JP4975225B2 - 育毛剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なテストステロン5α−レダクターゼ(以下5α−レダクターゼと略す)阻害剤および育毛剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、男性型脱毛症の成因としては、(1)ホルモンのアンバランス説、(2)遺伝説、(3)血液循環不全説、(4)栄養説などが提唱されているが、毛の発生には男性ホルモンのテストステロンが重要な役割を演じていることは古くから示唆されている。すなわち、睾丸で生合成されたテストステロンは、頭部において毛包、皮脂腺などに存在する5α−レダクターゼによりジヒドロテストステロンに転換される。このジヒドロテストステロンは、アデニルサイクラーゼの活性を著しく低下させて細胞内サイクリックAMPレベルの低下をもたらせ、その結果、毛および毛の周辺のエネルギー産生の低下とタンパク合成の抑制を誘起することにより男性型脱毛症が進行するものと考えられている。
【0003】
また、テストステロンから5α−レダクターゼによって生成するジヒドロテストステロンは、アクネの発生や増悪、前立腺の肥大に関与するものと考えられている[Steroid Biochemistry,11,609(1979)]。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの疾患に対する有効な薬剤、特にジヒドロテストステロン生成抑制に基づく有効な薬剤は見出されておらず、その開発が望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記実情に鑑み、本発明者らは、男性型脱毛症、アクネの発生や増悪そして前立腺肥大などの原因となるジヒドロテストステロンの生成過剰を抑制する5α−レダクターゼ阻害剤を見出すべく鋭意研究を行った結果、長珠節などの抽出物がその目的に合致することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、長珠節、ペドラ・ウメ・カア、サラソウジュ、ネコノヒゲ、インドボダイジュ、サキシマスオウノキ、ビンロウ、サングレ・デ・グラド、ハスから得られた抽出物を有効成分とする5α−レダクターゼ阻害剤および育毛剤に関するものである。
【0007】
本発明で用いられる長珠節(学名:Parameria laevigata(Juss.)Moldenke)は、キョウチクトウ科の双子葉植物であり、インドから中国南部、西マレーシアに分布している。ペドラ・ウメ・カア(学名:Myrcia multiflora(Lam.)DC.)は、フトモモ科であり、ブラジル、ギアナ、ペルー、パラグアイに分布する高さ4〜10メートルの亜高木である。サラソウジュ(学名:Shorea robusta Gaertn.f.)は、フタバガキ科の高木であり、おもにインド、ネパールに分布している。ネコノヒゲ(学名:Orthosiphon staminus Benth.)は、東南アジアに分布するシソ科の多年草であり、園芸的にも栽培されている。インドボダイジュ(学名:Ficus religiosa L.)は、クワ科の常緑巨木であり、おもにインドやセイロンに分布し、サンスクリット語ではアシュバッタまたはピッパラと呼ばれている。サキシマスオウノキ(学名:Helicteres isora L.)は、アオギリ科の樹木であり、奄美大島以南の熱帯に広く分布し、八重山諸島では、壮大な樹姿から大名木と呼ばれている。ビンロウ(学名:Areca catechu L.)は、ヤシ科の樹木であり、熱帯アジアに広く栽培され、インドネシアではピナングとも呼ばれている。サングレ・デ・グラド(学名:Croton lechleri)は、トウダイグサ科の樹木で南米を中心に熱帯地域に分布している。ハス(学名:Nelumbo nucifera Gaertner)は、スイレン科の植物でありアジアからオーストラリアにかけて広く分布する。
【0008】
本発明で使用する植物抽出物とは、葉、茎、樹皮、花、実、根、雄しべなどの植物体の1部、全草または樹液などから抽出したものである。好ましくは、長珠節では樹皮、ペドラ・ウメ・カアでは葉、サラソウジュでは樹皮、ネコノヒゲでは葉、インドボダイジュでは樹皮、サキシマスオウノキでは果実、ビンロウでは種子、サングレ・デ・グラドでは樹液、ハスでは雄しべから抽出されたものがよい。その調製方法は特に限定されず、例えば加熱抽出したものであってもよいし、常温抽出されたものであってもよい。
【0009】
抽出する溶媒としては、例えば、水、低級1価アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなど)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィンなど)、エーテル類(エチルエーテル、プロピルエーテルなど)が挙げられる。好ましくは、水、低級1価アルコールおよび液状多価アルコールがよく、特に好ましくは、水、エタノール、1,3−ブチレングリコールおよびプロピレングリコールがよい。また二酸化炭素などを用いた超臨界抽出も用いることができる。これらの溶媒は1種でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0010】
これらの抽出物は、抽出した溶媒のまま用いてもよく、必要に応じて、濃縮、希釈、ろ過などの処理をして用いてもよい。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥などの処理を行い、乾燥物として用いてもよい。
