JP4968027B2 - 透過膜の阻止率向上方法、阻止率向上透過膜を用いる水処理方法および透過膜装置 - Google Patents

透過膜の阻止率向上方法、阻止率向上透過膜を用いる水処理方法および透過膜装置 Download PDF

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本発明は、逆浸透膜、ナノ濾過膜等の透過膜の阻止率、特に有機物に対する阻止率を向上させる方法、これにより得られる阻止率を向上させた透過膜を用いる水処理方法、およびこれらに適した透過膜装置に関するものである。
水処理に用いられる透過膜、特にナノろ過膜、逆浸透膜(RO膜)などの選択性透過膜として、ポリアミド膜が用いられている。このような透過膜に用いられるポリアミド膜としては、芳香族核に少なくとも2個の第一級アミンを有する芳香族ポリアミンと、芳香族核に平均して2より多いアシルハライド基を有する芳香族多官能性アシルハライドとの、反応生成物である架橋芳香族ポリアミドが用いられている。特に選択性透過膜に用いられるポリアミド膜としては、多孔性支持膜の表面に、2つ以上の反応性アミノ基を有する化合物層を形成し、この層に多官能性酸ハロゲン化物の溶液を接触させて架橋反応生成物としてのポリアミド製薄膜を形成したポリアミド複合膜が用いられている。
このようなポリアミド膜からなる透過膜の無機電解質や水溶性有機物等の分離対象物に対する阻止率は、水中に存在する酸化性物質や還元性物質などの影響、その他の原因による素材高分子の劣化によって低下し、必要とされる処理水質が得られなくなる。この変化は、長期間使用しているうちに少しずつ起こることもあり、また事故によって突発的に起こることもある。このような阻止率が低下した透過膜の阻止率を、阻止率向上剤により向上させ、性能を回復する方法が提案されている。
一般に高純度の純水を製造するための超純水製造システムには、逆浸透膜処理装置と、この逆浸透膜処理装置の透過水を高度処理する電気再生式脱イオン装置または他のイオン交換装置とが組み込まれている。一方、近年の半導体回路形成技術の進歩により、線幅65nm以下の回路を作成することが可能となってきている。それに伴い超純水に対する要求水質も高まっており、後段処理の負荷を軽減し、より高いレベルでの純水製造を実現する純水製造装置および純水製造方法の開発が望まれている。有機物成分に対してはデバイスヘの影響が特に懸念されており、これを極力排除した水が要求されている。有機物成分としては、イソプロパノール(IPA)はもとより、メタノールやエタノール等のより低分子量の物質の高除去性をもつRO膜が求められている。さらに、RO膜は運転時圧力の低圧化が進んでおり、低圧、超低圧で高阻止率が得られるRO膜が求められている。また、海水淡水化に用いられるRO膜においては、高いホウ素除去性能を持つRO膜が求められている。
特許文献1(特許2762358号公報)には、水軟化用膜の製造法において、ポリアミド逆浸透膜の阻止率を向上させるために、浸透膜を燐酸、亜燐酸、硫酸等の相容性を有する強鉱酸の水溶液と接触させて昇温した後、阻止率向上剤と接触させる方法が記載されている。阻止率向上剤としては、加水分解性タンニン酸、スチレン/マレアミド酸コポリマー、C乃至Cヒドロキシアルキルメタクリレートポリマー、コポリマーまたはターポリマー、複数個のスルホニウムもしくは第四アンモニウム基を有する第1のポリマーと複数個のカルボキシレート基を有する第2のポリマーから製造したコアセルベート、任意の他の置換基をもつ枝分れしたポリアミドアミン類、酢酸ビニルコポリマー、ヒドロキシエチル・メタクリレートとメタクリル酸またはメタクリルアミド(任意に他の混和性モノマーを含む)とのコポリマー、スチレン/マレアミド酸コポリマーなどが示されている。
しかしこの特許文献1の方法では、塩類主として硬度成分に対する阻止率を向上させることを目的としており、強鉱酸は透過膜の透過流束を増大させるために用いられているが、これにより低下する阻止率を向上させるために阻止率向上剤が用いられている。特許文献1では有機物に対する阻止率の向上は認識されておらず、透過流束の低下を小さくして有機物に対する阻止率を向上させることは示されていない。また強鉱酸を用いるため、処理操作が困難である。
特許文献2(WO 2004−076040号公報)には、分子量400以下のポリオールを含む選択性透過膜の洗浄剤が記載され、洗浄前および/または洗浄後に、他の洗浄方法として酸による前処理洗浄および/または後処理洗浄を行うことが記載され、酸として硫酸が例示されている。
また特許文献3(特開2006−159062号公報)には、分子量400以下のポリオールと、酸またはアルカリとを含む選択性透過膜の洗浄剤が記載され、酸として硝酸、塩酸、硫酸、シュウ酸およびクエン酸が示されている。しかしこれら特許文献2、3は、透過膜の洗浄剤として、ポリアルキレングリコール、ノニオン性界面活性剤、蛋白、多糖類、糖蛋白、フミン等の有機物が付着して透過流束が低下した選択性透過膜を洗浄し、付着物質を除去する方法が示されているだけで、透過膜の阻止率を向上させることは記載されていない。
また特許文献4(特開2006−110520号公報)には、水処理に用いられる透過膜の阻止率を向上させるための阻止率向上剤として、重量平均分子量10万以上のイオン性高分子を含有する阻止率向上剤が示されている。このようなイオン性高分子としては、ポリビニルアミジンまたはその誘導体、複素環を有するカチオン性高分子等のカチオン性高分子、ならびにポリアクリル酸またはその誘導体、ポリスチレンスルホン酸またはその誘導体等のアニオン性高分子が示されている。
従来の透過膜の阻止率向上処理は、透過膜を取り付ける前の状態で、あるいは透過膜をモジュールに取り付けた状態で、上記の阻止率向上剤を供給して透過膜と接触させることにより、透過膜の表面または内部の構造材料に、阻止率向上剤の全体または一部分を付着、反応等により結合させて修飾処理を行い、透過膜の阻止率を向上させている。
特許2762358号公報 WO 2004−076040号公報 特開2006−159062号公報 特開2006−110520号公報
前記のような従来の透過膜の有機化合物、塩類等を用いて処理を行う方法では、透過膜の阻止率向上効果、特に塩類、有機物、シリカ等に対する阻止率向上効果は十分ではなく、透過流束(フラックス)が低下する。また阻止率向上剤による処理では、親水性の高分子からなる阻止率向上剤が透過膜の細孔に吸着されることにより、溶質の透過が阻害され、阻止率が向上するものと推測されるが、透過膜の阻止率向上効果は必ずしも十分ではなく、塩類、有機物、シリカ等に対する阻止率向上効果については、さらなる向上が求められている。また透過膜の阻止率向上処理を行うと、一般的には透過流束が低下するが、透過流束を低下させないで阻止率を向上させることが求められている。
本発明の課題は、このような要望に応えるもので、透過膜の透過流束を高くした状態で無機物、有機物等に対する阻止率を向上させ、これらの向上効果を高い状態で維持することができ、これにより塩類、有機物、シリカ等の除去効果が高く、長期間にわたって安定処理を可能にする透過膜の阻止率向上方法、阻止率を向上させた透過膜を用いる水処理方法、およびこれらに適した透過膜装置を提供することである。
本発明は次の透過膜の阻止率向上方法、透過膜、水処理方法および透過膜装置である。
(1) 芳香族ポリアミド系透過膜を、硝酸または硝酸塩をNOとして1重量%以上、硫酸または硫酸塩をSOとして0.01重量%以上、および水素イオン濃度0.0001重量%以上含む酸処理液に接触させ酸処理を行うことを特徴とする透過膜の阻止率向上方法。
(2) 芳香族ポリアミド系透過膜を、硝酸または硝酸塩をNOとして1重量%以上、硫酸または硫酸塩をSOとして0.01重量%以上、および水素イオン濃度0.0001重量%以上含む酸処理液に接触させ酸処理を行った後、分子量1000以上の荷電性または極性を有する有機化合物からなる修飾剤に接触させて修飾処理を行うことを特徴とする透過膜の阻止率向上方法。
