摩擦係合装置に対応する係合圧出力手段を油圧出力側に制御するとともに、解放すべき摩擦係合装置に対応する係合圧出力手段をドレーン側に制御する。例えば、シフトレバーが後進走行ポジションへ操作されると、第2係合圧出力手段が油圧出力側へ制御されることにより、マニュアルバルブから出力される後進油圧によって第2摩擦係合装置が係合させられるとともに、後進用のもう1つの摩擦係合装置が係合させられて後進ギヤ段が成立させられる。また、シフトレバーが前進走行ポジションへ操作されると、第1係合圧出力手段、第2係合圧出力手段を含む複数の係合圧出力手段がそれぞれ油圧出力側またはドレーン側へ制御されることにより、マニュアルバルブから出力される前進油圧に基づいて第1摩擦係合装置、第2摩擦係合装置を含む複数の摩擦係合装置がそれぞれ係合、解放させられて、複数の前進ギヤ段が成立させられる。
特開平5−133464号公報
しかしながら、このような油圧制御装置においては、車両用自動変速機がフェール状態となってシフトレバーの操作ポジションを識別できなくなると、係合圧出力手段がドレーン状態のままで摩擦係合装置を係合させることができなくなって、走行不能になるという問題があった。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、シフトレバーの操作ポジションを識別できなくなった場合でも、シフトレバーの操作ポジションに応じて所定の摩擦係合装置を係合させることにより、所定のギヤ段を成立させて退避走行できるようにすることにある。
かかる目的を達成するために、本発明は、(a) 前進ギヤ段を成立させる際に係合させられる油圧式の第1摩擦係合装置と、(b) 前記前進ギヤおよび後進ギヤ段を成立させる際に係合させられる油圧式の第2摩擦係合装置と、(c) シフトレバーが前進走行ポジションへ移動操作されると前進油圧を機械的に出力し、後進走行ポジションへ移動操作されると後進油圧を機械的に出力するマニュアルバルブと、(d) 前記前進油圧を調圧して前記第1摩擦係合装置に出力する第1係合圧出力手段と、(e) 前記前進油圧および前記後進油圧がシャトルバルブを介して選択的に供給されるとともに、それ等の油圧を調圧して前記第2摩擦係合装置に出力する第2係合圧出力手段と、を含む油圧制御回路を備える車両用自動変速機の油圧制御装置において、(g) 前記車両用自動変速機のフェール時には、前記第1係合圧出力手段および前記第2係合圧出力手段を何れも油圧出力側に制御するフェール時制御手段を設けたことを特徴とする。
このような車両用自動変速機の油圧制御装置においては、車両用自動変速機のフェール時には、フェール時制御手段によって第1係合圧出力手段および第2係合圧出力手段が何れも油圧出力側に制御されるため、例えばシフトレバーの操作ポジションを識別できなくなった場合でも、シフトレバーの操作ポジションに応じて機械的に切り換えられるマニュアルバルブから出力される前進油圧或いは後進油圧により第1摩擦係合装置、第2摩擦係合装置が係合させられ、所定のギヤ段を成立させて走行することが可能となる。すなわち、シフトレバーが前進走行ポジションへ移動操作されると、マニュアルバルブから前進油圧が出力されるため、その前進油圧により第1摩擦係合装置および第2摩擦係合装置がそれぞれ係合させられて前進ギヤ段が成立させられる。また、シフトレバーが後進走行ポジションへ移動操作されると、マニュアルバルブから後進油圧が出力されるため、その後進油圧により第2摩擦係合装置が係合させられて後進ギヤ段を成立させることができる。
本発明の自動変速機としては、複数の遊星歯車装置を有する遊星歯車式の自動変速機が好適に用いられるが、複数の入力経路を切り換えて変速する平行軸式の自動変速機を用いることもできるなど、複数の油圧式摩擦係合装置を選択的に係合、解放して前進ギヤ段および後進ギヤ段を成立させることができる種々の自動変速機を採用できる。単一の前進ギヤ段および後進ギヤ段を切り換えるだけの自動変速機であっても良いし、前後進切換と有段変速機或いは無段変速機とを組み合わせた自動変速機を採用することもできるなど、種々の態様が可能である。
油圧制御回路は、例えば前記第2摩擦係合装置と共に係合させられることによって前記後進ギヤ段を成立させるとともに、前記シフトレバーが後進走行ポジションへ移動操作されると、前記マニュアルバルブから出力される後進油圧によって機械的に係合させられる油圧式の第3摩擦係合装置を備えて構成される。また、変速比が異なる複数の前進ギヤ段を成立させる自動変速機においては、その複数の前進ギヤ段に対応して更に別の摩擦係合装置が必要に応じて設けられる。上記第3摩擦係合装置を、前進ギヤ段を成立させる際に利用することも可能で、その場合は例えばシャトルバルブを介して前進油圧および後進油圧が選択的に供給されるように構成される。
複数の摩擦係合装置は、必ずしもマニュアルバルブから出力される前進油圧または後進油圧のみに基づいて係合させられるものである必要はなく、例えば前記第1〜第3摩擦係合装置以外の摩擦係合装置を、シフトレバーの操作ポジションに拘らず常時出力されるライン油圧等に基づいて係合させるように構成することも可能である。油圧式の摩擦係合装置としては、油圧アクチュエータによって係合させられる多板式、単板式のクラッチやブレーキ、或いはベルト式のブレーキが広く用いられている。
係合圧出力手段は、例えばスプール弁子の一端側に、出力油圧が導かれるフィードバック油室が設けられるとともにスプリングが配設され、他端側に設けられたソレノイドによる電磁力とのバランスで、出力油圧を調圧するリニアソレノイドバルブが好適に用いられるが、デューティ制御で油圧を制御するON−OFFソレノイドバルブなどを採用することもできる。
係合圧出力手段は、例えば上記リニアソレノイドバルブやON−OFFソレノイドバルブ等の出力油圧を直接油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)に供給するように構成することが応答性や油圧の制御精度等の点で望ましいが、その出力油圧によりコントロールバルブを制御して、そのコントロールバルブから油圧アクチュエータに作動油(ライン油圧など)を供給するように構成することもできる。
