JP4543293B2 - 熱可塑性ポリエステルエラストマー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱可塑性ポリエステルエラストマーに関し、詳しくは耐熱老化性、耐水性、低温特性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー、特に繊維、フィルム、シートをはじめとする各種成形材料に用いることの出来る熱可塑性ポリエステルエラストマー、さらに詳しくは、弾性糸およびブーツ、ギア、チューブ、パッキンなどの成形材料に適し、たとえば自動車、家電部品等の耐熱老化性、耐水性、低温特性が要求される用途、例えば、ジョイントブーツや、電線被覆材などに有用な熱可塑性ポリエステルエラストマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、以前よりポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)をはじめとする結晶性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリオキシアルキレン類および/またはポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンアジペート(PBA)等のポリエステルをソフトセグメントとするもの等が知られ、実用化されている。
【0003】
しかしながら、ソフトセグメントにポリオキシアルキレン類を用いたポリエステルポリエーテル型エラストマーは、耐水性および低温特性には優れるものの耐熱老化性に劣ることが、またソフトセグメントにポリエステルを用いたポリエステルポリエステル型エラストマーは、耐熱老化性に優れるものの、耐水性および低温特性に劣ることが知られている。
【0004】
上記欠点を解決することを目的として、ソフトセグメントにポリカーボネートを用いたポリエステルポリカーボネート型エラストマーが提案されているが、例えば特公平7-39480(東レ)に示されるものは機械特性に劣り、耐加水分解性において僅かな改良を呈するのみである。特開平5-295094(帝人)に示されるものは、エステル交換反応のみによってブロックコポリマーを得ているため、重合には長時間を要するにもかかわらずその重合度は低く(固有粘度として1前後)、かつ製造プロセスのコントロールが実質的には困難である。また、耐熱老化性についてはほとんど言及されていない。また、特開平10-182782(DSM)に示されるエラストマーは、非常に優れた耐熱老化性、優れた耐水性を有しているが、ソフトセグメントに結晶性の高いポリカーボネートを用いているため、低温特性に劣る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が目的とするのは、優れた耐熱老化性、耐水性、低温特性とを兼備する熱可塑性ポリエステルエラストマーを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、特定のハードセグメント、ソフトセグメントを用い、かつ鎖延長反応を行うことによって、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成させた。すなわち本発明のポリエステルエラストマーは、以下に示すものである。
1.曲げ弾性率<1000MPaであり、耐熱老化テスト後の切断時伸び保持率>50%、耐水老化テスト後の切断時伸び保持率>50%であり、かつ、損失正接tanδが最大値を示す温度が<−15℃であることを特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマー。
(ここで曲げ弾性率はASTM D790に基づいて測定した値であり、切断時伸びはASTM D638に基づいて測定した値である。また、耐熱老化テストとはギヤー式熱風乾燥機を用いた150℃、125日間の熱処理に相当し、耐水老化テストとは100℃の沸水中での2週間の処理に相当する。さらに、損失正接tanδは引っ張り強制振動型動的粘弾性測定装置(たとえばUBM社製Rheogel−E4000)を用い、−100℃より2℃/分で昇温しながら11Hzにおいて測定するものとする。)
2.損失正接tanδが最大値を示す温度が<−20℃であることを特徴とする上記1記載のポリエステルエラストマー。
3.主として芳香族ジカルボン酸と脂肪族または脂環族ジオールとからなるハードセグメント、および主として脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントによって構成され、セグメントが実質的に鎖延長剤により結合されていることを特徴とする上記1または2に記載のポリエステルエラストマー。
4.ソフトセグメントが水添ダイマージオールを含むことを必須とする脂肪族ポリカーボネートであり、水添ダイマージオールの共重合量が該セグメントの全グリコール成分の30モル%以下であることを特徴とする上記1から3のいずれかに記載のポリエステルエラストマー。
5.ハードセグメントが水添ダイマージオールを含むことを必須とするポリエステルであり、水添ダイマージオールの共重合量が該セグメント中の全グリコール成分の15モル%以下であることを特徴とする上記1から3のいずれかに記載のポリエステルエラストマー。
6.ハードセグメントが水添ダイマージオールを含むことを必須とするポリエステルであり水添ダイマージオールの共重合量が該セグメント中の全グリコール成分の10モル%以下であること、および、ソフトセグメントが水添ダイマージオールを含むことを必須とする脂肪族ポリカーボネートであり水添ダイマージオールの共重合量が該セグメント中の全グリコール成分の30モル%以下であることを特徴とする上記1から3のいずれかに記載のポリエステルエラストマー。
7. ハードセグメントを構成する芳香族ジカルボン酸が、主としてテレフタル酸、または2,6−ナフタレンジカルボン酸である上記1から6のいずれかに記載のポリエステルエラストマー。
8.ハードセグメントがポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートおよびそれらの水添ダイマージオール共重合体のいずれかであることを特徴とする上記1から7のいずれかに記載のポリエステルエラストマー。
9.エステル結合および/または鎖延長剤由来の結合により各セグメントが結合されることを特徴とする上記1から8のいずれかに記載のポリエステルエラストマー。
10.鎖延長剤がイソシアネート化合物またはそのカルボジイミド化された化合物であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のポリエステルエラストマー。
11.鎖延長剤がフェニルカーボネート化合物またはフェニルエステル化合物であることを特徴とする上記1から9のいずれかに記載のポリエステルエラストマー。
