JP4969750B2 - N−(4,5−ビス−メタンスルホニル−2−メチル−ベンゾイル)−グアニジン、その塩酸塩の製造方法 - Google Patents

N−(4,5−ビス−メタンスルホニル−2−メチル−ベンゾイル)−グアニジン、その塩酸塩の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、N−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン,塩酸塩水和物、ならびにN−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン,塩酸塩および塩酸塩水和物の製造方法に関する。N−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン,塩酸塩水和物は、NHE−1選択的Na+/H+アンチポーターの阻害剤である。
【0002】
スルホニルベンゾイルグアニジンは既知であり、たとえば、EP 0 758 644 A1に記載されている。これらの物質は、細胞のNa+/H+アンチポーターの阻害剤であり、すなわち細胞のNa+/H+交換機構を阻害する活性成分であり(Duesingら、 Med. Klin. 1992, 87, 367-384)、このため、特に酸欠の結果として起きる不整脈の処置に適する良好な抗不整脈剤である。
【0003】
この物質は、良好な心臓保護作用を示し、従って、急性心筋梗塞、梗塞の予防、梗塞後の処置、慢性心不全の処置、および狭心症の処置に特に適している。それらはさらに、すべての病理学的な低酸素および虚血性損傷に対抗し、主としてまたは二次的に生じた疾病を、それにより処置することができる。これらの活性成分は予防的な適用にも同様に非常に適している。
【0004】
病理学的な低酸素または虚血性状態におけるこれらの物質の保護作用のため、供給の一時的な減少を伴なう器官の保護のための外科的介入において、除去器官の保護のための器官移植において、血管形成の血管または心臓の介入において、神経系の虚血において、ショック状態の治療において、および本態性高血圧症の予防のために、さらに可能性のある適用がそれから生じる。
【0005】
これらの化合物は、さらにまた、動脈硬化症、糖尿病および糖尿病の後期合併症、腫瘍疾患、線維性疾患、特に、肺、肝臓および腎臓のおよび器官肥大ならびに過形成などの細胞増殖により起きる疾患において、治療剤として用いることもできる。加えて、この化合物は、例えば、赤血球、血小板または白血球中で、Na+/H+アンチポーターの増大した活性により付随して起こる疾患の認識のための診断的な使用に適している。
【0006】
従って、これら化合物は、人間および家畜用の医薬の活性成分として使用することができる。さらにそれらは、さらなる医薬の活性成分の製造用の中間体として使用することができる。
【0007】
本発明は、極めて良好な経口の吸収特性を有する高活性化合物を見出すことを目的とする。
【0008】
N−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン,塩酸塩水和物は、たいへん好適で、かつ高い活性物質であることが立証され、特に良好な経口の吸収特性により区別される。従って、N−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン,塩酸塩水和物は、好ましくは経口の形で投与される。
【0009】
経口投与後の消化管からの吸収は、経口および静脈内投与(投与量を統一化した(dose-standardised)AUCpo/AUCiv)[AUC=曲線下面積(area under the curve)]後に、血漿中の投与された活性成分の決定された濃度を比較することにより、算出することができる。ラットは、吸収率(経口投与した放射能活性の標識化物質の)98%を示した。イヌにおいて88%〜99%の、2種のサルにおいて、75%および96%の塩酸塩水和物の生体利用効率がみられた。吸収率が、決定された生体利用効率に対し少なくとも等しいかまたはそれ以上であるので、これらの動物種においても極めて良好な吸収がみられた。
【0010】
本発明は、従って、N−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン,塩酸塩水和物に関する。当該発明は、EP 0 758 644の選択発明とみなすことができる。
【0011】
この物質は非常に有望であるので、その製造には、とても大きな関心が寄せられている。遊離したN−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン塩基およびその類似体の製造は、上記に引用した EP 0 758 644 A1 に記載されている。
【0012】
しかしながら、既知の合成方法は、多数の個々の工程を含むものであり、これらのうちのいくつかは、満足しうる収率を有するものではなく、また、例えば、メチルメルカプタンとの反応またはスルホンを与えるチオエーテルの酸化などの、環境を汚染し、および危険な反応条件を含むものである。
【0013】