シフトレバーは、ケーブルやリンク等を介して機械的にマニュアルバルブに連結され、操作ポジションに応じてマニュアルバルブの弁子(スプールなど)を移動させて油路を切り換えるもので、運転席横のセンタコンソール部分に配設されるフロアシフトタイプでも、ステアリングコラムに配設されるコラムシフトタイプでも良く、或いはインストルメントパネル等の他の部位に配設されるものでも良い。
シフトレバーの操作ポジションとしては、マニュアルバルブが前進油圧を出力する前進走行ポジションおよび後進油圧を出力する後進走行ポジションの他に、何れの油圧も出力しないパーキングポジションやニュートラルポジションを備えているのが普通であり、シフトレバーは各操作ポジションに節度を持って位置決めされるように構成される。
車両用自動変速機においては、前進ギヤ段と後進ギヤ段とで係合、解放する摩擦係合装置が異なるため、通常、シフトレバーの操作ポジションを識別する識別手段を有し、この識別手段によってシフトレバーが何れの操作ポジションにあるかを識別するように構成される。このため、フェール時制御手段は、例えば識別手段によって操作ポジションを識別できないときには、第1係合圧出力手段および第2係合圧出力手段を何れも油圧出力側に制御するように構成され、例えば識別手段による操作ポジションの識別が不可の時にはフェール状態と判断し、フェール時制御手段による制御が行なわれるように構成される。但し、操作ポジションの識別不可等の車両用自動変速機のフェール時に、結果的に第1係合圧出力手段および第2係合圧出力手段が何れも油圧出力側に制御されるようになっておれば良く、必ずしもフェールか否かを検出する必要はない。
上記識別手段は、シフトレバーの操作ポジションを直接検出するものでも良いが、シフトレバーの移動操作に伴って移動する他の部材、例えばマニュアルバルブの弁子の位置等を検出するものでも良い。この識別手段によって識別される前進走行ポジションや後進走行ポジションの識別範囲、および前進油圧や後進油圧が出力される油圧出力範囲は、何れもシフトレバーの各操作ポジションに対応して定められるが、それ等の範囲は必ずしも完全に一致している必要はなく、例えば節度を持って位置決めされるシフトレバーの各操作ポジションを中心としてその両側に跨がって識別範囲が定められ、その識別範囲よりも更に両側に広がって油圧出力範囲が設定されても良い。
識別手段は、例えば前進走行ポジション、後進走行ポジション等の各操作ポジションの所定の識別範囲毎に接点が設けられ、その接点が接触させられることによりそれぞれ接点信号を出力するレバーポジションセンサを含んで構成され、フェール時制御手段は、例えば識別手段がフェールか否かを判断することなく、それ等の接点信号が供給されないOFF時には第1係合圧出力手段および第2係合圧出力手段をそれぞれ油圧出力側に制御するように構成される。この場合は、断線などで接点信号が供給されず、前進走行ポジションや後進走行ポジションを識別できない場合も、第1係合圧出力手段および第2係合圧出力手段は油圧出力側に制御され、所定の前進ギヤ段または後進ギヤ段が成立させられる。
また、識別手段によって前進走行ポジションであることが識別された場合は、成立させる前進ギヤ段に応じて第1係合圧出力手段および第2係合圧出力手段をそれぞれ油圧出力側或いはドレーン側へ制御するが、前進走行ポジション以外では、接点信号がOFFの時を含めて常時第1係合圧出力手段および第2係合圧出力手段を油圧出力側へ制御するようにしても良い。すなわち、ニュートラルポジションやパーキングポジションでは前進油圧および後進油圧は出力されないため、第1摩擦係合装置および第2摩擦係合装置が係合させられることはなく、第1係合圧出力手段および第2係合圧出力手段を油圧出力側へ制御したままでも差し支えないのである。なお、この場合は、識別手段は少なくともシフトレバーが前進走行ポジションへ移動操作されたことを識別できれば良く、後進走行ポジション等の他の操作ポジションについては必ずしも識別できる必要はない。
フェール時制御手段はまた、短絡等により複数の操作ポジションを表す接点信号が同時に供給されたような場合も、フェール状態と判断して第1係合圧出力手段および第2係合圧出力手段を油圧出力側に制御するように構成することができる。また、識別手段が何等かの理由でフェールであると判断された場合には、接点信号の有無に拘らず第1係合圧出力手段および第2係合圧出力手段を油圧出力側に制御するように構成することもできるなど、種々の態様が可能である。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1の(a) は、車両用自動変速機10の骨子図で、(b) は複数のギヤ段を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。この自動変速機10は、車両の前後方向(縦置き)に搭載するFR車両に好適に用いられるもので、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを同軸線上に有し、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は入力部材に相当するもので、本実施例では走行用の動力源であるエンジン30によって回転駆動されるトルクコンバータ32のタービン軸であり、出力軸24は出力部材に相当するもので、プロペラシャフトや差動歯車装置を介して左右の駆動輪を回転駆動する。なお、この自動変速機10は中心線に対して略対称的に構成されており、図1(a) では中心線の下半分が省略されている。