(3) 修飾剤としてポリアルキレングリコール鎖を有する化合物、またはその誘導体から選ばれる1種以上の化合物を含む上記(2)記載の方法。
(4) 修飾剤として分子量10万以上の荷電性高分子を含む上記(2)または(3)記載の方法。
(5) 芳香族ポリアミド系透過膜を、硝酸または硝酸塩をNOとして1重量%以上、硫酸または硫酸塩をSOとして0.01重量%以上、および水素イオン濃度0.0001重量%以上含む酸処理液に接触させ酸処理した後、複数種類の有機物からなる修飾剤を混合状態で、または別々に接触させて修飾処理する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の方法の実施により得られる透過膜に被処理水を供給して膜分離を行う水処理方法。
(7) 1次側に被処理液を通液し、2次側から透過液を取り出す透過膜モジュールと、
モジュールの1次側に硝酸または硝酸塩をNOとして1重量%以上、硫酸または硫酸塩をSOとして0.01重量%以上、および水素イオン濃度0.0001重量%以上含む酸処理液を供給して透過膜に接触させ酸処理する酸液供給装置と、
モジュールの1次側に、分子量1000以上の荷電性もしくは極性を有する有機化合物からなる修飾剤を通液して、修飾剤処理を行う修飾剤供給装置と
を含む透過膜装置。
本発明において阻止率向上処理の対象となる透過膜は、1次側に被処理液を通液して透過させ、2次側から透過液を取り出し膜分離を行う芳香族ポリアミド系透過膜であるが、特に逆浸透膜、ナノ濾過膜等の無機電解質や水溶性有機物等を水から分離する選択性透過膜が対象として適している。逆浸透膜(RO膜)は膜を介する溶液間の浸透圧差以上の圧力を高濃度側にかけて、溶質を阻止し、溶媒を透過する液体分離膜である。
透過膜、特にRO膜の膜構造としては、非対象膜、複合膜、相分離膜などの高分子膜などを挙げることができる。本発明に適用される透過膜、特にRO膜の素材としては、例えば、芳香族系ポリアミド、の複合材などの芳香族ポリアミド系素材などを挙げることができる。これらの中で、芳香族系ポリアミド透過膜のうち、特にRO膜に用いられるポリアミド複合膜、すなわち多孔性支持膜の表面に架橋反応生成物としてのポリアミド製薄膜を形成した複合膜に対し、本発明に係る阻止率向上処理を好適に適用することができる。このような阻止率向上処理の対象となる透過膜は、未使用の透過膜でも、使用により性能が低下した透過膜でもよい。
本発明における阻止率向上処理は、このような透過膜を、膜分離装置のモジュールに装備された状態で、またはモジュールに装備されない状態の透過膜に対して行われる。モジュールはRO膜等の透過膜を備えた透過膜エレメントをベッセルに装填して構成される。このモジュールの形式については特に制限はなく、例えば、管状膜モジュール、平一面膜モジュール、スパイラル膜モジュール、中空糸膜モジュールなどを適用することができる。モジュールは1段で阻止率向上処理を行ってもよく、また2段以上の多段に設けた状態で阻止率向上処理を行ってもよい。透過膜装置にモジュールを多段に設けた場合には、阻止率向上処理を全てのRO装置モジュールについて行ってもよいし、特定のモジュールについて行ってもよい。
阻止率向上処理は、未使用の透過膜の場合、あるいは使用により性能が低下した透過膜の場合とも、薬品洗浄を行った透過膜を阻止率向上処理の対象とすることができるが、特に使用により性能が低下した透過膜の場合は薬品洗浄を行ったものが好ましい。薬品洗浄の目的は膜表面の汚染物質を除去することにより、阻止率向上処理を膜自体に行いやすくすることである。洗浄薬品としては酸(塩酸、硝酸、シュウ酸、クエン酸など)、アルカリ(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)、界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムなど)、還元剤などが用いられ、これら薬品の水溶液をモジュールに通液したり、透過膜を薬品に浸漬することにより洗浄を行う方法が一般的である。
本発明では、必要により上記の薬品洗浄を行った後に、阻止率向上処理として、まず硝酸または硝酸塩をNOとして1重量%以上、好ましくは1重量%〜30重量%、さらに好ましくは10重量%〜25重量%、硫酸または硫酸塩をSOとして0.01重量%以上、好ましくは0.01重量%〜10重量%、さらに好ましくは0.05重量%〜5重量%、および水素イオン濃度0.0001重量%以上、好ましくは0.0001重量%〜0.5重量%、好ましくは0.001重量%〜0.1重量%含む酸処理液に、逆浸透膜を0.5時間以上、好ましくは0.5時間〜50時間、好ましくは2時間〜15時間接触させて酸処理を行う。
上記の酸処理液に透過膜を接触させて酸処理を行う方法は、平膜状の透過膜、またはこれを装着したエレメントを酸処理液に浸漬してもよいし、平膜セルもしくはエレメントをベッセルに装着したモジュールの状態で酸処理液を通液してもよい。透過膜の内部に酸処理液を含浸させるためには、酸処理液を加圧通液することが好ましい。加圧通液する場合の通液時間は、0.5時間〜50時間、好ましくは2時間〜24時間、操作圧力は膜分離時の0〜150%、好ましくは20〜100%(0MPa〜1.2MPa、好ましくは0.15MPa〜0.75MPa、ただし膜分離時の圧力が0.75MPaの場合)とすることができる。その後、酸処理液を除くため、純水等でリンスすることが望ましい。
上記の酸処理により透過膜の阻止率は向上し、透過流束も向上する。このような効果は硝酸または硝酸塩を単独で使用し、あるいは硫酸または硫酸塩を単独で使用して処理しても得られないが、硝酸または硝酸塩と、硫酸または硫酸塩を併用して処理することにより得られる相乗効果である。このような相乗効果が得られる原因は明らかではないが、透過膜を構成するポリアミド構造がニトロ化等の変成を受けるためと推測される。すなわち芳香族核に結合する2〜3個の官能基が架橋して形成されるポリアミド構造を有する芳香族ポリアミド系透過膜に対して、硫酸の存在下に硝酸を反応させて芳香族核にニトロ基を導入することにより、立体障害効果や荷電反発効果により、電解質や低分子有機物の阻止率を向上させるものと推測される。ニトロ化の条件は反応部位の活性度により異なるが、本発明のように比較的低濃度の酸液で上記の効果が得られるのは、明確ではないが、ポリアミド構造の加水分解よりも活性の高い部位へのニトロ基の導入が優先的に生じているものと推測される。
本発明では、上記のように酸処理により透過膜の阻止率は向上し、透過流束も向上するので、この状態で透過膜を水処理に供することができるが、さらに以下の修飾剤処理を行うことにより、さらに透過膜の阻止率を向上させることができる。
本発明における修飾剤は、有機物を主成分とする親水性の高分子からなる修飾剤であり、修飾剤処理により、透過膜による水溶性有機物や無機電解質等の溶解性物質の阻止率がさらに向上するものであれば特に制限なく使用可能である。このような修飾剤としては、水溶性の高分子化合物であって、イオン性または非イオン性高分子があげられる。イオン性高分子の場合、カチオン性高分子、アニオン性高分子、両性高分子等をそれぞれ単独で使用できるが、カチオン性高分子とアニオン性高分子を段階的に、好ましくは交互に供給すると、阻止率向上効果が高まるので好ましい。これらの化合物を修飾剤の主成分として用いることにより、透過膜の阻止率を向上し、電解質をはじめ、従来のRO膜では除去困難であった低分子量の非イオン性有機物や、ホウ素、シリカなども効果的に除去することができる。