12.鎖延長剤がオキサゾリン化合物であることを特徴とする上記1から9のいずれかに記載のポリエステルエラストマー。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。本発明の熱可塑性エラストマーにおいて、ハードセグメントを構成する芳香族ジカルボン酸は、主としてテレフタル酸、または2,6−ナフタレンジカルボン酸であることが望ましい。その他の酸成分としては、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の脂環族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。これらは樹脂の融点を大きく低下させない範囲で用いられ、その量は全酸成分の30モル%未満、好ましくは20モル%未満である。
【0008】
ハードセグメントを構成する脂肪族または脂環族ジオールは、主として炭素数2〜8のアルキレングリコール類である。具体的にはエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。1,4−ブタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールが最も好ましい。
【0009】
ハードセグメントに水添ダイマージオールが共重合される場合、その共重合量は該セグメント中の全グリコール成分の15モル%以下であることが必要であり、より好ましくは10モル%以下であることが望ましい。水添ダイマージオールの共重合量が15モル%より多い場合、最終的に得られるポリエステルエラストマーの融点が低下し、また結晶性も劣るようになるため好ましくない。
【0010】
上記成分からなる芳香族ポリエステルおよびその共重合体は、通常のポリエステルの製造法に従って容易に得ることができる。また、本ポリエステルは、一般に数平均分子量5000〜35000 を有しているものが望ましい。
【0011】
本発明で共重合成分として用いる水添ダイマージオールとは、もちろんその製法はこれに限定はしないが、例えば不飽和脂肪酸(炭素数15〜21)の二量体であるダイマー酸を水素化して得られる下記一般式(1)で示される化合物を主成分(50重量%以上)とする化合物、あるいは下記一般式(1)で示される化合物と下記一般式(2)で示される化合物との混合物に相当する。
【0012】
【化1】
(前記式中R1、R2、R3、R4は実質的に不飽和基を含まず、また実質的に直鎖状であり、そのうちR1、R2 はアルキル基、R3、R4 はアルキレン基であり、R1〜R4の炭素数の総和は22〜34である。)
【0013】
【化2】
(前記式中R5、R6、R7、R8は実質的に不飽和基を含まず、また実質的に直鎖状であり、そのうちR5、R6はアルキル基、R7、R8はアルキレン基であり、R5〜R8の炭素数の総和は25〜37である。)
【0014】
ソフトセグメントを構成する脂肪族ポリカーボネートは、主として炭素数2〜12の脂肪族ジオール残基からなる。これらの脂肪族ジオール残基としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどが挙げられる。これらの成分は、以下に簡単に説明する事例に基づき、単独で用いても良いし、必要に応じて2種以上を併用しても良い。
【0015】
ソフトセグメントに水添ダイマージオールを共重合する場合、その共重合量は該セグメント中の全グリコール成分の30モル%以下であることが必要である。
30モル%以上である場合、ソフトセグメントとハードセグメントの相容性が低下するため、好ましくない。
【0016】
上記脂肪族ポリカーボネートおよびその共重合体は、公知の任意の方法によって得ることができる。たとえば、チタン触媒の存在下ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネートまたはアルキレンカーボネートと各種グリコールを反応させる方法、触媒を用いずにジメチルカーボネートと各種グリコールから脱メタノールを行う方法、脂肪族ポリカーボネートに水添ダイマージオール、カーボネート化合物を添加し、エステル交換によって共重合体を得る方法等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0017】
上記ジオールからなるポリカーボネートは分子量約500〜5000であることが望ましく、好ましくは800〜3000を有することが望ましい。さらに低温特性が良好なものを用いることが望ましい。
【0018】
低温特性が良好なポリカーボネートとは、融点が低く(たとえば50℃以下)かつガラス転移温度が低いものに相当する。一般的にエラストマーのソフトセグメントとして用いられているヘキサンジオールからなるポリカーボネートは、ガラス転移温度が−60℃前後と低いものの融点が60℃前後と比較的高いため、低温特性に劣るポリカーボネートに相当する。一方、上記ポリカーボネートにたとえば3−メチル−1,5−ペンタンジオールを適当量共重合して得られるポリカーボネートは、元のポリカーボネートに対してガラス転移点が若干高くなるものの、融点が低下もしくは非晶性となるため、低温特性が良好なポリカーボネートに相当する。また、たとえば1,9−ノナンジオールと2−メチル−1,8−オクタンジオールからなるポリカーボネートは融点が50℃程度、ガラス転移温度が−60℃前後と充分に低いため、やはり低温特性が良好なポリカーボネートに相当する。なお、水添ダイマージオールを共重合したポリカーボネートも元のポリカーボネートに対して融点が低下もしくは非晶性となるため、低温特性が良好なポリカーボネートに相当する。
【0019】
上記のポリカーボネートは、他のグリコール、ジカルボン酸、エステル化合物やエーテル化合物などを少量共重合したものでも良い。共重合成分の例として、例えば水添ダイマージオールの変性体等のグリコール、ダイマー酸、水添ダイマー酸等のジカルボン酸、脂肪族、芳香族、脂環族ジカルボン酸とグリコールとからなるポリまたはオリゴエステル、ε−カプロラクトン等からなるポリまたはオリゴエステル、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール等のポリまたはオリゴアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0020】
上記共重合成分は、実質的に本発明の効果を消失させない程度用いることができる。具体的には40重量部以下、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。共重合量が多すぎる場合、得られたエラストマーの耐熱老化性、耐水性が低下する。
【0021】