図1の(a) は、車両用自動変速機10の骨子図で、(b) は複数のギヤ段を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。この自動変速機10は、車両の前後方向(縦置き)に搭載するFR車両に好適に用いられるもので、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを同軸線上に有し、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は入力部材に相当するもので、本実施例では走行用の動力源であるエンジン30によって回転駆動されるトルクコンバータ32のタービン軸であり、出力軸24は出力部材に相当するもので、プロペラシャフトや差動歯車装置を介して左右の駆動輪を回転駆動する。なお、この自動変速機10は中心線に対して略対称的に構成されており、図1(a) では中心線の下半分が省略されている。
上記第1変速部14を構成している第1遊星歯車装置12は、サンギヤS1、キャリアCA1、およびリングギヤR1の3つの回転要素を備えていて、サンギヤS1はトランスミッションケース(以下、単にケースという)26に回転不能に固定されており、キャリアCA1が入力軸22に一体的に連結されて回転駆動されることにより、減速出力部材として機能するリングギヤR1が入力軸22に対して減速回転させられる。また、第2変速部20を構成している第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18は、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成されており、具体的には、第2遊星歯車装置16のサンギヤS2によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置16のキャリアCA2および第3遊星歯車装置18のキャリアCA3が互いに連結されて第2回転要素RM2が構成され、第2遊星歯車装置16のリングギヤR2および第3遊星歯車装置18のリングギヤR3が互いに連結されて第3回転要素RM3が構成され、第3遊星歯車装置18のサンギヤS3によって第4回転要素RM4が構成されている。上記第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18は、キャリアCA2およびCA3が共通の部材にて構成されているとともに、リングギヤR2およびR3が共通の部材にて構成されており、且つ第2遊星歯車装置16のピニオンギヤが第3遊星歯車装置18の第2ピニオンギヤを兼ねているラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
上記第1回転要素RM1(サンギヤS2)は第1ブレーキB1によって選択的にケース26に連結されて回転停止させられ、第2回転要素RM2(キャリアCA2、CA3)は第2ブレーキB2によって選択的にケース26に連結されて回転停止させられ、第4回転要素RM4(サンギヤS3)は第1クラッチC1を介して選択的に減速出力部材である前記第1遊星歯車装置12のリングギヤR1に連結され、第2回転要素RM2(キャリアCA2、CA3)は第2クラッチC2を介して選択的に入力軸22に連結され、第1回転要素RM1(サンギヤS2)は第3クラッチC3を介して選択的に減速出力部材であるリングギヤR1に連結されるとともに、第4クラッチC4を介して選択的に第1遊星歯車装置12のキャリアCA1すなわち入力軸22に連結され、第3回転要素RM3(リングギヤR2、R3)は前記出力軸24に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。なお、第2回転要素RM2(キャリアCA2、CA3)とケース26との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸22と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチF1が第2ブレーキB2と並列に設けられている。
図2は、上記第1変速部14および第2変速部20の各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図であり、下の横線が回転速度「0」で、上の横線が回転速度「1.0」すなわち入力軸22と同じ回転速度である。また、第1変速部14の各縦線は、左側から順番にサンギヤS1、リングギヤR1、キャリアCA1を表しており、それ等の間隔は第1遊星歯車装置12のギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1に応じて定められる。第2変速部20の4本の縦線は、左端から右端へ向かって順番に第1回転要素RM1(サンギヤS2)、第2回転要素RM2(キャリアCA2、CA3)、第3回転要素RM3(リングギヤR2、R3)、第4回転要素RM4(サンギヤS3)を表しており、それ等の間隔は第2遊星歯車装置16のギヤ比ρ2および第3遊星歯車装置18のギヤ比ρ3に応じて定められる。
そして、上記共線図(図2)から明らかなように、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合させられて、第4回転要素RM4が減速出力部材であるリングギヤR1と一体的に減速回転させられるとともに第2回転要素RM2が回転停止させられると、出力軸24に連結された第3回転要素RM3は「1st」で示す回転速度で回転させられ、最も大きい変速比(=入力軸22の回転速度NIN/出力軸24の回転速度NOUT )の第1速前進ギヤ段「1st」が成立させられる。第1クラッチC1および第1ブレーキB1が係合させられて、第4回転要素RM4がリングギヤR1と一体的に減速回転させられるとともに第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「2nd」で示す回転速度で回転させられ、第1速前進ギヤ段「1st」よりも変速比が小さい第2速前進ギヤ段「2nd」が成立させられる。