【0011】
本発明に関わる抽出物は、5α−レダクターゼ 阻害作用を有するので哺乳動物、特にヒトにおける5α−レダクターゼによるジヒドロテストステロンの産生過剰に起因する疾患の治療や予防に有用である。そのような疾患としては、例えば、男性型脱毛症をはじめとする脱毛症、アクネおよび前立腺肥大症が挙げられる。
【0012】
本発明に関わる抽出物を上記の目的で用いるには、通常全身的または局所的に、経口または経皮で投与される。投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間などにより異なるが、前立腺肥大症の治療や予防の場合は、通常成人1人当たり1回に1mg〜1g、好ましくは20mg〜200mgの範囲で1日1回から数回経口投与される。脱毛症およびアクネの治療や予防の場合は、通常成人1人当たり1回に10μg〜50mg、好ましくは100μg〜5mgの範囲で1日1回から数回経皮投与される。もちろん前記したように、投与量は種々の条件で変動するので、上記投与範囲より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【0013】
本発明による経口投与のための固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが挙げられる。このような固形製剤については、前記有効成分としての抽出物以外に、例えば、乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどの不活性な希釈剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、繊維素グルコン酸カルシウムのような崩壊剤を含有してもよい。錠剤または丸剤は、必要により、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタレートなどの胃溶剤あるいは腸溶性物質のフィルムで皮膜してもよい。
【0014】
経口投与のための液状製剤としては、乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤などが挙げられる。このような液状製剤には、有効成分および不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤などを含有してもよい。経口投与のための他の製剤としてはスプレー剤などが挙げられる。
【0015】
本発明における経皮投与のための代表的な製剤としては、クリーム、乳液、ローション、ヘアトニック、スプレー、パック、溶液剤、軟膏、乳剤、懸濁剤のような塗布剤、直腸内投与のための坐剤、膣内投与のためのペッサリーなどが挙げられる。特に、脱毛症の治療・予防用の製剤としてはローション、ヘアトニック、スプレー、溶液剤が好ましい。これらの製剤には、有効成分以外に、水、エタノールのような低級アルコール、セタノールのような高級アルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールのような多価アルコール、ヒドロキシプロピルセルロースのようなセルロース類、動物性および植物性の油脂およびロウ、ワセリンのような炭化水素、シリコン、界面活性剤、酸化亜鉛などを配合することができる。
【0016】
【実施例】
次に、本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、本発明の処方例および実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量の部とは重量部を、%とは重量%を示す。
【0017】
表1に各抽出物の製造例(熱水抽出およびエタノール抽出)をまとめて示した。
【0018】
【表1】
【0019】
ここで、例えば製造例1の長珠節の熱水抽出物とは、乾燥した長珠節の樹皮100gを粉砕し、2Lの水を加えた後に95〜100℃で2時間抽出し、ろ過して得られた抽出液を凍結乾燥して長珠節熱水抽出物を18.2g得たことを示す。また、製造例2の長珠節のエタノール抽出物とは、乾燥した長珠節の樹皮100gを粉砕し、エタノール1Lを加え、常温で7日間抽出した後、ろ過し、そのろ液を濃縮乾固して、長珠節エタノール抽出物を15.0g得たことを示す。
【0020】
製造例19
サキシマスオウノキ1,3−ブチレングリコール抽出物
サキシマスオウノキの果実を細かく切断し、その100gに精製水500mL及び1,3−ブチレングリコール500mLを加え、室温で2日間抽出した。抽出後、ろ過してサキシマスオウノキ1,3−ブチレングリコール抽出物940gを得た。
【0021】
製造例20
ビンロウ1,3−ブチレングリコール抽出物
ビンロウの種子を 製造例19と同様の方法で抽出し、ビンロウ1,3−ブチレングリコール抽出物950gを得た。
【0022】
実施例1 ローション
処方 配合量
1.長珠節のエタノール抽出物(製造例2) 0.1部
2.1,3−ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜6および11と、成分7〜10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合しろ過して製品とする。
【0023】
比較例1 従来のローション
実施例1において長珠節のエタノール抽出物を精製水に置き換えたものを従来のローションとした。
【0024】
実施例2 クリーム
処方 配合量
1.ペドラ・ウメ・カア熱水抽出物(製造例3) 0.05部
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.1,3−ブチレングリコール 8.5