本発明のポリエステルエラストマーは、発明の効果を消失しない程度に限り、ソフトセグメントとして、例えばポリエチレンオキサイド、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリアルキレンオキサイド、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペート等のポリエステル等の共重合成分が導入されていても良い。共重合成分の含有量はポリエステルエラストマーに対して0〜40重量%であり、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量部である。
【0022】
上記ポリカーボネートおよび/または変性ポリカーボネートセグメントは、あらかじめ任意の酸無水物による処理を行った後に用いても良い。この処理は、任意の酸無水物とポリカーボネートとを加熱混合し、均一になることによって行う。この反応は、必ずしも完結している必要はなく、その終点は任意に定めることができる。
【0023】
本発明のポリエステルエラストマーにおいて、ハードセグメントを構成するポリエステルとソフトセグメントを構成するポリカーボネートおよび共重合成分の重量比は、一般に20:80〜95:5の範囲である。
【0024】
鎖延長に用いられる鎖延長剤は、二官能性またはそれ以上の官能基を有するものであれば特に限定はしないが、たとえばイソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、フェニルカーボネート系またはフェニルエステル系化合物、ラクタム化合物、エポキシ化合物、芳香族テトラカルボン酸無水物などが挙げられる。好ましくはイソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、フェニルカーボネート化合物である。これらは単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を用いてもよい。
【0025】
鎖延長に用いられるイソシアネート化合物またはそのカルボジイミド化化合物として、例えば、4,4’− ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、前期イソシアネート化合物のそれぞれカルボジイミド化された化合物もまた用いても良い。さらに、これらは2種以上が併用されても良い。好ましくは、4,4’− ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。
【0026】
鎖延長に用いられるオキサゾリン化合物とは1分子中に2個以上のオキサゾリン環を有する化合物であり、例えば2,2−ビス(2−オキサゾリン)、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾイル)ベンゼン、2,2-ビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2-ビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2-ビス(4-エチル-2-オキサゾリン)、2,2-ビス(4,4-ジエチル-2-オキサゾリン)、2,2-ビス(4-プロピル-2-オキサゾリン)、2,2-ビス(4-ブチル-2-オキサゾリン)、2,2-ビス(4-ヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2-ビス(4-シクロヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2-ビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2-エチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2-テトラメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2-ヘキサメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2-オクタメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2-エチレンビス(4-エチル-2-オキサゾリン)、2,2-テトラエチレンビス(4-エチル-2-オキサゾリン)、2,2-シクロへキシレンビス(4-エチル-2-オキサゾリン)等のビスオキサゾリン化合物が挙げられるが、好ましくは2,2-ビス(2-オキサゾリン)が挙げられる。
【0027】
鎖延長に用いられるフェニルカーボネート化合物またはフェニルエステル化合物として、たとえば、ジフェニルカーボネート、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル、フタル酸ジフェニル、2,6―ナフタレンジカルボン酸ジフェニル、1,5−ナフタレンジカルボン酸ジフェニル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジフェニル、4,4−ビフェニルジカルボン酸ジフェニルなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましくは、ジフェニルカーボネート、テレフタル酸ジフェニル、フタル酸ジフェニルを単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
鎖延長に用いられるラクタム化合物とは、たとえば下記一般式(3)で示される化合物であり、式中Arが炭素数6〜20のアリーレン基、具体的にはp−フェニレン、m−フェニレン、o−フェニレン、2,6−ナフチレン、1,5−ナフチレン、2,7−ナフチレン、4,4’−ビフェニレンであるものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【化3】
【0029】
鎖延長に用いられるエポキシ化合物として、たとえばテレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステルをはじめとする各種芳香族ジカルボン酸のジグリシジルエステル、p−フェニレンジグリシジルエーテルをはじめとする芳香族ジグリシジルエーテル、各種脂肪族ジカルボン酸のジグリシジルエステル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0030】
鎖延長に用いられる芳香族テトラカルボン酸無水物として、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0031】
上記各種鎖延長剤は、通常反応系中のポリマーのモル数に対し当量〜1.5倍モル量用いられる。添加量は、用いる鎖延長剤の種類、反応温度等によって最適値が異なる。添加量が少ない場合には、鎖延長反応が不十分であり、所望のブロックコポリマーが得られないことがある。