前記使用可能な修飾剤としては、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物、複数のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物、その他の従来阻止率向上として公知のものが使用でき、前記特許文献1〜4に記載のもの、ならびに他の阻止率向上能を有するものなども使用できる。ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物としては、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール誘導体をあげることができる。このほかポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミンなどの水溶性高分子やタンニン酸などのポリフェノール、ならびにイオン性高分子(ポリアミジン、ポリスチレンスルホン酸)なども使用可能である。
好ましい修飾剤としては、ポリアルキレングルコール鎖を有する化合物をあげることができる。ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜6,000、さらに好ましくは3,000〜5,000である。
本発明においては、重量平均分子量は、高分子やポリアルキレングリコール鎖を有する化合物などの化合物の水溶液をゲル浸透クロマトグラフィーにより分析し、得られたクロマトグラムからポリエチレンオキシド標準品の分子量に換算することにより求めることができる。ポリエチレンオキシド標準品が入手し得ない高分子量の領域においては、光散乱法、超遠心法などにより重量平均分子量を求めることができる。
ポリアルキレングリコール鎖は、アルキレンオキシドの開環重合により製造することができる。本発明に用いる化合物が有するポリアルキレングリコール鎖としては、例えばポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖、ポリトリメチレングリコール鎖、ポリテトラメチレングリコール鎖などを挙げることができる。これらのグリコール鎖は、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフランなどの炭素数2〜4のアルキレンオキシドの開環重合により形成することができる。ポリアルキレングリコール鎖はポリエチレングリコール鎖であることが好ましい。このポリエチレングリコール鎖を有する化合物は、水溶性が大きいので阻止率向上剤として取り扱いやすい。
本発明においては、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物としては、末端が水酸基のポリアルキレングリコールのほか、ポリアルキレングリコール鎖にイオン性基が導入された化合物を用いるのが好ましい。イオン性基としては、例えばスルホ基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)等のアニオン性基、またはアミノ基(−NH)、第四アンモニウム基(−N)等のカチオン性基などを挙げることができる。このうちスルホ基、カルボキシル基等のアニオン性基を導入することによりアニオン性の水溶性の高分子化合物が得られ、アミノ基、第四アンモニウム基等のカチオン性基を導入することによりカチオン性の水溶性の高分子化合物が得られる。
本発明においては、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物として、ポリアルキレングリコール鎖にアルキル基が導入された化合物も用いることができる。1個のアルキル基を構成する炭素数としては、1〜20が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、オクチル基、ノニル基、ラウリル基、ステアリル基、オレイル基などが挙げられる。炭素数が20よりも多くなると化合物の疎水性が高くなり、吸着させた場合に膜面の親水性が低下し、膜透過流束の低下が大きくなるという問題が生じる。
本発明においては、他の修飾剤として用いられるイオン性高分としては、カチオン性高分子およびアニオン性高分子があげられる。
本発明の修飾剤に用いるカチオン性高分子としては、例えば、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミド、キトサン、ポリスチレンに第一級アンモニウム基を付加したものなどの第一級アミン化合物、ポリエチレンイミンなどの第二級アミン化合物、ポリ(アクリル酸ジメチルアミノエチル)、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)などの第三級アミン化合物、ポリスチレンに第四級アンモニウム基を付加したものなどの第四級アンモニウム化合物、ポリビニルアミジン、ポリビニルピリジン、ポリピロール、ポリビニルジアゾールなどの複素環を有する化合物などを挙げることができる。またこれらの構造の共重合高分子や、複数種の高分子を混合したものも用いることができる。これらの中で、複素環を有する化合物を好適に用いることができ、ポリビニルアミジンを特に好適に用いることができる。
ポリビニルアミジンは、模索環の窒素原子と第一級アミンの窒素原子がカチオン性を有するので、カチオン密度が高く、水中のカチオン種に対して高い阻止率向上効果が発現する。他の複素環を有する高分子の場合も、第一級アミンなどのカチオン性の官能基を付与することによって、カチオン密度を高めることができる。
カチオン性の高い重量平均分子量10万以上のカチオン性高分子、例えば、ポリビニルアミジンのような構造単位中に第一級ないし第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩構造を有する高分子を透過膜の膜表面に吸着させることによって、水中のカチオン種の阻止率を効果的に向上させることができる。すなわち透過膜の膜表面が一般的に負の荷電を有することと、カチオン性高分子の分子量が大きいことにより、安定に高分子が膜表面に吸着されて阻止率を向上させることができ、さらにカチオン性高分子の親水性が高いために透過流束が大きく低下することがない。
本発明の修飾剤に用いるアニオン性高分子としては、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などのカルボキシル基を有する高分子、ポリスチレンスルホン酸、デキストラン硫酸、ポリビニルスルホン酸などのスルホン酸基を有する化高分子などを挙げることができる。また、これらの構造を複数種有する共重合体も用いることができる。ポリスチレンスルホン酸のスルホン酸基は、アニオン性が強いため透過膜の膜表面に安定に吸着して、透過流束を大きく低下させることなく、強固に安定化することができる。
本発明のイオン性高分子は、対イオンを有する塩としても用いることができる。対イオンを有する塩としては、例えば、ポリビニルアミジン塩酸塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩などを挙げることができる。
本発明で用いる修飾剤は水または水を含む溶媒に溶解ないし分散させて水性溶液として用いられる。水性溶液中の修飾剤の濃度は、透過膜の種類、モジュールの形式等により変わるが、一般的には0.01〜50mg/L程度の濃度に調製して修飾剤処理等に供される。修飾剤は、複数のものを組合わせて用いることができ、この場合混合して通液してもよく、また別々に時間をずらせて通液することもできる。
修飾剤を含む水溶液のより好ましい化合物濃度は、用いる化合物の種類によって異なり、例えば前述の重量平均分子量1,000〜1 0,000のポリアルキレングリコール鎖を有する化合物の場合は0.01〜10mg/Lが好ましく、重量平均分子量10万以上のイオン性高分子の場合は0.1〜20mg/Lが好ましい。
