JP5481916B2 - 難燃性ポリエステルエラストマー組成物 - Google Patents
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しかしながら、これらの被覆材に用いる塩化ビニル系樹脂やオレフィン系樹脂は、融点が低く、耐熱性に乏しい問題がある。また比較的融点の高いポリエステル系樹脂では、耐加水分解性が劣り、屋外や車両に使用する場合に問題がある。これらの問題を解決するための提案として、架橋ポリエチレン樹脂を被覆材に用いる場合や、熱可塑性ポリエステルエラストマーを用いる場合などが知られている。
これらの熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、以前よりポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)をはじめとする結晶性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)などのポリオキシアルキレングリコール類及び/又はポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンアジペート(PBA)などのポリエステルをソフトセグメントとするものなどが知られ、実用化されている(例えば、特許文献1、2)。
しかし、ソフトセグメントが脂肪族カーボネートからなるポリエステルエラストマーは耐熱性、耐水性に優れた樹脂であるが、難燃剤を配合すると高度な耐水性能が要求される用途においては、その性能が十分ではないことが分かってきた。
モノカルボジイミド化合物(B1)1〜10重量部、ポリカルボジイミド化合物(B2)1〜10重量部の少なくとも一つ、
及び、トリアジン系化合物(C1)5〜50重量部、リン系化合物(C2)0.1〜20重量部、臭素系化合物(C3)5〜60重量部、アンチモン化合物(C4)2〜20重量部の少なくとも一つ
を含有することを特徴とする難燃性ポリエステルエラストマー組成物である。
この場合において、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレート単位よりなり、かつ得られるエラストマーの融点が200〜225℃であることが好ましい。
また、この場合において、ハードセグメントがポリブチレンナフタレート単位よりなり、かつ得られるエラストマーの融点が215〜240℃であることが好ましい。
また、この場合において、核磁気共鳴法(NMR法)を用いて算出したハードセグメントの平均連鎖長(x)およびソフトセグメントの平均連鎖長(y)とした時に、ハードセグメントの平均連鎖長(x)が5〜20であり、かつ下記(1)式で算出されるブロック性(B)が0.11〜0.45であることが好ましい。
B=1/x+1/y (1)
また、この場合において、芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成されたポリエステルと分子量5000〜80000の脂肪族ポリカーボネートジオールとを溶融状態で反応させて製造してなることが好ましい。
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて、ハードセグメントのポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸は通常の芳香族ジカルボン酸が広く用いられ、特に限定されないが、主たる芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸であることが望ましい。その他の酸成分としては、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。これらは樹脂の融点を大きく低下させない範囲で用いられ、その量は全酸成分の30モル%未満、好ましくは20モル%未満である。
たとえば、ハードセグメントを構成するポリエステル、ソフトセグメントを構成するポリカーボネート及び必要であれば各種共重合成分を溶融下、一定時間のエステル交換反応及び解重合反応を繰返しながら得ることが好ましい(以下ブロック化反応と称することもある)。
B=1/x+1/y (1)
なお、ここで、上記ブロック性は下記(1)式で算出される。
B=1/x+1/y (1)
上記のブロック性を満たすことにより初めて高度な耐熱性と機械的特性の両立を図ることが可能となった。
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーの切断時の引張強度は、15〜100MPaであり、好ましくは20〜60MPaである。
(1)本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーの還元粘度
熱可塑性ポリエステルエラストマー0.05gを25mLの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40)に溶かし、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
50℃で15時間減圧乾燥した熱可塑性ポリエステルエラストマーを示差走査熱量計DSC−50(島津製作所製)を用いて室温から20℃/分で昇温し測定し、融解による吸熱のピーク温度を融点とした。
なお、測定試料は、アルミニウム製パン(TA Instruments社製、品番900793.901)に10mg計量し、アルミニウム製蓋(TA Instruments社製、品番900794.901)で密封状態にして、アルゴン雰囲気で測定した。
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーの切断時の引張強度および伸びをJIS K 6251に準拠して測定した。テストピースは、射出成形機(山城精機社製、model−SAV)を用いて、シリンダー温度(Tm+20℃)、金型温度30℃で、100mm×100mm×2mmの平板に射出成形した後、ダンベル状3号形の試験片を平板から打ち抜いた。
ASTM D790に準拠して測定した。
<試験片の作製>
