一般的に、自動車のインストルメントパネル等にはベンチレータが装着されており、車室内に吹き出す空気の流れを運転者等が上下方向や左右方向に調整できるようにしている。このような自動車等に用いられるベンチレータに関する発明が、例えば特開2004−243946号公報(特許文献1)や、特開2006−306150号公報(特許文献2)などに開示されている。
前記特許文献1に記載されているベンチレータ71(レジスタとも言う)は、図7に示したように、円筒形に形成されたリテーナ72と、リテーナ72の吹出口側に係止されるベゼル73と、リテーナ72内部で同リテーナ72の円周方向に回動可能に配された円筒フレーム74と、円筒フレーム74の内側に軸支された2つのルーバー75a,75bと、円筒フレーム74の上流側でリテーナ72の内壁に軸支されたシャットバルブ76(ダンパープレート)とを有している。
この特許文献1において、シャットバルブ76の周縁にはシール材76aが取着されている。また、各ルーバー75a,75bの裏面側には取付柱77a,77bが突設されており、これらの取付柱77a,77bの先端部にピン78を介してリンク部材79が連結されている。これにより、各ルーバー75a,75bは、リンク部材79を通して互いに連動して回動するように構成されている。
更に、リンク部材79とシャットバルブ76との間には、ルーバー75a,75bの開閉動作に連動してシャットバルブ76を開閉させるリンク機構80が設けられている。このリンク機構80は、リンク部材79に形成された長孔79aと、同長孔79aにピン81を介して連結した二股状の連結部材82と、連結部材82の上流側端部に配された軸部82aを中心に回動可能に嵌合したロッド部材83と、シャットバルブ76の裏面側に突設され、ピン84を介してロッド部材83を連結する連結柱85とにより構成されている。またこの場合、リテーナ72の内側には、リンク機構80の連結部材82の軸部82aとロッド部材83の軸受部をリテーナ72の中心線上にガイドするように、十字フレーム86とガイド部87とが設けられている。
このような構成を有する特許文献1のベンチレータ71において、例えば空調装置から供給される空気をベンチレータ71から吹き出す場合は、ベンチレータ71の吹出口を閉鎖した状態から上部ルーバー75aの上半部を指等で押し込む。これにより、上部ルーバー75aと下部ルーバー75bとがリンク部材79により連動してその回転軸88a,88bを中心にして図7の断面図にて反時計方向に回動し、各ルーバー75a,75bがリテーナ72の中心線方向に対して傾斜した状態又は平行な状態に維持される。それとともに、シャットバルブ76がルーバー75a,75bの回動に連動して図7の断面図にて時計方向に回動し、リテーナ72内の送風路が開いた状態となる。
このため、空調装置から供給された空気はシャットバルブ76を通過し、回動させたルーバー75a,75bの向きに沿って車室内へ吹き出される。特に、特許文献1のベンチレータ71では、上部及び下部ルーバー75a,75bがその回転軸周りに回動可能に構成されているとともに、円筒フレーム74がリテーナ72の円周方向に回動可能に構成されている。このため、ルーバー75a,75b及び円筒フレーム74を回動させることにより、ベンチレータ71から吹き出す空気の流れ(風向)を上下左右に調整することができる。
また、特許文献1のベンチレータ71において、ベンチレータ71からの吹き出しを停止させる場合には、上部ルーバー75aの上半部を指等で操作し、図7の断面図にて閉鎖方向となる時計方向に回動させる。これによって、この上部ルーバー75aの回動に連動して下部ルーバー75bが時計方向に回動するため、ベンチレータ71の吹出口が上部及び下部ルーバー75a,75bによって閉鎖される。それとともに、上部ルーバー75aの回動に連動してシャットバルブ76が反時計方向に回動する。このとき、シャットバルブ76の周縁にはシール材76aが取り付けられているため、同シャットバルブ76によってリテーナ72内の送風路が略完全に閉鎖され、ベンチレータ71からの空気の吹き出しを停止させることできる。
しかしながら、この特許文献1のベンチレータ71は、ルーバー75a,75bを軸支している円筒フレーム74がリテーナ72の円周方向に回動するように構成されているため、空気の風向を例えば左右方向に調製するために円筒フレーム74を回動させたときに、ルーバー75a,75bとシャットバルブ76とが互いにねじれた位置関係に配される。このため、円筒フレーム74内で空気の流れがねじれてしまい、ベンチレータ71から吹き出す空気の流れが不安定になるという問題があった。