【0032】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーは、ハードセグメントを構成するポリエステル、ソフトセグメントを構成するポリカーボネート、および必要であれば各種共重合成分を溶融下、一定時間のエステル交換反応を行った後に鎖延長反応を行うことによって得ることができる。
【0033】
上記、溶融下でのエステル交換反応は、好ましくはハードセグメントを構成するポリエステルの融点ないし融点+30℃の範囲内の温度において行われる。この反応において、系中の活性触媒濃度は、反応の行われる温度に応じて任意に設定される。すなわち、より高い反応温度においてはエステル交換反応は速やかに進行するため、系中の活性触媒濃度は低いことが望ましく、また、より低い反応温度においてはある程度の濃度の活性触媒が存在していることが望ましい。
【0034】
触媒は通常の触媒、例えばチタニウムテトラブトキシド、シュウ酸チタン酸カリウム等のチタン化合物、ジブチルスズオキシド、モノヒドロキシブチルスズオキシド等のスズ化合物を一種または二種以上用いても良い。触媒はポリエステルもしくはポリカーボネートセグメント中にあらかじめ存在しても良く、その場合は新たに添加する必要はない。さらに、ポリエステルもしくはポリカーボネートセグメント中の触媒はあらかじめ任意の方法によって部分的または実質的に完全に失活させておいても良い。例えば触媒としてチタニウムテトラブトキシドを用いている場合、例えば亜燐酸、燐酸、燐酸トリフェニル、燐酸トリストリエチレングリコール、オルト燐酸、ホスホン酸カルベトキジメチルジエチル、亜燐酸トリフェニル、燐酸トリメチル、亜燐酸トリメチル等の燐化合物等を添加することによって失活が行われるが、これに限られるわけではない。
【0035】
上記反応は、反応温度、触媒濃度、反応時間の組み合わせを任意に決定して行うことができる。すなわち、反応条件は、用いるハードセグメントおよびソフトセグメントの種類および量比、用いる装置の形状、攪拌状況などの種々の要因によってその適正値が変化する。
【0036】
上記反応条件の最適値は、例えば得られる鎖延長ポリマーの融点およびハードセグメントとして用いたポリエステルの融点を比較し、その差が2℃〜60℃となる場合である。融点差が2℃未満の場合、両セグメントが混合または/および反応しておらず、得られたポリマーは劣った弾性性能を示す。一方、融点差が60℃以上の場合、エステル交換反応の進行が著しいため得られたポリマーのブロック性が低下しており、結晶性、弾性性能等が低下する。
【0037】
上記反応によって得られた溶融混合物中の残存触媒は、任意の方法によってできる限り完全に失活しておくことが望ましい。触媒が必要以上に残存している場合、後に行われる鎖延長反応をはじめ、コンパウンド時、成形時等にエステル交換反応がさらに進行し、得られたポリマーの物性が変動することが考えられる。
【0038】
本失活反応は、たとえば前述の様式、すなわち亜燐酸、燐酸、燐酸トリフェニル、燐酸トリストリエチレングリコール、オルト燐酸、ホスホン酸カルベトキジメチルジエチル、亜燐酸トリフェニル、燐酸トリメチル、亜燐酸トリメチル等の燐化合物等を添加することによって行われるが、これに限られるわけではない。
【0039】
鎖延長反応は、上記溶融物中に鎖延長剤を添加することによって行われる。添加される鎖延長剤の量は、通常、ポリマー末端総数に対してほぼ等量である。鎖延長反応の進行は、溶融物の溶融粘度の測定、たとえば鎖延長剤とポリマーとを攪拌する装置のトルク変化を追跡することによって知ることができる。すなわち、トルクの上昇がほぼ停止し一定値に達した時点を反応の完結点と見なすことができる。また、鎖延長反応中および/または反応後に必要であれば減圧下に揮発成分の除去を行うことができる。
【0040】
本発明のポリエステルエラストマーは、少量に限り三官能以上のポリカルボン酸、ポリオールを含んでもよい。例えば無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメチロールプロパン、グリセリンなどを使用できる。
【0041】
さらに本発明熱可塑性ポリエステルエラストマーには、目的に応じて種々の添加剤を配合して組成物を得ることができる。添加剤としては、公知のヒンダードフェノール系、硫黄系、燐系、アミン系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ニッケル系、サリチル系等の光安定剤、帯電防止剤、滑剤、過酸化物等の分子調整剤、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物等の反応基を有する化合物、金属不活性剤、有機及び無機系の核剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、有機及び無機系の顔料などを添加することができる。
【0042】
本発明において配合できるヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−トルエン、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6’−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、カルシウム(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−モノエチル−フォスフェート)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ビス〔3,3−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)酪酸〕グリコールエステル、トリフェノール、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン、2,2’−オキサミドビス〔エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,1,3−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミックアヒドトリエステルウイズ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナアミド)、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンなどを挙げることができる。
【0043】
本発明において配合できる硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジウロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジラウリルチオジプロピオネート、ジオクタデシルサルファイド、ペンタエリストリール−テトラ(β−ラウリル−チオプロピオネート)エステル等を挙げることができる。