第1クラッチC1および第3クラッチC3が係合させられると、第2変速部20はリングギヤR1と一体的に減速回転させられ、第3回転要素RM3は「3rd」で示す回転速度すなわちリングギヤR1と同じ回転速度で回転させられ、第2速前進ギヤ段「2nd」よりも変速比が小さい第3速前進ギヤ段「3rd」が成立させられる。第1クラッチC1および第4クラッチC4が係合させられて、第4回転要素RM4がリングギヤR1と一体的に減速回転させられるとともに第1回転要素RM1が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「4th」で示す回転速度で回転させられ、第3速前進ギヤ段「3rd」よりも変速比が小さい第4速前進ギヤ段「4th」が成立させられる。第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合させられて、第4回転要素RM4がリングギヤR1と一体的に減速回転させられるとともに第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「5th」で示す回転速度で回転させられ、第4速前進ギヤ段「4th」よりも変速比が小さい第5速前進ギヤ段「5th」が成立させられる。
また、第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合させられて、第2変速部20が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「6th」で示す回転速度すなわち入力軸22と同じ回転速度で回転させられ、第5速前進ギヤ段「5th」よりも変速比が小さい第6速前進ギヤ段「6th」が成立させられる。この第6速前進ギヤ段「6th」の変速比は1である。第2クラッチC2および第3クラッチC3が係合させられて、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられるとともに第1回転要素RM1がリングギヤR1と一体的に減速回転させられると、第3回転要素RM3は「7th」で示す回転速度で回転させられ、第6速前進ギヤ段「6th」よりも変速比が小さい第7速前進ギヤ段「7th」が成立させられる。第2クラッチC2および第1ブレーキB1が係合させられて、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられるとともに第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「8th」で示す回転速度で回転させられ、第7速前進ギヤ段「7th」よりも変速比が小さい第8速前進ギヤ段「8th」が成立させられる。
一方、第2ブレーキB2および第4クラッチC4が係合させられると、第2回転要素RM2が回転停止させられるとともに第1回転要素RM1が入力軸22と一体回転させられることにより、第3回転要素RM3は「Rev」で示す回転速度で逆回転させられ、後進ギヤ段「Rev」が成立させられる。なお、第2ブレーキB2および第3クラッチC3を係合させ、第2回転要素RM2を回転停止するとともに第1回転要素RM1をリングギヤR1と一体的に減速回転させることにより、上記後進ギヤ段「Rev」より変速比が大きい後進ギヤ段を成立させることもできる。必要に応じて、2つの後進ギヤ段を切り換えたり使い分けたりして後進走行することもできる。
図1の(b) の作動表は、上記各ギヤ段とクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の作動状態との関係をまとめたもので、「○」は係合、「(○)」はエンジンブレーキ時のみ係合を表している。第1速前進ギヤ段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無いのである。また、各ギヤ段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
上記クラッチC1〜C4、およびブレーキB1、B2(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置で、油圧制御回路98(図3参照)のリニアソレノイドバルブSL1〜SL6の励磁、非励磁や電流制御、或いはシフトレバー72の移動操作でマニュアルバルブ118(図4参照)が機械的に切り換えられることにより、係合、解放状態が切り換えられるとともに係合、解放時の過渡油圧などが制御される。図4は、油圧制御回路98のうちリニアソレノイドバルブSL1〜SL6に関する部分を示す回路図で、クラッチC1〜C4、およびブレーキB1、B2の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)34、36、38、40、42、44には、油圧供給装置46から出力されたライン油圧PLがマニュアルバルブ118を経て供給されるようになっている。油圧供給装置46は、前記エンジン30によって回転駆動される機械式のオイルポンプ48や、ライン油圧PLを調圧するレギュレータバルブ等を備えており、エンジン負荷等に応じてライン油圧PLを制御する。