そこで、前記特許文献2では、上述の問題を解消したベンチレータが開示されている。即ち、この特許文献2に記載されているベンチレータ101は、図8に示したように、円筒形の外部ケース102と、同外部ケース102内で外部ケース102の円周方向に回動可能に配された円筒形の内部ケース103と、内部ケース103内の吹出口側端部に軸支された2つのルーバー104a,104bと、内部ケース103内でルーバー104a,104bよりも上流側に軸支されたシャットバルブ105とを有している。
この特許文献2においても、シャットバルブ105の周縁にはシール材105aが取着されている。また、各ルーバー104a,104bには第1リンク部材106がピンを介して連結されており、この第1リンク部材106を通して各ルーバー104a,104bが互いに連動して回動するように構成されている。更に、第1リンク部材106とシャットバルブ105との間には、ルーバー104a,104bの開閉動作に連動してシャットバルブ105を開閉させる第2リンク部材107が設けられている。
このような構成を有する特許文献2のベンチレータ101は、例えば図示しない空調装置から供給された空気を吹き出す場合、前記特許文献1と同様に、上部ルーバー104aの上半部を指等で押し込むことにより、上部ルーバー104aと下部ルーバー104bとが図7の断面図にて反時計方向に回動するとともに、シャットバルブ105が時計方向に回動する。このため、内部ケース103内の送風路が開き、空調装置から供給された空気がルーバー104a,104bの向きに沿って車室内へ吹き出される。
また、特許文献2のベンチレータ101は、ルーバー104a,104b及び内部ケース103を回動させることにより、ベンチレータ101から吹き出す空気の流れを上下左右に調整することができる。このとき、特許文献2のベンチレータ101では、ルーバー104a,104bの回転軸とシャットバルブ105の回転軸とが共に内部ケース103に軸支されているため、内部ケース103を外部ケース102の円周方向に回動させても、ルーバー104a,104bとシャットバルブ105との位置関係を一定の状態に維持することができる。このため、内部ケース103内で空気の流れがねじられることはなく、ベンチレータ101から吹き出す空気の流れを安定させることができる。
特開2004−243946号公報
特開2006−306150号公報
前記特許文献2のベンチレータ101において、例えばベンチレータ101からの空気の吹き出しを停止させる場合、上部ルーバー104aを指等で操作して時計方向へ回動させることによって、前記特許文献1と同様に、下部ルーバー104b及びシャットバルブ105もそれぞれ所定の方向に回動し、ベンチレータ101の吹出口が閉鎖されるとともに内部ケース103内の送風路も閉鎖される。
この場合、上部ルーバー104aの上端縁(上流側端縁)は、内部ケース103の内周面と同じ曲率を有する円弧形状に形成されているため、上部及び下部ルーバー104a,104bが時計方向に回動して吹出口を完全に閉鎖する前に、上部ルーバー104aの上端縁と内部ケース103の内周面との間に空気の通り口として隙間が形成され、この隙間はベンチレータ101を吹出口側から見たときに三日月形状を呈している。
また、特許文献2のベンチレータ101では、上部及び下部ルーバー104a,104bの回動軸とシャットバルブ105の回動軸との位置関係が一定の状態に維持されているとともに、ルーバー104a,104bが回動して吹出口を閉鎖する際に、シャットバルブ105は上部ルーバー104aの回動に連動して反時計方向に回動し、内部ケース103内で送風路を閉鎖する。
この場合、空調装置から供給された空気は、シャットバルブ105の傾きに沿って流れるため、シャットバルブ105が送風路を閉鎖する直前に、ベンチレータ101の吹出口において上部ルーバー104aの上流側端縁と内部ケース103の内周面との間に吹き込むようになる(図8を参照)。
