JP4972828B2 - 熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱可塑性ポリエステルエラストマーに関する。更に詳しくは低温での柔軟性と耐熱性を兼備した熱可塑性ポリエステルエラストマー、特に自動車外装部品(ギア、ブーツ、エンブレム、ベルト、チューブなど)、工業用品(パッキン、シートなど)の成形材料に適した新規な熱可塑性ポリエステルエラストマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、従来よりポリブチレンテレフタレート(PBT)単位をハードセグメント、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)をソフトセグメントとするポリエーテルエステルエラストマー(特公昭49−48195,同49−31558号公報)、PBT単位をハードセグメント、ポリカプロラクトン(PCL)単位をソフトセグメントとするポリエステルエステルエラストマー(特公昭48−4116号公報、特開昭59−12926号公報、特開昭59−15117号公報)、及びPBT単位をハードセグメント、二量体脂肪酸をソフトセグメントとするポリエステルエステルエラストマー(特開昭54−127955号公報)等が知られ、実用化されている。
また、表面硬度70A以下となるような柔軟な熱可塑性ポリエステルエラストマーを得るためには可塑剤や他の柔軟なオレフィンエラストマー等を混合することが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のエラストマーは低温領域ではゴム特性が低下するため、室温におけるような柔軟性を保つことができないといった問題があった。また、可塑剤やオレフィンエラストマーを混合するような場合には、見かけ上の柔軟性は得られるものの弾性率が安定しないものとなる。特に可塑剤を混合したような場合には、成形時に可塑剤が金型を汚染することも問題となっている。本発明では、この欠点を解消し、ゴム弾性による適用範囲を広げ、低温特性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマーを提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリエステルエラストマーにおいて、特定のハードセグメントと特定のソフトセグメントを用いることで、上記の課題が解決されることを見いだし、本発明に到達した。
【0005】
すなわち本発明は、以下に示す条件を満たす熱可塑性ポリエステルエラストマーである。
1.熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂、および酸化防止剤、光安定剤または滑剤の内少なくとも一種以上の添加剤を含有する熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物中、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂が85重量%以上から構成され、JIS K6253に基づいて測定した表面硬度が70Aより柔軟なことを特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物。
2.ASTM D638に基づいて測定した50%伸長応力の相対比α(−30℃における50%伸長応力/23℃における50%伸長応力)が1<α≦4.0であることを特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物は熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂が85重量%以上から構成され、JIS K6253に基づいて測定した表面硬度が70Aより柔軟なこと(70A以下)を特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物である。
【0007】
表面硬度は好ましく68A以下、さらに好ましくは67A以下、特に好ましくは66A以下、最も好ましくは65A以下である。表面硬度の下限は特に定めるものではないが、成形材等の現実的な特性としては40A以上、さらには50A以上、よりさらには55A以上、特には58A以上であることが好ましい。また、熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物は熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂が好ましくは87重量%以上、より好ましくは88重量%以上、特に好ましくは89重量%以上、最も好ましくは90重量%以上から構成される。また、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂の含有量の上限は99.99重量%であることが好ましく、より好ましくは99.9重量%、さらに好ましくは99.7重量%である。熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂の含有量が99.99重量%を越える場合は、安定剤類が十分働かずに耐光性、耐熱性等に劣る場合がある。
なお、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂とは、各種添加剤を添加しないポリエステル成分(触媒は含む)のみを表す。
【0008】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物は、非常に柔軟でありながら可塑剤等の添加剤の含有量が少なく、成型の際の金型を汚すことが少ない。そのため、金型デポが生じにくく、連続成形時にも金型洗浄に時間をとられることがなくなる。
【0009】
さらには、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物は、ASTM D638に基づいて測定した50%伸長応力の相対比α(−30℃における50%伸長応力/23℃における50%伸長応力)が1<α≦4.0である。