従って、N−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン、その塩酸塩および塩酸塩水和物の製造にのための改良した方法を見出すことには、大きな関心が寄せられる。
【0014】
従って、同様に、慣用の方法と比較して、より短く、より効果的なNa+/H+アンチポーター阻害剤の新規で異なる合成方法を見出すことが、本発明の目的である。
【0015】
本発明は、式I
【化4】
Figure 0004969750
(式中、Meはメチルである)
のN−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン,塩酸塩の、および塩酸塩水和物の製造方法であって、
第一に、式II
【化5】
Figure 0004969750
(式中、Meはメチル基であり、Qはフッ素または塩素である)
の出発化合物とメタンスルフィン酸塩との、活性化された芳香環における求核置換での反応により、4−メタンスルホニル基を一工程の反応で導入し、
次いで第二工程において、式III
【化6】
Figure 0004969750
の化合物を酸塩化物へ変換し、グアニジンと反応させてN−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジンを得、
そして第三工程において、HCl水溶液中での反応により式Iの塩酸塩および/または塩酸塩水和物へ変換することを特徴とする、前記方法に関する。
【0016】
式IIの出発化合物は、以下のようにして製造される。例えば、2−ブロモ−5−クロロトルエンから出発して、ハロゲン−金属交換およびCO処理により、4−クロロ−2−メチル安息香酸を得、続いて、4−クロロ−2−メチル安息香酸をクロロスルホン酸、亜硫酸ナトリウムおよびヨウ化メチルとともに反応させ、4−クロロ−2−メチル−5−メチルスルホニル安息香酸を得る。または、2−ブロモ−5−クロロトルエンを、メタンスルホン酸および塩化チオニルとともに、フリーデル−クラフツ触媒の存在下で、フリーデル−クラフツ様の反応をさせ、4−クロロ−2−メチル−5−メチルスルホニルフェニルブロミドを得、続いて、加圧下のオートクレーブで、パラジウム触媒を通して、カルボニル基により臭素を交換するカルボニル反応を行い、温度を上昇させ、4−クロロ−2−メチル−5−メチルスルホニル安息香酸を得る。選択された反応条件は、刊行物により既知である(lit.:Houben-WeylによるMethoden der Organ. Chemie [有機化学の方法]、 Georg-Thieme 出版社、Stuttgart)。しかしながら、本明細書で詳細を説明することは省略するが、式IIの化合物の製造について、刊行物で既知になっている他の方法を使用することも可能である。
【0017】
メタンスルフィン酸塩という用語は、メタンスルフィン酸のアルカリ金属塩、特に、メタンスルフィン酸ナトリウムもしくはメタンスルフィン酸カリウムを示し、またはメタンスルフィン酸のアルカリ土類金属塩、特にメタンスルフィン酸カルシウムまたはスルフィン酸マグネシウムをいう。特に好適なのは、メタンスルフィン酸ナトリウムの使用である。
【0018】
式IIで表される化合物のメタンスルフィン酸塩、好ましくは、メタンスルフィン酸ナトリウムとの反応は、A. Ulmanらによる J. Org. Chem. 1989, 54, 4691- 4692の方法と同様にして実施される。反応は、好ましくは、極性溶媒中で、反応温度は10〜200°、好ましくは50〜180°、特に好ましくは、80〜140°で行われる。特に好ましい溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、または1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、格別に好ましくは、DMFまたはNMPである。メタンスルフィン酸塩は、一般的に過剰に用いられる。上述の反応条件下では、式IIIで表される4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチル安息香酸は、独占的に生じる。
【0019】
工程2における式IIIで表される化合物のグアニジン化は、酸塩化物法、例えば、式IIIで表される化合物を、塩化チオニルと反応させて酸塩化物を得て、さらにグアニジンと反応させる、という方法に制限されるものではない。グアニジノ基を導入することが記載された刊行物による、多数の既知の方法が存在する(例えば、Houben - Weylによる、Methoden der organischen Chemie[有機化学の方法]、Georg - Thieme出版社、Stuttgartなどの標準的学術書)。工程2におけるグアニジン化において、特に、N−(ベンジルオキシカルボニル)グアニジンと式IIIで表される遊離酸との反応、続いて GE 199 19 349 で詳述される、グアニジノ基と作用させるベンジルオキシカルボニル保護基(Zと略する)を除去する反応が可能である。ベンジルオキシカルボニルグアニジンの製法について、M. GoodmanらによるPCT Int. Appl. WO 9852917, 1998, K. Nowakによる、Rocz. Chem. 1969, 43, 231-232、またはR. Krug および K.Nowakによる、Rocz. Chem.1967, 41, 1087-1091)を参照できる。