このとき、上部ルーバー104aの上流側端縁と内部ケース103の内周面との間に吹き込む空気は、内部ケース103の内周面とシャットバルブ105との間を通過することによって絞られるため、空気の流速が高められる。このため、特許文献2のベンチレータ101において、その吹出口がルーバー104a,104bで閉鎖される直前の状態では、空調装置から供給された空気がその流速を高められた状態で上部ルーバー104aの上流側端縁と内部ケース103の内周面との間に三日月形状に開口している隙間から車室内に吹き出される。
ところで、近年では自動車に装備される各種設備も高性能化してきており、例えば空調装置では車室内をより短時間で快適な温度に制御するために、温度調整された空気の供給流量を増大することが図られてきている。しかしながら、このような空調装置における供給流量の増大に伴って、以下のような問題が新たに生じてきている。
即ち、前記特許文献2のベンチレータ101において、車室内への空気の吹き出しを停止させるため、前述のようにルーバー104a,104bを時計方向に回動させるとともにシャットバルブ105を反時計方向に回動させて吹出口と内部ケース103内の送風路とを閉鎖する場合、空気がシャットバルブ105により上部ルーバー104aの上流側端縁に案内される。
この場合、空調装置から供給される空気の流量が増大すると、上部ルーバー104aの上流側端縁に案内された空気が、吹出口が閉鎖される直前に上部ルーバー104aの上流側端縁と内部ケース103の内周面との間に形成された三日月形状の隙間を高い流速で通過するため、当該三日月形状の隙間から高音のピーというような笛吹き音が鳴ることがあった。このような笛吹き音は、空調装置から供給する空気の流量が少ない場合には発生しないものの、空気の流量を増大させると耳障りな音となるという問題があった。
なお、このような笛吹き音は、前記特許文献1に記載されているベンチレータ71において、例えばルーバー75a,75bの回転軸88a,88bとシャットバルブ76の回転軸とが互いに平行な位置関係にある状態で吹出口を閉鎖する直前にも同様に発生するという問題があった。
本発明は、かかる従来の課題を解消すべくなされたものであり、その具体的な目的は、吹出口から吹き出す空気の風向を上下方向・左右方向に容易に調整できるとともに、風向を調整しても吹き出した空気の流れを安定させることができ、且つ、空気の吹き出しを停止させる際に高音の笛吹き音が発生することのないベンチレータを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明により提供されるベンチレータは、円筒状の外部ケースと、前記外部ケース内に、同外部ケースの中心線を回動軸として回動可能に嵌着された円筒状の内部ケースと、前記内部ケースの空気吹出口側に配され、同内部ケースの中心線方向に対して交差する回動軸により両端が回動可能に枢支され、前記内部ケースの吹出口を閉鎖する少なくとも1枚の風向調整用のルーバーと、前記内部ケース内の前記ルーバーよりも上流側に配され、前記ルーバーの回動軸と平行な回動軸により回動可能に枢支されたシャットバルブと、前記ルーバーと前記シャットバルブとの間に配され、前記ルーバーの回動と前記シャットバルブの回動とを連動させる第1リンク部材とを備え、前記ルーバーにより前記吹出口を閉鎖したときのルーバー全体の外周端縁が前記内部ケースの吹出口側端部の内周面に沿うように、前記ルーバー外周端縁の少なくとも円弧部分が、前記内部ケースの内周面と同じ曲率半径を有し、前記ルーバーは、前記吹出口の閉鎖時に、前記内部ケースにおける吹出口側端部の第1内周面に当接する第1外周端縁と、前記吹出口側端部の前記第1内周面に対向する第2内周面に当接する第2外周端縁とを有し、前記第1外周端縁は、前記ルーバーを回動させて前記吹出口を閉鎖するまで、上流側から前記第1内周面に徐々に接近し、前記第1内周面との間に三日月形状の隙間を漸次細くしながら形成し、前記第2外周端縁は、前記ルーバーの回動による前記吹出口の閉鎖時に、前記内部ケース外から前記内部ケースの吹出口側開口端を越えると前記第2内周面に当接し、前記シャットバルブは、前記第1リンク部材により、前記ルーバーの回動に追従して前記ルーバーの回動方向と同じ方向に回動し、前記内部ケース内を流れる空気を前記第2外周端縁と前記第2内周面との間に形成される隙間に向けて案内するように構成されてなることを最も主要な特徴とするものである。
また、本発明のベンチレータにおいて、前記内部ケースの吹出口側に、複数の前記ルーバーが配されており、複数の前記ルーバーには、各ルーバーを互いに略平行な状態に維持しながら各ルーバーの回動を互いに連動させる第2リンク部材が連結されていることが好ましい。