αの上限としては好ましくは3.5、さらに好ましくは3.0、特に好ましくは2.7、最も好ましくは2.5である。αの下限としては、1に近ければ近いほど好ましいが、現実的には1.1程度、さらには1.2程度であることが好ましい。
【0010】
50%伸長応力の相対比αを上記範囲とすることにより、零度以下の低温−室温で柔軟特性が変わり、従来ソフトセグメントを多くした柔軟性の高いポリエステルに見られた、−10〜−30での極低温で柔軟性に劣り、極低温環境下での柔軟性が必要とされる使用に用いられにくいといった問題を解決することが出来る。
【0011】
さらには、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物は23℃で24時間水中に浸漬した際の水分率含有率が25重量%以下であることが好ましい。水分率含有率はより好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは10重量%、最も好ましくは7重量%以下である。吸水率は少ないほど好ましいが、現実的には0.005重量%以上であることが好ましい。
水分含有率が25重量%を越えると、成型品が吸湿により変形や膨張する、他の素材と積層した場合に吸湿や水濡れにより剥離強度が低下するといった問題が生じる場合がある。
【0012】
加えて、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物は、JIS Z0209の塩化カルシウム法で40℃90%RH条件により、厚さ10μmのフィルムを測定した際の透湿度が3000g/m2・day以上であることが好ましい。
【0013】
本発明の樹脂組成物を厚さ10μmのフィルムを測定した際のフィルムの透湿度は、より好ましくは4000g/m2・day、さらに好ましくは4500g/m2・day、特に好ましくは4800g/m2・day、最も好ましくは5000g/m2・dayである。透湿度の上限は大きいほど好ましいが、現実的には100000g/m2・dayであることが好ましい。
【0014】
また、厚さ20μmのフィルムを測定した際でもフィルムの透湿度は、透湿度が3000g/m2・day以上であることが好ましく、より好ましくは4000g/m2・day、さらに好ましくは4500g/m2・day、特に好ましくは4800g/m2・day、最も好ましくは5000g/m2・dayである。
【0015】
さらには、厚さ30μmのフィルムを測定した際でもフィルムの透湿度は、透湿度が3000g/m2・day以上であることが好ましく、より好ましくは4000g/m2・day、さらに好ましくは4500g/m2・day、特に好ましくは4800g/m2・day、最も好ましくは5000g/m2・dayである。
【0016】
透湿度を上記範囲にすることにより、高い透湿性と柔軟性を両立させ、柔軟性透湿膜としても好適に用いることが出来る。
【0017】
以下に本発明の特性を達成する熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物について詳細に説明する。
本発明で用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂において、酸成分は、芳香族ジカルボン酸を主体とする。芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸より選ばれる一種もしくは二種以上の組み合わせを用いることが好ましく、これらの中、より好ましくはテレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸である。芳香族ジカルボン酸は全酸成分の70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。
【0018】
その他の酸成分としては、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が用いられ、脂環族ジカルボン酸としてはシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などが挙げられる。これらは樹脂の融点を大きく低下させない範囲で用いられ、その量は全酸成分の30モル%未満、好ましくは20モル%未満、より好ましくは10モル%未満である。
【0019】
本発明で用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂におけるソフトセグメントは、炭素数2〜10の異なる2種以上のアルキレン単位のランダムな繰り返しからなる、分子量が2200〜3800のランダム共重合ポリエーテルグリコールであることが好ましい。
【0020】
この中でも分子量は、より好ましくは2400以上、さらに好ましくは2600以上、特に好ましくは2700以上であり、より好ましくは3600以下、さらに好ましくは3400以下、特に好ましくは3300以下である。
【0021】
通常、熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物において、柔軟性を高めようとする際には、滑剤を多く入れる、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂のソフトセグメント量を多くする、等の方策が採られる。本発明の様に、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂を85%以上含有させて高い柔軟性を持たせようとする際には、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂のソフトセグメント量を多くして柔軟性を上げる。
【0022】