カップリングは、既知のMukaiyama法により実施され、T. MukaiyamaによるAngew. Chem., Int. Ed. Engl. 1979, 18, 707-721を参照できる。触媒水素化によるZ保護基の除去は、この目的のための一般的な条件下で、実施される。(lit. :T.W.Greene,P.G.M.WutsによるProtective Groups in Organic Chemistry, 2nd Edn., Wiley, New York 1991 またはP. J. Kocienski, Protecting Groups, 1st Edn., Georg-Thieme 出版社,Stuttgart-New York, 1994)。
【0020】
工程1および2における発明に従って製造された、N−(4,5ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジンは、刊行物で既知である、塩酸以外の酸による方法で、塩に変えることも可能である。この目的に適する酸は、EP 0 758 644に開示される。
【0021】
スルホニルベンゾイルグアニジンの製法として、EP 0 758 644 に説明されている方法において、カルボニル基に対してパラ位のスルホニル基は、求核的なハロゲン−硫化アルキル交換を経て、続いて合成したチオフェノールエーテルの酸化により導入される。
【0022】
本発明の現在の反応は、1段式の反応工程で、パラ位のスルホニル基を導入する。合成工程の数とそれと関連する製造コストは、削減される。さらにまた、大きな工業的規模では過酸形成の可能性のために、技術的に安全性を確保する措置が不可欠であるメチルメルカプタンとの反応および酸化の反応が、本反応では存在しない。
【0023】
従って、有効な反応は、今まで既知の工程と比較して、合成工程の数および全収率に関して両方とも、格別に向上したN−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン、塩酸塩およびその塩酸塩水和物の製造を可能とするものである。
【0024】
さらなる解説がなくても、当業者であれば、より広い範囲において上記の記述を利用することが可能でなことは当然である。従って、好ましい実施態様は、単に記述的な開示としてみなされるべきであり、決して完全に制限されるべきではない。
【0025】
上記および下記に述べた、すべての適用および刊行物の完全な開示の内容は、参考文献の方法により、この適用に組み込まれる。上記および下記のすべての温度は、摂氏(℃)で与えられる。
【0026】
例:
1. 4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチル安息香酸の合成
4−クロロ−2−メチル−5−(メチルスルホニル)安息香酸は15lのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に室温で(25°)で溶解させ、および続いて50°まで加温される。3.6kgのメタンスルフィン酸ナトリウムはこの溶液に加えられる。内部温度は、このとき120°まで上昇させ、およびこの温度で、2日間攪拌され、さらに3kgのメタンスルフィン酸ナトリウムが24時間後に添加される。25°まで冷却後、反応混合物を、40lの水中に入れ、300gの活性炭および1kgの珪藻土(kieselguhr)を添加する。5lの氷は、ろ液に加えられ、3.5lの濃塩酸は1滴づつ(pH1まで)加えられる。2−プロパノールからの再結晶化により、3.8kgの4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチル安息香酸が与えられる;融点は、234〜235°である。
【0027】
2. N−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジンの合成
2.1. 酸塩化物の合成
15lの塩化チオニルは、最初40°に温められ、50mlのDMFが加えられる。3.8kgのビスメタンスルホニル−2−メチル安息香酸は、ゆっくりと攪拌しながら加えられ、および混合物は、その後、1時間、沸点で攪拌される。冷却後、過剰のSOClは除去され、残渣は、5lのトルエンで何度も共蒸留(codistilled)され、粗製品としてさらに反応させる4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイルクロライドを与える。
【0028】
2.2. グアニジンの合成
1.4kgのナトリウムは保護ガス存在下で、15lの沸騰メタノールに溶解させ、さらに10lのメタノールで希釈する。5.9kgのグニジン塩酸塩は、溶液に加えられ、20〜22°に冷却しながら混合物は1時間攪拌される。結果として生じる塩化ナトリウムは、その後濾過され、溶液は、蒸発させる。残渣はトルエンで、共蒸留(codistilled)され、およびその後、10lのDMFに加える。
【0029】
2.3. N−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジンの合成