100℃で8時間減圧乾燥した熱可塑性ポリエステルエラストマーのペレット100質量部に対してペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.5重量部、ペンタエリスリトールテトラキスー(3−ラウリルチオプロピオネート)を0.3重量部、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールを0.5重量部、ビスフェノールAを0.5重量部、トリフェニルフォスフィンを0.3重量部、実施例、比較例に記載の化合物を配合し、押出機を用いて造粒して熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を得た。
上記熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を、射出成形機(山城精機社製、model−SAV)を用いて、シリンダー温度(Tm+20℃)、金型温度30℃で、100mm×100mm×2mmの平板に射出成形した後、該平板よりダンベル状3号形の試験片を打ち抜いた。
<乾熱処理、切断時伸び保持率評価>
上記方法で得た試験片をギヤ式熱風乾燥機中で180℃、1000時間処理した後、JIS K 6251に準拠して切断時伸び(A)を測定した。乾熱処理していない試験片についても同様の方法で切断時伸び(B)を測定し、下記の式(1)に従い、乾熱処理後の切断時伸びの保持率(C)を計算した。
C=A/B×100(%) (1)
<試験片の作製>
(5)と同様にして押出機を用いて造粒して得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を、射出成形機(山城精機社製、model−SAV)を用いて、シリンダー温度(Tm+20℃)、金型温度30℃で100mm×100mm×2mmの平板に射出成形した後、該平板よりダンベル状3号形の試験片を打ち抜いた。
<耐水処理>
上記方法で得た試験片をで100℃、500時間処理した後、JIS K 6251に準拠して切断時伸び(A)を測定した。乾熱処理していない試験片についても同様の方法で切断時伸び(B)を測定した。
<試験片の作製>
(5)と同様にして押出機を用いて造粒して得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を、射出成形機(山城精機社製、model−SAV)を用いて、シリンダー温度(Tm+20℃)、金型温度30℃で、UL-94規格に準拠して実施した試験片を射出成形した。(試験片厚さ1/32インチ)
<難燃性の評価>
上記方法で得た試験片をUL-94に準拠して難燃性を評価した。また、燃焼時間は5本のサンプルの各2回接炎後の燃焼時間の合計を示した。
<試験片の作製>
(5)と同様にして押出機を用いて造粒して得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を、射出成形機(山城精機社製、model−SAV)を用いて、シリンダー温度(Tm+20℃)、金型温度30℃で、100mm×100mm×2mmの平板に射出成形した。
<成形品表面ブリードの確認>
上記方法で得た試験片をギヤ式熱風乾燥機中で60℃及び0℃で250時間処理した後、試験片表面の状態を観察した。試験片表面において、いずれかの温度処理後あるいは双方の温度処理後に析出物があれば「有」と判定し、いずれにも析出物がなければ「無」と判定した。
〔NMR測定〕
装置 : フーリエ変換核磁気共鳴装置(BRUKER製AVANCE500)
測定溶媒 : 重水素化クロロホルム
試料溶液濃度 : 3〜5vol%
1H共鳴周波数 : 500.13MHz
検出パルスのフリップ角: 45°
データ取り込み時間: 4秒
遅延時間: 1秒
積算回数 : 50〜200回
測定温度 : 室温
芳香族ジカルボン酸−ブタンジオール−芳香族ジカルボン酸連鎖のブタンジオールの、酸素に隣接するメチレンのピークのH−NMR積分値(単位は任意)をAとする。
芳香族ジカルボン酸−ブタンジオール−炭酸連鎖のブタンジオールの、炭酸に近い方の酸素に隣接するメチレンのピークのH−NMR積分値(単位は任意)をCとする。
芳香族ジカルボン酸−炭素数5〜12の脂肪族ジオール−炭酸連鎖のヘキサンジオールの、芳香族ジカルボン酸に近い方の酸素に隣接するメチレンのピークのH−NMR積分値(単位は任意)をBとする。
炭酸−炭素数5〜12の脂肪族ジオール−炭酸連鎖の炭素数5〜12の脂肪族ジオールの、酸素に隣接するメチレンのピークのH−NMR積分値(単位は任意)をDとする。
ハードセグメント平均連鎖長(x)は、
x = (((A/4)+(C/2))/((B/2)+(C/2)))×2。
ソフトセグメント平均連鎖長(y)は、
y = (((D/4)+(B/2))/((B/2)+(C/2)))×2。
ブロック性(B)は上記方法で求めたxおよびyの値より下記(1)式で算出した。Bの値が小さい方がブロック性が高い。
B=1/x+1/y (1)
50℃で15時間減圧乾燥した本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーを、アルミニウム製パン(TA Instruments社製、品番900793.901)に10mg計量し、アルミニウム製蓋(TA Instruments社製、品番900794.901)で密封状態にして、測定試料を調整した後、示差走査熱量計DSC−50(島津製作所製)を用いて、窒素雰囲気のもと昇温速度20℃/分で室温から300℃に昇温し、300℃で3分間保持した後に測定試料パンを取出し、液体窒素中に漬け込み急冷させた。その後、液体窒素からサンプルを取出し、室温で30分間放置した。測定試料パンを示差走査熱量計にセットして室温で30分間放置した後、再び昇温速度20℃/分で室温から300℃に昇温する。このサイクルを3回繰り返した時の一回目の測定で得られる融点(Tm1)と3回目の測定で得られる融点(Tm3)との融点差(Tm1−Tm3)を求め、該融点差をブロック性保持性とした。該温度差が小さい程ブロック性保持性に優れている。
上記方法で評価した融点差により、ブロック性保持性を下記基準で判定し表示した。
◎:融点差0〜30℃未満
○:融点差30〜40℃未満
△:融点差40〜50℃未満
×:融点差50℃以上
重水素化クロロホルム(CDCl3)に脂肪族ポリカーボネートジオールサンプルを溶
解させ、上記(7)に記載したと同様の方法でH−NMRを測定することにより末端基を算出し、下記式にて求めた。
分子量=1000000/((末端基量(当量/トン))/2)
(12)芳香族ポリエステルの数平均分子量(Mn)
上記の熱可塑性ポリエステルエラストマーの還元粘度測定方法と同様の方法で測定して求めた還元粘度(ηsp/c)の値を用いて下記式に従って算出した。