しかし、柔軟性を高めようとするあまり、ソフトセグメント量を多くしすぎるとポリエステルエラストマー樹脂が結晶性を保てなくなり成形性に劣る場合がある。即ち、十分な柔軟性と成型性の両立が重要である。結晶性を確保したまま、ソフトセグメントの量を上げるためにはソフトセグメントの分子量を大きくすることが考えられるが、通常、ソフトセグメントの分子量を大きくすると重合時に相分離し、満足いく分子量の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂が得られ難い。一例として、特定の分子量を持つランダム共重合ポリエーテルグリコールを用いることでこれらの諸問題を解決した高い柔軟性を持つ熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を得ることが出来る。
【0023】
ランダム共重合ポリエーテルグリコールの分子量が2200未満である場合、ポリエステルエラストマー樹脂が90重量%以上の場合に十分な柔軟性と成型性の両立が得られないことがある。
また、ランダム共重合ポリエーテルグリコールの分子量が3800を越える場合は製造時にポリエーテルグリコールと他の原料が相分離し、満足いく分子量のポリエステルエラストマー樹脂が得られないことがある。
また、ランダム共重合ポリエーテルグリコールを用いることにより、零下の低温から室温さらには80℃を越える高温域まで幅広い範囲で、柔軟性や強度−伸度特性の変化の少ない、温度依存性の低いエラストマーが得られる。
【0024】
ランダム共重合ポリエーテルグリコールの成分としては、-OCH2CH2-(以下EO成分と略すときがある)、-OCH2CH2CH2-、-OCH2CH2CH2CH2-(以下THF成分と略すときがある)、-OCH2CH(CH3)-(以下PO成分と略すときがある)、-OCH2C(CH3)2CH2-、などが挙げられる。
【0025】
さらには、ランダム共重合ポリエーテルグリコールとすることにより、ランダム共重合ポリエーテルグリコールの成分としてEO成分を用いても吸水率の低いエラストマー組成物が得られる。なお、ランダム共重合ポリエーテルグリコールに用いられる成分のうち、EO成分は80モル%以下であることが好ましく、さらに好ましくは70モル%以下、特に好ましくは65モル%以下である。また、EO成分は含有されてなくても良い。EO成分は80モル%を越えると吸水性が高くなり、用途によっては好ましくない場合がある。
【0026】
上記ランダム共重合グリコールの両末端は、実質的に全てがEO成分由来の水酸基であることが望ましい。この条件を満たすランダム共重合グリコールとして、たとえばTHFとEOのランダム共重合体であるDC−3000(日本油脂(株)製、分子量3000、THF/EO=50/50(mol比))などが挙げられる。末端がTHF成分由来の水酸基である場合、THF成分のみからなるポリ(オキシテトラメチレン)グリコールはいうまでもなく、ランダム共重合グリコールにおいても末端の閉環反応によりTHFが生成し、副生成物の発生及び臭気の点から好ましくない。
【0027】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂は前述のランダム共重合ポリエーテルグリコールのポリエーテルグリコール成分を含むことが好ましいが、熱可塑性ポリエステルエラストマーの全ポリエーテルグリコール成分の全重量中に4級炭素を持つアルキレン単位が10重量%未満であることが好ましく、より好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満、最も好ましくはポリエーテルグリコール成分中に4級炭素を持たないことである。4級炭素を持つポリエステルエラストマーは、過酷な条件での使用中に劣化する恐れがある。なお、ポリエーテルグリコール成分の重量中の4級炭素を持つアルキレン単位の重量はポリエーテルグリコールの製造原料であるアルキレンオキサイド単位を基に算出する。
【0028】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂において、ランダム共重合ポリエーテルグリコール以外のソフトセグメント成分を共重合させても良い。共重合ポリエーテルグリコール以外のソフトセグメント成分としては、分子量400〜6000のポリ(エチレンオキサイド)グリコール、ポリ(プロピレンオキサイド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール及びこれらの混合物さらにこれらのポリエーテルグリコール構成成分を共重合したブロックやランダムの共重合ポリエーテルグリコール、また炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10の脂肪族グリコールから製造されるポリエステル、例えばポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリネオペンチルセバゲート、ポリテトラメチレンドデカネート、ポリテトラメチレンアゼレート、ポリヘキサメチレンアゼレート、ポリ−ε−カプロラクトンなどである。これらのグリコールは各種特性のバランスにより適切な組み合わせで用いられる。
【0029】
なお、ランダム共重合ポリエーテルグリコールは全ソフトセグメント成分中好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。50重量%未満の場合は、柔軟性と成型性のバランスがとれない場合がある。
【0030】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーに用いられるソフトセグメントの含有量は、ランダム共重合ポリエーテルグリコールおよびランダム共重合ポリエーテルグリコール以外のソフトセグメント成分を合計して全ポリマー中70〜95重量%が好ましい。より好ましい下限は75重量%、さらに好ましい下限は78重量%、特に好ましい下限は80重量%である。より好ましい上限は90重量%、さらに好ましい上限は87重量%、特に好ましい上限は85重量%である。
ソフトセグメント含有量が70重量%未満では、本願範囲の表面硬度が達成できない場合があったり、透湿性が低下することがある。また95重量%を越えると得られるエラストマーのブロック性が低下するため、ポリマーの融点や軟化点が低下する場合がある。
【0031】