本発明で用いる修飾剤を複数種使用することも有効である。例えばポリアルキレングリコール鎖を有する化合物で修飾処理した後、イオン性高分子で修飾処理することにより、優れた阻止率向上効果を得ることができる。またイオン性高分子で修飾処理する場合、カチオン性高分子を吸着処理剤として修飾処理した後に、アニオン性高分子を修飾剤として修飾処理すると、両修飾剤の相互作用により、修飾剤の膜への定着性を強固にすることができる。
修飾処理は、修飾剤を含む水性溶液中に透過膜モジュールを浸漬することにより行うこともできるが、好ましくは透過膜モジュールの一次側に通液することにより実施するのが好ましい。修飾剤を含む水溶液を通水する1回当りの時間は、2〜24時間であることが好ましい。水溶液中の修飾剤濃度を高くすると、通水時間を短縮することができるが、透過流束の低下が大きくなるおそれがある。この修飾剤を含む水溶液の通液時は、透過膜モジュールの透過水排出弁を閉じておくことも可能であるが、透過水を取出しながら処理することで、装置を休止することなく効率的に処理することができるとともに、修飾剤を効率的、かつ均一に透過膜面に吸着させ、修飾することができる。
この場合、RO膜モジュールの一次側への修飾剤を含む水溶液供給時の操作圧力を0.3MPa以上、好ましくは0.3MPa〜1.5MPa、さらに好ましくは0.4MPa〜1.0MPaとすることが好ましい。この圧力範囲は通常の膜分離運転時の操作圧力が0.75MPa程度のRO膜モジュールの場合の好ましい圧力である。通常の膜分離運転時の操作圧力が0.75MPa程度のRO膜モジュールの場合も、これ以外のRO膜モジュールの場合も、透過水量/修飾剤を含む水溶液の供給量が0.2以上、好ましくは0.2〜0.9、さらに好ましくは0.3〜0.7とすることが好ましい。このようにすることで、効果的に修飾剤がRO膜表面に接触するため、修飾剤を効率的かつ均一に透過膜面に吸着させることができる。
本発明では、前記酸処理により透過膜のポリアミド構造が変成されて阻止率は向上し、透過流束も向上するが、さらに上記の修飾剤処理を行うことにより、さらに透過膜の阻止率が向上し、透過流束も向上する。その機構は使用する修飾剤によっても異なるものと考えられ、明確ではないが、変成された透過膜の網目構造に修飾剤が吸着して修飾され、これによりさらに立体障害効果や荷電反発効果が高まり、電解質や低分子有機物の阻止率が向上するものと推測される。
上記の阻止率向上方法の実施により得られる透過膜は、透過膜の透過流束を高くした状態で阻止率が向上しており、かつその高い状態を長く維持することができる。
記の阻止率向上方法の実施により得られる透過膜、透過膜の透過流束を高くした状態で阻止率が向上し、かつその高い状態が長く維持するので、そのまま水処理用の透過膜として用い、水処理を行うことができる。
上記の透過膜により、被処理液を透過させて膜分離により水処理を行う水処理方法では、透過膜の透過流束を高くした状態で阻止率が向上し、かつその高い状態が長く維持することができる。これにより有機物および塩類の除去効果が高く、長期間にわたって安定処理が可能である。被処理液の供給、透過の操作は通常の透過膜処理と同様に行うことができるが、カルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を含有する被処理液を処理する場合は、原水に分散剤、スケール防止剤、その他の薬剤を添加してもよい。
本発明の好ましい透過膜処理装置は、1次側に被処理液を通液し、2次側から透過液を取り出す透過膜モジュールと、モジュールの1次側に硝酸または硝酸塩をNOとして1重量%以上、硫酸または硫酸塩をSOとして0.01重量%以上、および水素イオン濃度0.0001重量%以上含む水溶液を供給して透過膜に接触させて酸処理する酸処理液供給装置と、モジュールの1次側に、分子量1000以上の荷電性もしくは極性を有する有機化合物からなる修飾剤を通液して、修飾処理を行う修飾剤供給装置とを含む透過膜装置である。
上記の透過膜処理装置では、透過膜モジュールの1次側に被処理液を通液し、2次側から透過液を取り出して透過膜処理を行い、酸処理液供給装置によりモジュールの1次側に硝酸または硝酸塩をNOとして1重量%以上、硫酸または硫酸塩をSOとして0.01重量%以上、および水素イオン濃度0.0001重量%以上含む酸液を供給して透過膜に接触させて修飾処理を行い、修飾剤供給装置によりモジュールの1次側に有機物を主成分とする修飾剤を通液して修飾処理を行うことにより、透過膜の透過流束を高くした状態で透過膜の阻止率を向上させ、これらの向上効果を高い状態で維持することができる。
本発明の透過膜装置は、電子デバイス製造分野、半導体製造分野、その他の各種産業分野で排出される高濃度ないし低濃度TOC含有排水の回収・再利用のための水処理、あるいは工業用水や市水からの超純水製造、その他の分野の水処理に有効に適用される。処理対象とする被処理水は特に限定されるものではないが、有機物含有水に好適に用いることができ、例えばTOC=0.01〜100mg/L、好ましくは0.1〜30mg/L程度の有機物含有水の処理に好適に用いられる。このような有機物含有水としては電子デバイス製造工場排水、輸送機械製造工場排水、有機合成工場排水または印刷製版・塗装工場排水など、あるいはそれらの一次処理水など挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明の透過膜装置では、透過膜、特にRO膜の目詰まりやファウリングや膜汚染を防止する目的で、前処理装置として活性炭塔、凝集沈殿装置、凝集加圧浮上装置、濾過装置あるいは脱炭酸装置を設けることが好ましい。濾過装置としては、砂濾過装置、限外濾過装置、精密濾過装置などを用いることができる。前処理装置としてはさらにプレフィルターを設けてもよい。またRO膜は酸化劣化を受けやすいため、必要に応じて原水に含まれる酸化剤(酸化劣化誘発物質)を除去する装置を設けることが好ましい。このような酸化劣化誘発物質を除去する装置としては、活性炭塔や還元剤注入装置などを用いることができる。特に活性炭塔は有機物も除去することが可能であり、上述の通りファウリング防止手段として兼用することができる。原水のpHは特に制限されるものではないが、pHが4〜9、好ましくは5〜8、特に5〜7に調整される。硬度成分を多く含む場合は、pH5〜7の酸性域に調整する、分散剤を使用するなどの処理が必要である。
本発明によれば、芳香族ポリアミド系透過膜を、硝酸または硝酸塩をNOとして1重量%以上、硫酸または硫酸塩をSOとして0.01重量%以上、および水素イオン濃度0.0001重量%以上含む酸処理液に接触させて酸処理を行うことにより、透過膜の透過流束を高くした状態で無機物および有機物、特に低分子量の有機物に対する阻止率を向上させ、これらの向上効果を高い状態で維持することができ、これにより有機物、特に低分子量の有機物の除去効果が高く、長期間にわたって安定処理が可能である。
また本発明によれば、芳香族ポリアミド系透過膜を、硝酸または硝酸塩をNOとして1重量%以上、硫酸または硫酸塩をSOとして0.01重量%以上、および水素イオン濃度0.0001重量%以上含む酸処理液に接触させて酸処理を行った後、分子量1000以上の荷電性または極性を有する有機化合物からなる修飾剤に接触させて修飾処理を行うことにより、さらに上記の効果を高めることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。図1および図2は本発明の実施形態による透過膜処理方法および装置を示すフロー図である。
図1および図2において、1はRO膜モジュールで、透過膜としてRO膜2により1次側3と2次側4に区画されている。11は被処理水タンク、12は処理水タンク、13は洗浄液タンク、14は酸処理液タンク、15は修飾剤A水溶液タンク、16は修飾剤B水溶液タンク、P1は被処理水ポンプ、P2は薬液ポンプ、P3は修飾剤A水溶液通水ポンプ、P4は修飾剤B水溶液ポンプである。V1〜V22はバルブである。なお、図1および図2では主要な配管およびバルブを示してあり、その他のバルブ、ゲージ、配管類は図示を省略してある。