マニュアルバルブ118は、シフトレバー72にケーブルやリンクなどを介して連結され、シフトレバー72の移動操作に伴って機械的に油路を切り換え、前進油圧PD または後進油圧PR を出力する。シフトレバー72は運転席の横のセンターコンソール部分に配設され、図6に示すシフトパターン130に従って駐車用の「P(パーキング)」、後進走行用の「R(リバース)」、動力伝達を遮断する「N(ニュートラル)」、自動変速による前進走行用の「D(ドライブ)」、および手動変速が可能な前進走行用の「S(シーケンシャル)」の5つの操作ポジションへ移動操作されるようになっている。これ等の操作ポジション「P」〜「S」のうち「P」、「R」、「N」、および「D」ポジションは、「D」ポジションが車両の後方側となるように、車両の前後方向に沿って設けられているとともに、「S」ポジションは「D」ポジションから車両の幅方向であって運転席に近い側に設けられており、マニュアルバルブ118は、シフトレバー72が「P」ポジションと「D」ポジションとの間を移動操作されるのに伴ってスプール弁子が機械的に直線移動させられることにより油圧制御回路98の油路を切り換える。具体的には、シフトレバー72が「R」ポジションへ操作されると、マニュアルバルブ118は後進油圧PR を後進用油路138へ出力するとともに前進用油路136内の前進油圧PD をドレーンし、シフトレバー72が「D」ポジション(「S」ポジションも同じ)へ操作されると、マニュアルバルブ118は前進油圧PD を前進用油路136へ出力するとともに後進用油路138内の後進油圧PR をドレーンする。また、シフトレバー72が「P」ポジションまたは「N」ポジションへ操作されると、マニュアルバルブ118は前進用油路136内の前進油圧PD および後進用油路138内の後進油圧PR を何れもドレーンする。
前記リニアソレノイドバルブSL1、SL2、SL3、SL5、およびSL6は、何れも前進用油路136に接続されており、シフトレバー72が「D」または「S」ポジションへ操作されて前進油圧PD が供給されると、電子制御装置90(図3参照)による励磁電流の制御に従ってその前進油圧PD を調圧して油圧アクチュエータ34、36、38、42、44に出力することにより、クラッチC1〜C3、ブレーキB1、B2を係合、解放制御する。リニアソレノイドバルブSL4には、シャトルバルブ120を介して前進用油路136および後進用油路138が接続されており、シフトレバー72が「D」または「S」ポジションへ操作されると前進油圧PD が供給され、シフトレバー72が「R」ポジションへ操作されると後進油圧PR が供給されるようになっており、それ等の油圧を調圧して油圧アクチュエータ40に出力することにより、第4クラッチC4を係合、解放制御する。また、第2ブレーキB2の油圧アクチュエータ44には、シャトルバルブ122を介してリニアソレノイドバルブSL6および後進用油路138が接続されており、シフトレバー72が「R」ポジションへ操作されると、後進油圧PR がシャトルバルブ122を経てそのまま供給され、第2ブレーキB2が機械的に係合させられる。
したがって、シフトレバー72が「D」または「S」ポジションへ操作された場合には、前進油圧PD が総てのリニアソレノイドバルブSL1〜SL6に供給され、電子制御装置90によってそれ等のリニアソレノイドバルブSL1〜SL6の励磁電流がそれぞれ制御されることにより、クラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2がそれぞれ係合、解放制御され、前記第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」の何れかの前進ギヤ段が成立させられる。また、シフトレバー72が「R」ポジションへ操作された場合には、後進油圧PR によって第2ブレーキB2が機械的に係合させられるとともに、電子制御装置90によってリニアソレノイドバルブSL4が油圧出力側へ制御され、後進油圧PR が油圧アクチュエータ40に供給されて第4クラッチC4が係合させられることにより、前記後進ギヤ段「Rev」が成立させられる。シフトレバー72が、「P」ポジションまたは「N」ポジションへ操作された場合は、前進用油路136内の前進油圧PD および後進用油路138内の後進油圧PR が何れもドレーンされ、クラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2が何れも解放されて、自動変速機10は動力伝達遮断状態になる。
リニアソレノイドバルブSL1〜SL6は、基本的には何れも同じ構成で、本実施例ではノーマリクローズ型のものが用いられており、図5に示すように、励磁電流に応じて電磁力を発生するソレノイド100、スプール弁子102、スプリング104、前進用油路136または後進用油路138から前進油圧PD または後進油圧PR が供給される入力ポート106、調圧した油圧を前記油圧アクチュエータ34〜44に出力する出力ポート108、ドレーンポート110、出力油圧が供給されるフィードバック室112を備えている。そして、フィードバック室112に供給されるフィードバック油圧Pf、その受圧面積Af、スプリング104の荷重Fs、ソレノイド100による電磁力Fが、次式(1) を満足するように、その電磁力Fに応じて3つのポート106、108、110の連通状態が変化させられて出力油圧(フィードバック油圧Pf)が調圧制御され、前記油圧アクチュエータ34〜44に供給される。
F=Pf×Af+Fs ・・・(1)
F=Pf×Af+Fs ・・・(1)
上記リニアソレノイドバルブSL1〜SL6は、電子制御装置90から励磁電流が供給されることにより、上記(1) 式を満足するように釣り合う状態で出力油圧を調圧するが、励磁電流の供給が停止してソレノイド100の励磁がOFF(非励磁)になると、スプール弁子102は図5に示すようにスプリング荷重Fsによりソレノイド100側の移動端に保持され、入力ポート106が略完全に遮断されるとともに、出力ポート108がドレーンポート110に連通させられて出力油圧が0になり、クラッチCやブレーキBが解放される。