本発明で使用するポリエステルエラストマーにおける短鎖グリコール成分としては、炭素数が1〜25のグリコール及びそのエステル形成性誘導体を用いることができる。炭素数が1〜25のグリコールとは、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールペンタン、トリシクロデカンジメタノール、ビスフェノールXのエチレンオキサイド誘導体(XはA,S,F)及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。特に好ましくは1,4−ブタンジオールである。
【0032】
本発明で使用するポリエステルエラストマーにおいては、少量に限って三官能以上のポリカルボン酸やポリオール成分を含むこともできる。例えば無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、無水ピロメリット酸などを3モル%以下使用できる。三官能以上のポリカルボン酸やポリオール成分は合計量で、ポリエステルの全ポリカルボン酸成分およびポリオール成分の合計を100モル%とすると5モル%以下、好ましくは3モル%以下である。
【0033】
本発明で使用するポリエステルエラストマーにおいて、還元粘度は1.0〜4.0であることが望ましい。還元粘度が1.0以下の場合は機械特性に劣ることがある、4.0を越えると流動性が悪いため成形性に劣ることがある、成形材料としての使用範囲が限られてくる。
還元粘度のより好ましい下限は1.5、さらに好ましい下限は2.0、特に好ましい下限は2.3、特に好ましい下限は2.5であり、還元粘度のより好ましい上限は3.7、さらに好ましい上限は3.4、特に好ましい上限は3.2、特に好ましい上限は3.0である。
【0034】
本発明で使用するポリエステルエラストマーの製造には、公知の任意の方法が適用できる。例えば、溶融重合法、溶液重合法、固相重合法などいずれも適宜用いられる。溶融重合法の場合、エステル交換法でも直接重合法であってもよい。樹脂の粘度を向上させるため、溶融重合後に固相重合を行うことはもちろん望ましいことである。また、ポリエステルの重合後、イソシアネート化合物やエポキシ化合物等で鎖延長してもよい。
【0035】
反応に用いる触媒としては、アンチモン触媒、ゲルマニウム触媒、チタン触媒が良好である。特にチタン触媒、詳しくはテトラブチルチタネート、テトラメチルチタネートなどのテトラアルキルチタネート、シュウ酸チタンカリなどのシュウ酸金属塩などが好ましい。またその他の触媒としては公知の触媒であれば特に限定はしないが、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジラウリレートなどのスズ化合物、酢酸鉛などの鉛化合物が挙げられる。
【0036】
また得られたポリエステルエラストマーには公知のヒンダードフェノール系、硫黄系、燐系、などの酸化防止剤、ヒンダートアミン系、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ニッケル系、サリチル系などの光安定剤、帯電防止剤、滑剤、過酸化物などの分子調整剤、金属不活性剤、有機及び無機系の核剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、ガラス繊維、カーボン繊維シリカ繊維、アルミナ繊維などの無機質繊維状物質、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如きケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸バリウムの如き金属の炭酸塩、その他の各種金属粉などの紛粒状充填剤、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属粉末などの板状充填剤、難燃剤、難燃助剤、有機・無機の顔料などを一種類以上添加することができる。
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物は、これら添加剤のうち、酸化防止剤、光安定剤または滑剤の少なくとも一種以上を必須成分として含むものである。
【0037】
本発明において配合できるヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−トルエン、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6’−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、カルシウム(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−モノエチル−フォスフェート)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ビス〔3,3−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)酪酸〕グリコールエステル、トリフェノール、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン、2,2’−オキサミドビス〔エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,1,3−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミックアヒドトリエステルウイズ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナアミド)、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンなどを挙げることができる。
【0038】
本発明において配合できる硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジウロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジラウリルチオジプロピオネート、ジオクタデシルサルファイド、ペンタエリストリール−テトラ(β−ラウリル−チオプロピオネート)エステル等を挙げることができる。