12.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1および11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0025】
実施例3 錠剤
サラソウジュ熱水抽出物(製造例5)1g、繊維素グルコン酸カルシウム(崩壊剤)200mg、ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤)100mgおよび結晶セルロース8.7gを常法により混合して打錠して、1錠中に抽出物10mgを含有する錠剤100錠を得た。
【0026】
実施例4 乳液
処方 配合量
1.ネコノヒゲのエタノール抽出物(製造例8) 0.5部
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(20E.O.) 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1および10〜13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0027】
実施例5 乳液2
実施例4において、ネコノヒゲのエタノール抽出物をインドボダイジュのエタノール抽出物(製造例10)に置き換えたものを乳液2とした。
【0028】
実施例6 ヘアトニック
処方 配合量
1.エタノール 60.0部
2.サキシマスオウノキの1,3−ブチレングリコール抽出物 2.0
(製造例19)
3.グリセリン 2.0
4.精製水にて全量を100とする
[製造方法]サキシマスオウノキの1,3−ブチレングリコール抽出物をエタノールに溶解し、グリセリン、精製水を加え、十分攪拌混合し、ヘアトニックとする。
【0029】
実施例7 パック
処方 配合量
1.長珠節の熱水抽出物(製造例1) 0.1部
2.サングレ・デ・グラド樹液熱水抽出物(製造例15) 0.1
3.ポリビニルアルコール 12.0
4.エタノール 5.0
5.1,3−ブチレングリコール 8.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
7.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 0.5
8.クエン酸 0.1
9.クエン酸ナトリウム 0.3
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜11を均一に溶解し製品とする。
【0030】
【発明の効果】
次に本発明の効果を詳細に説明するため、実験例を挙げる。
【0031】
実験例1 5α−レダクターゼに対する阻害作用
SD系雄ラット(生後7週)の肝臓から抽出した5α−レダクターゼを用い、下記の反応系における条件で測定した。
【0032】
(反応条件)テストステロン(0.6μM)をプロピレングリコール10滴で溶解した後、Tris-HCl緩衝液(pH7.2)5mlを加え、次いで、NADPHを5mg、5α−レダクターゼ溶液2mlを順に加え、37℃にて30分間反応する。反応後、塩化メチレンを加えて反応を停止した後、全量50mlの塩化メチレンで抽出する。次いで、塩化メチレン層を減圧下で留去し、ガスクロマトグラフィーにて反応量を測定する。なお、本発明に関わる抽出物の反応系への添加は、テストステロンの滴下の次に行う。(ガスクロマトグラフィーの条件:カラム OV−17(3mmφ,2m);カラム温度 250℃;検出器;FID)
【0033】
阻害率:抽出物を添加しない場合の反応率(対照)を100%(阻害率0%)と見なし、抽出物を加えた際の反応率の減少を算出して阻害率を求める。算式は次の通りである。なお、ジヒドロテストステロンは、更に代謝されてアンドロスタンジオールを生成するため、5α−レダクターゼ代謝物のピーク面積(量)にはアンドロスタンジオールも含めて計算した。
阻害率=(b/a−b’/a’)/(b/a)×100
a:対照(テストステロンのピーク面積)
b:対照(ジヒドロテストステロンおよびアンドロスタンジオールのピーク面積)
a’:テストステロンのピーク面積(抽出物添加)
b’:ジヒドロテストステロンおよびアンドロスタンジオールのピーク面積(抽出物添加)
【0034】
これらの結果をまとめて表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
エタノール抽出物および1,3−ブチレングリコール抽出物についても、同様に、5α−レダクターゼ阻害活性が見られた。
【0037】
実験例2 発毛効果
服部らの方法[J.Dermatology,10,45−54(1983)]により、生後45日のC3Hマウス背部毛をバリカンで刈り取り、この部分を2つに区切り、一方に実施例1のローション1mlを、他方に本発明に関わる抽出物を含まない従来のローション(比較例1)を1日1回塗布した。各部位の全体に発毛が認められるまでに要した日数で比較した。その結果、本発明に関わる抽出物を含まないローション剤の発毛が認められるまでの期間と比較して、実施例1のローションではその期間が短縮された。またその他の抽出物においても同様の効果が認められた。
【0038】
実験例3
毒性試験
各抽出物は、マウスを用いて経口投与による急性毒性試験を行ったところ、2g/kgを投与しても死亡例は認められなかった。
Claims (1)
- ペドラ・ウメ・カアの抽出物を含有することを特徴とするテストステロン5α−レダクターゼ阻害剤。
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