2.1.で説明したように調整した4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイルクロライドは5lのDMFに溶解させ、この溶液は、12°で、1滴づつ、2.2.で説明したように調整したグアニジン溶液に添加される。反応混合物は、20°で、5時間攪拌され、および45lの冷水(0〜5°)がゆっくりと加えられる。析出した結晶は、濾過され、および 氷水(ice-water)、アセトニトリル、およびジエチルエーテルで洗浄される。粗結晶は、315lの温アセトニトリル/水(20:1)に溶解させる。溶液は、200gの活性炭で処理され、濾過され、および0°まで冷却後、64.8%の収率のN−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジンのアセトニトリル付加物として得ることができる。融点は、233〜234°である。
【0030】
3.1. N−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン,塩酸塩水和物の合成
2.7kgのN−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジンは60°の水、25l中でけん濁させ、1NのHCl水溶液10.6lが加えられる。80°まで加温後、透明な溶液が得られる。溶液は、ゆっくりと冷却され、50°で結晶化が始まり、収率97%のN−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン,塩酸塩水和物が与えられる。融点は、181〜188°である。
【0031】
3.2. N−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン、塩酸塩の合成
3.1でより調整されたN−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン,塩酸塩水和物は、120°、減圧下で恒量まで乾燥され、N−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン、塩酸塩が得られる。
【0032】
3.3. N−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン、塩酸塩の合成
2.7kgのN−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジンは、60°のエタノール25l中でけん濁させ、1NのHCl水溶液10.6lが加えられる。80°まで加温後、透明な溶液が得られる。溶液は、ゆっくりと冷却され、50°で結晶化が始まる。得られたN−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン、塩酸塩は、続いて60°で恒量まで乾燥され、N−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン,塩酸塩を与える。

Claims (5)

  1. N−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン,塩酸塩水和物。
  2. 式I
    Figure 0004969750
    (式中、Meはメチルである)
    のN−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン,その塩酸塩、およびその塩酸塩水和物の製造方法であって、
    第一に、式II
    Figure 0004969750
    (式中、Meはメチル基であり、Qはフッ素または塩素である)
    の出発化合物とメタンスルフィン酸塩との求核置換での反応により、4−メタンスルホニル基を一工程の反応で導入し、
    次いで第二工程において、式III
    Figure 0004969750
    の化合物を酸塩化物へ変換し、グアニジンと反応させてN−(4,5−ビスメタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジンを得、
    そして第三工程において、HCl水溶液中での反応により式Iの塩酸塩および/または塩酸塩水和物へ変換することを特徴とする、前記方法。
  3. 第一工程において、メタンスルフィン酸ナトリウムを用いることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  4. 第一工程において、極性溶媒を用いることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
  5. 第一工程において、80から140°の間の反応温度に設定することを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
JP2001533105A 1999-10-26 2000-10-11 N−(4,5−ビス−メタンスルホニル−2−メチル−ベンゾイル)−グアニジン、その塩酸塩の製造方法 Expired - Lifetime JP4969750B2 (ja)

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