【0039】
本発明において配合できる燐系酸化防止剤としては、トリス(ミックスド、モノ及びジノリルフェニル)フォスファイト、トリス(2,3−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)フォスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルフォスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンフォスファナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストール−ジ−フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスフォナイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、トリドデシルトリチオホスファイト等を挙げることができる。
【0040】
本発明において配合できるアミン系酸化防止剤としては、N,N−ジフェニルエチレンジアミン、N,N−ジフェニルアセトアミジン、N,N−ジフェニルフルムアミジン、N−フェニルピペリジン、ジベンジルエチレンジアミン、トリエタノールアミン、フェノチアジン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン、P,P’−ジオクチル−ジフェニルアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチル−ペンチル)−p−フェニレンジアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β− ナフチルアミン、4,4’−ビス(4−α,α−ジメチル−ベンジル)ジフェニルアミン等のアミン類及びその誘導体やアミンとアルデヒドの反応生成物、アミンとケトンの反応生成物から挙げることができる。
【0041】
本発明において配合できるヒンダードアミン系光安定剤としては、琥珀酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミル〕〕、2−n−ブチルマロン酸のビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)エステル、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2−ジブロモエタンとの重縮合物、ポリ〔(N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン)−(4−モノホリノ−1,3,5−トリアジン−2,6−ジイル)−ビス(3,3,5,5−テトラミチルピペラジノン)〕、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ドデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−ドデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,6,11−トリス〔{4,6−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ}ウンデカン、1−〔2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトロメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物などを挙げることができる。
【0042】
本発明において配合できるベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアゾール系、ニッケル系、サリチル系光安定剤としては、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’、5’−ビス(α,α−ジメチルベンジルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンアゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾチリアゾール、2,5−ビス−〔5’−t−ブチルベンゾキサゾリル−(2)〕−チオフェン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル燐酸モノエチルエステル)ニッケル塩、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキサリックアシッド−ビス−アニリド85〜90%と2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチル−4’−t−ブチルオキサリックアシッド−ビス−アニリド10〜15%の混合物、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−エトキシ−2’−エチルオキサザリックアシッドビスアニリド、2−〔2’−ヒドロオキシ−5’−メチル−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミド−メチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−i−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシルオキシベンゾフェノン、サリチル酸フェニル等の光安定剤を挙げることができる。
【0043】