更に、本発明のベンチレータにおいて、複数の前記ルーバーは、同ルーバーを全開にしたときの各上流側端部にリンク取付柱を有し、前記第2リンク部材は、複数の孔部が形成された平板部材により構成され、前記孔部に挿通されるピンを介して前記各ルーバーの前記リンク取付柱に連結されてなり、前記第1リンク部材は、その上流側に屈曲部が形成され、且つ、前記シャットバルブの上流側半部と連結する上流側連結部と、前記ルーバーの前記リンク取付柱に前記ピンを介して連結する下流側連結部とを有していることが好ましい。
本発明のベンチレータは、円筒状の外部ケース及び内部ケースと、内部ケース内に回動可能に枢支されたルーバーと、内部ケース内でルーバーの回動軸と平行な回動軸により回動可能に枢支されたシャットバルブと、ルーバーの回動とシャットバルブの回動とを連動させる第1リンク部材とを備えている。
また、本発明のベンチレータは、ルーバーにより吹出口を閉鎖したときのルーバー全体の外周端縁が内部ケースの吹出口側端部の内周面に沿うように、ルーバー外周端縁の少なくとも円弧部分が、前記内部ケースの内周面と同じ曲率半径を有している。更に、シャットバルブは、ルーバーの回動方向と同じ方向に回動するように構成されている。
このような構成を有する本発明のベンチレータであれば、ルーバーがその回転軸周りに回動可能に構成されているとともに、内部ケースが外部ケースの円周方向に回動可能に構成されているため、ルーバー及び内部ケースを所望の向きに回動させることにより、ベンチレータから吹き出す空気の風向を上下左右に容易に調整することができる。
また、本発明のベンチレータでは、ルーバーの回転軸とシャットバルブの回転軸とが共に内部ケースに軸支されているため、内部ケースを外部ケースの円周方向に回動させても、ルーバーとシャットバルブとの位置関係を一定の状態に維持することができる。このため、内部ケース内で空気の流れがねじられることはなく、ベンチレータから吹き出す空気の流れを安定させることができる。
更に、本発明のベンチレータでは、例えばルーバーで吹出口を閉鎖してベンチレータから空気の吹き出しを停止させる場合、ルーバー全体の外周端縁のうちの円弧部分が内部ケースの内周面と同じ曲率半径を有しているため、例えばルーバーの上流側端縁と内部ケースの内周面との間には、吹出口が閉鎖する直前に三日月形状の隙間が形成される。
しかしこの場合、本発明のベンチレータによれば、シャットバルブがルーバーの回動方向と同じ方向に回動するように構成されているため、シャットバルブを通過して流速が高められた空気は、ルーバーの上流側端縁には流れ難く、ルーバーの裏面(内表面)に沿って下部の下流側端縁の方に案内される。
これにより、空調装置からベンチレータに供給される空気の流量が多くても、シャットバルブを通過した空気が、従来のようにルーバーの上流側端縁と内部ケースの内周面との間に形成された三日月形状の隙間に高い流速で吹き込むことを防止できるため、当該三日月形状の隙間から笛吹き音が発生することを防ぐことができる。
このような本発明のベンチレータにおいて、内部ケースの吹出口側には、複数のルーバーが配されている。また、複数のルーバーには、各ルーバーを互いに略平行な状態に維持しながら各ルーバーの回動を互いに連動させる第2リンク部材が連結されている。これにより、ベンチレータから吹き出す空気の流れをより容易に所望の方向に向けることができる。
本発明のベンチレータにおいて、複数の前記ルーバーは、それぞれの上流側端部にリンク取付柱を有している。また、前記第2リンク部材は、複数の孔部が形成された平板部材により構成され、前記孔部に挿通されるピンを介して前記各ルーバーのリンク取付柱に連結されている。更に、前記第1リンク部材は、その上流側に屈曲部が形成され、且つ、その上流側連結部でシャットバルブの上流側半部と連結するとともに、下流側連結部でルーバーのリンク取付柱とピンを介して連結している。これにより、複数のルーバーを互いに連動させて同じ方向に回動させるとともに、シャットバルブをルーバーの回動に連動させてルーバーの回動方向と同じ方向に容易に回動させることができる。
以下、本発明に係るエアバッグ装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