【0044】
本発明において配合できる燐系酸化防止剤としては、トリス(ミックスド、モノ及びジノリルフェニル)フォスファイト、トリス(2,3−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)フォスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルフォスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンフォスファナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストール−ジ−フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスフォナイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、トリドデシルトリチオホスファイト等を挙げることができる。
【0045】
本発明に配合できるアミン系酸化防止剤としては、N,N−ジフェニルエチレンジアミン、N,N−ジフェニルアセトアミジン、N,N−ジフェニルフルムアミジン、N−フェニルピペリジン、ジベンジルエチレンジアミン、トリエタノールアミン、フェノチアジン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン、P,P’−ジオクチル−ジフェニルアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチル−ペンチル)−p−フェニレンジアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β- ナフチルアミン、4,4’−ビス(4−α,α−ジメチル−ベンジル)ジフェニルアミン等のアミン類及びその誘導体やアミンとアルデヒドの反応生成物、アミンとケトンの反応生成物から挙げることができる。
【0046】
本発明において配合できるヒンダードアミン系光安定剤としては、琥珀酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミル〕〕、2−n−ブチルマロン酸のビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)エステル、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2−ジブロモエタンとの重縮合物、ポリ〔(N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン)−(4−モノホリノ−1,3,5−トリアジン−2,6−ジイル)−ビス(3,3,5,5−テトラミチルピペラジノン)〕、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ドデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−ドデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,6,11−トリス〔{4,6−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ}ウンデカン、1−〔2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトロメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物などを挙げることができる。
【0047】
本発明で配合できるベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアゾール系、ニッケル系、サリチル系光安定剤としては、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’、5’−ビス(α,α−ジメチルベンジルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンアゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾチリアゾール、2,5−ビス−〔5’−t−ブチルベンゾキサゾリル−(2)〕−チオフェン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル燐酸モノエチルエステル)ニッケル塩、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキサリックアシッド−ビス−アニリド85〜90%と2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチル−4’−t−ブチルオキサリックアシッド−ビス−アニリド10〜15%の混合物、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−エトキシ−2’−エチルオキサザリックアシッドビスアニリド、2−〔2’−ヒドロオキシ−5’−メチル−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミド−メチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−i−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシルオキシベンゾフェノン、サリチル酸フェニル等の光安定剤を挙げることができる。
【0048】
本発明において配合できる滑剤として炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石鹸系、天然ワックス系、シリコーン系、フッ素系化合物が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、合成パラフィン、合成硬質パラフィン、合成イソパラフィン石油炭化水素、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレン、フルオロカルボン油、炭素数12以上のラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸化合物、ヘキシルアミド、オクチルアミド、ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、エルシルアミド、エチレンビスステアリルアミド、ラウリルアミド、ベヘニルアミド、メチレンビスステアリルアミド、リシノールアミド等の炭素数3〜30の飽和或いは不飽和脂肪族アミド及びその誘導体、脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸のポリグリコールエステル、脂肪酸の脂肪アルコールエステルであるブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、分子量200ないし10000以上のポリエチレングリコール、ポリグリセロール、カルナウバロウ、カンデリラロウ、モンタンロウ、ジメチルシリコーン、シリコンガム、四フッ化エチレンなどの滑剤が挙げられる。