本発明において配合できる滑剤として炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石鹸系、天然ワックス系、シリコーン系、フッ素系化合物が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、合成パラフィン、合成硬質パラフィン、合成イソパラフィン石油炭化水素、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレン、フルオロカルボン油、炭素数12以上のラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸化合物、ヘキシルアミド、オクチルアミド、ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、エルシルアミド、エチレンビスステアリルアミド、ラウリルアミド、ベヘニルアミド、メチレンビスステアリルアミド、リシノールアミド等の炭素数3〜30の飽和或いは不飽和脂肪族アミド及びその誘導体、脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸のポリグリコールエステル、脂肪酸の脂肪アルコールエステルであるブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、分子量200ないし10000以上のポリエチレングリコール、ポリグリセロール、カルナウバロウ、カンデリラロウ、モンタンロウ、ジメチルシリコーン、シリコンガム、四フッ化エチレンなどの滑剤が挙げられる。
また、直鎖飽和脂肪酸、側鎖酸、シノール酸を有する化合物からなる金属塩で金属が(Li,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,Al,Sn,Pb)から選ばれた金属石鹸も挙げることができる。
なお、滑剤の含有量は、熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物中、14重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは7重量%以下、特に好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。なお、滑剤は含有されていなくても良い。
【0044】
本発明において配合できる充填剤としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化カルシウム、酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型)、酸化クロム(三価)、酸化鉄、酸化亜鉛、シリカ、珪藻土、アルミナ繊維、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、酸化ベリリウム、軽石、軽石バルーン等の酸化物や水酸化マウネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム等の塩基性物又は水酸化物又は、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウウム、炭酸バリウム、炭酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、ドロマイト、ドーソナイト等の炭酸塩又は、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、塩基性硫酸マグネシウム等の(亜)硫酸塩又は、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、モンモリナイト、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ペントナイト等の珪酸塩又は、カオリン(陶土)、パーライト、鉄粉、銅粉、鉛粉、アルミニウム粉、タングステン粉、硫化モリブデン、カーボンブラック、ボロン繊維、炭化珪素繊維、黄銅繊維、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、硼酸亜鉛、硼酸アルミニウム、メタ硼酸バリウム、硼酸カルシウム、硼酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0045】
本発明で配合できるエポキシ基を有する化合物としては、ソルビオール−ポリグリシジル−エーテル、ポリグリセロール−ポリグリシジル−エーテル、トリグリシジル−トリス(2−ハイドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリエポキシ化合物、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロオフタル酸ジグリシジルエステル、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合物、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンの縮合物、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンの縮合物等のジエポキシ化合物、高級アルコールグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル等のモノエポキシ化合物等が挙げられる。
【0046】
本発明で配合できるハロゲン置換されたフェニル基を有する化合物としては、テトラブロムビスフェノールA(TBA)、テトラブロムビスフェノールS(TBS)、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールAエーテル、TBAエポキシ、TBAエチルエーテルオリゴマー、TBAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、TBA(アリルエーテル)、TBAビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)、TBAカーボネートオリゴマー、TBSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、ヘキサブロモベンゼン、テトラブロモ無水フタル酸、デカブロモジフェニンオキサイド、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、ブロム化フェノキシ、エチレンビス(テトラブロモフタル)イミド、臭素化ジフェニルオキサイド、ブロム化ポリスチレン等が挙げられる。