図1および図2において、被処理水をRO処理する場合には、バルブV1、V2、V3、V4、V5、V22を開、その他のバルブを閉とし、ポンプP1を作動させて、被処理水タンク11内の被処理水をRO膜モジュール1の1次側3に供給してRO膜2によりRO膜分離し、透過水を2次側4から処理水として系外へ取り出す。濃縮水は1次側3から被処理水タンク11へ戻すとともに、一部の濃縮水をRO給水の濃縮を防止するために、バルブV3を介して系外へ排出する。またバルブV6、V17を開として、透過水の一部を処理水タンク12に貯留する。場合によっては、バルブV18、V19、V20、V21を開として、透過水を洗浄液タンク13、酸処理液タンク14、修飾剤A水溶液タンク15、修飾剤B水溶液タンク16に送給して、洗浄液や酸処理液、修飾剤水溶液の希釈、調製等に用いることができる。
RO処理を行うことにより、RO膜の性能(透過流束や阻止率)が低下した場合の薬品洗浄を行う場合には、ポンプP1を停止し、バルブV2、V4、V8、V13を開、その他のバルブを閉として、ポンプP2を作動させ、洗浄液タンク13内のアルカリ性洗浄液や酸性洗浄液等の洗浄液をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再びタンク13内に戻すように循環させる。このときバルブV5を開として、洗浄液の一部を膜透過させて系外へ排出してもよい。或いはバルブV6、V18を開として、膜透過させた洗浄液をタンク13に戻しても良い。所定の時間、洗浄液を循環させた後に、場合によってはポンプP2を停止して一定時間洗浄液を静置保持してから、洗浄液を洗浄液タンク13に設けたドレイン管(図示せず)から系外へ排出する。アルカリ性洗浄液による洗浄と酸性洗浄液による洗浄はどちらを先に行っても良く、また交互に繰り返して2回以上行っても良く、RO膜の性能低下の状態や修飾剤の種類等を考慮して決定する。洗浄液タンク13は、酸性洗浄液タンクとアルカリ性洗浄液タンクに分けても良い。
酸処理液による酸処理を行う場合は、バルブV2、V4、V9、V14を開、その他のバルブを閉としてポンプP2を作動させ、酸処理液タンク14内の硝酸または硝酸塩と硫酸または硫酸塩を含む酸処理液をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再びタンク14に戻すように循環させて酸処理する。このときバルブV5を開として、酸処理液の一部を膜透過させて系外へ排出しても良い。或いはバルブV6、V19を開として、膜透過させた酸処理液をタンク14に戻しても良い。所定の時間、酸処理液を循環させた後に、場合によってはポンプP2を停止して一定時間酸処理液を静置保持してから、酸処理液をタンク14に設けたドレイン管(図示せず)から系外へ排出する。
RO膜モジュール1内の洗浄液、酸処理液等の薬液をリンスする場合は、バルブV2、V3、V7を開、その他のバルブを閉として、処理水タンク12内の処理水でRO膜モジュール1の1次側3を洗浄し、バルブV3を介して系外へ排出する。この処理水によるリンスは、洗浄後、酸処理液による酸処理後、あるいは洗浄液の種類を変える際に行うことができる。またバルブV5を開として、RO膜モジュール1の2次側4のリンスを行うこともできる。
図1において、1種類の修飾剤を含む水溶液により阻止率向上処理を行う場合には、修飾剤A水溶液タンク15のみに修飾剤A水溶液を満たし、バルブV2、V4、V10、V15を開、その他のバルブを閉として、ポンプP2を作動させ、修飾剤A水溶液用タンク15内の修飾剤A水溶液をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再びタンク15内に戻すように循環させる。このときバルブV5を開として、修飾剤A水溶液の一部を膜透過させて系外へ排出しても良いが、バルブV6、V20を開として、膜透過させた修飾剤A水溶液をタンク15内に戻すことが好ましい。所定の時間、修飾剤A水溶液を循環させた後に、タンク15に設けたドレイン管(図示せず)より、系外へ排出する。
次いでバルブV2、V3、V6、V7、V20を開とし、その他のバルブを閉として、処理水タンク12内の処理水でRO膜モジュール1の1次側3を洗浄し、修飾剤A水溶液の一部をバルブV3を介して系外へ、残部をタンク15を経由して系外へ排出する。
図1において、異なる修飾剤を用いて阻止率向上処理する場合には、例えば修飾剤A水溶液タンク15と修飾剤B水溶液タンク16とにそれぞれカチオン性高分子水溶液とアニオン性高分子水溶液を満たし、まずバルブV2、V4、V10、V15を開、その他のバルブを閉として、ポンプP2を作動させ、修飾剤A水溶液タンク15内のカチオン性高分子水溶液をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再びタンク15内に戻すように循環させる。このとき、バルブV5を開として、カチオン性高分子水溶液の一部を膜透過させて系外へ排出しても良いが、バルブV6、V20を開として、膜透過させたカチオン性高分子水溶液をタンク15内に戻すことが好ましい。所定の時間、カチオン性高分子水溶液を循環させた後に、修飾剤A水溶液用タンク15に設けたドレイン管(図示せず)より、系外へ排出する。
次いで、バルブV2、V4、V11、V16を開、その他のバルブを閉として、修飾剤B水溶液タンク16内のアニオン性高分子水溶液をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再びタンク16内に戻すように循環させる。このときバルブV5を開として、アニオン性高分子水溶液の一部を膜透過させて系外へ排出しても良いが、バルブV6、V21を開として、膜透過させたアニオン性高分子水溶液をタンク16内に戻すことが好ましい。所定の時間、アニオン性高分子水溶液を循環させた後に、修飾剤B水溶液タンク16に設けたドレイン管(図示せず)より、アニオン性高分子水溶液を系外へ排出する。
次いで、バルブV2、V3、V6、V7を開、更にV20とV21の少なくともいずれか一方を開とし、その他のバルブを閉として、処理水タンク12内の処理水でRO膜モジュール1の1次側3をリンスし、修飾剤水溶液の一部をバルブV3を介して系外へ、残部をタンク15または16のいずれかを経由して系外へ排出する。この処理水によるリンスは、修飾剤A水溶液による阻止率向上処理と、修飾剤B水溶液による阻止率向上処理との間にも行うことが好ましい。なお修飾剤Aによる処理と、修飾剤Bによる処理は交互に繰り返して2回以上行っても良い。
図2において、1種類の修飾剤を含む水溶液により阻止率向上処理を行う場合には、修飾剤A水溶液タンク15のみに修飾剤A水溶液を満たし、まずバルブV10を開として、ポンプP3を作動させ、修飾剤A水溶液用タンク15内の修飾剤A水溶液を被処理水タンク11に導入し、その後ポンプP1を作動させ、バルブV1、V2、V4、V22を開、その他のバルブを閉として、被処理水タンク11内の修飾剤Aの含まれる被処理水をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再びタンク11に戻すように循環させる。このときバルブV3およびV5を開として、修飾剤Aの含まれる被処理水の一部を膜透過させて処理水を得るとともに、修飾剤Aの含まれる被処理水の一部を系外へ排出させることが好ましい。このようにすることで、阻止率向上処理と被処理水のRO膜処理を同時に行うことや、阻止率向上処理の時間を短縮することができる。所定の時間、修飾剤Aの含まれる被処理水を循環させた後に、バルブV10を閉じるとともにポンプP3を停止し、修飾剤A水溶液の導入を停止する。