ここで、図1は、本実施形態のベンチレータを吹出口側から見た斜視図であり、図2は、同ベンチレータを空気供給口側から見た斜視図である。また、図3は、同ベンチレータを分解して示した分解斜視図であり、図4は、同ベンチレータにおいてルーバーが全開状態のときの断面図である。
なお、以下では、本実施形態のベンチレータを理解し易く表現するために、図1及び図4に示したようにルーバーの回転軸を水平な状態に保持してベンチレータを吹出口側から見たときにおける垂直方向及び水平方向を、それぞれ上下方向及び左右方向として説明を行う。
本実施形態のベンチレータ1は、円筒状のケース部2と、ケース部2内の吹出口側に回動可能に枢支された3つの風向調整用ルーバー3と、ルーバー3に連結された第2リンク部材4と、ケース部2内のルーバー3よりも上流側に回動可能に枢支されたシャットバルブ5と、ルーバー3とシャットバルブ5との間に配された第1リンク部材6とを備えている。
前記ケース部2は、円筒状の外部ケース11と、外部ケース11内に嵌着された円筒状の内部ケース21とを有している。また、同ケース部2の吹出口側端部(下流側端部)には、環状のフィニッシャー8が取着されており、その上流側端部には、シャットバルブ5を保護するための略半球形状を有する網状のカバー体9が取着されている。
本実施形態では、カバー体9を略半球形状に形成したことにより、ケース部2の軸方向の長さを短く形成するとともにシャットバルブ5の回動領域を容易に確保することができる。更に、カバー体9の基部外周面には、弾性を有する環状のシール材10が配されており、このシール材10は、ベンチレータ1の上流側端部を図示しない送風ダクトに接続したときに、その接続部からの空気漏れを防止する。
外部ケース11の外周面には、フィニッシャー8やカバー体9の部材を係止するための突起状の部材係止部13,14が配されている。また、外部ケース11の円筒部分には、内部ケース21の後述するフランジ部23を嵌着するためのフック部15が外部ケース11の円周方向に所定の間隔で設けられている。
内部ケース21は、その左右両側部内面に互いに平行な平坦壁部22を有しており、これらの平坦壁部22にはルーバー3及びシャットバルブ5の回動軸34a〜34c,52を枢支するための孔部27が設けられている。また、内部ケース21の外周面には、外部ケース11のフック部15に嵌着させるためのフランジ部23と、外部ケース11の内周面に摺接して内部ケース21の位置を安定させる2つの突条部24a,24bと、リング取付部25とが形成されている。
更に、前記リング取付部25には、外部ケース11の内周面に摺接して摩擦を与える不織布製のリング部材26が固着されており、この不織布製リング部材26と2つの前記突条部24a,24bが外部ケース11に接することにより、外部ケース11内で内部ケース21を円周方向に回動操作する際に適度な操作荷重が付与され、また、回動操作した後の外部ケース11に対する内部ケース21の相対的な位置(傾き)を安定して維持することができる。
このような本実施形態のケース部2は、外部ケース11の吹出口7側から内部ケース21を挿入し、内部ケース21のフランジ部23を外部ケース11のフック部15に嵌着させることによって、内部ケース21が外部ケース11の中心線を回動軸として円周方向に回動可能に組み付けられて構成されている。また、外部ケース11に嵌着した内部ケース21は、外部ケース11から容易に抜出することがないように、ケース部2の上流側端部に取着されたカバー体9と、吹出口側端部に取着されたフィニッシャー8とによって上流側と下流側から支持されている。
本実施形態のベンチレータ1における前記ルーバー3は、上部に配され、上面視で略楕円形状を有する第1ルーバー3aと、下部に配され、上面視で略半月形状を有する第2ルーバー3bと、第1及び第2ルーバー3b間に配され、上面視で略半月形状を有する第3ルーバー3cとから構成されている。これらの第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cは、羽根部31a〜31cと、羽根部31a〜31cの左右両端部の裏面(下面)側に配された回転軸部32a〜32cと、羽根部31a〜31cの上流側端部に配されたリンク取付柱33a〜33cとをそれぞれ有しており、また、前記回転軸部32a〜32cの外面には回動軸34a〜34cが左右方向に突設されている。