図3は、図1の自動変速機10などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図で、アクセルペダル50の操作量Accがアクセル操作量センサ52により検出されるとともに、そのアクセル操作量Accを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるもので、アクセル操作部材に相当し、アクセル操作量Accは出力要求量に相当する。また、エンジン30の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン30の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TA を検出するための吸入空気温度センサ62、エンジン30の電子スロットル弁の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ64、車速V(出力軸24の回転速度NOUT に対応)を検出するための車速センサ66、エンジン30の冷却水温TW を検出するための冷却水温センサ68、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72の操作ポジションPSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、シフトレバー72が「S」ポジションへ操作されたことを検出するためのSポジションセンサ75、タービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度NIN)を検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOIL を検出するためのAT油温センサ78、アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82などが設けられており、それらのセンサやスイッチから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA 、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW 、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72の操作ポジションPSH、「S」ポジションへの操作の有無、タービン回転速度NT、AT油温TOIL 、変速レンジのアップ指令RUP、ダウン指令RDN、などを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。
前記電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン30の出力制御や自動変速機10の変速制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。
上記電子制御装置90による自動変速機10の変速制御は、レバーポジションセンサ74によって検出されるシフトレバー72の操作ポジションPSH、およびSポジションセンサ75によって検出される「S」ポジションへのシフトレバー操作の有無に応じて変速制御を行う。レバーポジションセンサ74は、シフトレバー72によって機械的に直線移動させられるマニュアルバルブ118のスプール弁子の位置に応じて接続、遮断されるP接点、R接点、N接点、およびD接点を備えており、それ等の接点信号が電子制御装置90へ供給されることにより操作ポジションPSHが識別される。シフトレバー72は各操作ポジション「P」、「R」、「N」、「D」にばねなどで節度を持って位置決めされるようになっており、レバーポジションセンサ74は、そのシフトレバー72の各操作ポジション「P」、「R」、「N」、「D」を中心としてその両側に跨がって各接点の出力範囲が定められている。また、マニュアルバルブ118が前記後進油圧PR 、前進油圧PD を出力する油圧出力範囲は、図9に示すようにR接点信号の出力範囲、D接点信号の出力範囲よりもそれぞれ広く、R接点信号が供給される前に後進油圧PR が出力されるとともに、D接点信号が供給される前に前進油圧PD が出力される。なお、上記レバーポジションセンサ74に関しては、シフトレバー72が「S」ポジションへ操作された場合も「D」ポジションとして検出される。
そして、シフトレバー72が「D」ポジションへ移動操作されてD接点信号が供給されると、電子制御装置90は総ての前進ギヤ段を自動的に切り換えて走行するフルレンジ自動変速モードを成立させる。すなわち、前記リニアソレノイドバルブSL1〜SL6の励磁、非励磁を制御することにより、図1(b) に示すように総てのクラッチCおよびブレーキBの作動状態を変化させて、第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」の何れかの前進ギヤ段を成立させるのである。この変速制御は、例えば図7に示すように車速Vおよびアクセル操作量Accをパラメータとして予め記憶された変速マップ等の変速条件に従って行われ、車速Vが低くなったりアクセル操作量Accが大きくなったりするに従って変速比が大きい低速側の前進ギヤ段を成立させる。
また、シフトレバー72が「S」ポジションへ移動操作されて、前記Sポジションセンサ75からSポジション信号が供給されると、「D」ポジションで変速可能な変速範囲内すなわち第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」の中で定められた複数の変速レンジを任意に選択できるシーケンシャルモードを電気的に成立させる。「S」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「(+)」、およびダウンシフト位置「(−)」が設けられており、シフトレバー72がそれ等のアップシフト位置「(+)」またはダウンシフト位置「(−)」へ操作されると、そのことが前記アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82によって検出され、アップ指令RUPやダウン指令RDNに従って図8に示すように最高速段すなわち変速比が小さい高速側の変速範囲が異なる8つの変速レンジ「D」、「7」、「6」、「5」、「4」、「3」、「2」、「L」の何れかを電気的に成立させるとともに、各変速範囲内において例えば図7の変速マップに従って自動的に変速制御を行う。したがって、例えば下り坂などでシフトレバー72をダウンシフト位置「(−)」へ繰り返し操作すると、変速レンジが例えば「4」レンジから、「3」レンジ、「2」レンジ、「L」レンジへ切り換えられ、第4速前進ギヤ段「4th」から第3速前進ギヤ段「3rd」、第2速前進ギヤ段「2nd」、第1速前進ギヤ段「1st」へ順次ダウンシフトされて、エンジンブレーキが段階的に増大させられる。このシーケンシャルモードで成立させられる第1速前進ギヤ段「1st」は、エンジンブレーキ作用が得られるように前記第2ブレーキB2が係合させられる。