次いで、バルブV2、V3、V7を開、その他のバルブを閉として、ポンプP1を停止するとともに、ポンプP2を稼動して処理水タンク12内の処理水でRO膜モジュール1の1次側3を洗浄するとともに、修飾剤Aの含まれる被処理水をバルブV3を介して系外へ排出する。
図2において、異なる修飾剤を用いて阻止率向上処理する場合には、例えば修飾剤A水溶液用タンク15と修飾剤B水溶液用タンク16とにそれぞれポリアルキレングリコール水溶液とポリアルキレングリコールアルキルエーテル水溶液で満たし、まずバルブV10を開として、ポンプP3を作動させ、修飾剤A水溶液タンク15内のポリアルキレングリコール水溶液を被処理水タンク11に導入し、その後ポンプP1を作動させ、バルブV1、V2、V4、V22を開、その他のバルブを閉として、被処理水タンク11内のポリアルキレングリコールが含まれる被処理水をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再びタンク11に戻すように、循環させる。このとき、バルブV3およびV5を開として、ポリアルキレングリコールが含まれる被処理水の一部を膜透過させて処理水を得るとともに、ポリアルキレングリコールが含まれる被処理水の一部を系外へ排出させることが好ましい。このようにすることで、阻止率向上処理の時間を短縮することができる。所定の時間、ポリアルキレングリコールが含まれる被処理水を循環させた後に、バルブV10を閉じるとともにポンプP3を停止し、ポリアルキレングリコール水溶液の導入を停止する。
次いでバルブV11を開として、ポンプP4を作動させ、修飾剤B水溶液用タンク16内のポリアルキレングリコールアルキルエーテル水溶液を被処理水タンク11に導入し、その後ポンプP1を作動させ、バルブV1、V2、V4、V22を開、その他のバルブを閉として、被処理水タンク11内のポリアルキレングリコールアルキルエーテルの含まれる被処理水をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再びタンク11内に戻すように循環させる。このときバルブV3およびV5を開として、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの含まれる被処理水の一部を膜透過させて処理水を得るとともに、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの含まれる被処理水の一部を系外へ排出させることが好ましい。このようにすることで、RO処理装置の運転を停止する時間を短縮することができる。所定の時間、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの含まれる被処理水を循環させた後にバルブ11を閉じるとともに、ポンプP4を停止し、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル水溶液の導入を停止する。
次いで、バルブV2、V3、V7を開、その他のバルブを閉として、ポンプP1を停止するとともに、ポンプP2を稼動して処理水タンク12内の処理水でRO膜モジュール1の1次側3をリンスするとともに、高分子水溶液をバルブV3を介して系外へ排出する。この処理水によるリンスは、ポリアルキレングリコール水溶液による処理と、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル水溶液による処理との間にも行うことが好ましい。リンス工程は、修飾剤水溶液の導入を停止した後、被処理水によるRO処理を所定時間(被処理水タンク11の滞留時間の3倍程度)実施することにより短縮し、あるいは省略することもできる。なおポリアルキレングリコール水溶液による阻止率向上処理と、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル水溶液による修飾処理は交互に繰り返して2回以上行っても良い。
上記実施の形態は、本発明のRO膜処理方法の処理手順の一例を示すものであって、本発明は何ら本実施の形態に限定されるものではなく、図1、2の各処理タンクは共用したり、あるいは省略したりすることもできる。またRO膜処理工程、洗浄工程、酸処理工程、および修飾処理工程は、それぞれ別の場所で行ってもよい。すなわちRO膜エレメントだけをベッセルから抜き取って、RO処理工程を行っている場所から別の場所(例えばRO膜再生工場など) に移動させ、移動先において別途用意したベッセルに収容して洗浄、酸処理、あるいは修飾処理を実施してもよい。逆に阻止率向上処理を行った後に、ROエレメントを別の場所に移動させ、RO膜処理を行うこともできる。また図2の場合には、修飾剤水溶液は、被処理水タンク11に供給されるが、被処理水タンク11とRO膜モジュール1とを連結する配管に、これら修飾剤水溶液を直接ライン注入するようにしてもよく、バルブV2、V4を経由した濃縮水が被処理水タンク11とRO膜モジュール1とを連絡する配管にライン注入されるようにしてもよい。
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。以下の実施例および比較例では、阻止率は以下式によって算出した除去率で表示した。
除去率(%)={1−(透過液の溶質濃度)/〔(供給液の溶質濃度+濃縮液の溶質濃度)/2〕}×100
[比較例1]:
日東電工(株)製超低圧芳香族ポリアミド系RO膜「ES−20」をRO膜として用い、阻止率向上処理を行うことなく、RO装置に装填した。電子デバイス製造工場排水の一次処理水(TOC成分2.5mg/L、電気伝導度100mS/m)をpH6.0に調整し、上記RO装置を用いて、圧力0.75MPa、水温20℃の条件で通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.80m/d、TOC除去率は91%、電気伝導度除去率は96%であり、通水200時間後の透過流束は0.57m/d、TOC除去率は91.5%、電気伝導度除去率は95%であった。
[比較例2]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、1重量%硫酸水溶液(NO:0重量%、SO:1重量%、H:0.02重量%)に2時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.80m/d、TOC除去率は91%、電気伝導度除去率は95%であった。
[比較例3]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、5重量%硫酸水溶液(NO:0重量%、SO:5重量%、H:0.1重量%)に2時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.79m/d、TOC除去率は91%、電気伝導度除去率は95%であった。
[比較例4]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、5重量%硫酸水溶液(NO:0重量%、SO:5重量%、H:0.1重量%)に15時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.83m/d、TOC除去率は88%、電気伝導度除去率は93%であった。
[比較例5]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、10重量%硫酸水溶液(NO:0重量%、SO:10重量%、H:0.2重量%)に2時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.81m/d、TOC除去率は90%、電気伝導度除去率は94%であった。