ηsp/c=1.019×10-4×Mn0.8929−0.0167
脂肪族ポリカーボネートジオール(分子量10000)の製造方法:
脂肪族ポリカーボネートジオール(宇部興産社製カーボネートジオールUH−CARB200、分子量2000、1,6−ヘキサンジオールタイプ)100質量部とジフェニルカーボネート8.6質量部とをそれぞれ仕込み、温度205℃、130Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却し、ポリマーを取り出した。分子量10000であった。
脂肪族ポリカーボネートジオール(宇部興産社製カーボネートジオールUH−CARB200、分子量2000、1,6−ヘキサンジオールタイプ)100質量部とジフェニルカーボネート9.6質量部とをそれぞれ仕込み、温度205℃、130Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却し、ポリマーを取り出した。分子量は20000であった。
脂肪族共重合ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製カーボネートジオールT5652、分子量2000、1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタンジオールとの共重合体、非晶性)100質量部とジフェニルカーボネート8.6質量部とをそれぞれ仕込み、温度205℃、130Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却し、ポリマーを取り出した。分子量は10000であった。
脂肪族ポリカーボネートジオール(宇部興産社製カーボネートジオールUH−CARB200、分子量2000、1,6−ヘキサンジオールタイプ)とジフェニルカーボネートとをそれぞれ100質量部および10.7質量部を仕込み、温度205℃、130Paで重合を進めた。2時間45分後、内容物を冷却し、ポリマーを取り出した。分子量は85000であった。
熱可塑性ポリエステルエラストマーAの製造方法:
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量10000を有するポリカーボネートジオール43質量部とを230℃〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー(熱可塑性ポリエステルエラストマーA)を得た。
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量20000を有するポリカーボネートジオール43質量部とを230℃〜245℃、130Pa下で1.5時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー(熱可塑性ポリエステルエラストマーB)を得た。熱可塑性ポリエステルエラストマーAと同等の品質を有しており高品質であった。
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量10000を有する脂肪族共重合ポリカーボネートジオール43質量部とを230℃〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー(熱可塑性ポリエステルエラストマーC)を得た。熱可塑性ポリエステルエラストマーAと同等の品質を有しており高品質であった。また、ソフトセグメントとして、1,6−ヘキサンジオールからなるポリカーボネートジオールを使用した場合と比較すると低温特性に優れている。
数平均分子量30000を有するポリブチレンナフタレート(PBN)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量10000を有するポリカーボネートジオール43質量部とを245℃〜260℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー(熱可塑性ポリエステルエラストマーD)を得た。熱可塑性ポリエステルエラストマーAと同等のブロック性およびブロック性保持性を有しており、かつ熱可塑性ポリエステルエラストマーAよりも融点が高く、さらに高品質であった。
得られたポリエステルエラストマーを(5)耐熱老化性評価の試験片作製に示す化合物を配合し、押出機を用いて造粒した。得られたポリエステルエラストマー組成物を射出成形機で試験片を作成し、耐熱老化性、耐水性及び難燃性試験を行った。その結果を表1、2に示すが、実施例で得られた難燃性エラストマー組成物は優れた性能であった。比較例1〜7は、実施例1〜6と比較して耐水性に劣る。
Claims (3)
- 芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成されたポリエステルからなるハードセグメント及び主として脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントが結合されてなるポリエステルエラストマーであって、ハードセグメントのポリエステルが、ブチレンテレフタレート単位あるいはブチレンナフタレート単位よりなるものであり、質量部比がハードセグメント:ソフトセグメント=30:70〜95:5であり、芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成された、数平均分子量10000〜40000であるポリエステルと分子量5000〜80000の脂肪族ポリカーボネートジオールとを溶融状態で反応させて製造してなる熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100重量部に、
ポリカルボジイミド化合物(B2)1〜10重量部、
及び、トリアジン系化合物(C1)5〜50重量部
を含有することを特徴とする難燃性ポリエステルエラストマー組成物。 - 通常空気1気圧・180℃雰囲気下に1000時間晒された後の引張伸度が、初期の引張伸度に対して保持率30%以上であることを特徴とする請求項1記載の難燃性ポリエステルエラストマー組成物。
- 請求項1〜2のいずれか1項に記載の難燃性ポリエステルエラストマー組成物を含有する電線被覆材。
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