上記アップシフト位置「(+)」およびダウンシフト位置「(−)」は何れも不安定で、シフトレバー72はスプリング等の付勢手段により自動的に「S」ポジションへ戻されるとともに、アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82は何れも自動復帰型のスイッチで、それぞれスプリング等の付勢手段により自動的にOFF状態に復帰するようになっており、アップシフト位置「(+)」またはダウンシフト位置「(−)」への操作回数或いは保持時間などに応じて変速レンジが変更される。
図10は、このような電子制御装置90による自動変速機10の変速制御を説明するフローチャートで、本実施例では、レバーポジションセンサ74の断線などでシフトレバー72の操作ポジションPSHが識別不可の場合でも、シフトレバー72が「D」ポジションへ操作された場合には、第1クラッチC1および第4クラッチC4が係合して第4速前進ギヤ段「4th」が成立させられ、前進走行が可能とされる一方、シフトレバー72が「R」ポジションへ操作された場合には、第4クラッチC4および第2ブレーキB2が係合して後進ギヤ段「Rev」が成立させられ、後進走行が可能とされるようになっている。第1クラッチC1は前進ギヤ段を成立させる際に係合させられる第1摩擦係合装置で、第4クラッチC4は前進ギヤ段および後進ギヤ段を成立させる際に係合させられる第2摩擦係合装置で、第2ブレーキB2は、第2摩擦係合装置と共に係合させられることによって後進ギヤ段を成立させる第3摩擦係合装置であり、第1クラッチC1を係合、解放制御するリニアソレノイドバルブSL1は第1係合圧出力手段で、第4クラッチC4を係合、解放制御するリニアソレノイドバルブSL4は第2係合圧出力手段である。また、図10のステップS1、S2は、レバーポジションセンサ74と共に操作ポジションPSHを識別する識別手段を構成しており、ステップS6はフェール時制御手段に相当する。
図10のステップS1では、レバーポジションセンサ74から接点信号を読み込み、ステップS2では、その接点信号に基づいてシフトレバー72の操作ポジションPSHを識別する。すなわち、P接点信号が供給されれば「P」ポジションと判断し、R接点信号が供給されれば「R」ポジションと判断し、N接点信号が供給されれば「N」ポジションと判断し、D接点信号が供給されれば「D」ポジションと判断する。しかし、何れの接点信号も所定時間以上供給されない場合や、複数の接点信号が同時に供給された場合はフェールと判断し、次のステップS3のフェール判断はYES(肯定)なる。
そして、フェール判断が為された場合はステップS6を実行し、リニアソレノイドバルブSL1およびSL4についてはON、すなわち励磁して油圧出力状態とし、他のリニアソレノイドバルブSL2、SL3、SL5、およびSL6はOFF、すなわち非励磁としてドレーン状態とする。したがって、シフトレバー72が「D」ポジション(「S」ポジションでも同じ)へ操作されてマニュアルバルブ118から前進用油路136に前進油圧PD が供給されると、第1クラッチC1および第4クラッチC4が係合させられて第4速前進ギヤ段「4th」が成立させられ、前進駆動状態となる。また、シフトレバー72が「R」ポジションへ操作されて後進用油路138に後進油圧PR が供給されると、第4クラッチC4および第2ブレーキB2が係合させられて後進ギヤ段「Rev」が成立させられ、後進駆動状態となる。この時、リニアソレノイドバルブSL1もONで油圧出力状態であるが、前進用油路136内の作動油はマニュアルバルブ118からドレーンされるため、第1クラッチC1は解放される。シフトレバー72が「P」ポジションまたは「N」ポジションへ操作された場合は、前進用油路136および後進用油路138内の作動油は何れもドレーンされるため、リニアソレノイドバルブSL1およびSL4のONに拘らず、総てのクラッチCおよびブレーキBは解放されて、自動変速機10は動力伝達遮断状態になる。
一方、前記ステップS3の判断がNO(否定)の場合、すなわち接点信号に基づいてシフトレバー72の操作ポジションPSHを識別できた場合は、ステップS4で「D」ポジションか否かを判断し、「D」ポジションの場合はステップS5を実行するが、「D」ポジションでなければ前記ステップS6を実行する。すなわち、図9に示すように、「D」ポジションの場合には、例えば図7に示す変速マップに従って総てのリニアソレノイドバルブSL1〜SL6の励磁、非励磁を制御することにより、クラッチCおよびブレーキBの作動状態を変化させ、第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」の何れかの前進ギヤ段を成立させて前進走行する一方、「D」ポジション以外では、前記フェール時と同様にリニアソレノイドバルブSL1およびSL4はONで、他のリニアソレノイドバルブSL2、SL3、SL5、およびSL6はOFFとすることにより、「R」ポジションでは後進ギヤ段「Rev」を成立させ、「P」ポジションおよび「N」ポジションでは総てのクラッチCおよびブレーキBを解放して動力伝達遮断状態とする。
なお、「D」ポジションの場合に実行するステップS5では、Sポジションセンサ75からSポジション信号が供給されるとシーケンシャルモードに切り換え、所定の変速レンジを電気的に成立させて、その変速レンジの変速範囲内で変速制御を行う。