[比較例6]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、20重量%硫酸水溶液(NO:0重量%、SO:20重量%、H:0.4重量%)に2時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.83m/d、TOC除去率は89%、電気伝導度除去率は93%であった。
[比較例7]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、1重量%硝酸水溶液(NO:1重量%、SO:0重量%、H:0.02重量%)に2時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.80m/d、TOC除去率は91%、電気伝導度除去率は96%であった。
[比較例8]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、5重量%硝酸水溶液(NO:5重量%、SO:0重量%、H:0.08重量%)に2時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.80m/d、TOC除去率は91%、電気伝導度除去率は95%であった。
[比較例9]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、5重量%硝酸水溶液(NO:5重量%、SO:0重量%、H:0.08重量%)に15時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.79m/d、TOC除去率は91%、電気伝導度除去率は95%であった。
[比較例10]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、10重量%硝酸水溶液(NO:10重量%、SO:0重量%、H:0.16重量%)に2時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.79m/d、TOC除去率は91%、電気伝導度除去率は95%であった。
[比較例11]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、20重量%硝酸水溶液(NO:20重量%、SO:0重量%、H:0.32重量%)に2時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.82m/d、TOC除去率は90%、電気伝導度除去率は94%であった。
[比較例12]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、27重量%硝酸ナトリウム+1重量%硫酸ナトリウム水溶液(NO:20重量%、SO:0.68重量%、H:0重量%)に2時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.80m/d、TOC除去率は91%、電気伝導度除去率は95%であった。
[実施例1]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、20重量%硝酸+0.01重量%硫酸水溶液(NO:20重量%、SO:0.01重量%、H:0.32重量%)に2時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.80m/d、TOC除去率は91.5%、電気伝導度除去率は95.5%であった。
[実施例2]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、20重量%硝酸+0.1重量%硫酸水溶液(NO:20重量%、SO:0.1重量%、H:0.32重量%)に2時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.78m/d、TOC除去率は93.5%、電気伝導度除去率は96%であり、通水200時間後の透過流束は0.73m/d、TOC除去率は94%、電気伝導度除去率は96%であった。
[実施例3]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、20重量%硝酸+1重量%硫酸水溶液(NO:20重量%、SO:1重量%、H:0.34重量%)に2時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.80m/d、TOC除去率は92%、電気伝導度除去率は96.5%であった。
[実施例4]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、20重量%硝酸+5重量%硫酸水溶液(NO:20重量%、SO:5重量%、H:0.42重量%)に2時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.82m/d、TOC除去率は91%、電気伝導度除去率は97%であった。
[実施例5]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、10重量%硝酸+1重量%硫酸水溶液(NO:10重量%、SO:1重量%、H:0.18重量%)に3時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.78m/d、TOC除去率は93.5%、電気伝導度除去率は96%であり、通水200時間後の透過流束は0.72m/d、TOC除去率は93.5%、電気伝導度除去率は96.5%であった。
[実施例6]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、5重量%硝酸+5重量%硫酸水溶液(NO:5重量%、SO:5重量%、H
0.1重量%)に3時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.77m/d、TOC除去率は93.5%、電気伝導度除去率は96%であり、通水200時間後の透過流束は0.74m/d、TOC除去率は93.5%、電気伝導度除去率は96.5%であった。
[実施例7]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、5重量%硝酸+10重量%硫酸水溶液(NO:5重量%、SO:10重量%、H:0.28重量%)に3時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.78m/d、TOC除去率は92.5%、電気伝導度除去率は97%であった。
[実施例8]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、1重量%硝酸+10重量%硫酸水溶液(NO:1重量%、SO:10重量%、H:0.22重量%)に3時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.78m/d、TOC除去率は92%、電気伝導度除去率は96%であった。
[実施例9]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、27重量%硝酸ナトリウム+0.01重量%硫酸水溶液(NO:20重量%、SO:0.01重量%、H:0.0002重量%)に15時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.80m/d、TOC除去率は91.5%、電気伝導度除去率は95%であった。
[実施例10]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、27重量%硝酸ナトリウム+0.1重量%硫酸水溶液(NO:20重量%、SO:0.1重量%、H:0.002重量%)に15時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.78m/d、TOC除去率は94%、電気伝導度除去率は95.5%であり、通水200時間後の透過流束は0.74m/d、TOC除去率は94.5%、電気伝導度除去率は95.5%であった。