また、直鎖飽和脂肪酸、側鎖酸、シノール酸を有する化合物からなる金属塩で金属が(Li,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,Al,Sn,Pb)から選ばれた金属石鹸も挙げることができる。
【0049】
本発明において配合できる充填剤としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化カルシウム、酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型)、酸化クロム(三価)、酸化鉄、酸化亜鉛、シリカ、珪藻土、アルミナ繊維、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、酸化ベリリウム、軽石、軽石バルーン等の酸化物や水酸化マウネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム等の塩基性物又は水酸化物又は、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウウム、炭酸バリウム、炭酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、ドロマイト、ドーソナイト等の炭酸塩又は、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、塩基性硫酸マグネシウム等の(亜)硫酸塩又は、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、モンモリナイト、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ペントナイト等の珪酸塩又は、カオリン(陶土)、パーライト、鉄粉、銅粉、鉛粉、アルミニウム粉、タングステン粉、硫化モリブデン、カーボンブラック、ボロン繊維、炭化珪素繊維、黄銅繊維、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、硼酸亜鉛、硼酸アルミニウム、メタ硼酸バリウム、硼酸カルシウム、硼酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0050】
本発明で配合できるエポキシ基を有する化合物としては、ソルビオール−ポリグリシジル−エーテル、ポリグリセロール−ポリグリシジル−エーテル、トリグリシジル−トリス(2−ハイドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリエポキシ化合物、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロオフタル酸ジグリシジルエステル、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合物、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンの縮合物、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンの縮合物等のジエポキシ化合物、高級アルコールグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル等のモノエポキシ化合物等が挙げられる。
【0051】
本発明で配合できるハロゲン置換されたフェニル基を有する化合物としては、テトラブロムビスフェノールA(TBA)、テトラブロムビスフェノールS(TBS)、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールAエーテル、TBAエポキシ、TBAエチルエーテルオリゴマー、TBAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、TBA(アリルエーテル)、TBAビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)、TBAカーボネートオリゴマー、TBSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、ヘキサブロモベンゼン、テトラブロモ無水フタル酸、デカブロモジフェニンオキサイド、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、ブロム化フェノキシ、エチレンビス(テトラブロモフタル)イミド、臭素化ジフェニルオキサイド、ブロム化ポリスチレン等が挙げられる。
【0052】
本発明で配合できる難燃助剤としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ピロアンチモン酸ソーダ、二酸化錫、メタ硼酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、赤燐系化合物、ポリリン酸アンモニウム塩、メラミンシアヌレート、四フッ化エチレン等が挙げられる。
【0053】
本発明で配合できるトリアジン基を有する化合物及び/又はその誘導体としては、メラミン、メラミンシアヌレート、燐酸メラメン、スルファミン酸グアニジン等が挙げられる。
【0054】
本発明で配合できる燐化合物の無機系燐化合物としては、赤燐系化合物、ポリリン酸アンモニウム塩等が挙げられる。赤燐系化合物としては、赤燐に樹脂をコートしたもの、アルミニウムとの複合化合物等が挙げられる。有機系燐化合物としては、燐酸エステル、燐酸メラミン等が挙げられる。燐酸エステルとしては、ホスフェート類、ホスホネート類、ホスフィネート類のトリメチルホスフェート、トリエチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリオクチルホスフェート、トリオクチルフォスフィート、トリブトキシエチルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリス・イソプロピルフェニルフォスフェート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネート、ビス(1,3−フェニレンジフェニル)フォスフェート、芳香族縮合燐酸エステルの1,3−〔ビス(2,6−ジメチルフェノキシ)ホスフェニルオキシ〕ベンゼン、1,4−〔ビス(2,6−ジメチルフェノキシ)ホスフェニルオキシ〕ベンゼン等が耐加水分解や熱安定性、難燃性から好ましい。