従って、第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cは、各回動軸34a〜34cが前記内部ケース21の左右平坦壁部22に設けた孔部22に嵌入されており、各回動軸34a〜34cが、内部ケース21の中心線方向に対して交差し、且つ、互いに平行な状態で内部ケース21の吹出口7側に並列に枢支されている。また、第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cの各リンク取付柱33a〜33cには、後述するピン41を挿入可能な挿入孔39が穿設されている。
本実施形態における第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cは、内部ケース21の吹出口7を閉鎖するときに、ルーバー3全体の外周端縁が内部ケース21の下流側端部の内周面に沿うようにして、内部ケース21の吹出口7を適切に閉鎖するために、第1ルーバー3aの上流側端縁35aと第2ルーバー3bの下流側端縁36bとが内部ケース21の内周面と同じ曲率を有する円弧形状に形成されている。
なお、本実施形態のベンチレータ1では、ルーバー3を吹出口7の閉鎖方向に回動させた場合に、ルーバー3全体の外周端縁が内部ケース21の内周面に当接することによって吹出口7が完全に閉鎖するように構成されているが、本発明では、ベンチレータのデザインや機能等に応じて、ルーバーを吹出口の閉鎖方向に回動させた場合にルーバーの外周端縁と内部ケースの内周面との間に隙間を設けるようにしてベンチレータを構成することも可能である。
また、第1ルーバー3a及び第3ルーバー3cの下流側端縁36a,36cは、第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cを全開に回動させたときのベンチレータ1の外観を良好なものにするために、第2ルーバー3bの下流側端縁36bと同じ曲率を有する円弧形状に形成されている。
更に、第2ルーバー3b及び第3ルーバー3cの上流側端縁35b,35cは、左右方向に平行な直線形状(又は曲率の小さな円弧形状)に形成されている。なお、本実施形態において、第2ルーバー3b及び第3ルーバー3cの上流側端縁35b,35cは、例えば第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cを開き方向(図4〜図6の断面図にて反時計方向)に回動させたときに、第2ルーバー3b及び第3ルーバー3cの上流側端縁35b,35cが第2リンク部材4と当接することによって、羽根部31a〜31cが内部ケース21の軸線方向に略平行となる全開の状態で第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cの回動を停止させる役割を果たしている。
また、第2ルーバー3b及び第3ルーバー3cの上流側端部には、それぞれ第1ルーバー3a及び第2ルーバー3bの各下流側端部の形状に対応した凹部37b、37cが設けられている。これにより、例えば内部ケース21の吹出口7を閉鎖したときに(図6を参照)、第1ルーバー3aの下流側端部と第2ルーバー3bの上流側端部の凹部37b、及び第2ルーバー3bの下流側端部と第3ルーバー3cの上流側端部の凹部37cが互いに重なり合う。
従って、吹出口7の閉鎖時におけるルーバー3の外面側形状を、凹凸のない略平坦な状態にすることができるため、ベンチレータ1の見栄えを向上させることができる。更に、第1ルーバー3aの表面側には、ルーバー3の回動操作や内部ケース21の回動操作の操作性を向上させるために、指等が引っ掛かり易い操作用凹部38が形成されている。
本実施形態のベンチレータ1における前記第2リンク部材4は、3つの孔部42を有する直線状の平板部材により構成されており、第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cの各リンク取付柱33a〜33cにピン41を介して連結されている。この第2リンク部材4が第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cに連結されていることにより、各ルーバー3a〜3cの向き(傾斜方向)が互いに略平行な状態に維持され、また、各ルーバー3a〜3cの回動を互いに連動させることができる。