【0047】
本発明で配合できる難燃助剤としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ピロアンチモン酸ソーダ、二酸化錫、メタ硼酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、赤燐系化合物、ポリリン酸アンモニウム塩、メラミンシアヌレート、四フッ化エチレン等が挙げられる。
【0048】
本発明で配合できるトリアジン基を有する化合物及び/又はその誘導体としては、メラミン、メラミンシアヌレート、燐酸メラメン、スルファミン酸グアニジン等が挙げられる。
【0049】
本発明で配合できる燐化合物の無機系燐化合物としては、赤燐系化合物、ポリリン酸アンモニウム塩等が挙げられる。赤燐系化合物としては、赤燐に樹脂をコートしたもの、アルミニウムとの複合化合物等が挙げられる。有機系燐化合物としては、燐酸エステル、燐酸メラミン等が挙げられる。燐酸エステルとしては、ホスフェート類、ホスホネート類、ホスフィネート類のトリメチルホスフェート、トリエチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリオクチルホスフェート、トリオクチルフォスフィート、トリブトキシエチルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリス・イソプロピルフェニルフォスフェート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネート、ビス(1,3−フェニレンジフェニル)フォスフェート、芳香族縮合燐酸エステルの1,3−〔ビス(2,6−ジメチルフェノキシ)ホスフェニルオキシ〕ベンゼン、1,4−〔ビス(2,6−ジメチルフェノキシ)ホスフェニルオキシ〕ベンゼン等が耐加水分解や熱安定性、難燃性から好ましい。
【0050】
これらの添加物の配合方法としては、加熱ロール、押出機、バンバリミキサー等の混練機を用いて配合することができる。また、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を製造する際のエステル交換反応の前又は重縮合反応前のオリゴマー中に、添加及び混合することができる。
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物は、その高い柔軟性、ブルーミングの少なさ、さらには低温での特性変化の少なさや低吸水性を活かして、ブーツ、エンブレム、ベルト、チューブ、パッキン、シートなどの成形材料としたり、シートやフィルム状に加工し透湿膜として用いることができる。また、低温から常温までの一定の特性を持つことから、ゴルフボール、ソフトボール、ゲートボール等の遊戯用ボールのコア材やカバー材などにも好適に用いられる。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。なお、これら実施例において各測定項目は、以下の方法に従った。
【0052】
(1)還元粘度
ポリマー0.05gを25mlの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40)に溶かして、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
【0053】
(2)融点
融点はセイコー電子工業(株)製DSC(示差走査熱量計)にて室温から20℃/分で昇温し、ピーク温度を測定値とした。サンプルはアルミ製のパンに入れ、蓋で密封した。
【0054】
(3)表面硬度
JIS K6253により測定した。
【0055】
(4)50%伸長応力
ASTM D638 により−30℃および23℃において測定し、相対比α(−30℃における50%伸長応力/23℃における50%伸長応力)の形で表した。
(5)吸水率
100×100×2mmのテストピースを作成し、テストピースは100℃、10torr以下で24時間乾燥させた。これを23℃で水中に24時間浸漬した。
吸水率=(浸漬後の重量−浸漬前の重量)/浸漬前の重量×100(%)
(6)透湿度
押し出し成形にて約30μm厚のフィルムを得た。このフィルムを用いてJIS Z0209に記載の塩化カルシウム法に準じて透湿度を測定した。測定条件は40℃、90%RHで行った。
(7)連続成形時の金型汚れ
射出成形にて100×100×2mmのテストピースを連続成形した。そのときの金型汚れを目視にて観察した。
○:変化なし
△:やや金型汚れあり
×:金型汚れ大
【0056】
ポリエステル合成例1
ジメチルテレフタレート(DMT) 225.15g、1,4−ブタンジオール(BD)127.48g、THFとEOのランダム共重合体DC−3000(日本油脂(株)製、分子量3000,THF/EO=50/50(mol比))973.94g、イルガノックス−1330(日本チバガイギー社製) 2.40g、テトラブチルチタネート(TBT)1.20gを5Lのオートクレーブに仕込み、室温から200℃まで3時間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、45分かけて245℃、1torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃、1torr以下の状態で2時間重合反応を行い、ポリマーをペレット状に取り出し、ポリマーAを得た。
【0057】
ポリエステル合成例2
DMT 225.15g、BD 127.48g、PTMG(分子量3000) 973.94g、イルガノックス−1330 2.40g、TBT 1.20gを5Lのオートクレーブに仕込み、熱可塑性エラストマーを重合した。反応温度は適宜適正化し、ポリマーBを得た。
【0058】