【0055】
これらの添加物の配合方法としては、加熱ロール、押出機、バンバリミキサー等の混練機を用いて配合することができる。また、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を製造する際のエステル交換反応の前又は重縮合反応前のオリゴマー中に、添加及び混合することができる。
【0056】
本発明のポリエステルエラストマーは、溶融物から通常の成形技術、例えば、射出成形、フラットフィルム押出、押出ブロー成形、共押出により成形される。
【0057】
【実施例】
以下に実施例および比較例を用いて、本発明を具体的に説明するがそれらに限定されるものではない。なお、これら実施例において各測定は、以下の方法に従って行った。
(1)還元粘度:ポリマー0.05gを25mLの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40)に溶かし、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
(2)融点:DSCを用いて室温から20℃/分で昇温し測定した。
(3)曲げ弾性率:ASTM D790に基づいて測定した。
(4)耐熱老化性:ギヤー式熱風乾燥機を用いて150℃、125日間処理を行い、切断時伸び保持率をASTM D638に基づいて測定した。
(5)耐水性:100℃、2週間処理後の切断時伸び保持率をASTM D638に基づいて測定した。
(6)低温特性:引っ張り強制振動型動的粘弾性測定装置(UBM社製Rheogel−E4000)を用い、−100℃より2℃/分で昇温しながら11Hzにおいて測定したときの損失正接(tanδ)が最大を示す温度によって評価した。
【0058】
ポリカーボネートジオールA:
日本ポリウレタン(株)社製ポリカーボネートジオールN980、分子量2000、融点62℃
ポリカーボネートジオールB:
クラレ(株)社製ポリカーボネートジオールPNOC−2000、分子量2000、融点50℃
【0059】
参考例1
ポリカーボネートジオールC(水添ダイマージオール変性ポリカーボネート)の調製
ポリカーボネートジオール(ダイセル化学(株)社製CD220PL、分子量2000)144g、高純度水添ダイマージオール(東亞合成(株)社製PELPOL HP1000)59.1g、炭酸ジフェニル(ナカライテスク(株)社製)21.4g、テトラ−n−ブチルチタネート0.01gを1Lのガラスフラスコに仕込み、窒素気流下攪拌するとともに加熱した。系が225℃に達した時点で減圧を開始し、30分で245℃、1mmHgまで昇温、減圧を行った。系を窒素で常圧に戻した後、0.01gのトリメチルリン酸を添加し10分間の攪拌を行い、粘稠なポリマーを得た。分子量は約2300であった。
【0060】
実施例1
数平均分子量17500を有するポリブチレンテレフタレート100重量部を、反応容器中で定法により重合した。次いで67重量部のポリカーボネートジオールCを加え、225〜245℃で20分間攪拌した後、1重量部のTMPA(トリメチルリン酸)を反応溶融物に添加し、さらに10分撹拌した。その後、8.4重量部のジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを加え、撹拌装置上でのトルクが最大に達するまで、攪拌を続けた。反応容器を脱気した後、内容物を取り出し、冷却、ポリマーを得た。得られたポリマーの各物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0061】
実施例2
水添ダイマージオールを全グリコール成分の5モル%共重合したポリブチレンナフタレート100重量部を反応容器中で定法により重合した。次いで67重量部のポリカーボネートジオールBを加え、245〜255℃で20分間攪拌した後、1重量部のTMPA(トリメチルリン酸)を反応溶融物に添加し、さらに10分撹拌した。その後、8.4重量部の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを加え、撹拌装置上でのトルクが最大に達するまで、攪拌を続けた。反応容器を脱気した後、内容物を取り出し、冷却、ポリマーを得た。得られたポリマーの各物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0062】
実施例3
水添ダイマージオールを全グリコール成分の5モル%共重合したポリブチレンテレフタレート100重量部を、反応容器中で定法により重合した。次いで67重量部のポリカーボネートジオールCを加え、225〜245℃で20分間攪拌した後、1重量部の亜リン酸を反応溶融物に添加し、さらに10分撹拌した。その後、8.4重量部のジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを加え、撹拌装置上でのトルクが最大に達するまで、攪拌を続けた。反応容器を脱気した後、内容物を取り出し、冷却、ポリマーを得た。得られたポリマーの各物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0063】
実施例4
定法により重合されたPBT100重量部にポリカーボネートジオールCを53.8重量部加え、225℃〜245℃で20分間攪拌した。ジフェニルカーボネートを22重量部添加し、減圧下脱フェノールを行った。フェノールの留出が終了し、攪拌トルクが最大に達した時点でポリマーを取り出した。得られたポリマーの各物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0064】
比較例1
ポリカーボネートジオールCをポリカーボネートジオールAに変えた以外は実施例1と同様にしてポリマーを得た。得られたポリマーの各物性を測定し、その結果を表1に示すが、得られたポリマーはtanδが最大値を示す温度が高く、低温特性が劣っていることが分かる。
【0065】
比較例2
鎖延長剤である4,4’− ジフェニルメタンジイソシアネートを用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてポリマーを得た。得られたポリマーの各物性を測定し、その結果を表1に示すが、得られたポリマーは還元粘度が1程度と小さく、そのため耐熱老化性が劣っている(保持率<50%)ことが分かる。
【0066】
比較例3
東洋紡績(株)社製ペルプレンP90B(ポリブチレンテレフタレートとポリオキシテトラメチレングリコールからなるポリエステルエラストマー)に関し、各物性を測定しその結果を表1に示すが、耐熱老化性が劣ることが明らかである。
【0067】
比較例4