[実施例11]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、10重量%硝酸ナトリウム+1重量%硫酸水溶液(NO:7.3重量%、SO:1重量%、H:0.02重量%)に15時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.78m/d、TOC除去率は93%、電気伝導度除去率は96%であった。
[実施例12]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、10重量%硝酸ナトリウム+1重量%硫酸水溶液(NO:7.3重量%、SO:1重量%、H:0.02重量%)に3時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.76m/d、TOC除去率は93%、電気伝導度除去率は96.5%であり、通水200時間後の透過流束は0.73m/d、TOC除去率は93%、電気伝導度除去率は96%であった。
[実施例13]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、20重量%硝酸+0.1重量%硫酸水溶液(NO:20重量%、SO:0.1重量%、H:0.32重量%)に2時間浸漬し酸処理した後、1mg/Lポリエチレングリコール(分子量3000)水溶液を0.75MPaで2時間通水し修飾処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.69m/d、TOC除去率は95%、電気伝導度除去率は97%であり、通水200時間後の透過流束は0.68m/d、TOC除去率は95%、電気伝導度除去率は97%であった。
[実施例14]:
比較例1において、RO膜を阻止率向上処理として、20重量%硝酸+0.1重量%硫酸水溶液(NO:20重量%、SO:0.1重量%、H:0.32重量%)に2時間浸漬し酸処理した後、1mg/Lポリエチレングリコール(分子量3000)水溶液を0.75MPaで2時間通水し、さらに1mg/Lポリオキシエチレンステアリルエーテル(分子量4700)水溶液を0.75MPaで2時間通水し修飾処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.61m/d、TOC除去率は96%、電気伝導度除去率は97%であり、通水200時間後の透過流束は0.60m/d、TOC除去率は96%、電気伝導度除去率は97%であった。
[比較例13]:
東レ(株)製超低圧芳香族ポリアミド系RO膜「SUL−G20」をRO膜として用い、阻止率向上処理を行うことなく、RO装置に装填した。工業用水の凝集沈殿処理、脱炭酸処理および活性炭吸着処理による前処理水(TOC成分1.0mg/L、電気伝導度20mS/m、シリカ濃度20mg/L)をpH5.5に調整し、上記RO装置を用いて、圧力0.75MPa、水温20℃の条件で通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.90m/d、TOC除去率は90%、電気伝導度除去率は95%、シリカ除去率は92%であり、通水200時間後の透過流束は0.82m/d、TOC除去率は90%、電気伝導度除去率は95%、シリカ除去率は92%であった。
[実施例15]:
比較例13において、RO膜を阻止率向上処理として、27重量%硝酸ナトリウム+0.1重量%硫酸水溶液(NO:20重量%、SO:0.1重量%、H:0.002重量%)に20時間浸漬し酸処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.85m/d、TOC除去率は92%、電気伝導度除去率は96%、シリカ除去率は94%であり、通水200時間後も膜性能は安定に維持された。
[実施例16]:
比較例13において、RO膜を阻止率向上処理として、27重量%硝酸ナトリウム+0.1重量%硫酸水溶液(NO:20重量%、SO:0.1重量%、H:0.002重量%)に20時間浸漬し酸処理下後、1mg/Lポリビニルアミジン(分子量350万)水溶液を0.75MPaで2時間通水し、さらに1mg/ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(分子量100万)水溶液を0.75MPaで2時間通水し修飾処理してRO装置に装填し、同様に通水処理を行った。通水2時間後の透過流束は0.72m/d、TOC除去率は93.5%、電気伝導度除去率は97%、シリカ除去率は96.5%であり、通水200時間後も膜性能は安定に維持された。
以上の実施例と比較例から明らかな通り、本発明における阻止率向上処理を行ったROを用いることにより、安定した透過流束を維持しながら、有機物、塩類、シリカ等を高度に除去したRO処理水が得られることがわかる。
本発明は、逆浸透膜、ナノ濾過膜等の透過膜の阻止率を向上させる方法、阻止率を向上させた透過膜、これを用いる水処理方法、およびこれらに適した透過膜装置に利用可能である。
本発明の一実施形態による透過膜処理方法および装置を示すフロー図である。 本発明の別の実施形態による透過膜処理方法および装置を示すフロー図である。
符号の説明
1 RO膜モジュール
2 RO膜
3 1次側
4 2次側
11 被処理水タンク
12 処理水タンク
13 洗浄液タンク
14 酸処理液タンク
15 修飾剤A水溶液タンク
16 修飾剤B水溶液タンク

Claims (7)

  1. 芳香族ポリアミド系透過膜を、硝酸または硝酸塩をNOとして1重量%以上、硫酸または硫酸塩をSOとして0.01重量%以上、および水素イオン濃度0.0001重量%以上含む酸処理液に接触させ酸処理を行うことを特徴とする透過膜の阻止率向上方法。
  2. 芳香族ポリアミド系透過膜を、硝酸または硝酸塩をNOとして1重量%以上、硫酸または硫酸塩をSOとして0.01重量%以上、および水素イオン濃度0.0001重量%以上含む酸処理液に接触させ酸処理を行った後、分子量1000以上の荷電性または極性を有する有機化合物からなる修飾剤に接触させて修飾処理を行うことを特徴とする透過膜の阻止率向上方法。
  3. 修飾剤としてポリアルキレングリコール鎖を有する化合物、またはその誘導体から選ばれる1種以上の化合物を含む請求項2記載の方法。
  4. 修飾剤として分子量10万以上の荷電性高分子を含む請求項2または3記載の方法。
  5. 芳香族ポリアミド系透過膜を、硝酸または硝酸塩をNOとして1重量%以上、硫酸または硫酸塩をSOとして0.01重量%以上、および水素イオン濃度0.0001重量%以上含む酸処理液に接触させ酸処理した後、複数種類の有機物からなる修飾剤を混合状態で、または別々に接触させて修飾処理する請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
  6. 請求項1から5いずれかに記載の方法の実施により得られる透過膜に被処理水を供給して膜分離を行う水処理方法。
  7. 1次側に被処理液を通液し、2次側から透過液を取り出す透過膜モジュールと、
    モジュールの1次側に硝酸または硝酸塩をNOとして1重量%以上、硫酸または硫酸塩をSOとして0.01重量%以上、および水素イオン濃度0.0001重量%以上含む酸処理液を供給して透過膜に接触させ酸処理する酸液供給装置と、
    モジュールの1次側に、分子量1000以上の荷電性もしくは極性を有する有機化合物からなる修飾剤を通液して、修飾剤処理を行う修飾剤供給装置と
    を含む透過膜装置。
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