ポリエステル合成例3
DMT 225.13g、BD 126.42g、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールブロック共重合体(分子量2900、PEG/PPG=60/40wt%、旭電化(株)製) 975.00g、イルガノックス−1330 2.40g、TBT 1.20gを5Lのオートクレーブに仕込み、熱可塑性エラストマーを重合した。反応温度は適宜適正化し、ポリマーCを得た。
【0059】
ポリエステル合成例4
DMT 334.00g、BD 193.76g、PTMG(分子量2000) 859.99g、イルガノックス−1330 2.40g、TBT 1.20gを5Lのオートクレーブに仕込み、熱可塑性エラストマーを重合した。反応温度は適宜適正化し、ポリマーDを得た。
【0060】
ポリエステル合成例5
ジメチルテレフタレート(DMT) 197.1g、1,4−ブタンジオール(BD)127.5g、THFとEOのランダム共重合体DC−3000 800.4g、イルガノックス−1330 2.20g、テトラブチルチタネート1.1gを5Lのオートクレーブに仕込み、室温から200℃まで3時間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、45分かけて245℃、1torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃、1torr以下の状態で2時間重合反応を行い、ポリマーをペレット状に取り出し、ポリマーEを得た。
【0061】
ポリエステル合成例6
DMT 334.00g、BD 193.76g、PTMG(分子量2000) 1000g、イルガノックス−1330 2.40g、TBT 1.20gを5Lのオートクレーブに仕込み、熱可塑性エラストマーを重合した。反応温度は適宜適正化し、ポリマーFを得た。得られたポリマーFは結晶化せず、成形材としては用いられにくいものであり、評価をしなかった。
【0062】
以下、実施例3は、参考実施例3と読み替える。
実施例1、実施例3、4、比較例1
ポリエステル合成例1で得られたポリマーA、ポリエステル合成例2で得られたポリマーB、ポリエステル合成例3で得られたポリマーC、ポリエステル合成例5で得られたポリマーEの各々100重量部に対してペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3重量部、ジラウリルチオプロピオネートを0.3重量部、2−(3,5−ジ−t−ブチルー2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを0.5重量部配合し、押出機を用いて、ペレット状に取り出した。
【0063】
実施例2
ポリエステル合成例1で得られたポリマーA 100重量部に対してペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3重量部、ジラウリルチオプロピオネートを0.3重量部、2−(3,5−ジ−t−ブチルー2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを0.5重量部、トリメリット酸トリアルキルエステルを3.0重量部配合し、押出機を用いて、ペレット状に取り出した。
【0064】
比較例2
ポリエステル合成例4で得られたポリマーD 100重量部に対してペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3重量部、ジラウリルチオプロピオネートを0.3重量部、2−(3,5−ジ−t−ブチルー2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを0.5重量部、トリメリット酸トリアルキルエステルを20.0重量部配合し、押出機を用いて、ペレット状に取り出した。
【0065】
実施例1〜4と比較例1、2に関して行った所定の試験結果を表1に示す。
実施例1、2、4とも、非常に柔軟かつ低温での温度変化に対しても安定した特性を示し、さらには吸水性も低いポリエステルエラストマー組成物が得られ、各種の成形材料、シート、フィルムとして好ましく用いられる。実施例3は低温での柔軟性には優れるが、吸水性が高く、吸水性が問題になる用途には使用しにくいと考えられる。比較例1,2では柔軟性が不足し、さらに低温では柔軟性が高くなり、柔軟性が要求される用途では使用しにくいものであった。
【0066】
【表1】
【0067】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物は非常に表面硬度が低く、柔軟である。また、低温においても室温におけるような柔軟性を保つ熱可塑性ポリエステルエラストマーを提供することが可能となり、産業界に寄与すること大である。
Claims (1)
- 熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂、および酸化防止剤、光安定剤または滑剤の内少なくとも一種以上の添加剤を含有する熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物中、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂が85重量%以上から構成され、
該熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂のハードセグメントがポリブチレンテレフタレート、ソフトセグメントがTHFとEOのランダム共重合体からなり、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂中のソフトセグメントが70〜95重量%であって、
JIS K6253に基づいて測定した表面硬度が70Aより柔軟なことを特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物。
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