東洋紡績(株)社製ペルプレンS2002(ポリブチレンテレフタレートとポリカプロラクトンからなるポリエステルエラストマー)に関し、各種物性を測定しその結果を表1に示すが、耐水性が劣ることが明らかである。
【0068】
【表1】
【0069】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーは、表1からも明らかなように、耐熱老化テスト後の伸び保持率が50%以上である、また耐水テスト後の伸び保持率も50%以上である。さらに、損失正接が最大値を示す温度が低いことより、低温特性に優れることも明らかである。よって、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーは耐熱老化性、耐水性および低温特性に優れることがわかる。すなわち本発明は、耐熱老化性、耐水性、低温特性に優れるため、繊維、フィルム、シートをはじめとする各種成形材料に用いることができる。
また弾性糸およびブーツ、ギア、チューブ、パッキンなどの成形材料にも適しており、例えば自動車、家電部品等の耐熱老化性、耐水性、低温特性が要求される用途、具体的には、ジョイントブーツや、電線被覆材などに有用であり、産業界に寄与すること大である。
Claims (7)
- 曲げ弾性率<1000MPaであり、耐熱老化テスト後の切断時伸び保持率>50%、耐水老化テスト後の切断時伸び保持率>50%であり、かつ、損失正接tanδが最大値を示す温度が<−15℃である熱可塑性ポリエステルエラストマーであって、
該熱可塑性ポリエステルエラストマーが、主として芳香族ジカルボン酸と脂肪族または脂環族ジオールとからなるハードセグメント、および主として脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントによって構成され、セグメントが鎖延長剤により結合されており、
該ソフトセグメントが水添ダイマージオールを含むことを必須とする脂肪族ポリカーボネートであり、水添ダイマージオールの共重合量が該セグメントの全グリコール成分の30モル%以下であることを特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマー。(ここで曲げ弾性率はASTM D790に基づいて測定した値であり、切断時伸びはASTMD638に基づいて測定した値である。また、耐熱老化テストとはギヤー式熱風乾燥機を用いた150℃、125日間の熱処理に相当し、耐水老化テストとは100℃の沸水中での2週間の処理に相当する。さらに、損失正接tanδは引っ張り強制振動型動的粘弾性測定装置(たとえばUBM社製Rheogel−E4000)を用い、−100℃より2℃/分で昇温しながら11Hzにおいて測定するものとする。) - 曲げ弾性率<1000MPaであり、耐熱老化テスト後の切断時伸び保持率>50%、耐水老化テスト後の切断時伸び保持率>50%であり、かつ、損失正接tanδが最大値を示す温度が<−15℃である熱可塑性ポリエステルエラストマーであって、
該熱可塑性ポリエステルエラストマーが、主として芳香族ジカルボン酸と脂肪族または脂環族ジオールとからなるハードセグメント、および主として脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントによって構成され、セグメントが鎖延長剤により結合されており、
該ハードセグメントが水添ダイマージオールを含むことを必須とするポリエステルであり、水添ダイマージオールの共重合量が該セグメント中の全グリコール成分の15モル%以下であることを特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマー。(ここで曲げ弾性率はASTM D790に基づいて測定した値であり、切断時伸びはASTMD638に基づいて測定した値である。また、耐熱老化テストとはギヤー式熱風乾燥機を用いた150℃、125日間の熱処理に相当し、耐水老化テストとは100℃の沸水中での2週間の処理に相当する。さらに、損失正接tanδは引っ張り強制振動型動的粘弾性測定装置(たとえばUBM社製Rheogel−E4000)を用い、−100℃より2℃/分で昇温しながら11Hzにおいて測定するものとする。) - 曲げ弾性率<1000MPaであり、耐熱老化テスト後の切断時伸び保持率>50%、耐水老化テスト後の切断時伸び保持率>50%であり、かつ、損失正接tanδが最大値を示す温度が<−15℃である熱可塑性ポリエステルエラストマーであって、
該熱可塑性ポリエステルエラストマーが、主として芳香族ジカルボン酸と脂肪族または脂環族ジオールとからなるハードセグメント、および主として脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントによって構成され、セグメントが鎖延長剤により結合されており、
該ハードセグメントが水添ダイマージオールを含むことを必須とするポリエステルであり水添ダイマージオールの共重合量が該セグメント中の全グリコール成分の10モル%以下であること、および、該ソフトセグメントが水添ダイマージオールを含むことを必須とする脂肪族ポリカーボネートであり水添ダイマージオールの共重合量が該セグメント中の全グリコール成分の30モル%以下であることを特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマー。(ここで曲げ弾性率はASTM D790に基づいて測定した値であり、切断時伸びはASTMD638に基づいて測定した値である。また、耐熱老化テストとはギヤー式熱風乾燥機を用いた150℃、125日間の熱処理に相当し、耐水老化テストとは100℃の沸水中での2週間の処理に相当する。さらに、損失正接tanδは引っ張り強制振動型動的粘弾性測定装置(たとえばUBM社製Rheogel−E4000)を用い、−100℃より2℃/分で昇温しながら11Hzにおいて測定するものとする。) - ハードセグメントを構成する芳香族ジカルボン酸が、主としてテレフタル酸、または2,6−ナフタレンジカルボン酸である請求項1から3のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー。
- 鎖延長剤がイソシアネート化合物またはそのカルボジイミド化された化合物であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー。
- 鎖延長剤がフェニルカーボネート化合物またはフェニルエステル化合物であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー。
- 鎖延長剤がオキサゾリン化合物であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー。
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