前記シャットバルブ5は、図3に示したように、互いに係着する2つの平板状部材51a,51b、及び、同平板状部材51a,51b間に挟持されるシール部材51cを組み合わせることにより構成されている。本実施形態において、前記シール部材51cは平板状部材51a,51bよりも全体的に広く形成されており、平板状部材51a,51bの周縁からシール部材51cが突出した状態でシャットバルブ5が組み立てられている。
また、このシャットバルブ5は、その長さ方向の略中央部にてその幅方向に突出した回動軸52と、回動軸52よりも上流側に配された第1リンク部材取付部53とを有している。この場合、回動軸52は、ルーバー3よりも上流側の位置にて、各ルーバーの回動軸34a〜34cと平行な状態となるように内部ケース21の平坦壁部22に形成した前記孔部27に枢支されている。また、第1リンク部材取付部53は、シャットバルブ5の表面側に設けた凹部内でシャットバルブ5の幅方向に架設された円柱状の軸部により形成されている。
前記第1リンク部材6は、その上流側に屈曲部61を有する平板状の部材により構成されており、その上流側端部にはシャットバルブ5の第1リンク部材取付部53に回動可能に係着させる略Y字状の上流側連結部62が設けられ、また、下流側端部には第1ルーバー3aのリンク取付柱33a〜33cにピン41を介して連結する下流側連結部63が設けられている。
このような第1リンク部材6により第1ルーバー3aとシャットバルブ5とが接続されていることによって、シャットバルブ5を第1ルーバー3aの回動に連動させて、ベンチレータ1の断面視にて、同シャットバルブ5を第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cの回動方向と同じ方向に回動させることができる。
特に本実施形態では、第1リンク部材6の上流側に屈曲部61が設けられていることにより、例えば第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cが全開の状態から吹出口7を閉鎖する方向(図4にて時計方向)に回動を行う際に、第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cの回動開始直後にはルーバー3a〜3cの回動が屈曲部61に吸収されるため、シャットバルブ5は殆ど回動せず、ルーバー3a〜3cの回動開始から少し遅れたタイミングで回動し始める。
これにより、例えば第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cを全開の状態から風向調整のために所望の角度まで回動させても、シャットバルブ5の回動量をルーバー3a〜3cよりも小さくすることができる。従って、ベンチレータ1から空気が吹き出している間は、シャットバルブ5が内部ケース21内の空気の流れへ与える影響を小さくすることができる。
更に、シャットバルブ5は、第1リンク部材6に屈曲部61が設けられていることにより、第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cが吹出口7を完全に閉鎖する間際におけるシャットバルブ5の回動速度を速めることができる。従って、例えば内部ケース21内の送風路を完全に閉鎖する場合に、第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cの回動中にはシャットバルブ5が前述のようにルーバー3a〜3cよりも遅れて回動するものの、ルーバー3a〜3cが吹出口7を完全に閉鎖する直前にシャットバルブ5の回動速度が速まることにより、吹出口7が閉鎖すると同時に内部ケース21内の送風路も完全に閉鎖することができる。
以上のような構成を有する本実施形態のベンチレータ1は、自動車のインストルメントパネルに設けられた開口部に装着されるとともに、ベンチレータ1の上流側端部が図示しない送風ダクトに接続されて使用される。そして、図示しない空調装置によって温度調整された空気が送風ダクトを介してベンチレータ1に供給されているときに、第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cや内部ケース21をそれぞれ所望の方向(角度)に回動させることにより、ベンチレータ1から車室内に吹き出す空気の流れを上下方向や左右方向に容易に調整することができる。