また、車両停止時にシフトレバー72が「N」ポジションから「D」ポジションへ移動操作されると、通常はステップS5において先ず第1速前進ギヤ段「1st」が成立させられるため、「N」ポジションにおいて油圧出力状態とされているリニアソレノイドバルブSL1およびSL4のうち、リニアソレノイドバルブSL4がドレーン状態とされるが、N→Dシフトの過程で前進油圧PD が供給されることにより、リニアソレノイドバルブSL4から油圧が出力されて第4クラッチC4の係合制御が開始される。すなわち、N→Dシフト時には、第4クラッチC4への油圧供給とドレーンとが連続して行われることになり、変速ショックを生じる可能性があるが、本実施例では「D」ポジションを識別しても、第1速前進ギヤ段「1st」に先立って第4速ギヤ段「4th」を一旦成立させ、その後に第1速前進ギヤ段「1st」へ切り換えるようになっている。これにより、第4クラッチC4の中途半端な係合によるショックが防止されるとともに、変速比が小さい第4速前進ギヤ段「4th」が先に成立させられることにより、前進駆動トルク(クリープトルク)が緩やかに増大させられるようになり、ガレージシフトのシフトショックが一層軽減される。すなわち、リニアソレノイドバルブSL4のON→OFF切換を所定時間遅らせるだけで、N→Dガレージシフト時のショックを軽減できるのである。
このように、本実施例の車両用自動変速機の油圧制御装置においては、ステップS2でシフトレバー72の操作ポジションPSHを識別できないときにはフェール状態と判断し、ステップS6を実行することにより、リニアソレノイドバルブSL1およびSL4を共に油圧出力状態にするとともに、他のリニアソレノイドバルブSL2、SL3、SL5、およびSL6をドレーン状態にするため、シフトレバー72が「D」ポジションへ操作されてマニュアルバルブ118から前進用油路136に前進油圧PD が供給されると、第1クラッチC1および第4クラッチC4が係合させられて第4速前進ギヤ段「4th」が成立させられ、前進走行が可能となる。また、シフトレバー72が「R」ポジションへ操作されて後進用油路138に後進油圧PR が供給されると、第4クラッチC4および第2ブレーキB2が係合させられて後進ギヤ段「Rev」が成立させられ、後進走行が可能となる。
なお、ステップS3でフェールか否かを判断するようになっているが、このステップS3を省略し、ステップS4で「D」ポジションか否かを判断する際に、操作ポジションPSHの識別不可を含めて「D」ポジション以外の場合にはステップS6を実行するようにしても良い。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両用自動変速機 72:シフトレバー 74:レバーポジションセンサ(識別手段) 90:電子制御装置 98:油圧制御回路 118:マニュアルバルブ 120:シャトルバルブ SL1:リニアソレノイドバルブ(第1係合圧出力手段) SL4:リニアソレノイドバルブ(第2係合圧出力手段) C1:第1クラッチ(第1摩擦係合装置) C4:第4クラッチ(第2摩擦係合装置)
ステップS1、S2:識別手段
ステップS6:フェール時制御手段
ステップS1、S2:識別手段
ステップS6:フェール時制御手段
Claims (2)
- 前進ギヤ段を成立させる際に係合させられる油圧式の第1摩擦係合装置と、
前記前進ギヤ段および後進ギヤ段を成立させる際に係合させられる油圧式の第2摩擦係合装置と、
シフトレバーが前進走行ポジションへ移動操作されると前進油圧を機械的に出力し、後進走行ポジションへ移動操作されると後進油圧を機械的に出力するマニュアルバルブと、
前記前進油圧を調圧して前記第1摩擦係合装置に出力する第1係合圧出力手段と、
前記前進油圧および前記後進油圧がシャトルバルブを介して選択的に供給されるとともに、それ等の油圧を調圧して前記第2摩擦係合装置に出力する第2係合圧出力手段と、
を含む油圧制御回路を備える車両用自動変速機の油圧制御装置において、
前記車両用自動変速機のフェール時には、前記第1係合圧出力手段および前記第2係合圧出力手段を何れも油圧出力側に制御するフェール時制御手段を設けた
ことを特徴とする車両用自動変速機の油圧制御装置。 - 前記シフトレバーの操作ポジションを識別する識別手段を有するとともに、
前記フェール時制御手段は、前記識別手段によって前記操作ポジションを識別できないときには、前記第1係合圧出力手段および前記第2係合圧出力手段を何れも油圧出力側に制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用自動変速機の油圧制御装置。
Priority Applications (1)
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JP2004347092A JP2006153211A (ja) | 2004-11-30 | 2004-11-30 | 車両用自動変速機の油圧制御装置 |
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
US9587738B2 (en) | 2014-11-20 | 2017-03-07 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Automatic shift control system |
KR101755196B1 (ko) | 2015-11-17 | 2017-07-07 | 현대 파워텍 주식회사 | N단 주행방지용 변속기 유압회로 |
-
2004
- 2004-11-30 JP JP2004347092A patent/JP2006153211A/ja active Pending
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