このとき、本実施形態のベンチレータ1では、ルーバー3の回動軸34a〜34cとシャットバルブ5の回動軸52とが共に内部ケース21に軸支されているため、風向調整のために内部ケース21を円周方向に回動させても、ルーバーの回動軸34a〜34cとシャットバルブ5の回動軸52との位置関係を常に平行な状態に維持することができる。これにより、内部ケース21内の空気の流れが、例えば前記特許文献1のようにねじられることはなく、空気をベンチレータ1から第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cの向きに沿って安定に吹き出させることができる。
更に、図4に示したように第1ルーバー3a〜第3ルーバー3c及びシャットバルブ5を内部ケース21の軸方向と略平行に保持している全開の状態から、ベンチレータ1を閉鎖して空気の吹き出しを停止させる場合には、第1ルーバー3aを指等で操作して同第1ルーバー3aを図4にて時計方向(閉鎖方向)に回動させる。これにより、図5に示したように、第1ルーバー3aの回動に連動して第2ルーバー3b及び第3ルーバー3cが時計方向へ回動するとともに、シャットバルブ5も時計方向へ回動する。
このとき、第1ルーバー3aの上流側端縁35aと内部ケース21の内周面との間には、ベンチレータ1を吹出口7側から見たときに三日月形状の隙間が形成され、この三日月形状の隙間は、第1ルーバー3aが時計方向へ回動するにつれて細くなる。また、シャットバルブ5が第1ルーバー3aの回動に連動して時計方向へ回動することにより、空調装置等から供給された空気を、図5に矢印で示したようにシャットバルブ5の傾きに沿うようにして第2ルーバー3bの裏面側に案内し、主に第2ルーバー3bの下流側端縁36bと内部ケース21の内周面との間に形成される隙間から車室内に吹き出す。
これにより、本実施形態のベンチレータ1では、空調装置から供給される空気の流量が多くても、シャットバルブ5により流速が高められた空気が、例えば前記特許文献2に記載されているベンチレータのように(図8を参照)、第1ルーバー3a側に形成される三日月形状の隙間に吹き込むことはない。このため、ベンチレータ1の吹出口7をルーバー3a〜3cで閉鎖する際に、当該三日月形状の隙間から耳障りな笛吹き音が発生することを防止できる。
一方、本実施形態において、シャットバルブ5により流速が高められた空気は第2ルーバー3bの裏面側に案内されるものの、この第2ルーバー3bの下流側端縁36bは吹出口7を閉鎖する際に図5の断面視にて吹出口7の外側から時計方向に回動するため、第2ルーバー3bの下流側端縁36bと内部ケース21の内周面との間に形成される隙間は、第1ルーバー3aの上流側端縁35aと内部ケース21の内周面との間に形成される三日月形状の隙間よりも大きく開口している(図6を参照)。
しかも、本実施形態のベンチレータ1は、前述のように第1ルーバー3a〜第3ルーバー3cが吹出口7を閉鎖する間際にシャットバルブ5の回動速度が早くなるように構成されているため、吹出口7がルーバー3a〜3cで完全に閉鎖される直前まで、第2ルーバー3bの下流側端縁36bと内部ケース21の内周面との間に形成される隙間を大きく開いておくことができる。従って、第2ルーバー3bの裏面側に案内された空気は、第2ルーバー3bの下流側端縁36bと内部ケース21の内周面との間に形成される隙間を高い流速で通過しても、当該隙間から耳障りな笛吹き音を発生させることなく車室内へ円滑に吹き出される。
また、本実施形態のベンチレータ1において、吹出口7を閉鎖して空気の吹き出しを停止させた後、再度、同吹出口7から空気を吹き出させる場合には、第1ルーバー3aの上流側部分を指等で外側から押し込んで同第1ルーバー3aを回動軸34a周りに図6にて反時計方向(開き方向)へ回動させる。これによって、同第1ルーバー3aの回動に連動して第2ルーバー3b、第3ルーバー3c、及びシャットバルブ5も反時計方向へ回動し、吹出口7及び内部ケース21内の送風路が開くため、送風ダクトを介して供給された空気を車室内へ円滑に吹き出させることができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば、前記実施形態のベンチレータ1では、その吹出口7に3枚のルーバー3a〜3cが取り付けられているものの、本発明においてルーバーの枚数は、1枚、2枚、又は4枚以上に設定してもよく、また、ルーバーの形状等もベンチレータのデザイン等に応じて容易に変更することができる。